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hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
https://potofu.me/hortensia

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Hot cocoa

Milk tea」を他のキャラに替えるとどうなるの?とのお声を頂きました。
うーん、同じ話になっちゃうんじゃないの?と思ったんですけど・・・
同じ話じゃ意味ないからね・・・
無理矢理ひねり出してみましたよ(苦笑)


__________


寝つきがよくて、一度寝たら全然起きない。
そんなあたしが、夜、よく眠れなくなったのは、大学に入って、一人暮らしを始めた頃からだ。
どんなに講義やバイトで疲れて帰って来て、吸い込まれるように布団に倒れ込んで寝ても、夜中の2時か3時頃に、怖い夢を見て、目を覚ますようになった。

夢の中ではいつも何か黒いお化けみたいなものに追い掛けられている。
腕や足をひやりとした感触の何かに掴まれ、払い除けたくても出来なくて。
パニックになって、恐怖の絶頂で叫び声を上げそうになった瞬間に目が覚めた。
目を開けると、自分の部屋にいるのに気付いて、心底ホッとする。
それでも心臓はばくばく鳴りっぱなしで、カラカラに乾ききっている口ではあはあと息を繰り返す。

大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。

おまじないのように自分に言い聞かせているうちに、少しずつ動悸が治まり、身体の緊張が解けてくる。
やっと動かすことが出来るようになった身体を起こして、枕元に置いてある水を飲んで、再び布団に潜り込んだ。
また怖い夢を見てしまうかもしれない・・・と思いつつ、睡魔に負けてもう一度目を瞑ると、程無くして意識は闇の中に溶けていく。
そしてまた同じ夢を見て、目を覚ましてしまう。
目覚まし時計を見ると、さっきから30分程しか経っていないことにウンザリさせられるけど、どうしようもない。
毎日朝までこの繰り返し。
2~3日に一度、極限まで眠くなると、朝までぐっすり眠れる日があって。
そんな朝は、起きるとホッとするようになっていた。

夜、よく眠れない代わりに、他の人の気配がある場所ではちょっとした時間でも寝てしまう。
講義の合間に教室の机で。
お昼ご飯をかき込んだ後の学食のテーブルで。
ざわざわとした人の声や、周りの様々な音が子守歌になって、あたしを眠りの世界に誘ってくる。
ほぼF3と桜子専用になっているVIP専用ラウンジの高級ソファなんか、座った途端に眠気が襲ってくる絶好の昼寝ポイント。
あんまりよく寝るようになったあたしを、皆は訝しがっていた。

「なあ、牧野ってば寝過ぎじゃね?
俺がコイツを見る時は、いっつも転寝してるけど。
類の眠り癖がうつったのか?」
「そんなの、うつる訳ないでしょ。
総二郎って案外バカだね。
どうせまた牧野の事だから、バイトに精出し過ぎてるんじゃないかと思うんだけど。
俺が言っても聞かないんだ。
『貧乏暇無しなの!』っていうばっかりでさ・・・」
「まあ、なんにせよ、病気だったりしなきゃいいんだけど・・・
ナルコレプシーとはちょっと違うみたいだよなあ。
起きなきゃいけない時間にはちゃんと目を覚まして動いてるし。
アラーム鳴った途端に飛び起きてるもんな。」

F3にそんな事を言われてたなんて、ちっとも知らずに、あたしはいつも通り昼寝をしていたんだけれど。
その日の授業終わりに、美作さんに捕まった。

「牧野、病院行くぞ。」
「病院? 何で? あたし、どこも悪くないけど?」
「あんなに毎日空き時間は昏々と寝てるんだ。
もしかしたら身体のどこかが調子が悪いのかもしれない。
一度ちゃんと調べよう。」
「えー? 大丈夫だよ。
大学の健康診断だって何の問題もなかったもん。
あたしは元気だってば!」
「大丈夫、ウチの妹達もいつもお世話になってる、信頼できる医者だ。
女医さんだし、怖がらなくてもいい。」

そう言って、あたしの腕を掴んで、ぐいぐい引っ張って歩こうとする。
掴まれて、痛くはないけれど、優しい気遣いの人らしくない性急な行動に、思わず眉をしかめた。
力を込めて、あたしを掴んでいる手を振りほどく。

「ね、ちょっと! 勝手に決めないで!
あたし、病気でもなんでもないのっ!」
「それは医者が判断してくれるから。
な、俺を安心させるためと思って、一度病院に行こう!」
「みっ、美作さんが心配するような事、何もないってば。」

そうムキになって言い募ったら、ちょっと哀しそうに眇めた目で、更にダメ押しなのか小首を傾げて、あたしをじいっと見詰めて来た。

そういうの、止めて欲しい。
言葉であれこれ言われるより、よっぽど胸が痛む。

「な、何よ・・・?」
「じゃあ、牧野には心当たりがあるの?」
「え?」
「どこでもあっという間に寝てしまう理由の心当たり。」

ありますとも。
大ありです。
でもカッコ悪くて言えないんだけど!
一人暮らしが怖くって、よく夜眠れないだなんて、カッコ悪すぎる!

