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hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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この部屋、ペット禁止です! 1

うーーーーー。
何でこんな事になっちゃったのー?

今あたしの部屋では黒毛のグレーハウンド・・・ならぬ、黒髪の西門総二郎が寛いでる。
人のテリトリーでこんなリラックスしないで欲しい。
「つくしちゃん、俺コーヒー飲みてえ。」とか、「なんか腹減らね?」とか、気侭に要求してくるし。
何で?
何でここにいついてる訳?
それも利き手の右手が包帯ぐるぐる巻き状態だし・・・。

話は3日前に遡る。
仕事帰りにスーパーに寄って、食材を買い込んで。
晩ご飯の献立と明日のお弁当のおかずを考えながら帰って来た。

今夜はカレーを食べたいけど、お弁当にするには向いてないからなー。
半分は肉じゃがにしよっか?
そうしたら、今夜は豚コマカレーとサラダ。
カレーには温泉卵載せちゃお!
で、明日のお弁当のおかずは卵焼きと肉じゃが、プチトマト、ブロッコリーでいいな。
よし!

お弁当の中身を決めておかないと、朝バタバタしてしまう。
なので事前に頭の中のお弁当箱におかずを並べるイメージをする。
一度そうしておくとスムーズにお弁当作りが出来るのだ。
そんな事をしながら薄暗くなった道を歩いて帰って来た。
今あたしが住んでいるのは、1階が大家さん経営のクリーニング屋さんで、2階に大家さん一家のお住まい、3階に3部屋だけ賃貸の部屋がある、こじんまりとしたマンションだ。
広さの割にお値段が安くて、下に大家さんがいるという安心感が決め手だった。
クリーニング屋さんの裏手に階段があるのだけれど、今夜はその階段横のメールボックスの下に座り込んでる人影があった。
黒っぽい服を着てる男の人みたい。

うっ・・・!
あんな所に誰かいる!
怖っ! 嫌だなー。
こんな時間にかくれんぼしてる子供・・・の訳ないし。
あたしの隣のお部屋の人を訪ねて来たけど留守だったから待ってる・・・とか?
いや、もしかしたら誰かのストーカーだったりして。
兎に角、触らぬ神に祟りなしよ。
さーっと通り過ぎて、ぱっと部屋入っちゃお!

そう決めてなるべくそちらを見ないように早足で歩いて階段のステップに足を掛けた時、名前を呼ばれた。

「牧野・・・」
「ひゃあっ!」

むっくり立ち上がった黒い服の男の人は、何と西門さんだった。

「に、西門さんっ?
何してんの、そこで?」
「お前を待ってたんだろ。
携帯何度鳴らしても出ねえから・・・」
「えっ? ごめん、会社出てから携帯バッグに入れっぱなしで、ちっとも気にしてなかった。
って、暗い所に蹲ったりして怪しい人だと思われるでしょ!
何でそこにいたのよ?」
「いや、ちょっと・・・
理由説明するから、とりあえず部屋入れてくんない?」
「何で乙女の部屋にこんな時間から上がり込もうとするのよ?
やだよ。
話あるなら、どっかそこら辺のファミレスででも聞くからさ。」

そう言った時、西門さんの右手がやけに白いのに気が付いた。
左手で右腕を庇う様に支えながら立っている。

「ちょっとこれ痛えんだよ。
何か冷やす物とかあると助かるんだけど。」

そう言われてまじまじ見てみれば、右手は包帯でぐるぐる巻きになっている。

「どしたの、それっ?」
「んー、ちょっと・・・」
「あー、もー! 何なのよ?
仕方ないなぁ・・・ 落ち着いたらすぐ帰ってよ?」
「ハイハイ。」

あたしが階段を上がると、少し間隔を空けて西門さんが上ってくる足音が聞こえる。
鍵を開けて廊下を振り返ると、なんだか神妙な顔して立ってる西門さんがいた。

「どーぞ。」

手が痛そうだから、あたしがドアを押さえて、先に西門さんを玄関に入れると、「どーも。」と呟いてするりとその身を滑り込ませる。
片手で靴脱げるの?と心配していたら、あっさり脱ぎ捨ててさっさと中へと歩き出した。

「ちょっと!
靴くらい揃えなさいよ!」
「手が痛えんだよ。勘弁してくれよ。」
「んーーー!もうっ!」

仕方なしに自分の靴と西門さんの靴を並べて、後を追いかけた。
リビングダイニングとは名ばかりの6畳間のソファにばふっと身体を投げて、はあ・・・と溜息吐いてる。
そんなに手が痛むのかしら?

「つくしちゃん、ジャケット脱ぎたいんだけど手伝ってくんない?
なんか上手く脱げなさそ。」

そう言いつつ身体を捩ってる。
お坊ちゃまは手が掛かるったらありゃしない。

「先に痛くない手の方から抜くのよ。」
「そうしようとしてんだけどさ。」

仕方ないから左側の袖口を引っ張って脱がせに掛かる。

「ほら、肘曲げて。」
「んー。」

するっと左腕が抜けたら、今度は痛むんであろう右腕を気遣いながらそうっと引っ張ると、ジャケットはあたしの手の中にやってきた。
高級に決まってるジャケットを皺にならないようにハンガーに掛ける。
それから右手を冷やす物を探すべく、冷凍庫を開けた。
夏の夜、寝苦しい時に使ってたアイス枕を見つけて、タオルで包む。
いつもなら軽口を叩いてばっかりの西門さんが今夜は妙に静かだ。
ソファの肘掛けのところにアイス枕を置いて、「ここに手載せて。」と言うと、素直に従ってる。
何の文句や揶揄いの言葉も言わない西門総二郎って気持ち悪い。

