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花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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天邪鬼

いつもと違って、ちょっとオトナ(?)なつくしのお話。

__________


「何でつくしちゃんは他のオトコに抱かれた次の夜、俺んとこ来るワケ?」

ベッドの上でしどけない姿を晒してる牧野に、そんな言葉を投げてみる。
昨夜の情事を連想させる、躰に残った紅い跡。
気に入らなくて、さっきそれを全部上書きしてやったから、一層紅い花を散らしたかのような背中になった。
怠そうに躰を此方に向けて、ちらっと俺に視線を走らせる。

「別に… いいでしょ、そんな事。
西門さんだって毎日違う女の人と寝てるんだし。
それと一緒じゃない?」
「ふっ。何言ってんだか。
全然違うだろうが。
ああ、お前、あの男じゃ満足出来ないとか?
あいつ、そんなに下手なのか?」
「さあ? 普通なんじゃないの?
特に不満に思ったりはしてないけど。」
「じゃあ、なんだよ?
上手くいってないのか?」
「…上手くいくも何も、付き合ってないし。」
「はぁ? ちょくちょくデートして、時々ホテル行って、それで付き合ってないっての?」

牧野には一回り年上の彼氏らしきオトコがいる。
友達の友達とかで、何かの飲み会で知り合ったらしい。
牧野の望んでた普通の恋愛って言うのより、相手がちょっとオッサンか?とは思うけど。
まあ、バツが付いてる訳でもなし。
有名どころの会社で働いてるサラリーマン。
正直何処に惚れてるのかは、ちっとも分からない。
顔はまあまあ整ってて。
牧野よりは背が高いけど、精々170cmそこそこってとこだろう。
偶然すれ違いざまにちらりと見かけた事があるだけだから、それ以上の事は知らない。
牧野がぽろりと漏らす言葉の端々から想像してるだけだ。
で、そいつと夜を共にした次の日、牧野は必ず俺の前に現れる。
そして言葉じゃなくて視線と態度で、抱けと迫ってくる。

「…付き合って無いらしいよ。
オトモダチみたい。」
「お前、それ、セフレって事?」
「知らない。他に女の人の影も無いけど。
兎も角あたしはオトモダチなんだって。」

牧野の投げ遣りな言葉と態度に、何だか胸の奥がもやっとする。

「お前、それでいいワケ?」
「だーかーら、いいも悪いもないの。
付き合っても無いんだから。」

牧野ははぁと深い溜息をひとつ吐き出した。
これ以上話す気は無いらしい。
どうしたもんかと考えを巡らすうちに、牧野の細い指が、俺の胸の上で遊び出す。
やがて互いの唇が近付いて重なった。
蕩けるような甘い口付けは、すぐに深く奪うようなものに変わってく。
一度熱を交わし合った躰は、簡単にその熱さを取り戻せるものだ。

昨夜の記憶を消したいのなら、お望み通りに。

牧野を思いっきり翻弄してやろうと、躰中に指と唇を滑らせているうちに、俺が牧野に夢中になった。


夜のうちはあんなに艶めいていたのに、朝の光の中では、子供のように無防備な寝顔になる。
そっと頬を指の背で撫で上げたら、口元をむにむにさせながら、俺の胸に顔を寄せた。
さらさらと溢れて顔に掛かっている黒髪を梳き流してやると、擽ったかったのか、「ん…」と小さな声をあげて身じろぎする。

どうすりゃいい訳…?

俺の前で、警戒心を全部解いてしまった野良猫みたいな甘え方をするから。
そして一方では、鉄パンを守ってたガチガチのお固い勤労処女だった事なんか忘れさせる程、最も簡単に躰を拓くから。
俺は牧野の事が分からなくなってきた。
寝返りをうって俺から離れていった背中が半分露わになる。
点々と散りばめられた紅い跡が見え隠れして、自分がやった事なのにどきりとさせられた。

ったく、牧野だってのに。
いや、牧野だからか。

指先で紅い跡を、星座を描くように辿ってく。
猫が伸びをするみたいに、背中を反らしてその刺激をやり過ごそうとするから、腕を伸ばして、その背中を自分の胸に抱き込んだ。
耳元に唇を寄せて、朝の挨拶代わりに、熱い吐息を吹き込んでやる。

