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hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
https://potofu.me/hortensia

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似た者同士 5

会う度に牧野が不安定になっていく。
何かを抱えているというのは分かるが、この意地の塊みたいな女の本音を引き出すのは一筋縄ではいかない。
様子が気になって、折に触れて会ってはいた。
でも食べ物で釣っても、酒を飲ませても、決して口を割らない。
からかっても、優しく声を掛けても、全部撥ね付ける。
今夜も牧野の好きそうな乙女チックな店を予約して呼び出した。
声を掛ければやって来る。
でも自分の殻の中に閉じこもっているように見えた。
何とか言葉を引き出そうと、色々な話をしながら食事したが、どうにも俺が1人で空回りしているような感覚だ。
ちょっと突いたら「消えてなくなりたい。」と言って泣き出した。

お前、どうしちまったんだよ?
消えてなくなりたい程、何を悩んでいるんだ?
どうして俺に何も言わない?
お前は溌剌と笑ってるのが似合いだろ。
そんな萎れたお前なんか見てたくねえんだ。

泣いた後、黙りこくってしまった牧野を部屋まで送っていった。
何て言ってやったらいいのか分からず、思い付いたのはまるで心配性の親父のような台詞だけだった。

「とっとと風呂入って寝ろ。
しっかり寝たらまた気持ちも切り替わるから。
ああ、結構ワイン飲んだから、湯船は浸かるなよ。
シャワーにしとけ。
それからちゃんと水飲めよ。」
「…西門さん。」
「なんだ?」

俺を見つめる牧野の黒い瞳が揺れている。
また泣くのか?
何でそんな苦しそうな顔で俺を見るんだよ?
言えよ、言っちまえよ、牧野。
お前の抱えてるもの、俺にぶつけてみろよ。

「…お願い、もう少しだけ一緒にいて…」

縋る様な上目遣いで俺を見上げる。
その視線があまりにも切実だったから、つい息を呑んだ。
その空気を誤魔化そうと、いつも通りの軽口を叩く。

「なーんだ? つくしちゃん、やっと俺の魅力に気付いちゃった?
送り狼希望ならそう言えよ。
もう少しだなんて言わずに、朝まで一緒にいてやるよ。」

得意の軽薄な笑いを浮かべて、見下ろした。
いつもの牧野なら、「エロ門っ!」という言葉とパンチを繰り出してくるはずなのに、今夜は俺のシャツの裾を握って俯いてる。
こんな牧野、俺は知らない。

「おい、ホントにお前、どうしたんだよ?」
「……」

肩を掴んで顔を覗き込んでもまた黙りだ。
仕方なく、ポケットから携帯を取り出して、下に待たせている車に、邸に戻っているよう連絡を入れた。

「つくしちゃん、ほら、部屋に上げてくれよ。
2人でこんなとこ突っ立ってんの、馬鹿みたいじゃね?」

その言葉に促され、牧野が手を解いて、のろのろと靴を脱ぎ、暗い部屋に入っていく。
その背中を追い掛けた。

「牧野、灯りのスイッチ、どこだ?」

何度か来たことはあっても、さして詳しくない部屋の壁を見回して、照明をつけるためのスイッチを探す。
その答えが聞こえてくる前に、胸にどしんと衝撃を受けた。

「牧野?」

牧野の手が俺の襟首を掴む。
ぶつかる様に口に押し付けられる唇。
ありえない現実に思考が止まりかける。

「おい… 酔ってんのか?」

衿を握り締めてる手を解こうと指をかけると、余計に力を込めてくる。
その手は小刻みに震えていて。
牧野の熱い吐息を唇に感じた時、背筋にぞわりとした感覚が走った。
もう一度口付けられて、それを合図に牧野を掻き抱いた。

お前が胸に抱えてる何か。
それをぶっ壊すのに俺が必要なら手伝ってやるよ。
何も考えられない位に激しく。
俺の事しか分からなくなるように深く。
全てを焼き尽くすように熱く。
お前の事を抱いてやる。

