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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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イチョウ並木の坂道で 1

ちょっと書きかけのものが更新できるほどの量にならないので…
取り敢えず、その場しのぎではありますが、ストックから蔵出しで…
今までのあきつくとは全然別のお話。
「心の器」の兄弟ストーリーとでもいいますか。
その時期、相手が総二郎じゃなくてあきらだったら…?というお話です。


__________

<つくし19歳 あきら20歳の初秋>

昼休みのラウンジで、食後のコーヒーを片手に、桜子と談笑する牧野をぼんやり見ていた。
いつからだろう。
牧野が俺の心に棲み着いたのは。
最初は司の恋人で、友達なんだと思ってた。
高校時代、牧野に惹かれていると感じた時も、司の為なら俺の想いはブレーキをかけられると、そう思っていた。
司が記憶を失ってNYへ去り、牧野はボロボロになった。
そりゃそうだろう。あんなに色々な事を経て、やっと心を通わせた司に忘れられ、邪険にされ、置いて行かれたんだから。
傷ついた牧野を類が優しく支え、俺たちも出来る限り気に掛けて。
ちょっとずつ明るさを取り戻していくように見えた牧野の高校3年の一年間。
そして牧野は高校の卒業式の日に突然宣言した。

「あたし、道明寺はあの時死んだと思う事にした。
もう待つのはやめて、前向きになる。
皆、今迄色々ありがと。もう大丈夫だから。」

にこりと笑った牧野がいた。

とは言え、大学を結局英徳にしたのも、あの思い出の詰まった風呂無しボロアパートを引っ越さないのも、ここで司を待つと決めているようにしか見えなかった。
皆、口には出さなかったけれど、同じように思っていただろう。
だけどその日から牧野は、本当に吹っ切れたかのように、しなやかに歩き出した。

きっと無理してる。
俺達に心配掛けまいとする、精一杯の虚勢なんじゃないか。

そう思ったら、ますます目が離せなくなった。

牧野は本当に朝から夕方までびっちり講義を取っている。
成績優秀者に与えられる授業料免除の権利を勝ち取る為、必死で授業に食らいついている。
本人曰く、折角大学に居るんだから、目一杯授業取らないと勿体無いんだそうだが。

「…さん、美作さんってば!」

気付けば隣に牧野が立っていた。

「おぉ、悪い。ちょっとぼーっとしてた。何?」

「だから、次のヨーロッパ経済史の講義、教室遠いからそろそろ行こうって言ったの。」
「あぁ、そうだな。行くか。」

荷物を手に取り、皆に声を掛けて、牧野と2人、ラウンジを後にする。

「美作さん、なんか疲れてる?」

牧野が俺の顔を覗き込みながら隣を歩く。

「いや、そんな事ないよ。どうして?」
「だってさっきぼーっとしてて、声掛けても気付かなかったでしょ。
なんか美作さんらしくなかったからさ。」
「ちょっと考え事してたから、耳に入らなかったんだよ。ごめんな。」
「ううん、あたしは全然いいんだけど。」

なあ、牧野。
お前の事考えてたって言ったらどうする?
いつの間にか俺はお前への気持ちが溢れそうで、身動きがとれないんだ。

講義があるはずの教室に着いてみたら、いつもと違ってがらんとしている。
ホワイトボードに
『ヨーロッパ経済史は講師急病の為休講になりました。』
の文字。

「休講だって。」
「そうみたいだな。ラウンジに戻るか? 誰か居るかも知れないし。」
「うーん、もし美作さんに用事が無いなら、散歩しない? あたし、こんなぽっかり空いた時間久しぶりだから、青空の下でのんびりしたい。
今日、天気いいし。」
「おう、いいよ。牧野はどこ行きたいんだ?」
「あのさ、講堂に向かうイチョウ並木の坂道。あそこを歩きたい。」

降って湧いた2人きりの時間。
嬉しそうな顔で歩く牧野と構内を歩いて、目的のイチョウ並木の辺り迄来た。
だだっ広い芝生に座って日向ぼっこしようと牧野が言う。
並木がよく見える坂の上で腰を下ろした。

