久々に類の登板です。
「茜色に包まれて」の続編。
友達以上恋人未満の2人です。
__________
<つくし20歳 類21歳 梅雨明けが近づく頃>
「ねぇ、牧野。少し遠くに出掛けない?」
不意に類がそんなことを言い出した。
「遠くって?」
「んー、このジトジトした雨が降ってない所。」
「梅雨が明けるまでの辛抱じゃない。きっともうすぐだよ。類は雨、嫌いなの?」
「雨がっていうより、この湿気が苦手。じっとしてるとカビが生えてきそう…」
「ふぅー。何言っちゃってるんだか。そうやってゴロゴロしてるからそんな気分になるの。ほら、起きてっ!」
広いベッドの上で燻っている類の手を引っ張って、無理矢理身体を起こさせた。
相変わらず何もない類の部屋では、居場所と言えばこのベッドの上しかなく。
ここにいる時の類は、大抵ベッドの上に横たわっている。
あたしは仕方ないから、いつも端っこに腰掛けてる。
時々うっかり昼寝しちゃうこともあるけれど…
類といると、あたしは知らず知らずにうちに気が緩んでしまうのだ。
このグータラ王子め…
どこかに連れ出そう!
身体を動かせばそんなジメジメした考えは飛んでいくはず!
「ちょっとお散歩でも行こうよ。雨でも傘差して行けばいいじゃない。晴れの日とは違った景色が見えるよ。」
「メンドクサイ…」
そんな一言であたしの提案をぶっちぎってっ!
どうしてくれよう、このマイペースオトコ。
「牧野、顔怖い。」
そう言いながら、類の手があたしの顔に伸びてきて、中指があたしの眉間をすっと撫でた。
「ここ、皺寄っちゃってる。」
「うわぁっ!」
慌てて身を引いた。
ほっぺたがかぁっと熱くなる。
「ふふふ。なにビクついてんのさ。」
「ちょ、ちょっとびっくりしただけでしょっ!」
「ふーん。ねぇ、雨が降ってないとこ行こう。そこでなら俺も散歩するよ。週末、金・土・日って空けておいて。」
金・土・日って泊りがけっ?
えーっと、えーっと、それって…
類がくすりと笑いを漏らす。
「あんた、考えてること、分かり易過ぎ。心配しなくても大丈夫だよ。俺があんたの嫌がる事すると思ってんの?」
「…思ってない…」
そうだ。類はいつだって、あたしの気持ちを最優先してくれる。
あたしが何考えてるのかすぐに分かっちゃう。
だから不安になんてならなくてもいいんだけど…
2人きりで泊りがけで出掛けるなんて初めてだから、ちょっと心の準備が出来てないっていうか…
天使の微笑みであたしを見つめる類はどこまでも優し気で。
何も心配いらないって教えてくれる。
「じゃ、決まりね。金曜日の朝、迎えに行く。」
「分かった… ねぇ、何処に行くの?」
「んー、まだ内緒。」
「荷造りするのに、何処に行くか分からないと、どんな服持って行ったらいいか分からなくて困るでしょ?」
「特別なもの要らないよ。普通に2泊分の着替えとか持ってくれば? まあ、無くたって買えばいいから、持ってこなくても構わないけど。」
お坊ちゃまはこれだから困る。
その性根、叩き直してやる!
「その、なんでも買えば済むって考え、改めなよね。持っていけば済むの! あたしといる限り、無駄遣いは許さないからっ!」
「あい…」
あたしのお怒りモードに気圧された類。
素直な返事をしたと思ったら、こっちを見てぷっと吹き出した。
何を笑っちゃってんのよ?
面白い事なんて何も言ってないでしょ?
