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花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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夏の女神と蝉時雨 1

先日、拙宅は5万拍手&90万HIT達成と相成りました。
本当にいつも読んで下さっている皆様のお蔭です!
有り難うございます♪
そんな皆様への感謝の気持ちをお届けするのは、大学生の総二郎&つくし。
恋人未満の2人です。

__________


「蝉、うるせえ・・・」

朝からミーンミンミンと派手に合唱している蝉の声。
これが日本の夏。
和の風情。
そう言われればそうなのかもしれないが・・・
毎年毎年こんなに煩く鳴かれると、残暑の厳しさを余計に助長させる鬱陶しい雑音として耳に届く。
俺がそんな事を思ってしまう原因は、この西門の広い庭にある。
蝉は地面の中で数年の幼虫期を過ごし、時が満ちると地上に出て来て1ヶ月程のミンミン鳴く成虫期を迎える。
つまり、その幼虫期の数年間にアスファルトで蓋をされてしまったり、何らかの工事や移植で穿り返されたりせず、ずっとのんびり出来る木の根元・・・という住処が必要不可欠なのだ。
コンクリートジャングル・東京に於いて、この我が家の庭は、蝉が暮らすには格好の場所。
絶対に無くならないオアシスって訳だ。
広い敷地のお蔭で、都会の喧騒とは一線を画したこの邸も、庭に住まう蝉の声は排除できない。
今日も太陽がじりじりと照り付け始めた庭に、蝉の鳴き声が響いているのを、ガラス窓越しに聞いていた。

俺は朝茶事終わった後は、ゆっくりのんびり過ごしたいんだよ!
宵っ張りの俺が早起きしてんだから。
そんな寝不足の頭に、蝉の鳴き声が響いてイライラするんだっての!

イライラしたって、蝉はいなくはならないと分かっているのに、俺はどんどん不機嫌になってく。

どうせどこ行ったって、暑いしな。
蝉が鳴いてるのはウチだけじゃねえし。
でも、どうせ暑いなら波の音でも聞いて、耳だけでも爽やかな夏を満喫したい。
砂浜にザザーンと寄せては返す波。
そこで弾けるように笑う牧野。
うん、いいよな、そんな光景。

独りでそんな事を思い浮かべたら、次第に気持ちが解れて来て。
俺はいつの間にか転寝していたらしい。
目を覚ましてみれば、もう太陽は天高く昇り、立秋を過ぎたとはいえ、外は猛暑日。
ギラギラとした日射しは殺人的にも思える。
その暑さのせいか、蝉の鳴き声も幾分控えめになっている程だ。

夏って言えばやっぱ海だろ!
そりゃ、高原の別荘の方が涼しいだろうけど。
圧倒的に海がいい。
なんてったって、水着の牧野を拝めるかもしれないし。

そう思い立った俺は、牧野に電話を掛けた。

「もしもし、牧野? 俺だけど。」
「・・・どちらの俺様でしょう?」
「お前なあ・・・ 携帯の画面に俺の名が出てたろうが!」
「それで? 何の用よ?」
「ああ、つくしちゃん、海行かねえ?
俺ちょっと波乗りしたくなってな。
独りで行くのもなんだし、一緒に行く相方探してんの。」

って、牧野以外に連絡する気はサラサラないけどな!

「え? 海? 行きたいかもー! 今年まだ一度も行けてないよ。
いつ? いつ行くの、西門さん?」
「や、それはお前の都合も聞いてからって思って。」
「他の皆は行かないって?」
「類が好んで海なんか行くと思うか?」
「うーん、あんまり似合わないよね、花沢類とアウトドアって。
寝てばっかりだし、テレビっ子だし。」
「あきらはビーチは好きそうだけど、水に入りたくねえとかいうタイプだろ。」
「あー、確かに。
そこらを歩いてる綺麗なお姉さんに捕まって、その相手してるだけで、一日過ごしてそうだよね。
って、西門さんだってそうじゃん!」

牧野の俺とあきらへの評価は酷いもんだ。
俺達だって一応選り好みしてるっつーの。
それに俺は、お前を振り向かせたいって思ってから、女遊び封印してんだ!