「なんでこのイチョウ並木なんだ?」
「へ?」
「散歩の目的地。」
「うーん、なんでだろ。深い理由はないんだけどね。
この左右対称に並んでる感じとか、天に伸びる木の形とか、見ていて気持ちいいなぁって思って。
なんか好きなんだぁ。」
「うん、この円錐形に手入れされたイチョウがずらっと並ぶと綺麗だよな。」
「たまの休講もいいもんだねぇ。
魂の洗濯になる。
って、先生病気なんだから不謹慎か。」

そう言ってクスクス笑った牧野は、芝生の上に大の字になって目を閉じた。
俺の隣で『魂の洗濯』をしているなんて、心を許してくれている証拠なんだろうかと、嬉しく感じる俺がいる。

「ねぇ、気持ちいいよー。美作さんも寝っ転がってみなよ。」

その声に促されて、俺も牧野の隣に横になる。
芝生は背中にじんわりと暖かく、土と草の香りがする。
見上げた空は、少し淡い水色で、秋の訪れを感じさせた。
降り注ぐ日差しが眩しくて目を細めた。
心地よい風が柔らかく吹き抜ける。

「あぁ、ホントに気持ちいいな、これ。」
「ねー。のんびり出来るね。」

そう言って牧野は大きく伸びをした。

「お前、寝る気だろ。」
「ち、違うっ! リラックスしてるだけだっつーの!」
「どーだか。」

他愛も無い会話なのに、心が浮き立つ俺がいた。


__________


「He is…」もまだ終わってないのに、次のお話投入しちゃってゴメンナサイ。
それと、次のSSは類つくで…と言ってたのに、あきつくでゴメンナサイ(苦笑)
「He is…」は書いてる最中!
類つくSSもちゃんと準備中なので、待ってて下さいませ。
この「イチョウ並木…」は兄弟ストーリーと最初に書きましたが、実は「心の器」より先に書き始めたお話なのです。
ずっと眠らせてありました。
あきらの恋心の行方を見守ってやって下さいね。


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イチョウ並木の坂道で 2

みっちり講義を受け、夕方からはバイトに行って。
牧野はいつも動き回ってる。
それは余計な事を考えない為の予防線のように思えてならなくて。
大丈夫か? 力を抜けよ。
そんな言葉をかけたくても、小さな身体で精一杯戦ってる牧野は、きっとまた大丈夫って言うに決まってる。

しばらく2人でそうやって柔らかな日差しを浴びていたが、段々胸に何かが痞えたように息苦しくなった。
それに堪えきれなくなって、牧野に声を掛ける。

「牧野、喉乾かないか? 何か飲む?」
「あ、あたし購買行って買って来るよ。美作さん、何飲む?」
「じゃあ、ジンジャエール。」
「はーい、ちょっと待っててね。」

うっかりまた働かせてしまった。
ホントにじっとしてない奴。

牧野の背中を見送って、もう一度、芝生に寝転んだ。
こんな風に地面に寝っ転がるなんていつ振りだろう?
身体中に酸素が行き渡るような気がする。
頭の中の雑念が取り払われ、思考がシンプルになって来た。

グダグダ考えて立ち止まっているのをやめよう。
気になっていることは聞けばいい。
たとえどんな答えが返って来ようとも、この想いは変わらないのだから。

そんな気持ちになった時に牧野が戻ってきた。

「美作さーん、お待たせ!」

右手に俺のジンジャエール、左手にはアイスティーのペットボトル。

「おう、サンキュ。」
「いえいえ、こちらこそいつもお世話になってますから。」

そう言ってふわっと笑った牧野を見た時、心臓に鋭い痛みを覚えた。
それを隠してまた2人で芝生に腰を下ろし、坂道を見下ろす。
ジンジャエールで喉を潤して、一つ深呼吸して切り出した。

「牧野。」
「ん?」
「聞いてもいいか?」
「うん、なあに?」

俺を覗き込むように、牧野が首を傾げる。

「司の事…今も想っているのか? あいつが帰って来るの、待っているのか?」

すぅっと顔が強張った。
俺から目を逸らして、あらぬ方向を見ている。

「……どうして? どうしてそんな事聞くの?」
「ずっと気になってたんだ。
卒業式の日、お前はあんな風に言ったけど、あれは俺達を安心させる為に、無理して言ったんじゃないかって。
大学に入ってからも毎日講義とバイトの連続で。
それも余計な事を考えない為にやってるんじゃないかって。」

