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hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
https://potofu.me/hortensia

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星に願いを 1

久々に類の登板です。
茜色に包まれて」の続編。
友達以上恋人未満の2人です。

__________

<つくし20歳 類21歳 梅雨明けが近づく頃>

「ねぇ、牧野。少し遠くに出掛けない?」

不意に類がそんなことを言い出した。

「遠くって?」
「んー、このジトジトした雨が降ってない所。」
「梅雨が明けるまでの辛抱じゃない。きっともうすぐだよ。類は雨、嫌いなの?」
「雨がっていうより、この湿気が苦手。じっとしてるとカビが生えてきそう…」
「ふぅー。何言っちゃってるんだか。そうやってゴロゴロしてるからそんな気分になるの。ほら、起きてっ!」

広いベッドの上で燻っている類の手を引っ張って、無理矢理身体を起こさせた。
相変わらず何もない類の部屋では、居場所と言えばこのベッドの上しかなく。
ここにいる時の類は、大抵ベッドの上に横たわっている。
あたしは仕方ないから、いつも端っこに腰掛けてる。
時々うっかり昼寝しちゃうこともあるけれど…
類といると、あたしは知らず知らずにうちに気が緩んでしまうのだ。

このグータラ王子め…
どこかに連れ出そう!
身体を動かせばそんなジメジメした考えは飛んでいくはず!

「ちょっとお散歩でも行こうよ。雨でも傘差して行けばいいじゃない。晴れの日とは違った景色が見えるよ。」
「メンドクサイ…」

そんな一言であたしの提案をぶっちぎってっ!
どうしてくれよう、このマイペースオトコ。

「牧野、顔怖い。」

そう言いながら、類の手があたしの顔に伸びてきて、中指があたしの眉間をすっと撫でた。

「ここ、皺寄っちゃってる。」
「うわぁっ!」

慌てて身を引いた。
ほっぺたがかぁっと熱くなる。

「ふふふ。なにビクついてんのさ。」
「ちょ、ちょっとびっくりしただけでしょっ!」
「ふーん。ねぇ、雨が降ってないとこ行こう。そこでなら俺も散歩するよ。週末、金・土・日って空けておいて。」

金・土・日って泊りがけっ?
えーっと、えーっと、それって…

類がくすりと笑いを漏らす。

「あんた、考えてること、分かり易過ぎ。心配しなくても大丈夫だよ。俺があんたの嫌がる事すると思ってんの?」
「…思ってない…」

そうだ。類はいつだって、あたしの気持ちを最優先してくれる。
あたしが何考えてるのかすぐに分かっちゃう。
だから不安になんてならなくてもいいんだけど…
2人きりで泊りがけで出掛けるなんて初めてだから、ちょっと心の準備が出来てないっていうか…

天使の微笑みであたしを見つめる類はどこまでも優し気で。
何も心配いらないって教えてくれる。

「じゃ、決まりね。金曜日の朝、迎えに行く。」
「分かった… ねぇ、何処に行くの?」
「んー、まだ内緒。」
「荷造りするのに、何処に行くか分からないと、どんな服持って行ったらいいか分からなくて困るでしょ?」
「特別なもの要らないよ。普通に2泊分の着替えとか持ってくれば? まあ、無くたって買えばいいから、持ってこなくても構わないけど。」

お坊ちゃまはこれだから困る。
その性根、叩き直してやる!

「その、なんでも買えば済むって考え、改めなよね。持っていけば済むの! あたしといる限り、無駄遣いは許さないからっ!」
「あい…」

あたしのお怒りモードに気圧された類。
素直な返事をしたと思ったら、こっちを見てぷっと吹き出した。

何を笑っちゃってんのよ?
面白い事なんて何も言ってないでしょ?

