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hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
https://potofu.me/hortensia

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重なる手と手

うとうととし始めた時。
もう力も入らなくなって、投げ出したままだったあたしの左腕の内側を、ゆっくりゆっくりとなぞる温もりがある。
しなやかな指先。
温かな掌。
やっと落ち着いたはずの心臓がとくん・・・と鳴った。
そして掌と掌が重なって、まるでこうあるべきだと自然の摂理で決まっているかのように、互いの指と指が絡んで、ひとつになる。
あたしと西門さんの手は全然違う大きさなのに、何故かぴたりと重なり合うから、それがとても嬉しい。
優しく握られた手がとても温かくて、大きな安心を与えてくれる。
だからあたしは願うんだ。

今日も明日も明後日も、こうやって手を繋いでいられますように。
西門さんがあたしに沢山の想いを注いでくれているように、あたしの想いもこの手を通して西門さんに届いていますように。

きゅうっと手を握り返してから、深く息を吐いて、身体の力を抜いた。
抱えきれないほどの幸せに包まれながら、今夜もあたしは眠りに就く。


__________



ご無沙汰しておりました。
久しぶり過ぎるね(^^;)
hortensiaです。
生きてます、はい。
コロナに纏わる色々なことのせいで、お話を書く気持ちの余裕が全然持てずにおりましたが。
先日、某パイセンとお話しする機会がありまして。
パイセンって才能の塊のような方なので、ほんの些細な事からでもあっという間にネタを思い付かれるんですよ。
で、管理人は言った訳です。
「そのネタ、5行の小咄でいいから書けばいいのに!」と。
そうしたら、「オイオイ、自分もBlog放置してるじゃん。お前こそ5行でいいから書けよ!」という内なる声が聞こえてきましてね。
リハビリとして、ワンシーンずつでも書けたらUPしていこう!と思った次第です。
短く拙いものですが、お読み頂けたら幸いです。
今日の2人は「fake」完結後のいつか・・・みたいな感じでしょうか?
総二郎の左腕はつくしを腕枕中。
背中から抱き込まれたつくしの左腕を、総二郎の右手が探ってる・・・という場面です。
さあ、let's妄想!


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Without you

お前は俺がいないと生きていけないだろ?

薄らと水の膜を纏って耀く黒目がちな瞳に見詰められるのが好きだ。
俺を信じ切っている、邪気の無い眼差し。
その視線を真っ直ぐに受け止めたくて、頤先を人差し指で軽く持ち上げた。
思った通りに目が合って・・・
その視線はまるでレーザービームのように俺の心臓にも到達し、一瞬息を詰まらせたから、思い付いた台詞は口から溢れ出さなかった。
ぐるぐると自分の中を駆け巡ったその言葉を反芻するうちに、それはそっくりそのまま自分の事だと気付かされる。

俺がお前なしじゃ生きられないんだ。

いつも自分の事をそこらに生えている雑草に喩えているけど。
「牧野つくし」はこの世に唯一人。
誰も代わりになんかなれやしない。
決して失うことが出来ない、たった一つの・・・
たった一つの俺の『生きる意味』がお前なんだよ。
唯々流されるままに生きてきた俺に、この命が何の為にあるのか教えてくれた。
お前がここにいてくれるから、俺の世界に色が付く。
お前が笑うから、俺の中に温かな火が灯る。
お前に巡り会えなかったら、こんな気持ちを知る事もなかったろう。

頤を持ち上げられ、目をぱちくりとさせながら、視線で「なあに?」と問うてくる。
思わずふっと笑みが浮かんでしまう。

「好きだよ。」

そう素直に告げたら、途端にふにゃりと表情が甘く柔らかく解けていった。

「あたしもだーい好き。」

ぱふんと一気に俺に抱き付いてきた牧野を、俺もしっかりと抱き締める。

やっぱりお前なしの人生なんて、考えらんねえよ、もう。


__________



うん、何とか短いのなら書けるかも・・・と、手探りしながらのリハビリ2作目です。
今日の2人はどのお話の2人かなぁ?
春の月」シリーズの一場面・・・とかかしら?
俺様総二郎が、ちらっと素直なところを見せたら、つくしでなくてもふにゃーんと蕩けそうですよね(笑)

