大学生3年のつくし、4年のあきら。
まだ心が通じ合う前の、8月のある午後の一コマです。
__________
あ、通り雨…
ふと顔をあげたら、雨粒が大きなガラス窓を濡らしてくのが目に入った。
1人で座っていたファミレスの窓辺の席。
ランチタイムが終わって、お客さんも疎らで、静かな時間が流れてる。
そこに文庫本を持ってきて、ドリンクバーで好きな飲み物を代わる代わる選びながら、ゆっくりしていた。
夏休みだけど、今日はバイトもない束の間のあたしの休息日。
アパートは狭くて、暑いし。
図書館では飲み物は飲めないし。
1人で気ままに読書するのに、午後のファミレスは最適だ。
空はそんなに暗くないのに、雨が風に煽られて斜めに降っているのが見える。
すぐに止むかな、これは?
外の音はガラスに遮断されて聞こえてはこないけれど、多分さーーーーって感じの音がするような小雨だろうな。
そんな事をぼんやりと思っていたら、不意に美作さんの事が頭に浮かんだ。
美作さんが、頭を振って、髪に付いた雨の雫を払ってる姿が、頭の中に再生される。

あの日も通り雨、降ってたっけ…
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
絵夢ちゃん、芽夢ちゃんにせがまれて、美作さんちの東屋でお花に囲まれて遊んでいたら、俄雨が降った日があった。
そこに雨に濡れながら飛び込んで来たのが美作さんだった。
「急に雨に降られたよ。」
はにかみながらそう言って、手で服に付いた雨粒を払い、頭を振って雫を飛ばした。
その仕草に何故だかドキンとして。
かっこいい…なんて思った自分がいた。
F4の美作あきらだよ?
何したってかっこいいに決まってる。
そんな事、もうとっくに知ってる筈のあたしなのに、何でこんなに胸が騒ぐんだろ?
ぽーっと見惚れていたら、絵夢ちゃん、芽夢ちゃんが手に手にタオルを持ってお兄ちゃまに駆け寄って行った。
あたしってホント気が利かない…
何やってんのよ、つくし!
「あ、濡れるから、俺にくっつくな、絵夢、芽夢。
おやつの時間だよ。
それで呼びに来たんだ。
ここに運ばせるか? それともあっちに戻って、お母様と一緒に食べる?」
「まだ、お姉ちゃまとお絵描きしていたいの。」
「誰が一番上手にお花の絵を描けるか競争なのよ。」
「「お兄ちゃまも一緒に描きましょ!」」
そう言われて、2人に手を引っ張られて、こっちに歩いてくる美作さん。
「お茶の時間に気付かなくてごめんなさい。つい夢中になっちゃって。
電話くれたら良かったのに。」
「いや、3人で何してるのか覗きたいと思って来たんだけど、たまたま俄雨に降られちゃってさ。
どれどれ、どんな絵を描いたのか見せてくれよ。」
優しいお兄ちゃまは2人の絵を手に取って、上手に描けたなぁとか、綺麗な色に塗れたねなんて褒めてあげてる。
不意にあたしに向かって美作さんの手が伸びてきた。
何? この手は何してるんだろ?と思ったら、くすりと笑いながら甘く深い声であたしに言った。
「牧野の絵も見せて?」
「え? あたしのも見るの?」
優しい笑い顔で頷いてる美作さん。
絵夢ちゃん、芽夢ちゃんという可愛い妖精さんのような双子の妹ちゃん達を見つめるのと同じその眼差しは、あたしに向けられると何だか胸が苦しくなる。
不意にドキドキさせられたり、きゅーっと苦しくさせられたり。
『優しいお兄ちゃま攻撃』は防ぎようもなく突然やって来るから困るんだ。
手元にあった画用紙を手渡すと、にっこり笑った。
「ストロベリーフィールドか。可愛いな。」
「おば様がドライフラワーにするために沢山植えてるんですって。
小さくて愛らしいなって思って。」
「うん、ふわふわした花の感じとか、よく出てるよ。
あとでこれ、俺にくれる?」
あたしの絵なんか何するんだろ?と不思議に思ったけど、うん、と答えた。
そして4人でまたお絵描きして、美味しいお茶とケーキを頂いた。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
そんな日の事をふと思い出す。
手元の冷めてしまったローズヒップティーを飲んで、また外を眺めた。
雨は少し小降りになってきたようだ。
テーブルの上に置いてあった携帯がメールの着信を知らせる。
手に取ってみれば、美作さんからで。
あまりにタイムリーで心臓がどっくんと跳ねた。
「今、どこで何してる?