牧野がふぅと小さく溜息をついた。
空を仰ぎ見ながら言葉を紡ぐ。

「そっか。心配させちゃってたよね。ごめんなさい、気を使わせて。
道明寺の事は…もう終わった事だよ。待ってなんかいないよ。」
「記憶が戻らないからか?」
「うーん、もう今となってはそれは関係無いかも。
あたしが好きだった道明寺はどこにも居ないし、あたしもあの頃のあたしじゃない。
それは記憶が戻ったとしても変わらない。」
「でも司は記憶を取り戻したら、絶対にお前を迎えに来る。」
「そんなの分かんないよ。もうね、考えるのやめたの。
一生戻らないかも知れない記憶が戻るかもなんて期待するのはバカみたい。
期待するだけ辛くなる。あたしは日々生きてくのだけでいっぱいいっぱいだから。」
「もう好きじゃないのか?」
「胸が痛まないって言ったら嘘になる。
でも… これって失恋の痛みなんじゃない?
あたし、誰かと付き合うっていうの、道明寺が初めてだったからさ。
経験無くてどうしたらいいのか分からないんだけど、時間が要るのかなって思ってるんだ。」

こくりとアイスティーを飲み下してから、牧野が続けた。

「講義とバイト漬けなのは、貧乏性なのと、ホントにお金がないからだよ。
バイトはしないと食べてけないし。
実はね、今年度の単位が全部取れたら、ほぼ卒業単位に足りちゃうの。
後は3回生にならないと取れない必修と、卒論だけ。
だからね、来年は就職に役立つ資格が取れる講義を取ろうと思ってさ。
沢山講義に出た甲斐あって、自分の興味がある分野も見えて来たし。
人生、無駄な時間は無いってホントだね。」

あぁ、俺は牧野を動揺させてる。
こんなに喋り続けているのがその証拠だ。
言葉とは裏腹な牧野の心を覗いてしまった気がした。

「そうか。すげぇ頑張ってるもんな、牧野。変なこと聞いて悪かったな。」

「ううん、全然。大丈夫。」

そう言った牧野の横顔は寂しそうに笑っていた。
その顔を見て、俺は何だか鼻の奥につんとした痛みを感じた。

「今日は日向ぼっこ付き合ってくれてありがと。
気持ちよかった。美作さん、今日はもう講義ないでしょ?
あたし、次の講義あっちだからそろそろ行くね。」
「おう、また明日な。」
「うん、また明日。」

坂道を降りていく牧野の背中をずっと見つめていた。
牧野の中にはまだ司がいる。
その存在感に改めて触れ、俺の胸はじりじりと焦げるような痛みにさらされていた。


__________


静かに燃えるあきら。
うーん、切ないねぇ(笑)←お前が書いてるんじゃ!

いやーん、病人がまたちょっと怪しい雰囲気…
明日は朝から病院です。
再入院は絶対に免れたい!
その為に色々頑張らないと…
他のお話の続きは今暫く猶予を頂ければと思いますー。


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イチョウ並木の坂道で 3

<つくし19歳 あきら20歳の晩秋>

イチョウ並木が綺麗に色付いた。
落ち葉が黄色い絨毯を敷き詰めたかのように坂道を覆っている。
この景色が見たくて、このところ毎日のように、この坂道を上り下りしている。
なんてったって期間限定だし。
タダでこんな綺麗な景色を楽しめるんだもん。
見ないと損だよね。

今日は4限のイタリア語の講義が休講だった。
あのイタリア人の男の先生は、どこかやる気無くて、ちゃらんぽらんな感じがしてたけど、とうとうお休みか?と思ったらちょっと可笑しくなる。

これ幸いとばかり、イチョウ並木の坂道に向かった。
バイトまでの時間をゆっくり過ごしたい。
景色を堪能したくて、彼方此方見渡す。
くるりと身体を一回転させて、パノラマの景色を楽しんでみたり、携帯で写真を撮ってみたりもした。
そんな事しながらイチョウ並木を歩いていたら、坂の上から見覚えのあるコートを着た人が降りて来るのが見えた。
美作さんだ。
遠くからでもすぐ分かっちゃうな。
いつも一緒にいる時は気にしないようにしてるけど、こうやって離れて見ると、オーラ出まくり。
黄色一色の景色の中で美作さんだけがはっきりくっきり浮かび上がって見える。
坂道には他にも人が行き来してるのに、明らかに纏う空気が違う。
ホント普通じゃないよね、F3は。

