今日、明日と、777777HIT達成記念と7月7日・七夕をひっくるめて、プチ七夕祭りということにしました(笑)
今夜はあきらの語りでお楽しみ下さいませ。
__________
偶然見てしまったその指先の動きに、思わず胸が締め付けられた。
総二郎はいつまでああやって、自分の想いを隠そうとするんだろう・・・
司との恋に破れた過去を持つ牧野への気遣いなのか。
西門という、決して穏やかではない荒海の中に引きずり込むことを躊躇しているのか。
自分の気持ちを心の奥底に秘めようとしているけれど。
総二郎、そいつは牧野だ。
ただの庶民じゃない。
こうと決めたら、何にだって立ち向かっていく、戦う女・牧野つくしだ。
だから、総二郎。
お前の想いをぶつけたらいい。
本気でぶつかったら、牧野はお前から逃げたりしない。
真正面から受け止めてくれるさ。
独りで悶え苦しんだりせずに、2人で歩ける道を探れよ。
あの指先の動きひとつで、俺はそんな事を思ったけれど、声には出せず。
そっとその場を離れた。
「あたし、蛍が飛んでるとこ、見たことない!」
きっかけはそんな牧野の一言だった。
「飛んでるとこ見たことないって、留まってるとこなら見たことあるのか?」
からかう口調の総二郎に向かって、鼻に皺を寄せ、目を細めて、思いっきり苦々しい表情を作って応えてる牧野は子供みたいだ。
「あるよ。科学館の展示で。
ガラスケースに入って飼われてたのを、子供の時見に行ったもん。」
「牧野、科学館って何だ?」
「は? 西門さん、科学館知らないの?
小学生の時、学年単位で見学行ったりした事ない?
プラネタリウムがあったりさぁ、色んな科学の実験させてもらったり、宇宙の事勉強出来たり。
そういうのが詰まってる施設!
入場料安くて、1日いても飽きない、子供達の憧れの場所だよー。
英徳じゃそんなとこ行ったりしないの?」
俺と総二郎と類は顔を見合わせて、互いに首を傾げた。
頭の中のどこにもそんな所に行った記憶はない。
プラネタリウムは学校にあったし、科学の実験も宇宙について学ぶ時も、英徳の教師にプラスして、専門家が呼ばれて、授業が行われていた。
宇宙飛行士が講師に来た事だってあった。
「行った事無い・・・かも?」
「かも?じゃなくて、確実にねえな。」
「あんなに楽しいとこなのに、行った事無いなんて、お金持ちって可哀想だねー。」
心底残念そうに、俺達に同情する牧野に、ついついくすりと笑ってしまうのは仕方ないだろう。
それでも類はにっこり牧野に笑いかけて、「じゃ、牧野、今度連れてって?」なんて、甘えた声を出す。
「うーん、大学生になった今となっては、あんまり楽しめないかもよ?
あ、でもあたし、プラネタリウムは見たいかも!」
キラキラと目を輝かせ、そんな事を言う牧野は、まだまだ十分その「科学館」とやらを楽しめそうに見える。
だけど、もっといい考えが閃き、俺はそれを口にした。
「プラネタリウムじゃなくて、本物の星を見に行こう。
ついでに蛍も見られるし。」
「えっ? そんなとこあるの?」
「丹沢の方に、夜は星がよく見えて、せせらぎに蛍が出る所があるんだよ。
美作で経営してるゴルフ場が近くにあってさ。
そこのコテージに泊まればいいから、星見と蛍観賞を兼ねて一泊旅行に行こうぜ。」
途端にぱあっと牧野の顔が明るくなる。
向日葵の花のような笑顔。
それを見る度に、こっちにまで幸せな気持ちが伝播してくる、牧野最大の魅力にして武器。
この笑顔のせいで、大学の至る所で牧野に対してのアプローチが行われ、この鈍感な女は、それを悉く「お友達になりたい」と言ってくれる人が増えたんだと喜んでいたりする。
司と別れてフリーなのは万人が知るところ。
大学に入ってからは、外部からの入学者も増え、牧野の事を偏見の目を持たずに見てくれる友達も出来た。
男子学生からの告白すら、それと同じだと考えてるこの惚けた牧野につける薬はない。
俺達F3がそれとなくそういった輩を遠ざけるように仕向けていることにすら、気付いてないだろう。
類は牧野に相応しいと自分が認めた男しか牧野に近づけないつもりらしい。
そんな男、いるのか?って話だけど。
俺は兄が妹を護りたいというような気持ちでいる。
総二郎は・・・ もっと切実な思いで牧野を護っているんだろう。
講義と牧野のバイトの合間を縫って、やっと見つけた隙間の時間。
それで桜子も交えて丹沢へ来た。
来る道すがらの車の中でもひとりではしゃいで、喋りまくって。
桜子に「先輩、少し落ち着いて下さい。」なんて言われてた牧野。
「だって、一泊旅行なんて久しぶりだし、お天気もいいから星も蛍も見えそうだし、皆と一緒だし、楽しくって仕方ないんだもん!
