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花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
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二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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ごめん、好き・・・ scene1

もうすぐ拙宅は100万HITを迎えます。
それもこれもいつも遊びに来て下さる皆様のお陰でございます。
達成前ではありますが、100万HIT記念祭りスタート!(っていうか、「水恋」3話から始まってるんですが^^;)
という事で今夜は前祝い的にSSを。
「scene1」とありますが、1話読み切りです。
大学生の2人の一コマ。


__________



しとしとと秋雨が降る日が続いていたある午後。
俺と牧野はラウンジに2人きりだった。

「西門さん、雨、止まないね。」
「ああ、そうだな・・・」

牧野が窓の外を見ている背中に、そう答えた。

「西門さん・・・」

また名前を呼ばれて、胸の奥がずくんと痛む。
牧野の声で、自分の名が呼ばれるのを聞くだけで、胸が苦しくなるなんて。

「ん・・・?」
「ごめんね。」

さっきよりも小さな声で。
まるで囁くように紡がれた言葉の意味を図りかねて、「何のことだよ?」と聞こうとしたけれど。
顔だけこちらに向けて俺を見詰めてる牧野の笑い顔が、まるで泣き出しそうに見えたから、つい言葉を飲み込んだ。

「好きだよ・・・」

牧野が儚く笑いながら、ゆっくりと瞬きしてる。
睫毛がキラキラと光ってるように見えるのは、気のせいじゃないだろう。
俺達2人の周りだけ、時がゆっくりゆっくり流れていってるかのように感じた。
さっきまでBGMのようだったサーサーサーという雨音も、今は耳に届かない。
視線が牧野だけに引き寄せられて。
牧野の声しか聞こえなくなった。

「あたしなんかが西門さんの事、好きになっちゃってごめん。」
「牧野・・・」

なんとか絞り出した声が掠れる。

「あ、あのね、言っておきたかっただけだから。
言わないで、気持ち抱えたまま出発したら、後悔する時が来るかもって思っちゃったからさ。
別に、どうこうして欲しいとか思ってないの。
忘れてくれていいよ。
また今度会えた時は、普通に友達で・・・」

そこまで言われ、続きを聞きたくなくて、窓辺の牧野に歩み寄った。
逆に俺と距離を取ろうとした牧野の右手を捉える。

「行くなよ。」
「・・・え?」
「俺を好きなら、類を追い掛けてフランスになんて行くな。」
「べ、別に追い掛けて行く訳じゃないよ。
大学の留学制度の試験に受かったから、留学するだけで。
類はパリの大学にいるけど、あたしは地方の提携校だし・・・
それに1年だけの期間限定だよ?」

握り締めた牧野の手が、思っていたよりも小さくて華奢な事に気付く。
逃げようとするから、更にぎゅっと力を込めて手繰り寄せれば、漸く逃げる事を諦めたのか、牧野の手から次第に力が抜けていった。
互いに緊張しているのが、汗ばむ掌で分かる。
鉄パン牧野は兎も角、俺までかよ?と自分の中に残ってた純情に戸惑ってしまう。
俯いてこちらを見ようとしないけれど、逃げずに手を繋いでいてくれることが、今の俺にとっては救いだった。

「お前、1年て長いぜ?」
「西門さん離れをするのに丁度いいと思って。
1年外国にいて、必死に勉強して、色んなこと吸収して来たら、あたし・・・」
「俺の事、忘れられるって?」

返事に詰まって黙りこくった牧野。

「じゃあ、俺は?」
「俺は?って・・・ どういう意味?」
「俺はどうなるんだよ?」
「西門さん・・・?」
「そう。お前がここにいない間、俺はどうすりゃいい訳?」
「そんなの知らないよ・・・
今迄同様、綺麗なお姉さんと楽しく遊んで、男のロマンとやらを極めたらいいんじゃないの?」

