美作商事秘書部所属、専務付秘書。
それが今の牧野の肩書。
そしてもうひとつの肩書は・・・
俺、美作あきらの婚約者。
俺と類の牧野争奪戦の結果、牧野のハートを射止めたのは俺だった。
牧野の初恋の相手だった類は、牧野の中でとっくに恋心は昇華され、自分を最もよく理解してくれる親友・・・という存在になっていたらしい。
そして、もしかしてこいつも参戦してくるのでは?と疑いの眼で見ていた総二郎は、
「俺はつくしちゃんの事は、からかい甲斐のあるダチくらいにしか思ってないぜ!」
と、嘘かホントか分からないような言葉を口にして、争奪戦にはエントリーせず、俺と類の駆け引きをニヤニヤしながら見守っていた。
類のじわじわ攻撃&ビー玉の瞳ビーム光線と、俺の家族を巻き込んでのアットホーム大作戦のガチンコバトル。
牧野が俺の腕の中に落ちてきた時の嬉しさは半端なかった!
学生時代から美作家に出入りしていた牧野は、お袋の口説き文句にころっと落ちて、美作への就職を決めた。
そしてお茶の稽古で通っていた西門でも、いつの間にか総二郎のお袋さんと仲睦まじくなっていて・・・
西門家は男三人兄弟。
1人くらい女の子が欲しかった・・・と常々言っていた総二郎のお袋さんは、すっかり牧野の母親代わりのつもりらしく、
「つくしちゃんを西門でしっかり行儀見習いさせて、どこに出しても恥ずかしくない女性にしてみせます!」
などと意気込み、総二郎まで巻き込んで、大々的な牧野の花嫁修業を進めている。
俺もそれにはOKを出した訳なんだけれど。
今となっては、「ちょっと失敗したか?」と思わないでもない。
会社では毎日一緒の俺達。
でも職場な訳だから、ベタベタくっついている訳でもなく・・・
そういうのに煩い牧野の事。
きっちり線を引かれてしまっている。
アフターファイブや休日は俺と過ごすより、西門にいる時間の方が長い。
類と一緒にいられるよりマシ…と思っていたけど、類はしょっちゅう俺の執務室に顔を出して、何だかんだと牧野にちょっかいをかけている。
目障りな事、この上ない!
今日も会社の福利厚生の一環として行っている茶道部の指導で、総二郎が来社している。
牧野はその補佐で茶道部の稽古に行ってしまった。
俺はイライラを抑え込んで独りで残業と相成った。
茶道部での稽古を終えて、牧野と総二郎が談笑しながら俺の部屋に入ってくるのを認めて、またイライラが募る。
屈託のない笑顔を総二郎に向けつつ話し込んでる牧野と総二郎に、つい声を荒げてしまった。
「おいっ!」
「あ、美作さん、残業お疲れ様です。」
「よっ、あきら。」
「総二郎、お前どういうつもりだよ?
牧野は俺の秘書なんだ。
いてくれないと仕事が捗らないんだよ。」
「ああ、悪いな、
今日はいつも手伝いに連れてくる内弟子が、他に行っててな。
それで牧野に半東を頼んだんだよ。
別にちょっと位いいだろ?
毎日ここで一緒に過ごしてるんだから。
な、つくしちゃん?
専務と秘書の密室LOVE。
なーんかやらしくねえ?」
勧められてもいないのに勝手にソファにどかりと座り、にやりと笑って、牧野の方に流し目を送ってる総二郎。
そんな言葉にぷりぷり怒ってる牧野の膨れた頬が可愛くて、イライラしていた事をつい忘れ、くすっと笑ってしまった。
「西門さんって、ホントどうしようもない事考えてるよね・・・
ここは神聖なお仕事の場ですから!
変な想像で、あたしと美作さんの職場を汚さないでよ。
あ、美作さん、コーヒー新しくしましょうか?
ついでに西門さんも飲む?」
会社にいる間、俺には敬語で話す牧野。
だけど総二郎にはいつもの調子で話しかけてる。
それが何故か無性に嫌だ!