「ねえ、どうしちゃったの?」
「えー、あー、んー・・・ まあ、色々あってな。」
「理由、説明してくれるんじゃなかったっけ?」
「そんな一言では説明出来ねえよ。」
「・・・・・・ご飯は?」
「メシ? 食ってねえけど。」
「とりあえずご飯作る。
庶民のご飯に文句つけるなら、もう理由も聞かずに叩き出すから。
分かったわね!?」
「ハイハイ。」
「はいは1回!」

そう言ったら、やっとくすりと笑ったから、ちょっとだけ安心する。
予定通り豚コマカレーを作る事にした。

利き手が使えないなら、スプーンかフォークで食べ易くないとダメだよね?
サラダは全部一口サイズにカットした野菜で作るか・・・

お米を炊いてる間にカレーを作って、カレーを煮込んでる間にサラダを作った。
最後にお水を少し入れたマグカップに卵を割り入れて、爪楊枝で何ヶ所か刺して電子レンジで40秒。
即席温泉卵も出来た。
2人分のカレーとサラダをテーブルに並べると、西門さんがひょこひょこやってくる。

「左手で食べれそう?」
「箸じゃねえから何とかなるんじゃねえの?
いただきまーす。」
「・・・いただきます。」

案外器用にスプーンを操って、庶民の味の代表格でもあるカレーを食べてるお坊ちゃま。

「何か飲む?」
「ビールなんかあんの?」
「怪我してるんでしょ?
お酒なんかダメだよ!
牛乳か麦茶かアイスティー!」
「じゃあアイスティー。」

朝冷蔵庫に入れていった水出しアイスティーのポットを取り出す。
お気に入りのグラスに注いで、まず西門さんの前に。
それから自分の前にことりと置いた。
黙々とカレーを食べてる西門さんをじーっと見詰める。

んーーー?
何でこんな事になってんの???


_________



暗くて悶々とした話ばかり書いていると、おバカな話を書きたくなる衝動が(笑)
Blog開設7周年のもう一つのSSです。
ドタバタでちょっと笑えるのを書ければなーと思います。

7周年のお祝いのお言葉や、沢山の拍手有り難うございました。
とても嬉しかったです!
これを糧にまた頑張ります!


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この部屋、ペット禁止です! 2

「おー、食った、食った。ご馳走さん。」

綺麗にお皿を空にした西門さんが、ごくごくとアイスティーも喉に流し込んで空のグラスをテーブルに置いたから、晩ご飯の時間はこれで終わりになった。
腹ごしらえも済んだし、そろそろこんな事になってる理由を知りたい。

「お粗末様でした。」
「結構美味かったぜ、庶民のカレーも。」
「当たり前でしょ!
短時間で作ってはいるけど、隠し味も色々入れてるの。
単なるカレーじゃないのよ!」
「ふうん、そうなのか。」
「そうよ!」

野菜を炒める時にはまず低温でニンニクのみじん切りと生姜のみじん切りを炒めて、それからそこに玉葱と人参を入れてさ。
コクを出す為にピーナッツバターをひと匙、冷凍してストックしてる飴色に炒めてある玉葱のみじん切りも入れている。
煮込む時には軽く火で炙ったローリエの葉っぱと赤ワインをたらーり。
って、違う、違う!
カレーの話なんかじゃなくて!
西門さんの話よ!

「ところで。そろそろ聞かせてよ。
今夜ここに来た理由を。」
「んんん・・・
まあ、端的に言うならば・・・、家を出て来た。」
「はあっ?」
「だから、家出して来たんだよ。」
「何で家出すんのよ? 大の大人が!」
「え? まあそこは色々あって。」
「色々って何よ?」
「色々は色々だよ。」

どうやらすんなり喋る気はないらしい。
それなら質問を変えよう。

「じゃあ、何でウチなのよ?
もっと居心地良いところいっぱいあるでしょ?
類んちとか、美作さんちとか、だーい好きなホテルのお部屋とか!」
「それ、全部見張られてる場所な訳。
類んちもあきらんちも、行った途端にバレちまう。
ホテルもきっと手を回されてる。
俺って案外狭い世界で生きてんだよな・・・」

いや、あんた達は随分とすごーい世界に生きてると思うけど。
自分の事って過小評価しがちよね、人間って。

「じゃあ、西門さんの何人いるか知らないけど、今お付き合いしてる女の人んちにでも行けばいーじゃん!」
「俺、女の部屋なんて行ったことねえぜ。
面倒じゃん、そういうの。
その子の所帯臭いとこ見たくないしさ。
外で会って外で別れんの。
そういうキレーなオツキアイ、心掛けてんだよね。」
「・・・所帯臭くて悪かったわね。」
「牧野はそれが売りだろ?」
「あたしは何も売りにしてません!
これがあたしの日常なのよ!」
「そんな怒んなって。
俺、別にお前の事ディスってる訳じゃないぜ。」
「じゃあその、女の部屋なんか行かない西門さんは、どうしてあたしの部屋に来るのよ?」

イライラしながら話してるあたしと、飄々としてる西門さんにかなりの温度差。
テーブル挟んで向こうとこっち、まるで違う空気が流れてる。

「だからこそ盲点なんだよ、ここは。」
「はあ? 意味分かんない。」
「女の部屋になんか行かない俺が隠れられる場所って言ったら、一応女である牧野、お前のとこだって閃いちゃったんだよ。」
「一応じゃなくて、歴とした女なんですけど?」
「うんうん、歴とした鉄パン履いてる女未満のお子ちゃま牧野な。」
「大きなお世話だっつーの!
あたしはね、ホントに好きになれる人と出会える迄、そーいう事したくないだけなの!
西門さんみたいに、毎晩取っ替え引っ替えしてる人には分からない価値観だろうけど!」
「いやいやもう、ここまで来たらとことん大事にしたら良いと思うぜー。
もしかしたらこのまま天然記念物になれるかもよ?」
「なるか、馬鹿っ!」