「バーカ。俺は純粋に波乗りしたいんだよ。
だから、水に入るのは明け方からな。
そんな時間にビーチには綺麗なオネーチャンなんかいねえの。」
「ふーん、そうなんだ。桜子は誘っても絶対に日本の海なんか入らないだろうしなー。
滋さんは海外に行っちゃってるし・・・
しょうがない、あたしが付き合ったげるよ。」

ヨッシャー!
あっさりOKを取り付けられて、心が浮き立つ。

「おう! 昼間は牧野の水遊びに付き合ってやるから、行こうぜ。
前の日の夜にこっち出て、明け方から海入りたいんだ。
一日遊んで、日が暮れたら帰ってくるってスケジュールで、予定が空いてる日ないか?」
「うーんと・・・ バイトが休みの日の前の夜に出掛けるってことでしょ?
バイトがないのは、明日か、次の日曜日だけど。」
「じゃ、今夜出発だ。
日曜は海も道も混むだろ。」
「え、急だね・・・」
「何の支度も要らねえぜ。
何なら俺がサーフショップで水着選んでやるよ!」

結構本気でそう言ったのに、向きになって断ってくる牧野の大声が、携帯から飛び出してくる。

「水着位持ってますから結構ですっ!
それより、どこに泊まるの?」
「ウチの別荘。」
「・・・分かった。」

ホントは別荘と言うよりも、俺の海辺の隠れ家的マンション。
波乗りしたい時だけ使ってる。
管理はさせてるけど、常駐する使用人はいない、2人っきりの世界ってヤツ。

これは・・・ もしかしたら、もしかして・・・?
俺、本気出してもいいんじゃね?

そう思ったらほくそ笑むのを止められない。

誰も見てねえんだから、顔が緩んだって構わねえよな。
だって、牧野は気付いてないようだけど、これって、好きな女と2人きりで1泊旅行だぜ!

「じゃ、今夜、牧野のバイト先に迎えに行くわ。
何時に終わる?」
「今日は閉店までだから8時半には出てこれるかな・・・?」
「了解。じゃ、あとでな、つくしちゃん!」

急に俺の身体中にやる気が漲って来た。

牧野との夏の思い出の1ページ。
いや、1ページじゃ済まない位の色んな事、やってやろうじゃねえか!


__________



PCの不具合などで、書いたものが消えたりしまして・・・
ちょっと心折れたりしてました(苦笑)
更新にお時間がかかってスミマセン。
5万拍手と90万HIT達成のお礼に、夏っぽいSSにチャレンジです。
そう上手くいくのか、総二郎?(笑)

お盆が終わりましたねー。
ホーント疲れました。
忙しいんだよね、お盆って。
色々やることあって・・・
今はほっと一息つけたところです。
皆様は休み疲れしてませんかー?
あ、頂いているコメントへのお返事は、もう少々お時間下さいませ<(_ _)>


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夏の女神と蝉時雨 2

バイト終わりの牧野と飯を食い、車に乗せた。

「1時間くらいで着くから。」

そう言って、高速道路を走らせる。
最初は楽しそうに車窓を眺めては声を上げていた牧野は、気が付けばすーすーと可愛らしい寝息を響かせながら寝入ってしまった。
いつだってフル回転。
学生生活に、バイトに、全力投球してるから、疲れてるんだろう。
それでも独りでのドライブと、隣に牧野がいる今とでは気分が全く違う。
牧野に近い左腕がじんわりと温かいような気がした。
微かに聞こえてくる寝息が耳にくすぐったい。
暗い夜の高速を、飛ぶように進んでいくのが楽しくって仕方がない。

マンションの駐車場に着いてから牧野を起こすと、寝惚けたまま車を降りた。

「別荘って一軒家じゃないんだねー。」

エレベーターの籠の中に、牧野の間抜けな台詞が響く。
ついくすりと笑ってしまう俺。

「ま、ここは別荘ってよりもリゾートマンションって感じか?
俺専用の部屋だからな。」

解錠して、ドアを開ける。

「ま、入れよ。」
「う、うん、お邪魔します・・・」

おずおずと俺の後を付いてきて、きょろきょろと部屋を見回してる。
ゲストルームのひとつのドアを開けて、そこに牧野の荷物を置いてやった。

「牧野は、この部屋使ってくれ。
トイレと風呂はあっちな。」
「あ、ありがと・・・
あのさ、西門さん・・・
ここって使用人の方とかいらっしゃらないの・・・?」
「あー、管理はさせてるけど、たまにしか使わねえから常駐はさせてない。
ん? 何か必要なモンでもあんのか?」
「い、いや、そうじゃなくって・・・」