お袋が牧野に渡したいものがあるっていうから預かってるんだけど。」
「近所のファミレスで読書中です。」
「牧野のアパートの近所の、ガソリンスタンドの向かいの店?」
「そう。そこにいます。」
「あと15分位で行くから待ってて。」
「了解。」
美作さんが来ると思ったら、どこかそわそわして。
本のページを捲っても、頭に入ってこなくなった。
仕方ないので、シートに身を沈めて、お茶を飲む。
暫くしたら美作さんがお店に入ってくるのが見えた。
身体を起こして、手を振ったら、こっちに歩いてくる。
黒鳶色の髪の毛に雨の雫が煌いてる。
「お待たせ、牧野。」
すっとあたしの前の席に座った美作さん。
まるで待ち合わせしてた恋人同士みたい。
そう思ったら、急に恥ずかしくなって、ほっぺたが熱くなった。
バッグからハンドタオルを出して、美作さんに渡す。
「髪の毛、ちょっと濡れちゃってる。傘、持ってなかったの?」
「ん? あぁ、車の中に無かったんだよ、たまたま。
駐車場から店のエントランスまで、たいした距離じゃないから、走って来たのさ。」
そう言って眇めた目で笑うから、またあたしの胸がきゅーんとなった。
__________
最近あきら見ないね…とのお声がありましたので。
ストックから引っ張り出して、手を入れてみました。
食当たり、恐ろしや…
お優しいお見舞いのお言葉、有り難うございます。
家族9人で食事しててね。
そのうち4人が同じメニュー頼んで。
1人だけ当たるって…
体力落ちてたのかしらね…
まだまだ体調怪しいです。
☆ 2015.07.09 ONCE UPON A TIME K+M様からのイラストを追加

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まだ心が通じ合う前の、8月のある午後の一コマです。
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あ、通り雨…
ふと顔をあげたら、雨粒が大きなガラス窓を濡らしてくのが目に入った。
1人で座っていたファミレスの窓辺の席。
ランチタイムが終わって、お客さんも疎らで、静かな時間が流れてる。
そこに文庫本を持ってきて、ドリンクバーで好きな飲み物を代わる代わる選びながら、ゆっくりしていた。
夏休みだけど、今日はバイトもない束の間のあたしの休息日。
アパートは狭くて、暑いし。
図書館では飲み物は飲めないし。
1人で気ままに読書するのに、午後のファミレスは最適だ。
空はそんなに暗くないのに、雨が風に煽られて斜めに降っているのが見える。
すぐに止むかな、これは?
外の音はガラスに遮断されて聞こえてはこないけれど、多分さーーーーって感じの音がするような小雨だろうな。
そんな事をぼんやりと思っていたら、不意に美作さんの事が頭に浮かんだ。
美作さんが、頭を振って、髪に付いた雨の雫を払ってる姿が、頭の中に再生される。

あの日も通り雨、降ってたっけ…
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
絵夢ちゃん、芽夢ちゃんにせがまれて、美作さんちの東屋でお花に囲まれて遊んでいたら、俄雨が降った日があった。
そこに雨に濡れながら飛び込んで来たのが美作さんだった。
「急に雨に降られたよ。」
はにかみながらそう言って、手で服に付いた雨粒を払い、頭を振って雫を飛ばした。
その仕草に何故だかドキンとして。
かっこいい…なんて思った自分がいた。
F4の美作あきらだよ?
何したってかっこいいに決まってる。
そんな事、もうとっくに知ってる筈のあたしなのに、何でこんなに胸が騒ぐんだろ?
ぽーっと見惚れていたら、絵夢ちゃん、芽夢ちゃんが手に手にタオルを持ってお兄ちゃまに駆け寄って行った。
あたしってホント気が利かない…
何やってんのよ、つくし!
