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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。-あきら- 前編

今日、明日と、777777HIT達成記念と7月7日・七夕をひっくるめて、プチ七夕祭りということにしました(笑)
今夜はあきらの語りでお楽しみ下さいませ。

__________


偶然見てしまったその指先の動きに、思わず胸が締め付けられた。

総二郎はいつまでああやって、自分の想いを隠そうとするんだろう・・・
司との恋に破れた過去を持つ牧野への気遣いなのか。
西門という、決して穏やかではない荒海の中に引きずり込むことを躊躇しているのか。
自分の気持ちを心の奥底に秘めようとしているけれど。
総二郎、そいつは牧野だ。
ただの庶民じゃない。
こうと決めたら、何にだって立ち向かっていく、戦う女・牧野つくしだ。
だから、総二郎。
お前の想いをぶつけたらいい。
本気でぶつかったら、牧野はお前から逃げたりしない。
真正面から受け止めてくれるさ。
独りで悶え苦しんだりせずに、2人で歩ける道を探れよ。

あの指先の動きひとつで、俺はそんな事を思ったけれど、声には出せず。
そっとその場を離れた。


「あたし、蛍が飛んでるとこ、見たことない!」

きっかけはそんな牧野の一言だった。

「飛んでるとこ見たことないって、留まってるとこなら見たことあるのか?」

からかう口調の総二郎に向かって、鼻に皺を寄せ、目を細めて、思いっきり苦々しい表情を作って応えてる牧野は子供みたいだ。

「あるよ。科学館の展示で。
ガラスケースに入って飼われてたのを、子供の時見に行ったもん。」
「牧野、科学館って何だ?」
「は? 西門さん、科学館知らないの?
小学生の時、学年単位で見学行ったりした事ない?
プラネタリウムがあったりさぁ、色んな科学の実験させてもらったり、宇宙の事勉強出来たり。
そういうのが詰まってる施設!
入場料安くて、1日いても飽きない、子供達の憧れの場所だよー。
英徳じゃそんなとこ行ったりしないの?」

俺と総二郎と類は顔を見合わせて、互いに首を傾げた。
頭の中のどこにもそんな所に行った記憶はない。
プラネタリウムは学校にあったし、科学の実験も宇宙について学ぶ時も、英徳の教師にプラスして、専門家が呼ばれて、授業が行われていた。
宇宙飛行士が講師に来た事だってあった。

「行った事無い・・・かも?」
「かも?じゃなくて、確実にねえな。」
「あんなに楽しいとこなのに、行った事無いなんて、お金持ちって可哀想だねー。」

心底残念そうに、俺達に同情する牧野に、ついついくすりと笑ってしまうのは仕方ないだろう。
それでも類はにっこり牧野に笑いかけて、「じゃ、牧野、今度連れてって?」なんて、甘えた声を出す。

「うーん、大学生になった今となっては、あんまり楽しめないかもよ?
あ、でもあたし、プラネタリウムは見たいかも!」

キラキラと目を輝かせ、そんな事を言う牧野は、まだまだ十分その「科学館」とやらを楽しめそうに見える。
だけど、もっといい考えが閃き、俺はそれを口にした。

「プラネタリウムじゃなくて、本物の星を見に行こう。
ついでに蛍も見られるし。」
「えっ? そんなとこあるの?」
「丹沢の方に、夜は星がよく見えて、せせらぎに蛍が出る所があるんだよ。
美作で経営してるゴルフ場が近くにあってさ。
そこのコテージに泊まればいいから、星見と蛍観賞を兼ねて一泊旅行に行こうぜ。」