今日で7月終わり???
マジか???って感じです。
日々の雑事に追われて、何も建設的な事をしないまま、時は過ぎていく。
でもやっぱりこの自粛生活、煮詰まりますよね。
青い空と海でも見ながらゆっくりのんびりしたーい!とか、出来もしない事を夢想しています。


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惚れたもん負け

「ただいまー。」

一人暮らしの部屋なのに、ついつい口にしてしまうこの言葉が今日もぽろりと溢れ出た。
勿論誰もいない筈だったんだけど・・・
玄関のドアを開けたら、すーっと一気に風が通る。
それは窓が開いている証拠。
いくら金目の物なんかないって言ったって、あたしは出掛ける時に窓もちゃんと施錠していた筈。
たたきに視線を落とせば、男物の靴が一足綺麗に揃えられている。

「西門さん?」

返事はない。
買い物してきた物をキッチンのワゴンの上に載せてからそうっと部屋を覗いたら、そこにはベッドを背もたれにして、すらりとした脚を投げ出し、腕を組みながら眠っている西門さんがいた。
ちょっと調子の悪い扇風機がぎこちなく首を左右に振りつつ、西門さんのシャツと髪を揺らしてる。
突然の来訪が嬉しくて。
無防備な姿が見れたことが、ここでは心を許してくれているように思えて幸せで。
だけど疲れているのかとちょっと心配になった。

寝るならベッド使えばいいのに。
来るなんて言ってなかったのにどうしたんだろ?
忙しい中用事の合間を縫って、無理して来てくれたんだろうか?
疲れて寝てるんだろうから、そっとしておこ・・・

窓の外から聞こえてくる蝉の鳴き声が、季節の移り変わりを感じさせる。
暑い夏の日々はもう目の前だ。
あたしは2人で晩ご飯を食べれる事を願って、キッチンに立った。

自分だけの食事なら、簡単に済ませてしまうけれど。
西門さんに食べてもらうなら色々作りたい。
キャベツと豚肉の重ね蒸しは刻み生姜を載せて中華風な味付けに。
ポテトサラダはマヨネーズ半分、ヨーグルト半分で和えてさっぱりと夏向きに。
みょうがをどうしようかな?と悩んだけれど、茄子と合わせてお味噌汁にした。
トマトが沢山あったから、ふわふわ卵とトマトの炒め物も作る。

最近、これをふんわりつくるコツが分かったんだよねー。
香りが良くなる胡麻油も大事だし。

ちょっぴり味見して、美味しく出来ている事を確かめた。
もう夕暮れ時。
窓の外から聞こえてくる蝉の声は、さっきより小さくなっている。

んー、あとは何を作ろうか・・・?

そう思いながら冷蔵庫を覗き込んでいたら・・・

「お帰り、牧野。」
「うきゃっ!」

背後からの急な抱擁と、耳元に落とされた吐息混じりの低い声に驚いて、身体が一瞬縮んだようになった。

「た、た、ただいま。
って言うか、いつ来たの?
連絡くれたら良かったのに。」
「驚かしてやろうと思ったんだよ。
うっかり寝ちまったけど。」

西門さんが声をたてずに笑っているのが背中を通して分かる。少しだけ身体が震えてるから。

「お、驚いた!今驚いた!」
「そうか?じゃあまあ、いいか。」

何がいいんだかよく分からないけど。
ちょっと腕の輪が緩んだから、とりあえず冷蔵庫の扉を閉める。
それから振り返って西門さんを仰ぎ見た。
目を眇めて緩やかに口角を上げながらあたしを見下ろしてる柔和な表情。
その整った顔にうっかり見入ってしまったら、あれよあれよという間にそれが近付いてきて、ちゅっと優しいキスがひとつ舞い降りた。

「何か旨そうな味がするな。」

そう言いながらペロリと舌舐めずりしてる西門さんを認めて、途端に顔がかあっと熱くなる。

さっき味見した卵、唇に付いてたのかな?
あたしってばすっごく恥ずかしいじゃん!

