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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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It's time to xx 前編

本日で拙宅開設より1年半となりました!(ちょっとハンパだわね・・・)
それに合わせて「萌えセリフ祭り2015」開幕しまーす!
6夜連続で3つのお話UPを予定しております。
今夜と明日は「総二郎に言われたい台詞」第1位でした、「俺の全部、お前にやるよ。」を使ったお話です。
大学生の総二郎とつくし。
総二郎の片想い・・・というシチュでございますー。


__________


俺はタイミングを逃し続けてるんだと思う。
気のいいダチというポジションから脱却するタイミング。
あの小さな手を捕らえてこちらに引き寄せるタイミング。
澄んだ瞳を真正面から見詰めて好きだと告げるタイミングを。


放っておいても俺の周りにはちょっと視線を投げかけるだけで吸い寄せられてくるオンナノコが絶えなくて。
そんな女たちの扱いはお手の物。
いつ、どんな風に笑いかけりゃ俺の手に落ちてくるのか・・・とか。
後腐れのない軽ーいオツキアイの仕方とか。
朝が来て独りになった時に、前夜の事はきれいさっぱり忘れ去る記憶消去法とか。
そんな事には長けてるのに、あの女の事となると途端に分からなくなる。

どうしたらあの笑顔を俺だけのものに出来るんだ?
どうしたらあの瞳には俺だけを映せる?
どうしたらあの唇は俺だけの名前を紡ぐようになるのか・・・?

傍から見たら俺達は高校時代からつるんでる、腐れ縁のグループなのかもしれない。
類がいて。
あきらがいて。
時々桜子がいて。
そしてその中心にはいつも牧野。
男3人、女2人の変則的な組み合わせ。
誰かと誰かが付き合ってる訳じゃない。
ただ4人がそれぞれのポジションで牧野を大事に思ってるという共通項がある。
牧野自身がそれに気付いているのかどうかは微妙だけど。

牧野の笑顔を見ていたいだけ・・・なんてさらりと宣う、天使のような類。
牧野にとって俺はお兄ちゃまなんだろうよ・・・と随分大きな3人目の妹を甘やかすあきら。
何をおいても『先輩第一主義』の牧野教の妄信的信者・桜子。
そして俺は・・・
随分前からこの『もはや罪だ!』と言える程鈍感で、純真無垢、鉄パン穿きっぱなしの牧野つくしという女に惚れているのに、何も行動出来ない、ビビりな男に成り下がってる。
そのせいで、いつもあきらに揶揄われ、桜子は滅法感じ悪い笑い顔で俺を見てくる。
類からは「もし牧野の笑顔曇らせるような事したら、総二郎でも容赦しないよ、憶えといて。」なんて警告を受けていた。
あいつ等のそんなプレッシャーが多少足枷になってるとしても・・・
一番問題なのは、俺が思い切って一歩踏み出せないことなんだ。

長年培ってきた『ダチ』という立場を棄て去って、新たな立ち位置を牧野の隣に築くにはどうすりゃいい?
俺は、男のロマンとか豪語してきたけど、簡単に落ちてくるお手軽な女ばかり選んでただけで、本気で女口説いたことがないんだ。
特に鉄パン穿いてる女なんてな。
面倒臭いだろうと敬遠してたし。
だからこの分野は圧倒的な経験不足・・・
俺の辞書に載ってないんだよ、真っ新な女を落とすテクニックは。

土曜の朝。
秋晴れで雲一つないベイビーブルーの空が広がっているのを窓越しに見遣る。

あいつは今日何するつもりかな?

こんな空の下、爽やかな風に吹かれてきゃらきゃらと笑う牧野は、きっと俺の目を楽しませてくれる。
そう思ったら、電話を掛けずにいられなくなった。

「はい、もしもし?」
「牧野?」
「お早う、西門さん。どうしたの? なんかあった?」
「いや、どうもしないけど・・・
お前、今日何か予定あるの?」
「え? 今日? ううん、お天気いいから洗濯してるとこ!
干し終わったら、近所のサイクリングロードに自転車漕ぎに行こうかと思ってるの。
きっと気持ちいいからさー。」
「ふうん・・・ そっか。
じゃあそのサイクリング、俺も付き合うわ。
何時にお前んち行けばいい?」
「なあに? 西門さんも自転車漕ぎたくなっちゃった?
いいよー、あたしのお気に入りコース、一緒に連れて行ってあげる!
ちょっと支度するから・・・
11時でどお?」
「了解。じゃ、後でな!」

俺の下心を気取られることなく、あっさりと取り付けられた、2人だけの約束。
あいつがこれをデートだとは思ってない事は明白だが、俺の胸はときめいてく。

チャリか。
ちょっと整備しないと乗れないだろうな、久し振りだから。

ガレージに向かう足取りは軽く、口元はついつい緩んでく。

そして手入れしたチャリを転がして、約束の時間よりちょっと早いくらいに牧野のアパートの下に着いた。

女の子を待たせないってのは俺の流儀だけど・・・
ワクワクが抑えられなくて、早く来ちまうってのは、遠足に行く小学男子みたいじゃねえの?

