明けましておめでとうございます。
今年も拙宅の色んなキャラ達を愛でて頂けるように頑張ります!
新春一つ目のお話はラブラブバカップルで。
今日は1月1日ですが、お話は4日のこと…という設定です。
__________
茶道宗家の年末年始と言うものは慌ただしい。
年末から初釜に向けての準備が始まり。
大晦日から元旦にかけての大福茶<だいふくちゃ>も大切な茶事だ。
家元と家元夫人、俺と、極々少数の内弟子だけで行う、内々の茶事。
旧年最後の茶を飲んだ後に、その茶を点てた時の炭を、元旦の大福茶を点てる茶室に移す。
そこに新しい炭を足して、火を絶やさないように守るのだ。
そして元旦の夜明け前に、その受け継いだ炭で沸かした湯で大福茶を点てる。
家元が点てた濃茶を回し飲みしするこの茶事を以て、宗家の一年は始まる。
その後はゆっくり朝寝…といきたいところだが、そんな事が許される訳もなく。
清々しい朝日を浴びた後も、皆で雑煮やら御節料理を食べたりする。
そうこうしているうちに、新年早々、年始の挨拶をしようと人が訪ねて来て。
そうすると、寒い中態々来てくれた客に一服…というのは当たり前で、年始釜が始まる訳だ。
そんな大晦日から三が日を過ごして、少々怠い身体を抱えた4日の朝。
年始の挨拶も一段落し、俺が居なくても問題ないだろうと、邸を抜け出す事にした。
勿論、親父とお袋にはちょっと出て来ると、一応断りを入れる。
2人とも、あっさり了解してくれた。
親父は片方の口角だけ上げて薄く笑いつつ頷き。
お袋に至っては、何処に行くとも言っていないのに、
「牧野さんに宜しくお伝えして頂戴。
あ、総二郎さん、お年賀お持ちになるの忘れずにね。
そうだわ、美味しいお菓子があったから、あれも持って行って差し上げて…」
などと、手土産をダイニングテーブルの上に積み上げた。
牧野相手に『お年賀』って。
逆にあいつに気を遣わせるだろう…と思った言葉は飲み込んだ。
外に出てみれば、穏やかに晴れ渡った空に、澄んだ空気が心地いい。
新春にふさわしい天気だ。
ちょっと遠出するつもりで、足の速い車を選んで、邸を後にする。
牧野の部屋に着くと、ドアを開けてにこやかに迎えてくれた。
「明けましておめでとう、西門さん。
今年もよろしくね。」
「おめでとう、牧野。これ、お袋から。宜しく言ってた。」
「わあ、ありがと!」
持たされた手土産を渡して中に入ると、玄関のシューズボックスの上のスペースには千両が生けられた花瓶。
部屋のテーブルの上には、松と紅白のアマリリスのアレンジメントが載っている。
一人暮らしでも、正月花を生けようとか思うようになったんだな…と、微笑ましく思っていたら、おずおずと
「こんなの、ダメだった?」
なんて聞いてくる。
「いや、つくしちゃんらしいんじゃねえの。
自分の好きな花活けるのに、良いも悪いもない。
縁起物だしな。
あると気持ちも華やぐだろ。」
あからさまにほっとしたような表情を浮かべてこくりとひとつ頷く。
別に俺はいつでもお前の師匠じゃねえよ。
茶室の外では優しい彼氏だろ?
牧野にしか向けない甘い微笑みを浮かべつつ、華奢な身体を腕の中に掴まえた。
牧野の誕生日以来離れ離れだった時間を埋めるように、しっかりと抱き締める。
「お仕事、大丈夫?