小馬鹿にする様にくくくと笑ってるのがムカつくわ!
あたしだって別に後生大事に抱えてる訳じゃない。
ただ単に相手に出会ってないだけだ。
道明寺と付き合って、長い遠距離恋愛の末にお別れして。
それ以降、特に何もないまま生きて来ちゃった。
なんだかんだと忙しかったのよ。
就職活動に卒業論文、それにバイト。
就職したらしたで、初めての事尽くしで毎日目が回るような日々だった。
就職して3年目。
今やっと生活のペースが整って来たところなのよ。
恋愛はこれからするのよ、これから!

「という訳で。
暫くここに匿って欲しいんだよ。」
「いやいや、『という訳で』ってどんな訳よ?
無理だしっ!」
「お前、俺の話聞いてねーの?
だから、ここはノーマークの安全地帯だから、俺が隠れてるのが西門にはバレないんだよ。
ゴタゴタ収まる迄家には帰れないし。
頼むよ、つくしちゃん。」
「何言ってんの?
ケダモノを家に置きたい人なんていないよ!」
「あー、ダイジョーブ、ダイジョーブ。
俺、お前の鉄パンにも、その中身にもそそられねーから。」
「そっちが大丈夫でもこっちが大丈夫じゃないのよ!
失礼も大概にして!」

そこまで言ったら急に西門さんさんが顔を歪めた。

「あー、痛えな・・・
牧野、あのひんやりする奴もう一度くれよ。」
「わざとらしいんだっつーの!」
「ホントに痛えんだよ。」

渋々冷凍庫でまた冷やしていたアイス枕を出してテーブルに置くと、西門さんは目をつぶって「あー、これ気持ちいいな。」なんて言いつつ右手を冷やしてる。

「その手、どうしちゃったの?」
「んーーー、ちょっとな。」
「包帯してあるけど、中どうなってんの?
血が出たの?
それとも火傷?」
「いや、湿布剥がれないように止めてんの。」
「何処かにぶつけたとか?」
「まあ、そんなようなモンかな。」
「誰かを殴ったとか?」
「・・・・・・。」

無言は肯定って事なのよね、きっと。
そういう事は上手くかわして生きてくタイプのはずなのに。

「ケンカしたの?」
「ケンカ・・・じゃねえけど。
ちょっと度が過ぎたっつーか・・・」
「商売道具でしょう、その手。
なんて事してんのよ?」
「だから、それもあって家には帰れねえんだよ。」
「自業自得っ!」
「助けてくれって、つくしちゃん。
ここしか安全な場所が俺にはねえんだよ。」
「お金あるんだから、どっか遠くに旅行でも行けば?」
「カード使ってもバレる、銀行で金引き出してもバレる。
八方塞がりなの、俺。」
「類か美作さんにでも助けて貰えばいーじゃん。
花沢にも美作にも、西門さん1人くらい匿える別荘とかいっぱいあるでしょ?」

そう言ったら、西門さんの口からふうーと大きな溜息が溢れた。
物憂げな顔付きしてる。
意気消沈している西門総二郎、とてもレア。

「この手がなー。
痛くてろくに使えないから、1人きりでどこかに篭ってる訳にもいかねえんだよ・・・」

どうやら何かお家でゴタゴタがあったらしい。
そしてそこで誰かを殴って飛び出して来たみたい。
殴った相手って・・・
まさかお家元じゃあないよね?
怖過ぎて聞けないけど。

「な、頼む!
少しの間でいいから、俺を匿ってくれ!
ペットを飼ってるとでも思えばいーじゃん。
お前の邪魔しないように気を付けるから。」
「気を付けるったって、部屋はここと寝室と2つしかないのよ。
誰かさんの豪邸と違って、客間とかないから!」
「分かってるって。
俺このソファで大人しくしとくから。
黒毛のグレーハウンド飼ってるとでも思ってくれよ。
何なら毛並みの良さを確かめる為に撫でてくれたっていいぜ。」
「・・・飼わないし。撫でないし。」
「そーか? 結構触り心地いいと思うけど、俺。」

そんなこと言って自分のボディを見下ろしてる。
全身黒っぽい服に身を包んでいる今、黒毛の犬に見えない事もない・・・訳ないでしょ!
怪しい色気を纏った成人男子にしか見えないわよ!
あーあー、世の中の女の人はこんな男に騙されちゃって・・・
ホント罪作りよね。

「・・・変な事したら速攻で類か美作さんに電話するから。」
「しねーよ。安心しとけ。」
「ここではあたしが法律よ!
あんたの常識、通用しないからねっ!」
「分かってる、分かってる。
庶民の生活、ちょっと体験してみるわ。」
「ゴタゴタが落ち着いたらとっとと出てってよ?」
「ああ、勿論。」

にたあっと笑った顔に、胸が騒つく。
あたし、もしかして、もしかしなくても、とんでもない事許してしまったんじゃない?