途端にぱあっと牧野の顔が明るくなる。
向日葵の花のような笑顔。
それを見る度に、こっちにまで幸せな気持ちが伝播してくる、牧野最大の魅力にして武器。
この笑顔のせいで、大学の至る所で牧野に対してのアプローチが行われ、この鈍感な女は、それを悉く「お友達になりたい」と言ってくれる人が増えたんだと喜んでいたりする。
司と別れてフリーなのは万人が知るところ。
大学に入ってからは、外部からの入学者も増え、牧野の事を偏見の目を持たずに見てくれる友達も出来た。
男子学生からの告白すら、それと同じだと考えてるこの惚けた牧野につける薬はない。
俺達F3がそれとなくそういった輩を遠ざけるように仕向けていることにすら、気付いてないだろう。
類は牧野に相応しいと自分が認めた男しか牧野に近づけないつもりらしい。
そんな男、いるのか?って話だけど。
俺は兄が妹を護りたいというような気持ちでいる。
総二郎は・・・ もっと切実な思いで牧野を護っているんだろう。

講義と牧野のバイトの合間を縫って、やっと見つけた隙間の時間。
それで桜子も交えて丹沢へ来た。
来る道すがらの車の中でもひとりではしゃいで、喋りまくって。
桜子に「先輩、少し落ち着いて下さい。」なんて言われてた牧野。

「だって、一泊旅行なんて久しぶりだし、お天気もいいから星も蛍も見えそうだし、皆と一緒だし、楽しくって仕方ないんだもん!
今夜は七夕なんだよ!
そんな日に星が見えるなんてサイコーでしょ?」
「良かったね、牧野。
牧野が楽しそうだと俺も楽しいや。」

類のそんな台詞にちょっと頬を赤らめつつ、「だってホントに嬉しいんだもん・・・」と呟いた牧野は可愛かった。
早めの食事を済ませて、コテージから、裏山のせせらぎの方へと夜の散歩に繰り出した。
何故か用意されていた浴衣に着替えようなんて牧野が言い出したもんだから、全員浴衣姿で。

「なんか、あの時みたいだね。」

懐かしそうに牧野が呟く。
あの時。
牧野が俺達の前で司が好きだと宣言した日。
牧野の熱い想いは、一体どこへ行ったのだろう・・・
もう思い出しても胸は痛まないのだろうか?

満天の星とふわりふわりと漂う蛍の光を満喫して、戻ってきたコテージで、さあ、酒でも飲もうか・・・となった時、牧野がソファで転寝を始めた。
来る時からずっとハイテンションだった牧野。
一気に疲れが出たんだろう。
そんな牧野を気遣って、起こさないように、隣の間で酒を飲んでいた俺達。
気付くと、類もそこらで寝始め、それを見た桜子が風呂に入ってくると抜け出した。
俺と総二郎はそのまま飲み続けていたけれど、一度席を立って、リビングに戻ってみたら、総二郎もいなくなっている。
何の気なしに、牧野が転寝しているソファの方へと視線を投げたら、牧野の横に立って、静かに見下ろしている総二郎がいた。
すぐに目を逸らせばよかったのに、何故か目が離せなくて。
すっと伸びた指先が、牧野の頬を撫でようとして、寸前で止まった。
そしてゆっくり黒髪の方に下りていった指は、その毛先だけをきゅっと握り込んだんだ。


__________


プチ七夕祭り、2日間で4回更新を目指しております。
6日、7日のお昼12:00は、皆様お待ちかねの、あの!お話がUPです。
どうぞご期待くださいませ!


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恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。-あきら- 後編

777777HIT記念&本日7月7日・七夕・・・の7並びで、プチ七夕祭りを開催中!
ラストに素敵なサプライズがあります!


