もうすぐ拙宅は100万HITを迎えます。
それもこれもいつも遊びに来て下さる皆様のお陰でございます。
達成前ではありますが、100万HIT記念祭りスタート!(っていうか、「水恋」3話から始まってるんですが^^;)
という事で今夜は前祝い的にSSを。
「scene1」とありますが、1話読み切りです。
大学生の2人の一コマ。
__________
しとしとと秋雨が降る日が続いていたある午後。
俺と牧野はラウンジに2人きりだった。
「西門さん、雨、止まないね。」
「ああ、そうだな・・・」
牧野が窓の外を見ている背中に、そう答えた。
「西門さん・・・」
また名前を呼ばれて、胸の奥がずくんと痛む。
牧野の声で、自分の名が呼ばれるのを聞くだけで、胸が苦しくなるなんて。
「ん・・・?」
「ごめんね。」
さっきよりも小さな声で。
まるで囁くように紡がれた言葉の意味を図りかねて、「何のことだよ?」と聞こうとしたけれど。
顔だけこちらに向けて俺を見詰めてる牧野の笑い顔が、まるで泣き出しそうに見えたから、つい言葉を飲み込んだ。
「好きだよ・・・」
牧野が儚く笑いながら、ゆっくりと瞬きしてる。
睫毛がキラキラと光ってるように見えるのは、気のせいじゃないだろう。
俺達2人の周りだけ、時がゆっくりゆっくり流れていってるかのように感じた。
さっきまでBGMのようだったサーサーサーという雨音も、今は耳に届かない。
視線が牧野だけに引き寄せられて。
牧野の声しか聞こえなくなった。
「あたしなんかが西門さんの事、好きになっちゃってごめん。」
「牧野・・・」
なんとか絞り出した声が掠れる。
「あ、あのね、言っておきたかっただけだから。
言わないで、気持ち抱えたまま出発したら、後悔する時が来るかもって思っちゃったからさ。
別に、どうこうして欲しいとか思ってないの。
忘れてくれていいよ。
また今度会えた時は、普通に友達で・・・」
そこまで言われ、続きを聞きたくなくて、窓辺の牧野に歩み寄った。
逆に俺と距離を取ろうとした牧野の右手を捉える。
「行くなよ。」
「・・・え?」
「俺を好きなら、類を追い掛けてフランスになんて行くな。」
「べ、別に追い掛けて行く訳じゃないよ。
大学の留学制度の試験に受かったから、留学するだけで。
類はパリの大学にいるけど、あたしは地方の提携校だし・・・
それに1年だけの期間限定だよ?」
握り締めた牧野の手が、思っていたよりも小さくて華奢な事に気付く。
逃げようとするから、更にぎゅっと力を込めて手繰り寄せれば、漸く逃げる事を諦めたのか、牧野の手から次第に力が抜けていった。
互いに緊張しているのが、汗ばむ掌で分かる。
鉄パン牧野は兎も角、俺までかよ?と自分の中に残ってた純情に戸惑ってしまう。
俯いてこちらを見ようとしないけれど、逃げずに手を繋いでいてくれることが、今の俺にとっては救いだった。
「お前、1年て長いぜ?」
「西門さん離れをするのに丁度いいと思って。
1年外国にいて、必死に勉強して、色んなこと吸収して来たら、あたし・・・」
「俺の事、忘れられるって?」
返事に詰まって黙りこくった牧野。
「じゃあ、俺は?」
「俺は?って・・・ どういう意味?」
「俺はどうなるんだよ?」
「西門さん・・・?」
「そう。お前がここにいない間、俺はどうすりゃいい訳?」
「そんなの知らないよ・・・
今迄同様、綺麗なお姉さんと楽しく遊んで、男のロマンとやらを極めたらいいんじゃないの?」
俺の事を好きだってさっき言ったってのに。
こんな酷い言葉を口にする、この女は・・・
いや、身から出た錆だから仕方ないのか。
反対の手でも牧野の手を取り、向かい合わせになるように前に立つ。
それでも表情が窺い知れないから、顔を見たくて口を耳元に寄せて囁いた。
「牧野、こっち見ろよ。」
ゆっくりゆっくり牧野が俺を見上げる。
濡れた大きな黒い瞳には俺だけが映り込むから、その瞳を想いを込めて見つめ返した。
「違うだろ。
俺がお前と一緒にいたいって気持ちの話だよ。」
「・・・・・・どういう意味?