_________



なるべくおバカな話にするべく、頭を捻っております(笑)


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この部屋、ペット禁止です! 3

目覚まし時計が鳴る前に目が覚めていたから、煩くならないようにアラームを切った。
あまり音をたてないように着替えをして。
用心の為に掛けていた鍵をかちりと捻って寝室のドアを開けた。
そーっと隣の部屋に入ると、西門さんは床に転がってブランケットに包まって寝ている。
ウチのソファなんかで西門さんが寝れる訳なかった。
だってサイズが全然足りない。
一応2シーターだけど、横になるとあたしだってはみ出しちゃうくらいだから。

はあ・・・ 何でウチなんかに来たのよ?
ちゃんと寝られる所に行けばいいのに・・・

顔洗って、ささっとお化粧してからキッチンに立った。
朝ご飯とお弁当を作らないといけない。
朝はいつもパンとサラダとヨーグルトと紅茶・・・位なんだけど。
西門さんはそれだと足りないかも?と思って、オムレツを焼いて、冷蔵庫に入っていたソーセージもボイルして添えた。
お弁当のおかずも予定変更して、オムレツの端っこと、ソーセージ、それと昨夜のカレーの材料を流用して煮ておいた肉じゃがを詰める。

よし、朝ご飯とお弁当はこれでオッケー。
だけど、この人は今日はどうするつもりだろ?
着替えもないし、諦めてお邸に帰るのかな?

そう思った時背後から声がした。

「ふぁーーー、おはよ、つくしちゃん。」

盛大に欠伸しながら、キッチンの入り口に立ってる身長180超えのオトコは邪魔くさい。

「おはよ・・・
あたしはこれから朝ご飯食べるけど、西門さんはどうする?」
「んー、俺まだ食えないな。
コーヒーだけでいいや。」

そ、それは暗にあたしにコーヒー淹れろって言ってんのよね?
朝は忙しいのにー!

作った朝ご飯は、西門さんの分はラップをかけて、自分の分はそのままテーブルへ運ぶ。
パンを焼いてる間にお湯を沸かして、ヨーグルトを冷蔵庫から出して、それから自分の紅茶と西門さんのコーヒーを淹れた。
あたしが朝ご飯を食べてる向かい側で、眠たそうな顔したままコーヒーのマグに口を付けてる西門さんがいる。
「床硬くて、よく寝れなかった・・・」と言って、首を回してコキコキ鳴らしてる。

「もうさ、さっさとお邸に帰りなよ。」
「帰れねえよ、まだ。
何も解決してねえし。」
「じゃあ、せめてちゃんと眠れる所に行きなよ、ウチじゃなくて。」
「あ、お前、俺を追い出したいんだろ?」
「だって、ここに居たって不便なだけでしょ?
寝るとこないし、着替えもないし。」
「んーーー。」

ご飯を食べ終わって、あたしは自分の分のお皿を手早く洗って、歯を磨いた。
最後にルージュを引いて、髪の毛を整えたら、もう家を出る時間だ。
テレビを観ているんだか、観ていないんだか、ぼーっとしてそうな西門さんの前に合鍵をぱちりと音をたてて置いた。

「それ、合鍵。
出て行く時それで鍵かけて、郵便受けから部屋の中に落としておいてね。分かった?」
「んーーー? うん・・・。」
「じゃあねっ! あたし、仕事行くから!
ご飯は勝手に食べなさいよっ!」
「んーーー。気を付けてな。」

なんだかまるで同棲してるみたいでこっ恥ずかしいじゃん!
素直に「行ってきます! 」なんて言えないよ!

「お邸に帰るのよ? 分かったわねっ?」

そう念押しして、部屋を飛び出した。
いつもの電車に乗るには駅までダッシュしなきゃいけない時間だ。

もうっ!あのオトコのせいでっ!

一所懸命走った甲斐があって、電車には間に合った。
あたしの部屋では妙な事が起こっていたけど、会社に着いてしまうといつも通りの1日が始まっていく。
お昼休みにお弁当を食べつつ、このオムレツのメイン部分は食べられたのかな?とチラっと考えた。
携帯をチェックしても何の連絡も入っていない。
きっと庶民生活は自分には無理・・・と悟って、部屋を出て行ったのだろう。

そうそう、お坊ちゃまには無理よ。
自分の身の周りの事、なーんにも出来ない人に、庶民の暮らしなんて出来ないって。
一晩で身に染みたでしょ。

朝、芋虫のように床に転がっていたのを思い出して、ちょっぴり笑ってしまった。
午後も忙しく働いて、少しだけ残業して。
いつも通りご飯の献立を考えながら帰る。

昨日のカレーでカレーうどん!
うん、絶対今日はカレーうどん!
それがいい!
明日のお弁当は・・・ 余り物を詰めたらどうにかなるかな。

お出汁を効かせたカレーうどんをイメージして、それを楽しみに帰って来たあたしの部屋。
もういないんだと思ってたのに、玄関ドアを開けたら灯りが点いてる!
えええっ?と思いつつ中に入ると、「お、お帰り、つくしちゃーん。」と暢気な声が聞こえてきた。

「帰ったんじゃないの?」
「帰れねえって言ったろ?」
「それに何で着替えてんの?」
「あー、風呂入ってサッパリしたくて。
それには着替えがいるだろ?
だからすぐそこのスーパー行ってみた訳。
結構楽しかったぜ、庶民風の買い物。
売り場の女の子があれこれ選んでくれてさー。」

スーパーでも愛想振り撒いたんかいっ!