今日はいいの? こんなとこ来てて。」
「いいんだよ。散々働かされて、俺もつくしちゃん不足なワケ。
初釜をしっかりこなす為にも、ここらでエネルギー補填しとかねえと。」
そう言って新年初キスを頂いた。
甘く柔らかな唇につい夢中になる。
唇を合わせているだけなのに、胸の奥底から何かが溢れ出し、背筋がゾクゾクして、肩に触れている掌に熱が籠る。
やっとの思いで唇を離すと、牧野が肩で大きく息をしながら、俺の胸に頭をこてんと寄せた。
それを撫でながら、このまま2人で部屋に籠りきりになりたいという誘惑を振り切り、声を掛ける。
「なあ、今日、どっか行かねえ?
天気もいいし、ぱーっと開けた景色でも見て、すかっとしたいんだよな。」
「あたしはいいけど…
道混まないかな?
今日Uターンラッシュだって、さっきTVで言ってたよ。」
「時間選べば平気だろ。何処行きたい?」
「海! 海が見たい、あたし!」
牧野の一声で冬の海に行き先を決めた。
行きの道はUターンラッシュとは逆方向だったから、快適なドライブだった。
東名から小田厚を抜けて、海岸線に出る。
淡い空の色、銀色に輝く海。
そんなものを左手に見ながら、はしゃぐ牧野の声にこちらまで心が浮き立つ。
「そろそろ腹減らねえ?」
「うーん、ちょっと空いたかな?」
「この先に知ってるレストランあるんだよ。
そこまで我慢できるか?」
「うん、大丈夫ー!」
道すがら、食い物の店は沢山並んではいるが、折角ここまで出掛けてきて、口に合わないものは食いたくない。
一度車を停めて、目当ての店に電話を入れてから、また走り出した。
海岸線の凸凹に合わせて作られている道は、曲がりくねっていて、短い距離だけど、なかなかスムーズには進まない。
でも牧野曰く、それだけいっぱい海が見られるからいいのだそうだ。
レストランに着いたのは1時をちょっと過ぎた頃。
レストランと言っても、ここはとあるホテルの別館だ。
連絡を入れておいたこともあって、すんなり席に通され、ランチのコースがサーブされ始める。
海鮮中心の創作イタリアンのメニューは牧野の口に合っていたようで、また飛び切りの笑顔が引き出された。
「お魚、美味しっ! やっぱり地の物なのかなぁ。」
「そうだろ。魚も野菜も、ここら辺で獲れるものに拘ってるらしいぞ。」
やがてコース料理も出尽くす頃、シェフがテーブルに挨拶に来た。
大袈裟なくらい料理の美味さを伝える牧野に、シェフも恐縮している。
「西門様、今日はこちらにお泊りのご予定ですか?」
「いや、単なるドライブで、日帰りするんですが。」
「ああ、それなら急がれた方がいいかも知れません。
これから天気が崩れるようで。
もしかすると、夕方には雨ではなく雪になるかもしれませんから。」
は? あんなにいい天気だったのに、雪が降る?
言われてみれば、窓の外は日射しも見えなくなっており、うすら寒そうなどんよりとした空模様だ。
今帰るとなると、渋滞のなかにどっぷり嵌ってしまうだろうけれど仕方ない。
「牧野、悪い。道混むかもしれないけど、もう戻るか。
俺の車、タイヤ、スタッドレスじゃねえんだよ。
雪降ったらアウトだからさ。」
「あたしは海も見れたし、ドライブもお食事も楽しんだし。
全然いいんだけど…
西門さん、運転しっぱなしで疲れちゃうでしょ。
ごめんね、あたし、何のお役にも立てなくて…」
「いや、俺は大丈夫だ。
コーヒー飲んだら帰るか。」
「うん。」
まだ夕方ではないというのに、窓の外はどんどん暗くなっているようだった。
__________
念のためにお断りしておきますが、茶道宗家の年末年始に関しての部分は、あくまでも管理人の妄想で、事実ではございません。
茶道宗家の内々の儀式なんて、見れる訳ないしー。
そう、これは西門流。あくまでも西門流ですから、何があっても不思議じゃない!ということで(笑)

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今年も拙宅の色んなキャラ達を愛でて頂けるように頑張ります!