そうそう、流石の牧野でも気が付いちゃった?
この空間に、俺と2人っきりだってことに。

「ふうん・・・」
「な、なによっ!」
「お前、俺の事意識しちゃってんだろ。」
「は? 何馬鹿言ってんの?
だ、誰が西門さんなんかっ!」
「照れんな、照れんな。
こんなカッコイイ男と2人でいたら意識せずにはいられないよなあ、つくしちゃんでも。
お望みなら、甘ーく熱い夜の過ごし方、教えてやるぜ?」

そう言って一歩だけ牧野の方に近付いたら、ぎゃあっ!と叫んで飛び退った。
その様が可笑しくて、ついぷぷっと吹き出す。

「バーカ! 何もしねえよ!
明日明け方から海入りたいって言ってんだろうが。
今日は酒も飲まないからな。
さっさと寝るぞ!
明日、お前どうする?
俺は5時前には出るぞ。」
「あ、あたしも行く!
朝の海、見てみたい!」

そう来ると思った。
朝の海なんかじゃなくって、俺の雄姿見せつけて、惚れさせちまうぜ!

「じゃ、4時半には起きろよ。
寝坊してたらおいてくからな。」
「うん、分かった。」
「お休み、牧野。」
「お休みなさい・・・」

隣の部屋で牧野が寝てると思ったら、なかなか寝付けなくて。
朝早いんだからさっさと寝た方がいいのは分かってるんだけど、落ち着かなくて寝返りを繰り返す。
隣の部屋からは何の音も聞こえてこない。

牧野はもう眠ってるんだろうか?
あいつの事だから、こてっと寝ちまったのかもな。
鉄パン守り抜いてる割には、ガードが甘い。
俺がいきなり狼に変身したらどうするつもりなんだよ?!
男を簡単に信用すんなって釘さしとかねえと。
いや、俺は断じて合意無しに女をどうこうしたりしねえけどよ。
って・・・結局俺は何を言いたいんだ?
訳分かんなくなってきた。
眠いんだよ、俺。
朝早かったんだから・・・

気付けば夜明け前。
目覚ましの電子音が枕元で響いてた。
カーテンを開ければ、薄っすらと明るくなり始めた空は晴れている。
海で過ごすのに相応しい天気になりそうだ。

サーフィンに行く支度を終えて、牧野が使っている部屋のドアをノックする。

「牧野、起きてるか?
俺、出るけど。」
「あ、うん、今行く。」

ドアを開けて出て来た牧野は、昨日とは違う服に着替えてる。

「西門さん、おはよ!」
「はよ。じゃあ行くか?」
「うん!」

まだまだ寝足りないんだろうに、ニコニコ笑ってる。

「へえーーー!」
「ん?」
「何か、かっこいいね、西門さん。
ウェットスーツ、似合ってる。」
「何着たって俺はカッコイイんだよ、つくしちゃん。
海入ったらもっとカッコイイから、見てろよ?」

ちろりと流し目を送ってやれば、心なしか頬を赤くさせて、

「はいはい、ボードから無様に落っこちるとこ見ててあげるよ!」

と憎まれ口を叩くのは毎度の事。
絶対いいとこ見せてやる!

ボードと必要な物詰め込んだバッグを手に、部屋を出た。
海はマンションの目の前。
道路を渡れば直ぐ砂浜が始まる。

「ねー、朝の海って水冷たくないの?」
「だからフルスーツ着てるだろ。
俺、夏は朝しか海入らねえの。
日焼けしたくねえから。
海焼けすると煩く言われんだよ、仕事の時。」
「まあ、茶道のお師匠様が日焼けで真っ黒だったら違和感あるよねー。」

牧野はケタケタ笑いながら砂を鳴らして歩いてく。

「あー、空気ひんやりして気持ちいい。
潮の香りって、どうしてこんなに懐かしい気持ちになるんだろね?」

目を瞑って深呼吸してる牧野の横顔に、どきんと胸が鳴る。
黒髪が風に踊るのを、己の手で絡め取りたいなんて思ってしまう。
あるがままの牧野。
そこにいるだけで俺を魅了する。

お前も俺を見ろよ!