「で、とりあえずの服と、布団一式買ったから。
今日からちゃんと寝られるぜ。」
「はあっ?」
「5000円以上買ったら配達料無料とかで、すぐに配達してくれた。
スーパーってのも便利なんだな。」

ホントに庶民体験が楽しかったらしくえらくご機嫌だ。

「カード使ったら足がつくんじゃなかったの?」
「スーパーってなんでもやっすいのなー。
全然手持ちの現金で足りた。
お前、知ってた?
布団一式買って、15000円だってよ。信じられるか?」

えー、えー、勿論信じられますよ。
庶民はいつもそんな布団で寝てるわよっ!
だけど、大威張りで買ったその布団一式は見当たらないけど・・・
もしかして・・・?

寝室のドアをバーンと開けると、そこには布団セットが積まれていた。
へにゃへにゃと身体から力が抜けそうになる。

「ちょっと! 何で乙女の寝室に勝手に入るのよ!?」
「だってこっちに布団置いとくと狭くてやってらんねえじゃん。」
「だからって、人の寝室に入っていいと思ってんの?」
「お前さあ、ペットがちょっと部屋の中歩いたからって、そんな目くじら立てんなよ。」
「ペットはスーパー行ったり、布団買ったりしないのよっ!」
「つくしちゃんのペットは留守番もするけど、買い物も行けるんだなぁ。
あ、冷蔵庫の中身も補充しといたぞ。宿賃代わり。」

そう言われて冷蔵庫を開けると、ありとあらゆるものがぎっちり詰まってた。
数種類のお酒まで冷やされてる。

「気が利くいいペットだろ、俺って。」

嬉しそうにキラキラ目を輝かせながら、褒められるのを待ってる。
尻尾ぶんぶん振ってお座りして撫でられるのを期待してるワンコみたいに。
だけどあたしは褒めないわよ!

「・・・ねえ、手持ちのお金ってどんぐらい持ってるの?」
「俺、普段あんまり大金持ち歩く習慣ないんだよ、大体カードだから。
昨日も急に飛び出してきたから・・・ 多分50万くらい?」
「その現金でホテルでもどこでも行けるでしょーが!」
「ああ? だってスイート泊まったら2泊でなくなる・・・」
「シングルルームに泊まるのよ!」
「ま、いーじゃん。もう布団買ったし。
着替えも手に入れたし。
なあ、俺、洗濯機回して、自分の服洗って干したんだよ。凄くねえ?」

こーのお坊ちゃまめ。
一般庶民はそんな事当たり前にやってるっつーの!

「洗濯機使い方分かんねえと思ったけど、スマホで検索したらすぐ分かったし。
洗濯って30分もかかんないで終わるモンなんだな。案外早いよなー。
干したら夕方までには服乾いてたし。」

初めてのお使いならぬ、初めてのお洗濯。
これでホントに褒めてもらえると思ってんの、このオトコは?

「つくしちゃんの服も一緒に洗ってやろうかと思ったけど・・・」
「ええっ?????」

ちょっと待ってよ、下着とか、西門さんには絶対見られたくないものがランドリーボックスには入ってた筈で・・・

「男の物と一緒に洗われるの嫌かと思って止めといたわ。
ほら、良く聞くじゃん、『お父さんの服は別に洗う―。』とか。
『息子の服はそれだけで洗濯機回します。』とか。」
「どこで聞くのよ、そんな事?」
「テレビで観た。」
「類じゃないんだから・・・」
「俺だって多少はテレビ位観るって。」

お父さんの服は別に洗う・・・は、オヤジ臭を嫌ってる女子高生の言葉だと思われるし。
息子の服はそれだけで洗う・・・は泥だらけになって帰って来る男子に閉口しているお母さんの嘆きだと思うけど。
兎も角あたしの服、洗われなくて良かった・・・

「なあ、つくしちゃん、腹減った・・・
あとさ、右手に湿布貼って、包帯巻いてくんねえ?
自分じゃ出来ねえんだよ。」

ああ、なんて手が掛かる・・・
あたし、ペットなんていらないのに!


________________



筆が滑って少々増量でお送りしています。
削るところが分からなかった・・・(苦笑)


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この部屋、ペット禁止です! 4

牧野が司と別れてそろそろ4年。
そうなると、俺と類とあきらの水面下での牧野争奪戦・・・というか、互いの足の引っ張り合いも4年になる訳で。
あの鈍感女には俺達F3のアプローチが全く効果がないからこんな事になっている。

べたーっと牧野にしな垂れかかった類の隣で、

「あー、類の隣は落ち着くなぁ。
やっぱり類はあたしの一部だからかな?」
「牧野は俺の全てだよ。」
「くふふ、何言ってるのよ、類。冗談ばっかり。」
「俺、冗談なんか言ったことないのに・・・」
「類って冗談言う時も真顔だから、冗談言ってるように聞こえないもんねー。」

とか言ってあっけらかんと笑ってる。

あきらが精一杯の決め顔で、

「なあ牧野、ウチの双子の姉になる気はない?」

なんて口説いても、

「あー、美作さんちの双子ちゃん、ホント可愛いよねえ。
遊びに行くたんびに『つくしお姉ちゃま』『つくしお姉ちゃま』って懐いてくれて。
あたし弟しかいないから、すごく嬉しいんだよねー。
また遊びに行かせてねっ!」
「いや、そうじゃなくて・・・」
「夢子さんもさ、『私をお姉さんだと思ってね!』って言って、いつも優しくして下さって。
美作さんち行くとあたしホント癒されるー。
浮世離れした夢の国って感じ!」
「お袋、図々し過ぎないか、それ・・・。」
「えー? だって夢子さんは可愛くってお若いもん。お姉さんでも違和感なーい。」