__________


今しがた見てしまった、総二郎の佇まいがあまりにも切なくて。
吐息と共に、自分の中のやるせない思いも一緒に出て行ってくれないかと、深い溜息を吐いてみたけれど、気持ちは一向に軽くならなかった。
仕方なく、独りウッドデッキに出て煙草を燻らせる。
ゆらゆらと立ち上る煙は、風に乗って緑の木立の中へと吸い込まれていった。
しんと静まり返った暗闇は、優しく俺を包み込んでくれる。

総二郎の牧野への気持ち。
俺が気付いたのはいつだったろう・・・
あれは・・・ 牧野が司の母ちゃんに脅されて、身を引こうとしてどこかの漁村に逃げて行った時だ。
あの時、司を励ます会とか言って集まった俺達に、荒んだ司が総二郎に突っかかって。
2人は本気で殴り合った。
あれは、不甲斐無い司に喝を入れるためにやったんじゃなくて、司を待っているだろう牧野を思っての行動だったんじゃないかって、後になって思い至ったんだ。
本当は牧野を想っているのに、ずっと司との恋を応援し続けて。
牧野と司が別れてからは、牧野の気持ちを明るくしようと、からかう振りで態と怒らせたり、照れさせたりして、落ち込みがちだった牧野を、暗い闇から引き上げてきた。
ずっと自分の気持ちは隠したまま、牧野を陰で支えてきた総二郎。
抱え込んだ恋心は総二郎の胸をじりじりと焼いているんじゃないか・・・と、親友の胸の内を慮ってしまう。

涼しい夜風に吹かれていたら、背後にふっと人の気配を感じ、ゆっくり振り返った。
そこには、何事もなかったような表情を浮かべた総二郎が、こちらに向かって近付いてくる姿がある。

「煙草か?」
「ああ、お前もいるか?」

差し出したシガレットケースを、薄く笑いつつ、小さく首を振って断った総二郎は、手に持った小さなグラスをこちらに見せた。

「俺はこれでいい。」

中は琥珀色の液体。
きっと生のままのシングルモルトウイスキー。
チェイサーの水も無しに、ストレートで飲むらしい。

胸だけじゃなくて、喉も焼くつもりなのか?

ついそう言いそうになって、口を噤んだ。
木立がさわさわと風にそよぐ音のみが耳に届くコテージのデッキチェアに、2人で無言で座っているだけ。
俺は口を開くと、余計な事を言ってしまいそうな気がして、喋れなかった。
総二郎は、牧野を想いつつ、グラスを傾けているからなのか、何も話さない。
どれくらいそうしていたのか。
部屋の中から牧野の「あれー、皆どこー?」という間の抜けた声が聞こえて、総二郎と2人顔を見合わせて苦笑した。

「牧野、こっち。」

総二郎が立ち上がって、牧野を呼んだ。
転寝から目覚めた牧野が、「ごめん、ごめん、寝ちゃった。」なんて言いながらウッドデッキに出てくる。

「あれ? 西門さんと美作さんだけ?」
「類は例の如く、あっちのソファでお休みだ。」

総二郎が顎を刳って牧野に教えてる。

「桜子は、美容のためにとか言って、部屋に戻って風呂入ってるぞ。」
「あの子、お風呂長いんだよねー、いつも。
一体何やってるんだろ?
あたしなんて、朝のシャワーは8分で入ることにしてるのに。」
「「8分?」」

あまりに頓狂な事を言うので、つい、総二郎と声を揃えて聞き返してしまった。
何でそんな事に驚いているのか?という表情を浮かべて、牧野が答える。

「朝って、1分1分がすごく貴重じゃない。
だからお風呂に防水の時計置いてるの。
でね、急いで身体中全部洗って出ようとすると、大体8分掛かってるんだよねー。」
「・・・急がないために、もう少し早起きすりゃいいんじゃねえの?」
「うーん、でも毎日学校とバイトで忙しいし。
ちょっとでも長く寝てたいってのが本音なの。
だから朝のシャワーは8分!」
「はあ・・・」
「へえ・・・」

今日だって、本当は草臥れてるのにはしゃぎまくってたから、疲れて、座った途端寝てしまったんだろう牧野。
総二郎がぶっきらぼうな口調でこう言った。

「もう星空も蛍も見たし、お前も風呂入って寝れば?
俺達に付き合わなくていいぞ。」
「えー? 折角の夜なのに寝ちゃうのもったいないよ!
ね、もう一度、蛍観に行ってもいい?
あたし、あんな風に蛍が飛んでるの、初めて目の当たりにしたから感激した!」
「別にいいけどよ・・・」

