あの人って、いっつも物凄くカッコつけてて。
自分の事、イイ男だって信じ切ってて。
女の人と見れば愛想振り撒いて、ヘラヘラして。
ホンット、どうしようもないと思うんだけど。
時々、ロダンの『考える人』みたいなポーズで動かなくなる時があるんだよね。
きっと他の人の前では見せない、弱ってるタイミング。
生きていれば誰にだって色々ある。
何も持たない身軽なあたしみたいな庶民とは違って、あの人には自分の意思とは関係なく定められた、背負わなきゃならない大きくて重たい役目がある。
それもさ、生まれた時からそれを背負うって決まってた方がまだ良かったと思うのよ。
最初はお前には関係ない事だ・・・って感じに扱われてたのに、後から一番手が急にいなくなったから仕方なくお前を後釜に据えるって言われたら、誰だっていい気はしない。
この人のねじ曲がってる性格は、多分そういう境遇から生まれちゃったもので。
自分じゃどうにも出来ないところもあったんだろう。
突然背負わされた役目は、時には重たすぎてへばるだろうし。
たとえ口にしなくても、うんざりしたり、逃げ出したくなる時もあるんだろう。
そんな時、あたしの横に来て黙りこくって座ってるから。
なんか護ってあげたくなっちゃうんだよね。
頭をぎゅうっと抱き締めて。
「息苦しいだろ。」って言われてもぎゅうっとし続けて。
何の根拠もないけれど、「大丈夫だよ。」って耳元で囁くの。
大丈夫。
大丈夫だよ。
あなたが疲れた時はいつだってあたしはこうやって抱き締めるから。
重たい物もあたしの前だけでは降ろしていいよ。
疲れた顔を晒したって、あたしはあなたに幻滅したりしない。
痛いところがあるなら、あたしがそこを摩るから。
ほら、手当てっていうでしょ?
手を当ててるだけで、ちょっと痛いの逃げてくんだから。
ホントだよ。
あなたは馬鹿にするかも知れないけど、ホントなんだもん。
あなたが元気ないと、あたしにまで伝播してしょんぼりしそうになるから、そこはちょこっと気合を入れて笑ってみる。
知ってる?
笑顔ってうつるんだよ。
あたしが笑ってると、あなたもそのうちくすっと笑ったりするんだから。
気付いてないかも知れないけどさ。
あたしはあの人にとって『保健室』みたいなものなんだと思う。
他の世界から切り離された場所。
ひと時だけ身体を休める為のスペース。
病んでいたり、どこか傷んでいたりしても、根治はさせてあげられない。
ただちょっとだけ手当てする。
それしか出来ない『保健室』。
だけど弱っている時のあの人は、あたししか知らない秘密の姿。
あたしだけの、あの人なんだ。
だからその秘密をあたしに分けてくれるのなら、ずっとあの人の『保健室』でいたい・・・なんて願いを抱いてしまう。
あたしは少しはあなたの役に立ててるかな?
あなたがあたしのところでほんのちょっとでもエネルギーをチャージ出来てるならいいなって思ってる。
あたしはあなたが安らげる『家』にはなれないし。
ちゃんと診察してお薬を出す『病院』にもなれない。
一時凌ぎの『保健室』だから。
「大丈夫。」って言ってあげる事しか出来ないの。
そっと笑い掛けて、あなたの笑顔を引き出す事しか出来ないよ。
よく右の掌で半分顔を覆って、親指と中指でこめかみをぐりぐり押してるよね。
「目が疲れてんだよ。」ってあなたは言うけど。
ホントはちょっぴり泣きたい気分なのかな?って想像してる。
誰の前でも絶対に泣いたりしないだろうあなたの、涙を溢す代わりの仕草。
涙を流せたら、少しだけ胸の痞えが減るかもしれないのに。
絶対にそんな事はせずに全部を1人で抱えてる。
そんな姿見てると代わりにあたしが泣きたくなるよ。
泣いたらあなたがびっくりするだろうから、無理して笑い顔を浮かべるけど。
今日の『保健室』は、爽やかな季節が巡って来た公園の芝生の上だ。
ポカポカと暖かくて、だけどお日様ギラギラではなくて程よい日差し。
日向ぼっこに最適な日。
突然連れて来られたから何の準備も無くて、近くのコンビニでレジャーシートとお握りとお茶を仕入れた。
あたしが広げたレジャーシートの上に座ったら、あの人は勝手にあたしの太腿を枕にして寝転がってる。
背が高いから、身体半分シートからはみ出てるし。
「ねえ、シートから脚はみ出ちゃってるけど?」
「別に気にしねえ。」
値の張る服に草の汁でも付いたらどーすんのよ?とかあたしは気になっちゃうけど・・・。
当の本人が気にしないって言うから、ほっとくことにする。
顔がお日様の方を向いていて眩しいのか、瞼を閉じてる妙に整った顔。
それを見下ろしながら、今日はどうしたのかな・・・と考えた。
弱っている理由は絶対に教えてくれないから、考えたってちっとも分からないんだけど。
サラサラの前髪を、指先でそっと梳く。
何度かそうしているうちに、「擽ってえよ。」と手を掴まれて、動きを遮られた。
だってさ、ずっと触ってみたいって思ってたんだよ、その前髪に。
サラサラだけど、ちょっと柔らかそうなあなたの黒髪。
今だけなら触れてもいいかな・・・って思っちゃったんだもん。
触ってくれと言わんばかりに目の前にあったら、誰だって手を伸ばすでしょ。
「なあ、つくしちゃん?」
「んー? なによ? 」
「そろそろ付き合えよ。」
「ん? どこに?
