唐突だけど・・・
俺は宗教には興味がない。
それを信仰している人がいて、それによって救われていると感じている人がいる事までもを否定したりはしないけど。
俺にとってはひとつも意味がない。
だから、どんなに立派で歴史がある宗教の祈りの場を見ても、それを一から創り、更に今日まで護り抜いてきた人々の果てしも無い尽力に感服はするけれど、それに加わりたいとは思わない。
世界中にどれだけの神様がいるのか知らない。
でもそれのどれに縋ったって、俺の夢は叶わないだろう?
自分の夢を叶えられるのは自分だけ。
だから今日、俺はそれを叶えに行く。
牧野が「お気に入りの場所なの!」と、以前教えてくれた区立図書館横の小さな公園。
その公園の端っこにひとつのベンチがあって。
それに覆いかぶさるように枝を伸ばした桜の木が1本。
今日はそこで待ち合わせをした。
待ち合わせ時間よりちゃんと早く来たのに、それよりも早く牧野は来ている。
温かで柔らかい春の風が公園を吹き抜ける度に、はらりはらりと桜の花びらが牧野の周りに舞い降りる。
それを見上げて微笑みながら牧野は立っていた。
遠くからだって、横顔だって、俺には分かる。
牧野がホントに嬉しそうに笑ってるって。
そんな牧野に見惚れて。
このままずっと見詰めていたいくらいだけど、やっぱり俺の事を見て欲しいと思い直して声を掛けた。
「牧野。」
すうっと俺の方に顔を向け、「あ、類!」と弾ける様ににっこり顔になった。
「ねえ、桜!丁度満開!」
「うん。」
「すごーいよ、ここ。
見上げてると綺麗過ぎて、夢の中にいるみたい。」
そう言って幸せの溜息をほうっと吐き出しつつ、また頭上の桜を仰ぎ見ている。
そんな牧野の隣に立った。
「なんで桜ってこんなに綺麗なんだろうねー?
見てるだけで人を幸せにしちゃうなんて、すごい力を持ってるよねえ。」
牧野の言葉についくすりと笑ってしまった。
見ているだけで幸せになるもの。
それが牧野にとってはこの季節限定の花の美しさなんだとしても。
俺にとっては今目の前にいるこの牧野だ。
牧野を見ていると、いつの間にか俺も笑顔になる。
気が付くと心が安らいで、肩の力が抜けている。
他の誰とも共有できない空気が互いの間を流れてく。
この世で唯一俺の心を温める存在。
俺が幸せだと感じる時間、それはいつも牧野と共にある。
「そうなの?
あんたの方がよっぽどすごい力を持ってると思うけど。」
「あたし?
あたしなんか、何の力もないよー。
唯のOLじゃない。」
一体何を言っているのか?という体で俺を見るけど。
ホントに牧野は分かっちゃいない。
自分の事も、自分の持つ多大な影響力の事も。
こんなの『鈍感』って言葉で片付けられるんだろうか?
いや、でも、きっと、本気でそう思ってるんだ。
牧野は自分を過小評価し過ぎてる。
「あんたは唯のOLなんかじゃないよ。」
「え?」
黒く輝く瞳が一層大きくなった気がする。
牧野の髪の毛にくっついた薄いピンクの花びらをひとつ指で摘まんだ。
「高校で出会った時から、牧野は俺にとっていつも特別。」
「えー、えー、そうでしょうよ。
こんなビンボーなド庶民、見た事すらなかったんでしょ、あんた達は。」
まあ、それもそうなんだけど。
俺にとっての『特別』はそういう意味じゃない。
「俺にとってあんたは凄い力を持ってるよ。
きっと俺、牧野のいない世界では生きていけない。」
「そんな、大袈裟・・・」
「大袈裟なんかじゃないよ。
牧野がいないと、何をしてても詰まらないし。
牧野が作ってくれたご飯じゃないと、食べたいって思えないし。
家や会社じゃ俺、いっつも仏頂面してるって言われてるんだよね。
でも楽しくないんだもん、笑えない。」
ちょこんと首を傾げた牧野が俺に言う。
「でもあたしの前じゃ類はよく笑ってるよ。」
「だから。
それは牧野といるからでしょ。」
「あたし別に、類を笑わせようと面白い事言ったりやったり、してるつもりないんだけど・・・」
本当に、本当に分かってない。
まあ、そんなところも『牧野つくし』の一部だから仕方ないよね。
「うん、でも俺は牧野といると楽しいから笑うんだ。
逆を言えば、牧野以外といても楽しくない。
牧野としか笑い合えない。」
「えー、それってホント社会人として問題あるよ、類。」
「別に困ってないし。」
「いや、周りの方が困るでしょ、そんなの・・・
ご家族にも失礼。」
「じゃ、牧野がいつも隣にいてよ。
そして俺を笑わせといて。」
「無理に決まってんでしょっ、そんな事。」
ふん・・・と小さく鼻を鳴らして、顔を背けてしまった牧野。
そろそろこの不毛なやり取りに終止符を打とう。
「無理じゃない方法、ひとつあるよ。」
「えー? 何?」
疑わし気にきろっと上目遣いになった牧野に、とびっきりの笑顔で答える。
「結婚しようよ、俺達。