こっちにちらりと視線を寄越す総二郎に小さく笑いかけた。

「俺、ここでのんびりしたいから、2人で行って来いよ。」
「美作さん、行かないの?」
「ボディガードは総二郎ひとりで充分だろ?」
「えーーー? 西門さんはボディガードじゃないでしょ?
寧ろ逆っていうか・・・」
「つくしちゃん、俺にも選ぶ権利っつーもんがあるんだぜ。
女なら誰でもいいって訳じゃねえの。
そんな棒切れみたいな寸胴ボディには食指は動かねえから、しっかりガードだけしてやんよ。」
「もーーーーっ! 失礼しちゃうよね、ホントに。
美作さん、あたしこんなヒトと2人きりなんてやだよー。
一緒に行ってよー!」

ったく、折角2人きりにしてやろうとしたのに、総二郎の余計な一言でぶち壊しだ。
仕方なく、3人でさっきも歩いたせせらぎへの道を、マグライトの灯りを頼りに進んだ。
裏山からちょろちょろ流れてくる、その清らかな水に育まれた蛍が飛んでいるのが見えてきた辺りで、灯りを消す。
飛びながら明るい光を放つのはオスの蛍。
草叢で柔らかな光を溢しているのがメスの蛍。
騒ぐとその淡い光が掻き消えてしまいそうな気すらして、俺達は言葉を交わさないまま、その恋する虫達の光の会話を見詰めてた。
じっとそこに立っているうちに、ひとつの瞬く光が、牧野の頭に舞い降りた。
あっ・・・と思った時、総二郎が手を伸ばして、その蛍を捕まえる。
そっと握った拳の中の蛍。
総二郎が「牧野。」と囁くような声で呼び掛けたら、牧野がこちらに振り返る。
その蛍を牧野の掌に移そうと、総二郎が牧野の手を取った
突然の事にびっくりしたのか、手を引こうとした牧野と、総二郎の拳の間から、蛍がすっと逃げていく。
目を丸くして総二郎を見詰める牧野の顔を、一瞬だけ明るく照らしていった。

そうか。
牧野も総二郎の事・・・

手を握られただけで、驚いて、びくついてしまうほどに、牧野は総二郎を意識してる。
それに気付いた俺は、また胸がぐっと苦しくなった。

「ちょっと俺、忘れ物。戻るわ。」

それだけ告げて、その場から踵を返す。
2人からは俺を呼び止める声は聞こえなかった。

蛍なのは総二郎だけじゃないんだ。
牧野も蛍だったんだ。
『恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。』
2人とも、互いへの想いを口にしないけれど、相手を深く深く想ってる。
身も心も焼けそうな熱い想いを抱えているんだ、きっと。

灯りも点けずにせせらぎ沿いに歩を進めていくと、さっきよりも数が少なくなってきた蛍が、ぽつりぽつりと舞っているのが目に入る。
思わず、目の前を横切ろうとした蛍に手を伸ばすと、俺の指先に留まった。
その蛍が特別な蛍に思えて。
自然と心の内で、その蛍に話し掛けていた。

なあ、あいつらの恋、叶えてやってくれよ。
こうやって光って、想い合う相手を見つけるお前たちみたく。
2人も結ばれてもいいと思わないか?
だって今夜は一年一度の七夕なんだ。
短冊に認めなくても、願いを叶えてくれはしないか?