牧野の髪に指を挿し込み、唇を貪った。
柔らかな唇と咥内を味わううちに、躰の奥底から欲望が溢れ出す。
指を滑らせ、牧野の服を1枚、また1枚と解いていたら、牧野が俺のシャツのボタンに手を掛けた。
肌蹴た胸に、牧野の唇が当てられる。
その熱さと吹きかかる吐息に煽られて、血が滾る気がした。
心臓がどくりどくりと音を鳴らす。
目を瞑れば、瞼の裏では眩い光が瞬く。
縺れ合うようにベッドに倒れ込んで。
しなやかな四肢が俺の身体に絡みつく。
柔らかでしっとりとした肌に指を這わせ、唇でも味わえば、牧野がそれに応えて震えるのが分かる。
暗闇で、何の言葉も交わさずに、唯々肌を重ね合せる。
耳に届くのは、牧野が喘ぐようにしている呼吸の音と、ぎしりぎしりと狭いベッドがきしむ音。
そこに必死に堪えているんであろう牧野の声を響かせようと、指を進める。

ほら、今だけでも忘れちまえよ。
お前を雁字搦めにしてるもの、全部脱ぎ捨てろ。
身も心も全て投げ出したら、俺が受け止めてやるから。

牧野の零す声と、悩ましげな動きに誘われ、どんどん衝動が募ってく。
俺の知らない牧野が次から次へと現れて、頭の中を混乱させた。
とうとう堪え切れずに自分の熱を牧野に穿てば、更に熱い牧野に捕らえられ、痺れるような感覚に支配される。
俺に翻弄されて蕩けていく牧野を、高く高く押し上げては突き落として。
何度きつく撓らせながら震える背中を感じたことだろう。

胸には今迄知らなかった想いが湧き起こる。
この夜から牧野は俺の中で特別な女になった。


__________


こんなんじゃダメって言わないで!
自分的にはパスなしで書けるのはこれくらいが精一杯…
ああ、それにしても今夜も俺様だねー(笑)
つくしの台詞は「…お願い、もう少しだけ一緒にいて…」となりましたが、皆様の予想はどうだったでしょうか?
一所懸命考えたんだよ、秘密会議までして!

いやー、書いてる途中で、PCフリーズして、大分消えましてね…
泣きそうになりました。
あー、新しいPC欲しいー!


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似た者同士 6

明け方、それまでモノクロの世界だった牧野の部屋が、薄ぼんやりと明るくなり始め、少しずつ色を取り戻してきた。
うつ伏せでぴくりとも動かない牧野。
顔は俺と反対側に向けられていて、その表情は全く窺い知れない。
眠っているのか、起きているのかも分からなかった。
ただ背中のわずかな動きで、規則正しく息をしているのは見て取れる。
その隣で、様々な事を考えながら、牧野の体温を感じていた。

一晩中俺に抱かれてた牧野。
それによって引き出された、俺の知らなかった牧野の姿と声が繰り返し頭の中を回ってる。
どんな女とベッドを共にしても、それは一時の享楽でしかなく、その場限りのものだった。
朝になればその熱は霧散し、何の記憶にも残らない。
俺にとって女と夜を過ごすというのはそういう事だった。
だというのに、俺はさっきからずっと牧野の事ばかり考えてる。
この温もりから離れたくないと思ってる。

そっと背中に手を這わせた。
ひやりとして、滑らかな感触。
撫でていると柔らかな肌に指が吸い込まれそうな気すらする。

「西門さん…」

囁くような牧野の小さな声が聞こえてきて、手の動きを止めた。
起きていたのだろうか。
それとも俺のせいで起こしてしまったのだろうか。

「ん…?」
「忘れてね… 全部、全部忘れて…」

そう言われて、胸に鈍い痛みが走った。

お前は、俺と越えた夜を忘れたいのか?
こんな事になって後悔してるのか?
お前にとって俺はそんなに意味のない存在か?

