今夜は仕事の後に晩御飯を一緒に食べてる。
いかにも西門さんが選びそうな、ホテルの上の階にあるフレンチレストランの窓際の席。
夜景を楽しめるように・・・とのテーブルセッティングらしく、半円形のテーブルで左手には大きなガラス窓、右手には西門さん・・・という状況だ。
ちらりと右側に視線を流してみる。
そこには西門さんが涼しい顔して座ってた。
今日は車でここまで来たから、2人ともお酒は飲まず。
食後には西門さんはコーヒーを、あたしはミルクティーを頂いた。
ティーカップを空にして、ソーサーに戻したタイミングで、目の前に西門さんの手が伸びて来てどきりとさせられ、思わず身体が固まった。
そのまま親指の腹で目の下をすうっと撫でられる。
「酷い隈作っちまって。
つくしちゃんはお疲れみたいだな。
今日はこれからスパでも行くか?」
「へ?」
「お前、好きなんじゃね?
アジアン風なリラクゼーションとか。」
「え、あ、うん、好きだけど・・・」
スパ・・・
スパね。
以前に優紀と行ったスパを思い出してみる。
色んなお風呂がいっぱいあって・・・
アジアン風の館内ウエアを着て入れる、外国のリゾートをイメージさせるリラクゼーションスペースや、低温サウナがあって・・・
カップルもいっぱいいたっけ。
うん、いいよねー、あんなの。
でも、西門さんとあんなとこ行って大丈夫なのかな・・・?
顔バレして騒がれちゃわない?
「じゃ、行くか。
メシも食ったんだし、あとはのんびりしようぜ。」
「うん、でも大丈夫なの?」
「何が?」
「あたしとそんなとこ行っても。」
「何も問題ねえだろ?」
「ふうん、そうなんだ・・・
西門さんがいいならいいけどさ。」
「ふふっ。変なヤツ。
お前って変な事気にしてるよな。
もっと気にした方がいい事いっぱいあるってのに。」
「どーいう意味?」
食って掛かったあたしを鼻で笑いつつ、西門さんは席を立って歩き出す。
何なのよ、もうっ!
ちょっとむくれながらも後に続いた。
エレベーターの箱には2人きり。
てっきりこのまま駐車場に向かうために地下に降りるんだと思ったのに、思いの外早くエレベーターのドアは開いた。
「ほら、つくしちゃん。」
あたしの腰にするりと回された手が前へと押し出すから、それにつられて歩き出す。
「どこ行くの?」
「だから、スパだろ?」
「え、ここ?」
「ああ、ここ。」
あたしの想像してたのと全然違うー!
何、これ?
エントランスからめっちゃラグジュアリーな雰囲気漂ってますけど!
受付で名前を言って、あっさりと中へ入ってく西門さん。
二の足を踏んでいたあたしも、綺麗なお姉さんがにこやかに案内してくれるので、おずおずと続いた。
あちらでご準備を・・・と入れられた部屋で、服を脱いで用意されていたフカフカのバスローブと専用の下着に着替える。
んんん? 部屋着・・・みたいなのじゃないよ。
バスローブってすぐにはだけちゃいそうじゃん!
なんか不安ーーー。
こわごわ出て行った先は、総ガラス張りの、東京の大パノラマが迫って来るトリートメントルームだった。
それも・・・ 施術されるベッドが2台並んでて。
その枕元にはブーゲンビリアのお花と揺らめくキャンドルライト。
多分あれはアロマキャンドルなんだろう。
なんかこう・・・カップル専用っていうか・・・
とっても甘ーい空気に包まれてるっていうか・・・
兎に角あたしには敷居が高い空間!
その雰囲気に圧倒された。
これはあたしの知ってる庶民でも行ける『スパ』とは全く違っていた。
「どちらのベッドになさいますか?」
なんて聞かれても、碌に返事も出来ない。
「俺が右で、コイツが左で。」
後ろから来た西門さんがあたしを追い越して、さっさと右側のベッドに寝そべろうとした。
それも、あっさりバスローブ脱いで、上からバスタオル掛けてもらってる。
それってほぼ裸じゃーーーん!
