会いたいな・・・と思ったら、胸がぎゅうっと苦しくなって。
「会いたいな・・・」って口に出してしまったら、目からぽろりと涙が零れ落ちた。
そんな事言ったって仕方ないのに・・・と思いながら指先と掌でぐいぐい顔を拭って、何も無かった事にしようとするけど、なかなか上手くいかない。
涙腺は一度弛むとすぐに涙を止めるのは難しいみたいで、拭っても拭ってもまたぽろぽろと水の珠が落ちてきた。
誰に見られている訳でもない。
自分の部屋に独りきりなんだから。
それでも泣けば泣く程寂しさに負けてしまう気がして。
鼻をすんっと啜って、喉の奥の熱いものをごくんと飲み込んだ。
瞼の裏がじんじんとしている。
鼻の奥にもつーんとした痛みがある。
荒ぶってしまった気持ちを落ち着かせようと、ゆっくりと息を吸い込んで、ほうっと吐き出した。それを何度も繰り返す。
時々、こうやって恋しさが飽和してしまう。
会えない時間が積み重なっていくと、どうしても寂しさや不安も募っていく。
機械越しの声や、時折携帯に届くメッセージの文字も、嬉しい反面とても切なくて。
余計に独りで待っているしか出来ないと思い知らされてしまうから悲しくなるんだ。
「あーあ、もうやんなっちゃう。」
女々しい自分が嫌だ。
心を強く持てないで泣きべそかいてる自分が嫌だ。
愚痴をひとつ言う事でそれに踏ん切りつけようと思った。
何か気分転換しなくちゃ。
部屋でこうやって腐っててもいい事ないもん。
外の空気を吸って、何処かで温かくて美味しいお茶でも飲んで。
帰りにお花屋さんで小さなブーケを買おう。
うん、そうしよう。
ぱぱっと薄くお化粧して。
携帯をバッグに突っ込んで。
玄関に掛けておいたジャケットを羽織って、適当にストールをくるっと巻いた。
さあ、ちょっとだけここから離れて、気持ちを入れ替えよう!
そう思って勢いよく開けたドアの先に、「うおっと!」と言って後退りした人がいた。
その姿に視線が釘付けになる。
だってそれは、会いたい会いたいと思っていた人だったから。
「何だよ、つくしちゃん。
ドア開ける時は気を付けろよ。」
「どうして・・・?
年明け迄京都だって・・・」
「自分の誕生日位、好きなオンナの顔見に戻って来たっていいだろ?
明日の朝イチの新幹線であっちに戻るけどな。」
片方の口角を上げながらにやりと笑う、その顔を見詰めていたら、やっと乾いた筈の涙がまた滲んで来た。
「お帰りって言ってくんねえの?」
「・・・お帰り。」
鼻をすん・・・と鳴らす。
何とか涙を溢さないように我慢してるから、きっと変な顔になってるけど、どうしようもない。
「お前、への字口になってんぞ。
笑えよ、愛しの彼に会えて幸せー!って。」
「・・・・・・。」
「外寒かったでしょ、あたしがあっためてあ・げ・る!とか言えよ。」
「・・・言うか、バーカ!」
くくくと笑い声をあげて、愉快で堪らないといった顔付きであたしを見下ろしてる。
ホント巫山戯た男だ。
でも、あたしが世界で一番会いたかった人。
「変なことしないって約束するなら、部屋入れてあげる。」
「何言っちゃってんだか。
変なことなんか、する訳ないだろ。
俺、今日誕生日だぜ?」
「ホント信じらんないのよ、そういう言葉・・・。」
出掛けようとしていたけど、そんな必要無くなった。
だって会いたかった人はここにいるんだもん。
部屋の中に戻って、バッグをそこらにぽんと置いて。
ストールを外そうとした時、背中からぎゅうっと抱き締められた。
頬っぺたと頬っぺたがくっ付く。
外から来た人のそれはひんやりしていた。
「はー、落ち着く、コレ。」
「・・・コレって何よ、コレって。」
「俺にはつくしちゃんが必要不可欠だって事だよ。」
そう言われたらもう駄目だった。
ぱたぱたっと涙が落ちて来る。
「・・・お誕生日おめでと。」
「うん。」
「・・・帰ってきてくれてありがと。」
「うん。」
会えたら話したい事いっぱいあったんだけど。
明日の朝なんてきっとすぐに来ちゃうけど。
もう少しこのままこうしていよう。
何も言葉を交わさなくても存在を感じられる今がとても幸せだから。
_________
お誕生日SS第二弾でした。