「あ、濡れるから、俺にくっつくな、絵夢、芽夢。
おやつの時間だよ。
それで呼びに来たんだ。
ここに運ばせるか? それともあっちに戻って、お母様と一緒に食べる?」
「まだ、お姉ちゃまとお絵描きしていたいの。」
「誰が一番上手にお花の絵を描けるか競争なのよ。」
「「お兄ちゃまも一緒に描きましょ!」」
そう言われて、2人に手を引っ張られて、こっちに歩いてくる美作さん。
「お茶の時間に気付かなくてごめんなさい。つい夢中になっちゃって。
電話くれたら良かったのに。」
「いや、3人で何してるのか覗きたいと思って来たんだけど、たまたま俄雨に降られちゃってさ。
どれどれ、どんな絵を描いたのか見せてくれよ。」
優しいお兄ちゃまは2人の絵を手に取って、上手に描けたなぁとか、綺麗な色に塗れたねなんて褒めてあげてる。
不意にあたしに向かって美作さんの手が伸びてきた。
何? この手は何してるんだろ?と思ったら、くすりと笑いながら甘く深い声であたしに言った。
「牧野の絵も見せて?」
「え? あたしのも見るの?」
優しい笑い顔で頷いてる美作さん。
絵夢ちゃん、芽夢ちゃんという可愛い妖精さんのような双子の妹ちゃん達を見つめるのと同じその眼差しは、あたしに向けられると何だか胸が苦しくなる。
不意にドキドキさせられたり、きゅーっと苦しくさせられたり。
『優しいお兄ちゃま攻撃』は防ぎようもなく突然やって来るから困るんだ。
手元にあった画用紙を手渡すと、にっこり笑った。
「ストロベリーフィールドか。可愛いな。」
「おば様がドライフラワーにするために沢山植えてるんですって。
小さくて愛らしいなって思って。」
「うん、ふわふわした花の感じとか、よく出てるよ。
あとでこれ、俺にくれる?」
あたしの絵なんか何するんだろ?と不思議に思ったけど、うん、と答えた。
そして4人でまたお絵描きして、美味しいお茶とケーキを頂いた。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
そんな日の事をふと思い出す。
手元の冷めてしまったローズヒップティーを飲んで、また外を眺めた。
雨は少し小降りになってきたようだ。
テーブルの上に置いてあった携帯がメールの着信を知らせる。
手に取ってみれば、美作さんからで。
あまりにタイムリーで心臓がどっくんと跳ねた。
「今、どこで何してる?
お袋が牧野に渡したいものがあるっていうから預かってるんだけど。」
「近所のファミレスで読書中です。」
「牧野のアパートの近所の、ガソリンスタンドの向かいの店?」
「そう。そこにいます。」
「あと15分位で行くから待ってて。」
「了解。」
美作さんが来ると思ったら、どこかそわそわして。
本のページを捲っても、頭に入ってこなくなった。
仕方ないので、シートに身を沈めて、お茶を飲む。
暫くしたら美作さんがお店に入ってくるのが見えた。
身体を起こして、手を振ったら、こっちに歩いてくる。
黒鳶色の髪の毛に雨の雫が煌いてる。
「お待たせ、牧野。」
すっとあたしの前の席に座った美作さん。
まるで待ち合わせしてた恋人同士みたい。
そう思ったら、急に恥ずかしくなって、ほっぺたが熱くなった。
バッグからハンドタオルを出して、美作さんに渡す。
「髪の毛、ちょっと濡れちゃってる。傘、持ってなかったの?」
「ん? あぁ、車の中に無かったんだよ、たまたま。
駐車場から店のエントランスまで、たいした距離じゃないから、走って来たのさ。」
そう言って眇めた目で笑うから、またあたしの胸がきゅーんとなった。
__________
最近あきら見ないね…とのお声がありましたので。
ストックから引っ張り出して、手を入れてみました。
食当たり、恐ろしや…
お優しいお見舞いのお言葉、有り難うございます。
家族9人で食事しててね。
そのうち4人が同じメニュー頼んで。
1人だけ当たるって…
体力落ちてたのかしらね…
まだまだ体調怪しいです。
☆ 2015.07.09 ONCE UPON A TIME K+M様からのイラストを追加



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