そんな事に思い至り、自分の子供っぽさに溜息を吐きつつ、空を見上げる。
やがてひとつの部屋のドアが開き、騒々しい女が現れた。

「あ、西門さん、もう来てたんだ!
ちょっと待っててー! 今行くからー!」

ぶんぶんとこちらに手を振り、部屋の中から大荷物を持ち出して、よいしょと肩に掛けて。
リズミカルに階段を駆け下りて来た牧野が、俺の前にすとんと立った。

「お待たせっ! あれ? 西門さんの自転車は?」
「あー、あそこ。」

スタンドが付いていない俺のチャリは、牧野のアパートの壁に立て掛けてある。

「え? あれ、籠付いてないの?」
「クロスバイクだからな。
ドリンクホルダー位しか付いてねえ。」
「うーん、じゃあしょうがないから、あたしの自転車の籠に無理矢理入れるしかないよね・・・」

だって俺のチャリは、国際的な自転車レースでも入賞者出してるメーカーの、スポーツタイプの最高級モデルだぜ。
フレームはカーボン使ってて、軽量化されてんの。
だからスタンドだって泥除けだって付いてねえんだ。
荷物をごっそり載せる籠だなんて付いてる訳がねえよ。

牧野は肩に担いでた大荷物を、駐輪場に停めていた自分のママチャリの前籠に苦心して詰め込んでる。

「何でサイクリング行くのにそんな荷物要るんだよ?
少し減らせば?」
「えー、ダメっ! 全部必要なんだもん!
んー・・・ ほら、入った! ね? じゃ、行こっか?」

振り返った牧野の小首を傾げたにっこり笑顔に、ハートをズキュンと撃ち抜かれ、「お、おう・・・」と慌てて返した。

「西門さん、サイクリングコースまでの道、知らないでしょ?
あたしが先走るから付いてきてー!」

ずっしりと重たそうな変速無しのママチャリをぐいぐい漕いで行く牧野の背中・・・ というか左右に揺れてるヒップを見ながらの道行き。

こ、これは、蛇の生殺しっつーか、絵に描いた餅っつーか・・・
何だろう、この胸に広がるモヤモヤ感・・・
いや、ムラムラ感か?

ちょっとした勾配がついた道になると、途端に牧野のスピードが落ちる。
こっちは10段変速だから、よっぽどの急坂じゃない限り余裕の走りが出来るんだけど。

あいつ、頑張ってんなあ。
ホント、こういう姿って牧野っぽいよな。

サラサラと黒髪を靡かせて、懸命に漕いでいる牧野の後姿ばっかり見ている俺は、幸せな気分でペダルを踏み込んでいく。


__________


という訳で、萌え台詞まだ出て来ませんでしたっ。
明日までお待ち下さい!

お友達のりく様(@恋花-koibana-)と共催しています「萌えセリフ祭り2015」。←タイトルショボくてスミマセン(^_^;) やっつけ仕事です!
りく様のお部屋では、同じ台詞を使った鷹×瑠璃のお話が公開されますので、良かったら読み比べてみて下さーい♪


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It's time to xx 後編

「萌えセリフ祭り2015」開幕中です!
6夜連続で3つのお話をUP予定。
今夜は「総二郎に言われたい台詞」第1位でした、「俺の全部、お前にやるよ。」を使ったお話の後編です。


__________


大きな川沿いのサイクリングロードは、視界も広がって、向かい風が肌を撫でていくのが清々しさを呼ぶ。
川縁に向かってなだらかな階段が続いているところで、牧野は自転車を止めた。

「ここで休憩しよっ!」

重たそうな荷物を運んで来た訳だから、こんな爽やかな陽気でも汗をかいたんだろう。
そう言って牧野は額に滲んだ汗を手の甲で拭ってる。
サイクリングロードの脇にある柵に自分のチャリを立て掛けると、その隣に牧野もママチャリを停めた。
前籠からうんうん言いながら大きなバッグを引っ張り出しているから、俺に頼りゃあいいのに・・・と胸の内で思いながら牧野の手から取り上げる。
予想よりずしりと重みを感じるバッグ。

「え? あ、ありがと・・・」
「重っ! つくしちゃん、これ何入ってんだよ?
すっげー重たいじゃん。」
「えへへ。色々入れたら重たくなっちゃった。
大丈夫、帰りは軽くなるよ!」

そう言って牧野がバッグの端から取り出したのは、レジャーシート。
それをコンクリートの階段の上に敷いている。
周りにもそうやって、休みの日の憩いのひと時を過ごしている人達が何組かいた。