そんな思いを胸に、俺は朝日が昇ろうとしている海に入っていった。


__________


昔ね、海に通ってた時があったんですよー。
勿論自分は水入らないですけど。
朝のひんやりした砂浜、好きでした。

更新にお時間かかってしまいましたー。
連日色々ありまして…
病人の体調がちょっと怪しいので、暫く落ち着かないかもしれませんがお許しくださいませ。


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夏の女神と蝉時雨 3

昼は波に乗るのに順番待ちをしなきゃいけない程混み合うこのポイントも、夏とはいえ早朝から水に入る奴は多くはない。
だから、思いっきり楽しめるっていう最大のアドバンテージがある。
水の冷たさは、一度浸かってしまえば気にならなくなるし。

朝日の昇り始めた海を、眩しさに目を細めながら沖に向かってパドリングする。
手頃な波が来たら勢いをつけてテイクオフして、今度は朝日に背中を押されながら、波が崩れるところまで乗っていく。
波は生き物。
一つとして同じ波はやって来ない。
その波に上手く乗る為に、どうやってボードを操るかという、波と俺との壮大な駆け引きだ。
当初は牧野にいいところを見せたい・・・なんていう邪な思いが胸を占めていたんだけれど、次第にその駆け引きが楽しくて、どんどん海に惹き込まれていく。
飽きる事なく波に乗り、またポイントまで戻っていい波が来るのを待ち・・・と言うのを繰り返した。
滑るように波を乗りこなせた時の快感は、癖になる。
ふとビーチに目をやれば、牧野が膝を抱えて小さくなりながら、此方を見ているようだった。
気付けばさっきより海に出ているサーファーの数が増えてきた。
それとは反比例して波がサイズダウンしてきたと感じた俺は、水から上がる事にした。

牧野が座ってる近くまで歩いて行って、ざくりとボードを砂浜に突き刺す。
態と牧野に水が掛かるように、頭を振って水滴を払ったら、「うぎゃっ!」と妙な声を立てて、顔に付いた水を拭ってる。

「もーーー! もっと離れたとこでやんなさいよー!」
「わりい、わりい。
何か、耳に水入っちまって、なーんも聞こえねえや。」

惚けた振りしてもう一度頭を振れば、顔に向かってタオルを投げつけられた。

「タオル使えばいいでしょ!
あたしに水掛けないでよー!」
「はいはい。」
「はいは1回!」

投げられたタオルで頭をがしがし拭いて、そのタオルを牧野に返す振りをして、素肌が露わになってる牧野の首筋に冷えた指先をぴたっと当ててやったら、今度は「ひゃー!」と叫んで飛び上がる。

「ちょっ!!! つっめたーーーい!
びっくりするでしょが!」
「朝の海の冷たさをつくしちゃんにも教えてやろうと思ってな。」

真っ赤な顔して、俺が触れた首筋を手で押さえてる、変に腰が引けてる牧野の姿が可笑しくて、くくくと笑ってしまった。
海で体温を奪われた手は、牧野の予想を超えて冷たかったらしい。

「どーよ、俺の波に乗る姿?
あんまりカッコ良くて見惚れちゃった?」
「・・・もう、ホントに自信過剰なんだから。
でも、あたし、サーフィンなんて全く知らないけど、西門さんがこっちに向かって波に乗ってくる姿は、今ここにいる他の人よりもずっと綺麗だった・・・よ?」
「そーなんだよな、俺って何でも出来ちゃうから、カッコ良くても仕方ないよなぁ。」
「・・・何か自分でそういう事言うのがムカつくわ。」
「まあまあ、そんな当たり前の事にムカついてないで。
部屋に戻って朝飯にでもしようぜ!
俺、運動したら腹減った。」

部屋に戻って俺がシャワーを浴びている間に、冷蔵庫の中を物色したんだろう牧野が、朝食をテーブルに並べてる。

「西門さん、凄いね、この冷蔵庫!
美味しそうな物がたーくさん詰まってる。
食べ切れない位だよ。」

食べ物に釣られて、満面の笑みを浮かべてる牧野が見られて、俺まで気分がいい。
窓からは波が砂浜に打ち寄せる音がして、爽やかな風が吹き込んでくる。
その中で2人きりで向かい合って過ごす時間が心地良くて、のんびりと朝食を食べた。