「つくしちゃん、朝だぜ。
起きないとチ・コ・ク!」

「ひゃあ!」と叫び声を上げ、耳を押さえながら飛び起きた牧野。
キョロキョロして、サイドテーブルの携帯に飛び付く。
そして息を詰めて画面をじっと見つめる事、10秒あまり。
その携帯をほっぽり出し、ばふっとベッドに倒れ込んできた。

「西門さん、朝から脅かさないでよ!
今日、土曜日じゃん。
目覚まし掛けそびれたのかと思っちゃった。」

そう言い放つと、寝直すつもりなのか、肩迄上掛けを引っ張りあげて、俺に背を向けて包まってる。

隣に裸の西門総二郎が寝てるっつーのに、恥じらいもせず、特に意識もしないって?
おいおい、お前、一体どういうつもりなんだよ?
俺の事、何だと思ってるワケ?
お前がそういう態度なら、俺にだって考えがある。

そろそろと指を牧野に這わせてく。
柔らかな脇腹をそっと擽ると、早速抗議の声が飛び出した。

「擽ったいから、止めて!」

払いのけようとする手を捕えて、ぐっと握りしめる。
また躰を寄せて、項に顔を埋めた。

「つくしちゃん、あの男と別れろよ。」
「付き合っても無いんだから、別れるも無いよ。」
「またそれか。じゃあ、もう会うな。」
「何で西門さんがそんな事言うのよ。」
「もういい加減、お前を他の男と共有するの、我慢の限界なんだよ。」
「はあ? じゃあ、あたしは一体どんだけの女の人と、この躰、共有してんの?
そんな事言うなんて、ルール違反…」

そこまで言われた時、一気に身を起こして、牧野の肩をベッドに押さえつけた。
上から見下ろすと、組み敷かれた牧野は呆気にとられて俺を見上げてる。

「…お前さ、俺に他に女がいると思ってる?」
「思ってるよ。毎日とっかえひっかえなんでしょ?
男のロマンとか豪語してたじゃん。」
「じゃあ、お前に呼び出される時、いつでも駆け付けてやれるのは何でだと思う?」
「…たまたま暇だった…とか?」
「俺の背中に女の爪痕でも付いてたことあるか?
どこかにキスマーク付けてきたことあるか?
他の女の匂いをさせてお前を抱いたことがあるか?」
「…西門さん、言ってることが分かんないよ。」

この女… 鈍感っぷり晒してるんじゃねえ!

「いいか、良く聞けよ!
俺には牧野しかいねえの。
だからお前が他の男に抱かれてるかと思うと、ムカムカすんだよ!」

いや、ホントはムカムカなんてもんじゃんねえ。
腸煮えくり返りそうなほどイライラしてる。

「お前だってさ、他の男に抱かれたって虚しいばっかりだから、次の日俺のとこ来るんだろ?
それってどういう意味だか分かってんだろ?」

牧野がついっと視線を逸らす。

都合が悪くなったら逃げ出そうなんて、許さねえよ。

頤先を指で捕まえて、顔を覗き込んだ。
泣き出すちょっと手前みたいに、顔を歪めてる牧野がいる。

「俺のホントの気持ち、言ったんだから、お前も言えよ。」
「嫌だ。」
「嫌っていうことは自覚はある訳だ?」
「何よそれ? 知らないっ!」

どんどん頬が紅くなってく。
目がうるうると濡れていく。
もうそれだけでも分かっちまう。

「天邪鬼。」
「どっちがよ!」

そうだな、2人ともかもな。

くすりと笑ってから、俺だけのものになった牧野に熱い熱いキスをお見舞いした。


__________


やっとお話を書けました!
ちょっと集中して書けないので、続き物は難しくて。
思い付いたSSを仕上げてみましたー。
たった1話ですが、ちょっと長めに書いといたので許してねん♪(笑)

今日から5月ですね。
こちらはもう夏が来たか?というような陽射しでした。
どうぞ皆様、楽しいGWをお過ごしくださいね!