あたしの心の声、叫び出さなかっただけでも褒めてもらいたいところだけれど、勿論誰にも褒められない。
セラピストのお姉さんの美しい微笑みに、引き攣った笑いで応えつつ、いよいよあたしもベッドに上がることになった。
バスローブが身体から離れていくのが滅茶苦茶心細い。
例えバスタオルを掛けてもらってるんでも!
だってだって、このタオルの下は下着一枚っきりなんだから!
「まずスクラブで全身の角質を落としてまいります。
マッサージの強さはいかがいたしましょう?」
「えっと、お任せします・・・」
「集中的にトリートメントなさりたい部分はおありですか?」
「あ、あの、あたし肩こりが酷くて・・・」
「承りました。施術中に気になる事がございましたら、ご遠慮なくお声掛け下さいませ。」
温かいペースト状のスクラブが、セラピストのお姉さんの手によって背中や肩や首に塗り広げられていって、心地よい強さで揉まれてく。
うわあ、気持ちいい・・・
でもちょっと・・・ いやかなり恥ずかしい!
だって、今、背中丸出しだし!
それって上半身裸よ、裸!
隣のベッドには西門さんだし!
素直にこのゴージャスなスパを堪能出来ない、もやもやした気持ちどうしたらいいのー?
そう思いながら、そうっと西門さんを盗み見たら、目を瞑って大人しくスクラブを塗られてる。
あ、なんか気抜いてそうな顔してる。
この西門総二郎というオトコは、いつだって色んな仮面を被ってるから。
素の表情を見せるタイミングが少ないのだ。
でも今は何されても全然表情を変えないし、顔も作ってないように見える。
もしかして寝てるのかも知れなかった。
疲れていたのは、目の下に隈を作ってるあたしもだけど、西門さんもだったのかもしれない。
ふと、気になったことをセラピストさんに質問してみた。
「あの・・・ こちらは予約なしでも施術して頂けるんですか?」
「はい、トリートメントルームに空きがあればいつでも承ります。
ですが、お二人様でご利用いただけるスペシャルルームは非常にご好評を頂いておりまして、ご予約で埋まっている事が多いんです。」
「あ、そうなんですか・・・」
んんん?
さっきご飯の後、不意に思いついた!みたいな流れでここに来たよね?
そんな予約でいっぱいのスパ・・・
もしかして、お坊ちゃまが何らかの力で無理矢理なんとかしちゃったの?
あたし、そういうのは嫌いなのに!
「本日は特に混み合っておりまして・・・
何組もキャンセル待ちを頂く程でした。
西門様からは事前にご希望を承っておりましたので、5室あるスペシャルルームの中でも一番羨望のいいこちらのお部屋をご用意させて頂くことが出来ました。
西門様が本日最後のお客様ですので、ごゆっくりお過ごし下さいませ。」
「ありがとうございます・・・」
って返事したけど、あたしは『西門様』じゃないんだけどさ!
事前にご希望・・・
ってことは、今日このホテルのレストランでお食事したのも、このスパに来たのも、西門さんの予定通りってことなの???
「ねえ、西門さん・・・」
「西門さんってば・・・」
隣のベッドで寝ているのか、それとも狸寝入りしているのか定かじゃない西門さんに小さな声で呼び掛けたけど、やっぱり何の反応もない。
だけど、セラピストのお姉さんが丁寧な手付きで西門さんの背中をマッサージしているのを見ちゃうと、胸の中のもやもやがさっきとは違う色味を帯びてきた。
下らないって分かってる。
セラピストさんはプロなんだから。
お仕事なんだから。
そう自分に言い聞かせようと思っても、ダークな色のもやもやがどんどん湧いてくるのは止まらない。
そんなあたしには真っ白なスチームシャワーが当てられて、西門さんとの間はひと時霧のカーテンで仕切られた。
__________
バレンタインSSだけど、まだ何もバレンタインっぽくないですね。
スミマセン(^^;)
後編に続く!
んー、バレンタインかあ。
もう「面倒臭いなあ・・・」が本音。
チョコ買ったり、お菓子作ったりって、全然管理人には利が無い気がするんですもん。
枯れてる、アタシ・・・
TVで見ましたけど、世の中から義理チョコが消えそうなんですってね。
経費削減とか、手間省略なのかな?
いいと思います!
どんどん進め、その風潮!
