牧野への気持ちを言葉にしようとしても全然上手くいかない。
いくら考えても、この胸の中に湧いて来る想いを言葉にするには、この世のどんな言語を以てしても足りないんだ。
牧野に真っ直ぐ想いを届けられなくて、もどかしくて。
そんな時、自分はとても不器用で、不完全な人間なんだって思い知らされる。
牧野の声が聴こえるだけで、心が騒ぐ。
耳から入った声は身体中を駆け巡り、途端に俺に生気を与えてく。
声がした方に顔を向ければ、笑顔の牧野がこちらに近付いて来るのが見えて、その途端に気持ちが溢れ出す。
ああ、好きだ。
好きなんだ。
牧野のことしか目に入らない。
それだけ牧野を想ってる。
出会い頭にこんな事言ったら、牧野に驚かれて、ドン引きされそうだから口にはしないけど。
隣を歩きながら手を取れば、優しい感触と温もりにほっとする。
牧野が隣にいてくれると胸が高鳴り、身体が内側からポカポカと温かくなる。
幸せな気持ちが空虚だった自分を満たしてく。
離れていた間に止まっていた2人の時間が流れ出す。
この手を握っていたら、どこにだって行ける気がする。
牧野さえ居てくれたら、俺に怖いものは何も無いから。
バイトばっかりして、いつも疲れてる牧野。
公園のベンチで隣り合わせに座っていると、春の陽気のせいかうつらうつらしている。
俺の方に寄り掛かってくる重みが嬉しくて。
時折、こつん・・・と肩にぶつかる頭の揺れさえ愛しくて。
そんなことを楽しんでる俺。
柔らかな風に吹かれながら、こんなタイミングなら牧野がうっかり本音を漏らすのかも知れない・・・なんて思ってしまうのは、狡いのだろうか?
「ねえ、まだ司のことが好き?」
いつも聞きたくて、でも怖くて聞けなかった事。
今なら夢だった・・・と誤魔化せるかも。
「んんん?
あたしを綺麗さっぱり忘れた男の事なんかもう忘れたー。」
そう呟いて、溜息混じりの小さな笑い声を溢した牧野。
優しい嘘だなぁ・・・と思う。
司みたいな奴の事、忘れられる筈なんかない。
だけどこうやって俺の隣に居てくれて。
俺の肩を支えに居眠りする程、俺達の距離は近付いた。
ずっと牧野を想い続けている俺への、牧野らしい優しさなんだろう。
「人を好きになるとさ、嬉しい、楽しいばっかりじゃないじゃない?
別々の人間なんだから、互いの間には色んな溝があるし。
考え方も生き方も違うでしょ。」
「うん。」
牧野は誰との話をしてるんだろう?
牧野と司の事なのかな?
「だけどさ、そんな2人が何とか寄り添いあって、どうにか同じ道を歩いていけたら・・・
一緒にいられたらそれだけで幸せ・・・って思いながら一つずつ問題をクリアしていけたらいいなって。
あたしはそう思うのよ。」
「ん・・・。」
これからの未来の話なのかな・・・?
じゃあ、俺は牧野にとってそんな存在になりたい。
「だからね、類にとってあたしが、いつかそんな人になれたらなって。
今はそう思ってる。
もう道明寺の事なんか、考える余地ないよ。」
そこまで言って、牧野はふうっと息を吐き出して、春の空気を吸い込んだ。
「あったかいねー、今日。
最高気温18度だって!
類の生まれた日もこんな気持ちのいい春の日だったのかなぁ?
そうだったら嬉しいね。」
俺の方に顔を向けながらそんな事を言う牧野。
ねえ、あんた、俺に告白してるって自覚はあるのかな?
手を伸ばして、きゅうっと牧野を抱きしめた。
好きだ、好きだという気持ちが湧いてきて。
幸せな溜息が零れ落ちる。
もう離さない、離れられない。
やっとやっと俺達の想いが重なったこの瞬間、言葉に出来ない程の幸せに包まれてる。
「る、類?」
「ん・・・」
「どうしちゃったの?
ここ、公園のベンチ!」
「誰も見てないでしょ。」
「いや、絶対色んな人に見られてるっ!」
「じゃあ目を瞑ってたらいいよ。」
「そういう事じゃないっ!」
こういう煩い牧野を確実に黙らせる方法。
それはじっと見詰める事。
先ずは目線を合わせて。
何が起こってるか分からない・・・といった体で目をぱちくりさせている牧野にそっと微笑みかけるんだ。
これで牧野は言葉を失くす。
そうして訪れた沈黙を破って一言だけ告げる思いの丈。
「これからは俺と2人で歩いていこうね。」
涙を湛えつつも頷いてくれたから。
今日は最高に幸せな誕生日。
_________
色々ありまして、あき誕SSの途中で更新止まってるままに、類誕がやってきてしまいました!
本日3月30日、ルイルイのお誕生日です!
必死になって突貫工事でお話を書いてみました。
今はこれが精一杯・・・という事で、お許しくださいませ。
春は眠たい季節ですね。
(管理人の眠気は花粉症の薬の副作用!)