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似た者同士 1

「天邪鬼」の夜に至るまでのつくしの話。


__________



あの日、この人からこの香りがしなかったら…
あたしは今日ここに居なかったかも知れない。

そう思いながら、温かな腕に頭を載せる。
そっと胸に指を滑らせると、するりとした感触。
女のあたしとは全然違う肌。
何度夜を越えても慣れない気持ちと躰。
隣の人は静かに寝息を立てている。
眠りにつけないホテルのベッドの上で、考えても仕方ないことばかり考えて、夜が明けるのを待っていた。

初めて会ったのは、会社の同僚が誘ってくれたBBQだった。

「週末、友達と河原でBBQするんだ。
車持ってる人達が道具も材料も用意してくれちゃうから、私達は当日身体一つで行くだけ!
どう? つくしちゃんも行かない?」

恥ずかしながら27になっても、週末を一緒に過ごす相手もいないあたしは、そんな同僚の誘いに乗って、とある土曜日、そのBBQに出掛けて行った。
良いお天気に恵まれたけれど風が吹いていてちょっと肌寒かったその日。
知らない人もいる中、楽しく飲んだり食べたりさせてもらっていたけれど、段々身体が冷えてくるのを感じてた。
そこに、温かなスープを作って手渡してくれたのが、その人だった。

「はい、これどうぞ。」
「あ、有り難うございます。」

何気なく渡された紙コップの中身が、ただのインスタントのスープだっていうのにとても美味しく感じられる。
そう思いつつ顔を上げると、にっこり笑った男の人が立っていた。
目尻の皺が優しげに見える。

「外で飲むと、なんてことない物でも美味しくなっちゃうでしょ。」
「ホントにそうですね。きっと部屋の中で飲むより美味しいです、これ。」

そうそうと言いながら笑ったその人の名前も知らない事に気付いた。
いや、さっき挨拶はしたんだけれども、沢山の人と挨拶を交わしているうちに、誰が誰だか分からなくなってしまったのだ。
その人がスープを配るためにこの場を離れて行った隙に、同僚にそっと聞いてみる。

「ねえねえ、愛ちゃん、あの、スープ配ってる人、何てお名前だっけ?」
「え? あ、あの人はね、大木さん。
何? つくしちゃん、ああいう年上、好みー?」
「ち、違うよ! スープ貰ったから、あとでお礼言いたいなって思って。」
「ああ、大木さんってBBQ奉行なんだよ。
さり気無く美味しいもの出してくれるの。」
「へえ…」

それとなく目でその人を追っていると、皆が好き勝手に話したり食べたりしてる中、今度は1人で炭を調節したり、網の上の物を焼いたりしている。

BBQ奉行ねえ…
そういう人、居てくれたら助かるけど。
1人で頑張っちゃって、疲れないのかな…?

「あの… 何かお手伝い、ありますか?」

忙しなく働いてるその人に声を掛けた。
トングを持ちながら、ちらっと網から顔を上げたその人は「ダイジョーブ、ダイジョーブ!」なんて言ってる。
どこかで聞いたことのあるような台詞。

「BBQ、あんまり経験ないんで、指示してもらったら何でもやりますけど。」
「えー、いいの?
じゃ、お言葉に甘えて、紅茶淹れてもらっちゃおうかな?
ってティーバッグなんだけど。」

そんな誰でもできそうな役目を仰せつかった。
網の上にかけてある薬缶にティーバッグをいくつか入れて待つだけ。
手持無沙汰で立っていたら、ひょいと手渡されたのはコンデンスミルクのチューブだった。

「紅茶、しっかりと色付いたら、それ全部入れちゃって。」
「え? これ、全部入れちゃうんですか?」
「そう、ミルクティーになるよー。
これ飲まないと、BBQ来たって感じになんないの、俺。」

BBQに温かい紅茶だって初めてだし、コンデンスミルクでつくるミルクティーだって初耳だ。
面白いことを言う人だと思った。
そして陽射しが弱まり、一層肌寒くなってきた時の温かく甘いミルクティーは皆に大好評だったのに驚いた。

二度目に会ったのは、同じメンバーで集まるという飲み会だった。
居酒屋、カラオケと流れて、たまたま近くに来た時に「先日は有り難うございました。」と挨拶したら、「紅茶の子だ。」と覚えていてくれた。
皆がカラオケを歌ってる部屋の中では声の通りも悪く、身振りも交えながら再度自己紹介をし合った。