「食休みしたら、また海行くか?
10時過ぎれば水もあったまって、泳ぎやすくなるだろ。」
「うん! じゃ、あたし片付けちゃうから、西門さんはのんびりしててー!」

キッチンからちゃかちゃかと皿同士がぶつかる音と、水が流れる音がする。
それが妙に楽し気な調べとなって耳に届くから、牧野と付き合えたら、いつもこんな時間を過ごすようになるのか・・・なんて夢想したりして。

これが何気ない日常って奴か?
そうか・・・
何か特別な事なんかしなくても、2人でいられりゃ、俺は幸せになっちまうんだ。
牧野となら、例え『庶民の暮らし』ってやつをしたとしても、案外俺も楽しみながらやってけたりして?

ふふふとひとりで笑っていたら、片付けを終えた牧野がこっちにやって来た。

「なあに、西門さんってば、ひとりでニヤついちゃって。
どーせまたエロい事でも考えてるんでしょ!」

ホント、牧野の俺という男への認識は酷い。
人を色情狂扱いしてんじゃねえ!
女遊びなんて、単なる暇つぶし。
他に手っ取り早く気を紛らわせる事が無かったからやってただけで、俺は煩悩の塊なんかじゃねえんだよ。

「別に・・・
つくしちゃんの水着は、凹凸少な目のボディをちゃんとカバーしてくれるのか・・・とか、心配してやってただけだけど?
あんまり引っかかるとこ無いと、水に入ったらするっと脱げたりしてな?
気をつけろよ!」

みるみるうちに怒りと羞恥で顔を染めた牧野。
頭から湯気が出てきそうだ。
それを見て、今度は腹を抱えて笑っていたら、ソファのクッションでぶん殴られた。

「余計なお世話ですっ!
もう、ここからは別行動でいいからっ!
あたしひとりで海行ってくるから、ほっといて!」
「おいおい、冗談だろうが。
そんなムキになるなって。」

そうだぞ、夏の海辺なんかひとりで歩かせられる訳ないだろうが!
お前みたいな鈍感娘、例え魅力的なナイスバディを兼ね備えてなくたって、ぼんやりしてるうちに変な輩に攫われるだろ!
お前には強力な虫除けが必要なんだよ。
俺という、誰が見たって文句のつけようのないイイ男がさ。

ぷんぷん怒って、唇とんがらせてああだこうだ言い募ってくるのもまた可愛い・・・だなんて思ってる、俺は相当牧野つくしにやられてるよ、ホント。


__________


このお話、引き伸ばせ!という、司令が(苦笑)
いつの間にやら前・中・後編じゃなくて、数字にすり替えられてます(*-∀-*)ゞエヘヘ

何だか急に涼しくなっちゃいましたね。
ヤバい、夏が終わってく!
気温の変化か、夏の疲れからか・・・
管理人、ダウンしてしまいました。
皆様も、お身体ご自愛下さいませ。


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夏の女神と蝉時雨 4

牧野の機嫌を宥めて、さっきも行ったビーチに連れ出した。
平日とは言え、夏休み。
朝方とは比べものにならないほど、賑やかになってきている。
海の家も開店し、パラソルが立ち並ぶ。
砂も熱くなり始めてきた。
牧野はそんな景色を目の当たりにして、目をキラキラと輝かせてる。

「西門さんっ! 夏って感じだねー!」

そう言って俺に笑いかける。
太陽よりも、その光を受けて輝く海よりも、眩しく明るく見えるその笑顔。

それさえありゃ、俺は何もいらないって気分になっちまうよ。
でも牧野はやっぱりこういう陽の光の下が似合う。
夏の暑さにも負けず、ぐんぐんと空に向かって伸びて、大きく咲き誇る、向日葵の花みたいに。

白と青のツートンカラーのパラソルを1つレンタルして。
その下に牧野が荷物を置く。
取り出したのは大きな浮き輪。
それを懸命に膨らましてる。

「・・・つくしちゃん、泳げないんだっけ?」
「泳げるけど・・・ ずっと泳いでたら疲れるでしょ。
波間にプカプカ浮くのも楽しそうだし。
念のためのサポート役よ!」

浮き輪なんか無くたって、俺がどこまでも連れてってやるし、護ってやるのに。
「きゃっ!」なんていってしがみ付いてきたら・・・

うっかり白昼夢を見てしまった。
ふるふるっと小さく頭を振って、気を取り直せば、浮き輪を膨らませ終わった牧野が、俺の前でひらっと羽織っていたパーカーを脱いでいる。
下は辛うじてショートパンツだけど、華奢な白い肢体が惜しみなく曝け出されたビキニ姿。