で、仕事も転職して。
牧野は俺の奥さんで、花沢物産の専務秘書にもなる。
これで俺、いつでもにこにこしてられるから。」
「はあっ?」
目を瞬いて何が起こっているのかを理解しようとしている。
その頓狂な表情さえ愛おしい。
「好きだよ、牧野。
これは友達の『好き』じゃない。
牧野にしか湧き起らない、特別な『好き』。
もう何年もここに持ってた。」
人差し指で、心臓の辺りをとんとん・・・と指し示す。
柄にもなく派手に音を立てている俺の心臓。
それを聞かせるのも、牧野に俺の想いを伝える手段かも知れない・・・と思う。
もう一歩牧野に近付いて。
その華奢な背中に腕を回して、俺の方に引き寄せた。
耳元に唇を寄せて、もう一度。
「好きだよ、牧野。
俺と結婚して下さい。」
暫く間があって、俺の腕の中の牧野が小さく囁く。
「はい・・・」
俺には牧野がいて。
牧野が俺に沢山の幸せをくれるから。
この先もずっと神様なんかいらないな。
俺もさっきの牧野のように桜を仰ぎ見る。
目に映るのは眩しい程に美しい桜の花々。
胸に溢れる幸せな想い。
きっとこれから桜の花を見る度に思い出すだろう。
__________
あー、もー、久々に書く類つくは筆の進みがノロノロで・・・
お誕生日終了ギリギリのUPとなりました。
ご無沙汰しております。
hortensiaです。
ここ2ヶ月弱ほど、リアルで色々あり過ぎまして・・・
お話を書けずにおりました。
自分の中に、総二郎もあきらも類もいなくなってしまう程の目まぐるしい時間が続いていたけれど・・・
そろそろそのトンネルから出られそうな気配です。
また徐々にではありますが、このお部屋にも戻って来れたらなと思っておりますので、時々覗いてやって下さいね。
お誕生日SSの筈が、お誕生日シーンではなく、プロポーズシーンになってしまいました。
でも、今回これしか書けなくて・・・
何もUP出来ないよりもマシか?と思いつつ、上げてみました。
ホントね、神様はいなくても、つくしさえいれば、類はそれを大きな力として生きていけるんでしょう。
管理人にもそんな存在が欲しいです・・・
妄想の世界だけじゃなくてさ・・・
明日からも色々な事があるでしょうけれど・・・
頑張って生きていこうと思います!ハイ!
取り敢えず、明日は何か美味しいもの食べます!←何の宣言だ?

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俺は宗教には興味がない。
それを信仰している人がいて、それによって救われていると感じている人がいる事までもを否定したりはしないけど。
俺にとってはひとつも意味がない。
だから、どんなに立派で歴史がある宗教の祈りの場を見ても、それを一から創り、更に今日まで護り抜いてきた人々の果てしも無い尽力に感服はするけれど、それに加わりたいとは思わない。
世界中にどれだけの神様がいるのか知らない。
でもそれのどれに縋ったって、俺の夢は叶わないだろう?
自分の夢を叶えられるのは自分だけ。
だから今日、俺はそれを叶えに行く。
牧野が「お気に入りの場所なの!」と、以前教えてくれた区立図書館横の小さな公園。
その公園の端っこにひとつのベンチがあって。
それに覆いかぶさるように枝を伸ばした桜の木が1本。
今日はそこで待ち合わせをした。
待ち合わせ時間よりちゃんと早く来たのに、それよりも早く牧野は来ている。
温かで柔らかい春の風が公園を吹き抜ける度に、はらりはらりと桜の花びらが牧野の周りに舞い降りる。
それを見上げて微笑みながら牧野は立っていた。
遠くからだって、横顔だって、俺には分かる。
牧野がホントに嬉しそうに笑ってるって。
そんな牧野に見惚れて。
このままずっと見詰めていたいくらいだけど、やっぱり俺の事を見て欲しいと思い直して声を掛けた。
「牧野。」
すうっと俺の方に顔を向け、「あ、類!」と弾ける様ににっこり顔になった。
「ねえ、桜!丁度満開!」
「うん。」
「すごーいよ、ここ。
見上げてると綺麗過ぎて、夢の中にいるみたい。」
そう言って幸せの溜息をほうっと吐き出しつつ、また頭上の桜を仰ぎ見ている。
そんな牧野の隣に立った。
「なんで桜ってこんなに綺麗なんだろうねー?
見てるだけで人を幸せにしちゃうなんて、すごい力を持ってるよねえ。」
牧野の言葉についくすりと笑ってしまった。
見ているだけで幸せになるもの。
それが牧野にとってはこの季節限定の花の美しさなんだとしても。
俺にとっては今目の前にいるこの牧野だ。
牧野を見ていると、いつの間にか俺も笑顔になる。
気が付くと心が安らいで、肩の力が抜けている。
他の誰とも共有できない空気が互いの間を流れてく。
この世で唯一俺の心を温める存在。
俺が幸せだと感じる時間、それはいつも牧野と共にある。
「そうなの?