2人の恋の成就を願いながら、指先からふわりと飛び立って、自分の恋の相手を探しに行く蛍をずっと目で追っていた。


「恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。(あきら)」


__________



ONCE UPON A TIME の K+M様の「イラスト強化月間」の中の素敵イラスト「恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。」をお借りして、SSを書かせて頂きました。
タイトルもそこからお借りしております。
K+M様、どうも有り難うございました!
このイラストは、最初拝見した時、つくしへの秘めた思いを抱えているあきらのイラストなんだと思っていたのですが、「総ちゃんの片恋に対しての心配というイメージ」とK+M様が書いてらっしゃるのを読んで、なるほど・・・と方向転換してこういうお話になりました。
あれ? でも、これだと片恋じゃなくなっちゃいそうだね・・・
上手く書けなくてスミマセン(;´・ω・)


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恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。-総二郎- 前編

当初、総二郎を見守るあきらの話2話で七夕SSは完結・・・と思っていたのですが、続きを・・・とのお声を頂いたので、おまけの話を。

__________


ソファの肘掛けに腕を乗せ、それを枕に眠りこけてる牧野。
足音をたてないように歩み寄ったら、もっと近付きたくなって。
間近に立ったら、今度は触れたくて堪らなくなった。

寝ている今なら、少しだけ触れても構わないだろうか?
俺の気持ちを悟られる事なく、牧野の温もりを感じられる・・・?

そろそろと柔らかそうな頬へと指を伸ばす。
ごくりと喉が鳴った。
途端に息をするのが苦しくなる。
まだ触れてもいないのに、指先にぴりぴりと微弱な電流が流れたような感覚が走って、そこで俺は我に返った。

ダメだ。
やっぱり触れられない。
俺にはその資格がないんだから・・・
それでもこれくらいは許して欲しい。

浴衣姿に合わせてルーズに束ねた髪の毛の毛先をくしゃりと掴んだ。
血の通わない髪の毛に触れただけで、心臓がぎゅっと一瞬縮む。
そして胃がずくんと痛んだ。

牧野、何で浴衣を着ようなんて言ったんだ?
「なんか、あの時みたいだね。」ってお前は笑いながら言ったけど。
司との忘れられない思い出だろう?
まだ司の事、好きなのか・・・?
あいつを懐かしんで、その浴衣を選んだのか?

そう思うだけで、胸の中が焼けるような気がする。
嫉妬。
ここにはいない司に嫉妬している。
もう司と牧野が手を携えて歩む事など叶わないと、誰よりも知っているというのに。
それでも司の事を牧野が想っているのかと思うと、抑えられない感情がふつふつと湧いてくる。
握り締めていた拳を無理矢理開くと、牧野の髪はぱさりと微かな音を立てて、元あったところに落ちていった。
そっと牧野の傍を離れ、酒が並べられているバーカウンターへと向かう。
はああ・・・と詰めていた息を吐き出した。

ああ、感情のセーブが効かない。
ふとした瞬間に、暴走しそうになる。
これまで何年もの間、ずっとブレーキかけ続けてきたからか?
そろそろ俺は壊れるんだろうか?
ブレーキってかけ過ぎると過剰に熱を持つようになる。
そして焦げ付いちまうんだ。
俺はもう熱くなり過ぎてるのかもしれない・・・

熱い自分に酒を注ぎ込むのは、正解なのか、過ちなのか?
分からないけれど酒を飲む以外にこの事を紛らわす術を俺は知らない。
ショットグラスにウイスキーを注いで、ウッドデッキへと歩いて行った。
思った通り、そこには煙草を吸いに出ていたあきらがいた。
「煙草か?」と尋ねたら、「ああ、お前もいるか?」とシガレットケースを差し出された。

煙草は・・・ 牧野といる時は吸わないことにしている。
実は牧野は煙草の匂いが好きじゃないって言っているのを聞いたから。
俺が煙草を吸わなくたって、牧野が俺を好きになる事なんかないだろうけど。
それでも好きな女の嫌がる事を、目の前でするのは憚られる。

ゆるりと首を振って「俺はこれでいい。」とショットグラスを掲げた。
一瞬、あきらの目元が険しくなった気がしたけれど。
あきらは何も言わずに煙草を燻らせ続け、俺も何も言わずにグラスの中身を喉に流し込んでいた。
度数の高い酒特有の、身体の中をかあっと焼くような感覚が、胸を焼く痛みとごちゃ混ぜになって、どっちの熱さなのか分からなくしていく。
酒が美味いかどうかなんて関係なかった。