俺が今どんな思いで隣にいるのか、想像つかないんだろう。
でもそれは俺が今までしてきたことのツケなんだよな。
自分の虚しさを誤魔化すために、ゲームのように女を抱いては棄て去ってきた。
こいつはそれをずっと見てきたんだから。
自分もそうやって忘れられる存在だって思ってるんだろ。
いいよ、お前がそう言うなら、忘れたふりをしてやるよ。
忘れたふりして、今迄通りの気のいいダチを演じてみせる。

「つくしちゃんがそう言うなら。
この部屋のドアを出たら、ここであった事は全部忘れる。
それでいいだろ?」
「うん…」

ふう…と牧野が息を吐き出した。
脱力していると思っていたのに、本当は力が入っていたらしい。
肩から力が抜けて、更にベッドに深く沈んだ。
俺と顔を合わせるのは気まずいとでも思っているんだろう。
頑なにこっちを向かない。
寝乱れた黒髪を見遣りながら、牧野を振り向かせたい…と思ってる自分に気付いた。
カーテン越しに朝日が感じられる程明るくなってきたこの部屋で、牧野がどんな表情をして俺を見つめるのか知りたいと思っている。

牧野、こっち向けよ。俺を見ろ。
お前が絶対口にしない胸の内。
この朝の光の中で、俺と目を合わせたら、言葉にしない思いをその瞳は語るんじゃないのか?
そして俺はお前と向かいあったら、今抱えているこの得体の知れない感情の正体を掴めるんだろうか…

何故声に出して、「こっちを向け。」と言えないんだろう?
一晩中抱き合ったのに、互いに言葉を交わさなかったから?
牧野が俺の名を呼んでいたら、きっと俺はそれに応えて名前を呼んでいた。
でも牧野の口からは、熱い吐息と、小さく喘ぐ声しか聞こえてこなかった。
だから意味のある言葉を口にするのは躊躇われたんだ。
じゃあ今は、何が俺の口を重たくしてるんだ?
初めて夜を共にした気恥ずかしさなんかとは違う。
俺の方を向かない、牧野の無言の背中に、気圧されているのかもしれない。

そうして独りで考え込んでいるうちに、牧野からすうすうと微かな寝息が聞こえてきた。
「忘れて…」と言うからには、目覚めた時に俺がまだいたら困るんだろう。
身体を動かすと軋むベッドを、なるべく音を立てないように抜け出した。
床に脱ぎ捨てられた服をひとつひとつ拾って身につけて。
牧野の方を振り返ってみると、さっきと同じ姿のまま眠っている。
露わになっている肩が寒そうに見えて、ベッドに歩み寄り、上掛けを首元まで引っ張り上げた。

帰らなきゃいけないのに、この場を離れ難い。
もっと牧野に触れていたいという欲がある。
でもこいつはそんな事望んじゃいないから。

「お休み、牧野。」

小さな声でそう言って、部屋を後にする。
オートロックのドアがかちゃりと音を立てて閉まると、俺が牧野を置いて出て来た方なのに、自分が独りきりにされた気になった。
あの「お休み。」は、牧野に聞かせる為じゃなく、自分に踏ん切りをつけさせる為に言ったのかもしれない。
朝の冷えた空気の中、人通りのない道を歩きながら、そんな事を思う。
胸の中がざわざわと落ち着かなくて。
その正体を掴みたくて、自問自答を繰り返す。

これって一体何なんだ?
今迄数えきれない程の女と、夜を過ごしてきたのに、終ぞこんな気持ちになった事は無かった。
どうして牧野だけ違うんだ?
10年もの間、ダチだったから?
牧野から俺にぶつかって来たから?
何でこんなに気持ちを掻き乱されるんだ?

「忘れる。」と仮初めの約束を口にしたけれど。
俺はきっとこの夜の事を忘れない。
忘れられない。
俺の胸を震わせた声も、分け合った熱も、全部胸に秘めておく。

牧野の途切れ途切れの吐息が、耳の中に木霊していた。


__________


百戦錬磨に訪れた、今迄とは違う朝!みたいな(笑)
つくしも戸惑ってるんだろうけど、負けず劣らず総二郎も混乱してそうです。

ちょっと忙しくて、疲れちゃって、書けないでおりました。
今夜も一度寝ちゃったのに、奇跡的に目が覚めて、何とか書き上げた次第です。
お蔭様で、宅内の病人たちは小康状態です。
このまま安定してくれればいいんですけどねえ。
そして管理人、本格的にノートPCを物色し始めました。
だ、だって、フリーズされるの困るんだもの!
でも全然機械に詳しくないので、どれにしたらいいのか考えあぐねておりますー。