こんなの、チョコ売りたい人達の陰謀なんですからー(笑)
とか言いつつ、バレンタインSSは書きたい矛盾!(爆)

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
いかにも西門さんが選びそうな、ホテルの上の階にあるフレンチレストランの窓際の席。
夜景を楽しめるように・・・とのテーブルセッティングらしく、半円形のテーブルで左手には大きなガラス窓、右手には西門さん・・・という状況だ。
ちらりと右側に視線を流してみる。
そこには西門さんが涼しい顔して座ってた。
今日は車でここまで来たから、2人ともお酒は飲まず。
食後には西門さんはコーヒーを、あたしはミルクティーを頂いた。
ティーカップを空にして、ソーサーに戻したタイミングで、目の前に西門さんの手が伸びて来てどきりとさせられ、思わず身体が固まった。
そのまま親指の腹で目の下をすうっと撫でられる。
「酷い隈作っちまって。
つくしちゃんはお疲れみたいだな。
今日はこれからスパでも行くか?」
「へ?」
「お前、好きなんじゃね?
アジアン風なリラクゼーションとか。」
「え、あ、うん、好きだけど・・・」
スパ・・・
スパね。
以前に優紀と行ったスパを思い出してみる。
色んなお風呂がいっぱいあって・・・
アジアン風の館内ウエアを着て入れる、外国のリゾートをイメージさせるリラクゼーションスペースや、低温サウナがあって・・・
カップルもいっぱいいたっけ。
うん、いいよねー、あんなの。
でも、西門さんとあんなとこ行って大丈夫なのかな・・・?
顔バレして騒がれちゃわない?
「じゃ、行くか。
メシも食ったんだし、あとはのんびりしようぜ。」
「うん、でも大丈夫なの?」
「何が?」
「あたしとそんなとこ行っても。」
「何も問題ねえだろ?」
「ふうん、そうなんだ・・・
西門さんがいいならいいけどさ。」
「ふふっ。変なヤツ。
お前って変な事気にしてるよな。
もっと気にした方がいい事いっぱいあるってのに。」
「どーいう意味?」
食って掛かったあたしを鼻で笑いつつ、西門さんは席を立って歩き出す。
何なのよ、もうっ!
ちょっとむくれながらも後に続いた。
エレベーターの箱には2人きり。
てっきりこのまま駐車場に向かうために地下に降りるんだと思ったのに、思いの外早くエレベーターのドアは開いた。
「ほら、つくしちゃん。」
あたしの腰にするりと回された手が前へと押し出すから、それにつられて歩き出す。
「どこ行くの?」
「だから、スパだろ?」
「え、ここ?」
「ああ、ここ。」
あたしの想像してたのと全然違うー!
何、これ?
エントランスからめっちゃラグジュアリーな雰囲気漂ってますけど!
受付で名前を言って、あっさりと中へ入ってく西門さん。
二の足を踏んでいたあたしも、綺麗なお姉さんがにこやかに案内してくれるので、おずおずと続いた。
あちらでご準備を・・・と入れられた部屋で、服を脱いで用意されていたフカフカのバスローブと専用の下着に着替える。
んんん? 部屋着・・・みたいなのじゃないよ。
バスローブってすぐにはだけちゃいそうじゃん!
なんか不安ーーー。
こわごわ出て行った先は、総ガラス張りの、東京の大パノラマが迫って来るトリートメントルームだった。
それも・・・ 施術されるベッドが2台並んでて。
その枕元にはブーゲンビリアのお花と揺らめくキャンドルライト。
多分あれはアロマキャンドルなんだろう。
なんかこう・・・カップル専用っていうか・・・
とっても甘ーい空気に包まれてるっていうか・・・
兎に角あたしには敷居が高い空間!
その雰囲気に圧倒された。
これはあたしの知ってる庶民でも行ける『スパ』とは全く違っていた。
「どちらのベッドになさいますか?」
なんて聞かれても、碌に返事も出来ない。
「俺が右で、コイツが左で。」
後ろから来た西門さんがあたしを追い越して、さっさと右側のベッドに寝そべろうとした。
それも、あっさりバスローブ脱いで、上からバスタオル掛けてもらってる。
それってほぼ裸じゃーーーん!
あたしの心の声、叫び出さなかっただけでも褒めてもらいたいところだけれど、勿論誰にも褒められない。
セラピストのお姉さんの美しい微笑みに、引き攣った笑いで応えつつ、いよいよあたしもベッドに上がることになった。
バスローブが身体から離れていくのが滅茶苦茶心細い。
例えバスタオルを掛けてもらってるんでも!