またあたしのことからかってるの?」
「馬ー鹿! こんな事冗談で言えるか!
行くなって言ってんだろ!
俺の傍にいて欲しいんだよ。
俺はお前が1年もいないここで、何したらいいか分かんねえよ。
お前が俺の見えるところで笑っててくれねえと・・・
俺は居ても立っても居らんねえ。」
こっ恥ずかしい本心を吐露したことで、顔がかあっと熱を持ってる。
こんな顔、ホントは牧野に晒したくはないけれど、今こいつから手を離す訳にはいかない。
絶対に逃せない。
きっとこいつを得る ONE & ONLY CHANCE が今この時だ。
「嘘・・・ 」
「嘘じゃねえよ。
何だって人の真剣な言葉疑うんだよ?」
「だって、だって、そんな事今迄一度だって・・・」
「そう何度も言えるかよ、こんな事。」
「西門さんが好きなのは、綺麗で色っぽいお姉さんでしょ?」
「遊び相手とマジで惚れる相手は違うだろ?
お前だって俺に惚れてんじゃん。
お前の理想のオトコって俺みたいのか?」
「あ、あたしは、好きになった人にあたしの事だけ見詰めてて欲しいの!
他の女の人にちょっかい出してるとこなんか見たくないのよ。
だから諦めようとしてるんでしょ!
西門さんは沢山の綺麗な人に愛を分け与えちゃう博愛主義者なんだから。」
俺の事好きだって言う割には、俺の上っ面ばっかみてねえか、お前?
俺が振りまいてんのは愛想。
愛じゃねえよ。
「ふーん、お前の理想は司や類みたいなオトコってことね。
あいつら、何とかの一つ覚えみたいに『牧野』『牧野』だもんな。
なら司とより戻せよ。類と付き合っちまえ。」
牧野の目がきらっと光る。
その目の奥に宿るのは怒りの炎か。
「だからあんたが好きだって言ってるでしょうが!
こんなどうしようもないちゃらんぽらんを好きになっちゃって・・・
叶わない恋ならぶつかって壊して、綺麗さっぱり諦めようって・・・」
逃がさないように握り締めてた手を解いて、すかさず牧野を腕の檻にぎゅうっと閉じ込める。
「俺の事、諦めないでよ、つくしちゃん。」
「やっ! 放してっ!」
「放さない。留学止めるって言うまで、お前はこのまま俺の腕の中。」
「何言ってんのよ。ふざけないで!」
ジタバタしている牧野の耳元にキスをひとつ。
牧野が動きを止めて立ち尽くしてる。
唇を近づけた耳に、ありったけの想いを囁いた。
「牧野、好きだ。
俺がホントに欲しいのはお前だけ。
もう他の女は見ない。
だから俺の手が届かないとこ行くな。
俺の事、信じろよ・・・」
頤に人差し指を添えて、上を向かせた牧野の目には大粒の涙が溢れんばかりに湛えられてる。
それを見ていると、俺への気持ちが溢れているようで、泣かせているっていうのに嬉しくなった。
震える唇が愛おしくて堪らない。
「そんなの・・・ 信じられる訳ないでしょうが!」
「う・・・ まあ、仕方ねえか・・・
じゃあ、今ここで誓うから。
お前の事だけ愛してる・・・」
そっと重ねた唇は熱くて、吐息まで甘やかで。
触れてるところから頭の中までじんじんと痺れてく。
あれ? 誓いの口付けって結婚式でするんだっけ?
ま、いいか。
俺はこいつとじゃないと生きてけないもんな。
ちょっと先取りって事で。
何度もキスを繰り返すうちに、いつの間にか桜子とあきらに覗かれていて。
散々からかわれて、牧野がへそを曲げたのは言うまでもない話。
__________
「ごめん、好き・・・」をキーワードに、色んなパターンのSSを書いてみよう!という企画の第1弾でしたー。
2人の恋の始まりversion。
また思い付いたら、第2弾もUPしますね~。
今日から10月!
今年もあと3ヶ月で終わりってマジですか!?