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似た者同士 7

ドアがかちゃりと音を立てて閉じたのを聞いた途端、必死で堪えていた涙がぼろぼろと零れてきた。
泣いても泣いても止まらない。
熱い雫が滴り落ちる枕は、どんどん濡れて冷たくなっていく。
分かっているのに、止められなくて。
独りきりのベッドの上で、声を殺しつつ、涙が涸れるまで泣いた。

-*-*-*-*-*-

どうしてあんなこと出来ちゃったんだろう…

部屋の前まで送ってくれた西門さんが、あんまり優しげな目をしてたから。
その目に見つめられて、胸が苦しくなって。
思わず「…お願い、もう少しだけ一緒にいて…」なんて口走ってた。
こんな時、西門さんがあたしを突き放したりしないのを知ってて、そういう事を言うんだから、あたしって実は計算高いのかもしれない。
暗い部屋で2人きりになったら、自分の中で何かが暴れ出して、あたしを勝手に衝き動かした。
西門さんに縋り付いて唇と唇が触れるだけのキスをしたら、「おい… 酔ってんのか?」と、戸惑いながらもあたしを気遣うそぶりを見せる。

酔ってるのなら、それを理由に赦されるんだろうか?
今だけでいいから西門さんを手に入れたいっていう欲望を露わにすることは。

そう思い付いたらもう自分を押し止められなかった。
もう一度思いっきり背伸びをして、西門さんの唇に自分のそれを重ねたら、西門さんの腕があたしをぎゅっと抱き寄せて、息が止まりそうなキスをくれた。
躰の震えがとまらない。
嬉しくて、苦しくて。
恋しくて、哀しくて。
色んな想いが溢れてくる。

もっとキスが欲しい…
もっと西門さんに触れたい…

浅ましくもそう願ったら、脳味噌が蕩けるようなキスが降ってきた。
こくりと互いの雫を飲み下すと、躰中にびりびりと何かが走り抜けてく。
口付けをくれながらも、西門さんの手が器用にあたしの服を脱がせていくのが分かって、更に心臓が暴れてる。
微かに震える指で、西門さんのボタンをひとつずつ外した。
熱くて滑らかな肌に触れたら、それだけで眩暈がしそうな感覚に陥る。

ずっとずっと触れたかった。
決して自分のものにならないんだから…と恋い焦がれるばかりで、こうなる事なんかあり得ないと思っていた人が、目の前にいる。

そっとその胸に唇を寄せた。
初めて触れる肌に緊張して。
束の間でもそれを許される悦びに、口からは熱い吐息が零れてく。
胸に顔を埋めたら、ふわりと西門さんの香りを感じた。
甘いアンバーと爽やかなグリーンティー。

そうだ、やっぱりこの香りは誰のものでもない。
西門さんの香りだ。
あたしは、この人が纏っているから、この香りが好きなんだ…

気が付いたら、2人でベッドの上にいた。
西門さんの熱い手があたしの躰をゆっくり撫でていく。
あの綺麗ですらりと長い指が、あたしに触れているんだと思ったら、どんどんどこかに追い詰められるような気持ちになった。
西門さんがくれる熱に浮かされて、自分がぐずぐずに蕩けてく。
名前を呼びたくて胸が苦しい。
でも、一度呼んでしまったら、自分の胸の内を暴露してしまいそうで、名前を呼べない。
だから心の中だけで呼び続けた。

西門さん…
西門さん…
西門さん…
好きだよ。
ずっとずっと好きだった。
本当の事を言えなくて、苦しくて、気が狂いそうだったの。
こうして、貴方に抱かれたいって、心の底で望んでた。

何度も何度も貫かれて、その度に躰も心も悦びに震える。
自分のものと思えないような甘い声が、口から流れているのを、どこか遠い意識の中で聞いていた。

気がつけば疲れ果てた躰でベッドに伏していた。
躰中に余韻が残ってる。
西門さんが触れてくれた感覚を全部憶えておきたいと切実に思った。

白々と夜が明けいてく。
暗闇で抱き合っていたから、なりふり構わず自分を曝け出したけれど、明るい所でまともに顔を合わせる勇気なんて持ち合わせていない。
隣にいるこの人は、一体何を思っているんだろう…
優しく労わるように背中を撫でてくれている。
ずっとこうしていたいけど、これは一夜の夢だから。

