東京駅の新幹線ホーム。
12時ちょうどののぞみ、新大阪行き。
発車メロディーが流れ始めた。
困ったような、ちょっと情けない笑い顔してこっちを見てる。
もう放さなきゃ・・・
そう思ったけれど、こんな土壇場でせり上がって来た想いのせいで、とてもその手を放せない。
忘年会の席で牧野が、年度末を待たずに引っ越しをすると言い出した。
4月から就職する会社が関西で。
研修があるからひと月早くその会社の寮に入るという。
「大学の卒業式はどうするんだ?」
と聞けば、
「あー、別に出なくてもいいんじゃない?
出席しない人の分の卒業証書は後から送られて来るんだって。」
と、サバサバしたものだ。
盛大に祝ってやろうと密かに思っていた俺達は肩透かしを食らった格好になった。
美作にも、花沢にも、もちろん西門にも関係のないところに就職したい・・・というのが牧野の希望。
別れた上に、司のお袋さんから毛嫌いされてる道明寺なんかもってのほかだし。
俺達はそんな牧野の意思を尊重し、無理に自分達の会社や家業に牧野を引き入れない・・・という暗黙のルールの下、じっと見守っていたんだけれど。
牧野がそんな遠くに行ってしまうとは誰も思っていなかったと思う。
俺なんか、勤務先は都内の何処かだろ?位に考えていたし。
気軽に会えなくなってしまうなんて思いもよらなかった。
7月になって大阪の会社に内定が出た時、牧野はスッキリした表情を浮かべていた。
それはそうだ。
希望の会社に入れると決まったんだから。
「大阪って新幹線乗ったら2時間半だよ?
そんなのすぐでしょ。
でも、一番安いのは高速バスなんだって。
知ってる? 高速バス。
あんた達なんかきっと一生乗る事ないだろうけど。
便利なんだよー。
最近のは乗り心地も良くってさ。
セキュリティも案外しっかりしてて女の子一人でも安心して乗れるんだ。
夜乗って、寝て起きたら朝には着いてるの!
何かあったらそれに乗ってこっち来たらいいし。」
全く便利じゃなさそうな、その上ペラペラのカーテンで仕切られているだけの乗り物を安全だと、真面目に勧めてくるところはいかにも牧野っぽいけれど。
これには俺も類も、少なからず渋い顔をした。
それに比べてヘラヘラしていたのは総二郎だ。
「俺は仕事でよく関西行くし。
そっち行った時には一緒に美味いモンでも食いに行こうぜ、つくしちゃん。」
「あ、西門さんがよく行くような所はあたし行きたくないだけど・・・」
「どーいう意味だよ?」
「綺麗なお姉さんを誑かす為のお店なんでしょ? そんなのヤだよ。」
「大丈夫だよ、お前はその『綺麗なお姉さん』とやらの基準からは大きく外れてるし。
ちゃーんと食いしん坊のつくしちゃんに見合った店に連れてってやるから。」
「何かそれもムカつくんですけどっ!」
まるで自分のテリトリーに牧野を迎え入れたような余裕綽綽の総二郎が忌々しい。
俺も類もどちらかというと国内の出張は無くて、東京での仕事が殆ど。
将来はどこか他所の国に駐在するっていうレールが敷かれている。
そうなったら牧野との距離は一層離れてしまい・・・
新幹線に乗ったって、高速バスに乗ったって会えなくなる。
「ツマンナイ・・・」
「どして?」
「牧野が俺から離れてっちゃうの、ツマンナイ・・・」
「別に類から離れようとしたわけじゃないんだけど。
希望の会社が大阪に本社があっただけなんだもん。
いっぱい頑張って決めたあたしの就職、類は祝ってくれないの?」
「俺、牧野と一緒に働きたかったのに・・・
昼休みに2人でランチ食べたり、昼寝したりさ。」
「それ、全然働いてないじゃん。
それに花沢に就職したとしても、そこのジュニアとお昼休みにランチしたりお昼寝したり、フツーのOLが出来る訳ないの。」
そう言われた類が年甲斐もなく膨れている。
べったり牧野に貼り付いていた類も、大学の年次が進んでからはそうもいかなくなり、慢性的な牧野不足が深刻なんだろう。
更に会えなくなると思ったら、不機嫌になるのもむべなるかな。
俺はこんな時だって、ついいつも通りの『物分かりのいい男』を演じてしまう。
「希望の会社、受かって良かったな、牧野。」
「うんっ! ありがと、美作さん。」
「文具の会社なんだろ? 」
「そう、オフィス家具から、小さいクリップや画鋲まで扱ってるんだけどさ。
その中でもユニバーサルデザインの文房具っていうのが面白いなって思って、それでこの会社希望したんだよねー。
ちょっとした工夫が使う人の『あ、これ便利!』に繋がるのがいいなって。
そういうのが、誰でも手に取れるそこここのお店に置かれてるのが嬉しいじゃない?
