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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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early summer vacation 1

今日からしばらくあきつくSSとなります。
ちょい暗総二郎、9話喋りっぱだったので、ちょいとブレイクタイム(笑)

「一日の終わりに」の続編です。

__________


<つくし24歳 あきら25歳 初夏>

暑ーい! 身体が汗ばんでペタペタするよ…

そう思いながら夢の世界から無理矢理意識を引っぱり出した。
眠くてなかなか目が開かない。
目覚ましが鳴らない、今日は土曜日。
久しぶりに朝寝坊だ。
瞼を閉じていても、お日様がすっかり昇っちゃったのが感じられる。

あぁ、今日晴れてるんだ。
こんなに明るいお日様の光を浴びるの、久しぶりかも。
起きて朝ご飯作らなくっちゃ。

ベッドの上で伸びをしたら、身体の色んなところが、パキパキペキペキと小さく音を立てて、動かす為のスイッチを入れていく。
欠伸をしながらようやく目を開けると、美作さんの顔がすぐ隣にあった。

こんなにくっ付いて寝たら、そりゃ暑くもなるよ。

いつ迄経っても、隣に温もりをくれる人が寝ている事に慣れない。
間近にある顔にそっと指を伸ばし触れてみる。
やっぱりちょっと汗ばんだ額。
綺麗に通った鼻筋。
すべすべの頬。
こんな事しても全然起きる気配がない。
ピクリとも動かない。

お仕事いっぱいで、疲れてるのかな?
無理はしないで欲しいけど、立場上、頑張らなくちゃいけない事は沢山あるんだろうな。

黒鳶色の髪の毛に指を入れて梳いてみる。
幸せな気持ちが胸の中に湧いてきて、寝顔を見てるだけなのにドキドキする。

こんなに完璧な美しい寝顔の持ち主が、あたしの彼だなんて。
信じられないよね。
あぁ、どんどん胸が苦しくなってきた!
ちょっと離れないと、心臓持たない!

そう思ってベッドから抜け出そうとしたら、美作さんの腕があたしの腰に巻き付いてきた。

「行くなよ…」

「うわっ、えっ、あの、お、起きてたのっ?」

目を瞑ったまま、美作さんがあたしを自分の胸の中に引き込む。

「起きてたんじゃない。起こされたの、誰かさんの悪戯と独り言で。」

「いっ、悪戯なんてしてないよっ!」

「してただろ、鼻先ちょんちょん触ったり、ほっぺたこしょこしょくすぐったり。」

「違うもん! あんまり綺麗だから思わず触っちゃっただけだからっ。」

くすりと笑う美作さん。

「そうか、そうか。牧野はそんなに俺が好きか。」

そう言ってより一層強く抱きしめてくるから、息苦しくなっちゃって、このままじゃ酸欠になっちゃうと思って身を捩った。

「あのっ、離してっ! あたし、今ちょっと汗臭いかも…」

そう言うと、逆に首筋に顔を埋めてきて、あたしの匂いを確かめてる。

やーめーてー!かがないでっ!

「牧野の匂いしかしないよ。甘くて今すぐ食べたくなるような美味しい匂いがする。」

なんてクスクス笑う。
その笑い声が、あたしの耳をくすぐって、居ても立ってもいられなくなる。

あたしはお菓子じゃありませんから!

