ちょっと書きかけのものが更新できるほどの量にならないので…
取り敢えず、その場しのぎではありますが、ストックから蔵出しで…
今までのあきつくとは全然別のお話。
「心の器」の兄弟ストーリーとでもいいますか。
その時期、相手が総二郎じゃなくてあきらだったら…?というお話です。
__________
<つくし19歳 あきら20歳の初秋>
昼休みのラウンジで、食後のコーヒーを片手に、桜子と談笑する牧野をぼんやり見ていた。
いつからだろう。
牧野が俺の心に棲み着いたのは。
最初は司の恋人で、友達なんだと思ってた。
高校時代、牧野に惹かれていると感じた時も、司の為なら俺の想いはブレーキをかけられると、そう思っていた。
司が記憶を失ってNYへ去り、牧野はボロボロになった。
そりゃそうだろう。あんなに色々な事を経て、やっと心を通わせた司に忘れられ、邪険にされ、置いて行かれたんだから。
傷ついた牧野を類が優しく支え、俺たちも出来る限り気に掛けて。
ちょっとずつ明るさを取り戻していくように見えた牧野の高校3年の一年間。
そして牧野は高校の卒業式の日に突然宣言した。
「あたし、道明寺はあの時死んだと思う事にした。
もう待つのはやめて、前向きになる。
皆、今迄色々ありがと。もう大丈夫だから。」
にこりと笑った牧野がいた。
とは言え、大学を結局英徳にしたのも、あの思い出の詰まった風呂無しボロアパートを引っ越さないのも、ここで司を待つと決めているようにしか見えなかった。
皆、口には出さなかったけれど、同じように思っていただろう。
だけどその日から牧野は、本当に吹っ切れたかのように、しなやかに歩き出した。
きっと無理してる。
俺達に心配掛けまいとする、精一杯の虚勢なんじゃないか。
そう思ったら、ますます目が離せなくなった。
牧野は本当に朝から夕方までびっちり講義を取っている。
成績優秀者に与えられる授業料免除の権利を勝ち取る為、必死で授業に食らいついている。
本人曰く、折角大学に居るんだから、目一杯授業取らないと勿体無いんだそうだが。
「…さん、美作さんってば!」
気付けば隣に牧野が立っていた。
「おぉ、悪い。ちょっとぼーっとしてた。何?」
「だから、次のヨーロッパ経済史の講義、教室遠いからそろそろ行こうって言ったの。」
「あぁ、そうだな。行くか。」
荷物を手に取り、皆に声を掛けて、牧野と2人、ラウンジを後にする。
「美作さん、なんか疲れてる?」
牧野が俺の顔を覗き込みながら隣を歩く。
「いや、そんな事ないよ。どうして?」
「だってさっきぼーっとしてて、声掛けても気付かなかったでしょ。
なんか美作さんらしくなかったからさ。」
「ちょっと考え事してたから、耳に入らなかったんだよ。ごめんな。」
「ううん、あたしは全然いいんだけど。」
なあ、牧野。
お前の事考えてたって言ったらどうする?