「えーっと、あの・・・ その・・・」
「あるんなら、ちゃんと聞かせて。
俺を安心させて。」

結局、美作さんの車に押し込まれて。
その中で、優しくも厳しい尋問を受けて、つい話してしまった。
とってもカッコ悪い、眠れない理由を。
そんな話を聞いた美作さんは、ふうとひとつ溜息を吐いて。
車を走らせて、あの夢の国のような美作さんちへとあたしを運んで来た。
そして例の可愛い東屋のソファにあたしを座らせると、お茶の用意をしている。
てっきり美作家ご自慢の美味しい紅茶がサーヴされるものだと思っていたのに、あたしの目の前に置かれたのはホットココアだった。
それも小さなマシュマロがいくつか浮かんでいて、見ているだけでワクワクしてくる。

「どうぞ。」
「イタダキマス・・・」

左手の親指と人差し指で、かーるく顎を支える様な仕草をした美作さんが、テーブルの向かい側で優しく微笑む。
スプーンでくるりと掻き混ぜて、一口飲んだら、甘くて、ほろ苦くって、優しい味が広がる。
スプーンでマシュマロを掬って食べたら、しゅわしゅわと溶けていくのが面白く感じられた。

「美味しいね、ココアって。このマシュマロも。」
「牧野向きだろ? ウチの妹達も大好きだぜ。」
「・・・またあたしを子供扱いして。」
「夜一人で寝るのが怖いなんて、子供だろ?」

そう言われて、かあっと顔が熱くなる。

事実だけど・・・
はっきり言わないで欲しいのよ!

「牧野、一人暮らし、止めろ。」
「そんな事言われたって、パパとママが今いるところから大学に通うには、片道2時間以上かかっちゃうのよ。
時間の無駄だし、疲れるでしょ。
バイトする時間も減っちゃうし。」
「時給のいい、住み込みのバイトを紹介する。
だからもう一人暮らししなくてもいいし、他所でバイトする必要もないから。」
「何それ? なんか怪しいよね・・・
うまい話には裏があるんじゃないの?」
「んー、まあ、無いとは言えないか。」

くすりと笑って、目尻を下げた美作さんが、優雅な手つきでカップを持ってココアを飲むのに、自然と目が吸い寄せられる。

「ま、一応、話を聞くだけなら聞いてもいいけど・・・」
「そうか? 聞いたら断れなくなると思うぜ。
バイト先はここ。俺のウチだ。
住む所もここ。
邸の中の、バス、トイレ、ウォークインクローゼット付きの部屋が住まいになる。
バイト内容は、双子の遊び相手。
『お兄ちゃま、お兄ちゃま!』と纏わりついてくるのを、上手く止めさせて、俺が家でリラックス出来る時間を増やす事。
あと、お袋の話し相手もかな。
3食、おやつ、双子と一緒の昼寝付き。
時給は牧野が今迄していたバイトの時給の倍。
どうだ? いい話だろ?」

今度は目をキラキラさせて、悪戯っぽく微笑んでくる。

「うまい話過ぎて、怖いんですけど・・・」
「お前は一人暮らししなくて良くなる。
俺は、外で気晴らしなんてせずに、家でゆっくり出来るようになる。
利害が一致したろ?」
「お家でゆっくりしたいんだ?」
「そりゃまあ、そうだろ。
自分の家なのに、落ち着かないって嫌なもんだぜ?」

まあ、あの双子ちゃんたちのお兄ちゃまLOVE度合を見ていたら、分かる様な気もするけど・・・

「時給が倍っていうのは困る。
住む所も食事も付いてくるのに・・・
今迄のバイト代と同じっていうなら・・・」
「よし、決まった。
今夜からここに住めよ、牧野!」
「え? 今夜から? ちょっと無理、そんなの・・・」

あたしの言葉も聞かないで、さっさと母屋に連絡を入れてる美作さん。
お夕飯の人数が1人追加になる事と、空き部屋を整える様にと指示を出してる。
あまりの急展開にぼーっとしていると、電話を終えた美作さんが、あたしに話し掛けて来た。