「もうこのドゥヴェじゃ暑い季節になったんだな。もう少し薄手のを出さないと。俺も何だか汗っぽい。」

そう言いながらも尚更あたしにぴったりくっ付いてくるから、余計に暑いっつーの。
言ってる事とやってる事が逆ですよ、彼氏様!
もう、あたしはすっかり茹で蛸状態だ。

「『こんなに完璧な美しい寝顔の持ち主が、あたしの彼だなんて。信じられないよね。』だっけ? そろそろ信じてくれてもいいんじゃないのか?」

「きっ、聞いてたのっ?」

顔が更に赤くなる。
頬っぺたが熱いのが触らなくても分かっちゃう。

「聞いてたも何も、お前が俺の鼻先でそう言ったんだろ?」

「だってぐっすり寝てると思ったんだもん…それに思っただけで口に出したつもりもなかったし…」

至近距離で優しく目を細めてあたしを見つめる美作さんにドキドキしっぱなしだ。

「起きてる俺にも、お前の気持ち、ちゃんと教えてくれな。」

「う、うん…」

「はい、どうぞ。」

「へっ? 何? 何がどうぞなの?」

「だから、今、牧野の気持ちを言うとこなんだけど。」

「な、なんであたしだけいきなりそんな事するのよ? 恥ずかしいじゃない…」

「じゃあ、俺から言えばいいのか?」

とニヤリと笑う。

ヤバイ。これは何か攻撃されるんですよね?
で、大抵あたしは討ち死にすることになってますよね?
かつての『優しいお兄ちゃま攻撃』は、『甘ーい彼氏のラブラブ攻撃』へと姿を変え、その威力は何倍にも膨れ上がってる。
ロックオンされたら、もうコテンパンにやられちゃうっ。
かくなる上は脱出するしかない!
そう思って、ドゥヴェの中に潜り込み、腕の輪をくぐり抜けようとしたけれど…
そこは敵の方が何枚も上手で…
もみ合ってるうちに、パジャマのボタンは全部外され、熱を帯びた手と唇が身体中に触れて、戦意喪失させられて。
熱い吐息と共に、耳元に沢山の愛の言葉が降って来た。
その言葉を聞いて、身も心も溶かされて、甘ーいお菓子のように頭から丸ごと食べられちゃったのだった。


__________


わぁ、食べられたっ!
細かい事書いてると、先に進まないので、あっさり参ります!


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early summer vacation 2

朝、目が覚めたら、一番に相談しようと思っていた事があったのに。

ウィークデーに忙し過ぎてお預けをくらっていたのと、寝ている俺に素直な気持ちを呟く牧野が可愛くて。
つい自分を抑えられずに、腕の中から逃げようとした牧野を抱いた。
明るい朝の光の中で恥じらう様に、余計煽られて我を忘れた。
また微睡みの中に戻ってしまった牧野の横顔に目を当てる。
髪のさらさらと零れていく感覚が心地良くて、何度も手櫛で髪を梳く。
起こさないように、そっと、そっと。
これは俺の日課のようになっている。
この髪に触れると、何とも言えない気持ちが湧いてくるから。
愛おしくって、幸せで、胸が熱くなる。
静かな部屋の中に、さらりさらりと髪を梳く小さな音だけが聞こえて。
暖かい空気で部屋が満たされていく。

起きて来たら、ぷんぷん怒る事は必至。
愛しの彼女のご機嫌を取るべく、朝の買い物に出る事にした。
牧野の機嫌は美味しい食べ物で釣るに限る。
シャワーを浴びて、休日用のラフな格好に着替えて、フラットを出る。
近くのパン屋で焼き立てのバゲットとクロワッサンと、真っ赤なベリーのタルトを仕入れて。
通りすがりの花屋で、小さなブーケを買って。
戻ってみれば、まだ牧野は夢の中。
あどけない顔で眠っている様子に、くすりと笑いが零れる。
ドゥヴェの上に投げ出された腕。
露わになっている華奢な肩。
見る度にドキリとさせられる鎖骨。
素肌をさらしながらすやすや眠るのは、俺の天使か? 小悪魔か?
どちらにしても俺に幸せを運んでくる存在。

「牧野、起きて。朝食にしよう。」

額に落とした目覚めのキスで、寝返りを打つ。
ここはもう一押し。
耳元にもキスを一つ。

「お早う、牧野。」

「んー…お早う、美作さん…」

と、寝ぼけていたのに、急にがばりと身を起こした牧野。
この後のお怒りをまともに受けては大変と、

「シャワー、浴びておいで。コーヒー淹れておくからさ。」

と言って、軽くハグして、寝室を抜け出した。
案の定、牧野が何やら叫んでいる声が追い掛けてくるが、気にしない、気にしない。
とびきり美味しいコーヒーを淹れようと、キッチンに立った。

さっき買った小さいブーケを、ガラスのフラワーヴァーズに無造作に生けて、ダイニングテーブルの真ん中に。
バゲットはナイフと一緒にカッターボードに載せた。
クロワッサンは温めたオーブンの中で待機中。
冷蔵庫からジャムとバターと、オレンジジュースを出して、テーブルへ。
後はコーヒーをゆっくり丁寧に落として待つばかり。
甲斐甲斐しい自分に思わずにやける。