キッと睨み付けたら、すすっと類が身を乗り出した。
茶色のふわ髪がくすぐったい…と思ったら、次の瞬間、ふわりとほっぺたに類の唇が舞い降りた。

「怒ってる牧野も可愛い。」
「な、な、な…っ!」
「ななな? 何、それ? 何か歌ってるの?」
「違ーーーう!」

こんな風に類にからかわれて、真っ赤になって。
あたし1人がジタバタ暴れて。
またそれを笑われて。
これが今のあたし達の日常だ。

類とはいつも一緒にいる。
付き合ってるの?と人から聞かれたら答えはNO。
だって、そういう事言われたことないし。
手を繋いだり、さっきみたいにほっぺたにチューされたりすることはあっても、それ以上のことは何もない。
今の距離感はあたしにとって居心地のいいぬるま湯みたいな感じ。
でも最近、なんだかもどかしい気がする時があるんだ。


__________


今度はね、類がつくしをどこかにさらっちゃうよーん♪


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星に願いを 2

金曜日の朝、牧野をアパートまで迎えに行った。
その時刻はなんと5:30am。
牧野には、なんでそんなに早いのかと聞かれたけれど。
早い時間のフライトなんだとだけ言っておいた。
これから向かうのは沖縄の離島。
直行便は早朝の1フライトだけ。

まぁ、牧野は乗り物に乗ったらすぐ寝るんだろうから、朝早いのは問題ないでしょ。
それよりも、何よりベッドでぬくぬく過ごすのが好きな俺が、牧野の為にこんな朝早くから出掛けようとしていることを褒めて欲しいよ。

空港のカウンターで初めて行先を知り、目を丸くしている牧野。
思いの外遠い場所だったらしい。
飛行機で約3時間。
すっかり梅雨明けした南の楽園に到着した。

「雨降ってないところに来たね、牧野。」
「うん。 空も青くて、空気もカラッとしてて、気持ちいー!」

牧野には梅雨空よりも、こんな抜けるような青空が似合う。
急に笑顔に輝きが増したかのような印象だ。
レンタカーでまず一番連れて行きたいと思っていた、白砂の美しいビーチを目指した。

IMG_沖縄-pola

梅雨が明けたとはいえ、まだ夏休み前。
ビーチはほとんど貸切状態だ。
白いサンゴで出来た砂浜と紺碧の海。
その色は沖になるにしたがって藍色へと変わっていく。
そしてその向こうには、近くの島につながる橋が架かる。
空は海よりも淡い水色。
そこに白い雲がふわりと浮かぶ。
見ているだけで心が洗われる景色が広がっていた。

「類、ここはパラダイスだね! 夢の中の風景みたい。こんな素敵な所が日本にあるなんて…」

牧野は海に見入っている。

「牧野、海に入る?」
「えっ? あたし、水着持ってきてないから…」
「用意してきたよ。」
「へっ?」
「牧野の水着もあるの、俺のバッグの中に。」
「ど、どーいうことっ?」

目を白黒させてキョドる牧野。
いちいち面白い。

「海に来るのを内緒にしていたから、牧野は水着持ってこないだろうと思って。
ウチの使用人に頼んでおいた。」
「あ、小林さん?」
「ん、そう。」

俺の部屋で一緒に過ごす事も今では良くある事。
牧野は使用人ともすっかり顔なじみだ。
あからさまにほっとした表情を浮かべてる。

俺が水着を選ぶのがそんなにイヤなの?
俺は牧野が何を着ていようと好きだから、どんな水着だっていい。
それくらいの認識なんだけど…

「だから、海に入りたかったら入れるよ。」
「…うん、入りたい! 類も一緒に、ね?」

子供の様な顔して俺を誘うから、思わず苦笑しながらも、はいはいと頷き返した。

着替えて現れた牧野は…
ホルターネックの白いビキニに、薄いピンクのラッシュガードパーカーを羽織って、下はマリンカラーのボーダーのショートパンツという出で立ち。

あ、俺、間違えてた。
どんな水着でもいいは嘘だった。
その格好、すごく可愛い。
心臓の音がうるさくなってる。

「類ー、小林さん、凄いの。もう至れり尽くせりのものが詰まってた! 日焼け止めもあるし、タオルも、海水用のシャンプーまで。帰ったらお礼言わなきゃー。」

無邪気に喋りながら、俺に向かって歩いてくる牧野。
パーカーとショートパンツを水着の上に重ね着してるから、本人的には安心してるんだろうけど、すらりと伸びた脚は肌の白さを際立たせてるし、ちょっと開いたパーカーの合わせ目からは、これまた白い胸の谷間がチラチラ見えて。
他に人が殆どいなくて良かった。
こんな牧野が大勢の男の視線に晒される事になったら、平常心ではいられなくなる。
いや、もう、俺、平常心じゃないかもね。

牧野が、ちょっと不思議そうな顔して俺を見上げてる。
変な表情をしていたらしい。

「類、どうかした? お腹でも痛いの?」

あんたが可愛くて困ってるんだよ。
距離を詰めようとすれば、一歩後ずさりして。
なのに、たまにそうして無邪気にこちらに近付いてくる。
どうしたら捕まえられるんだろう、この気まぐれな俺の想い人は?

