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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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月を待つ

毎晩月が出るのを待っている。
どうしてだか分からないけれど、月夜の晩にだけ、あの人がふらりと現れるから。
月明かりに照らされて、ドアの前に佇んでいるのが目に入ると、身体中の血がふつふつと沸き立つような気持ちになる。
待って、待って、待ち焦がれて。
会いたくて、触れたくて、喉から手が出る程欲している人が、するりといとも簡単にあたしの部屋に入ってくる。
そうやって、月が出ている間だけ、あたしのものになる。
今夜は満月。
あの人はまた来てくれるんだろうか…


「牧野は嘘つきだよな。」

西門さんの声が耳に入り込む。

「こんなに俺に乱されて、声あげて、絡みついて来るのに、俺の事好きじゃないって言うのか?」

そう言って、あたしをどんどん追い詰めてく。

「好きじゃない。好きじゃないよ…
そんな気持ちじゃないよ、これは。」

声に出せるのはそこ迄。
続きは口にしてはいけない言葉。

愛してる。
苦しくて、心が焼け焦げそうだよ。
それ位貴方を想ってる。
その想いに身体中支配されて、気が狂いそうなの。
でも、貴方があたしのものになるのは月が出ている間だけ。
そしていつかどこか手の届かないところへ行ってしまうんでしょう?
その日が一日でも遅くなりますようにって祈る毎日を過ごしてるの。
もしその日が来てしまったら、あたしはきっと、跡形もなく崩れてしまうと思う。
それ程貴方はあたしを侵食しているの。

言葉に出来ないから、溢れそうな気持ちを視線に載せて見つめる。
西門さんの深い漆黒の瞳。
今は細められていて、その目を見ていると胸が苦しくなる。


-*-*-*-*-*-


月が出ている晩だけ、牧野の部屋を訪ねる。
青白い光の力を借りて、不確かで細い糸のような牧野との繋がりを手繰り寄せる。
窓辺のベッドの上で、白い布を身体に巻きつけ、月明かりに浮かび上がる姿は、乳白色の大理石の彫像のようだ。
触れるとひやりとして、するすると指が滑っていく。
濡れた瞳に俺が映る。
何か言いたげな唇は、開きかけては溜息だけ零して噤まれる。

俺に抱かれはするのに、絶対に自分の気持ちを口にしない。
お前が好きじゃない男に身体を許すなんてあり得ないだろう?
お前だって俺が好きな筈なんだ。
どうして俺に心を許してくれない?
俺がお前に全てを曝け出したら、お前も本心を見せるのか?

「俺の事、好きだろう?」
「好きじゃない…」
「嘘吐くなよ。絶対に俺の事好きな筈だ。」
「だから好きじゃないってば。」
「俺は… お前が好きだよ、牧野。」

柔らかな頬に手を伸ばす。
指の甲でそっと撫で上げてから、掌で頬を包み込んだ。

「…嘘。」
「嘘じゃねぇ。嘘吐きはお前だろ?」
「…なんでそんな事言うのよ?
西門さんは…、ここにいてくれるのは今だけなんでしょ?
月が消えたら一緒に消えちゃう。
そしていつか手の届かない世界に帰っちゃうんでしょ?
なのにそんな事言うなんて…」

俺から目を逸らそうとするから、追いかけて覗き込む。

「同じ世界に生きてくれって言ったら、お前は覚悟を決めて飛び込むか?
それとも諦めるのか、あの時みたいに?」
「…あたしは、もう西門さんがいないと息も出来ないよ…」
「それって俺の事好きってことだろ?」
「好きなんて言葉じゃ足りないよ。
あたしの全てで愛してる…」

ぽたりぽたりと涙の粒が落ちて、白い布に染みを作る。
掌で頬をぐいと拭ってから、牧野を俺の腕の中に閉じ込めた。
思ってもみなかった牧野からの言葉に、心臓は暴れて、口はからからに乾いている。
でも何か言わねぇと。

「何だよ… ずっと自信無くて、不安で、苦しかったのに。
早く言えよ、そういう事。」
「…西門さんこそ俺の事好きだろう?って聞くばかりで、あたしに何も言ってくれなかったじゃない…」
「そうか…」
「そうだよ。あたしこそずっと不安でおかしくなりそうだったんだよ。」

腕の中で牧野の身体から強張りが解けて、俺の身体にぴたりと寄り添う。

「俺のものになってくれるか?」
「うん。西門さんもあたしのものになってくれる?」
「ああ、望むところだ。」
「ありがと…」

満月に見守られながらキスを交わした。
牧野の泣き笑いしている顔が輝く。
今まで冷たい光だと思っていた月明かりが、温かなものに変わってく。

「愛してるよ、牧野。」


__________


今夜は中秋の名月ということで。
満月に絡めたSSをと考えてたんですけど、非常に難しかったですぅ。
イメージはかぐや姫!
でもこの場合の姫は総二郎(爆)
1人で月に帰る…じゃなくて、つくしをさらってくにしときました。
意地っ張りなつくしと、臆病な総二郎。
すれ違わないで良かったね。
0時UPだと月夜に間に合わないので12時UPですー。


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