さっきここに来たばっかじゃん。」
「そうじゃねえよ。
ったく、鈍感女はこれだから・・・」
「何よ? 人のこと馬鹿にしてんの?
この頭、地面にゴーンって落っことされてもいいわけ?」
「いいわけないだろ。
俺が言ってんのは、お前と俺が付き合おうって意味。」
「・・・いやいやいやいや、意味わかんないし。」
「もう十分だろ、こんなプラトニックな間柄は。」
「はあ??? 何言ってんだか・・・
プラトニックな間柄も何も、西門さんとあたしの間には何もないし。」
「お前なあ・・・
この長きに亘って、2人で過ごして来た時間を何もなかった事にしてんじゃねえよ。」
のそりと身体を起こして、きろりとこっちを睨む。
物凄い眼光。
いや、そんな事されたって、あたしは混乱するばっかりだよ。
「俺はさ、お前じゃないとダメだから。
一緒にいるならお前がいい。」
真っ直ぐな視線と、ダイレクトな言葉があたしに突き刺さる。
でも言われている言葉をすんなり受け取るのには大いなる戸惑いがあった。
黙りこくったまま、じーっと黒い瞳を見返す。
その瞳は嘘や冗談を言っている人のものには見えない。
あたしは単なる『保健室』で・・・
それ以上にはなれないって思ってたのに。
突然何を言い出しちゃってんの?
「あたしは・・・」
「お前は俺のサンクチュアリなんだよ。」
サンクチュアリ?
鳥獣の保護区とか、禁猟区とか。
そんな意味だったよね。
前に行った広い公園は大きな池があって、そこにはバードサンクチュアリって書いてある看板が立ってた。
あたしがサンクチュアリ?
あたしは池??
どーいうこと???
「あ、お前、妙な事考えてんだろ。
顔に出てるからな。」
「妙な事って何よ?」
「まーたとんでもない勘違いでもしてるんだろ?
サンクチュアリってのは、安らげる場所って事だからな。
ホントに意味分かってんのか?」
ああ、なるほど。
野鳥が安心して羽を休める場所=バードサンクチュアリね。
って事はさ・・・
この人にとっての安らげる場所があたし・・・って事?
突然色んな情報が頭の中に飛び込んでくるから、きちんと理解するところまで辿り着けない。
ぐちゃぐちゃの思考を何とか理路整然とさせたくて、何度も話の最初のやり取りから思い起こしてみた。
それでもやっぱり懐疑的になってしまう。
だって相手は女の敵・西門総二郎だから。
「・・・ねえ、揶揄ってんの?」
「それならもっと面白い事言うだろうが。」
「それじゃあ本気って事?」
「はあ・・・ こんなストレートな言葉が理解出来ないって、鈍感通り越してるよな、お前は。」
そうなのだ。
さっきから随分と真っ直ぐな言葉で話し掛けられている。
でも今迄はこんな真摯な態度のこの人を見た事がないから、俄には信じられない。
返事を返さないあたしに痺れを切らしたのか、飛び切り尊大な態度で宣言された。
「俺の女にしてやる。
良かったな、つくしちゃん。
長い長いシングルライフはこれで終わりだ。」
「はあ?そんなの願い下げっ!