お前なあ!
そんなカッコでこの場にいることの危険性、分かってねえだろ!
いつも凹凸ねえとかからかってるけど、それなりに成長しているから、ふんわり柔らかそうな胸が水着の下に圧し込められて、可愛く揺れてるし!
更にその日焼け止め塗り広げてる手つきが妙にエロいんだよ!

「んっ、届かない・・・」

無理矢理手を伸ばして、背中に日焼け止めクリームを塗ろうとしているから、じれったい。
そんな牧野から容器を奪い取った。
自分の手に日焼け止めを取って・・・ 牧野の背中に優しく触れた。

「えぇ?! ちょっと、西門さ・・・」
「ちゃんと塗っとかないと火傷みたいになるぞ。」
「う、うん、ありがと・・・」

お前、その耳朶まで赤く染めるのヤメロ!
こっちまで顔が熱くなるだろ!

指を滑らす度に、牧野の背中が小さくびくつく。
それに過剰に反応しそうになるから、誤魔化す為にいつもの軽薄な俺を呼び出した。

「なんだよ、つくしちゃん。
俺に触られると感じちゃう?」
「へ、変な事言うの止めてよっ!
ちょっと擽ったいだけなんだからっ!
あたしの反応見て遊ぶの、いい加減にして!
もう塗れたでしょ?」

俺の手から逃げ出して、こっちを睨み付けてる。
まるで猫が毛を逆立ててフーフー言ってるみたいで面白い。
ひょいと日焼け止めの容器を牧野に向かって放った。

「今度は俺の番。
つくしちゃんが塗ってよ。」
「へっ?」
「だーかーらー、俺は立場上、日焼け厳禁だって言ったろ?
普段は昼間の海入んねえけど、今日はつくしちゃんに付き合うからさ。」
「じゃ、あたし1人で泳いで来るから、西門さんはこのパラソルの下でのんびりしてたら?」

1人にしとけないから言ってんだろ!
それに俺が牧野と一緒に居たいんだよ。
波に揺られてはしゃぐお前。
水に濡れた肌。
波間を泳ぐその手脚。
それを見ないで浜辺に置き去りだなんて、海に連れて来た意味無いだろ!

「日焼け止め、ちゃんと塗れば大丈夫だろ?
ほら、塗ってくれよ。」

牧野の方に背中を向けつつ、ちらりと流し目で促せば、渋々といった体で近付いてきて、恐る恐る日焼け止めを塗り始めた。

やべえ!
柄にもなくドキドキする!
牧野が俺の背中を撫でまわしてる・・・
じゃなかった!
日焼け止め塗ってくれてるってだけで暴れ出す俺の心臓!
絶対牧野には悟られたくねえ!

「・・・男の人って、背中広いんだね。
なんか、塗っても塗っても終わらない。」

そんな牧野の言葉は、こんな事するのは初めてって言ってるように聞こえて。
心の何処かで軽ーく優越感を感じたりする。

んーーー、パラソルの下、日焼け止め塗り合う俺達。
もう、まるで恋人同士じゃね?
男の背中に日焼け止め塗るの、俺が初めてって事は・・・
司にも類にもこんな事はして無いって事で。
今ここにいるのは、俺だけが知ってる牧野なんだ・・・

「はい、お終い!
前は自分で塗ってよね!」

最後にペチンと背中を軽く叩かれて、日焼け止めを渡された。
「サンキュ!」と笑って応えつつも、ちょっと名残惜しかったりして。

いや、2人で海に入っちまえば、もっと接近するチャンスがあるかも?
それならちゃっちゃと泳ぎに行くっきゃねえ!