いつの間にか俺はお前への気持ちが溢れそうで、身動きがとれないんだ。
講義があるはずの教室に着いてみたら、いつもと違ってがらんとしている。
ホワイトボードに
『ヨーロッパ経済史は講師急病の為休講になりました。』
の文字。
「休講だって。」
「そうみたいだな。ラウンジに戻るか? 誰か居るかも知れないし。」
「うーん、もし美作さんに用事が無いなら、散歩しない? あたし、こんなぽっかり空いた時間久しぶりだから、青空の下でのんびりしたい。
今日、天気いいし。」
「おう、いいよ。牧野はどこ行きたいんだ?」
「あのさ、講堂に向かうイチョウ並木の坂道。あそこを歩きたい。」
降って湧いた2人きりの時間。
嬉しそうな顔で歩く牧野と構内を歩いて、目的のイチョウ並木の辺り迄来た。
だだっ広い芝生に座って日向ぼっこしようと牧野が言う。
並木がよく見える坂の上で腰を下ろした。
「なんでこのイチョウ並木なんだ?」
「へ?」
「散歩の目的地。」
「うーん、なんでだろ。深い理由はないんだけどね。
この左右対称に並んでる感じとか、天に伸びる木の形とか、見ていて気持ちいいなぁって思って。
なんか好きなんだぁ。」
「うん、この円錐形に手入れされたイチョウがずらっと並ぶと綺麗だよな。」
「たまの休講もいいもんだねぇ。
魂の洗濯になる。
って、先生病気なんだから不謹慎か。」
そう言ってクスクス笑った牧野は、芝生の上に大の字になって目を閉じた。
俺の隣で『魂の洗濯』をしているなんて、心を許してくれている証拠なんだろうかと、嬉しく感じる俺がいる。
「ねぇ、気持ちいいよー。美作さんも寝っ転がってみなよ。」
その声に促されて、俺も牧野の隣に横になる。
芝生は背中にじんわりと暖かく、土と草の香りがする。
見上げた空は、少し淡い水色で、秋の訪れを感じさせた。
降り注ぐ日差しが眩しくて目を細めた。
心地よい風が柔らかく吹き抜ける。
「あぁ、ホントに気持ちいいな、これ。」
「ねー。のんびり出来るね。」
そう言って牧野は大きく伸びをした。
「お前、寝る気だろ。」
「ち、違うっ! リラックスしてるだけだっつーの!」
「どーだか。」
他愛も無い会話なのに、心が浮き立つ俺がいた。
__________
「He is…」もまだ終わってないのに、次のお話投入しちゃってゴメンナサイ。
それと、次のSSは類つくで…と言ってたのに、あきつくでゴメンナサイ(苦笑)
「He is…」は書いてる最中!
類つくSSもちゃんと準備中なので、待ってて下さいませ。
この「イチョウ並木…」は兄弟ストーリーと最初に書きましたが、実は「心の器」より先に書き始めたお話なのです。
ずっと眠らせてありました。
あきらの恋心の行方を見守ってやって下さいね。



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取り敢えず、その場しのぎではありますが、ストックから蔵出しで…
今までのあきつくとは全然別のお話。
「心の器」の兄弟ストーリーとでもいいますか。
その時期、相手が総二郎じゃなくてあきらだったら…?というお話です。
__________
<つくし19歳 あきら20歳の初秋>
昼休みのラウンジで、食後のコーヒーを片手に、桜子と談笑する牧野をぼんやり見ていた。
いつからだろう。
牧野が俺の心に棲み着いたのは。
最初は司の恋人で、友達なんだと思ってた。
高校時代、牧野に惹かれていると感じた時も、司の為なら俺の想いはブレーキをかけられると、そう思っていた。
司が記憶を失ってNYへ去り、牧野はボロボロになった。
そりゃそうだろう。あんなに色々な事を経て、やっと心を通わせた司に忘れられ、邪険にされ、置いて行かれたんだから。
傷ついた牧野を類が優しく支え、俺たちも出来る限り気に掛けて。
ちょっとずつ明るさを取り戻していくように見えた牧野の高校3年の一年間。
そして牧野は高校の卒業式の日に突然宣言した。
「あたし、道明寺はあの時死んだと思う事にした。
もう待つのはやめて、前向きになる。
皆、今迄色々ありがと。もう大丈夫だから。」
にこりと笑った牧野がいた。
とは言え、大学を結局英徳にしたのも、あの思い出の詰まった風呂無しボロアパートを引っ越さないのも、ここで司を待つと決めているようにしか見えなかった。
皆、口には出さなかったけれど、同じように思っていただろう。
だけどその日から牧野は、本当に吹っ切れたかのように、しなやかに歩き出した。
きっと無理してる。
俺達に心配掛けまいとする、精一杯の虚勢なんじゃないか。
そう思ったら、ますます目が離せなくなった。
牧野は本当に朝から夕方までびっちり講義を取っている。
成績優秀者に与えられる授業料免除の権利を勝ち取る為、必死で授業に食らいついている。
本人曰く、折角大学に居るんだから、目一杯授業取らないと勿体無いんだそうだが。
「…さん、美作さんってば!」
気付けば隣に牧野が立っていた。
「おぉ、悪い。ちょっとぼーっとしてた。何?」
「だから、次のヨーロッパ経済史の講義、教室遠いからそろそろ行こうって言ったの。」
「あぁ、そうだな。行くか。」
荷物を手に取り、皆に声を掛けて、牧野と2人、ラウンジを後にする。
「美作さん、なんか疲れてる?」
牧野が俺の顔を覗き込みながら隣を歩く。
「いや、そんな事ないよ。どうして?」
「だってさっきぼーっとしてて、声掛けても気付かなかったでしょ。
なんか美作さんらしくなかったからさ。」
「ちょっと考え事してたから、耳に入らなかったんだよ。ごめんな。」
「ううん、あたしは全然いいんだけど。」
なあ、牧野。
お前の事考えてたって言ったらどうする?