誰が好き好んでこんな不埒な男と付き合うっていうのよ?」
売り言葉に買い言葉。
口からぽんぽんボールの様に言葉が飛び出す。
「言っとくけど、女遊びなんてとっくの昔に止めてるからな!」
「そんなのどうやって分かれって言うのよ?
知らないよ!」
「あー、うるせえ、うるせえ、うるせえ!」
ぐいっと両腕を掴まれて引っ張られて。
抵抗する間もなく身体が前のめりになる。
そこにいきなり顔が近付いてきて・・・
唇と唇が重なる感触。
戦意喪失したあたしの目の前で、にやりと笑う人がいる。
「お前も正直になれば?
俺にキスされてときめいたろ?」
悔しいけどその通り。
胸のドキドキが止まらない。
文句ももう口から出てこない。
「降参・・・」とだけ呟いたら、ぎゅーっと抱きしめられて、耳に囁き声が忍び込む。
「牧野、俺と付き合って。」
こくりと小さく頷いたら、嬉しさが胸に広がって、じわじわと温もりがあたしを満たす。
本当は心のどこかで願ってたんだよ。
あなたの『保健室』以上の存在になれる事を。
________________
本日拙ブログは開設7周年を迎えました。
(ん??? 7周年・・・で多分合ってるよね???)
いつも遊びに来て下さる皆様の応援があって、ここまで続けて来れました。
本当に有り難うございます。
これからも書けたり書けなかったりするかと思うのですが、細々とでも続けていけたらなあと思っていますので、どうぞ宜しくお願いします。
「サンクチュアリ」ってタイトルで何か書きたいな・・・とずっとタイトルだけ温めていたんですけど。
書いてみたらこんな擽ったい2人になりました。
保健室もある意味サンクチュアリだなあと思うんですよね。
つくしは気付いてないけれど。
総二郎は気付いてた。
そんな2人の始まりの場面でした。
書いていて、総二郎は正直に気持ちをぶつけるのに、つくしはなかなか心を開かないもんだから苦労しました。
まあ、仕方ないかー?(苦笑)

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
自分の事、イイ男だって信じ切ってて。
女の人と見れば愛想振り撒いて、ヘラヘラして。
ホンット、どうしようもないと思うんだけど。
時々、ロダンの『考える人』みたいなポーズで動かなくなる時があるんだよね。
きっと他の人の前では見せない、弱ってるタイミング。
生きていれば誰にだって色々ある。
何も持たない身軽なあたしみたいな庶民とは違って、あの人には自分の意思とは関係なく定められた、背負わなきゃならない大きくて重たい役目がある。
それもさ、生まれた時からそれを背負うって決まってた方がまだ良かったと思うのよ。
最初はお前には関係ない事だ・・・って感じに扱われてたのに、後から一番手が急にいなくなったから仕方なくお前を後釜に据えるって言われたら、誰だっていい気はしない。
この人のねじ曲がってる性格は、多分そういう境遇から生まれちゃったもので。
自分じゃどうにも出来ないところもあったんだろう。
突然背負わされた役目は、時には重たすぎてへばるだろうし。
たとえ口にしなくても、うんざりしたり、逃げ出したくなる時もあるんだろう。
そんな時、あたしの横に来て黙りこくって座ってるから。
なんか護ってあげたくなっちゃうんだよね。
頭をぎゅうっと抱き締めて。
「息苦しいだろ。」って言われてもぎゅうっとし続けて。
何の根拠もないけれど、「大丈夫だよ。」って耳元で囁くの。
大丈夫。
大丈夫だよ。
あなたが疲れた時はいつだってあたしはこうやって抱き締めるから。
重たい物もあたしの前だけでは降ろしていいよ。
疲れた顔を晒したって、あたしはあなたに幻滅したりしない。
痛いところがあるなら、あたしがそこを摩るから。
ほら、手当てっていうでしょ?
手を当ててるだけで、ちょっと痛いの逃げてくんだから。
ホントだよ。
あなたは馬鹿にするかも知れないけど、ホントなんだもん。
あなたが元気ないと、あたしにまで伝播してしょんぼりしそうになるから、そこはちょこっと気合を入れて笑ってみる。
知ってる?