段々距離が近付いてきた。
美作さんが手を挙げてる。
あたしも振り返す。

「どうしたのー?」

と声を掛けながら、小走りで美作さんの所に向かった。

「イチョウ並木を見に来てたんだ。
そうしたら牧野が見えたから降りてきた。」
「そうなんだ。あたしもこれ見に来たの。
休講になって時間出来たから。」
「そうか。」

目を眇めて優しく微笑む美作さんに、思わず見惚れた。
心臓がどきんと鳴って、はっとした。

あたしってば、何してんだろ?

慌てて顔から目線を逸らす。
最近の美作さんはいつもに増して優しいっていうか、落ち着いてるっていうか…
西門さんとつるんで遊び歩くのも止めちゃってるみたいだ。
西門さんが「あきらがつれねぇ!」とかよく愚痴ってるもん。
かといってどこかのマダムとお楽しみって訳でもないらしい。
桜子が、「この頃はそういうお噂も聞こえなくなりましたね。」なんて言ってた。
あの情報通の桜子がそう言うってことは、きっと何もないって事なんだよね。
高校の時、あんなに自由に振る舞ってたのに、真面目に大学に来て、いっぱい講義も取ってる。

「勉強なんてしなくっても、もう色々頭に叩き込まれちゃってるんじゃなかったっけ?」

と聞いたら、

「大学で学べる全ての事が頭に入ってる訳ないだろ?
そりゃあ必要最低限の事はインプットされているけど。
これから社会に出て働くのに、知識は多ければ多い程、将来自分を助けてくれるさ。
牧野はそうは思わないか?」

と返された。
将来会社を引き継いでトップに立つんであろう美作さん。
敷かれたレールを厭々進むんじゃなくて、前向きに取り組み始めたって事なのかもしれない。
20歳を過ぎて、なんだか急に大人になっちゃったみたいだ。
そんな訳で、ちょくちょく講義も一緒になる。
毎日一コマは隣同士で講義を受けてるかもしれない。

「ちょっと一緒に歩かないか?」
「うん。」

並木の下を2人で歩いた。
時間がゆっくり流れる気がする。
美作さんの纏う優しい空気のせいかなぁ?

「綺麗だねー。あたし、このところ毎日ここ歩いてるの。
何だか違う世界に来た気分になるっていうか…
夢の中にいるみたいっていうか…
周りが黄色一色で不思議な感じがする。」
「夢の中か。牧野のみる夢ってこんな感じなのか?」
「うーん、そうじゃなくって…
上手く言えないけど、非現実の空間に迷い込んだような感覚?」
「分かったような分からないような。」
「貧困なボキャブラリーですいませんねー。」
「そんな事言ってないだろ。」

そうは言いつつも目尻は下がってるし、含み笑いしてるじゃない。
はらはらと黄色いイチョウの葉が舞い降りる。
美作さんが一枚捕まえて手渡してくれた。

「イチョウの葉っぱって可愛い形だよね! あたし、好きなんだー。」

嬉しくて、手の中の葉をじーっと見つめた。

「無尽蔵にあるから、いくらでも拾ってやるよ。」
「いや、そんなに沢山は要らないんだけど。これは持って帰ろうっと。」

ちょっと閃いて、カバンの中から教科書を一冊出し、間に挟み込んだ。

「栞替わり?」
「ううん、ウチに帰って、小さい額縁に入れようと思って。
美作さんがくれたこの秋の記憶。」

そう言ったら、美作さんが何故だか切なそうに笑った。

どうしてそんな顔するの?
あたし、何か悪いこと言っちゃったかな…?