「ついでって何だよ、ついでって。
『お師匠様、お疲れ様でございます。』って言って、こっちが頼まずとも飛び切り美味しいコーヒー淹れてくるのが弟子ってもんだろ?」
「だってもうお稽古終わってるもん。
それにおば様が仰ってたよ。
『総二郎さんの事は兄と思って、遠慮なしにね。』って。
だからあたし、西門さんには遠慮しないの。」
兄? 総二郎が牧野の兄だって?
まあ、よくからかう時に「オニーサン」という単語を口にしてはいるけど。
それとこれとは違うよな?
総二郎が牧野の兄だとしたら、行く行くは俺の兄にもなってしまうじゃないか!
何だ、それ?
物凄く気持ち悪くないか?
「ふーん?
それならオニーサマの事だって妹は敬うもんだろ?
ほら、つくしちゃん、コーヒーどうした?」
「・・・今淹れてきます。」
ぱたんとドアが閉まって、総二郎と2人になる。
「あきら、まだ仕事あんのか?
それなら俺が牧野連れてくから。
お袋が、『是非つくしちゃんも一緒にお夕食を。』ってうるせえんだよ。」
いい加減にしろよ、総二郎。
心の広ーい俺にも、我慢の限界ってやつがあるんだ。
「牧野はこの後、俺と食事だ。
お袋さんには悪いけど、コーヒー飲んだら独りで帰ってくれ。」
ムカつく思いを言葉に滲ませたつもりなのに、総二郎は全くそれを無視してきた。
「牧野連れて帰れないなら、俺も邸には戻らなくていいな。
俺もお前らと一緒にメシ行くわ。」
おいおい、俺、誘ってないからな!
断ってるんだからな!
恋人たちの時間を邪魔してないで、何処かの女にでも電話して、夜の街へ繰り出せばいいだろ!
目の前のソファで、我が物顔で寛ぐ悪友を苦々しい顔で睨み付けた。
__________
はい、新連載スタートですー。
今迄のあきつくとは全然違うお話。
80000キリリクの第二弾です。
も、ホントいつのキリリク書いてんの?って話で、申し訳ないですが・・・
リク主様、本当にお待たせしました。
何とか頑張っていきたいと思います。
キーワードは『シスコン総二郎』で!
そんな総二郎、書いたことないから、これから頭を抱えるであろう自分の姿が目に浮かびます(苦笑)

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
それが今の牧野の肩書。
そしてもうひとつの肩書は・・・
俺、美作あきらの婚約者。
俺と類の牧野争奪戦の結果、牧野のハートを射止めたのは俺だった。
牧野の初恋の相手だった類は、牧野の中でとっくに恋心は昇華され、自分を最もよく理解してくれる親友・・・という存在になっていたらしい。
そして、もしかしてこいつも参戦してくるのでは?と疑いの眼で見ていた総二郎は、
「俺はつくしちゃんの事は、からかい甲斐のあるダチくらいにしか思ってないぜ!」
と、嘘かホントか分からないような言葉を口にして、争奪戦にはエントリーせず、俺と類の駆け引きをニヤニヤしながら見守っていた。
類のじわじわ攻撃&ビー玉の瞳ビーム光線と、俺の家族を巻き込んでのアットホーム大作戦のガチンコバトル。
牧野が俺の腕の中に落ちてきた時の嬉しさは半端なかった!
学生時代から美作家に出入りしていた牧野は、お袋の口説き文句にころっと落ちて、美作への就職を決めた。
そしてお茶の稽古で通っていた西門でも、いつの間にか総二郎のお袋さんと仲睦まじくなっていて・・・
西門家は男三人兄弟。
1人くらい女の子が欲しかった・・・と常々言っていた総二郎のお袋さんは、すっかり牧野の母親代わりのつもりらしく、
「つくしちゃんを西門でしっかり行儀見習いさせて、どこに出しても恥ずかしくない女性にしてみせます!」
などと意気込み、総二郎まで巻き込んで、大々的な牧野の花嫁修業を進めている。
俺もそれにはOKを出した訳なんだけれど。
今となっては、「ちょっと失敗したか?」と思わないでもない。
会社では毎日一緒の俺達。
でも職場な訳だから、ベタベタくっついている訳でもなく・・・
そういうのに煩い牧野の事。
きっちり線を引かれてしまっている。
アフターファイブや休日は俺と過ごすより、西門にいる時間の方が長い。
類と一緒にいられるよりマシ…と思っていたけど、類はしょっちゅう俺の執務室に顔を出して、何だかんだと牧野にちょっかいをかけている。
目障りな事、この上ない!