そうしているうちに牧野の声が聞こえてくる。

「あれー、皆どこー?」

その起き抜けの間延びした声に、あきらと俺はくすりと笑ってしまう。

「牧野、こっち。」と声を掛けて呼べば、「ごめん、ごめん、寝ちゃった。」と言いつつ、ウッドデッキに現れた。

そこで3人で話しているうちに、疲れているんであろう牧野を早く休ませたくて、

「もう星空も蛍も見たし、お前も風呂入って寝れば?
俺達に付き合わなくていいぞ。」

という言葉が口を突いて出た。
長年牧野に対して、意識的に距離を取ろうとしてきたせいで、ついついつっけんどんな口調になる。
だけど、そんな事意に介さず、牧野は

「えー? 折角の夜なのに寝ちゃうのもったいないよ!
ね、もう一度、蛍観に行ってもいい?
あたし、あんな風に蛍が飛んでるの、初めて目の当たりにしたから感激した!」

なんて言い出した。

「別にいいけどよ・・・」と答えてから、あきらに『どうする?』と目で尋ねる。
優しいお兄ちゃまはこんな時、絶対にNOと言わないのが常だけど。
NOとも言わなかったが、ちょっと意外な答えが返ってきた。

「俺、ここでのんびりしたいから、2人で行って来いよ。」

何だよ? お兄ちゃまはこんな時、危なっかしい妹分のアテンドをするのが正解だろう?

「美作さん、行かないの?」
「ボディガードは総二郎ひとりで充分だろ?」
「えーーー? 西門さんはボディガードじゃないでしょ?
寧ろ逆っていうか・・・」

ふざけるな!
俺がどんだけお前にちょっかい掛けようとしてる、五月蝿い輩を撃退してるか、お前が知らないだけ。
元道明寺司の女、F3の友達ってだけで近付こうとしてくる、下心見え見えの男が巨万といるんだ。
のほほんと誰とでも友達になれると思ってガード下げてるお前を護ってんのは、俺や類やあきらなんだよ!

「つくしちゃん、俺にも選ぶ権利っつーもんがあるんだぜ。
女なら誰でもいいって訳じゃねえの。
そんな棒切れみたいな寸胴ボディには食指は動かねえから、しっかりガードだけしてやんよ。」

本当の事は言えやしないから、代わりにいつもの軽薄な俺を演じてみる。

「もーーーーっ! 失礼しちゃうよね、ホントに。
美作さん、あたしこんなヒトと2人きりなんてやだよー。
一緒に行ってよー!」

そう言って泣きついた牧野が、あきらの重い腰を上げさせ、結局3人で再び蛍狩りへと繰り出した。
綺麗な清水が流れている細い川の辺りには、蛍の幻想的な灯りで満ちている。
言葉もなくその光のショーに見入っている牧野の背中を俺は見ていた。
それはまるで夢の中の光景のようだ。
さらさらと流れていく水音をBGMに、浴衣姿の牧野が自然のイルミネーションの光に包まれて立っている。
すーーーっと飛んできたひとつの一際明るく見えた蛍の光が、牧野の頭の上で瞬く。
考えるより先に手が伸びた。
その蛍を掌に閉じ込めて、小さな声で牧野を呼ぶ。
牧野が夢中になってる光の瞬きを間近で見せてやろうと思った俺は、蛍を牧野の手に移すべく、牧野の手を取り、自分の拳を近づけた。
何を思ったのか、牧野がびくりと身体を震わせ、その手を引くから、それに驚き、俺は蛍を逃がしてしまった。
俺と牧野の間を、その蛍が光を発しながら飛んでいく。
俺の目の前には、真ん丸な目をさらに見開いて、俺を見上げている牧野がいた。
時間が止まったのかと思うほど動かない牧野と、暫し見詰め合う。
どこか遠くの方で、「ちょっと俺、忘れ物。戻るわ。」と言ったあきらの声が聞こえた気がした。


__________


今夜は総二郎サイドのお話となりました。
問題はこの後だよ!
この2人、どーなるのー???


