「あ、類? メール読んでくれた?
うん、そう。そうなの。お願いできるかなぁ?
あ、ホント?! すっごく嬉しい!
うん… うん… 土曜日はどお?
そっか… じゃ、日曜日?
うん、分かった。待ってるね! じゃあ、またねぇ。」
牧野が類と電話してる。
寝ている俺に聞こえてないと思い込んでいるらしいけど、俺はお前がベッドを抜け出した時に目が覚めちゃってんの。
声顰めてたって、この狭い牧野の部屋じゃ、筒抜けだっつーの!
類相手に嬉しいとか待ってるとか、何の話だよ、こいつ…
日曜日、類と何するつもりだ?
イライラした気持ちを持て余しながら、狭いベッドの上で寝返りを打つ。
はぁ… 類ねぇ…
俺と牧野が付き合うようになっても、まるっきり関係ないかのように、類と牧野の距離は変わらない。
互いの一部とか言い合っちゃって、牧野もすっかり類には気を許してる。
その証拠に、「類の隣は落ち着くの。」なんて言って、2人で寄り添って昼寝までしてたりする。
牧野には類に対する恋愛感情は無いのかもしれないが、類にその気がないとは言い切れない。
俺が何かヘマをやらかして、一瞬でも牧野の手を離す事があったら、かっ攫っていくのは類だろう。
そんな事あってたまるか!
俺がこの先ずっと牧野と生きてくんだよ!
類にも司にもあきらにも、何があっても渡せねぇ!
そんな事を考えていると、牧野が足音を忍ばせてベッドに戻ってきた。
そっと俺の隣に滑り込み、背中にぺたりとくっついた。
薄着でフラフラしてたからだろう。
俺に触れてる部分はどこもひんやりしてる。
しっかり暖めてやろうと、身体の向きを変え、牧野を抱き込んだ。
「ごめん、起こしちゃった?」
「お前、身体冷えてる。もう夏と同じ気分でいると風邪引くぞ。」
「うん。ごめん。」
「じゃ、これから暖まる事するか?」
「は? 何言ってんの? 寝惚けてんの?
今夜はもう十分ですからっ! 大人しく寝てっ!」
まだ日付も変わってない。
夜は長いんだぜ。
他の男と楽しげに喋ってたお前を、そのまま寝かせるなんてありえない。
例えそれが類でも…
いや、類だから余計に…
俺の事しか考えられないようにしてやるよ。
腕の中でもがく牧野を絡め取った。
-*-*-*-*-*-
土曜日。
仕事が終わって、牧野に電話を掛ける。
「俺。今からそっち行ってもいいか?」
「あれ? 今日はお邸に戻るって言ってなかったっけ?」
「ああ、でもちょっと早く終わったから、そっちに行こうかと思ったんだけど。」
「んー… 今日は晩御飯用意してないし…明日じゃダメ?」
「飯なら2人でどこか食いに行ったっていいだろ?」
「えー? だって今までお仕事で疲れてるでしょ?
無理しないで今日はお邸に帰りなよ。
あたしも明日は出掛ける用があるの。
夕方には戻るから、明日の夜、ウチで一緒にご飯食べよ。ね?」
明日は類と約束していた日曜だろ?
お前、類とどこ行くつもりなんだよ?
聞こえてきたとはいえ、盗み聞きのようなことをしてしまったから。
そう聞きたくても聞けない。
「明日、どこ行くんだ? 俺も一緒に行くよ。」
「あ、ちょっと買い物行くだけだから。付いて来てくれなくて大丈夫!
じゃ、また明日ね! お休みなさい、西門さん!」
あっさり電話は切られた。
買い物だぁ?
類と何買いに行くんだよ?
なんで俺が一緒じゃダメなんだよ?
頭の中を飛び交うクエスチョンマーク。
胸の中には疑念がむくむくと湧いてくる。
焦る気持ちを宥める為に、俺は酒を飲むことにした。
メープルのバーでカウンターに座り、マティーニを飲んでいると、疑念の主人公・類が現れた。
「総二郎。珍しいね、こんな時間にここにいるなんて。」
「類こそ。」
「俺は今やっと商談がまとまったとこ。
息抜きで一杯飲みに来たんだ。ギムレット。」
バーテンダーが頷いて、シェイカーを用意している。
「お前、明日牧野と出掛けるのか?」
「んーーー? 牧野から聞いたの?」
「いや、あいつは買い物に行くって言ってた。」
「じゃあ、そうなんじゃないの?」
「トボケるなよ。お前と一緒なんだろ?」
「牧野に内緒にしてって言われてるから、言えない。」
「どこ行くんだよ?」
「だから言えないって。」
あらぬ方向を見て、のらりくらりとはぐらかす類にイラつく。
類の前にコースターとカクテルグラスが置かれ、そこにギムレットが注がれる。
「総二郎。」
「あぁ?」
「明日になれば全部分かるから、ちょっと待ってなよ。
あ、それと、明日牧野の事つけたりしないでよね。
分かった時に牧野が悲しむから。
俺、牧野の悲しそうな顔なんか見たくないからね。」
しっかりと釘を刺されて、何も言い返せないでいると、カウンターに片手で頬杖を突いた類が、ちらりと俺に目線を投げて
「あーあ、いいなぁ、総二郎は…」
と呟いた。
「何がだよ?」
思わず食って掛かる。
「自分がどれだけ幸せな男か、気が付かないの?
ったく、ムカツクなぁ。
俺、明日もあるからもう帰る。じゃあね。」
本当にカクテル1杯飲み干して、類はさっさとバーを出て行った。
何だよ、ホントに。
何なんだよ!
明日、お前ら、どこ行くんだよ!