いつの間にか俺はお前への気持ちが溢れそうで、身動きがとれないんだ。
講義があるはずの教室に着いてみたら、いつもと違ってがらんとしている。
ホワイトボードに
『ヨーロッパ経済史は講師急病の為休講になりました。』
の文字。
「休講だって。」
「そうみたいだな。ラウンジに戻るか? 誰か居るかも知れないし。」
「うーん、もし美作さんに用事が無いなら、散歩しない? あたし、こんなぽっかり空いた時間久しぶりだから、青空の下でのんびりしたい。
今日、天気いいし。」
「おう、いいよ。牧野はどこ行きたいんだ?」
「あのさ、講堂に向かうイチョウ並木の坂道。あそこを歩きたい。」
降って湧いた2人きりの時間。
嬉しそうな顔で歩く牧野と構内を歩いて、目的のイチョウ並木の辺り迄来た。
だだっ広い芝生に座って日向ぼっこしようと牧野が言う。
並木がよく見える坂の上で腰を下ろした。
「なんでこのイチョウ並木なんだ?」
「へ?」
「散歩の目的地。」
「うーん、なんでだろ。深い理由はないんだけどね。
この左右対称に並んでる感じとか、天に伸びる木の形とか、見ていて気持ちいいなぁって思って。
なんか好きなんだぁ。」
「うん、この円錐形に手入れされたイチョウがずらっと並ぶと綺麗だよな。」
「たまの休講もいいもんだねぇ。
魂の洗濯になる。
って、先生病気なんだから不謹慎か。」
そう言ってクスクス笑った牧野は、芝生の上に大の字になって目を閉じた。
俺の隣で『魂の洗濯』をしているなんて、心を許してくれている証拠なんだろうかと、嬉しく感じる俺がいる。
「ねぇ、気持ちいいよー。美作さんも寝っ転がってみなよ。」
その声に促されて、俺も牧野の隣に横になる。
芝生は背中にじんわりと暖かく、土と草の香りがする。
見上げた空は、少し淡い水色で、秋の訪れを感じさせた。
降り注ぐ日差しが眩しくて目を細めた。
心地よい風が柔らかく吹き抜ける。
「あぁ、ホントに気持ちいいな、これ。」
「ねー。のんびり出来るね。」
そう言って牧野は大きく伸びをした。
「お前、寝る気だろ。」
「ち、違うっ! リラックスしてるだけだっつーの!」
「どーだか。」
他愛も無い会話なのに、心が浮き立つ俺がいた。
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「He is…」もまだ終わってないのに、次のお話投入しちゃってゴメンナサイ。
それと、次のSSは類つくで…と言ってたのに、あきつくでゴメンナサイ(苦笑)
「He is…」は書いてる最中!
類つくSSもちゃんと準備中なので、待ってて下さいませ。
この「イチョウ並木…」は兄弟ストーリーと最初に書きましたが、実は「心の器」より先に書き始めたお話なのです。
ずっと眠らせてありました。
あきらの恋心の行方を見守ってやって下さいね。



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