自分で文房具売り場に行ってもワクワクするんだ。」
「牧野は色んな経験をしてるから、そこから他の人とは違うアイデアが出せるんじゃないか?
俺、向いてると思うよ。」
「えへへ。そうかな?
最初は営業の下っ端・・・とかからのスタートだと思うんだけど。
いつか商品の企画とか、開発に携われたらなって思ってるんだ。」
「うん、頑張れよ。」
「うん、あたし頑張るよ、美作さん!」
幸せそうに明るく笑った牧野に、俺も微笑み返した。
本当は俺だって、類みたいに思ってるんだ。
牧野が離れて行ってしまうのは嫌だって。
でも牧野の未来を自分の手で阻むなんてしたくない。
そんな勇気も恣意も持ち合わせていない俺。
だからこんな当たり障りのない事しか言えないでいたんだ・・・
_________
2月28日!
あきらのお誕生日でーす。
おめでとー!
パチパチパチパチ!
それなのにこのダメな感じのタイトル(苦笑)
スミマセン、タイトルつけるの苦手過ぎて。
取り敢えず仮タイトルでつけていたものをそのまま使ってしまいました(;'∀')
まだ全然お誕生日っぽくないけれど。
なんとかまとめていきたいと思っております。
続きをお待ち下さい。
はー、毎日色々ありますね。
病人の風邪の看病していて、自分に感染って、やっと立ち直ったら、また病人の状態が良くなくなる・・・という魔のループ!
辛い・・・ 辛すぎる・・・
外に出るのも気を遣う状況ですし。
運動不足に拍車が掛かりそうです!
花粉症の薬貰いにかかりつけ医の所に行ったら、2ヶ月分処方されました。
そんな事、出来るんだね(苦笑)
皆様、1に手洗い、2に手洗い!でこの難局をどうにか乗り切りましょう~。

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
12時ちょうどののぞみ、新大阪行き。
発車メロディーが流れ始めた。
困ったような、ちょっと情けない笑い顔してこっちを見てる。
もう放さなきゃ・・・
そう思ったけれど、こんな土壇場でせり上がって来た想いのせいで、とてもその手を放せない。
忘年会の席で牧野が、年度末を待たずに引っ越しをすると言い出した。
4月から就職する会社が関西で。
研修があるからひと月早くその会社の寮に入るという。
「大学の卒業式はどうするんだ?」
と聞けば、
「あー、別に出なくてもいいんじゃない?
出席しない人の分の卒業証書は後から送られて来るんだって。」
と、サバサバしたものだ。
盛大に祝ってやろうと密かに思っていた俺達は肩透かしを食らった格好になった。
美作にも、花沢にも、もちろん西門にも関係のないところに就職したい・・・というのが牧野の希望。
別れた上に、司のお袋さんから毛嫌いされてる道明寺なんかもってのほかだし。
俺達はそんな牧野の意思を尊重し、無理に自分達の会社や家業に牧野を引き入れない・・・という暗黙のルールの下、じっと見守っていたんだけれど。
牧野がそんな遠くに行ってしまうとは誰も思っていなかったと思う。
俺なんか、勤務先は都内の何処かだろ?位に考えていたし。
気軽に会えなくなってしまうなんて思いもよらなかった。
7月になって大阪の会社に内定が出た時、牧野はスッキリした表情を浮かべていた。
それはそうだ。
希望の会社に入れると決まったんだから。
「大阪って新幹線乗ったら2時間半だよ?
そんなのすぐでしょ。
でも、一番安いのは高速バスなんだって。
知ってる? 高速バス。
あんた達なんかきっと一生乗る事ないだろうけど。
便利なんだよー。
最近のは乗り心地も良くってさ。
セキュリティも案外しっかりしてて女の子一人でも安心して乗れるんだ。
夜乗って、寝て起きたら朝には着いてるの!