「西門さん…」と小さな声で呼んでみた。
一晩中、声に出して呼べなかった、愛しい人の名前。
「ん…?」と柔らかな声が聞こえてきて、それだけで息が止まりそうなほど嬉しくなる。
なのに、口にするのは心で思っている事と裏腹な言葉。

「忘れてね… 全部、全部忘れて…」

嘘だ。本当は、忘れないでって言いたい。
自分で言っておきながら、胸がぎゅうっと締め付けられる。
束の間の沈黙の後、

「つくしちゃんがそう言うなら。
この部屋のドアを出たら、ここであった事は全部忘れる。
それでいいだろ?」

と返された。

きっとこれでいいんだ。
何も無かったことにした方が、傷つかないで済む。
夢だったと思えたら、あたしはまだこれからも西門さんの友達でいられる。

頭ではそう思い込もうとしてるのに、上手くいかない。
心がそれを拒否してる。
それを宥めようと、何度も何度も深呼吸してみたけれど、どんどん心が乱れていく。
そのうちベッドがぎしりと鳴って、西門さんが躰を起こした。
衣擦れの音がして、服を着てるんだと分かるけど、やっぱりそっちは見られない。

行かないで欲しい。
あと少しだけでいいから、隣にいて欲しい。
いやだ、いやだ。
胸が焼けそうなほど、貴方を想っているのに。

背中で西門さんの気配を感じる。
冷えていた肩をふわりと上掛けで包まれた。
思わずびくりと震えてしまったけれど、西門さんはそれに気付いたのだろうか?
耳元に優しい声で「お休み、牧野。」と言い置いて、西門さんは部屋を出て行った。


__________


はい、今夜はつくしSideのお話でございましたー。
ストーリー的には足踏み状態でございますが(苦笑)
2人の気持ちを読み比べて頂けたらなーと思います!


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似た者同士 8

「つくし、疲れてんのか? 無理に俺に付き合わなくても良かったのに。」

そんな声にはっとして、慌てて目の前にいる人に視線を戻せば、優しげに目尻を下げながら微笑んでいる。
大木さんに誘われて、夕食を一緒に摂っていた。

「え… あ、うん… ちょっと疲れてる…かな…?」
「じゃあ、今日はもう帰ろうぜ。
俺に気なんか使うなよ。
疲れてる時はちゃんと言え。」

大木さんは優しい。
いつだってあたしの事気遣ってくれる。

「ん、ごめん…」
「謝るなって。
オジサンとしては、可愛い女の子とメシ食えるだけで幸せですから。」
「またそんな事言って。」

可愛くもないし。
女の子って歳でもないから。
ついくすっと笑ってしまった。

「つくしは笑ってる方がもっと可愛い。」

大してお酒が入ってる訳じゃないのに衒いも無くそんなことを気軽に言えるこの人は、やっぱりあたしを小娘だと思ってるんだろうか。

「お世辞はもういいってば。」
「そうか? ほら、行くぞー。」

さっさと席を立った大木さんが、行きがけにあたしの髪の毛をくしゃりと掻き混ぜた。
その手に、別の人を思い出して、肩がぴくりと跳ね上がる。

考えたって仕方ないのに。
あれは夢だったんだから。
そう、あれはあたしの強い想いが見せた一夜の夢だ。

そう思い込もうとしたのに、胸が痛くて仕方ない。
身体が固まって動けない。
帰らなきゃいけないのに立ち上がれない。
あたしが後に続かないのを不思議に思ったんだろう。
大木さんが戻って来て、顔を覗き込んできた。