笑顔ってうつるんだよ。
あたしが笑ってると、あなたもそのうちくすっと笑ったりするんだから。
気付いてないかも知れないけどさ。
あたしはあの人にとって『保健室』みたいなものなんだと思う。
他の世界から切り離された場所。
ひと時だけ身体を休める為のスペース。
病んでいたり、どこか傷んでいたりしても、根治はさせてあげられない。
ただちょっとだけ手当てする。
それしか出来ない『保健室』。
だけど弱っている時のあの人は、あたししか知らない秘密の姿。
あたしだけの、あの人なんだ。
だからその秘密をあたしに分けてくれるのなら、ずっとあの人の『保健室』でいたい・・・なんて願いを抱いてしまう。
あたしは少しはあなたの役に立ててるかな?
あなたがあたしのところでほんのちょっとでもエネルギーをチャージ出来てるならいいなって思ってる。
あたしはあなたが安らげる『家』にはなれないし。
ちゃんと診察してお薬を出す『病院』にもなれない。
一時凌ぎの『保健室』だから。
「大丈夫。」って言ってあげる事しか出来ないの。
そっと笑い掛けて、あなたの笑顔を引き出す事しか出来ないよ。
よく右の掌で半分顔を覆って、親指と中指でこめかみをぐりぐり押してるよね。
「目が疲れてんだよ。」ってあなたは言うけど。
ホントはちょっぴり泣きたい気分なのかな?って想像してる。
誰の前でも絶対に泣いたりしないだろうあなたの、涙を溢す代わりの仕草。
涙を流せたら、少しだけ胸の痞えが減るかもしれないのに。
絶対にそんな事はせずに全部を1人で抱えてる。
そんな姿見てると代わりにあたしが泣きたくなるよ。
泣いたらあなたがびっくりするだろうから、無理して笑い顔を浮かべるけど。
今日の『保健室』は、爽やかな季節が巡って来た公園の芝生の上だ。
ポカポカと暖かくて、だけどお日様ギラギラではなくて程よい日差し。
日向ぼっこに最適な日。
突然連れて来られたから何の準備も無くて、近くのコンビニでレジャーシートとお握りとお茶を仕入れた。
あたしが広げたレジャーシートの上に座ったら、あの人は勝手にあたしの太腿を枕にして寝転がってる。
背が高いから、身体半分シートからはみ出てるし。
「ねえ、シートから脚はみ出ちゃってるけど?」
「別に気にしねえ。」
値の張る服に草の汁でも付いたらどーすんのよ?とかあたしは気になっちゃうけど・・・。
当の本人が気にしないって言うから、ほっとくことにする。
顔がお日様の方を向いていて眩しいのか、瞼を閉じてる妙に整った顔。
それを見下ろしながら、今日はどうしたのかな・・・と考えた。
弱っている理由は絶対に教えてくれないから、考えたってちっとも分からないんだけど。
サラサラの前髪を、指先でそっと梳く。
何度かそうしているうちに、「擽ってえよ。」と手を掴まれて、動きを遮られた。
だってさ、ずっと触ってみたいって思ってたんだよ、その前髪に。
サラサラだけど、ちょっと柔らかそうなあなたの黒髪。
今だけなら触れてもいいかな・・・って思っちゃったんだもん。
触ってくれと言わんばかりに目の前にあったら、誰だって手を伸ばすでしょ。
「なあ、つくしちゃん?」
「んー? なによ? 」
「そろそろ付き合えよ。」
「ん? どこに?
さっきここに来たばっかじゃん。」
「そうじゃねえよ。
ったく、鈍感女はこれだから・・・」
「何よ? 人のこと馬鹿にしてんの?
この頭、地面にゴーンって落っことされてもいいわけ?」
「いいわけないだろ。
俺が言ってんのは、お前と俺が付き合おうって意味。」
「・・・いやいやいやいや、意味わかんないし。」
「もう十分だろ、こんなプラトニックな間柄は。」
「はあ??? 何言ってんだか・・・
プラトニックな間柄も何も、西門さんとあたしの間には何もないし。」
「お前なあ・・・
この長きに亘って、2人で過ごして来た時間を何もなかった事にしてんじゃねえよ。」
のそりと身体を起こして、きろりとこっちを睨む。
物凄い眼光。
いや、そんな事されたって、あたしは混乱するばっかりだよ。
「俺はさ、お前じゃないとダメだから。
一緒にいるならお前がいい。」
真っ直ぐな視線と、ダイレクトな言葉があたしに突き刺さる。
でも言われている言葉をすんなり受け取るのには大いなる戸惑いがあった。
黙りこくったまま、じーっと黒い瞳を見返す。
その瞳は嘘や冗談を言っている人のものには見えない。
あたしは単なる『保健室』で・・・
それ以上にはなれないって思ってたのに。
突然何を言い出しちゃってんの?