「西門さん、ここ座ろ!」

先に腰を下ろした牧野が、手を少し後ろに突き、目を瞑って顔を空に向けている。

「うーん、気持ちいー! お日様、あったかーい!」

身体中で柔らかな秋の日の日差しを受け止めて、幸せそうに微笑んでるから、ついその表情に見惚れた。

何でこいつはこんなに満ち足りた顔して笑うんだろうな。
生活に余裕もなくて、バイトしてばっかりで。
親も頼りないから、何でも自分でやらなきゃならなくて。
普通に考えたら、決して恵まれた環境にあるとは思えないのに。
金で片がつくものは何でも手に出来る俺より、よっぽど幸せそうに見える。

ぱちりと目を開けた牧野が「座らないの?」と怪訝な顔で俺を見上げるから、隣に並んだ。

「西門さん、お腹減ってる?
あたし、ぺっこぺこ!」

バッグをがさごそやって、中から色々取り出し始めた牧野。
俺と牧野の間には、様々なものが並べられていく。
まずはランチクロスに包まれた弁当箱と、ウェットティッシュが現れて。
次には飲み物が入ってるサーモマグが2つ。
「ゴミはここだよ!」なんて言いつつ、ゴミ袋までスタンバイさせてる。

「昼飯、作って来てくれたのか?」
「ウチにあるもので作ったから、お口に合うかどうか分かんないけどね。
ほら、空腹は最高のスパイスって言うでしょ。
お腹減ってたら、食べられるんじゃない?」

弁当箱の中から握り飯を一つを手に取ってぱくりとかぶりついたら、中身はマヨネーズで和えたツナだった。

「ふうん、初めて食ったけど・・・ なかなかイケるかも、これ。」
「別に無理して褒めなくてもいいよ。」
「いや、マジで。」

そう言ってニヤリと笑い流し目を送ると、ぷいとそっぽを向いて、自分の分を黙々と食っている。
照れてんのか?と思ったら可笑しくなって、色々食べる毎に賞賛の言葉を送っていたら、とうとうトマトの如く真っ赤になって、「もうやめてよっ!」と怒られた。

庶民のメシ、貶したってへそ曲げるんだろうに、褒めても怒るだなんて、面白い奴。

「美味いモン、美味いって言って何が悪いんだよ?」
「わざとらし過ぎるんだもん、西門さんってば。
もう黙って食べてよー!」

2人で陽だまりで食う手作りランチは、ままごとの様でどこか擽ったくて。
牧野が隣にいるということ、牧野が俺の為に作ってくれたということが、じわじわと胸に沁みてくる。
全部綺麗に食べ終わって、腹がいっぱいになった俺は、コンクリートの階段にごろりと横になった。
硬いけれど、日差しで温められたそこは不思議と心地いい。

「あー、食った、食った。ごちそうさん、牧野。」
「お粗末様でした。
ねえ、西門さん、食べてすぐ横になると牛になるよ!」
「なるかよ。寧ろ消化を助けるくらいだろ。」
「ふうん、そうなんだ?」

牧野は目を細めて、くすくすと小さく声を立てて笑ってる。

何を想像してるんだ?
牛になった俺の姿なんか思い浮かべたりしてねえよな?

「お前っていっつも笑ってんのな。」
「え?そう?」
「ほら、今だって。」
「うーん、だってさ、あたしってなーんにも持ってないでしょ。
貧乏だしー、美人でもないしー、彼氏だっていないしー、特に何かに秀でてる訳でもないし。
だからと言って、落ち込んでたり、しょぼくれた顔してたって、何にもいいことないじゃん。
でも笑ってたら気持ち明るくなるし、楽しくなってくるもん。
元気でいられる。
笑ってるのって大事だよね。
何は無くとも笑顔!」

そう言って、俺に同意を求める様に見詰めて来た。
その眼差しは優しいのに、俺の胸に突き刺さる。
身体の中をキーンと何かが走り抜けた。

何も持ってないなんて間違いだ。
お前は俺に無いものいっぱい持ってるよ。
俺が望んでも手に入らないものをさ。
だから俺はお前に惹かれてるんだ。

身体を起こして、牧野の手をくいっと捕まえた。
突然の事に驚いた顔して目を瞬かせてる牧野を見詰め返す。

「じゃあさ・・・ 俺の全部、お前にやるよ。」
「え・・・?」
「つくしちゃんが何も持ってないって言うなら、俺の全部、お前にやるよ。
だからさ・・・ 代わりにお前を俺にくれないか?」
「・・・・・・に・・・しかどさんの全・・・部・・・?」
「そ。俺の全部。
お前の事好きだって気持ちとか。
お前の事独占したいって欲とか。
今お前に触れてるこの手も。
全部、お前のもの。」

押し黙ったまま固まってる牧野の足元に跪いた。
そっと頬に指を伸ばすと、触れた瞬間にぴくりと震えるのが、あまりに初々しくて、可愛くて、こちらの胸も甘い痛みで震える。
ゆっくりゆっくり頬を撫でた。

「牧野・・・」
「・・・・・・」
「好きだ。」
「・・・っ!」

そっと掠めるだけのキスをしたら、きゅっと目を瞑った牧野。
暫く経ってゆっくり瞼が開いてく。

牧野が笑顔でいられるように、俺も笑っていよう。
これからずっと、ずっと。
だから俺の事拒否るなよ、牧野。

そんな願いを込めて微笑みかけた。


__________



総二郎の告白Ver.をお届けしました!