俺の事を好きだってさっき言ったってのに。
こんな酷い言葉を口にする、この女は・・・
いや、身から出た錆だから仕方ないのか。

反対の手でも牧野の手を取り、向かい合わせになるように前に立つ。
それでも表情が窺い知れないから、顔を見たくて口を耳元に寄せて囁いた。

「牧野、こっち見ろよ。」

ゆっくりゆっくり牧野が俺を見上げる。
濡れた大きな黒い瞳には俺だけが映り込むから、その瞳を想いを込めて見つめ返した。

「違うだろ。
俺がお前と一緒にいたいって気持ちの話だよ。」
「・・・・・・どういう意味?
またあたしのことからかってるの?」
「馬ー鹿! こんな事冗談で言えるか!
行くなって言ってんだろ!
俺の傍にいて欲しいんだよ。
俺はお前が1年もいないここで、何したらいいか分かんねえよ。
お前が俺の見えるところで笑っててくれねえと・・・
俺は居ても立っても居らんねえ。」

こっ恥ずかしい本心を吐露したことで、顔がかあっと熱を持ってる。
こんな顔、ホントは牧野に晒したくはないけれど、今こいつから手を離す訳にはいかない。
絶対に逃せない。
きっとこいつを得る ONE & ONLY CHANCE が今この時だ。

「嘘・・・ 」
「嘘じゃねえよ。
何だって人の真剣な言葉疑うんだよ?」
「だって、だって、そんな事今迄一度だって・・・」
「そう何度も言えるかよ、こんな事。」
「西門さんが好きなのは、綺麗で色っぽいお姉さんでしょ?」
「遊び相手とマジで惚れる相手は違うだろ?
お前だって俺に惚れてんじゃん。
お前の理想のオトコって俺みたいのか?」
「あ、あたしは、好きになった人にあたしの事だけ見詰めてて欲しいの!
他の女の人にちょっかい出してるとこなんか見たくないのよ。
だから諦めようとしてるんでしょ!
西門さんは沢山の綺麗な人に愛を分け与えちゃう博愛主義者なんだから。」

俺の事好きだって言う割には、俺の上っ面ばっかみてねえか、お前?
俺が振りまいてんのは愛想。
愛じゃねえよ。

「ふーん、お前の理想は司や類みたいなオトコってことね。
あいつら、何とかの一つ覚えみたいに『牧野』『牧野』だもんな。
なら司とより戻せよ。類と付き合っちまえ。」

牧野の目がきらっと光る。
その目の奥に宿るのは怒りの炎か。

「だからあんたが好きだって言ってるでしょうが!
こんなどうしようもないちゃらんぽらんを好きになっちゃって・・・
叶わない恋ならぶつかって壊して、綺麗さっぱり諦めようって・・・」

逃がさないように握り締めてた手を解いて、すかさず牧野を腕の檻にぎゅうっと閉じ込める。

「俺の事、諦めないでよ、つくしちゃん。」
「やっ! 放してっ!」
「放さない。留学止めるって言うまで、お前はこのまま俺の腕の中。」
「何言ってんのよ。ふざけないで!」

ジタバタしている牧野の耳元にキスをひとつ。
牧野が動きを止めて立ち尽くしてる。
唇を近づけた耳に、ありったけの想いを囁いた。

「牧野、好きだ。
俺がホントに欲しいのはお前だけ。
もう他の女は見ない。
だから俺の手が届かないとこ行くな。
俺の事、信じろよ・・・」

頤に人差し指を添えて、上を向かせた牧野の目には大粒の涙が溢れんばかりに湛えられてる。
それを見ていると、俺への気持ちが溢れているようで、泣かせているっていうのに嬉しくなった。
震える唇が愛おしくて堪らない。

「そんなの・・・ 信じられる訳ないでしょうが!」
「う・・・ まあ、仕方ねえか・・・
じゃあ、今ここで誓うから。
お前の事だけ愛してる・・・」

そっと重ねた唇は熱くて、吐息まで甘やかで。
触れてるところから頭の中までじんじんと痺れてく。

あれ? 誓いの口付けって結婚式でするんだっけ?
ま、いいか。
俺はこいつとじゃないと生きてけないもんな。
ちょっと先取りって事で。

何度もキスを繰り返すうちに、いつの間にか桜子とあきらに覗かれていて。
散々からかわれて、牧野がへそを曲げたのは言うまでもない話。


__________


「ごめん、好き・・・」をキーワードに、色んなパターンのSSを書いてみよう!という企画の第1弾でしたー。
2人の恋の始まりversion。
また思い付いたら、第2弾もUPしますね~。