「あたしは・・・」
「お前は俺のサンクチュアリなんだよ。」
サンクチュアリ?
鳥獣の保護区とか、禁猟区とか。
そんな意味だったよね。
前に行った広い公園は大きな池があって、そこにはバードサンクチュアリって書いてある看板が立ってた。
あたしがサンクチュアリ?
あたしは池??
どーいうこと???
「あ、お前、妙な事考えてんだろ。
顔に出てるからな。」
「妙な事って何よ?」
「まーたとんでもない勘違いでもしてるんだろ?
サンクチュアリってのは、安らげる場所って事だからな。
ホントに意味分かってんのか?」
ああ、なるほど。
野鳥が安心して羽を休める場所=バードサンクチュアリね。
って事はさ・・・
この人にとっての安らげる場所があたし・・・って事?
突然色んな情報が頭の中に飛び込んでくるから、きちんと理解するところまで辿り着けない。
ぐちゃぐちゃの思考を何とか理路整然とさせたくて、何度も話の最初のやり取りから思い起こしてみた。
それでもやっぱり懐疑的になってしまう。
だって相手は女の敵・西門総二郎だから。
「・・・ねえ、揶揄ってんの?」
「それならもっと面白い事言うだろうが。」
「それじゃあ本気って事?」
「はあ・・・ こんなストレートな言葉が理解出来ないって、鈍感通り越してるよな、お前は。」
そうなのだ。
さっきから随分と真っ直ぐな言葉で話し掛けられている。
でも今迄はこんな真摯な態度のこの人を見た事がないから、俄には信じられない。
返事を返さないあたしに痺れを切らしたのか、飛び切り尊大な態度で宣言された。
「俺の女にしてやる。
良かったな、つくしちゃん。
長い長いシングルライフはこれで終わりだ。」
「はあ?そんなの願い下げっ!
誰が好き好んでこんな不埒な男と付き合うっていうのよ?」
売り言葉に買い言葉。
口からぽんぽんボールの様に言葉が飛び出す。
「言っとくけど、女遊びなんてとっくの昔に止めてるからな!」
「そんなのどうやって分かれって言うのよ?
知らないよ!」
「あー、うるせえ、うるせえ、うるせえ!」
ぐいっと両腕を掴まれて引っ張られて。
抵抗する間もなく身体が前のめりになる。
そこにいきなり顔が近付いてきて・・・
唇と唇が重なる感触。
戦意喪失したあたしの目の前で、にやりと笑う人がいる。
「お前も正直になれば?
俺にキスされてときめいたろ?」
悔しいけどその通り。
胸のドキドキが止まらない。
文句ももう口から出てこない。
「降参・・・」とだけ呟いたら、ぎゅーっと抱きしめられて、耳に囁き声が忍び込む。
「牧野、俺と付き合って。」
こくりと小さく頷いたら、嬉しさが胸に広がって、じわじわと温もりがあたしを満たす。
本当は心のどこかで願ってたんだよ。
あなたの『保健室』以上の存在になれる事を。
________________
本日拙ブログは開設7周年を迎えました。
(ん??? 7周年・・・で多分合ってるよね???)
いつも遊びに来て下さる皆様の応援があって、ここまで続けて来れました。
本当に有り難うございます。
これからも書けたり書けなかったりするかと思うのですが、細々とでも続けていけたらなあと思っていますので、どうぞ宜しくお願いします。
「サンクチュアリ」ってタイトルで何か書きたいな・・・とずっとタイトルだけ温めていたんですけど。
書いてみたらこんな擽ったい2人になりました。
保健室もある意味サンクチュアリだなあと思うんですよね。
つくしは気付いてないけれど。
総二郎は気付いてた。
そんな2人の始まりの場面でした。
書いていて、総二郎は正直に気持ちをぶつけるのに、つくしはなかなか心を開かないもんだから苦労しました。
まあ、仕方ないかー?(苦笑)



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