「愛ちゃんの同僚の牧野つくしです。」
「大木 晴人です。」

でもお互いよく聞こえない。
そこで彼がポケットから携帯を取り出して指差すから、自分もバッグから携帯を探し出した。

「LINEやってる?」
「はい。」

ふるふるで友だちの欄に出てきた互いの名前を確認して登録した。
その日はそれだけの接触だったのだけど。
そこからちょくちょく連絡が来るようになった。
次に会った時は、2人でだった。


__________


珍しくオリキャラ登場中です。
っていうか、この話書くなら、絶対にオトコが1人必要になってしまう訳で。
大木さん、名前はチョーテキトーに決めました。
そして総二郎、出番無し。
もしかして当分無いかも?(笑)
あっちもこっちも書きかけなのに、新しいの始めちゃいましたー!
わーーーー!


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似た者同士 2

何度か仕事の後に2人で食事をした。
肩肘の張らない、カジュアルで美味しい店をいつも選んでくれる。
年上の男の人。
こういう場面に慣れていて、スマートなのかなと思ったりするけど、居心地は悪くない。
たまに休みの日に待ち合わせて一緒に映画に行ったり、美術館巡りをしたりした。
「牧野さん。」なんて呼ぶから、「年下なんだから呼び捨てにして下さい。」って言ったら「じゃあ、つくしって呼ぶ。」と言われて頷いた。
互いの事をちょっとずつ知っていく。
「付き合おう」なんて台詞は無かったけれど、これってもしかして…なんてぼんやり思ってた。

「大木さんって39なの?」
「そう。もうすぐ不惑の四十よ、俺。知らなかった?」
「年上だなーとは思ってたけど。
そんなに年上だとは知らなかった。
フットワーク軽いし。
服装もカジュアルだし。」
「つくしに合わせて若作りしてきてるつもりなんだけど。」
「嘘でしょ。初めて会った時だって、こんな格好してたよ。」
「あ、そっか。ばれてたか。
そう、俺、こんな服ばっかなんだよな。
会社、カジュアルOKだからさ、スーツなんて滅多に着ない。」
「ふうん。」

目の前のグラスの氷がからりと鳴った。

「もう一杯何か飲む?」

目尻に皺を寄せて、笑いながら聞いてくれる。
うんと頷くと、手を上げてウェイターさんを呼び寄せた。
その手馴れた様子に、その言葉に、似ても似つかない別の人を思い出す。

あの人もいつもいいタイミングで聞いてくれたっけ。
片手で軽く頬杖を突きながら、涼しげな目をちょっと細めてこっちを見る。
くいっと片方だけ口角を上げつつ甘く笑って。
『ん? つくしちゃん、もう一杯飲むか?』
そう言ってさり気無く人を呼ぶんだ。

「つくし?」

名前を呼ばれて、意識を現実に引き戻された。

「あ、えーっと… カシスオレンジを。」
「俺はハイボールお代わり。」
「はい、少々お待ちください。」

ウェイターさんが離れていって、また2人だけの会話が始まる。

「つくしは若くて可愛いのに、こんなオジサンにしょっちゅう付き合ってくれるほど暇なんだ?」
「別に若くもないし、可愛くも無いですけど。」
「またまたー。12も離れてたら十分若いよ。」
「それは大木さんが歳だからでしょ?
会社じゃもうお局扱いなんだから。」
「へえ、そういうもん?」
「大木さんの会社だって同じような感じだと思うけど?」
「仕事してると女の子達の事なんて気に掛けないからなぁ。
若い子達は派遣が多いし、そういうの全然分かんないよ。」

男の人の、職場の女性への認識はこの程度だ。
目の前の、あたしに優しくしてくれている男の人でさえこんなだもの。
これが日本社会ってものかな?
そう思うとくすりと笑いが零れた。

「何? 俺、なんか可笑しいこと言ったっけ?」
「ううん、何でもない。」
「何だよ、オジサン臭いとか思ってるんだろ?」
「思ってないよ。」
「へえ。じゃあつくしはブラコンかファザコン?」

そんな訳ない。
あたしには大木さんと重ねて見るような兄はいないし。
父親は憧れの存在じゃなくて、守り支えていくものだった。
あの家族はコンプレックスというより、愛すべき困ったちゃんだ。
大切に思っていても、そういう特別な執着なんてない。
どっちかっていうと、あたしがコンプレックスがあるとすれば…
あいつら4人にだろう。
出会ってから10年。
世の中にはこんな人種もいるのかと散々驚かされた。
そして、あいつらに慣れちゃうと、そこら辺の男の人をみても、皆地味で大人しく見えちゃうから困る。