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The only light in the darkness 前編

「萌えセリフ祭り2015」開幕中です!
6夜連続で3つのお話をUP予定。
2つ目のお話の今夜は「総二郎に言われたい台詞」第2位でした、「・・・なんか俺ばっか好きみたいじゃねえ?」を使ったお話です。
大学4年生と、社会人1年生の2人です。

__________


『西門さんといる時間は、独りでいる時より淋しいの。』

牧野が俺を振った台詞。
半年経っても俺の頭の中をぐるぐる回って、消える事がない。

言われた俺の胸を抉ったこの言葉は、言った牧野の方も傷ついていたんじゃないのか?
牧野にそう言わしめてしまったのは、誰でもない、俺自身だったってのに。
その事にやっと気付かされた。


その言葉を言われた時は、振られたショックでその真意もよく解らず、勢いで「じゃあ、もっと牧野を幸せにしてくれる男でも探しゃあいいじゃん。」なんて強がりを言って別れたけど。
牧野という唯一無二の存在を手放してしまった俺は腑抜けになった。
隣にいてくれるのが、その笑顔が俺に向けられているのが当たり前なんだと驕ってた。
でもそれが無くなったら、息をしたって空気がまともに肺に入ってこなくて息苦しくて。
飯は何を食ったって不味いから食いたくなくて。
自分を取り巻く世界は、墨で塗り込められたように真っ暗な闇になった。
その闇に絡め取られて身動きが取れない。何も手につかない。
そんなだから仕事もするにはしても失態ばかりで、とうとう親父からも大目玉を食らった。

「当面対外的な場には出るな!
全部修三郎に肩代わりさせる。
まともに茶が点てられるようになるまでは謹慎しておけ!」
「・・・申し訳ありません。」
「己を見つめ直して、今後どうしたらいいのかしっかり考えるんだな、総二郎。
次期家元たるものが、こんな事でどうする!
暫く、京都にでも行ったらどうだ?
今のお前にここで出来ることなどありはすまい。」
「・・・少し考えさせて下さい。」

京都。
宗家所縁の禅寺に籠れと親父は言ってる。
でもそんな所に行ったからとて、俺は悩みから解き放たれたりすることはないだろう。
この不甲斐無さの原因はただ一つ。
牧野なんだから。

流石に謹慎中の俺と外で会うのはまずいとでも思ったんだろう。
あきらと類が邸までやって来た。

「よう、総二郎。」
「ああ・・・」
「ふーん、死んだ魚みたいに濁ってるね、総二郎の眼。」

一体どんな挨拶だよ、類。

「ほっとけ!」

ぷいと横を向いた俺をよそに、勝手にソファに座って寛ぎ始めた類と、俺を気遣わし気に見詰めるあきらがいて。
あきらのその視線まで俺を居た堪れない気分にさせるから、それから逃げるために部屋の隅にあるキャビネットの前に立った。
適当なウイスキーの瓶とグラスを出して、冷蔵庫からはロックアイスを取り出す。
テーブルの上にどんと載せたら、あきらが器用な手つきで3つのグラスにウイスキーのロックを作って、各々の前に並べた。
類は何も言わずにそれを舐め始め、あきらは苦笑しながら俺を見て、ちょっとそれを掲げてから飲んでいる。
俺は何も飲みたい気がせず、置きっぱなしにして、ぼんやりと氷が融けてく様を見ていた。

「ねえ、総二郎、何やってんの?」
「何って・・・ 俺は謹慎中なんだよ。」
「それはもう知ってる。
そうじゃなくて、何一人で傷ついたって顔して、ドツボに嵌ってんのかって聞いてんの!」
「はあ・・・ 類、ほっといてくれよ。
俺は今そんなこと話す気分じゃ・・・」

カツンと音をさせて持っていたグラスをテーブルに置いた類が、俺に冷たい視線を投げ掛ける。

「牧野が傷ついてないとでも思ってんの?
あんな牧野・・・ 見てらんないよ!
全部総二郎のせいでしょ。
牧野の事、あんな風に切り捨てるなら、総二郎は最初から牧野と付き合うべきじゃなかったんだ!」
「おい、類、言い過ぎだろ!」
「・・・切り捨てるだと?
牧野が俺を振ったんだ。
俺が捨てられた方だろうが!」
「本気でそう思ってんの?
じゃあなんで半年経ったって、牧野はあんなに辛そうにしてるんだよ?
大丈夫、大丈夫、元気だよって口では言っても、弱って今にも泣きそうな顔して笑ってる牧野を見てないから、総二郎はそんな事言えるんだ!」

類の言葉に胸がずくんと痛んだ。
それと同時に、微かに嬉しいという気持ちが身体の奥から沸き起こる。

牧野、辛そうにしてんのか・・・
俺の事、ちょっとは想ったりしてくれてるんだろうか?

