社会人になったつくしと総二郎。ラブラブお付き合い中!という設定です。
__________
土曜日の午前10時。
携帯の着信。
西門さんだ。
土曜日のこの時間に電話って珍しい。
忙しそうなのに。
怪訝に思いながら、通話ボタンを押す。
「Allô, ma chérie. C'est moi.」
(もしもし、俺。)
はぁーーー? 頭おかしくなっちゃった?
いきなり ma chérie〈俺の愛しい人〉とか挟み込んでますけど。
「 に、西門さん? どうしたの? なんでフランス語?」
と、とりあえず聞いてみる。
「C'est la pratique de la langue française.」
(フランス語の練習だ。)
練習ったって、お互いそれなりにフランス語は喋れる訳だし、わざわざ電話で練習する程の事もないでしょ。
なんか訳あり?
「はぁ・・・?」
「Qu'est-ce que tu fais maintenant ? Tu as quelque chose à faire cet après-m ?」
(今何してる? 午後はなんか予定あるか?)
なんだか分からないが付き合っとくか。
外国語で話す時は、一度日本語に変換して日本語で答えるより、同じ言語で話す方がずっと楽だ。
ダイレクトに伝わってくる。
「Ah, en ce moment, je suis à la maison. Il n'y à pas de plan aujourd'hui, donc j'aimerai bien de faire le ménage et la lessive.」
(えーっと、今は家にいるよ。今日は予定ないから、掃除と洗濯したいと思って。)
「Comme d'habitude.」
(いつも通りだな。)
と笑いながら言う。
ついムキになって、
「Oui, c'est comme d'habitude. Y at-il des problèmes ?」
(そーよ、いつも通りよ。なんか問題ある?)
と返した。
するとまたくくくと笑いながら、
「Non, pas du tout. Bon, tu vas finir ton travail, et on sort ensemble.」
(全く問題ない。よし、それ片付けたら一緒に出掛けようぜ。)
くすくす笑いとフランス語が耳に流れ込むと、思考能力が低下するーーー。
「Qu'est-ce qui se passe sur ton travail ?」
(お仕事、どうしたの?)
「C'est annulé. On peux rester ensemble jusqu'à demain matin, Tsukushi・・・」
(キャンセルになった。明日の朝まで一緒にいられるぜ、つくし・・・)
ぎゃー、ぎゃー、ぎゃー!
さらっと朝までとか言ったよ、こいつっ!
そんでもって、普段『牧野』って呼んでるくせに、いきなりファーストネームで呼ぶとか、もう、訳分かんないーーー!
目が回りそう。
「Quelle heure tu pourras sortir ?」
(何時に出られる?)
まだ洗濯も途中だし、一緒に出掛けるなら、少しはカッコつけなきゃいけないよね。支度して・・・
「A midi, ça sera bien.」
(12時なら。)
「D'accord. Je vais réserver notre restau habituel de l'Hôtel M à midi et demie. Je vais te chercher ?」
(分かった。12時半にMホテルのいつもの店、予約しとく。迎えに行くか?)
「Ne t'inquiète pas. Je peux aller en train.」
(大丈夫。電車で行けるよ。)
「OK. Eh, est-ce que tu m'aime, Tsukushi ?」
(了解。なぁ、俺の事愛してる、つくし?)
はぁーーー?
何、脈絡無く聞いちゃってんのよ。
いくら外国語で話してるって言っても、午前中から電話で、そんな甘い声出さないでよっ!
顔が赤くなるの、止められないじゃないの。
「O, oui, bien sûr・・・」
(う、うん、もちろん・・・)
「Alors, dites-moi. Tu m'aime ?」
(じゃ、ちゃんと言えよ。俺の事愛してるのか?)
「Je t'aime・・・」
(愛してる・・・)
顔から火を吹きそう。
なんでこんな事言わされてんの、あたし。
「Moi aussi. Tu me manque.」
(俺もだ。お前が居なくて淋しいよ。)
って、自分は「俺も」って、なんか軽くない?
自分はちゃんと言ってくんないワケ? と思った直後に「淋しい」って、絶対西門さんが言わないようなセリフ。
どうしちゃったの?
これがフランス語のチカラ?
耳から毒流し込まれてるみたい。
西門さんの声が頭の中を溶かしてく。
何か言おうにも、考えられなくて、何のセリフも出てこない。
「Bon, je t' attente. A tout à l'heure, ma chérie.」
(じゃあ、待ってるから。後でな。)
「A tout de suite.」
(すぐに行くね。)
これで会話も終わるだろう。
なんとか答えてほっとしたところで、くすっと笑った西門さんが最後に一言。
「Gros bisous. 」
(キスを贈るよ。)
と言って電話を切った。
な、な、な、何なのよー!
もう、ノックダウンされたあたしは、携帯を握りしめたまま部屋の中に立ち尽くしてた。
結論。あの男、絶対にフランス人とも遊んでたっ!
そうとしか思えないっ!
今日会ったらイヤミのひとつでも言ってやる!
はぁ、それにしても<フランス語 × 西門総二郎>の破壊力、ハンパなし。
愛を語る言語と言われてるだけある。
普通に聞いたら別に甘くない言葉も、フランス語になって流れるように話されると、毒みたいに耳に入り込んできて、思考停止を引き起こした。
それにあのフェロモン自在に操れる西門さんが、ワザとピンポイントで甘い単語を挟み込んできたら、抵抗出来る術なんかあるわけなく。
すっかりやられたわ・・・
なんかもう今日の気力は電話一本の攻撃で半減です・・・
明日の朝までなんて一緒に居たら、討ち死にすること間違い無し。
でも約束したんだから行かなくちゃ・・・
そう思いながら支度した。

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
__________
土曜日の午前10時。
携帯の着信。
西門さんだ。
土曜日のこの時間に電話って珍しい。
忙しそうなのに。
怪訝に思いながら、通話ボタンを押す。
「Allô, ma chérie. C'est moi.」
(もしもし、俺。)
はぁーーー? 頭おかしくなっちゃった?