「ん? 何でもないよ。牧野があんまり可愛いから、食べちゃいたいなって思っただけ。」

ちょっと身を屈めて、赤くなってモジモジしてる牧野の黒く耀く瞳を見つめて。
ついでにふっくら柔らかな頬を舌先でペロリと舐めてみる。

「ひゃあっ! 何してんのっ?」
「何って、味見。美味しいのかなって。」
「あたしは食べ物じゃありませんっ!」
「これから海に入ったら、塩味になっちゃうね。」

クスクス笑っていたら、牧野が持ってたバッグがぼすっと音を立てて俺の背中に当たった。

「もうっ、あたしをからかうのはやめてってばっ!」

こんな風にしてるの、人から見たら痴話喧嘩って言うんだってさ。
誰の目から見ても恋人同士なのに、牧野だけがそれを認めてない。
その垣根を壊したい。


__________


はい、沖縄までさらわれて来ましたよー。
本島と離島では全然違った表情を見せます。
断然離島をオススメします!
このビーチ、行った時、ホントにパラダイスに来ちゃった…とうっとりしちゃいました。
また行きたいなぁー!


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星に願いを 3

類が連れて来てくれた南の島の海は、とても綺麗な所だ。
まるで絵葉書の中の風景のような、完璧な美しさ。
夢の中にいる様な気持ちになる。
その砂浜を2人で歩いて。
クリアブルーの海に膝まで入ってみた。

「海が暖かいっ!」
「そりゃそうだよ。ここの海開きは4月の頭。とっくに泳いでいい季節になってるんだから。」

ヒヤリとするのかと思っていたのに、優しく暖かく脚を濡らしてく波。
心地よくて、もっと海に入りたくなる。
透明感のある海水を掌で掬う。

海って本当はこんなに澄んでるものなんだ…

そんな事を思っていたら、類に不意打ちをされた。
キラリと水しぶきが光った!と思ったら、ぱしゃりと顔にかかった。
ふん、そっちがその気なら、どんどん水掛けちゃうもんね。
2人で子供みたいにはしゃいで、水掛け合って。
びしょ濡れになりながら笑い転げる。
類の笑顔が眩しくて、胸の奥がキュンとする。
あの笑顔には弱いんだ。
それに一瞬気を取られていたら、類の水掛け攻撃をまともに食らって、思わずむせた。

「牧野、ゴメン、大丈夫?」
「ケホッ。んっ、大丈夫… ちょっと潮水飲んじゃった…」
「一旦上がろ。ゴメン、俺、ちょっとやり過ぎた。」

そう言って手を引いてパラソルの下まで連れて来てくれた。
ミネラルウォーターを買って、手渡してくれる。
それをこくこく飲んで、ぷはぁと息を吐き出す。

「類、そんな心配しないで。大丈夫だよ。」

類のビー玉みたいな瞳が、薄っすら水の膜を張ったように見えて、安心させたくて、手に触れた。
ひやりとした類の手。
ふんわりと手を繋いでくれた。
親指でゆっくりあたしの手の甲を撫でている。
『ごめんね』と『大丈夫?』って、類の指先が言ってるみたい。
また胸がとくとく言い出した。
ほっぺたも熱くなってる気がする。
類はあたしの胸を高鳴らせることをさりげなくやっちゃう。
そんな類をまともに見れなくて、足元の砂を見ていたら、白いサンゴの欠片が目に入った。

「ねぇ、これってサンゴでしょ?」

拾って掌に載せて見せてみた。
類が頷いてる。

「砂の色と同じでしょ。ここの砂はサンゴで出来てるんだ。」
「それって凄いことだよねぇ。たーくさんのサンゴ礁があって、それが崩れて砂になったってこと?」
「そうなんだろうね。」
「あたし、サンゴを拾ったの、初めて。」

砂浜を歩いて、サンゴや貝殻を拾い集めた。

「南の島に来たって感じだね、類!」

はしゃぐあたしを、パラソルの下から笑いながら見てる類は、いつもにも増して一幅の画の中の人物みたいにカッコよくて、またドキリとさせられる。

類の目の色や髪の毛の色、この海にピッタリだ。
この場所がすごく似合ってる。
類といると毎日ドキドキしてるから、あたし、いつか心臓が壊れちゃうかもしれない!
人よりいっぱい脈打つから早死にかも知れない!
こんなステキなところを見せられちゃったら、余計に早くその時が来ちゃうかも?