なんて満面の笑みを浮かべて、あきらのプロポーズ紛いの言葉を踏み躙ってみたり。

俺に至ってはこれまでの悪事のせいで、全く相手にされていない。
近付いたら眉間に皺を寄せられたりするレベル。
もう昔みたいな放蕩生活にはピリオドを打ったのだが、そんなのも信じてもらえないし。
牧野の中からは性欲の権化・エロ門という刷り込みが消えないのだ。
あれは性欲・・・というよりも、ゲームだとか、憂さ晴らしという類のものだったんだけど。
そんな事、牧野に分かる訳もない。
俺も25歳を過ぎて、西門ではそろそろどこから嫁を取るか・・・という候補選びが始まっている。
まだまだ若輩者でそれどころでは・・・と牽制してはいるが、牧野を口説き落とすのに失敗したり、時間が掛かり過ぎたりすると、誰かに勝手に決められた嫁を娶る羽目になるから、このところ俺は少々焦っていた。

忙しい日程を熟してやっと取れた1週間の休み。
俺は牧野との距離をぐっと詰めるべく、とある作戦を決行する事にした。
類とあきらが国内にいないのは確認済み。
こんなチャンスは滅多に巡って来ないだろう。
1週間丸々邸に帰らなくてもいいように、頼まれていた原稿の依頼や、仕事関係のメールを纏めて一気に片付けた。
その為にパソコンのキーボードを叩き過ぎたのか、マウスをクリックし過ぎたのか、右手が軽い腱鞘炎っぽくなった。
腫れぼったくてじんわりとしたイヤーな痛みがある。
俺が少し痛そうにしていたのに気付いた内弟子の1人が湿布を貼って、更に丁寧に包帯まで巻いてくれたもんだから、右手はやたらと仰々しい感じになった。
でも何だかこれも小道具として使えそうな気もする。
1週間牧野の部屋に転がり込んで、一気に形成逆転!
奴等から一歩どころか二歩も三歩も先を行ってやる!
それが俺の考えた作戦だ。
俺の事を警戒してはいるけど、情に脆い牧野の事。
上手いことアプローチするとガードが下がりそうな気もしてる。

1週間旅行に行くから・・・と言い置いて邸を出て来た休暇初日の月曜日。
ホントは旅行なんかじゃないから俺は手ぶら。
財布と携帯くらいしか持って来ていない。
それも計画の一部だ。
夕方になって俺は牧野に電話した。
それが全く通じない。

残業してんのか、携帯なんか見ずにぼけっと歩いてんのか・・・?

仕方ないから牧野の部屋の近くで待ち伏せする事にした。
帰る家を失くした手負いの男を演じつつ、部屋に入れてくれと言ってみる。
予想通り難色を示した牧野に、右手の包帯をアピールしたら、第一の難関はクリア。
案外あっさり部屋に通された。
事情を教えて・・・と言う牧野に言葉を濁しながら受け答えしていると、俺が西門でゴタゴタを起こし、誰かをぶん殴って邸を飛び出して来た・・・という勘違いストーリーを勝手に作り上げてくれたもんだから、これ幸い・・・と乗っかった。
西門から捜索されてる風を装ったが、勿論誰にも探されていない。
だって俺は旅行中ってことになってんだから。
ペットとして置いてくれるように泣きついたら、このお人好しは渋々ながらも受け入れた。

マジかよ?
計画が上手くいき過ぎて、逆に俺、怖くなるぜ?

まあ、流石に鉄パン処女の警戒心は直ぐには全面的には解けず。
夜はブランケット1枚渡されてリビングに放置された。
寝室の鍵をガチャリと閉めて、

「ここ無理矢理開けたら警察呼ぶからね!」

とドア越しに叫ばれる始末。
そんなしょぼい鍵、ちょいちょいっと開けられそうだけれども、それをやったら牧野の心のドアが固く閉じること間違いなしだから。
大人しくリビングの床に寝転がって眠れない夜を明かした。

2日目の火曜日は、牧野の留守中に、歩いて2分の所にある大きなスーパーで必要な物を買い求めた。
寝具売り場で布団を一式。
衣料品売り場で当面必要な衣類を。
そして食料品売り場で食べ物・飲み物をごっそりと。
どれもこれも安過ぎて、いつも牧野が色んな物を「高過ぎる!」とキーキー言っている理由がちょっと分かった気がする。
牧野の部屋に戻って来て、昨夜は浴びれなかったシャワーを浴びて、買って来た服に着替えた。
牧野がいつも使っているフローラルなシャンプーの香りが自分からしてくるのが擽ったい。
ついでに牧野を驚かせてみようと、脱いだ服を洗濯機で洗ってみた。
それを適当にベランダに干してから・・・
俺は牧野のベッドにダイブした。
昨夜硬い床ではよく眠れなかったから、重たく感じていた身体が一気に解れていく感覚。

これ、アイツにバレたら殺されるな・・・

そんな事を思いながら、仄かに甘い牧野の香りに包まれて眠る至福の時間。
夕方、牧野の終業時間に合わせてセットしておいたアラームで目を覚ました。
今夜牧野にここを追い出される訳にはいかないから、バレない様にベッドを整える。
自分で干した洗濯物を取り込んでみると、どれもパリパリに乾いていた。
流石にアイロンをかけたいとまでは思えなかったので、そのままテキトーに畳んでみる。
たったそれだけの事だが、俺、やれば出来んじゃん?というちょっとした達成感が湧いてくるから不思議だ。
類もあきらも絶対やらない事をやっている・・・という優越感もあるかも知れない。
帰宅した牧野に色々報告してみたが、呆れるやら、むくれるやら、慌てるやら、反応はあんまり芳しくない。
それでも、俺が買い込んだ食材で美味い手料理を作ってくれるんだから、本気で怒ったりはしていないみたいだ。
仕事で疲れていたのか、食後にソファで転寝を始めた牧野にそっと寄り添って座ってみると、こてん・・・と俺の方に頭が傾いた。
その重みを楽しみながら、次にどんなアプローチをしたらいいのか考える。
じんわりと伝わって来る体温に誘われ、もっと牧野に触れたくてうずうずする指先。
だけどそれをぐっと堪える。