そんな顔を見たら、あたしまで胸が苦しくなった。
その痛みを振り切るように、足元の葉っぱを踏み締め、さくさく音を立てながら歩く。
坂道の端にある落ち葉の吹き溜まりを、サッカーボールを蹴るみたいに蹴り上げたら、ふわっと舞い上がる。
それが面白くて繰り返していたら、急に木枯らしが吹いて来て、落ち葉が吹雪のように降ってきた。
仰ぎ見て、『わあ、キレイ。』と思った時、後ろからふんわり拘束された。


__________


背中からハグられたー!
あきら、そこは大学の構内よ!
人前よ!
イチョウ並木、見に行きたいな…
紅葉前線、こちらはまだ到達しておりませんー。


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イチョウ並木の坂道で 4

ひらひらと落ちてきたイチョウの葉を一枚キャッチして、牧野に手渡した。
じっと見つめて顔を綻ばせた後、本の間に挟んでる。

「栞替わり?」

と尋ねたら、

「ううん、ウチに帰って、小さい額縁に入れようと思って。
美作さんがくれたこの秋の記憶。」

という答えが返ってきた。
俺との記憶が額縁に入れられて、牧野の手元で飾られる。
それは嬉しいようでもあり、俺との時間は現在進行形ではなく、過去の思い出になると言われているような気もして。
複雑な面持ちで牧野を見つめた。
黒く濡れたような丸い瞳が、怪訝そうに俺を見上げてる。
その無垢な視線に射抜かれて、また胸に鋭い痛みが走った。
つい、イチョウを見上げるふりをして目を逸らす、意気地なしな俺がいる。

気付けば、牧野は木の葉の吹き溜まりを蹴り上げながら、俺の前を歩き始めていた。
そこに木枯らしが吹いて、イチョウの葉をどっと降らせる。
まるで牧野を包むかのように。
黄色いイチョウの葉のカーテンに、俺と牧野の間を仕切られたように感じた。

牧野が落ち葉に攫われる…

そう思ったら身体が勝手に動いてた。
咄嗟に数歩駆け寄って、牧野を背後から柔らかく抱きしめた。
鼻先をひやりとした髪に埋める。
秋の空気の中に甘い香りが漂って。
思わず強く目を瞑った。

胸が苦しい…
想いが溢れる…

「み、美作さん? あのー、これ…」

牧野が戸惑ってる。
分かっているけど離せない。

「攫われるかと思った…」
「へっ?」
「木枯らしと落ち葉に、牧野が攫われるかと思ったんだよ。」
「そ、そんな事あるわけないじゃん。
あの…、人が見てるから、離して…」
「牧野。どこにも行くな。ここにいろよ。」

そうだ。どこにも行かせたくない…
常に俺の腕の中にいてくれる存在になって欲しい。

「えっと、あのー、はい。どこにも行かないよ。
ね、だからとりあえず離してもらってもいい?」

牧野の頼みを聞き入れて、そっと腕を解いた。
真っ赤な顔した牧野が、カチンコチンに固まって立ち竦んでいる。

「ごめん…」
「ううん、ちょっとびっくりしただけ。」

そう言いながらゼンマイ仕掛けの人形のように不自然な動きで歩き出した。
それを追い掛けて隣を歩く。

「牧野、手を貸して。」

牧野がおずおずと右手を出すから、俺の左手でぐっと手繰り寄せた。

「手、ちょっと冷たいな。」
「今日は少し寒いもんね。」

牧野の手を温めたくて、俺の手で包むように握り、そのままコートのポケットに滑り込ませた。

いや、違う。
温めてやりたいだけじゃない。
牧野とこうして手を繋ぎたかったんだ、俺は。

「牧野、これからバイトだろ? 車で送るよ。」
「ん…、ありがとう、美作さん。」

2人で歩いた事は何度もあっても、こんな風に手を繋いで歩くなんて初めてだ。
牧野はどう思っているんだろう?
何も言ってはこないけど、普段と違う俺の態度を訝しく思ってはいないのだろうか。
でも今は…この手を離したくない。

冷え切っていた手は、ポケットの中でじんわりと温もりを取り戻していく。

「バイトって、何時からなんだ?」
「6時から。」
「じゃあちょっと時間あるよな。
温かいものでも飲みに行こう。」
「…うん。」

いつになく大人しい牧野。
俺も上手く言葉が出てこない。
女と適当に会話するなんて、いくらでも簡単に出来ると思ってたのに。
牧野相手には通用しない。
本当に好きな相手とは、気軽に話も出来ない。
恋をするってこういうことなのか?