今日から10月!
今年もあと3ヶ月で終わりってマジですか!?
何か意味も無く焦ります・・・


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ごめん、好き・・・ scene2

「ごめん、好き・・・」、第2弾はバカップルの登場です。

__________


「もーっ! 西門さんってば、何度言ったら分かるのよ?」

風呂上がりのビールで一息ついている俺に向かって、洗面所からがなり立ててる牧野。
どうせいつものお小言だろうと、聞こえない振りを決め込む。
濡れた髪をタオルでガシガシ拭いて、手近にあった椅子の背もたれにひょいと引っ掛け、ビールをもう一口ぐびりと飲んだ。

「ねえ、聞いてるの?
いつも靴下は裏返しに脱いじゃったら、元に戻してから洗濯籠にってお願いしてるじゃん!」

つい忘れちまうんだよなぁ。
ぽいぽいっと脱ぎ捨てて、そのまま風呂入っちまう。
そもそも今迄そんな事気にして来なかったから、その習慣が身に付かない。

「あー、わりぃ。」とお座なりな返事でやり過ごそうとしたのに、牧野はそんな俺に追い打ちをかけてきた。

「ウチじゃパパも進もそうしてくれてたんだから!
今度からよろしくねっ!」
「んーーー。」

ビールの残りを喉に流し込みつつ、ソファに腰を下ろしてテレビのリモコンを弄り始めたら、またあいつはキーキー言い出した。

「あーーー! バスタオルもっ!」

そーでした、そーでした。
使ったバスタオルは洗面台の横のタオルラックに掛けておくっつー決まりがあるんでした、ここ牧野の部屋では。

「後でやろうと思ってたんだけど、つい・・・な。
次から気ぃつけるって。」
「もーーーっ!
いっつもいっつもそう言うけど、やった例がないじゃん!
お邸じゃどうなのか知らないけど、あたしの部屋では自分の事は自分でやるの!
郷に入っては郷に従えって言うでしょ!」
「分かったからそんなぷりぷりすんなよ。
可愛い顔が台無しだぜ、つ・く・し・ちゃん!」

険悪な空気を変えようと、軽口を叩いてみたものの、お怒りの牧野には逆効果だったようで。
頭から角が飛び出してきそうだ。

「全く・・・ どの女も、甘い言葉で煙に巻かれると思ったら大間違いなんだからねっ!
あたしはそんな事で誤魔化されたりしないの!」

うるせー、うるせー!
正しい事・・・っつーか、あくまでもこの部屋の中だけのルールではあるが・・・だからと言って何度も声高に指摘されたら煩く聞こえちまうんだ。
そんなに延々とにまくし立てられると、ついこっちは口を封じたくなっちまうんだぜ。

頬を膨らませ気味にこっちを睨み付けてる牧野を、ちょいちょいと手招きしてみる。
俺お得意のちらりと流し目&キラースマイル載せで。
今度は疑わしそうな目で俺の様子を窺ってる。

「な、な、何よ?
ビールのお代わりなら冷蔵庫に入ってるけど?」

そんな事言いながらも、ひょいひょいこっちに来ちまう牧野は、ホント学習能力が欠如している。

俺がお前を呼ぶ時は、それなりに理由があるからだろ?
まだ解んないのか?
でも疑いつつも俺の言うこと聞いて来てくれちゃうとこはすっげえ可愛いよな。

俺が腰掛けてるソファの前までやって来た牧野に手を伸ばしてクイッと引いた。
「ひゃあっ!」なんて素っ頓狂な声を上げつつ、バランスを崩し、俺の方に転がり込んでくる牧野。
横抱きで膝の上に載せれば、ぽかんと口を開けつつ、何が起こったか解らない・・・といった表情を浮かべてる。
真ん丸な目がさらに見開かれて、ぱちりぱちりと瞬きを繰り返してるのを見て、ついふふっと笑いが零れた。

「あの・・・西門さん・・・?」
「ごめんって。」
「え?」
「靴下のことも、タオルのこともごめん。
好きだから、許してくれよ・・・」

そう告げて、ゆっくり顔を牧野の方に寄せていく。
唇と唇が触れそうな程のところで動きを止めて、もう一度囁いた。

「好きだ、牧野・・・」
「ん・・・っ!」

牧野の小さな声も、甘い吐息も、俺の口の中に溶けていく。
最初はぎこちなかった牧野も、俺が優しく舌で擽れば、ちょっとずつ応えてくれ出した。
そんな仕草に、余計にキスするのに夢中になる。