いきなり ma chérie〈俺の愛しい人〉とか挟み込んでますけど。
「 に、西門さん? どうしたの? なんでフランス語?」
と、とりあえず聞いてみる。
「C'est la pratique de la langue française.」
(フランス語の練習だ。)
練習ったって、お互いそれなりにフランス語は喋れる訳だし、わざわざ電話で練習する程の事もないでしょ。
なんか訳あり?
「はぁ・・・?」
「Qu'est-ce que tu fais maintenant ? Tu as quelque chose à faire cet après-m ?」
(今何してる? 午後はなんか予定あるか?)
なんだか分からないが付き合っとくか。
外国語で話す時は、一度日本語に変換して日本語で答えるより、同じ言語で話す方がずっと楽だ。
ダイレクトに伝わってくる。
「Ah, en ce moment, je suis à la maison. Il n'y à pas de plan aujourd'hui, donc j'aimerai bien de faire le ménage et la lessive.」
(えーっと、今は家にいるよ。今日は予定ないから、掃除と洗濯したいと思って。)
「Comme d'habitude.」
(いつも通りだな。)
と笑いながら言う。
ついムキになって、
「Oui, c'est comme d'habitude. Y at-il des problèmes ?」
(そーよ、いつも通りよ。なんか問題ある?)
と返した。
するとまたくくくと笑いながら、
「Non, pas du tout. Bon, tu vas finir ton travail, et on sort ensemble.」
(全く問題ない。よし、それ片付けたら一緒に出掛けようぜ。)
くすくす笑いとフランス語が耳に流れ込むと、思考能力が低下するーーー。
「Qu'est-ce qui se passe sur ton travail ?」
(お仕事、どうしたの?)
「C'est annulé. On peux rester ensemble jusqu'à demain matin, Tsukushi・・・」
(キャンセルになった。明日の朝まで一緒にいられるぜ、つくし・・・)
ぎゃー、ぎゃー、ぎゃー!
さらっと朝までとか言ったよ、こいつっ!
そんでもって、普段『牧野』って呼んでるくせに、いきなりファーストネームで呼ぶとか、もう、訳分かんないーーー!
目が回りそう。
「Quelle heure tu pourras sortir ?」
(何時に出られる?)
まだ洗濯も途中だし、一緒に出掛けるなら、少しはカッコつけなきゃいけないよね。支度して・・・
「A midi, ça sera bien.」
(12時なら。)
「D'accord. Je vais réserver notre restau habituel de l'Hôtel M à midi et demie. Je vais te chercher ?」
(分かった。12時半にMホテルのいつもの店、予約しとく。迎えに行くか?)
「Ne t'inquiète pas. Je peux aller en train.」
(大丈夫。電車で行けるよ。)
「OK. Eh, est-ce que tu m'aime, Tsukushi ?」
(了解。なぁ、俺の事愛してる、つくし?)
はぁーーー?
何、脈絡無く聞いちゃってんのよ。
いくら外国語で話してるって言っても、午前中から電話で、そんな甘い声出さないでよっ!
顔が赤くなるの、止められないじゃないの。
「O, oui, bien sûr・・・」
(う、うん、もちろん・・・)
「Alors, dites-moi. Tu m'aime ?」
(じゃ、ちゃんと言えよ。俺の事愛してるのか?)
「Je t'aime・・・」
(愛してる・・・)
顔から火を吹きそう。
なんでこんな事言わされてんの、あたし。
「Moi aussi. Tu me manque.」
(俺もだ。お前が居なくて淋しいよ。)
って、自分は「俺も」って、なんか軽くない?
自分はちゃんと言ってくんないワケ? と思った直後に「淋しい」って、絶対西門さんが言わないようなセリフ。
どうしちゃったの?
これがフランス語のチカラ?
耳から毒流し込まれてるみたい。
西門さんの声が頭の中を溶かしてく。
何か言おうにも、考えられなくて、何のセリフも出てこない。
「Bon, je t' attente. A tout à l'heure, ma chérie.」
(じゃあ、待ってるから。後でな。)
「A tout de suite.」
(すぐに行くね。)
これで会話も終わるだろう。
なんとか答えてほっとしたところで、くすっと笑った西門さんが最後に一言。
「Gros bisous. 」
(キスを贈るよ。)
と言って電話を切った。
な、な、な、何なのよー!
もう、ノックダウンされたあたしは、携帯を握りしめたまま部屋の中に立ち尽くしてた。
結論。あの男、絶対にフランス人とも遊んでたっ!
そうとしか思えないっ!
今日会ったらイヤミのひとつでも言ってやる!
はぁ、それにしても<フランス語 × 西門総二郎>の破壊力、ハンパなし。
愛を語る言語と言われてるだけある。
普通に聞いたら別に甘くない言葉も、フランス語になって流れるように話されると、毒みたいに耳に入り込んできて、思考停止を引き起こした。
それにあのフェロモン自在に操れる西門さんが、ワザとピンポイントで甘い単語を挟み込んできたら、抵抗出来る術なんかあるわけなく。
すっかりやられたわ・・・
なんかもう今日の気力は電話一本の攻撃で半減です・・・
明日の朝までなんて一緒に居たら、討ち死にすること間違い無し。
でも約束したんだから行かなくちゃ・・・
そう思いながら支度した。



ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