ホント、牧野相手だと俺は何でもやってのけるな。
あいつはずっと俺の事『優しいお兄ちゃま』なんて言ってたけど、『優しい彼氏様』になってからの方がずっと牧野を甘やかしてる。
俺もそれが楽しくて嬉しくて仕方ないんだけど。

ルームウェアを着て、濡れ髪をタオルで拭きながら、牧野がダイニングにやって来た。

「えっ!? もしかしてパン屋さんに行って来てくれたの? お花も買ってくれた?」

「そう。休日の朝って感じだろ? 」

驚く牧野に微笑み掛けながら聞いてやる。

「もう食べれる? コーヒー淹れていいか?」

「うん、有り難う、美作さん。あたしも何か手伝うよ!」

そう言って濡れ髪を手早くアップにして、キッチンにやってくる。

その後れ毛がチラチラする項を見せつけるのは、小悪魔の仕業だろ?

首筋に唇を滑らせたいのを堪えつつ、牧野に頼み事をする。

「じゃあ、オーブンからクロワッサン出して。それからそこにある袋からベリーのタルトを出して、皿に載せてくれ。」

「はぁーい!」

ほーら、食べ物に釣られた牧野からは小言は出てこない。
俺の作成勝ちだな。

コーヒーはたっぷり飲めるように大き目のマグに。
牧野の分はミルクもたっぷりにして。

全部ダイニングテーブルに運んで、2人で向かい合わせに座る。

「じゃあ、食べようか。」

「うんっ! いただきまーす! 美作さん、お使い、有り難うございます!」

好物を目の前にして、ぺこりと頭を下げる牧野が可愛くて、マグを持ちながら暫し牧野観察をすることにした。
クロワッサンを齧り、カフェオレをふうふう吹いてる。

そんなに熱くはないよ、猫舌のお前の為にミルクをたっぷり入れたから。

バゲットを切って、ジャムとバターを塗って、おいしっ!と言いながら頬張る。
牧野を見ているだけで、美味しく感じれらる朝食。
食べないの?と首を傾げて聞かれ、やっと手を付けた。

ん、ちょっと待てよ。
何か忘れてないか?
そうだ、俺は、話すことがあったんだっけ!


__________


甘ーい!
相変わらずあきらは甘いぜ!
そうそう、その話をしないと、このSSのタイトルが意味不明でしょ、あきらっ!
ということで、その謎は明日…


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early summer vacation 3

「牧野、俺、来週フランスに出張なんだ。」

「あ、そうなんだ。どれくらい?」

「週末含めて3~4日と思ってるんだけど… 牧野も一緒に行かない?」

「え? だってお仕事なんでしょ?」

「あぁ、ニースでインテリア関係の見本市があるんだ。仕事は1日で終わらせて、ちょっと2人で旅行しないか? 大学の願書ももう出した事だし。ちょっとくらい学校サボってもいいだろ?」

「うん、行きたいっ!」

途端に顔が綻ぶ。

「じゃ、決まりな。んー、木曜の朝出て、日曜の夜のフライトで帰ってくるので大丈夫か?」

「あたしは大丈夫。えー、楽しみだなぁ。2人で旅行なんて、久しぶりだね。クリスマス休暇以来?」

「そうだろ? だからちょっと出掛けたくてさ。一所懸命勉強頑張った牧野へのご褒美旅行ってとこかな。」

「そんな…あたしの勝手で大学に行きたいだけなのに…。有り難う、美作さん。でもお仕事1日で終わらせて…なんて出来るの?」

「任せとけって。1日は有給休暇使わせてもらうよ。ここの所、働きづめだったから、それくらい許されるさ。1日だけ1人で散歩でもしといてくれよ。1人が不安なら、現地で日本語ができるガイドを雇ってもいいぞ?」

「えっ、そんなの、1人で大丈夫に決まってるじゃん! 子供じゃないんだから。 フランスなんて、静さんの結婚式以来だよー。ドキドキしてきた。最近全然使ってないから、フランス語、話せるかな?」

そう言って大きな目を輝せる牧野は可愛すぎて、今すぐ抱き締めたくなる程だ。
たった3泊4日の小旅行で、こんなに喜んでくれる、俺の彼女。
もっと時間があったら、色んな所に連れて行ってやれるのにな。