新春一つ目のお話はラブラブバカップルで。
今日は1月1日ですが、お話は4日のこと…という設定です。
__________
茶道宗家の年末年始と言うものは慌ただしい。
年末から初釜に向けての準備が始まり。
大晦日から元旦にかけての大福茶<だいふくちゃ>も大切な茶事だ。
家元と家元夫人、俺と、極々少数の内弟子だけで行う、内々の茶事。
旧年最後の茶を飲んだ後に、その茶を点てた時の炭を、元旦の大福茶を点てる茶室に移す。
そこに新しい炭を足して、火を絶やさないように守るのだ。
そして元旦の夜明け前に、その受け継いだ炭で沸かした湯で大福茶を点てる。
家元が点てた濃茶を回し飲みしするこの茶事を以て、宗家の一年は始まる。
その後はゆっくり朝寝…といきたいところだが、そんな事が許される訳もなく。
清々しい朝日を浴びた後も、皆で雑煮やら御節料理を食べたりする。
そうこうしているうちに、新年早々、年始の挨拶をしようと人が訪ねて来て。
そうすると、寒い中態々来てくれた客に一服…というのは当たり前で、年始釜が始まる訳だ。
そんな大晦日から三が日を過ごして、少々怠い身体を抱えた4日の朝。
年始の挨拶も一段落し、俺が居なくても問題ないだろうと、邸を抜け出す事にした。
勿論、親父とお袋にはちょっと出て来ると、一応断りを入れる。
2人とも、あっさり了解してくれた。
親父は片方の口角だけ上げて薄く笑いつつ頷き。
お袋に至っては、何処に行くとも言っていないのに、
「牧野さんに宜しくお伝えして頂戴。
あ、総二郎さん、お年賀お持ちになるの忘れずにね。
そうだわ、美味しいお菓子があったから、あれも持って行って差し上げて…」
などと、手土産をダイニングテーブルの上に積み上げた。
牧野相手に『お年賀』って。
逆にあいつに気を遣わせるだろう…と思った言葉は飲み込んだ。
外に出てみれば、穏やかに晴れ渡った空に、澄んだ空気が心地いい。
新春にふさわしい天気だ。
ちょっと遠出するつもりで、足の速い車を選んで、邸を後にする。
牧野の部屋に着くと、ドアを開けてにこやかに迎えてくれた。
「明けましておめでとう、西門さん。
今年もよろしくね。」
「おめでとう、牧野。これ、お袋から。宜しく言ってた。」
「わあ、ありがと!」
持たされた手土産を渡して中に入ると、玄関のシューズボックスの上のスペースには千両が生けられた花瓶。
部屋のテーブルの上には、松と紅白のアマリリスのアレンジメントが載っている。
一人暮らしでも、正月花を生けようとか思うようになったんだな…と、微笑ましく思っていたら、おずおずと
「こんなの、ダメだった?」
なんて聞いてくる。
「いや、つくしちゃんらしいんじゃねえの。
自分の好きな花活けるのに、良いも悪いもない。
縁起物だしな。
あると気持ちも華やぐだろ。」
あからさまにほっとしたような表情を浮かべてこくりとひとつ頷く。
別に俺はいつでもお前の師匠じゃねえよ。
茶室の外では優しい彼氏だろ?
牧野にしか向けない甘い微笑みを浮かべつつ、華奢な身体を腕の中に掴まえた。
牧野の誕生日以来離れ離れだった時間を埋めるように、しっかりと抱き締める。
「お仕事、大丈夫?