「どっちでもない。
大木さんの事、面白い人だなとは思ってるけど。」
「面白いって、褒め言葉かなあ?」
「一応そのつもり。」

ふふふと笑って、新しくなったグラスを傾けてまた喉を潤す。
他愛もない話をしながら互いを探り合う。
付かず離れずのあやふやな時間が過ぎていく。
店を出て、駅まで歩く道すがら、戯れに大木さんの左腕に自分の腕を絡めてみた。

「お、なんだよ? 何のサービス?」
「んー、なんとなく?
酔っ払ってて気分もいいし。
あたし、男の人が自分の右側に立っててくれるのが好きなの。」
「へえ、何で右側?」
「うーん、何でだろ?」

あの人と2人で歩く時、いつも右側にいてくれるからか。
それを準えてる自分に気付いたけど、曖昧に笑って誤魔化した。

「前の男の定位置だったりして?」
「違うよ。前彼のことなんてすっかり忘れちゃって思い出しもしないもの。」

実際、前に付き合ってた人の事なんて、記憶が朧気だ。
そんな昔の事じゃないのに、不必要な思い出はどんどん消去されていくらしい。
でも頭のどこかで、いつもあの人の事を考えてる自分がいて。
それはどれだけ時間が経っても消え失せない。

そうして歩いた別れ際、人気のない所で不意に大木さんの顔が近付いてきた。
避ける間もなく、小さなキスがひとつ唇に落とされる。

「何、そのびっくり顔。」
「え…、だって、びっくりしたから。」
「27の大人の女じゃないみたいな反応だな。」

そんな笑いがこもった言葉の後に、今度はもっと深く口付けられた。
知らない唇の感触。
精一杯大人の女を演じてみる。
口と口が離れて、ふうっと息が漏れた。
目を開けて大木さんを見ると、また目尻に皺を寄せて可笑しそうに笑ってる。

「じゃあ、帰るか。
お互い電車があるうちに。」
「…うん。」

『好き』とか、『付き合おう』とか、胸の高鳴りとか、そういうのは無しに何となく始まってくものなのか。
それでも今日はキスだけでお別れ。
オジサンの線引きは小娘のあたしには理解不能だ。

「じゃあ、また連絡するから。」
「うん、お休みなさい。」
「お休み。」

終電間近の駅で、小さく手を振って別れた。


__________


いやー、ときめかない!
オッサンとのデートシーン、ときめかないね!(笑)
深く考えずに前の話で一回り違う…なんて設定にしたばっかりに!!!
だって「天邪鬼」書いた時は、前日譚を書こうなんて思ってなかったんですものー。
誰かさんの事ばかり考えながら、別の人とキスをする。
書いててもホントときめきません!(爆)


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何となく、そろそろそうなるのかなとは思ってたけど。
きっかけは単純な事だった。

金曜日の夜、いつものように仕事終わりに待ち合わせて、食事して。
「もう1軒、どこか行こうか?」なんて言いながら歩いていたら、唐突にぎゅっと抱き寄せられた。
鼻先が温かな首元に埋まる。
甘いアンバーの中に爽やかなグリーンティーの香りが混ざって、あたしの鼻を擽った。

あたし、この香り知ってる。
あの人が、プライベートな時にだけつけてるのと同じ。

目を瞑って、その香りを吸い込むと、急に胸が苦しくなった。

「実は俺、明日誕生日なんだけど。」
「ご…めん、あたし知らなくて。
何も用意してない…」
「じゃあ、プレゼント代わりに、誕生日になる瞬間、一緒にいて?」
「……う…ん。」

腕の力を抜いた大木さんが、ほっとしたように笑った。

「良かった。ここで断られたら俺、カッコ悪いなって思っちゃった。」

そう言って、あたしの手を取って歩き出した。

どこ行くんだろ?
メープルだけは嫌だな…
あいつにバレるってことはないだろうけど、あの人に会っちゃう可能性は無きにしも非ず。

こんな時にも、ちらっとそんなことを思ってしまう自分が忌々しい。
あたしは昔の事をこの人に話したりしてないから、全くの偶然なんだろうけれど、メープルのライバルと言われている外資系のホテルを選んでくれたから、1人で胸を撫で下ろした。