今日も会社の福利厚生の一環として行っている茶道部の指導で、総二郎が来社している。
牧野はその補佐で茶道部の稽古に行ってしまった。
俺はイライラを抑え込んで独りで残業と相成った。
茶道部での稽古を終えて、牧野と総二郎が談笑しながら俺の部屋に入ってくるのを認めて、またイライラが募る。
屈託のない笑顔を総二郎に向けつつ話し込んでる牧野と総二郎に、つい声を荒げてしまった。
「おいっ!」
「あ、美作さん、残業お疲れ様です。」
「よっ、あきら。」
「総二郎、お前どういうつもりだよ?
牧野は俺の秘書なんだ。
いてくれないと仕事が捗らないんだよ。」
「ああ、悪いな、
今日はいつも手伝いに連れてくる内弟子が、他に行っててな。
それで牧野に半東を頼んだんだよ。
別にちょっと位いいだろ?
毎日ここで一緒に過ごしてるんだから。
な、つくしちゃん?
専務と秘書の密室LOVE。
なーんかやらしくねえ?」
勧められてもいないのに勝手にソファにどかりと座り、にやりと笑って、牧野の方に流し目を送ってる総二郎。
そんな言葉にぷりぷり怒ってる牧野の膨れた頬が可愛くて、イライラしていた事をつい忘れ、くすっと笑ってしまった。
「西門さんって、ホントどうしようもない事考えてるよね・・・
ここは神聖なお仕事の場ですから!
変な想像で、あたしと美作さんの職場を汚さないでよ。
あ、美作さん、コーヒー新しくしましょうか?
ついでに西門さんも飲む?」
会社にいる間、俺には敬語で話す牧野。
だけど総二郎にはいつもの調子で話しかけてる。
それが何故か無性に嫌だ!
「ついでって何だよ、ついでって。
『お師匠様、お疲れ様でございます。』って言って、こっちが頼まずとも飛び切り美味しいコーヒー淹れてくるのが弟子ってもんだろ?」
「だってもうお稽古終わってるもん。
それにおば様が仰ってたよ。
『総二郎さんの事は兄と思って、遠慮なしにね。』って。
だからあたし、西門さんには遠慮しないの。」
兄? 総二郎が牧野の兄だって?
まあ、よくからかう時に「オニーサン」という単語を口にしてはいるけど。
それとこれとは違うよな?
総二郎が牧野の兄だとしたら、行く行くは俺の兄にもなってしまうじゃないか!
何だ、それ?
物凄く気持ち悪くないか?
「ふーん?
それならオニーサマの事だって妹は敬うもんだろ?
ほら、つくしちゃん、コーヒーどうした?」
「・・・今淹れてきます。」
ぱたんとドアが閉まって、総二郎と2人になる。
「あきら、まだ仕事あんのか?
それなら俺が牧野連れてくから。
お袋が、『是非つくしちゃんも一緒にお夕食を。』ってうるせえんだよ。」
いい加減にしろよ、総二郎。
心の広ーい俺にも、我慢の限界ってやつがあるんだ。
「牧野はこの後、俺と食事だ。
お袋さんには悪いけど、コーヒー飲んだら独りで帰ってくれ。」
ムカつく思いを言葉に滲ませたつもりなのに、総二郎は全くそれを無視してきた。
「牧野連れて帰れないなら、俺も邸には戻らなくていいな。
俺もお前らと一緒にメシ行くわ。」
おいおい、俺、誘ってないからな!
断ってるんだからな!
恋人たちの時間を邪魔してないで、何処かの女にでも電話して、夜の街へ繰り出せばいいだろ!
目の前のソファで、我が物顔で寛ぐ悪友を苦々しい顔で睨み付けた。
__________
はい、新連載スタートですー。
今迄のあきつくとは全然違うお話。
80000キリリクの第二弾です。
も、ホントいつのキリリク書いてんの?って話で、申し訳ないですが・・・
リク主様、本当にお待たせしました。
何とか頑張っていきたいと思います。
キーワードは『シスコン総二郎』で!
そんな総二郎、書いたことないから、これから頭を抱えるであろう自分の姿が目に浮かびます(苦笑)



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