手早く日焼け止めを塗った俺は、牧野の浮き輪を片手に、海に向かって歩き出した。

「牧野! 行くぞー!」
「うん!」

沢山の人でごった返してる波打ち際。
ちらちら牧野に視線を投げてくる男共が気に食わねえ。

「お前、俺から離れるなよ?」

怪訝そうな顔しながらも「うん。」と素直に頷いた牧野の手を引いて、2人で水に入ってく。

「わ、思ったより冷たいっ!」
「まあ、まだ午前中だからなぁ。」
「えー? なんて言ったの?
波の音が煩くて聞こえないー!」

振り返れば、とびきりの笑顔の牧野がいた。

俺だけの牧野。
俺だけの笑顔。
今なら捕まえられる。

そんな気がした。


__________


お待たせしました。
やっと更新です。スミマセン!
日焼け止めを塗り合う、初々しい2人ってのを書きたかったのです(笑)

えー、ここ数日、ちょっと凹んでおりました。
皆様から頂くコメント、本当に有り難いのですが、叱咤激励の中には書き手のモチベーションを著しくダウンさせるものもまれにありまして・・・
勝手を言うようで申し訳ないんですが、「自分だったら、こんなこと言われたら嬉しいな♪」と思えるかどうかご一考の上、コメントの送信ボタンを押して頂けたら、とっても有り難いなーと思います。
拙宅の運営方針、更新頻度、お話の内容など、ご自分のスタイルと合わないな・・・と思われたら、それに関するご意見やご批判は無用です。
どうぞそのままブラウザを閉じて、ご自分のお好みに合ったサイトにご移動をお願いします。
お話を書いていく原動力は、皆様から頂くコメントと拍手だけなのです。
これからもこのBlogを続けていく為に、皆様と楽しいひと時を共有していけるように、管理人への温かい応援を、どうぞ宜しくお願いします。


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夏の女神と蝉時雨 5

ざぶざぶと波間に進んでいく俺に対して、牧野はおっかなびっくり歩を進めてる。

「思ったより水冷たいねー!」

脚を海に浸した牧野が声を掛けてきた。

「そうかー? 朝よりずっとあったまってるぜ。」

振り返り様にそう言って、牧野が俺の近くに来るのを待つ。
妙に肩に力の入った牧野の水着&浮き輪姿が、アンバランスで可笑しく目に映った。
波打ち際は水遊びを楽しむ海水浴客で混み合ってるから、少し人の少ない所まで泳いでいこうかと考える。
波がざぶんと寄せる度に、どうも牧野は後退して行ってるみたいだ。

「つくしちゃん、泳ぐ気あんのか?
全然こっち来ねえじゃん。」
「だって・・・ 波の力が強くて押し戻されちゃうんだもん!
浮き輪つけてるとそのせいでふわっと浮くみたいになって後ろに流されるの!」

だから浮き輪なんてやめときゃ良かったのに。
苦笑しながら牧野の前まで戻って、浮き輪に手を掛けた。

「きゃあっ! 何すんのっ!」
「俺が少し先まで引っ張ってくから。
牧野はしっかり浮き輪に掴まってろ。」
「う、うん・・・」

片手で浮き輪を掴んで、もう片手では水を掻く。
押し寄せる波のせいもあって、進みにくいっちゃ進みにくいけど・・・
波間にプカプカ浮かびたいっていう牧野の望みを叶えてやる為に、俺は力を籠めて進んでいった。
牧野の足が海底に着かないところまで来た頃、ちょっと不安そうな声を上げる。

「西門さん、もう足着かない・・・」
「牧野、バタ足してみろよ。」

2人で沖に向かって泳ぎ出した。
俺は仰向けで牧野の様子を見ながら。
牧野は懸命に浮き輪にしがみ付きながら、脚を動かしてるらしい。
時折襲い掛かる波に、頭まで水に浸かりながらも、人も少なく、ゆっくりぷかりぷかりと浮かんでいられるところまで来た。

「海、冷たくってキラキラして気持ちいいね、西門さん。」

顔にかかった潮水を手の甲で拭い、濡れ髪を耳に掛けながら、牧野が俺に向かって笑いかける。

「西門さんが波に乗りたいって気持ち、ちょっと分かる気がする。
こうやって浮いてるだけより、もっとずっと楽しそうだもの。」

ここよりもっと沖でサーフィンしている人達に目を遣る牧野。
目を細めて、思いを馳せるような表情を浮かべてる。

ああ、そんな顔すんな。
何でか知らないけど、こっちの胸が苦しくなんだろ!