「フランス語、すっかり忘れた…なんて言ったら、教えてくれた類ががっかりするな。静の結婚式の時は、パリにほんのちょっと行っただけだったろ。今回は同じフランスでも南仏だから、全然印象違うぞ。」

「そうなんだ… あとで本屋さん行って来なくちゃ!」

何故に本屋?…と思ったら、鈍感牧野にしては珍しく俺の怪訝な顔の理由に気が付いたらしく、

「ガイドブックとフランス語会話の本、買いに行くの!」

と意気込んでる。

今時タブレット端末があれば、紙モノは要らないだろ。
会話だって、自動的に翻訳して喋ってくれるんだぞ。
お前が使ってるスマホだって、機能満載なんだ。

アナログな牧野の脳内を思って、可笑しいやら、ちょっと気の毒な気分になるやら。

「…大丈夫だよ、もうあるから。それよりこれ食べちゃったら、何処か出掛けよう。今日は珍しく晴れてるから、部屋にこもってるのは勿体ないぞ。もう昼前だ。」

「そうだね!…って、一体誰のせいで朝寝坊したと思ってんのよ!」

しまった、一言多かったか…
女って、なんで簡単に治めてた怒りを再燃させられるんだろうな?
その思考回路、理解不能。
まぁ、牧野の場合、ベリーのタルトを口に運んでやれば、またもぐもぐ食べて、幸せな顔になるんだろう?
『優しい彼氏様』は愛しの彼女に手ずから食べさせてやったりしちゃうんだよ。

「はい、口開けて。あーん。」

そう言ってベリーのタルトをフォークに載せて、牧野の口元に寄せれば、あっさり口が開いて、タルトが吸い込まれてく。
頬に手を当てて、うっとりしてる牧野。

ちょろいもんだ。
この1年弱一緒に暮らして、俺の中には『牧野マニュアル 傾向と対策』がかなり出来上がりつつあるんだからな。

来週はどこに連れて行ってやろうかな?
どこを2人で歩こう?
何を食べさせてやったら喜ぶかな?

俺の頭の中は、来週末の旅行の計画でいっぱいだ。


__________


はい、タイトルの理由がやっと出てまいりました!
ちょっと早めの短いバカンスに行って頂きまーす。
「あきつくで、あきら君の出張につくしちゃんが同行するってシチュ」というお題を頂きました。
地の利がないロンドンを飛び立って、管理人のホームグラウンドとも言えるフランスへ飛んでっちゃいます(笑)
うん、フランスが舞台なら、あきつくも書けるよ!
明日から、南仏観光名所巡りでございますー。


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early summer vacation 4

小雨で少々肌寒かったガトウィック空港を飛び立って2時間。
飛行機はニース・コートダジュール空港に到着した。

「たった2時間で地中海まで来ちゃったの?」

なんて驚いてる牧野。
フライトタイムを見て3時間掛かると思っていたらしい。
イギリスとフランスの間には時差があるから、時計を1時間早めるように言ってやる。
ファーストクラスを敬遠している牧野と、エコノミーには乗りたくない俺。
折衷案でビジネスクラスのチケットを用意したのだが、愛しの彼女は

「こんな短いフライトならエコノミーでも大丈夫だったよ!」

と少々お怒り気味だ。
せっかくの旅行、最初から躓いては元も子もない。
なんとか機嫌を直したいと思っていたら、ターミナルを出て、南仏のまばゆい陽の光を浴びた途端、向日葵のような笑顔が飛び出した。

「美作さんっ、ここにはお日様が3つくらいあるんじゃない? ロンドンと全然違うよー!」

あっという間に上着を脱いで、半袖姿になった牧野を見て、俺は目を細めた。

眩しいのは太陽じゃなくてお前だよ、牧野。
ホントにお前は明るい場所に咲いてる向日葵みたいだ。

予約しておいたレンタカーに乗り込んで、ホテルに向かう。
ビーチに沿って延びている、Promenade des Anglais<プロムナード・デ・ザングレ>に面した5つ星ホテル。
もちろん海が臨めるスイートルーム。
牧野に怒られる、いや呆れられるかも?とは思ったけれど、2人で旅行することにした時から、絶対ここに泊まる!と俺は決めていた。
部屋に通されて、案の定、呆気にとられている牧野。
ポーターが下がって2人きりになった途端、後ろからやんわり抱き締めた。
窓の向こうには青い空と地中海が広がってる。