「いや、最近牧野と類と俺の3人で飯食ったんだよ。
頑張ってる牧野に美味いもの食わせてやろうって類が誘ってな。
仕事もやっと慣れてきて、大変だけど遣り甲斐あるって言ってた。
牧野、笑ってはいたけど・・・
でもやっぱりどこか無理してるみたいに見えてな・・・」

牧野はこの春、短大を卒業して幼稚園教諭になった。
TOJの時に子供と触れ合った楽しさが自分の中に残ってた・・・というのがその理由で。
就職を決める時、俺は東京にいて欲しいって言ったけど、隣の県に自分のやりたい事と合ったカリキュラムの幼稚園があるからそこで働きたいと言って譲らなかった。
それも俺達の間に溝を作った一因だった。
隣の県なんて車で行きゃすぐだ。
だけど幼稚園で働くってことは、平日は朝早くから夕方まで仕事で。
平日会うことはほぼ不可能。
土日はどっちかっていうと俺に仕事が入るから、会うチャンスがぐっと少なくなる。
それでなくても短大の間も幼稚園での実習、ピアノや歌のレッスン、出さなきゃならないレポートの山のせいで、俺達はまともに会えてなくて・・・
しばしば俺達はそのことで喧嘩をしていた。

「・・・牧野、元気なかったのか?」
「うーーーん、そうだな。俺の目にはそう見えた。」
「だ・か・ら! 全部総二郎のせい。」
「何でそうなるんだよ!?」
「総二郎がちゃんと牧野の気持ちを考えてないから、牧野を泣かす羽目になるんだ!
牧野は『あたしと西門さんは遅かれ早かれお別れする運命だったんだからこれで良かったんだよ。』って言ったんだよ。
意味分かる?
どうしてそんな風に牧野に思わせた?
牧野を幸せにしてくれるんじゃなかったの?」

そんな馬鹿な・・・
俺はそんなつもりなかったんだ。
牧野と将来一緒になりたいって思ってたんだ。
だからこそ東京に残って欲しいって言った。
行く行くは西門に入ってもらえるように、まずは稽古に通ってもらって、徐々に慣れてもらいたいって。
親父やお袋にすぐに分かってもらえなくても、何年掛けてでも説得するつもりでいた。
俺には牧野しかいないって言い続けようって思ってたのに。
でも俺達は二十歳になったばかりのひよっこと、家業を手伝っているとはいえ大学も出てない脛齧りの若造で。
将来の約束を交わすには、まだ確かなものを手にしていなかったから、何も言ってやれなくて・・・

「俺は・・・
牧野が、俺といる時間は独りでいる時より淋しいなんていうから、俺じゃ駄目だって思って・・・」
「総二郎は、そんなこと言った牧野の気持ち考えたことあった?」
「考えたよ。死ぬ程考えた。
でも分かんなかったんだよ・・・」
「俺に分かってることが分からないなんて、やっぱり総二郎は牧野の相手として不適格ってことだね。
じゃあ、牧野は俺がもらうから。
もう二度と牧野に近付かないで。」
「類っ!」

俺の呼ぶ声を無視して、類は部屋を出ていこうとしていた。
あきらがそれを追おうと立ち上がる。

「総二郎、その気があるならお前達もう一度話し合えよ。
2人ともまだお互いのこと想ってるようにしか見えないよ、俺には。
類のアレは、ほら、お前を奮起させる為のハッタリだと思うぜ。」

パチリとウインクひとつ残してあきらも帰って行った。
見送りに出る気すら起こらず、部屋に1人残った俺は、目を閉じて牧野の笑顔を思い浮かべる。
胸に沸き起こるのは牧野への未練と、抑え切れない熱い想い。

牧野・・・ ホントにまだ俺の事想ってくれてんのか?
俺は・・・ 牧野の事しか考えらんねえよ。
考えて、考えて、もう気が狂いそうなんだ。


__________


キリが良いところで切ったら、いつもより増量にー。
ま、いっか、祭りだから!(笑)
類がこんな事を言うのはー、総二郎を焚きつける為というよりもー、つくしの幸せを何よりも願ってるからですよねー(笑)
実際は相当イライラしてると思いますー。
そこをうまい事取りなすあきらきゅん、いつもながらにいい人であります!
そして今夜もまた台詞出て来ず・・・(^_^;)
明日をお待ち下さいね!