「おい、大丈夫か? 今日、そんなに飲んでないよなあ?」
「…大丈夫。ごめんなさい。」

差し伸べてくれた手に縋るようにして立ち上がり、店を出た。

「調子悪いならタクシーで帰るか?
つくしがイヤじゃないなら、心配だから送ってくけど。」
「あたし…、部屋に帰りたくない…。」

そう、あの部屋に帰りたくない。
あの部屋に独りでいると、色んな想いが込み上げてきて辛くなる。

「何言ってるんだよ。
分かってんのか、その台詞の意味。
男はみんな簡単に誤解するんだぞ。」

おどけた調子で大木さんはそんな事言う。
この人はいっつも笑い顔だ。
それに警戒心を解かれてしまう。

「誤解していいよ。」

こてんと肩に自分の頭をもたせ掛けた。
あの人とは違う肩の位置。

あたしにはこの高さの方が馴染むんじゃないのかな…

ぼんやりとそんな事を思った。
そう思うだけで、ずきんとした痛みが身体を駆け抜ける。
目の前でタクシーが止まり、大木さんに促されて乗り込んだ。
告げられた行先は、2人で時々行くあのホテル。
右手を大木さんの方に引き寄せられて。
優しく手を握られた。
ただ手を繋いでいるだけなのに、何故か息苦しく感じて、手を引っ込めたくなった。

どうしてこんな気持ちになるんだろう…
大木さんとは手を繋ぐ以上のことしちゃってるっていうのに。

自分の心の乱れに戸惑うばかりだ。
ぼうっとしているうちにタクシーはホテルのエントランスに着けられた。
ロビーのソファで待っているように言われて、煌びやかな空気に馴染めないまま、そこに座っていたら、大木さんがカードキーを手にして戻ってきた。
静かな廊下をゆっくりと歩いて部屋に入ると、また綺麗な夜景が見える。
それでも窓に近付くことも出来ず、かといってソファで寛ぐ気にもなれず、その場に突っ立っていたら、ふわりと抱き締められた。

「何かあったのか?
つくしが大丈夫って言う時は、ホントはちょっとピンチの時だろう?」
「…どうして?」
「辛い時こそ頑張り過ぎちゃう長女気質、だろ?」

大木さんの言葉に泣きそうになる。
あたしはいつからこんなに弱くなっちゃったんだろう…

「あたし… 」

何を言ったらいいのか分からない。
言葉に詰まっていると、大木さんが背中をポンポンと叩いてくれる。
元気出せよってメッセージ。

「つくしが独りで居たくないなら、一緒に居るよ。
でも、独りになりたいなら、俺は帰るから。」

ホテルの部屋まで来てこんな事を言うこの人って、いい人だよね。
普通ここまで来たら、なるようになっちゃうもの。
そんな事位、疎いあたしにだって分かってる。

言葉にする代わりに、大木さんの背中に手を回した。
あの夜を本当に夢にする為に。


__________


うーん、何か今日は短めですけど、キリがいいのでこの辺で…


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似た者同士 9

牧野からの電話。
珍しいから目を疑った。
連絡は大抵こっちから。
返事は短いメールが届くだけ。
それがいつもの事だったから。
そしてあの朝、牧野の部屋を後にして以来、初めてのコンタクト。
通話ボタンをタップして、携帯を耳に当てた。

「もしもし?」
「あ… 西門さん? 牧野だけど…」
「どうした? お前から電話してくるなんて珍しいじゃん。」

普通の振りをしろ。
何も無かったかのように話せ。
バタついてるなんて牧野に気取られることなく、いつも通りの調子のいい男を演じきれ。

「あー… あの…」
「ん、なんだ?」
「西門さん、今夜暇… かな…?」

一際大きな音で心臓がばくんと拍動した。
携帯を握ってる手が急に汗ばむ。

「特に用事はねえけど。メシでも行くか?」
「ううん、そうじゃなくて…
車に… 乗せて欲しいの。」

思いもよらなかった言葉に、つい目を瞬いた。

道路っ端じゃなくて駐車場がある所で…と指定したら、暫し悩んでから、大きな公園の名前を言ってきた。
そこなら広い駐車場があるのを知っているからと。
約束した時間にそこに車を入れると、すぐに牧野が近付いてきた。
ドアを開けて外に出ると、何だか呆れた顔してこっちを見てる。

「よ、つくしちゃん。」
「何これ…」
「お望み通り、車で迎えに来てやったろ?」
「派手過ぎるよ… 真っ黒だけどピッカピカで、ドアなんか鳥の羽みたいになってるし。」
「お前ね、伝統のスイングアップドアをそんな一言で片付けんな!
ほら、乗れよ。」