「ふぁ・・・」

そっと唇を離せば、牧野が空気を取り込もうと肩で大きく息をした。

「甘い言葉なんかで煙に巻こうなんて思ってないぜ?
可愛いってのも、好きなのも、俺の本心。
可愛くって可愛くって、食っちまいたいくらい。」

もう一度、ちゅっと唇を啄む。
額に額をくっつけてダメ押しの一言を。

「な? だからそんなに怒んなよ。」
「ん・・・」

さっきまでと違って、急にオンナっぽくなってる牧野。
頬だけじゃなくて、耳朶や首まで朱に染まってて。
恥ずかしそうに目を伏せて、俺の服の端をきゅっと握ってる。
そういうギャップってそそられるんだよなあ。
食っちまいたいくらいなんて気持ちじゃ済まないな、こりゃあ。

「よーし、じゃあ、仲直りもしたし。
もっと仲良くなることしちまう?」
「・・・へ?」

返事を待たずに抱き上げて、さっさとベッドまで運んでしまう。
ジタバタしたってもう遅いぜ。
俺、すっかりスイッチ入っちまったからな。

「ちょっ! エロ門っ! ふざけるなっ!
あたしまだ、洗濯も途中だし、お風呂もまだなんだから!」
「まあまあ、明日でいいだろ?」
「良くないっ! 放してっ!」

その煩い口はまた俺の唇で塞いじまおう。
もっと可愛い声が聞こえ出すまで。


__________


何か、こういうバカップル書くの久しぶりだったかも。
ちょっと楽しかったです。
それにしても、死ぬまでにあとどのくらい靴下を裏返すんだろ・・・とか思っちゃいます。
あと、床に脱ぎ捨てられてるのをイラっとしつつ拾うのも!
ウチだけ? 管理人、躾に失敗してるんでしょうか?
先日、使った後のバスタオル、管理人のノーパソの上に放置されているのを発見した時は愕然としました。
どーしてそういうことするのー?!

皆様、アイツをお待ちだとは分かっているのですが・・・
なかなか降臨してくれないので、困ってます。
もう少々お時間下さいませ。


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ごめん、好き・・・ scene3 前編

この横顔を見るのも、今夜が最後なんだろうか・・・

左手で牧野を緩く抱きながら、身体をぴたりと添わせて、柔らかな肌と温かな体温を感じつつ、そんな事を思う。
窓から忍び込む淡い月明かりに浮かび上がる、牧野の横顔を見るのが好きだった。
俺に抱かれた後、眠りに落ちてく牧野をいつも幸せな気持ちで見守ってた。
ふっくらとした頬をそっと撫ぜ。
シーツの上に波打つ黒髪を手櫛で梳いてやって、時にはその髪に小さなキスを落とす。
そんな眠りに就く前のひと時が、俺にどんな大きな幸せをもたらしてくれていたのか。
手放さなきゃいけない今になって、はっきりと分かるんだ。


来週、俺は見合いをする。
絶対に断れない筋からの縁談だと聞いた。
次期家元として、時が来ればそれなりの家柄の女を娶ると言うのは、ずっと前から決まっていた事。
それが自分の役割なんだと、分かってはいるけれど。
いざその時が来たとして、「ああ、そうですか。じゃあその方と結婚させて頂きます。」と素直に思う事など到底出来そうにもない。
こうなることを恐れて、誰の事も好きにならないでいようと決めていた筈なのに。
誰とも真剣に向き合う事などすまいと思っていたのに。
俺は牧野に惚れてしまった。
そして牧野も俺を想ってくれるようになった。
最初から求めてはいけない恋。
でも牧野への気持ちは留まるところを知らず、とうとう今夜まで来てしまった。

俺は・・・
牧野無しにこの先歩んで行けるのだろうか?
そして牧野は・・・
独りになって、この先一体どうするんだろう?
すぐにどこかの男に攫われてしまう?
類なんかもう迎えに来る算段をつけてるのかも知れない。
それでも俺は牧野を引き留める術を持たないんだ。
只々、身体が引き千切られてくような痛みを味わいながら、今夜限りになるかも知れない牧野の温もりを感じているだけ。