お友達のりく様(@恋花-koibana-)と共催しています「萌えセリフ祭り2015」。
りく様のお部屋では、同じ台詞を使った鷹×瑠璃のお話が公開されますので、良かったら読み比べてみて下さーい♪


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The only light in the darkness 後編

「萌えセリフ祭り2015」開幕中です!
6夜連続で3つのお話をUP予定。
2つ目のお話は「総二郎に言われたい台詞」第2位でした、「・・・なんか俺ばっか好きみたいじゃねえ?」を使ったお話。
今夜はその後編です。

__________


兎に角牧野に会わなけりゃ・・・

そんな一心で、邸を飛び出した。
逸る気持ちで車を走らせる。
一刻も早く牧野の元へ・・・と、それだけを思ってハンドルを握ってた。
折しも時刻は夕方の帰宅ラッシュ。
道路は混み合い、思ったようには進めない。
それでまた俺はじりじりと焼ける様な痛みを感じつつ、ハンドルを握り締め、牧野を想った。


『西門さんといる時間は、独りでいる時より淋しいの。』

あいつの言葉。
何で2人でいられる時の方が、独りでいる時より淋しいなんて言ったのか、俺は全然分かってなかった。
俺じゃダメなんだって言われてるんだと思った。
たまにしか会えないなら、会えた時は嬉しい筈だ・・・って思い込んでたのに、そんな事言われたから。
だって俺は牧野に会えた時はすっげえ幸せだったのに、牧野にとってはそうじゃないなんて、受け入れがたい言葉で・・・

あいつが俺を見てぱあっと顔を輝かせたり、くるくると表情を変えながら会えない間にあったことを話してくれるのを見てるのが本当に好きだった。
喧嘩している時でさえ、あいつの目がきらっと光って、俺に真剣にぶつかってくるのが、愛情の裏返しなんだと、心のどこかで嬉しく思えて。
だから、俺に危機感はなかった。
そんな牧野と対峙できるのは、俺だけの特権なんだとすら思ってた。
だって女とマジにやり合うだなんて、牧野とだけ。
それまでの俺は、多少の事はのらりくらりとかわして、面倒が起きたらすぐに携帯のアドレスと電話番号消して、あっさりお別れ。
そうやって誰とも深く係わっては来なかった。
でも・・・牧野とは何でも言い合ったり、笑い合ったり、飾らない自分を曝け出せる。
牧野が俺を変えたんだ。
あいつは俺の知らなかった扉を次々と開けて、新しい世界を見せてくれた。
俺にとってかけがえのない存在。
世界にたったひとり、俺の心を揺さぶる女。
だからあいつにとって自分もそうありたいと、そんなことを願ってやまなかったけど・・・
果たして俺は牧野に何をしてやれてたんだろう・・・?
いつか俺に縁談が決まったら別れる、終わりの見えた関係。
そう思いながら俺の隣で笑ってた牧野は、俺の知らない所で、どれだけ哀しい顔をしていたんだ?
明るい表情の裏で、辛い思いを圧し込めて、それを俺に悟られまいと、ひっそり涙していたんだろうか?
俺は・・・ 何でもっと、牧野の気持ちを分かってやろうとしなかったんだろう・・・

やっと牧野が住む街に辿り着いたのは、すっかり日も落ちて、辺りが真っ暗になった頃だった。
住所は知っていたけれど、一度も来たことはなかった、牧野の暮らす場所。
そこは小奇麗な2階建てアパートで、部屋番号から察するに、2階の端が牧野の部屋だ。
カーテン越しにぼんやりと灯りが漏れている。

あそこに牧野がいるんだ・・・

そう思って窓を見上げる。

あきらはああ言ったけど、牧野は本当に俺の事をまだ想ってくれてるんだろうか?
あの部屋のドアの向こうには、牧野だけじゃなくて、新しいオトコまで一緒にいたりしたら、俺はどうすりゃいい?
もしそんな事あったら、独りで思い詰めて、のこのこやって来て、とんだピエロになっちまう・・・

ポケットの中の携帯に触れてみた。

電話・・・ してみるか・・・?
いや、俺だと分かったら取ってくれないかもしれない・・・
いきなり押しかける方が話せる可能性がある・・・?