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「会いたいな・・・」って口に出してしまったら、目からぽろりと涙が零れ落ちた。
そんな事言ったって仕方ないのに・・・と思いながら指先と掌でぐいぐい顔を拭って、何も無かった事にしようとするけど、なかなか上手くいかない。
涙腺は一度弛むとすぐに涙を止めるのは難しいみたいで、拭っても拭ってもまたぽろぽろと水の珠が落ちてきた。
誰に見られている訳でもない。
自分の部屋に独りきりなんだから。
それでも泣けば泣く程寂しさに負けてしまう気がして。
鼻をすんっと啜って、喉の奥の熱いものをごくんと飲み込んだ。
瞼の裏がじんじんとしている。
鼻の奥にもつーんとした痛みがある。
荒ぶってしまった気持ちを落ち着かせようと、ゆっくりと息を吸い込んで、ほうっと吐き出した。それを何度も繰り返す。
時々、こうやって恋しさが飽和してしまう。
会えない時間が積み重なっていくと、どうしても寂しさや不安も募っていく。
機械越しの声や、時折携帯に届くメッセージの文字も、嬉しい反面とても切なくて。
余計に独りで待っているしか出来ないと思い知らされてしまうから悲しくなるんだ。
「あーあ、もうやんなっちゃう。」
女々しい自分が嫌だ。
心を強く持てないで泣きべそかいてる自分が嫌だ。
愚痴をひとつ言う事でそれに踏ん切りつけようと思った。
何か気分転換しなくちゃ。
部屋でこうやって腐っててもいい事ないもん。
外の空気を吸って、何処かで温かくて美味しいお茶でも飲んで。
帰りにお花屋さんで小さなブーケを買おう。
うん、そうしよう。
ぱぱっと薄くお化粧して。
携帯をバッグに突っ込んで。
玄関に掛けておいたジャケットを羽織って、適当にストールをくるっと巻いた。
さあ、ちょっとだけここから離れて、気持ちを入れ替えよう!
そう思って勢いよく開けたドアの先に、「うおっと!」と言って後退りした人がいた。
その姿に視線が釘付けになる。
だってそれは、会いたい会いたいと思っていた人だったから。
「何だよ、つくしちゃん。
ドア開ける時は気を付けろよ。」
「どうして・・・?
年明け迄京都だって・・・」
「自分の誕生日位、好きなオンナの顔見に戻って来たっていいだろ?
明日の朝イチの新幹線であっちに戻るけどな。」
片方の口角を上げながらにやりと笑う、その顔を見詰めていたら、やっと乾いた筈の涙がまた滲んで来た。
「お帰りって言ってくんねえの?」
「・・・お帰り。」
鼻をすん・・・と鳴らす。
何とか涙を溢さないように我慢してるから、きっと変な顔になってるけど、どうしようもない。
「お前、への字口になってんぞ。
笑えよ、愛しの彼に会えて幸せー!って。」
「・・・・・・。」
「外寒かったでしょ、あたしがあっためてあ・げ・る!とか言えよ。」
「・・・言うか、バーカ!」
くくくと笑い声をあげて、愉快で堪らないといった顔付きであたしを見下ろしてる。
ホント巫山戯た男だ。
でも、あたしが世界で一番会いたかった人。
「変なことしないって約束するなら、部屋入れてあげる。」
「何言っちゃってんだか。
変なことなんか、する訳ないだろ。
俺、今日誕生日だぜ?」
「ホント信じらんないのよ、そういう言葉・・・。」
出掛けようとしていたけど、そんな必要無くなった。
だって会いたかった人はここにいるんだもん。
部屋の中に戻って、バッグをそこらにぽんと置いて。
ストールを外そうとした時、背中からぎゅうっと抱き締められた。
頬っぺたと頬っぺたがくっ付く。
外から来た人のそれはひんやりしていた。
「はー、落ち着く、コレ。」
「・・・コレって何よ、コレって。」
「俺にはつくしちゃんが必要不可欠だって事だよ。」
そう言われたらもう駄目だった。
ぱたぱたっと涙が落ちて来る。
「・・・お誕生日おめでと。」
「うん。」
「・・・帰ってきてくれてありがと。」
「うん。」
会えたら話したい事いっぱいあったんだけど。
明日の朝なんてきっとすぐに来ちゃうけど。
もう少しこのままこうしていよう。
何も言葉を交わさなくても存在を感じられる今がとても幸せだから。
_________
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