顔も身体もほてほてしてきたから、西門さんの胸を押して無理矢理距離を取った。
まともに顔は見られない。
だって真っ赤になっているに決まっているから。

「ご、ご飯作ったの。
食べてく時間ある?」
「ああ、そのつもりで来たんだ。
つくしちゃんの手料理で栄養つけようと思ってさ。」
「良かった。
じゃあ、ちょっとあっちで待ってて。
すぐ支度する・・・」

そこまで言った時、顎を掬われて、片手が首の後ろに回ってがっちり固定され、さっきの数倍濃厚な口付けが落ちてきた。
何の心構えもなかったあたしはずっと翻弄されっぱなしだ。
やっと口と口とが離れて、あたしは必死に酸素を取り込もうと息を吸い込んだ。
そんなあたしに、

「俺、つくしちゃんから食べるんでもいいんだけど。」

なんて破廉恥な事を囁く男がいる。
頭おかしいんじゃないの?と思わざるを得ない。

「バカっ!エロ門っ!
あっち行って座ってなさいよ!」

と叫んだら、「はいはい。」と笑いながら大人しくキッチンを後にした。
その背中を見送って、溜息を吐く。

ああ、この人といたら、いくつ心臓あっても足りないわ。
こうやって会う度にどっきんどっきんさせられて。
あたし、早死にすると思う、絶対。

いつの間にか蝉の声は止んでいた。
外は夜の帳が下りている。
丁度晩ご飯の時間だ。
今度はテーブルの向こう側で「美味いな。」って言ってにやりと笑う顔を見て、あたしはどきりとさせられるんだろう。

その顔を早く見たいって思っちゃうんだから・・・
悔しいけれど惚れたもん負けだよね。
でも幸せでもあるんだから仕方ないや。

とびきりの笑顔になる西門さんを見る為に。
あたしは料理を運び始める。


__________



梅雨明けですね!
何だか今年は梅雨が長く感じられました。
お話の中でも梅雨明けです。
リハビリ3作目は、このお話の2人をイメージして書きました。
実際は総二郎の方が「惚れたもん負け」なんだと思うけど。
どう思います?

久々に食べ物ネタです。
つくしの庶民メシを考えるの楽しかったです(*-∀-*)


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伊達眼鏡の効能

仕事帰りに待ち合わせたレストランの奥のテーブル席。
眼鏡を掛けてる西門さんが涼しい顔して座ってた。
この頃外で会う時、西門さんの眼鏡率が高い。
目が悪い訳じゃない。
伊達眼鏡。

「ねえ、何で眼鏡かけてんの?
視力は問題ないって前言ってたよね?」

「あー、最近俺顔が売れ過ぎちまって。
外歩くと騒がれんだよ。
これかけとくと、近寄りがたい怜悧なオトコに見えるらしくて、ちょっとマシになるって訳。」

そう言って度の入っていないレンズ越しにニヤリと笑う、この男はタチが悪い。

「・・・サングラスの方が顔隠れるんじゃないの?」
「それが、サングラスかけると、俺の天性のオーラと相まって、余計にカッコよく見えちまうみたいで。
素顔同様女が寄って来ちまうんだよな。
あー、モテる男は辛いねえ。」

全然辛くなさそうにヘラヘラしてるところにイラっとする。
バーカ、バーカ、バーカ!
そしてこんな男に惚れてるあたしもバカ!