結局駐車場までろくに口も利かないまま、牧野の柔らかい手を感じるだけで歩いてきた。
この手から少しでも俺の気持ちが伝わればいい。
そう願いながら、そっとそっと親指で小さな手を撫でていた。
車の前に来て、その手を離すのに思いきりが付かなくて。
立ちつくしていたら、牧野が「美作さん?」と声を掛けてきた。

「ああ、ごめん、寒いよな。ちょっと待って…」

名残惜しいけれど、牧野の手を離し、車のドアを開けて牧野を乗せた。
自分も運転席に乗り込み、エンジンをかける。

「ちょっと温まるまでこれ掛けてて。」

後部座席に置かれてるブランケットを牧野に手渡す。

「ありがと。でも大丈夫だよ。今まで外歩いてきたんだから。
ここは外より温かいし。」
「ああ、でも掛けとけよ。きっと身体は冷えてるはずだから。」
「心配性だね、美作さんは。」
「おいおい、フェミニストと言ってくれよ。俺の知ってる店に行くけどいいか?」
「うん、勿論。」

車は滑るように秋の夕暮れの道を走り出した。
牧野は車窓を眺めているみたいだ。
ちらりちらりと横目で牧野を垣間見るけど、窓の外を向いていて、その表情は窺い知れない。

この狭い車内。
互いの息遣いが聞こえる程の距離。
手を伸ばせば触れられるところに牧野がいる。
ずっとこのまま2人きりでいられたら…

それでも車は流れに乗せられて、目的地はもうすぐそこまで近づいていた。


__________


ハグって、お手手を繋いで、ちょっとドライブ。
焦れ焦れなデートだねぇ。
次回は温かい飲み物を頂きます。
盛り上がるのか、それ?(苦笑)


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イチョウ並木の坂道で 5

何故だか落ち葉舞い散るキャンパスを、美作さんと手を繋いで歩いてる。
優しくやんわりと握られたあたしの右手が、美作さんのコートのポケットの中で温められていて不思議な感覚。
こんな事初めてされたのに、嫌じゃない。
されるがままの自分がいる。

美作さんって、女の人と手を繋いだりするイメージ無かったけどな。
どっちかって言うと、腕を組んで歩いてる…というか、女の人が腕にぶら下がってる感じ。
実際、そんな場面、何度も見てきたし。
だから、手を繋ぐってちょっと意外。
あぁ、でも双子ちゃんとは手を繋いだり、抱っこしてあげたりしてるよね。
これもそんな感じなのかな…?

そんな事を頭の中で考えていたけれど。
繋がれた右手から美作さんの体温を感じているうちに、何だか安心出来て、張り詰めているものが解けていく気がして、不意に泣きたくなった。

この前美作さんに言われた。
毎日講義とバイト漬けなのは、余計な事を考えない為にやってるんじゃないかって。
あの時は否定したけど、本当はあたしは、道明寺を思い出さないように、道明寺が居なくなってしまった痛みから逃げる為に、何かに追われていたかった。
それ以外に自分を保つ方法が分からなかった。
気を抜くと自分の足でしっかり立っていられなかもしれない。
その場に崩れ落ちてしまうかもしれない。
走り続けていれば、立ち止まらないで動いていれば、倒れないでいられる。
そんな風に思って今迄駆け抜けてきた。

でも、こんな風に優しくされたら…
強がっていられなくなっちゃうよ。
泣きそうだよ、美作さん…

美作さんの親指がゆっくり私の手の甲を撫でてくれて。
切ない気持ちを宥めてくれる。
大丈夫だって言ってくれてるみたいな手。
その手にもっと縋り付きたくなる気持ちをなんとか胸の奥に押し込んだ。

車に乗る時に離れてしまった手の温もり。
ここまで歩いてくるほんの数分触れ合っていただけなのに、無くなると急に寂しくなった。

道明寺と一緒に生きていきたかった。
高2のあの時、あたしは滋さんちの島ではっきりそう思った。
道明寺の手以外必要なものはないって。
でもその直後にその手を失った。
あたしに優しく触れた道明寺の手の温もりはもう思い出せなくなってしまった。

見るとはなしに見ていた車窓。
太陽は傾き、もうすぐ冷たい夜がやって来る。

今日もこの後バイトして。
くたくたに疲れて眠ってしまえば、やり過ごせるんだ、きっと。
そうやって、1日、1日を駆け抜けて。
いつか暖かい春の日になるのかな?