何かあったらそれに乗ってこっち来たらいいし。」
全く便利じゃなさそうな、その上ペラペラのカーテンで仕切られているだけの乗り物を安全だと、真面目に勧めてくるところはいかにも牧野っぽいけれど。
これには俺も類も、少なからず渋い顔をした。
それに比べてヘラヘラしていたのは総二郎だ。
「俺は仕事でよく関西行くし。
そっち行った時には一緒に美味いモンでも食いに行こうぜ、つくしちゃん。」
「あ、西門さんがよく行くような所はあたし行きたくないだけど・・・」
「どーいう意味だよ?」
「綺麗なお姉さんを誑かす為のお店なんでしょ? そんなのヤだよ。」
「大丈夫だよ、お前はその『綺麗なお姉さん』とやらの基準からは大きく外れてるし。
ちゃーんと食いしん坊のつくしちゃんに見合った店に連れてってやるから。」
「何かそれもムカつくんですけどっ!」
まるで自分のテリトリーに牧野を迎え入れたような余裕綽綽の総二郎が忌々しい。
俺も類もどちらかというと国内の出張は無くて、東京での仕事が殆ど。
将来はどこか他所の国に駐在するっていうレールが敷かれている。
そうなったら牧野との距離は一層離れてしまい・・・
新幹線に乗ったって、高速バスに乗ったって会えなくなる。
「ツマンナイ・・・」
「どして?」
「牧野が俺から離れてっちゃうの、ツマンナイ・・・」
「別に類から離れようとしたわけじゃないんだけど。
希望の会社が大阪に本社があっただけなんだもん。
いっぱい頑張って決めたあたしの就職、類は祝ってくれないの?」
「俺、牧野と一緒に働きたかったのに・・・
昼休みに2人でランチ食べたり、昼寝したりさ。」
「それ、全然働いてないじゃん。
それに花沢に就職したとしても、そこのジュニアとお昼休みにランチしたりお昼寝したり、フツーのOLが出来る訳ないの。」
そう言われた類が年甲斐もなく膨れている。
べったり牧野に貼り付いていた類も、大学の年次が進んでからはそうもいかなくなり、慢性的な牧野不足が深刻なんだろう。
更に会えなくなると思ったら、不機嫌になるのもむべなるかな。
俺はこんな時だって、ついいつも通りの『物分かりのいい男』を演じてしまう。
「希望の会社、受かって良かったな、牧野。」
「うんっ! ありがと、美作さん。」
「文具の会社なんだろ? 」
「そう、オフィス家具から、小さいクリップや画鋲まで扱ってるんだけどさ。
その中でもユニバーサルデザインの文房具っていうのが面白いなって思って、それでこの会社希望したんだよねー。
ちょっとした工夫が使う人の『あ、これ便利!』に繋がるのがいいなって。
そういうのが、誰でも手に取れるそこここのお店に置かれてるのが嬉しいじゃない?
自分で文房具売り場に行ってもワクワクするんだ。」
「牧野は色んな経験をしてるから、そこから他の人とは違うアイデアが出せるんじゃないか?
俺、向いてると思うよ。」
「えへへ。そうかな?
最初は営業の下っ端・・・とかからのスタートだと思うんだけど。
いつか商品の企画とか、開発に携われたらなって思ってるんだ。」
「うん、頑張れよ。」
「うん、あたし頑張るよ、美作さん!」
幸せそうに明るく笑った牧野に、俺も微笑み返した。
本当は俺だって、類みたいに思ってるんだ。
牧野が離れて行ってしまうのは嫌だって。
でも牧野の未来を自分の手で阻むなんてしたくない。
そんな勇気も恣意も持ち合わせていない俺。
だからこんな当たり障りのない事しか言えないでいたんだ・・・
_________
2月28日!
あきらのお誕生日でーす。
おめでとー!
パチパチパチパチ!
それなのにこのダメな感じのタイトル(苦笑)
スミマセン、タイトルつけるの苦手過ぎて。
取り敢えず仮タイトルでつけていたものをそのまま使ってしまいました(;'∀')
まだ全然お誕生日っぽくないけれど。
なんとかまとめていきたいと思っております。
続きをお待ち下さい。
はー、毎日色々ありますね。
病人の風邪の看病していて、自分に感染って、やっと立ち直ったら、また病人の状態が良くなくなる・・・という魔のループ!
辛い・・・ 辛すぎる・・・
外に出るのも気を遣う状況ですし。
運動不足に拍車が掛かりそうです!
花粉症の薬貰いにかかりつけ医の所に行ったら、2ヶ月分処方されました。
そんな事、出来るんだね(苦笑)
皆様、1に手洗い、2に手洗い!でこの難局をどうにか乗り切りましょう~。



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