陽だまりで座ってたら、寝ちゃうのはつくしだけじゃなくて類もじゃない?と思ったのですが。
この類はお目々ぱっちりだったみたいです。
タイトルの「le temps doux」は「優しい時間」という意味で付けました。

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
いくら考えても、この胸の中に湧いて来る想いを言葉にするには、この世のどんな言語を以てしても足りないんだ。
牧野に真っ直ぐ想いを届けられなくて、もどかしくて。
そんな時、自分はとても不器用で、不完全な人間なんだって思い知らされる。
牧野の声が聴こえるだけで、心が騒ぐ。
耳から入った声は身体中を駆け巡り、途端に俺に生気を与えてく。
声がした方に顔を向ければ、笑顔の牧野がこちらに近付いて来るのが見えて、その途端に気持ちが溢れ出す。
ああ、好きだ。
好きなんだ。
牧野のことしか目に入らない。
それだけ牧野を想ってる。
出会い頭にこんな事言ったら、牧野に驚かれて、ドン引きされそうだから口にはしないけど。
隣を歩きながら手を取れば、優しい感触と温もりにほっとする。
牧野が隣にいてくれると胸が高鳴り、身体が内側からポカポカと温かくなる。
幸せな気持ちが空虚だった自分を満たしてく。
離れていた間に止まっていた2人の時間が流れ出す。
この手を握っていたら、どこにだって行ける気がする。
牧野さえ居てくれたら、俺に怖いものは何も無いから。
バイトばっかりして、いつも疲れてる牧野。
公園のベンチで隣り合わせに座っていると、春の陽気のせいかうつらうつらしている。
俺の方に寄り掛かってくる重みが嬉しくて。
時折、こつん・・・と肩にぶつかる頭の揺れさえ愛しくて。
そんなことを楽しんでる俺。
柔らかな風に吹かれながら、こんなタイミングなら牧野がうっかり本音を漏らすのかも知れない・・・なんて思ってしまうのは、狡いのだろうか?
「ねえ、まだ司のことが好き?」
いつも聞きたくて、でも怖くて聞けなかった事。
今なら夢だった・・・と誤魔化せるかも。
「んんん?
あたしを綺麗さっぱり忘れた男の事なんかもう忘れたー。」
そう呟いて、溜息混じりの小さな笑い声を溢した牧野。
優しい嘘だなぁ・・・と思う。
司みたいな奴の事、忘れられる筈なんかない。
だけどこうやって俺の隣に居てくれて。
俺の肩を支えに居眠りする程、俺達の距離は近付いた。
ずっと牧野を想い続けている俺への、牧野らしい優しさなんだろう。
「人を好きになるとさ、嬉しい、楽しいばっかりじゃないじゃない?
別々の人間なんだから、互いの間には色んな溝があるし。
考え方も生き方も違うでしょ。」
「うん。」
牧野は誰との話をしてるんだろう?
牧野と司の事なのかな?
「だけどさ、そんな2人が何とか寄り添いあって、どうにか同じ道を歩いていけたら・・・
一緒にいられたらそれだけで幸せ・・・って思いながら一つずつ問題をクリアしていけたらいいなって。
あたしはそう思うのよ。」
「ん・・・。」
これからの未来の話なのかな・・・?
じゃあ、俺は牧野にとってそんな存在になりたい。
「だからね、類にとってあたしが、いつかそんな人になれたらなって。
今はそう思ってる。
もう道明寺の事なんか、考える余地ないよ。」
そこまで言って、牧野はふうっと息を吐き出して、春の空気を吸い込んだ。
「あったかいねー、今日。
最高気温18度だって!
類の生まれた日もこんな気持ちのいい春の日だったのかなぁ?
そうだったら嬉しいね。」
俺の方に顔を向けながらそんな事を言う牧野。
ねえ、あんた、俺に告白してるって自覚はあるのかな?
手を伸ばして、きゅうっと牧野を抱きしめた。
好きだ、好きだという気持ちが湧いてきて。
幸せな溜息が零れ落ちる。
もう離さない、離れられない。
やっとやっと俺達の想いが重なったこの瞬間、言葉に出来ない程の幸せに包まれてる。
「る、類?」
「ん・・・」
「どうしちゃったの?
ここ、公園のベンチ!」
「誰も見てないでしょ。」
「いや、絶対色んな人に見られてるっ!」
「じゃあ目を瞑ってたらいいよ。」
「そういう事じゃないっ!」
こういう煩い牧野を確実に黙らせる方法。
それはじっと見詰める事。
先ずは目線を合わせて。
何が起こってるか分からない・・・といった体で目をぱちくりさせている牧野にそっと微笑みかけるんだ。
これで牧野は言葉を失くす。
そうして訪れた沈黙を破って一言だけ告げる思いの丈。
「これからは俺と2人で歩いていこうね。」
涙を湛えつつも頷いてくれたから。
今日は最高に幸せな誕生日。
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色々ありまして、あき誕SSの途中で更新止まってるままに、類誕がやってきてしまいました!
本日3月30日、ルイルイのお誕生日です!
必死になって突貫工事でお話を書いてみました。
今はこれが精一杯・・・という事で、お許しくださいませ。
春は眠たい季節ですね。
(管理人の眠気は花粉症の薬の副作用!)
陽だまりで座ってたら、寝ちゃうのはつくしだけじゃなくて類もじゃない?と思ったのですが。
この類はお目々ぱっちりだったみたいです。
タイトルの「le temps doux」は「優しい時間」という意味で付けました。



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