「美作さん… これ、どんなお姫様の部屋よ?」

「ん? 俺のお姫様の部屋だけど?」

牧野の頬の横に自分の頬を寄せて、同じ景色を眺める。

「今迄見たどのホテルのお部屋よりも豪奢だよ?」

「ま、そうかもな。3日経ったら、俺たちの小さなフラットに帰らなきゃだから、それ迄お姫様気分を味わってくれよ。」

「なんかもう、呆れて言葉も出ない…」

「そう? じゃあ遠慮なく。」

そう言って牧野の正面に回り込み、ふっくらした唇にチュッと音をたててキスをした。
目を丸くしたままの牧野に笑いが込み上げる。

「限られた時間を有効に使う為に、今日の予定を決めませんか、姫?」

「…え、あ、うん。どこに行くの?」

「とりあえず腹拵えしてから、海沿いの遊歩道を散歩してもいいし、クルージングに出てもいいぞ。牧野は行きたい所ある?」

飛行機の中でタブレットにダウンロードしたニースの観光ガイドを熱心に見ていた牧野。

「えーっとね、シャガールの美術館とマティスの美術館に行ってみたい。あとは、旧市街の方は歩いて回ると楽しそうだよ。」

「シャガールの美術館は、明日俺が仕事してる間に行ってきたら? マティス美術館は一緒に行きたいから、日曜日に。じゃあ、今日はランチの後、散歩な。あの海辺の道を歩いて旧市街まで行こう。」

そう決めて、ルームサービスを運ばせるために電話を掛けた。
このホテルのレストランはニースで一、二を争う格付け。
そこで食事をするには、かなりフォーマルなドレスが必要になる。
そういう世界に慣れてきたとはいえ、折角の小旅行で、必要以上に緊張させたくないと思い、事前にランチをオーダーしておいた。
部屋のテラスのテーブルから、海を見て、地中海の風を感じながら食事する。
牧野が美味しそうに食べる顔が見られる筈。
そう思っただけでワクワクする。

「おいで。」

ふわりふわりと風に揺れるオーガンジーのカーテンを潜り抜け、牧野の手を引いてテラスに出た。

「うわぁ…」

目の前に広がる紺碧の海。
波間に浮かぶヨットには白い帆。
空にはカモメが飛んでいる。
南国を思わせるパームツリーが風に揺れて。
牧野が俺に満面の笑みで話しかけてくる。

「美作さん、素敵な所だね、このお部屋も、ニースの海も。連れて来てくれて有り難う…」

牧野の言葉と笑顔が、俺の心を幸せな気持ちで満たしてく。
とても幸せなのにふいに胸が苦しくなって、牧野をぎゅっと抱き締めた。


__________


きゃー! ラブラブー!
男同士のトーク場面、それも重い話題ばっかり書いてたから、2人の南仏デート、楽しくて楽しくて(笑)
妄想が広がりますー。
まだホテルに着いたとこまでしか書いてないからねっ。
3泊4日で一体何話になっちゃうの?


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early summer vacation 5

心地よい風が吹き抜ける、テラスのテーブルに着いた。
パラソルが日射しを程よく遮ってくれる。
今日はもう車の運転はしないと決めて、食前酒にキール・ロワイヤルを注文する。
カシスの赤い色が可愛いと喜ぶ牧野の顔が見たくて。
2人で目を合わせて乾杯。
一口、一口、飲み下すごとに、牧野の頬が桜色に染まってく。
それを見つめていたら、前菜が運ばれてきた。
最初は赤座エビのロースト。チリペッパーが効いていて食欲をそそる。
牧野の目がきらきらと光ってる。
すっかりエビの虜だ。
次は魚料理。
Rouget rouge<ルジェ・ルージュ>(スズキの一種)のポワレにズッキーニの花のフライが添えられていた。
近くの港で水揚げされた新鮮な素材を使っているから、是非食べさせたいと思ったんだ。
でも牧野の心を捉えたのは、添え物の花のフライの方で。

「美作さーん、お花を食べるなんて、勿体ないような嬉しいような、不思議な気持ちになるね!」

なんて喜んでる。

いや、俺も嫌いじゃないよ、ズッキーニの花のフライはさ。
でも俺の気持ちも汲んでくれ!