あんたの方がよっぽどすごい力を持ってると思うけど。」
「あたし?
あたしなんか、何の力もないよー。
唯のOLじゃない。」
一体何を言っているのか?という体で俺を見るけど。
ホントに牧野は分かっちゃいない。
自分の事も、自分の持つ多大な影響力の事も。
こんなの『鈍感』って言葉で片付けられるんだろうか?
いや、でも、きっと、本気でそう思ってるんだ。
牧野は自分を過小評価し過ぎてる。
「あんたは唯のOLなんかじゃないよ。」
「え?」
黒く輝く瞳が一層大きくなった気がする。
牧野の髪の毛にくっついた薄いピンクの花びらをひとつ指で摘まんだ。
「高校で出会った時から、牧野は俺にとっていつも特別。」
「えー、えー、そうでしょうよ。
こんなビンボーなド庶民、見た事すらなかったんでしょ、あんた達は。」
まあ、それもそうなんだけど。
俺にとっての『特別』はそういう意味じゃない。
「俺にとってあんたは凄い力を持ってるよ。
きっと俺、牧野のいない世界では生きていけない。」
「そんな、大袈裟・・・」
「大袈裟なんかじゃないよ。
牧野がいないと、何をしてても詰まらないし。
牧野が作ってくれたご飯じゃないと、食べたいって思えないし。
家や会社じゃ俺、いっつも仏頂面してるって言われてるんだよね。
でも楽しくないんだもん、笑えない。」
ちょこんと首を傾げた牧野が俺に言う。
「でもあたしの前じゃ類はよく笑ってるよ。」
「だから。
それは牧野といるからでしょ。」
「あたし別に、類を笑わせようと面白い事言ったりやったり、してるつもりないんだけど・・・」
本当に、本当に分かってない。
まあ、そんなところも『牧野つくし』の一部だから仕方ないよね。
「うん、でも俺は牧野といると楽しいから笑うんだ。
逆を言えば、牧野以外といても楽しくない。
牧野としか笑い合えない。」
「えー、それってホント社会人として問題あるよ、類。」
「別に困ってないし。」
「いや、周りの方が困るでしょ、そんなの・・・
ご家族にも失礼。」
「じゃ、牧野がいつも隣にいてよ。
そして俺を笑わせといて。」
「無理に決まってんでしょっ、そんな事。」
ふん・・・と小さく鼻を鳴らして、顔を背けてしまった牧野。
そろそろこの不毛なやり取りに終止符を打とう。
「無理じゃない方法、ひとつあるよ。」
「えー? 何?」
疑わし気にきろっと上目遣いになった牧野に、とびっきりの笑顔で答える。
「結婚しようよ、俺達。
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牧野は俺の奥さんで、花沢物産の専務秘書にもなる。
これで俺、いつでもにこにこしてられるから。」
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「好きだよ、牧野。
これは友達の『好き』じゃない。
牧野にしか湧き起らない、特別な『好き』。
もう何年もここに持ってた。」
人差し指で、心臓の辺りをとんとん・・・と指し示す。
柄にもなく派手に音を立てている俺の心臓。
それを聞かせるのも、牧野に俺の想いを伝える手段かも知れない・・・と思う。
もう一歩牧野に近付いて。
その華奢な背中に腕を回して、俺の方に引き寄せた。
耳元に唇を寄せて、もう一度。
「好きだよ、牧野。
俺と結婚して下さい。」
暫く間があって、俺の腕の中の牧野が小さく囁く。
「はい・・・」
俺には牧野がいて。
牧野が俺に沢山の幸せをくれるから。
この先もずっと神様なんかいらないな。
俺もさっきの牧野のように桜を仰ぎ見る。
目に映るのは眩しい程に美しい桜の花々。
胸に溢れる幸せな想い。
きっとこれから桜の花を見る度に思い出すだろう。
__________
あー、もー、久々に書く類つくは筆の進みがノロノロで・・・
お誕生日終了ギリギリのUPとなりました。
ご無沙汰しております。
hortensiaです。
ここ2ヶ月弱ほど、リアルで色々あり過ぎまして・・・
お話を書けずにおりました。
自分の中に、総二郎もあきらも類もいなくなってしまう程の目まぐるしい時間が続いていたけれど・・・
そろそろそのトンネルから出られそうな気配です。
また徐々にではありますが、このお部屋にも戻って来れたらなと思っておりますので、時々覗いてやって下さいね。
お誕生日SSの筈が、お誕生日シーンではなく、プロポーズシーンになってしまいました。
でも、今回これしか書けなくて・・・
何もUP出来ないよりもマシか?と思いつつ、上げてみました。
ホントね、神様はいなくても、つくしさえいれば、類はそれを大きな力として生きていけるんでしょう。
管理人にもそんな存在が欲しいです・・・
妄想の世界だけじゃなくてさ・・・
明日からも色々な事があるでしょうけれど・・・
頑張って生きていこうと思います!ハイ!
取り敢えず、明日は何か美味しいもの食べます!←何の宣言だ?



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