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恋に焦がれて鳴く蝉よりも、鳴かぬ蛍が身を焦がす。-総二郎- 後編

星明りと、蛍の瞬きしかない闇夜に包まれて、ぼんやりと見えている牧野の顔。
その中で俺を見上げている澄んだ双眸は、薄明りを受けて、黒く耀いている。
時折閉じられる瞼がぱちりぱちりと音を立てているのが聞こえたような気がした。

何か話さないと・・・
でも何を言えばいいんだ?

頭の中には何も浮かんで来やしない。
そんな時、先に言葉を発したのは牧野だった。

「あ、あの・・・ ごめんなさい。
急だったからビックリしちゃって・・・
べ、別に、西門さんがイヤだからとか、妊娠しちゃうからとかじゃないから!」

そう宣言して、くるりと俺に背を向ける。
一瞬何のことを言われているのか分からなかった。
さっきびくついて、手を引いたことか・・・と思い至って、やっと頭が回り出す。

「・・・つくしちゃんに蛍を見せてやろうと思っただけだろ?
別に暗がりに乗じて牧野に手を出すほど、俺は相手に困っちゃいねえよ。」
「そ、そうだよね。
どうせあたしなんか棒切れみたいな寸胴ボディで、女らしさの欠片もないですから!」

そう言われて、胸が焼けるような痛みに苛まれる。
蛍を手に握らせようと思った時は、本当に他意は無かったけれど。
心の奥底では、いつも牧野に触れたいと焦がれていた。
その頬に、唇に、小さな手に…
そっと触れたら、お前はどんな表情を浮かべて俺を見詰めるんだろうと、何度夢想したことだろう。

「・・・そこまで言ってねえ。
それに寸胴な体型って、和装は良く似合うんだぜ。
補正無しで綺麗に着られるのは、ある意味お得だろ?」
「ぜんっぜん褒められてる気がしないけど・・・」
「良く似合うって言ってんだから、褒めてるんだろうが。
この頃、えらくボリューミーな胸をどーんと帯の上に載せちゃってる女とかいて、あれはホント興醒めなんだよなー。
襟の抜き方もなってないし、歩きやすいようにか、裾も妙に短くしてるし。
踝より上の脚、見せてくれんな!って声を大にして言いたくなるんだよな。
その点、今夜のつくしちゃんは俺が着せてやったから、完璧な着こなしだぜ。」

さっき浴衣を整え、帯を締めてやった時、浴衣越しに感じた牧野の体温で、気もそぞろになった事は言えないけれど。

「あの時も、西門さんが着せてくれたね。
昔、皆で美作さんちで寒中浴衣大会とか言って集まった時。」
「・・・お前が司が好きだって言った時だろ。」
「あはは。そうだったね。そんな事もあったっけ。
もう単なる楽しい思い出のひとつだよー。
あれって何年前の事だっけ?」

単なる楽しい思い出?
本当にそうなのか?

そう問い質したいけれど、口には出せない。

「3年位前じゃねえの?」
「そっか。もう3年も経ったんだね。」

くすんと笑った声がせせらぎの音の中に微かに響く。
その声が耳に届いた時、急に牧野の細い肩を抱き締めたくて堪らなくなり、ぐっと奥歯を噛み締め、目を閉じた。
抱き締めて、もう司を想っていないのなら俺を見てくれと叫び出したい衝動を圧し込めるために。

俺じゃダメなんだ。
司の家が牧野を受け入れなかったのと同じ様に。
西門は何も持たない牧野を認めてくれはしないだろう。
単なる女遊びには目を瞑っていても、本気で牧野を求めたら、潰されてしまうのは目に見えてる。
俺は牧野を傷つけたくはないんだ・・・