流れていく雲が、時折煌々と輝く白い月を隠し、部屋を闇に落とし込む時、俺の胸の中に昏いどろどろとした欲望が沸き起こる。
牧野と2人、誰も俺達の事なんか知らない場所で暮らせたら・・・
誰もいない地の果てに辿り着けたら・・・
世界でたった2人きりになってしまったとしても、俺は牧野さえ隣にいてくれたら生きていけるだろう。
こんなに思っているのに、俺と牧野の間にはどうしても埋められない大きな隔たりがある。
じゃあ、この先も牧野と共にある為に、俺は家を棄てられるのか?
兄貴が全てを打ち棄てて出て行った様に、立場も、義務も、帰るべき場所も失くして、牧野だけを手にする。
そんな事は許されない。
許されないけれど・・・

牧野が寝返りを打って、俺の胸に頬を寄せた。
穏やかな寝顔。
それを目にするだけで、胸が鋭い痛みに貫かれていくから、俺は牧野の身体をぐっと抱き締めた。

「ごめんな、好きになっちまって。
俺、お前を幸せにしてやれないのに・・・
分かってたのに、自分を止めらんなくて・・・」

眠っていると思ってた牧野の掌が、そっと俺の胸に重なってはっとした。

「・・・幸せだったよ、ずっと。
好きな人の傍に居られて。
だから謝らないで・・・
あたしこそごめんね。
西門さんを幸せにしてあげられなくって。
お見合いする人、いい人だといいね。
その人が西門さんを幸せにしてくれるよ、きっと・・・」

牧野の声が段々小さくなっていく。
俺の胸が涙で濡れていた。

「・・・お前無しで幸せになんて、なれる訳ねえだろ。」
「なれるよ。
お嫁に来る人の為にも、生まれてくる子供達の為にも幸せにならなきゃ。
温かい家族、今度は作らないとね。
自分みたいなひねくれた子供じゃ困るでしょ。」

牧野の声は泣き笑いに変わってる。
全てが手に入る立場にありながら、家族の温もりだけは手にすることが出来なかった俺の、初めて手に入れた温もりが牧野だった。
何物にも代えられない、唯一無二の存在。
やっぱり俺は・・・

「牧野、2人でどこかに行っちまおうか・・・?」
「・・・やだよ。」
「何でだよ! 俺はお前じゃなきゃ・・・」
「あたしのせいで家を出るだなんて。
そんなこと出来ないって、西門さんが一番よく知ってるでしょ。
あたしだって、茶道を辞めて、お金もなくって、ただの遊び人になり下がった西門さんの面倒なんて見れないからねっ!」

牧野の精一杯の強がりなんだとは分かっているけれど、そう言われて言葉に詰まる。

そうだ、俺が牧野の為に家を出たとなったら、牧野がどんな目に遭うか分からない。
その時、西門という看板を失くし、何の力も持たなくなった俺が、牧野を護り切れる保障はないのだ。

言葉を紡げなくなった唇が出来ることは一つだけで。
口にすることが出来ない想いを込めてキスをした。
少し涙味のキスは、余計に俺の胸を締め付ける。
何度もキスを交わして、身体も重ねて。
いくら身体を繋げても、ひりつく痛みはどんどん増すばかり。
それでも他に牧野に自分の想いを伝える術を知らなかった。

朧気に、牧野の声を聞いた気がする。

「ごめんね・・・ 大好き・・・」

目を覚ましたら、隣に牧野の姿は無く、ベッドサイドに書き置きだけがあった。

今までありがとう。
どうか幸せになってね。


そんな言葉が書かれた紙を握り締めて、気が付けば頬に涙がつたってた。


__________


今夜は切ない2人ですー。


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ごめん、好き・・・ scene3 中編

1週間後。
とうとう見合いの日が来てしまった。
何度考えても無理だ。
牧野以外の誰かと、この先の人生を過ごしていくなんて。
愛のない結婚をして、義務的に子を生し、家の為に育てる。
俺はそんな事出来やしない。
牧野に出逢う前なら、それも運命と思って受け入れられただろう。
でも俺は牧野に出逢ってしまった。
もう元には戻れない・・・