「ふうーん、タイヘンだねー。」

精一杯の嫌味を込めた言葉もあっさりスルーされた。

「まあ、今に始まった事じゃねえけど。
テレビ出る回数増えたせいもあるんだろな。」

そう。西門さんは今テレビにレギュラー番組がある。
他の番組にも番宣の為に呼ばれたりして。
今や茶道西門流の若宗匠は全国区。
ついでに『抱かれたい男ランキング』なんてのにもランクインしてる。
因みにF4の中で芸能人に混じってランクインしてるのは西門さんだけだ。
テレビの威力ってホント凄い。

右手の中指で、ちょっとズレた眼鏡のフレームを押し上げた。
そんな些細な仕草まで見入ってしまう、自分が恨めしい。
ちょっと首を傾げて、薄く笑いながらあたしを見てるこの男。
どうしてくれよう?と苦々しく思いながら睨み返したら・・・

「お前の考えてること、丸わかりだから。」

と、くくくと小さな笑い声を漏らす。

「な、何よ?
分かる訳ないじゃん、口にしてないのに。」

「お前の顔に書いてあんだよ。
『あー、あたしの彼氏ってばカッコいいなぁ。
こんなにカッコいいと、女の人がほっとかないからちょっと心配!』ってトコだろ?
だーいじょうぶだって。
俺はつくしちゃん一筋だから。」

「はあ?
何言っちゃってんの?
自惚れるのも大概にしなよね?」

「照れんな、照れんな。
分かってるって、素直になれないお前の事は、俺が一番。」

そう言ってまたニマニマ笑ってる。
「自信過剰男!」とばっさり切り捨てられないのもまた腹立たしい。
だって実際カッコいいし。
モテモテなんだろうし。
何であたしを選んでるのかよく分かんないし。

はぁ・・・と溜息を吐いたら、

「恋する乙女の溜息、いいねぇ、憂いがあって。
俺を想ってそんな溜息吐いちゃう程、つくしちゃんは俺のこと好きなんだもんなー?」

とか宣ってる。
ナントカに付ける薬はないのだ。
もう反論するのを諦めて、ミントの葉が浮かんでいるミネラルウォーターを一気飲みした。


食事して、送られて帰る車の中。
リアシートに2人並んで座っている。
今日の車は初めて乗せてもらう車種だ。
お邸には車なんていっぱいあるんだろうから・・・と深くは考えなかった。

あ、眼鏡外してる。
まあ、そうだよね。
ここなら人に騒がれることもないし・・・
伊達眼鏡なんて邪魔なだけだもんねえ。

外した眼鏡をケースに入れて、他所行きの顔から普段の顔に戻っていく。
眼鏡してる顔が嫌いって訳じゃないけど。
やっぱり素顔の方がしっくりくる。

「ん? どうした?」

横顔観察していたのがバレて、あたしは慌てて視線を他所へ逸らした。

「え? いや、別に・・・」

「やっぱりあたし、西門さんの事好きだなぁ・・・」

「言ってないでしょ、そんな事!」

ついムキになって答える。
そうすると逆に信憑性が出ちゃう事に気付いても後の祭り。

「言わなくても分かってるって。
俺も好きだよ、つくしちゃん。」

「ちょっと、やめてよ、車の中で・・・」

「前には聞こえてねえよ。
遮音性バッチリなんだぜ、このガラス。」

そう言って西門さんが何かのボタンを押した途端、透き通っていたガラスの仕切りが、一瞬でスモークガラスへと変化した。

「これで、視線も気にしなくて良くなった。
俺達、完全なる密室空間にいるってワケ。」

あ、ヤバい。
ろくな事にならない気がする・・・

身の危険を感じてちょっと距離を取ろうと、そっとシートを押して移動しようとしたけど時既に遅し。
気付いた時にはリアシートに押し倒されていた。
目の前には悪戯するのが楽しくて仕方ない!という風情で目をキラキラさせてる顔がある。
あっという間の出来事に呆気に取られて声も出ないあたしに、突然降って来た質問。

「何で眼鏡外したか分かるか?」
「へ?」

もう必要ないから外しただけでしょ?