何か意味も無く焦ります・・・

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
それもこれもいつも遊びに来て下さる皆様のお陰でございます。
達成前ではありますが、100万HIT記念祭りスタート!(っていうか、「水恋」3話から始まってるんですが^^;)
という事で今夜は前祝い的にSSを。
「scene1」とありますが、1話読み切りです。
大学生の2人の一コマ。
__________
しとしとと秋雨が降る日が続いていたある午後。
俺と牧野はラウンジに2人きりだった。
「西門さん、雨、止まないね。」
「ああ、そうだな・・・」
牧野が窓の外を見ている背中に、そう答えた。
「西門さん・・・」
また名前を呼ばれて、胸の奥がずくんと痛む。
牧野の声で、自分の名が呼ばれるのを聞くだけで、胸が苦しくなるなんて。
「ん・・・?」
「ごめんね。」
さっきよりも小さな声で。
まるで囁くように紡がれた言葉の意味を図りかねて、「何のことだよ?」と聞こうとしたけれど。
顔だけこちらに向けて俺を見詰めてる牧野の笑い顔が、まるで泣き出しそうに見えたから、つい言葉を飲み込んだ。
「好きだよ・・・」
牧野が儚く笑いながら、ゆっくりと瞬きしてる。
睫毛がキラキラと光ってるように見えるのは、気のせいじゃないだろう。
俺達2人の周りだけ、時がゆっくりゆっくり流れていってるかのように感じた。
さっきまでBGMのようだったサーサーサーという雨音も、今は耳に届かない。
視線が牧野だけに引き寄せられて。
牧野の声しか聞こえなくなった。
「あたしなんかが西門さんの事、好きになっちゃってごめん。」
「牧野・・・」
なんとか絞り出した声が掠れる。
「あ、あのね、言っておきたかっただけだから。
言わないで、気持ち抱えたまま出発したら、後悔する時が来るかもって思っちゃったからさ。
別に、どうこうして欲しいとか思ってないの。
忘れてくれていいよ。
また今度会えた時は、普通に友達で・・・」
そこまで言われ、続きを聞きたくなくて、窓辺の牧野に歩み寄った。
逆に俺と距離を取ろうとした牧野の右手を捉える。
「行くなよ。」
「・・・え?」
「俺を好きなら、類を追い掛けてフランスになんて行くな。」
「べ、別に追い掛けて行く訳じゃないよ。
大学の留学制度の試験に受かったから、留学するだけで。
類はパリの大学にいるけど、あたしは地方の提携校だし・・・
それに1年だけの期間限定だよ?」
握り締めた牧野の手が、思っていたよりも小さくて華奢な事に気付く。
逃げようとするから、更にぎゅっと力を込めて手繰り寄せれば、漸く逃げる事を諦めたのか、牧野の手から次第に力が抜けていった。
互いに緊張しているのが、汗ばむ掌で分かる。
鉄パン牧野は兎も角、俺までかよ?と自分の中に残ってた純情に戸惑ってしまう。
俯いてこちらを見ようとしないけれど、逃げずに手を繋いでいてくれることが、今の俺にとっては救いだった。
「お前、1年て長いぜ?」
「西門さん離れをするのに丁度いいと思って。
1年外国にいて、必死に勉強して、色んなこと吸収して来たら、あたし・・・」
「俺の事、忘れられるって?」
返事に詰まって黙りこくった牧野。
「じゃあ、俺は?」
「俺は?って・・・ どういう意味?」
「俺はどうなるんだよ?」
「西門さん・・・?」
「そう。お前がここにいない間、俺はどうすりゃいい訳?」
「そんなの知らないよ・・・
今迄同様、綺麗なお姉さんと楽しく遊んで、男のロマンとやらを極めたらいいんじゃないの?」
俺の事を好きだってさっき言ったってのに。
こんな酷い言葉を口にする、この女は・・・
いや、身から出た錆だから仕方ないのか。
反対の手でも牧野の手を取り、向かい合わせになるように前に立つ。
それでも表情が窺い知れないから、顔を見たくて口を耳元に寄せて囁いた。
「牧野、こっち見ろよ。」
ゆっくりゆっくり牧野が俺を見上げる。
濡れた大きな黒い瞳には俺だけが映り込むから、その瞳を想いを込めて見つめ返した。
「違うだろ。
俺がお前と一緒にいたいって気持ちの話だよ。」
「・・・・・・どういう意味?