今夜は七夕なんだよ!
そんな日に星が見えるなんてサイコーでしょ?」
「良かったね、牧野。
牧野が楽しそうだと俺も楽しいや。」
類のそんな台詞にちょっと頬を赤らめつつ、「だってホントに嬉しいんだもん・・・」と呟いた牧野は可愛かった。
早めの食事を済ませて、コテージから、裏山のせせらぎの方へと夜の散歩に繰り出した。
何故か用意されていた浴衣に着替えようなんて牧野が言い出したもんだから、全員浴衣姿で。
「なんか、あの時みたいだね。」
懐かしそうに牧野が呟く。
あの時。
牧野が俺達の前で司が好きだと宣言した日。
牧野の熱い想いは、一体どこへ行ったのだろう・・・
もう思い出しても胸は痛まないのだろうか?
満天の星とふわりふわりと漂う蛍の光を満喫して、戻ってきたコテージで、さあ、酒でも飲もうか・・・となった時、牧野がソファで転寝を始めた。
来る時からずっとハイテンションだった牧野。
一気に疲れが出たんだろう。
そんな牧野を気遣って、起こさないように、隣の間で酒を飲んでいた俺達。
気付くと、類もそこらで寝始め、それを見た桜子が風呂に入ってくると抜け出した。
俺と総二郎はそのまま飲み続けていたけれど、一度席を立って、リビングに戻ってみたら、総二郎もいなくなっている。
何の気なしに、牧野が転寝しているソファの方へと視線を投げたら、牧野の横に立って、静かに見下ろしている総二郎がいた。
すぐに目を逸らせばよかったのに、何故か目が離せなくて。
すっと伸びた指先が、牧野の頬を撫でようとして、寸前で止まった。
そしてゆっくり黒髪の方に下りていった指は、その毛先だけをきゅっと握り込んだんだ。
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プチ七夕祭り、2日間で4回更新を目指しております。
6日、7日のお昼12:00は、皆様お待ちかねの、あの!お話がUPです。
どうぞご期待くださいませ!

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今夜はあきらの語りでお楽しみ下さいませ。
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偶然見てしまったその指先の動きに、思わず胸が締め付けられた。
総二郎はいつまでああやって、自分の想いを隠そうとするんだろう・・・
司との恋に破れた過去を持つ牧野への気遣いなのか。
西門という、決して穏やかではない荒海の中に引きずり込むことを躊躇しているのか。
自分の気持ちを心の奥底に秘めようとしているけれど。
総二郎、そいつは牧野だ。
ただの庶民じゃない。
こうと決めたら、何にだって立ち向かっていく、戦う女・牧野つくしだ。
だから、総二郎。
お前の想いをぶつけたらいい。
本気でぶつかったら、牧野はお前から逃げたりしない。
真正面から受け止めてくれるさ。
独りで悶え苦しんだりせずに、2人で歩ける道を探れよ。
あの指先の動きひとつで、俺はそんな事を思ったけれど、声には出せず。
そっとその場を離れた。
「あたし、蛍が飛んでるとこ、見たことない!」
きっかけはそんな牧野の一言だった。
「飛んでるとこ見たことないって、留まってるとこなら見たことあるのか?」
からかう口調の総二郎に向かって、鼻に皺を寄せ、目を細めて、思いっきり苦々しい表情を作って応えてる牧野は子供みたいだ。
「あるよ。科学館の展示で。
ガラスケースに入って飼われてたのを、子供の時見に行ったもん。」
「牧野、科学館って何だ?」
「は? 西門さん、科学館知らないの?
小学生の時、学年単位で見学行ったりした事ない?
プラネタリウムがあったりさぁ、色んな科学の実験させてもらったり、宇宙の事勉強出来たり。
そういうのが詰まってる施設!
入場料安くて、1日いても飽きない、子供達の憧れの場所だよー。
英徳じゃそんなとこ行ったりしないの?」
俺と総二郎と類は顔を見合わせて、互いに首を傾げた。
頭の中のどこにもそんな所に行った記憶はない。
プラネタリウムは学校にあったし、科学の実験も宇宙について学ぶ時も、英徳の教師にプラスして、専門家が呼ばれて、授業が行われていた。
宇宙飛行士が講師に来た事だってあった。
「行った事無い・・・かも?」
「かも?じゃなくて、確実にねえな。」
「あんなに楽しいとこなのに、行った事無いなんて、お金持ちって可哀想だねー。」
心底残念そうに、俺達に同情する牧野に、ついついくすりと笑ってしまうのは仕方ないだろう。
それでも類はにっこり牧野に笑いかけて、「じゃ、牧野、今度連れてって?」なんて、甘えた声を出す。
「うーん、大学生になった今となっては、あんまり楽しめないかもよ?