そう言おうと思って口を開きかけた時、逆に唇を塞がれて・・・
一頻り貪られて、ぼーっとなってしまったあたしを見下ろしながらにたりと笑った西門さんがいた。

「こーいう事する為だって気付いてたんだろ?
あんなにまじまじと見詰めてくれちゃって。
ホントお前は顔に出すぎ。
期待に応えて、もっとしてやろうか?」

「そんなの頼んでないでしょー!」

つい叫んだ声も新たなキスに吸い取られ、あたしは頭の片隅で思うのだ。

ずーっと眼鏡して、すましておいてよ!
そうじゃないとあたし、身が持たないから!


__________



リハビリ4作目。
久々にバカップルを書いてみました。
伊達眼鏡総二郎は、神尾センセのTwitterやInstagramにUPされたイラストに萌え萌えして、イメージしたものです。
特に2017年10月3日のツイ画が好き(≧∇≦)
管理人はつくしよりも眼鏡総二郎Loverです。
総二郎が眼鏡を外す・・・って、何かのスイッチを入れるみたいな気がして、エロい、エロいよー!とか、1人で悶えてます(爆)
皆様はいかがですか?
素顔派?眼鏡派?サングラス派?


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夕餉に南瓜が並ぶ日

今日は10月の最後の日。
段々秋も深まって来て、夜の空気は肌寒く。
空を見上げると、冷えて澄んだ空気の中、満月が煌々と輝いている。
あいつは・・・きっと月なんか見ちゃいないだろう。
花より団子な女だから・・・
温かい茶と茶菓子で幸せな夕べを過ごしてるに決まってる。
一方の俺は、昨日、今日と、2日連続で大きな献茶会があって疲れている。
そう。とっても疲れている。
当然のように用意されている会食の席を、「少し体調が思わしくありませんので・・・」と言って辞退させてもらう程に疲れている。
なんだか身体が重いんだよ。

月末は仕事が忙しい・・・というのは前から話してあった。
そう言ったら、「そうなんだー。大変だよね。でも頑張ってね!」とにっこり笑ってはくれるけど、「寂しいな・・・」なんてしおらしい顔なんて決して見せない。
そういう女。
分かっちゃいるけど、もうちょっと甘えて欲しい・・・ってのが俺の本音。
突然のアポなし訪問。
あいつはどんな顔するんだろ?

インターホンに向かって「俺。」と一言。
部屋の中からドタドタと足音が近づいてくるのが聞こえて来て、思わずふっと笑ってしまう。
もうちょっと淑やかにはなれないもんかねえ?
勢いよく開けられたドア。
目に飛び込んでくるのは、真ん丸に見開いた目と、間抜けにぽかんと開いた口。

「ど、ど、どうしたの、急にっ!?」
「んー、ちょっと疲れちまって。
会食サボった。」
「そんな事して大丈夫なの?
具合悪いのっ?」
「ダイジョーブ、ダイジョーブ。
俺って、人望あるから。
偶に食事抜ける位、どうってことないって。」

手に持っていた箱をひょいと手渡すと、惚けた顔のまま受け取ってる。
するりと脱いだ羽織を更にその上に押し付けて、俺は勝手にリビングに入り込んだ。
ほら、思い通りだ。
テーブルの上にはお気に入りのマグカップと、小皿に載ったクッキー。
独りで夜のおやつタイムをお楽しみだったらしい。

「ねえ、どこか具合悪いの?」

まるで自分の家にいるかのようにソファに身体を預けて脱力している俺を、今度は心配そうな目で見つめてる。
ん? あれ?
さっきまで身体が重かったのが、嘘みたいに消えてるな。
食欲もなかった筈なのに、ここに来た途端急に腹が減ってきた。