右側のドアを開けて牧野を誘った。
きょろきょろしながらナビシートに収まった牧野を見届けてからドアを閉める。
続いて自分も乗り込んで、エンジンを掛け直した。
低く唸るようなエンジンのスタート音に驚いた牧野が飛び上がる。
それを横目で認めて、思わずふふふと笑いが零れた。

「車に乗せてって… どこ行きたいんだ?」
「場所はどこでもいいんだけど。
速い車に乗って、高速道路を走りたかったの。
西門さんなら叶えてくれそうって思って。」
「なら、この車は速いぜ。何てったって最高時速350kmだからな。」
「…いくら高速道路でも、そんな速さで走れるとこ無いと思うんだけど。」
「ま、350kmはサーキット以外では無理だな。
でも最高の乗り心地で飛ばしてやるよ。」

行先はどこでもいいらしい。
牧野が喜びそうなところ…と考えて、アクアラインを走る事にした。
首都高から浮島JCTへ。
アクアラインの川崎側の長いトンネルを抜けると海ほたるがあり、その先は両サイドに海が広がる一本の橋だ。

「これ、日本一長い橋だぜ、つくしちゃん。」
「そうなんだ… 綺麗だね、照明灯が飛ぶように流れてくの。
昼間、海が良く見える時も景色良さそう。」

そう言いながら、牧野は窓の外を眺めてる。
どうして車で高速道路を走りたい…なんて言い出したのか知りたいと思った。
日本一長い橋と言えども、制限速度で走り抜けたら数分で対岸に着いてしまう。
牧野が残念そうに「終わっちゃったね…」と呟くから、どこかでUターンして同じ道で戻ろうと、一番手前のICで降りた。
ついでに少し休憩を…とアクアブリッジが良く見える海沿いに車を停める。
2人で防波堤に登って腰掛けた。

「あー、あそこを走ってきたんだね。」

細い光の鎖を指差してる牧野。

「急に車に乗せてなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「ん? さっき言ったでしょ。高速道路、走りたかったの。」
「だから、何で高速道路?」
「何でだろ… 一瞬でいいから、東京から、日常から、逃げ出したかったのかな…?
速い車でびゅーんと走って行ったら、その時だけでも煩わしいこと全部置き去りにできるかなって。」

この間から、消えたいとか、逃げたいとか、後ろ向きなことばっか言ってるな、こいつ。
何に悩んでるのかは言う気が無いんだろ。
言う気が無いなら、問い詰めるまでだ。

「それで? 一瞬忘れたのか? その煩わしい事ってやつをさ。」
「…うん、あの橋の上を走ってた時は忘れてたかも。
次々と自分の横を流れてく灯りを見てたら、頭がぼうっとして。
ずっとこの景色の中を走ってたいなって思っちゃった。」

そう言って儚く笑う。
こっちの胸が疼くような淋しげな横顔。
己の手の内に引き寄せたくなる。

「西門さんはいいね。
こんな車があったらどこへでも行けちゃうね。」

馬鹿言うなよ。
俺はどこにも行けないんだ。
どんな飛ぶように速い車を持っていたって、俺は俺を取り巻くものから逃れられない。
だけどお前は自由な翼を持ってるだろう?
その気になったら、羽ばたける筈じゃねえか。
なのに何でそんなに重たい鎖に繋ぎとめられてんだよ?

ついと牧野が俺を見上げた。
目が合うと、ぱふんと表情を崩して、泣き笑いの顔になる。
そんな牧野を見ていたら考えるより先に身体が動いてた。
手を伸ばして、肩を掴まえて。
ゆっくり顔を近づけた。
牧野は身体を固くしてはいるけど、逃げようとはしない。
柔く唇を重ねたら、ふるりと震えた。

まるで初めてキスする乙女みたいだな。

頭の片隅でそんなことを思いながら、もっと深く口付けた。


__________


総二郎の今夜の車はLanborghini Aventador のブラック。
派手です! 厳ついです! 平べったいです!(笑)
手元にミニカーを持ってます(苦笑)
本物は4100万円也ー!

何でいきなりドライブかって?
それは、管理人がアクアラインを走るのが好きだからですよ(笑)
海ほたるも大好きです♪
それだけです!


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