どんな結果が待ち受けていようとも、見合い相手と両親に頭を下げて、この見合いを無かったことにしてもらおう。
そう決めて、料亭の席に着いた。
黙りこくった俺を、結婚と直結している見合いの席で緊張しているとでも思っているのか、両親ともに碌に声も掛けてこない。
少し遅れて相手側が到着したと、仲居の声が聞こえ、俺はいよいよか・・・と身を固くした。
ところが入って来たのは、類、あきら、滋に桜子の4人組だった。

「はあっ? なんだよ、お前ら!」

俺の見合いを見物しに来た?
そんな事出来る訳無いだろ!
そもそも何故この場に通されるんだよ?
見合いの席っつったら、あとは見合い相手とその両親位しか入れないだろ!

「俺達、付添人だから。」

類の言葉はいつも通り意味不明だ。
俺には親父とお袋がいるんだから、付添人なんか不要だ!

「おい、何考えてんのか知らねえけど、俺は今、お前らの相手してる場合じゃねえんだ!
出てけよ!」
4人が代わる代わる顔を見合わせて苦笑してる。
何だよ!? 何だってんだよ!?

「だから、私達は付添人としてこの場に来ているんです。
しっかり見届けるまで、ここに居させて頂きますわ。」

桜子の意地の悪そうな笑いを見るにつけ腹が立つ。

「付添人なんて要らねえよ。
さっさと帰れ!」

イライラして、ムカムカして。
この大きな座卓を挟んでいなきゃ、全員襟首引っ掴んで廊下に押し出してるとこだ。

そう考えた時、隣に両親がいることに傍と気が付いた。

一体この状況をどう思っているんだろう?
何で親父はこいつらをこの場から叩き出さないんだ?

そう思って親父の横顔を窺えば、さも面白そうに口元を緩め4人の方を見ている。
お袋はと言うと、袂で口元を隠しつつ下を向き、肩を震わせている。

こんな時に笑ってる?
何だ?何が起こってるんだ?

その時「失礼します。」と凛とした声が響き、襖がすっと開いて、入って来たのは司と、豪華な振袖を纏った牧野だった。

「・・・牧野?」

顔を伏せ気味でこちらを見てはくれないけれど・・・
鴇色の地に色とりどりの花や宝尽くしの文様が描かれたその振袖は牧野によく似合っていて、一瞬見惚れて言葉を忘れたが、直ぐにはっと正気を取り戻した。

今から俺の見合い相手がやってくる。
そんな所に牧野がいたら、絶対に嫌な思いをさせるから・・・  早くこの場から連れ出してやらないと!

慌てて立ち上がろうとした俺を、親父が窘める。

「勝手に席を立つな、総二郎。
皆様にきちんとご挨拶しろ。」

親父、何言ってんだ?
挨拶って、こいつ等招かれざる客だろう?
それに、あれは牧野だ。
俺がこの世で唯一心から欲し、愛おしいと思ってる女。
俺はこれ以上牧野を傷つけたくはない。
もう俺の事で涙を流させたくなんかないんだ!

「お父さん、ですが・・・」
「ったく、こうでもしないと収まらねえって言うから、態々NYからきてやったんだ。
感謝しろよ、総二郎。」

俺の向かいにどかりと座った司がそんな事を言う。
人の見合いをぶち壊す手伝いに、NYから来たってのか?
俺、そんな事頼んでねえぞ、司!
余計に話がややこしくなるだろうが!

「やあ、司君、忙しいところを本日は有り難う。」
「お家元、ご無沙汰しております。こちらこそ本日は有り難うございます。
どうぞ宜しくお願いします。」

何で司が親父に有り難うとか言って頭下げてんだ?
見合いをぶち壊すのにこんな挨拶しねえだろ?

そんな中、「では、皆様お揃いですので、始めさせて頂きます。」と言ってあきらがつらつらと話し出す。

「もうご存知だとは思いますが、私から簡単にご紹介させて頂きます。
こちらが西門流次期家元、西門総二郎さん。
そしてご両親の西門流家元、西門祥太郎さんと、家元夫人、華乃さんでいらっしゃいます。」

親父とお袋が頭を下げるのに応えて、座卓の向こう側に座っている連中も座礼している。
一体何が始まってる?
こんな馬鹿げた事、やってる場合じゃねえ!