キッと睨み付けたら、すすっと類が身を乗り出した。
茶色のふわ髪がくすぐったい…と思ったら、次の瞬間、ふわりとほっぺたに類の唇が舞い降りた。
「怒ってる牧野も可愛い。」
「な、な、な…っ!」
「ななな? 何、それ? 何か歌ってるの?」
「違ーーーう!」
こんな風に類にからかわれて、真っ赤になって。
あたし1人がジタバタ暴れて。
またそれを笑われて。
これが今のあたし達の日常だ。
類とはいつも一緒にいる。
付き合ってるの?と人から聞かれたら答えはNO。
だって、そういう事言われたことないし。
手を繋いだり、さっきみたいにほっぺたにチューされたりすることはあっても、それ以上のことは何もない。
今の距離感はあたしにとって居心地のいいぬるま湯みたいな感じ。
でも最近、なんだかもどかしい気がする時があるんだ。
__________
今度はね、類がつくしをどこかにさらっちゃうよーん♪



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「茜色に包まれて」の続編。
友達以上恋人未満の2人です。
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<つくし20歳 類21歳 梅雨明けが近づく頃>
「ねぇ、牧野。少し遠くに出掛けない?」
不意に類がそんなことを言い出した。
「遠くって?」
「んー、このジトジトした雨が降ってない所。」
「梅雨が明けるまでの辛抱じゃない。きっともうすぐだよ。類は雨、嫌いなの?」
「雨がっていうより、この湿気が苦手。じっとしてるとカビが生えてきそう…」
「ふぅー。何言っちゃってるんだか。そうやってゴロゴロしてるからそんな気分になるの。ほら、起きてっ!」
広いベッドの上で燻っている類の手を引っ張って、無理矢理身体を起こさせた。
相変わらず何もない類の部屋では、居場所と言えばこのベッドの上しかなく。
ここにいる時の類は、大抵ベッドの上に横たわっている。
あたしは仕方ないから、いつも端っこに腰掛けてる。
時々うっかり昼寝しちゃうこともあるけれど…
類といると、あたしは知らず知らずにうちに気が緩んでしまうのだ。
このグータラ王子め…
どこかに連れ出そう!
身体を動かせばそんなジメジメした考えは飛んでいくはず!
「ちょっとお散歩でも行こうよ。雨でも傘差して行けばいいじゃない。晴れの日とは違った景色が見えるよ。」
「メンドクサイ…」
そんな一言であたしの提案をぶっちぎってっ!
どうしてくれよう、このマイペースオトコ。
「牧野、顔怖い。」
そう言いながら、類の手があたしの顔に伸びてきて、中指があたしの眉間をすっと撫でた。
「ここ、皺寄っちゃってる。」
「うわぁっ!」
慌てて身を引いた。
ほっぺたがかぁっと熱くなる。
「ふふふ。なにビクついてんのさ。」
「ちょ、ちょっとびっくりしただけでしょっ!」
「ふーん。ねぇ、雨が降ってないとこ行こう。そこでなら俺も散歩するよ。週末、金・土・日って空けておいて。」
金・土・日って泊りがけっ?
えーっと、えーっと、それって…
類がくすりと笑いを漏らす。
「あんた、考えてること、分かり易過ぎ。心配しなくても大丈夫だよ。俺があんたの嫌がる事すると思ってんの?」
「…思ってない…」
そうだ。類はいつだって、あたしの気持ちを最優先してくれる。
あたしが何考えてるのかすぐに分かっちゃう。
だから不安になんてならなくてもいいんだけど…
2人きりで泊りがけで出掛けるなんて初めてだから、ちょっと心の準備が出来てないっていうか…
天使の微笑みであたしを見つめる類はどこまでも優し気で。
何も心配いらないって教えてくれる。
「じゃ、決まりね。金曜日の朝、迎えに行く。」
「分かった… ねぇ、何処に行くの?」
「んー、まだ内緒。」
「荷造りするのに、何処に行くか分からないと、どんな服持って行ったらいいか分からなくて困るでしょ?」
「特別なもの要らないよ。普通に2泊分の着替えとか持ってくれば? まあ、無くたって買えばいいから、持ってこなくても構わないけど。」
お坊ちゃまはこれだから困る。
その性根、叩き直してやる!
「その、なんでも買えば済むって考え、改めなよね。持っていけば済むの! あたしといる限り、無駄遣いは許さないからっ!」
「あい…」
あたしのお怒りモードに気圧された類。
素直な返事をしたと思ったら、こっちを見てぷっと吹き出した。
何を笑っちゃってんのよ?
面白い事なんて何も言ってないでしょ?
キッと睨み付けたら、すすっと類が身を乗り出した。
茶色のふわ髪がくすぐったい…と思ったら、次の瞬間、ふわりとほっぺたに類の唇が舞い降りた。
「怒ってる牧野も可愛い。」
「な、な、な…っ!」
「ななな? 何、それ? 何か歌ってるの?」
「違ーーーう!」
こんな風に類にからかわれて、真っ赤になって。
あたし1人がジタバタ暴れて。
またそれを笑われて。
これが今のあたし達の日常だ。
類とはいつも一緒にいる。
付き合ってるの?と人から聞かれたら答えはNO。
だって、そういう事言われたことないし。
手を繋いだり、さっきみたいにほっぺたにチューされたりすることはあっても、それ以上のことは何もない。
今の距離感はあたしにとって居心地のいいぬるま湯みたいな感じ。
でも最近、なんだかもどかしい気がする時があるんだ。
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