「いや、別に・・・
それよりも俺、腹減ってんだけど。」
「えー? 余りものしかないよ。」
「何でもいいよ、つくしちゃんのメシなら。」
「うーん、ちょっと待っててー。」

冷蔵庫を開け閉めする音、何かを火にかけてる気配、電子レンジのけたたましいブザー音。
そんなのを聞いているのが何となく楽しい。
キッチンでちょこまか動いてる姿は、見なくたって分かる。
暫くして、盆に色々載せたあいつがリビングに戻って来た。

「来る前に連絡くれたら、もうちょっとおかず作っといたのに!」

ぶつくさ言いながらテーブルに載せてくれた夕餉は・・・
お得意の玉ねぎたっぷりの生姜焼きと、野菜炒め。
豆腐となめこの味噌汁。
いつも手作りしてる胡瓜の浅漬け。
そして南瓜の煮付け。
「イタダキマス・・・」と手を合わせてから、仄かに湯気が漂う茶碗を手にした。
またキッチンに消えていったあいつは、遠くから「召し上がれー!」と叫んでる。
何てことない料理なのに、何故か食べると幸せになる。
箸が止まらない。
今度は急須と湯飲みを盆に載せて運んで来たあいつが、俺の向かいに座って茶を淹れている。
この香りはほうじ茶だ。
ことりと置かれた俺の湯飲み。
向かい側では俺が食べるのを見守りつつ、あいつも湯飲みを手にしてる。
食べながら、ちょっと気付いたことを聞いてみた。

「なあ。」
「ん? 何?
味、変?」
「いや、味に文句はないけど。
南瓜の煮付けって、今日がハロウィンだからだったりするのか?」
「んー、だって、スーパー行ったら、南瓜が大々的に売られてて。
安かったんだもん。
それでも独り暮らしで南瓜丸ごと買わないでしょ?
半分にカットしてあるのを買ってさー。
ランタン作る訳にもいかないし。
食べるって言ったらやっぱり、煮付けが一番美味しくない?」

腹の底からくつくつ笑いが湧いてくる。
ホント、俺の予想外のコトしてくれる女だよ。

「南瓜の煮付けって・・・ 冬至じゃねえんだから。」
「何よー!
文句あるなら食べないでよ!」
「文句言ってるんじゃねえよ。
なあ、さっきの箱開けたか?」
「・・・ううん、まだ見てないけど。」
「中身、つくしちゃんの好きなパンプキンプリンだぞ。」
「えっ?」

そう、毎年秋にお前がニタニタしながら食べてる、季節限定のパンプキンプリン。
きっちり覚えてて、仕事帰りに買って来る俺に感謝しろよ。

「今夜はハロウィンだからな。」
「・・・ありがと。お仕事で疲れてるのに。」
「お前の喜ぶ顔見ると、疲れが飛ぶんだよ。」

そう言って流し目を送ってやったら、ぽっと頬を赤らめた。
チョロい。チョロすぎる。
さーて、俺はもうすっかり充電完了。
腹もいっぱいになったし、身体のだるさも何処かへ消えていき。
忙しかった2日分の疲れも霧散した。
パンプキンプリンを幸せそうにパクつくのを見届けたら・・・
次は俺のイタズラ時間の始まりかな。


__________



ハロウィンSS、短いのをちょこっとだけ・・・と思ったのに筆が滑りました(苦笑)
遅刻でUPです。

なかなか自分時間が取れないこの頃です。
生きてくだけで精一杯・・・みたいになってます、hortensiaでございます。
秋めいて来ましたねー。
今日はお天気も良かったので、思い立って午後2時間くらい、公園で日向ぼっこしてきました。
銀木犀がまだちょっと咲き残ってるのを愛でて。
どんぐり拾ったりしましたよ。
水筒に冷たいお茶を入れて行ったんですけど、これ失敗!
もう温かい飲み物持って行かないとダメでした。
冷えちゃうからあんまり飲まないで持ち帰りましたー。


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