まだ駄目だ。
もっと牧野が俺に心を開いてくれなきゃ・・・

そう思って自重したというのに、転寝から目覚めた牧野は

「ぎゃっ!何してんのよ!?」

なんて叫ぶんだ。

まだ何もしてねえよ!
俺はお前に好かれたくて、こんな事してんだ!
一時の衝動で、全てをフイにしてたまるか!
鉄パン処女の堅いガードを、ちょっとずつ切り崩してやる!
お前・・・、覚悟しとけよ!

と思ったけど、口には出さずに大人しくしておいた。
従順なペットの振りをして。


________________



疲れて寝てしまって・・・
0時に更新できませんでしたー。

総二郎のターンが来ましたよ。
結構・・・腹黒いですかね(苦笑)
総二郎の手の心配をして下さった方がいらっしゃいましたが、怪我でもないし、ひどく痛くもないみたいですよー。
作戦、作戦。


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この部屋、ペット禁止です! 5

牧野の部屋に転がり込んで3日目。
ここでの生活にも段々慣れて来た。
牧野の態度も少し軟化してきた・・・ような気がする。
手早く朝食を用意しながら、自分が会社に持って行く弁当を詰めている牧野の背中を、ほんのりと幸せを感じながら見ていた。
いつか2人で暮らせたら、毎朝こんな風景が見られるのかも知れない・・・なんて想像したりして。
出来立てのベーコンエッグやサラダが載ったプレートが俺の目の前と、向かいの席に運ばれてきて、「イタダキマス・・・」と少しだけ硬い響きの声を出す牧野と一緒にそれを食べる。

ふふん、新婚家庭みたいじゃーん?
勿論俺は結婚した事なんかねえから、勝手なイメージの中の新婚家庭と重ねてるだけだけどな。

「つくしちゃん、今日は何時頃帰って来る?」
「・・・何でそんな事聞くのよ?」
「いや、特に深い意味ねえけど。」
「そろそろお邸に帰ろうとは考えてないの?」
「ちょーっとまだ無理だな、うん・・・。
状況が好転してねえからな。」
「それってさ、ただここに隠れてるだけで好転するものなの?」
「時間が必要な事ってあるだろ?」
「まあ、そうかもしれないけど・・・」
「で? 今日何時まで仕事なんだ?」
「んーと、水曜日は定時退勤日だから。
残業無しで帰って来るよ。」
「ふうん、了解。」
「あ! ちょっと! あたしの留守の間に女の人連れ込んだりしないでよね!」
「何を想像してるんだか・・・ そんな事するワケねえだろ。」
「西門さんは信用ならないもん! !」

お前のイメージの中の俺、どんだけ鬼畜なんだよ?

「今はつくしちゃんのペットですから。
行儀よくしてると思うぜ?」
「どーだかね?」
「昨日だってイイコで待ってたろ、自分の服洗濯までして。」
「・・・・・・ご馳走様でした。あたし、仕事行かなきゃ。」

俺の言葉は聞こえなかった振りをして、そそくさと席を立ち、ジャージャー派手に水音立てて、食器を洗ってる牧野。
一度洗面台で身だしなみを整えてから、「じゃあねっ!」と言い捨てて、玄関で靴を履いている。
見送る為に玄関前に立ちながら、「気を付けて行って来いよ。」と極上の微笑みを浮かべて言ってみると、昨日は返って来なかった「行ってきます・・・。」が小さな声ながら聞こえてきて、もっと俺の頬が緩んだ。
ドアがぱたんと閉まって、口からは小さな嘆きが零れ落ちる。

あーあ、行っちまった。
ホントは一日中一緒にいたいのに。
あいつが俺と時間を過ごす為に会社をサボるだなんて、してくれる訳もないから仕方ねえけど・・・。
そーだ、今日は帰り、会社まで迎えに行ってやろう!
それでそのまま2人で何処かで美味いメシでも食って・・・
何かあいつが喜びそうな事して・・・
デートだよ、デート!
牧野がウットリするようなデートをしようじゃないか!

15000円の布団をフローリングのリビングに敷いた時の寝心地は当然良くはなく・・・
寝返りを打ってばかりでしっかり眠れていない。今日もこっそり牧野のベッドで一眠りしてから動き出す事にした。
この寝室にあるセミダブルのベッドは、牧野が大学を卒業して就職の為にこの部屋に越してきた時に、引越し祝いと就職祝いを兼ねて、俺と類とあきらで贈ったものだ。
いつもベッドの上でゴロゴロしてるのが好きな類が選んだだけあって、寝心地はかなりいい。
更に何となく牧野の温もりが残ってる気がするところに身体を滑り込ませると、毎晩牧野が使っている上掛けが俺の事も優しく包み込んでくれて、はぁ・・・と溜息が漏れた。
辺りはふわんと牧野の残り香がしていて、ちょっと心臓がとくとく鼓動を早めてくのを自覚しながら目を瞑る。

んー、どこか店予約するか?
メシの前にぶらっと歩くなら何処がいい?
なんか、こう・・・、さりげなく何か買ってやったり・・・したいんだよなぁ。
夕焼けが綺麗に見えるとことか、喜びそうだよな、あいつ。
海辺に行くか、展望台か、それとも景色の良いレストランか・・・