ジャズの生演奏が流れるバーでバースデーイヴをお祝いして。
その後は夜景の綺麗な部屋に通された。
誕生日になる瞬間を一緒に…なんて言ってたくせに、気がつけばとっくに日付は変わっていて、「久し振りに運動した…」なんて呟いた失礼極まりないお誕生日様は、ベッドに沈んであっという間に寝てしまった。

一緒にいたのはいたけれど!
お祝いになんかなってないじゃない!
そして眠れないあたしはどうすればいいの…?

眠りこけてる人の横顔を見下ろしてみれば、ホントに疲れた顔してぐっすりお休みだ。
月曜日から5日間しっかり働いて迎えた金曜の夜だったのかもしれない。
ベッドを抜け出して、シャワーを浴びた。
用意されていたフカフカのバスローブを纏い、窓辺の一人掛けのソファに座って外のキラキラ輝く夜景を眺めるともなしに眺める。

同じ香りの人にホテルに誘われて、ひょいひょい付いてきて抱かれちゃうなんて、あたし、馬鹿なのかな?
この人の事を好きかと問われたら、多分好きだとは言える。
じゃあ、恋をしているかと言われると、それには頷けない。
それはきっとこの人も同じなんじゃないかと思ってたけど。
お互いの間に、なんとなくもやもやとした淡い熱気みたいなものが漂っていて、こうなるのは時間の問題かも…とも感じてた。
あの人に言わせたら、『そんなの唯の性欲だろ?』ってことになるのかもしれない。

『いいか、つくしちゃん。
人間ってのは3つの大きな生理的欲求を抱えてるワケ。
食欲・睡眠欲・性欲。
これ、生きるのに必要不可欠なの。
お前の場合食欲に支配されてて、類は睡眠欲に捕らわれてて、俺は女の子とベッドで語らいたいって欲が人よりちょっと多めだってだけだ。
世の中にはいろんなタイプの人間がいるんだよ。
誰もが皆、お前みたいに美味い物食ってりゃ幸せって事にはなんねえの!』

次から次へと女の子を渡り歩くあの人に食って掛かった時に言われた言葉。
なんでこんなこと今思い出してるんだろ?

下らないことに心を囚われてるうちに、やっと眠気が襲ってきた。
広いベッドの端っこに潜り込んで、大きな欠伸をひとつ。
力を抜いて、束の間の眠りに身を任せた。

この夜を境に、今までのような食事や一緒に出掛けるのにプラスして、時折ホテルに泊まる夜が出来た。
それでもやっぱりあたし達の間には「恋」とか「愛」とか、そういう感情が欠けている。
気心が知れた男の人。
唯それだけなのかもしれない。
でも向かい合って、この人の目尻の笑い皺を見ると、何だか気持ちが解れてしまう。
そして抱き締められて、あの香りを嗅いでしまうと、つい自分を委ねてしまう。

「大木さんはなんでこの歳になるまで1人なの?
結婚しようと思ったりしなかったの?」

寝物語にずっと聞いてみたかったことを尋ねてみた。

「俺、昔すっげー好きな女の人がいたの。
それが悪い女でさ。二股かけられてた訳。
分かってても止められないんだよ、そういうの。
悪い女ってオイシイんだ。分かる?」
「分かる訳ないでしょ、そんなの。」
「そうか? イメージしろよ、イメージ。
で、散々弄ばれて、結局、もう一方の男に持ってかれて終わり。
俺、きっとあの人より好きになれる女の人に出会えてないんだよな。」
「ふーーーん。そうなんだ。
そんな目に遭っても好きだったんだ…」
「まあな。つくしは?」
「あたし? あたしは別に… フツー…」

一体何がフツーなもんか。
初恋がビー玉の瞳をした、絵に描いたような王子様で。
初めて付き合ったのは世界に名を轟かす財閥の、野獣みたいなお坊ちゃま。
ずっと胸の奥に巣食ってるのは、茶道宗家の跡取りながら名うてのプレーボーイ。
その呪縛から逃れるために、何人かの人と『お付き合い』もしてみたけれど、結局あたしが熱くなれないのが原因でどれもこれもダメになった。