「そうだな。
上手い事大きな波を捕まえられて、乗りこなせた時の爽快感は、他では味わえないかもな。
だから俺も飽きずに海に来ちまうのかも。」
「いいなあ、西門さんは何でも出来ちゃって。」
「牧野もサーフィンやるか?」
「え? ムリ、ムリ!
出来る気がしないよ!」
「そうか? 女の子でも波乗りしてるコ、結構いるぜ。
お前のやる気次第なんじゃねえの?」
「・・・あたしは砂浜から見守ってる方が似合ってるよ。
どう考えても西門さんみたく、波に乗れないもの。」
「まあ、お子ちゃまつくしちゃんにはこの浮き輪がお似合いかもな?」
「もー! うっさい、西門っ!」

そう言ってぱしゃりと俺に向かって水を跳ね飛ばしてきた。
それならこっちもと、盛大に水を掛け返す。
キャーキャー言いながらも、止めようとはしない牧野と、そんな事をしてじゃれ合ってるうちに、水の中で俺の脚と牧野の脚がぶつかった。
ひゃあ!と叫んで、動きを止めた牧野。

「あ、悪い。お前の事蹴っ飛ばしちまった。」
「う、ううん、ダイジョブ・・・
ちょっとぶつかっただけ・・・」

急に茹蛸みたいに赤くなって、俺から視線を逸らしてる。
それを見てると、こっちまで恥ずかしくなっちまって、何か言わなきゃ・・・と思うんだけど、いい言葉も浮かんでこなくて・・・
こんな些細な事で、そんな風に頬を染めるなんて、もしかして牧野も俺を意識してたりする・・・?なんて期待が胸を過ぎる。

「そろそろ一旦上がるか?
身体も冷えただろ?」
「ん・・・」
「じゃ、また俺が引っ張ってやるから、お前はバタ足な。」
「分かった。」

今度は砂浜に向かって、波に押されつつ泳いでく。
その途中で、牧野が「きゃっ!」と小さく叫び声を上げた。

「どうした?」
「脚・・・ 攣っちゃったみたい。」
「脹脛か?」
「うん。」
「ちょっとずつ爪先を逸らせるようにしてみ?
取り敢えず浜まで戻るから、ちゃんと捕まってろよ!」

さっきより腕にも脚にも力を籠めて泳いで、歩けるぐらいのところまで辿り着くと、牧野から浮き輪を抜き取り、お姫様抱っこのようにざばりと抱き上げた。

「ちょ、西門さん、浮き輪が!」
「それよりも今は脚の方が大事だろ!
後で何個でも買ってやるから。」
「それに、このカッコ恥ずかしいから、下ろして!」
「ギャーギャー騒ぐと、余計目立つぜ、つくしちゃん。」

そんな事を言って牧野の口を噤ませて。
焼けた砂を踏みしめて、パラソルの下まで戻って来た。
沢山の視線が集まってるけど、そんなの構うこっちゃない。
牧野を座らせて、バスタオルを肩から掛けてから、脚を見た。
俺に言われたとおりに逸らせた爪先をしてるのは右脚だ。

「こっちか?」
「うん。」

手で触れたら、さっきまで海水に浸かっていた白い脹脛は、陶器のようにひんやりしていて、艶めかしく濡れていて。
思わず心臓が跳ねたけど、そんな煩悩は取り敢えず後回しだ!
牧野の脹脛の筋肉をほぐすように、ストレッチするのを手伝う。

「ごめんな。」
「何で西門さんが謝るのよ。
あたしが足攣ったのに。」
「疲れてる時って攣り易いんだよ。
お前、疲れてるところ海に連れて来たし。
寝不足だろ?」
「・・・あたしが来たかったんだから。
西門さんは悪くないよ。
ありがと、もう大丈夫そう。」

そう言いながら自分の手を脹脛に伸ばしてきた。
脹脛の上で、俺の指先と牧野の指先が重なって・・・
牧野がびくっと手を引いて固まった。

「悪い・・・」

そう言って牧野の脚から手を離す。

「う、ううん、こっちこそ・・・」

お前なあ!
そういう態度が俺を一喜一憂させんだよ!
意図せずやってるからタチが悪いんだよ、ホントに!


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ちょびちょび書いていたものが、やっと1話に纏まりました。
お待たせしてすみませんー。
オイオイ、捕まえるんじゃなかったのか、総二郎?(苦笑)
なかなか進展しない2人です。


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