苦笑いしながら、俺の分もフライを口に運んでやる。
幸せそうな顔して、口をもぐもぐさせてる牧野。

お前の幸せは俺の幸せなんだから、これでよしとするか。

肉料理はテンダーロインのステーキに、付け合せは野菜が詰まった Morille<モリーユ>(アミガサタケ)とクリーミーなマッシュポテト。
ミディアムレアに焼かれた肉からはジューシーな風味が溢れ出し、牧野はまた目を丸くしたり、ウットリしたりしながら食べている。
俺はこの地でしか飲めない Bellet<ベレ>の赤ワインに舌鼓を打ちながら、また牧野観察に勤しむ。

なんでこいつは食事する時、こんなにくるくる表情を変えるんだろう?
俺の周りには、こんなに美味しそうに食べるヤツは居なかった。
これを作ったシェフに見せてやりたいよな。

デザートはオレンジの風味が効いたチョコレートケーキ。
ここニースでは柑橘系のチョコレートが名物だから、それをアレンジしたケーキなんだろう。
牧野の好みにピッタリだ。

全部食べ終わって、サーブされたコーヒーを飲んだら、もう15時になっていた。
この季節、日の入りは21時くらいだから、散策するならあと6時間。
焦る必要はないけれど、疲れてはいないかと思って、牧野に聞いてみる。

「お腹いっぱいだろ? 食休みするか?」

「ううん、腹ごなしに歩きたい! 美作さんは?」

「俺もそれがいいな。じゃ、行くか?」

「うんっ!」

食事でエネルギーを満タンにした牧野は元気いっぱい。
飛び跳ねるような軽快な足取りで歩いてく。

ホテルの目の前にある Promenade des Anglais<プロムナード・デ・ザングレ>を、手を繋いで散歩する。
同じようにのんびり歩く人も、自転車で颯爽と駆け抜けていく人もいる。

「こんな遊歩道、自転車で走ったら気持ちいいんだろうねぇ。」

「牧野も乗りたいのか? あの青い自転車は皆レンタサイクルだよ。簡単に借りれるから、試す?」

「ううん、いいの。だって、こうやって美作さんと手を繋いで歩きたいから。ただ、風を切って走るのは気持ちいいかな?って思ったんだ。ねぇ、一緒にここを走ろうよ!」

俺の彼女の発想は突飛だ。
でも自分の気持ちを素直に言葉にしてくれたことが嬉しくて、ついつい顔が綻ぶ。
世界随一のビーチリゾートの遊歩道を2人で手を繋いで走り抜けるだと?
なんてこっぱずかしくって、くすぐったいデートなんだ!
でも牧野が望むならなんだってやってやるさ。

Promenade des Anglais<プロムナード・デ・ザングレ>が終わる所まで東に向かって歩き、旧市街に入った。
サーモンピンク、サンドベージュやレンガ色に塗られた可愛いおもちゃのような建物が、所狭しとひしめき合っていて、道幅も極端に狭い。
迷路みたいな路地の中に、小さな土産物屋やカフェ、レストランが詰まってる。
牧野はウィンドウを覗いて歓声をあげたり、時には店の中に飛び込んでいったり。
たどたどしいフランス語で、お店の人とコミュニケーションをとっているのも微笑ましくて、ちょっと離れて見守っていたら、

「美作さんっ、ニヤニヤしてないで助けてよ!」

なんて叱られた。
歩き疲れたら、カフェで一休みして。
また2人でそぞろ歩いて。
牧野はプロヴァンス柄の布で出来たラベンダーのサシェや、ラベンダーやオリーブを使っている石鹸をいくつも買ってた。
ウチの妹たちやT3への土産なんだと。
自分用には食べ物ばかり。
オリーブオイルに、ドライハーブ。
蜂蜜に、コンフィチュールの瓶詰。
牧野らしいって言えば、そうなんだけど。
こんなところにも色気より食い気の牧野がいて面白い。

夕暮れが近づいてきた頃、

「連れて行きたいところがあるんだ。」

と言って、牧野を Promenade des Anglais<プロムナード・デ・ザングレ>の突き当りにある階段に誘った。


__________


ランチ、美味しそう…
自分が食べたいものを並べてみました。
エビとズッキーニのお花のフライとモリーユ、大好きだ!
今回、食べ物ネタ多めのお話になってます…


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