__________
ふふふ、総二郎、焦ってるー。
種明かしは次回!
明日の0時も更新しまーす。

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うん… うん… 土曜日はどお?
そっか… じゃ、日曜日?
うん、分かった。待ってるね! じゃあ、またねぇ。」
牧野が類と電話してる。
寝ている俺に聞こえてないと思い込んでいるらしいけど、俺はお前がベッドを抜け出した時に目が覚めちゃってんの。
声顰めてたって、この狭い牧野の部屋じゃ、筒抜けだっつーの!
類相手に嬉しいとか待ってるとか、何の話だよ、こいつ…
日曜日、類と何するつもりだ?
イライラした気持ちを持て余しながら、狭いベッドの上で寝返りを打つ。
はぁ… 類ねぇ…
俺と牧野が付き合うようになっても、まるっきり関係ないかのように、類と牧野の距離は変わらない。
互いの一部とか言い合っちゃって、牧野もすっかり類には気を許してる。
その証拠に、「類の隣は落ち着くの。」なんて言って、2人で寄り添って昼寝までしてたりする。
牧野には類に対する恋愛感情は無いのかもしれないが、類にその気がないとは言い切れない。
俺が何かヘマをやらかして、一瞬でも牧野の手を離す事があったら、かっ攫っていくのは類だろう。
そんな事あってたまるか!
俺がこの先ずっと牧野と生きてくんだよ!
類にも司にもあきらにも、何があっても渡せねぇ!
そんな事を考えていると、牧野が足音を忍ばせてベッドに戻ってきた。
そっと俺の隣に滑り込み、背中にぺたりとくっついた。
薄着でフラフラしてたからだろう。
俺に触れてる部分はどこもひんやりしてる。
しっかり暖めてやろうと、身体の向きを変え、牧野を抱き込んだ。
「ごめん、起こしちゃった?」
「お前、身体冷えてる。もう夏と同じ気分でいると風邪引くぞ。」
「うん。ごめん。」
「じゃ、これから暖まる事するか?」
「は? 何言ってんの? 寝惚けてんの?
今夜はもう十分ですからっ! 大人しく寝てっ!」
まだ日付も変わってない。
夜は長いんだぜ。
他の男と楽しげに喋ってたお前を、そのまま寝かせるなんてありえない。
例えそれが類でも…
いや、類だから余計に…
俺の事しか考えられないようにしてやるよ。
腕の中でもがく牧野を絡め取った。
-*-*-*-*-*-
土曜日。
仕事が終わって、牧野に電話を掛ける。
「俺。今からそっち行ってもいいか?」
「あれ? 今日はお邸に戻るって言ってなかったっけ?」
「ああ、でもちょっと早く終わったから、そっちに行こうかと思ったんだけど。」
「んー… 今日は晩御飯用意してないし…明日じゃダメ?」
「飯なら2人でどこか食いに行ったっていいだろ?」
「えー? だって今までお仕事で疲れてるでしょ?
無理しないで今日はお邸に帰りなよ。
あたしも明日は出掛ける用があるの。
夕方には戻るから、明日の夜、ウチで一緒にご飯食べよ。ね?」
明日は類と約束していた日曜だろ?
お前、類とどこ行くつもりなんだよ?
聞こえてきたとはいえ、盗み聞きのようなことをしてしまったから。
そう聞きたくても聞けない。
「明日、どこ行くんだ? 俺も一緒に行くよ。」
「あ、ちょっと買い物行くだけだから。付いて来てくれなくて大丈夫!
じゃ、また明日ね! お休みなさい、西門さん!」
あっさり電話は切られた。
買い物だぁ?
類と何買いに行くんだよ?
なんで俺が一緒じゃダメなんだよ?
頭の中を飛び交うクエスチョンマーク。
胸の中には疑念がむくむくと湧いてくる。
焦る気持ちを宥める為に、俺は酒を飲むことにした。
メープルのバーでカウンターに座り、マティーニを飲んでいると、疑念の主人公・類が現れた。
「総二郎。珍しいね、こんな時間にここにいるなんて。」
「類こそ。」
「俺は今やっと商談がまとまったとこ。
息抜きで一杯飲みに来たんだ。ギムレット。」
バーテンダーが頷いて、シェイカーを用意している。
「お前、明日牧野と出掛けるのか?」
「んーーー? 牧野から聞いたの?」
「いや、あいつは買い物に行くって言ってた。」
「じゃあ、そうなんじゃないの?」
「トボケるなよ。お前と一緒なんだろ?」
「牧野に内緒にしてって言われてるから、言えない。」
「どこ行くんだよ?」
「だから言えないって。」
あらぬ方向を見て、のらりくらりとはぐらかす類にイラつく。
類の前にコースターとカクテルグラスが置かれ、そこにギムレットが注がれる。
「総二郎。」
「あぁ?」
「明日になれば全部分かるから、ちょっと待ってなよ。
あ、それと、明日牧野の事つけたりしないでよね。
分かった時に牧野が悲しむから。
俺、牧野の悲しそうな顔なんか見たくないからね。」
しっかりと釘を刺されて、何も言い返せないでいると、カウンターに片手で頬杖を突いた類が、ちらりと俺に目線を投げて
「あーあ、いいなぁ、総二郎は…」
と呟いた。
「何がだよ?」
思わず食って掛かる。
「自分がどれだけ幸せな男か、気が付かないの?
ったく、ムカツクなぁ。
俺、明日もあるからもう帰る。じゃあね。」
本当にカクテル1杯飲み干して、類はさっさとバーを出て行った。
何だよ、ホントに。
何なんだよ!
明日、お前ら、どこ行くんだよ!
__________
ふふふ、総二郎、焦ってるー。
種明かしは次回!
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