深呼吸して目を開ければ、そこには飛び交う蛍に、夢見る表情で手を伸ばす牧野がいた。

「ねー、西門さん、蛍、綺麗だね。
ずっと見ていたいくらい。」
「ああ・・・」

ずっとこのままお前を見ていたい。
でも七夕の夜は今夜だけ。
こうしていられるのも今だけだ。

今度は牧野の肩先に蛍が留まって光っている。
再びそれを捕まえて、今度こそ牧野に渡してやろうと声を掛けた。

「牧野、手ぇ出してみ。」
「え? どして?」
「だから、両手を虫篭の代わりにして、そこに蛍入れるから。
小さく丸くなるように、手を重ねてみろよ。」
「・・・こう?」

おずおずと重ねた両手をこちらに向けて差し出すから、左手でそれを手繰り寄せて、右手に捕まえていた蛍を慎重に移してやった。
今度は牧野の手の中にちゃんと納まってくれた蛍が、指の隙間から灯りを漏らす。

「わあ・・・」

手の中の小さな光に、牧野が顔を綻ばせているのが分かった。
指の隙間から中を覗き込む為に、顔を傾けたり、首をちょっと伸ばしたり。
そんな仕草がどこか子供っぽくて、こっちまで頬が緩んでいく。

「凄いねえ、身体がこんな風に光るだなんて。
不思議だねえ。」
「蛍って、成虫だけが光るんじゃないんだぜ。
卵の時から光ってる。」
「えー? だって、交尾する相手を探すために光ってるんでしょう?
どうして卵の時から光ってるんだろ?」
「それは俺も知らねえけど。
そして成虫になったら、何も食べずに活動して、2週間くらいしか生きられないんだってよ。
ホント不思議な生き物だよな。」

そう言ったら、牧野はその蛍を、そっと手を広げて逃がしてしまった。

「おい、折角捕まえてやったのに。」
「だって2週間しか時間がないんでしょう?
あたしが捕まえてちゃ可哀想だもん。
早く恋人を見つけなくっちゃ。」
「そうか・・・」
「そうだよ。
そろそろコテージに帰ろうか?
蛍たちの邪魔しちゃ悪いって気になってきた。」

そう言って、足を踏み出した牧野が、慣れない右近下駄を履いていたせいで、バランスを崩した。
それを抱きとめて、身体をぐいと引き起こすと、慌てて「ご、ごめん・・・」と呟いて身体を離そうとする。

「仕方ねえな。ほら。」

左手で、牧野の右手をしっかり握って、暗い小道を歩き始める。
小さく頼りなさげな手が愛おしくて。
こんなささやかな触れ合いが嬉しくて。
胸が高鳴るのを抑えられない。

「え? 大丈夫だよ・・・」
「お前がこんなとこで転んだら、類やあきらに俺のせいにされるんだから、ちゃんと捕まっとけ!」
「・・・うん。
あれ? そういえば美作さんは?」
「・・・あきらは途中で忘れ物したって戻ってったろ?」
「そうだっけ? 気付かなかった。」

牧野が俺の手を柔く握り返してくる。
その感覚だけが今の俺の全てで。

「また来年も、ここに蛍見に来るか?」
「う・・・ん、そうなったらいいね・・・」

約束とも言えない、細やかな提案。
これ以上の事を言えない俺は、臆病で、諦めの悪い男だ。
ずっとこうして歩いていければいいのに・・・と叶わない願いが胸を過って、またじりじりと焼ける痛みに苛まれる。
そんな七夕の夜だった。


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この2人、どこまで?と考えた時に、そんなに急激に進まないよねーと思って。
手を繋ぐところまでにしちゃいました。
皆様のご期待に沿えず、申し訳ございません(笑)
焦れ焦れが大好きです(爆)
本当は鬼灯提灯をつくしに持たせたかったんだけど、どうも季節が違うみたいで。
考えたんだけど書けませんでしたー。残念無念。


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テーマ:二次創作:小説
ジャンル:小説・文学