先日三日月を見た夜に、ふと思いついたので。
脈絡なく、突然あきつくのSSです。
お家デート中の2人。
____________
「ねえ、美作さん!
今夜はお月様がよく見えるよー!」
牧野のそんな声に誘われて空を見上げる。
食事した後に、ワインの酔いをちょっと冷まそうと、涼みに出て来た我が家のローズガーデン。
庭木の狭間に輝くのはほっそりとした三日月。
「ああ、本当だな。
三日月だ。」
「うん! 可愛いねー、三日月って。
あたし、好きなんだあ。」
三日月を見て、可愛いと思ったことがなかった。
別の思いを抱きつつ見詰めたことはあったけれど。
「真ん丸のうさぎさんがお餅つきしているお月様もいいけれど、こういうお月様も素敵だよね。」
そう言ってふんわり微笑み、空を仰いでいる牧野。
三日月を褒めているんだと分かっていても、何故だか自分の事を褒められたような気になってしまい、擽ったく感じる。
「あのさー、三日月のこういう風になってるとこあるでしょ?」
そう言いながら牧野の右手の人差し指は空中に弧を描く。
「あそこってさ、座れそう!って思わない?」
思わない。
牧野には悪いけれど、そんな風に思った事はない。
全く、一度も。
「あのカーブを背凭れにしてさー、三日月に跨って座ったら、いい感じなんじゃないかと思ってるのよ、あたしは。」
牧野つくしという女は、全く以てこちらの想像の範囲を超えている。
もう十代の夢見がちな子供じゃない。
成人した今も尚、真面目にそんな事を言ってしまう。
でも牧野だからな・・・と、俺はくすりと笑って納得してしまった。
「牧野を月に座らせてやりたいけど。
ちょっと俺にはムリそうだな、それ。
その代わりに今度、月を掴まえに行こうか?」
「え? え? え?
どうやって?」
「ふふふ、それはお楽しみ。」
「えーーーーー?」
某国の砂漠で満月を掴まえているかのような写真をSNSで見た事がある。
それを見た時に思ったんだ。
これ、牧野好きそうだなって。
俺は自分が丸く満ちて明るく光り輝く満月と違って、太陽の陰に隠れる三日月なんだと思って生きて来た。
そんな俺を牧野は選んでくれたから。
こんな俺でもいいんだって、自分を肯定できたんだ。
牧野が俺の太陽で、俺は牧野の眩い光を受けたら、三日月から満月になれる。
月の砂漠で、満月をホールドしている牧野を見れたら・・・
きっと俺はとてつもない幸せに包まれる。
自分を抱き締めてもらっているかのように感じるだろう。
「なあ、牧野。
ハネムーンは砂漠でラクダに乗ってみる・・・なんてどう?」
何かをぶつくさ呟いている牧野を見遣りながらそう提案してみる。
「・・・え?」
ゆっくりゆっくり牧野が俺の方に顔を向ける。
真ん丸な目を更に見開き、黒く濡れたように耀く双眸が零れ落ちそうだ。
「み、まさかさん・・・ 今、何て・・・?」
「だから、砂漠でラクダに乗らないか?って。」
「違う・・・ その前・・・」
「なあ、牧野。」
「違ーう! その後っ!」
「んー?」
段々調子を取り戻して来た牧野が可笑しい。
微笑ましい気持ちになるから、自然と俺も笑い顔になる。
「牧野、ハネムーンに行こうか?
勿論2人きりで。
どんなに纏わりついてきても、お袋も、双子も、あいつらも、絶対に連れて行かない。
2人っきりのバカンス。
次の正月休みにでもさ。
って、ちょっと気が早いか?」
そこまで言ったら、牧野が言葉を失って・・・
両の目からはぽろりぽろりと涙が落ちて来た。
泣かせるつもりじゃなかったのに。
手を伸ばして、親指の腹で涙を拭う。
「駄目?」
「本気なの?」
本気だよ。
本気に決まってる。
ずっとずっとこの胸で温めてきたんだ、この想いを。
「ああ。」
そう言って涙が止まるように目尻にキスをひとつ。
「あたしなんかでいいの・・・?」
「牧野がいい。
牧野じゃないと駄目なんだ。
だから・・・」
もう一度、今度は反対側の頬を伝う涙を唇で掬い上げる。
牧野の両手を握って、向かい合わせになった。
「牧野つくしさん。
美作つくしになって下さい。
そしてその笑顔でずっと俺を照らして欲しい。」
余計に涙を零し始めた牧野が、顔をくしゃくしゃにしながら、「ん・・・」と頷く。
「ありがとう、美作さん・・・」
「こちらこそ。ありがとう、牧野。」
華奢な身体をしっかりと抱き締める。
その温もりを、吐き出される熱い吐息を、服を冷やしていく涙をも受け止めて、俺の目頭もじんじんと熱くなってく。
空を仰げば、やっぱり三日月。
全く俺に相応しい夜だ。
(窓の向こう側で出歯亀していた我が家の女性3人組が、手と手を取り合って喜んでいるのは見なかったことにしておこう。
あと、その事は牧野にも内緒な。
きっと顔から火を噴くほどに照れるだろうから。)
__________
いつもお運び、有り難うございます<(_ _)>
書きかけのあきつくも終わってないのに、思いついてしまったので、1話読み切りのSS、UPです。
こんな幸せなあきつくに会いたいな♪という管理人の願望が詰まってます。
薬飲んでるのに、風邪がなかなか抜けませんー。
夜更かししてるからか?