だってだって、このタオルの下は下着一枚っきりなんだから!
「まずスクラブで全身の角質を落としてまいります。
マッサージの強さはいかがいたしましょう?」
「えっと、お任せします・・・」
「集中的にトリートメントなさりたい部分はおありですか?」
「あ、あの、あたし肩こりが酷くて・・・」
「承りました。施術中に気になる事がございましたら、ご遠慮なくお声掛け下さいませ。」
温かいペースト状のスクラブが、セラピストのお姉さんの手によって背中や肩や首に塗り広げられていって、心地よい強さで揉まれてく。
うわあ、気持ちいい・・・
でもちょっと・・・ いやかなり恥ずかしい!
だって、今、背中丸出しだし!
それって上半身裸よ、裸!
隣のベッドには西門さんだし!
素直にこのゴージャスなスパを堪能出来ない、もやもやした気持ちどうしたらいいのー?
そう思いながら、そうっと西門さんを盗み見たら、目を瞑って大人しくスクラブを塗られてる。
あ、なんか気抜いてそうな顔してる。
この西門総二郎というオトコは、いつだって色んな仮面を被ってるから。
素の表情を見せるタイミングが少ないのだ。
でも今は何されても全然表情を変えないし、顔も作ってないように見える。
もしかして寝てるのかも知れなかった。
疲れていたのは、目の下に隈を作ってるあたしもだけど、西門さんもだったのかもしれない。
ふと、気になったことをセラピストさんに質問してみた。
「あの・・・ こちらは予約なしでも施術して頂けるんですか?」
「はい、トリートメントルームに空きがあればいつでも承ります。
ですが、お二人様でご利用いただけるスペシャルルームは非常にご好評を頂いておりまして、ご予約で埋まっている事が多いんです。」
「あ、そうなんですか・・・」
んんん?
さっきご飯の後、不意に思いついた!みたいな流れでここに来たよね?
そんな予約でいっぱいのスパ・・・
もしかして、お坊ちゃまが何らかの力で無理矢理なんとかしちゃったの?
あたし、そういうのは嫌いなのに!
「本日は特に混み合っておりまして・・・
何組もキャンセル待ちを頂く程でした。
西門様からは事前にご希望を承っておりましたので、5室あるスペシャルルームの中でも一番羨望のいいこちらのお部屋をご用意させて頂くことが出来ました。
西門様が本日最後のお客様ですので、ごゆっくりお過ごし下さいませ。」
「ありがとうございます・・・」
って返事したけど、あたしは『西門様』じゃないんだけどさ!
事前にご希望・・・
ってことは、今日このホテルのレストランでお食事したのも、このスパに来たのも、西門さんの予定通りってことなの???
「ねえ、西門さん・・・」
「西門さんってば・・・」
隣のベッドで寝ているのか、それとも狸寝入りしているのか定かじゃない西門さんに小さな声で呼び掛けたけど、やっぱり何の反応もない。
だけど、セラピストのお姉さんが丁寧な手付きで西門さんの背中をマッサージしているのを見ちゃうと、胸の中のもやもやがさっきとは違う色味を帯びてきた。
下らないって分かってる。
セラピストさんはプロなんだから。
お仕事なんだから。
そう自分に言い聞かせようと思っても、ダークな色のもやもやがどんどん湧いてくるのは止まらない。
そんなあたしには真っ白なスチームシャワーが当てられて、西門さんとの間はひと時霧のカーテンで仕切られた。
__________
バレンタインSSだけど、まだ何もバレンタインっぽくないですね。
スミマセン(^^;)
後編に続く!
んー、バレンタインかあ。
もう「面倒臭いなあ・・・」が本音。
チョコ買ったり、お菓子作ったりって、全然管理人には利が無い気がするんですもん。
枯れてる、アタシ・・・
TVで見ましたけど、世の中から義理チョコが消えそうなんですってね。
経費削減とか、手間省略なのかな?
いいと思います!
どんどん進め、その風潮!
こんなの、チョコ売りたい人達の陰謀なんですからー(笑)
とか言いつつ、バレンタインSSは書きたい矛盾!(爆)



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