「いるだろ、忘れられない男。
ほら、お前の右側に立つ男。」
「それは……」
「俺達って似た者同士だよな、つくし。」
「え?」
「なんでも背負い込んじゃう長男・長女気質で。
過去の恋愛引き摺ってて。
そのトラウマのせいで、次の相手とまともに向かい合えない。」
「あたしのは恋愛なんかじゃない。」

そうだ、あれは恋愛なんかじゃない。
あたしが勝手に拘ってるだけだ。
あの人はあたしのことなんて女とも思ってないんだし。

大木さんの手が伸びてきて、あたしの髪を掻き上げる。
また目尻に皺を寄せて笑ってる。

「俺達、丁度良くないか?
互いの傷舐め合って、リハビリするのに。
俺は彼女の事を忘れる為。
お前はその男を忘れる為。」

あたしはこうしていたら、あの人の事忘れられるの?
今迄だってそう思ってきたけど、一度だって成功した試しはない。
いつだって結局あの人の事を考えてしまってた。
それでもこの胸の苦しみから逃れられるなら、どんなものにだって縋りたいと思ってしまう…

近付いてきた躰に腕を回して、自分の身に引き寄せる。
あの甘く爽やかな香りに酔わされたくて、首筋にそっと唇を押し当てた。


__________


いやあ、今日も総二郎登場ナシ!
そのせいかこのお話、一部の方の不評です(笑)
まあ、こんなお話もたまには許して下さいませ。
オッサンとの逢瀬、萌えませんけど、毛色の違うのを書くのは楽しいです♪
いつもながらに疎ら更新でスミマセン。
皆様、良い週末をお過ごし下さい!


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西門さんの気まぐれで、食事に連れ出される時がある。
近くまで来たついでだとか、牧野に栄養補給だとか言ってるけど、あたしだってもうちゃんと働いてるんだから、ご飯位食べれるっていうのに。
いつまでもビンボーのレッテルは貼られたままらしい。
道明寺も類も美作さんも、今は海外に仕事の拠点があって、F4は昔のように集まれなくなった。
西門さんにとって、あの3人以外に気楽にご飯を食べたりお酒を飲める相手っていうのが、女を感じさせないあたしなんだろう。
顔はめちゃくちゃ広そうだけど、友達は少なそうだもんね。

今夜も突然連絡が入って、時間と場所を指定された。
行ってみればそこは、入るのを躊躇するような瀟洒な佇まいの洋館。
邸宅レストランらしい。
あたしには分不相応…と溜息を吐きつつ、足を踏み入れた。
西門さんの名前を告げると広い個室に案内される。
中では、既に西門さんが1人でアペリティフを飲み始めてた。

「よ、つくしちゃん。先にやってるぜ。」
「…ねえ、なんで、こんなところに呼び出すのよ?」
「美味い物に目が無いつくしちゃんを喜ばせてやろうと思って?」
「もっと敷居の低いお店で十分なんだけど、あたし…」
「会食の相手がドタキャンしてきたんだよ。
勿体ないだろ、折角の料理、無駄にしちゃ。」

変な嘘。
今日口説く予定だった女の子に逃げられたって、素直に言えばいいのに。
勿体ないとか、無駄になるとか言えば、あたしが口答えできなくなるって思ってる。
もう、嫌になっちゃう…

はあ…と息を吐き、苦笑しながら席に着いた。
期待に違わぬ手の込んだ美味しい料理が次々と運ばれてくる。
西門さんの選ぶワインも料理に合っていて、2人で杯を重ねた。

「それにしてもすごいお店だねー。
このお庭の景色も素晴らしいし。
ねえ、ここって芸能人のお忍びデートとかにも使われちゃうとこ?」
「ああ、まあ、そういうこともあるんじゃね?
気に入った?」

そう言ってにやっと笑うその表情。
あたしはそれを見ると苦しくなるってのに、不意打ち的に披露する。
じわじわと湧き起こる胸の痛みを押し殺すために、こっそり奥歯を噛みしめた。
面と向かって座っていられなくなり、席を立って、ライトアップされた庭がよく見える窓辺に立つ。
ちょろちょろと水が溢れる音がするヨーロピアンテイストの噴水の周りは、色んな種類の薔薇で覆われている。
まるで異国の別荘にでも来た気分だ。
でもすぐにそんな事を思う自分が可笑しくなる。