「おい、あきら!」

声を荒げる俺をちらっと見て、ふふっと鼻で笑ったあきらが言った次の言葉が、俺の思考を停止させた。

「そしてこちらがお相手の牧野つくしさんです。
英徳大学をご卒業後、美作商事にて私の秘書として勤務して下さっています。
我が社の優秀な社員であるとともに、社内の茶道部でも中心となって・・・」

途中からあきらの声は聞こえなくなった。


__________


あの切ない展開からのー、この茶番(笑)
だってハピエンにしようと思うと、どうしてもドタバタ喜劇になってしまうのですよ。
あともう1話お付き合い下さいね。
尚、お家元の名前はまた某お部屋からの無断借用です。
いつも事後承諾でスイマセン(・ω<)

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ごめん、好き・・・ scene3 後編

オアイテノマキノツクシサン・・・
お相手の牧野つくしさん???
相手って、相手って・・・
俺の見合い相手が牧野???

息をするのすら忘れて必死に頭を巡らせる。
そしてゆっくりと牧野の方に顔を向けた。
牧野は俺から一番遠くに座らされているけれども、この部屋に入ってきてから一言も言葉を発さず、唯々目を伏せている。
そんな牧野を俺はじっとじっと見詰めるけど、顔をあげてはくれなくて・・・

「なあ・・・ これって・・・ 一体・・・」
「総二郎さん、お静かに。こんなお席なんですから。」
「ちょ、ちょっと待ってくれって。
見合いって、俺と牧野の見合いなのか?」
「今更何を仰ってるの?
貴方、釣り書もご覧にならないでここにいらっしゃったというの?
それはあんまりにも失礼でしょう、牧野さんに。」

お袋が俺を揶揄う様な口調で諭すから、信じられない・・・と思いつつ睨み付ける。

「だって、絶対に断れない筋からの縁談だって・・・」
「道明寺、美作、大河原、花沢の次期当主が後見に付いて、必要とあらば三条家が養子縁組をした上での婚約、結婚をお約束しているんです。
西門流としてもお断りにはなりませんよね、このお話。」

類、まるで脅しのような事を言って詰め寄るのと、恨みがましい冷たーい視線を俺に浴びせるのは止めろ。
そんな事されたって俺はまだ混乱してて、訳が分からないんだ。

「ああ、勿論だよ、類君。
総二郎の幼馴染たちがこぞって後見してくれる女性を我が家に迎えられるなんて、こんな嬉しい事は無い。
これを機に、大河原さんや三条さんとも、末永く今迄以上に親しくお付き合いさせて頂きたいですな。」
「「こちらこそどうぞ宜しくお願い致します。」」

外面が滅法いい小悪魔・桜子のみならず、あのサル女・滋までもが、淑やかに笑いつつ親父に頭を下げている。
まるで夢を見ているかのような展開に、軽く目眩を覚えた。

「じゃあ、この場は2人でゆっくり話でもしてもらって。
私達は別の部屋に食事の用意が整ったようですから、そちらに移るとしましょうか。」

あきらが皆を促すと、次々と席を立っていく。
勿論一言釘を刺すのも忘れない。

「総二郎、精々俺達に感謝しなよね。」
「この貸しはでかいぞ、総二郎!」
「ニッシー、結婚式は絶対に大河原でプロデュースさせて!
滋ちゃん、今度新しくウェディング事業立ち上げたの!」

小悪魔は何とも嫌な感じの笑い顔を浮かべつつ、「これからはご縁戚として、宜しくお願いします、西門さん。」などと恐ろしい言葉を残していった。
あきらはウインクひとつ残して颯爽と廊下へと消えて。
親父は立ち上がり際に俺の肩をぽーんとひとつ叩いて部屋を出て行く。
一番最後に腰を上げたお袋は、俺の耳元でこそっと「牧野さんを安心させてあげるのよ。」と言い置いていった。