思い切って部屋のドアの前に立ち、チャイムを押した。
中から「はあい!」とあいつの声がして、ドアがかちゃりと開いた。

「西門さん・・・」

そこには気が狂わんばかりに想い続けていた牧野が、目を丸くして立っていた。

「・・・どうしたの、こんな所まで。」
「え・・・ いや、あの・・・俺、お前と話したくて・・・」

少し痩せたように見える牧野がスッとドアを大きく開けた。

「そんなとこじゃ寒いから、中、入って?」

そう言われて通された牧野の部屋は、初めて来たのに懐かしい雰囲気が漂う。
リビング・・・とは名ばかりの、全てが詰め込まれた洋室には、見覚えのある家具が置かれていた。
いつも2人で向かい合って飯を食っていた座卓の前に座る。

「あ、お茶・・・」
「いい、要らない。ちょっと座ってくれないか?」

すんなり俺の言う通りに向かい側に腰を下ろした牧野。
でも俺の方は向いてくれない。

「どしたの、急に。ビックリするじゃん。」
「ああ・・・ お前に話したいことあって。
電話してからくりゃ良かったんだろうけど、そんな事すら思い付けないで、車走らせて来ちまった。」
「・・・え?」

やっと俺と目を合わせてくれた。
ぱちりぱちりと瞬きしてる黒目がちな瞳。
それを見てるだけで胸から何かが溢れてくる。

「お前、痩せた?」
「分かんない。体重計持ってないから。
今度園でこっそり測ってみようかなぁ。」

そう言ってふふっと小さく笑った。
牧野の笑い顔が見れる。
それだけで、俺の真っ暗な心の中に一筋の光が射してくるかのようだ。

「そんな事聞きに来たの? 変な西門さん。」
「違う・・・ 違うんだ、牧野。
・・・俺、やっと分かったんだよ、あの言葉の意味。
『西門さんといる時間は、独りでいる時より淋しいの。』 って牧野、言ったろ?
ちゃんと言葉にしてやらなかった俺が悪かったけど・・・
俺は牧野と将来一緒になりたいって思ってたんだ。
周りに決められた縁談なんかじゃなくて、俺が選んだお前とこの先ずっと生きて行こうって。
ちゃんとお前を迎えられる状況が整ったら、そう言おうって決めてた。」
「・・・そんなの無理だよ。あたしなんかじゃ・・・」
「無理じゃねえよ。
俺がそうするって決めたんだ。
何年掛かったって絶対にお前の事西門に受け入れさせてみせる。
だって俺は・・・お前しか好きにならない。
どんな家柄の女が用意されたって、家の為にその女と結婚しろって言われたって、俺の気持ちは揺らがない。
俺の隣にいて欲しいのは、牧野、お前だけなんだよ!」

「嘘・・・」
「嘘じゃねえよ。
この半年、お前が俺の前からいなくなって、俺はお前がどれ程大切か思い知ったんだ。
だから、もう一度、俺の事信じてくれないか?」
「そ・・・んな・・・」

牧野の顔がくしゃりと歪んで、目からぽろぽろと涙が溢れ落ちる。
つい躙り寄って、自分の腕の中に閉じ込めた。
牧野の温もり。
懐かしい香り。
嫋やかな身体が俺の胸に重なる感触に胸がいっぱいになる。

「牧野・・・」

俺の肩口に顔を埋めてしゃくり上げてる牧野の背中をそっと撫でた。

「なあ、なんとか言ってくれよ。」

そう話し掛けても意味のある言葉は聞こえて来ない。
牧野の気持ちが見えなくて。
俺の勝手な気持ちを押し付けているのだろうかと不安になる。

「・・・なんか俺ばっか好きみたいじゃねえ?
俺・・・ 気付くの遅過ぎたのか・・・?」
「そっ・・・ そんな事・・・ ないっ・・・!
あ、あたしだって会いたかった・・・
忘れたくたって、ぜ・・・んぜん忘れられなくて・・・
会いたい、声聞きたいって・・・」

もうそれ以上は聞いていられなかった。
その言葉だけで、俺の心が眩い光でいっぱいになる。
牧野も俺を想ってくれていた事が嬉しくて、華奢な身体が壊れんばかりにきつく抱き締めた。

「ありがとう、牧野・・・
ありがとう・・・」

こんな俺の事を愛してくれてありがとう。
二度と離れない。
淋しい思いはさせない。

そう思いながらいつまでも牧野を抱き締めてた。


__________


2人の仲直りVer.でしたっ!

お友達のりく様(@恋花-koibana-)と共催しています「萌えセリフ祭り2015」。
りく様のお部屋では、同じ台詞を使った鷹×瑠璃のお話が公開されていますので、良かったら読み比べてみて下さーい♪
ドキドキ胸キュン必至です!


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Everlasting 前編

「萌えセリフ祭り2015」開幕中です!
6夜連続で3つのお話をUPしています。
今夜はその3つ目、「総二郎に言われたい台詞」第3位でした、「(バックハグでの)愛してる。」を使ったお話です。
ラブラブな2人をどうぞ!