またあたしのことからかってるの?」
「馬ー鹿! こんな事冗談で言えるか!
行くなって言ってんだろ!
俺の傍にいて欲しいんだよ。
俺はお前が1年もいないここで、何したらいいか分かんねえよ。
お前が俺の見えるところで笑っててくれねえと・・・
俺は居ても立っても居らんねえ。」
こっ恥ずかしい本心を吐露したことで、顔がかあっと熱を持ってる。
こんな顔、ホントは牧野に晒したくはないけれど、今こいつから手を離す訳にはいかない。
絶対に逃せない。
きっとこいつを得る ONE & ONLY CHANCE が今この時だ。
「嘘・・・ 」
「嘘じゃねえよ。
何だって人の真剣な言葉疑うんだよ?」
「だって、だって、そんな事今迄一度だって・・・」
「そう何度も言えるかよ、こんな事。」
「西門さんが好きなのは、綺麗で色っぽいお姉さんでしょ?」
「遊び相手とマジで惚れる相手は違うだろ?
お前だって俺に惚れてんじゃん。
お前の理想のオトコって俺みたいのか?」
「あ、あたしは、好きになった人にあたしの事だけ見詰めてて欲しいの!
他の女の人にちょっかい出してるとこなんか見たくないのよ。
だから諦めようとしてるんでしょ!
西門さんは沢山の綺麗な人に愛を分け与えちゃう博愛主義者なんだから。」
俺の事好きだって言う割には、俺の上っ面ばっかみてねえか、お前?
俺が振りまいてんのは愛想。
愛じゃねえよ。
「ふーん、お前の理想は司や類みたいなオトコってことね。
あいつら、何とかの一つ覚えみたいに『牧野』『牧野』だもんな。
なら司とより戻せよ。類と付き合っちまえ。」
牧野の目がきらっと光る。
その目の奥に宿るのは怒りの炎か。
「だからあんたが好きだって言ってるでしょうが!
こんなどうしようもないちゃらんぽらんを好きになっちゃって・・・
叶わない恋ならぶつかって壊して、綺麗さっぱり諦めようって・・・」
逃がさないように握り締めてた手を解いて、すかさず牧野を腕の檻にぎゅうっと閉じ込める。
「俺の事、諦めないでよ、つくしちゃん。」
「やっ! 放してっ!」
「放さない。留学止めるって言うまで、お前はこのまま俺の腕の中。」
「何言ってんのよ。ふざけないで!」
ジタバタしている牧野の耳元にキスをひとつ。
牧野が動きを止めて立ち尽くしてる。
唇を近づけた耳に、ありったけの想いを囁いた。
「牧野、好きだ。
俺がホントに欲しいのはお前だけ。
もう他の女は見ない。
だから俺の手が届かないとこ行くな。
俺の事、信じろよ・・・」
頤に人差し指を添えて、上を向かせた牧野の目には大粒の涙が溢れんばかりに湛えられてる。
それを見ていると、俺への気持ちが溢れているようで、泣かせているっていうのに嬉しくなった。
震える唇が愛おしくて堪らない。
「そんなの・・・ 信じられる訳ないでしょうが!」
「う・・・ まあ、仕方ねえか・・・
じゃあ、今ここで誓うから。
お前の事だけ愛してる・・・」
そっと重ねた唇は熱くて、吐息まで甘やかで。
触れてるところから頭の中までじんじんと痺れてく。
あれ? 誓いの口付けって結婚式でするんだっけ?
ま、いいか。
俺はこいつとじゃないと生きてけないもんな。
ちょっと先取りって事で。
何度もキスを繰り返すうちに、いつの間にか桜子とあきらに覗かれていて。
散々からかわれて、牧野がへそを曲げたのは言うまでもない話。
__________
「ごめん、好き・・・」をキーワードに、色んなパターンのSSを書いてみよう!という企画の第1弾でしたー。
2人の恋の始まりversion。
また思い付いたら、第2弾もUPしますね~。
今日から10月!
今年もあと3ヶ月で終わりってマジですか!?
何か意味も無く焦ります・・・



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