あ、でもあたし、プラネタリウムは見たいかも!」
キラキラと目を輝かせ、そんな事を言う牧野は、まだまだ十分その「科学館」とやらを楽しめそうに見える。
だけど、もっといい考えが閃き、俺はそれを口にした。
「プラネタリウムじゃなくて、本物の星を見に行こう。
ついでに蛍も見られるし。」
「えっ? そんなとこあるの?」
「丹沢の方に、夜は星がよく見えて、せせらぎに蛍が出る所があるんだよ。
美作で経営してるゴルフ場が近くにあってさ。
そこのコテージに泊まればいいから、星見と蛍観賞を兼ねて一泊旅行に行こうぜ。」
途端にぱあっと牧野の顔が明るくなる。
向日葵の花のような笑顔。
それを見る度に、こっちにまで幸せな気持ちが伝播してくる、牧野最大の魅力にして武器。
この笑顔のせいで、大学の至る所で牧野に対してのアプローチが行われ、この鈍感な女は、それを悉く「お友達になりたい」と言ってくれる人が増えたんだと喜んでいたりする。
司と別れてフリーなのは万人が知るところ。
大学に入ってからは、外部からの入学者も増え、牧野の事を偏見の目を持たずに見てくれる友達も出来た。
男子学生からの告白すら、それと同じだと考えてるこの惚けた牧野につける薬はない。
俺達F3がそれとなくそういった輩を遠ざけるように仕向けていることにすら、気付いてないだろう。
類は牧野に相応しいと自分が認めた男しか牧野に近づけないつもりらしい。
そんな男、いるのか?って話だけど。
俺は兄が妹を護りたいというような気持ちでいる。
総二郎は・・・ もっと切実な思いで牧野を護っているんだろう。
講義と牧野のバイトの合間を縫って、やっと見つけた隙間の時間。
それで桜子も交えて丹沢へ来た。
来る道すがらの車の中でもひとりではしゃいで、喋りまくって。
桜子に「先輩、少し落ち着いて下さい。」なんて言われてた牧野。
「だって、一泊旅行なんて久しぶりだし、お天気もいいから星も蛍も見えそうだし、皆と一緒だし、楽しくって仕方ないんだもん!
今夜は七夕なんだよ!
そんな日に星が見えるなんてサイコーでしょ?」
「良かったね、牧野。
牧野が楽しそうだと俺も楽しいや。」
類のそんな台詞にちょっと頬を赤らめつつ、「だってホントに嬉しいんだもん・・・」と呟いた牧野は可愛かった。
早めの食事を済ませて、コテージから、裏山のせせらぎの方へと夜の散歩に繰り出した。
何故か用意されていた浴衣に着替えようなんて牧野が言い出したもんだから、全員浴衣姿で。
「なんか、あの時みたいだね。」
懐かしそうに牧野が呟く。
あの時。
牧野が俺達の前で司が好きだと宣言した日。
牧野の熱い想いは、一体どこへ行ったのだろう・・・
もう思い出しても胸は痛まないのだろうか?
満天の星とふわりふわりと漂う蛍の光を満喫して、戻ってきたコテージで、さあ、酒でも飲もうか・・・となった時、牧野がソファで転寝を始めた。
来る時からずっとハイテンションだった牧野。
一気に疲れが出たんだろう。
そんな牧野を気遣って、起こさないように、隣の間で酒を飲んでいた俺達。
気付くと、類もそこらで寝始め、それを見た桜子が風呂に入ってくると抜け出した。
俺と総二郎はそのまま飲み続けていたけれど、一度席を立って、リビングに戻ってみたら、総二郎もいなくなっている。
何の気なしに、牧野が転寝しているソファの方へと視線を投げたら、牧野の横に立って、静かに見下ろしている総二郎がいた。
すぐに目を逸らせばよかったのに、何故か目が離せなくて。
すっと伸びた指先が、牧野の頬を撫でようとして、寸前で止まった。
そしてゆっくり黒髪の方に下りていった指は、その毛先だけをきゅっと握り込んだんだ。
__________
プチ七夕祭り、2日間で4回更新を目指しております。
6日、7日のお昼12:00は、皆様お待ちかねの、あの!お話がUPです。
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