これは束の間の夢なのに。
ここを出れば、その夢はすぐに醒めてしまうのに。
この一緒にいる時間が苦しい。
でも会えない時間も苦しい。
会いたくて、会いたくなくて。
あたしは一体どうすればいいんだろう…

気がつけば隣に西門さんが立って、同じように窓の外を見ていた。

「そんなに熱心に庭見ちゃって。
なんか面白いモンでもあんのか?」

そんな事を聞かれて、視線をそちらに流した。

「…お前、何泣いてんだよ?
何かあったのか?」
「泣いてなんかないでしょ。」
「今にも泣きそうな顔してる。
何だよ、何でもオニーサンに言ってみ?
仕事か? 男か?
お前の悩みぐらい、ぱぱっと俺が解決してやるよ。」

悩みの元凶が何を言ってるんだろ…
貴方がこの世にいる限り、あたしの胸の痛みは続くのかな。
ううん、もしこの世から消えてしまったとしても、あたしの胸は痛いままなんじゃない?
そうしたら、この痛みを消す方法は、自分自身が消える以外ないのかもしれない。

「…消えちゃいたい。」
「ん?」
「消えてなくなりたい。」
「何言ってんだよ。」

弱音を口にしたら、途端に喉の奥から熱いものが込み上げてきた。
それを必死に飲み下そうとしたのに、飲み込みきれず、涙となって目からぽろりと落ちる。

「嘘… 何でもない…っ…」

西門さんが緩く緩くあたしを腕の中に囲う。
おでこに温かな唇がそっと触れている。
それを感じて、吐息が小さく震えた。

「どうした? 何かあったのか?
誰かに虐められたってんなら、俺がそいつをきっちりシメてやんよ。
ったく、つくしちゃんは良くも悪くも曲がった事が嫌いだからな。
そんなんだと敵も多いだろ?
何でも白黒つけずに、グレーもあるって学べよ。
そうじゃないと生きにくいぜ、この世の中。」

あたしだって伊達に歳とってない。
世の中綺麗事だけじゃすまないなんて、とっくに分かってる。
でもこの気持ち、白が会いたいで、黒が会いたくないだとしたら、グレーは一体何なのよ…?

「大丈夫。誰にも虐められてない。
1人でちょっと落ち込んでるだけ。」

そう言いながら、腕を突っ張って、西門さんの身体を押し返した。
それでも泣き顔をまともに見られる勇気はなくて、下を向いていたら、ふいに頬っぺたにハンカチを押し当てられる。
ふわりと漂う、西門さんの香り。
その香りを感じて、また自己嫌悪に陥る。
昨夜もこの香りに誘われて、あたしは大木さんと一緒にいた。
大木さんはリハビリだって言ったけど、今のところあたしには何の効果も感じられない。
この人を忘れることも出来ず、大木さんに恋をすることも出来ず、唯々夜を重ねるだけ。

「帰るぞ。」

何も言わなくなったあたしに業を煮やしたのか、西門さんに背中を押されて、店の外へと連れ出された。
待たせてあった車で、あたしのマンションへと送られる。
静かな空気が流れる車内で、あたしはやっぱり何も話せないでいた。
西門さんの方を見ないようにシートに座る。
なのに身体中でその気配を感じようと、必死で息を殺していた。
いいって断ったのにも係わらず、部屋の前までついて来てくれた西門さん。
あたしがドアを開けて、中に入ったのを見届けて、優しく声を掛けてくれる。

「とっとと風呂入って寝ろ。
しっかり寝たらまた気持ちも切り替わるから。
ああ、結構ワイン飲んだから、湯船は浸かるなよ。
シャワーにしとけ。
それからちゃんと水飲めよ。」
「…西門さん。」
「なんだ?」

ありがとうと言おうと思っていた筈なのに、あたしの口を突いて出てきたのは全然違う言葉だった。


__________


うにゃー!
難しくて難しくて、改稿を重ねました!
ボツ原稿がふたーつ!
いつか何かのネタにして昇華させよう…
さあ、つくしの次のセリフはなんでしょうか?
実は… まだ決めかねてます(苦笑)


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