「牧野、お腹減らない? ビーチはまた来ればいいから、良かったらご飯行こう。」
「うん!」

身支度を整えて、また車に乗って。
連れてこられたのは、今日と明日泊まるホテルだった。

「花沢様、お待ちしておりました。」

類のなじみのホテルらしい。
コンシェルジュの方が、類の顔を見ただけで、飛んできて挨拶してる。

「ん、宜しく… 食事してから部屋に入りたいんだけど…
牧野、何食べたい?」
「え? あたしは… 折角沖縄に来たから、沖縄料理とか?」
「あいにく、琉球料理のレストランは本日は夕方からの営業となっておりまして…
宜しければ、ランチのコースを特別にお作りして、お部屋までお持ちしますが。」
「うん、じゃあそれで。牧野、いいよね?」
「あ、は、はい!」

通された部屋は広々としたコテージ。
大きなガラス窓の向こうはこの部屋専用のプール。
そして何故だか、リビングにもベッド、寝室にもベッド…
これってどういうことっ?

「る、類? これ…」
「何? 気に入らない? 俺、ここに来たらいつもこの部屋なんだけど。」
「あの… 何でリビングにもベッドがあるの…?」
「俺みたいにゴロゴロしたい人用じゃないの?
俺は気ままに横になれて、重宝してるけど。」

そう言って早速ゴロゴロし始めてる。
はっきり言って、初めて見た、こんなお部屋。
今迄だって類と2人きりで過ごした夜が無かったわけじゃない。
もちろん、何も無かったんだけど。
でも今夜はどうしたらいいの?って頭の中で考えてたところもあった。
あたしが困らないように、こうやってベッドが2つ別々にあるところを選んでくれたのかな?
そう思ったらちょっとほっとしてる自分がいた。

部屋のチャイムが鳴って、ランチが運ばれてきた。
プールサイドのテーブルに前菜と飲み物が並べられていく。
類があたしの手を取って、テラスへ誘う。
思わずにっこり笑って、その手を握った。


__________


ん? ベッドルーム以外にもベッド(笑)
皆様のご期待に添えない感じ???
だって、この2人、まだ付き合ってないらしいですからー。


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星に願いを 4

プールサイドのテーブルは、水の乱反射が眩しい。
その瞬く光の中で、楽しそうに食事する牧野を見てた。
最初は小鉢がいっぱい並んだ前菜。
海ぶどうやジーマミー豆腐、青パパイヤのマリネなど、沖縄ならではの味の玉手箱。
地の魚と海老の刺身はサラダ風に盛られて出てきた。
焼き魚を食べない沖縄では、火を通す魚の料理法は揚げるか煮るか。
今日は揚げ魚だ。
淡白な白身魚の唐揚げにネギ油のソースが掛かっていて香ばしい香りが食欲をそそる。
地元産の牛フィレのサイコロステーキは、口に入れるとじゅわりと旨味が溢れ出した。
揚物はもずくと野菜の天ぷら。
この島産の塩で食べる。
炊き込みご飯に付いて来た漬物は、青パパイヤのキムチ。
これが牧野に大ヒットした。
絶対買って帰りたい!と意気込んでいる。
吸物はアーサーを使った磯の香り溢れるもので。
デザートのマンゴーアイスまでぺろりと平らげ、満面の笑みを浮かべてる牧野を見て、こっち迄幸せな気分になった。
口の端にアイスが溶けたのが付いてる。
牧野って子供みたいだね。
テーブル越しに手を伸ばして、親指で拭った。

「えっ、何っ?」

その親指をぺろりと舌で舐めたら、牧野の顔が途端に真っ赤になった。
ふふっと笑ってその様を見てたら、潤んだ目で睨み付けてくる。
何を怒ってるんだろ?