気付けば車はどこかの駐車場に停められていた。

「牧野? 着いたぞ。
疲れてるなら、無理に俺に付き合わなくてもいいんだ。
直ぐにお前が行きたいところに送って行くけど。」
「ううん! 大丈夫! 疲れてないよ。
ちょっと気が抜けてぼーっとしちゃった。
温かいもの、飲みに行くんでしょ?
何飲もうかなぁ?」

無理矢理明るい声を出して、美作さんの車を降りた。
連れて行ってくれたのは、こじんまりした一軒のカフェだった。
お客さんは疎らで、静かな店内。
ウッディな内装は飾り気は無いけれど、不思議な懐かしさに溢れてた。

奥の方のテーブルに着いて、店内を見渡す。
朴訥な感じのマスターがお冷とメニューを持って来てくれた。

美作さんが、メニューをあたしの見やすい向きに置いてくれて、教えてくれる。

「ここはコーヒーが美味しいんだ。
マスターがこだわりの豆を自家焙煎していてな。
それと、マスターの奥さんが作るチーズケーキが絶品だ。」
「へぇー! 食べてみたい!
あたし、コーヒーはブラックよりカフェオレの方が好きなんだけど…
そんなこだわりの豆のコーヒー、ミルク入れちゃダメかなぁ?」

美作さんがくすっと笑う。

「好きに飲んでいいに決まってるだろ。
メニューにもカフェオレもあるんだし。
それにしても牧野の味覚は子供みたいだなぁ。」
「だって… コーヒーなんてインスタントしか知らずに育ったし。
飲み慣れないだもん。」
「分かった、分かった! そうむくれるなって。」

カウンターの中のマスターに、目で合図を送ってる美作さん。
このお店、美作さんっぽくないけど、どうやって知ったんだろう?

「今日のコーヒーをひとつ、それと、カフェオレとチーズケーキを。」

畏まりましたとマスターが言いながら、メニューを下げていく。

「この店なぁ、マスターと奥さん2人の手作りなんだ。
倉庫みたいなスペースを買い取って、2人でこつこつリノベーションして創りあげた店。
凄いよな。別にマスター、そういう仕事してた訳でもないんだ。
会社辞めて一念発起して、カフェオーナーになったって。」

そう言って、木の壁を撫でている。

「どうしてそんなに詳しいの?」
「1人で時々コーヒー飲みに来て。
いつもはカウンターでマスターがコーヒー淹れるのを見たりしながら座ってるんだ。
そのうちちょっとずつ話すようになって、教えてもらったのさ。」
「1人で来てるの?」
「そう。誰かと来たのは今日が初めてだな。
俺が息抜きする場所。」

美作さんはそう言って優しく笑った。
マスターがオーダーしたものをテーブルに並べてくれる。
ニコリともせず、ごゆっくり…とだけ言い置いて、またカウンターへと戻っていくマスターは、最初の印象通り、朴訥な人なのかもしれない。

いい香りがするコーヒーカップに口をつけると、甘いミルクと深い苦味のコーヒーが絶妙に溶け合って、とても美味しい。
こんなカフェオレは初めて飲むのに、どこか懐かしく、ホッとできるような味がする。

「美味しい、これ…」
「そう、良かった。ケーキもどうぞ。
きっと牧野のお眼鏡に適うぞ、それも。」

促されてチーズケーキにフォークを入れる。
ほろほろと口の中で解けていくそれは、甘さが控えめで、クリームチーズの濃厚な風味が口に広がる。

「こういうの、大好き! なんで分かったの?」
「普段の牧野を見てればそれぐらい分かるんだよ。」

あたし、そんなに美作さんの前でケーキなんて食べてるっけ?

ちょっと不思議に思いつつも、目の前の美味しいものに夢中になる、あたしはただの食いしん坊だ。


__________


このカフェ、実在します。
もう長らくお邪魔してないけど。
またあの席に座って、美味しいケーキ食べたいなぁ!
チーズケーキ大好き!なのは管理人でしたー。
色気より食い気なのはつくしのデフォですな。


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