そんな事を考えているうちに眠気がやってくる。
次に目が覚めた時は昼過ぎだった。
喉の渇きを感じて冷蔵庫を開けると、俺用の昼飯がラップを掛けてしまわれているのが目に入る。

朝忙しいそうにしてんのに・・・
あいつってホントにお人好しだよなぁ。

そう思いながらも口角が上がっているのを自覚した。
皿を取り出してみると、メモが貼り付けられている。
『レンジで温め1分半。サラダは蓋付きのガラス容器。ドレッシングはドアポケット。ご飯は自分でよそって食べて。』
俺は1人で留守番してる子供か?と苦笑いする程細かい指示が書いてあった。

いや、これはもう、愛だよな、愛!
あいつ、俺の事気にせずにいられなくなってんじゃん!
俺がちゃんと食べてるか心配なんだろ?
少しは牧野の気を引けてるって事だよな!

単なる居候、手が掛かるペットじゃなくて。
それよりも牧野に思われている気がして嬉しくなる。
今迄「エロ門!」と毛嫌いされてた事を考えれば、大きな進歩なのだ。
上機嫌で用意されていた昼飯を指示通りに食べて。
それから牧野の部屋を出た。
2人で何処を歩こうか、どの店に連れて行こうか・・・と考えながら街を歩いてみる。
女と出掛ける前に下見に行く・・・なんてした事は一度もないけれど、今日は牧野を笑顔にしたくて、あれこれ考えてしまう俺がいた。

この通りを2人で歩いてウインドウショッピングなんかしてみて・・・
で、あの店でちょっとした物でも買ってやって・・・
あそこの45階のレストランで、夕陽が落ちてくところと夜景を見ながら食事する。
よし、これでいくぞ!

牧野の終業時間に間に合うように、牧野の会社が入っているビル迄やって来た。
エントランス横にカフェがあったので、テラス席に陣取って中から出て来るだろう牧野を待つ。
氷が入り過ぎてちょっと味が薄いアイスコーヒーを飲みながらエントランスを見張っていると、牧野が同僚の女の子と2人で楽しげに話しながら出て来るのが見えた。
ここで声掛けたら怒るかも・・・と分かってはいるけれど、俺の存在を職場で噂されて慌てて否定しまくり余計にドツボに嵌る牧野・・・を想像してしまったから、それを現実にするべく席を立った。
近付いて「牧野!」と名前を呼ぶと、直ぐにキョドってるのがなんとも可笑しい。

「な、な、な、何してんの、こんなとこでっ?」
「迎えに来たんだけど。」
「部屋で大人しくしてなさいよ! 誰かに見られたら・・・」
「一応キャップも被って顔隠してるし、大丈夫だろ?」
「ぜんっぜん隠せてない。
見る人が見たら一発で分かるよ!」

キーキー騒いでる牧野の後方でちょっと戸惑ってる同僚の女の子が気の毒だ。
ちょっと挨拶だけしとくか。

「すいません、コイツ騒がしくて。」
「えーっと、あの・・・」
「止めて!ユカちゃんにちょっかい出さないで!
ユカちゃん、この男、危険だから!
近付いたら妊娠しちゃうの!早く逃げて!」
「お前ね・・・、お友達がびっくりしてるだろ?
ユカちゃん? コイツがいつもお世話になってます。」
「は、はい・・・。こちらこそ。」
「ユカちゃん、早く帰って! 危ないから!」

俺の胸をぐいぐい押して、後退りさせようとしてるみたいだけど、お前の力なんかに俺が負ける訳ねえだろ?

俺が小さく頭を下げて、薄く笑い掛けると、ユカちゃんとやらは頬を赤らめつつ「失礼します・・・」と言って去って行った。
牧野が深ーい溜息を吐く。

「何でここにいる訳っ?」
「だから、つくしちゃんの事迎えに来たんだって。
毎日飯作ってくれてるから、早く帰れる今日くらい、俺に飯奢らせろよ。」
「出歩いて大丈夫なの?」

めちゃくちゃ疑わしそうな顔して、俺を上目遣いで睨み付けてる。
出歩いたって全く問題ねえんだよ。
ホントは誰からも探されてねえし。

「平気だろ、少しくらい。」

ニヤリと笑って見せても、全く納得して無さそうだ。
なあ、それって俺の事心配してるからなんだろ?
俺、案外牧野に思われてないか、これ?

浮き立つ心のままに歩き出す。

「ねえ、何処行くの?」
「ちょっと散歩だよ。
つくしちゃん、ペットは健康の為にも散歩させなくちゃ、だぜ。」
「1人で勝手にどこでも行けばっ!」
「飼い主はちゃんとペットを見てなきゃダメだろ?」
「あー言えばこー言う・・・、もうっ!」

デートだなんて言ったら拒否反応を示すだろう牧野にはこう言っておく方がいいんだ。
よーし、次は買い物だ!


________________



何か色々あり過ぎて、体力の限界が来ちゃいまして、更新止まってしまいました(^^;;
GWですね。
ホントにステイホームしてるだけなので、どよんと煮詰まってます。
日本の人口の1.97%しかワクチン接種が進んでないと聞いて、軽く絶望してみたり。

総二郎は些細な事でも嬉しそうですね。
入り口が敬遠されてたところからだから(苦笑)
デート現場は総二郎の庭であろう六本木界隈を想定してます。
何を食べさせようかなー?
リアルでは別にめでたい事も無かったけど鯛飯を炊きました。
美味しいよねー、鯛飯!


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