「そんな事しなくても、付いてるって言ってくれたらいいのにっ!」
「だって、言うより早かったから。」
「だからってそんな…」

怒ってる牧野を余所に、アイスコーヒーをからからと音を立てて回してみた。
涼やかな音がプールの上に響いてく。

「牧野、ちょっと食休みしたら、ドライブに行こう。景色、綺麗だから、あんたに見せたい。」
「うん、ありがと、類。」

機嫌を直してにっこりした牧野。

やっぱり、あんたは笑ってるのがいいや。

テラスのデッキチェアでのんびりするつもりが、朝早かった事もあり、2人とも寝てしまったらしい。
気付けば隣のチェアでは、あどけない顔で牧野が寝息をたてていた。
南の島で気温も高いし、心配ないかと思うけど、念のために…とブランケットをふわりと掛けたら、そのせいで牧野が目を覚ました。

「ごめん、起こしちゃったね。」
「ううん、あたしこそうっかり寝ちゃったみたい。ごめんなさい。」
「謝らなくていいよ、俺も転寝してたんだし。もう元気なら、出掛ける?」
「うんっ!」

海岸線の道を車を走らせる。
夕暮れが近づき、海の色は昼間の紺碧から青碧に変わった。
さっきビーチから見た長い橋を渡る。
右を見ても左を見ても海。
牧野は大興奮だ。
対向車も後続の車も全く来ない橋の真ん中で車を停めた。
欄干に手を添え、海の美しさに言葉もなく佇む牧野。
俺はその後ろ姿を目に焼き付けてた。
暫くそのまま見守っていたけれど、遠くから車が走って来るのが目に入った。

「牧野、もう行かなきゃ。車に乗って。」

声を掛けると、振り返った牧野は、また俺の心を揺さぶるようなとびきりの笑顔で。
こっくり頷いて、車に乗り込んだ。

牧野にはいつも笑顔でいて欲しい。
その笑顔の種は俺があげたい。
そして誰よりも多く笑顔を見るのは、俺でありたい。
俺は欲張りなのかな。

島の北端の岬へやって来た。
もうすぐ日が沈む。
海いっぱいの夕陽を牧野にあげたくて、展望台に2人で立った。
海がどんどんオレンジ色に染まっていく。
何も遮るものがない海の上には、今からその向こう側に消えて行く太陽が今日最後の光を放つ。
海の上には細く長い光の道が伸びて、波間に揺れている。
見ているうちに水平線は燃えるような赤に変わった。
空はオレンジ、黄色、群青色、瑠璃紺のグラデーション。

「綺麗…」

牧野の口から零れる感嘆の声。
それは俺の胸をぐっと締め付けた。
身体が勝手に動いてく。
牧野を背中から抱き竦めた。
きゅうっと身体を硬くするのが分かる。
それでも腕を緩められない。

「…類…?」
「少しだけこのままで…」

牧野の髪に顔を埋める。
さらさらな黒髪がひやりと頬を撫でる。

「どうしたの…?」
「分からない。急に苦しくなって、1人で立っていられなくなった。」

本当は分かってる。
俺は牧野の事、捕まえたいんだ。
俺の腕の中にずっと閉じ込めてしまいたいんだ。

牧野の手が、俺の腕にそっと触れる。

「大丈夫だよ。あたし、いつも類の隣にいるから。1人じゃないよ。」

牧野に触れているところから伝わる温かさが、じんわりと俺の胸に迫って、溢れて。
思わず目を瞑った。


__________


沖縄はご飯美味しいですよねぇ。
こっちにいても沖縄料理屋さんに行くの、好きです!
類達みたくコースじゃなくて、あくまでも家庭料理のお店だけどね。


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星に願いを 5

空と海が燃えているかのような夕焼けの中、類に後ろから抱き締められて。
あたしは身動き出来なくなった。
類があんまり苦しそうで、それを思うとあたしの胸も軋む。

あたしはいつも類にこんな思いをさせているの?
類はあたしに気を遣わせない為に、自分の気持ちを押し込めて、いつも優しく笑っていてくれた?
あたしはそれに甘えて、類の隣は居心地がいいって、ぬるま湯に浸かったつもりでいた?
なんて傲慢。
なんて自分本位な女なんだろう。

恥ずかしさで身が縮む思いがする。
でも今は、そんな自分の事より、類の事。
あたしは類にちゃんと伝えなくちゃいけない。

「類、ごめんね、苦しい思いさせて。
あたし、ずっと類に甘えて、守られて、そればっかりだったね…
これからは、そうさせないように頑張るから。
ただ類の隣に居るだけじゃなくて、あたしも類の気持ちを休ませる事が出来るような場所になりたい。だから…」
「牧野…」