はい、もう寝ます!

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
脈絡なく、突然あきつくのSSです。
お家デート中の2人。
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「ねえ、美作さん!
今夜はお月様がよく見えるよー!」
牧野のそんな声に誘われて空を見上げる。
食事した後に、ワインの酔いをちょっと冷まそうと、涼みに出て来た我が家のローズガーデン。
庭木の狭間に輝くのはほっそりとした三日月。
「ああ、本当だな。
三日月だ。」
「うん! 可愛いねー、三日月って。
あたし、好きなんだあ。」
三日月を見て、可愛いと思ったことがなかった。
別の思いを抱きつつ見詰めたことはあったけれど。
「真ん丸のうさぎさんがお餅つきしているお月様もいいけれど、こういうお月様も素敵だよね。」
そう言ってふんわり微笑み、空を仰いでいる牧野。
三日月を褒めているんだと分かっていても、何故だか自分の事を褒められたような気になってしまい、擽ったく感じる。
「あのさー、三日月のこういう風になってるとこあるでしょ?」
そう言いながら牧野の右手の人差し指は空中に弧を描く。
「あそこってさ、座れそう!って思わない?」
思わない。
牧野には悪いけれど、そんな風に思った事はない。
全く、一度も。
「あのカーブを背凭れにしてさー、三日月に跨って座ったら、いい感じなんじゃないかと思ってるのよ、あたしは。」
牧野つくしという女は、全く以てこちらの想像の範囲を超えている。
もう十代の夢見がちな子供じゃない。
成人した今も尚、真面目にそんな事を言ってしまう。
でも牧野だからな・・・と、俺はくすりと笑って納得してしまった。
「牧野を月に座らせてやりたいけど。
ちょっと俺にはムリそうだな、それ。
その代わりに今度、月を掴まえに行こうか?」
「え? え? え?
どうやって?」
「ふふふ、それはお楽しみ。」
「えーーーーー?」
某国の砂漠で満月を掴まえているかのような写真をSNSで見た事がある。
それを見た時に思ったんだ。
これ、牧野好きそうだなって。
俺は自分が丸く満ちて明るく光り輝く満月と違って、太陽の陰に隠れる三日月なんだと思って生きて来た。
そんな俺を牧野は選んでくれたから。
こんな俺でもいいんだって、自分を肯定できたんだ。
牧野が俺の太陽で、俺は牧野の眩い光を受けたら、三日月から満月になれる。
月の砂漠で、満月をホールドしている牧野を見れたら・・・
きっと俺はとてつもない幸せに包まれる。
自分を抱き締めてもらっているかのように感じるだろう。
「なあ、牧野。
ハネムーンは砂漠でラクダに乗ってみる・・・なんてどう?」
何かをぶつくさ呟いている牧野を見遣りながらそう提案してみる。
「・・・え?」
ゆっくりゆっくり牧野が俺の方に顔を向ける。
真ん丸な目を更に見開き、黒く濡れたように耀く双眸が零れ落ちそうだ。
「み、まさかさん・・・ 今、何て・・・?」
「だから、砂漠でラクダに乗らないか?って。」
「違う・・・ その前・・・」
「なあ、牧野。」
「違ーう! その後っ!」
「んー?」
段々調子を取り戻して来た牧野が可笑しい。
微笑ましい気持ちになるから、自然と俺も笑い顔になる。
「牧野、ハネムーンに行こうか?
勿論2人きりで。
どんなに纏わりついてきても、お袋も、双子も、あいつらも、絶対に連れて行かない。
2人っきりのバカンス。
次の正月休みにでもさ。
って、ちょっと気が早いか?」
そこまで言ったら、牧野が言葉を失って・・・
両の目からはぽろりぽろりと涙が落ちて来た。
泣かせるつもりじゃなかったのに。
手を伸ばして、親指の腹で涙を拭う。
「駄目?」
「本気なの?」
本気だよ。
本気に決まってる。
ずっとずっとこの胸で温めてきたんだ、この想いを。
「ああ。」
そう言って涙が止まるように目尻にキスをひとつ。
「あたしなんかでいいの・・・?」
「牧野がいい。
牧野じゃないと駄目なんだ。
だから・・・」
もう一度、今度は反対側の頬を伝う涙を唇で掬い上げる。
牧野の両手を握って、向かい合わせになった。
「牧野つくしさん。
美作つくしになって下さい。
そしてその笑顔でずっと俺を照らして欲しい。」
余計に涙を零し始めた牧野が、顔をくしゃくしゃにしながら、「ん・・・」と頷く。
「ありがとう、美作さん・・・」
「こちらこそ。ありがとう、牧野。」
華奢な身体をしっかりと抱き締める。
その温もりを、吐き出される熱い吐息を、服を冷やしていく涙をも受け止めて、俺の目頭もじんじんと熱くなってく。
空を仰げば、やっぱり三日月。
全く俺に相応しい夜だ。
(窓の向こう側で出歯亀していた我が家の女性3人組が、手と手を取り合って喜んでいるのは見なかったことにしておこう。
あと、その事は牧野にも内緒な。
きっと顔から火を噴くほどに照れるだろうから。)
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いつもお運び、有り難うございます<(_ _)>
書きかけのあきつくも終わってないのに、思いついてしまったので、1話読み切りのSS、UPです。
こんな幸せなあきつくに会いたいな♪という管理人の願望が詰まってます。
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夜更かししてるからか?
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