__________


「ど、ど、ど、どーしよーーーーー!」

ない! ナイ!無い!
指輪がない!
普段は着けないことにしてるから、何時も仕舞っておくジュエリーボックスに入ってるはずなのに。
特別な日にしか身に着けない、特別な指輪。
大好きなあの人に貰った婚約指輪。
「今日は結婚記念日だから、夜は外で食事しよう。」って言ってくれたから、ちょっとお洒落してあの指輪をして出掛けようって思ったのに。
どこを探してもない。

前に着けたのはいつだったっけ?
誰かの結婚式だった?
それとももっと前の去年のあたしの誕生日?
クリスマスディナーに出掛けた夜?

考えに考えて、ありとあらゆるバッグの中や、服のポケットを探っても出てこない。
あり得ないとは思うけど、どこかにコロンと落っこちてることを期待して家中を大掃除した。
ひょいっと外すとしたら水回りがアヤシイかと思って、キッチンと洗面台の周りは特に熱心に片付けてみる。
置かれてる物一つ一つ動かして、後ろに隠れてないかとの願いを込めて覗き込んで。
でもやっぱりどこにも見付からない。
外はそろそろ薄暗くなって来た。
お日様の光が弱まっていくと自分の気持ちもどんどん暗くなり・・・
外が真っ暗になった頃には絶望的な気分になって、リビングのソファの前にへたり込んだあたし。

「どーしよーーーーー!」

泣きたくなって思わず座面に突っ伏した。

何であんな大切な物失くしちゃうの?
あたしのバカ、バカ、バカ!
あの人になんて言ったらいいのよー?
ああ、もうホントに泣いちゃいそうだ・・・

目の淵にじわじわと熱いものが込み上げてきて。
もう堪え切れない!
ううう・・・と声を上げて泣いちゃおうかな・・・と息を小さく吸い込んだ時、背中からふわんと冷たい空気と、しっかりした腕に包まれて、思わず背筋がぴくんと跳ねた。

「ただいま。
こんなとこで転寝しちゃってんのか、俺の可愛い奥さんは。
風邪引くなよ?」
「・・・ふぇ?」

優しい腕があたしを囲ってて、掌はそっとあたしの肩から腕を摩ってくれてる。

「ほら、ちょっと冷えてんじゃん。
もう一枚着ろよ?」
「・・・ん。」

そう言われた後、腕を解かれて、背中にくっついてた安心できる存在感も離れてった。
ちょっと淋しいな・・・ もうちょっとこのままでいたいのに・・・なんて思った自分に赤面する。

バカつくし! 今はそれどころじゃないんだってば!
やっぱりこれは正直に言うしかないよね?
だってこれだけ探してもないんだし・・・
一生隠しておけるようなことじゃないんだもん・・・

「あ、あのね・・・」

意を決して正直に告白しようと、後ろを振り返ろうとした時、また背中から抱き込まれた。

「ほら。」

目の前に突き出された大きな握り拳。
ゆっくり開いてったその中には、ずーーーっと探し回ってた、大事な大事な指輪が光ってた。

「あーーーーーっ、これっ・・・!」
「今日、これ嵌めてメシ行こうぜ。
あの日の2人に戻って。
その為にショップで磨いてもらってきた。
ほら、新品みたいだろ?」

あたしは、あたしは、今日1日これを探し回ってたのよ!
どうしよう、どうしようって、1日中泣きそうな気分で焦ってたんだから!
だけど・・・ これ、あたしの為にしてくれたことなんだよね・・・
文句言えないじゃん・・・

「・・・うん、綺麗。ありがと。」

外から帰ってきたせいだろうか?
いつもと違って、あたしの手よりちょっとだけ冷たく感じられる手が優しく左手を持ち上げてくれて、薬指にすすすっとひんやりした銀の輪が通ってく。
煌めきが載せられたリングはすぐにあたしの薬指に馴染んで、自然と視線はそこに引き寄せられた。
あってよかった・・・とか、やっぱりこの指輪は綺麗だな・・・とか。
あたしの為に考えてくれて嬉しい・・・とか、いろんな気持ちが駆け抜けてくけど、兎に角圧倒的にほっとして、身体中の力を抜いて後ろの心休まる存在に凭れる。
くすりと小さな笑い声が頭の上から降ってきて、ぎゅうっと力を籠めて抱き締められた。

「愛してる。」
「・・・ん。」

その言葉にきゅんと胸に甘い痛みが走る。
改めてじわじわと湧いてくる幸せを噛み締めた。

この腕があたしを護ってくれる。
だって約束してくれたもの。
あたしの事、一生護ってくれるって。
この人さえいてくれたら、あたしはいつだって幸せなの。

そっと目を瞑って、その幸せの源をあたしもぎゅっと抱き締めた。


__________



ちょっと短いけどキリがいいので今夜はここまで!
拙宅では普段書かれない、結婚している2人(笑)
幸せそうですなあ。
でもまだ前編なのねん。
後編に続く!

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