腕の力が緩められ、類があたしの前に立った。

「ね、それって… 今の言葉って… ずっと俺の隣に居てくれるってこと?」

類のビー玉みたいな瞳の中に、今見ていた夕陽みたいな熱が滲んでる。
それを見つめながら、頷いた。

「ダメ…かな?」
「ダメじゃない。」

また、正面からぎゅっと抱き締められた。

「俺の… 俺だけの牧野になってくれるの?」
「うん…」
「牧野の全部、俺のもの?」
「もうずっと前からそうだよ。あたしの中には類しか居ないもん。」

そう言ったら、類がおでこをあたしの肩にぶつけてきた。

「何だよ… 俺、あんたの気持ち、読み違えてた?
ずっと牧野は仲のいい友達でいたいのかと思ってた…」
「あたしこそ、類が『付き会おう』とか言わないから、このままの関係がいいのかと思ってたのに。」
「あり得ないだろ、そんな事。好きな人を自分のものにしたくない男なんていない。」

好きな人…
あたしの事だよね。
そしてあたしの好きな人は類。
2人して遠慮し合ってた?
伝えるべき言葉、今ちゃんと口にしなきゃ。

「類… 好き… もう類しか見えないよ。」
「牧野… 好きだ。ずっと好きだった。」

耳元で囁くように告げられた類の気持ち。
心がびりびりと震えてる。
頭の中が痺れて、何も考えられなくなったところに、類の唇が降ってきた。
柔らかく重なる類の唇を感じて、心だけじゃなく、身体も震えてる。
優しく何度も何度も重ねられては離れて、また与えられる口付け。
その度に、自分の中が類という明るい光で照らされて、気持ちが澄んでいく。

あぁ、そっか。
あたしに足りなかったもの。
それは素直になることだったんだ。
自分の気持ちをちゃんと口にしたら、もどかしい思いなんか何処かに消えていった。

気が付けば、太陽はすっかり水平線の向こうに消えていて、頭の上には東京では見ることが叶わない満天の星空が広がり始めていた。

「牧野、明日、何の日か知ってる?」
「今日が7月6日だから… 七夕?」
「そう。七夕。7月7日になる真夜中過ぎに、俺達の真上にベガとアルタイルが見えるはずなんだ。
それを牧野と見たくて、ここまで連れてきたんだよ。」
「だから雨が降らないところって言ってたの?」
「ん…。」

あたしの大好きな天使の微笑みを浮かべてる類。
いつもあたしを喜ばせる事ばかり考えてる。

「七夕の星に願い事するつもりだったのに、その前に叶った。
綺麗な海と夕陽のお蔭かな。」

そう言ってあたしのおでこにそっと口付ける。
あんなに抱き合ってキスまでしちゃってなんだけど、気持ちがちょっとずつ落ち着いてくると、こんなにベタベタくっついてるのが急に恥ずかしくなってきた。
誰も周りにいないとはいえ、知らない人に見られちゃう可能性もあるし…
今までこんなに類に密着してたことなんかないし…

1人で頭の中ぐるんぐるんに色んな事を考えていたら、類がくすりと笑った。

「あんた、またヘンなこと考えてるでしょ。」
「ヘンなことって… ただちょっと恥ずかしくって…」
「やっと牧野のホントの気持ち聞けたんだ。もう離さない。」

そう言ってまた腕の檻に閉じ込められた。

ようやくホテルに戻って来て、イタリアンレストランで食事した。
類と対面で食事するのが、こんなに恥ずかしいなんて。
さっきしちゃったあんなこと、こんなことが頭にフラッシュバックしてきて、赤面しっぱなしで。
折角のお料理の味は殆ど分からなかった。
この島で獲れたお魚や、新鮮なお野菜が使われてたはずなんだけどなぁ。
それよりも目の前の類が急に今までと違う存在に思えちゃって。
あたしの頭は混乱中だ。


__________


七夕のSSにしようと思ってたのに、7月6日&7日に間に合いませんでしたー。
スミマセン。
今年の七夕は土曜日でもないし…
過去のどこかの七夕のお話…という事にして下さいね。
それにしても、このお話のロケ地。
台風で大変みたいです。
何事も無く通り過ぎてくれますように…


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