2人きりになった静かで広い座敷で、相変わらず牧野は俯いたままその場に座っている。
吸い寄せられるように牧野の隣に歩み寄った。
膝を着き、座卓の下でぎゅうっと握り締めてる両の手をそっと引き寄せる。

「牧野・・・」

やっとこちらを向いた牧野の瞳は揺れていて、心細げな表情で俺を見上げてる。

「お前、知ってたの?」
「・・・何を?」
「・・・俺達が見合いするって事。」
「何も知らなかったよ。
知ってる訳ないでしょ!
道明寺がNYから帰ってくるから皆でご飯食べようって言われて。
それなりのお店に行くから、ちゃんとした服着ないとダメだって桜子が。
そうしたら、こんなお着物着せられて・・・
お見合いだって言われたのは、ここに来る車の中だよ。
だからあたし、心臓止まりそうにびっくりして・・・
まだドキドキが止まらない。」

俺の口からふう・・・と安堵の溜息が飛び出し、やっと肩の力が抜けた。
牧野の手を更にしっかり握り締める。

絶対に断れない見合いってこういう事だったのか・・・
あんなに悩んで、苦しんだってのに、こんなオチだなんて、全く信じらんねえ!
それならそうと、言ってくれりゃあよかったろうが!
俺と牧野がどんな思いでいるか、予想つくだろう?
それを皆してハメやがって!
・・・いや、違うか。
俺が形振り構わず、親にも、あいつ等にも牧野としか結婚したくないから助けてくれと言えていたら良かったんだ・・・
独りでどうにもできないって思い込んでた、俺って浅はかな奴だな。

「牧野・・・」

しっかりと目を見つめて。

「嫁に来てくれんの?」
「へ・・・?」
「だって、ここに来てくれたってことはそういう事だろ?」
「あ、あたしは皆に無理矢理連れて来られただけで・・・」
「あいつ等の親切、無駄にする気?」
「そんなんじゃないけど・・・」
「じゃあ、俺と結婚しようぜ。
俺達、なーんにも障害なくなっちまったみたいだし。」
「・・・何、それ・・・」

さっきまで不安気な顔してたくせに、今度はちょっと不服そうに睨みつけて来た。
そうだよな。
牧野とて乙女。
プロポーズには憧れもあったろうけど、いきなりこんなじゃ、怒るのも無理はない。

「俺の見合い相手、最高にいいオンナだったな。
俺の事幸せに出来る、世界でたったひとりのオンナだろ。
なあ、牧野、2人で温かい家族、作ろうぜ。
俺、毎晩頑張るから。」
「ちょっ! 何言ってんのよっ!」

途端に顔を赤らめる牧野が、本当に可愛くて。
俺は思わず目を細めた。

「お前が言ったんだろ?
俺みたいなヒネた子じゃなくて、つくしちゃんみたいな真っ直ぐな心を持った子供、2人で育てて。
誰よりも幸せな家族になろう。
あいつ等にそれを見てもらうのが、何よりの恩返しになる。
そうだろ?」

牧野が顔を歪める。
泣くのを堪えようと、必死に口元を引き締めてる。
その顔を、ぐいと俺の胸に引き寄せた。

「辛い思いさせてごめん・・・
好きだ・・・
牧野、俺と結婚してくれ。」
「・・・・・・馬鹿ぁ!」
「うん・・・」
「西門さんの馬鹿っ!」
「ああ・・・」
「馬鹿・・・」

ホント俺は馬鹿だよ。
お前を手放そうだなんて一瞬でも思ったことも。
どうにかなる術を必死になって探さずに諦めかけてたことも。

「これからはずっと一緒にいる。
もう二度と離れない。」

涙に濡れた唇に誓いの口付けをした。
あの日の涙味のキスは俺の胸を切り裂いていったけど、今日のキスは幸せで胸をじんじんと熱くさせる。
牧野を抱き寄せて、その幸せを噛み締めた。

帯のせいで手を背中に回せず、ついもうちょっと下の方に伸ばしたら、「どこ触ってんのよ、エロ門っ!」と騒がれたのは、全く以て牧野らしいエピソード。


__________


という訳で。
あの切ない涙の夜から、幸せを掴むまでの3話でございましたー。
これにて100万HIT記念祭り、終了でございます。
楽しんで頂けていれば幸いです♪


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