今日はいいの? こんなとこ来てて。」
「いいんだよ。散々働かされて、俺もつくしちゃん不足なワケ。
初釜をしっかりこなす為にも、ここらでエネルギー補填しとかねえと。」
そう言って新年初キスを頂いた。
甘く柔らかな唇につい夢中になる。
唇を合わせているだけなのに、胸の奥底から何かが溢れ出し、背筋がゾクゾクして、肩に触れている掌に熱が籠る。
やっとの思いで唇を離すと、牧野が肩で大きく息をしながら、俺の胸に頭をこてんと寄せた。
それを撫でながら、このまま2人で部屋に籠りきりになりたいという誘惑を振り切り、声を掛ける。
「なあ、今日、どっか行かねえ?
天気もいいし、ぱーっと開けた景色でも見て、すかっとしたいんだよな。」
「あたしはいいけど…
道混まないかな?
今日Uターンラッシュだって、さっきTVで言ってたよ。」
「時間選べば平気だろ。何処行きたい?」
「海! 海が見たい、あたし!」
牧野の一声で冬の海に行き先を決めた。
行きの道はUターンラッシュとは逆方向だったから、快適なドライブだった。
東名から小田厚を抜けて、海岸線に出る。
淡い空の色、銀色に輝く海。
そんなものを左手に見ながら、はしゃぐ牧野の声にこちらまで心が浮き立つ。
「そろそろ腹減らねえ?」
「うーん、ちょっと空いたかな?」
「この先に知ってるレストランあるんだよ。
そこまで我慢できるか?」
「うん、大丈夫ー!」
道すがら、食い物の店は沢山並んではいるが、折角ここまで出掛けてきて、口に合わないものは食いたくない。
一度車を停めて、目当ての店に電話を入れてから、また走り出した。
海岸線の凸凹に合わせて作られている道は、曲がりくねっていて、短い距離だけど、なかなかスムーズには進まない。
でも牧野曰く、それだけいっぱい海が見られるからいいのだそうだ。
レストランに着いたのは1時をちょっと過ぎた頃。
レストランと言っても、ここはとあるホテルの別館だ。
連絡を入れておいたこともあって、すんなり席に通され、ランチのコースがサーブされ始める。
海鮮中心の創作イタリアンのメニューは牧野の口に合っていたようで、また飛び切りの笑顔が引き出された。
「お魚、美味しっ! やっぱり地の物なのかなぁ。」
「そうだろ。魚も野菜も、ここら辺で獲れるものに拘ってるらしいぞ。」
やがてコース料理も出尽くす頃、シェフがテーブルに挨拶に来た。
大袈裟なくらい料理の美味さを伝える牧野に、シェフも恐縮している。
「西門様、今日はこちらにお泊りのご予定ですか?」
「いや、単なるドライブで、日帰りするんですが。」
「ああ、それなら急がれた方がいいかも知れません。
これから天気が崩れるようで。
もしかすると、夕方には雨ではなく雪になるかもしれませんから。」
は? あんなにいい天気だったのに、雪が降る?
言われてみれば、窓の外は日射しも見えなくなっており、うすら寒そうなどんよりとした空模様だ。
今帰るとなると、渋滞のなかにどっぷり嵌ってしまうだろうけれど仕方ない。
「牧野、悪い。道混むかもしれないけど、もう戻るか。
俺の車、タイヤ、スタッドレスじゃねえんだよ。
雪降ったらアウトだからさ。」
「あたしは海も見れたし、ドライブもお食事も楽しんだし。
全然いいんだけど…
西門さん、運転しっぱなしで疲れちゃうでしょ。
ごめんね、あたし、何のお役にも立てなくて…」
「いや、俺は大丈夫だ。
コーヒー飲んだら帰るか。」
「うん。」
まだ夕方ではないというのに、窓の外はどんどん暗くなっているようだった。
__________
念のためにお断りしておきますが、茶道宗家の年末年始に関しての部分は、あくまでも管理人の妄想で、事実ではございません。
茶道宗家の内々の儀式なんて、見れる訳ないしー。
そう、これは西門流。あくまでも西門流ですから、何があっても不思議じゃない!ということで(笑)



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