「牧野、口が開きっ放し。
ココアが出てきそうだぞ。」

慌てて口をきゅっと結ぶ。
そんな事しなくても、ココアが出てくる訳ないんだけど!
お夕飯の席で、ご家族全員に事の次第を話して、あっさり皆さんの了承を取り付けちゃった美作さん。

「今日から牧野も我が家の一員だから。」

そう言われて、擽ったくも嬉しかったのは本当だ。


美作邸に住み込むようになって、毎日寝る前に美作さんとココアを飲むのが習慣になった。
ほっと出来て。
心の底からあったまって。
安心して眠れる、美作さんがかけてくれる魔法の1杯。
あたしは、ココアが大好きになった。
でもホントは・・・ ココアを一緒に飲んでくれる人の事が、大好き。


__________


書いてみたら、思いの外、可愛いつくしになりました(笑)
あきつくも久々でした。
「お兄様はいらない!」以来だったので、去年の夏から書いてなかったのね。
ごめんね、あきら!
あきつくをお待ちの皆様、ひとまずこれでお許しを!
飲み物シリーズ、類も、あきらも・・・となると、切り口が難しくなってきたのですが。
さらに拙宅の主人公を放っておくと、これまた怒られそうですなぁ・・・
ボチボチ頑張ります(苦笑)

気付いたら120万HIT、超えておりました!
いつも遊びに来て下さる皆様、本当に有り難うございます!


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背中合わせの午後

Happy Birthday Akira!
ということで、今日はあきらに捧げるSSを。
Hot cocoa」の後日譚です。


__________



大学は長い春休みに入った。
桜が咲く頃までの2ヶ月弱の休み。
例年ならどこか海外へ足を延ばして訳アリの女性やあいつらとバカンスしたりしていたんだけれど。
今年はそうはいかない。
だって、邸には牧野がいるから。
牧野は俺が思い付きで言った「双子の遊び相手」というバイトの為に我が家に住んでいる・・・と思い込んでいるから、双子の幼稚園が春休みにならないうちは実家にすら帰らないつもりらしい。
お袋は牧野を双子と一緒に行くニューカレドニア旅行にも連れて行こうとしていたけど、頑なに拒んでた。

「ねえ、つくしちゃん、3月はニューカレドニアはベストシーズンなのよ。
凄ーく素敵なところなの。
是非一緒に行きましょ!
絵夢と芽夢も喜ぶわ!」
「いえっ、ご家族の旅行にあたしがくっついていくなんてとんでもないです!
どうぞ水入らずで行ってらしてください!
あたしはここで留守をお守りしていますから!」
「そんな事言わないで!
あきらくんも『親父とお袋と双子で行って来いよ。』なんて言って、一緒に行ってくれないの。
まあ、それはいつもの事なんだけれど・・・
ね、だから、代わりにつくしちゃんが一緒に来てくれたら、私も楽しいし、とっても助かるわ。」
「いや・・・ そんな・・・
だ、大学の勉強の予習もありますしっ!
久し振りに実家の両親の顔も見てきたいと思ってるので、あたしは日本に残りたいんです。」
「・・・そう。残念だけど仕方ないわよね。
つくしちゃんだってご両親との水入らずの時間が大事だものね・・・
いつも私達だけでつくしちゃんを独占しちゃってるんだもの・・・」

名残惜しそうに引き下がったお袋と、何とか切り抜けてほっとした表情を浮かべてる牧野の対比が可笑しかったっけ。
どうせ余計なお金をかけさせちゃいけない!とか思って固辞しているんだろうけどな。
そんなこんなで、3月は俺と牧野だけになるこの邸。
絶対に離れる訳にはいかないだろ!
そう心に誓った俺だった。



2月最後の日曜日。
朝食の後、南向きのサンルームは立ち入り禁止だと双子から言い渡された。

「お兄ちゃまっ!
今日は南のサンルームには来てはダメなのよ!」
「そうよ、お兄ちゃまはこちらでゆっくりご本を読んだりしていてね!」
「「絶対に来ちゃダメなんだから!!」」
「ふーん、分かったよ。
サンルームに入らなけりゃいいんだろ?
じゃ、俺はちょっと外に出掛けてこようかな・・・」
「お出掛けしてしまってもダメなの!」
「絵夢と芽夢がどうぞ!って言ったらサンルームにいらして欲しいんだもの。」
「「お家の中でいい子にしていらしてね!」」

お家の中でいい子に・・・って、俺がいつもお前達に言ってる台詞だろう?
俺にお前達がそれを言うのか?
何かちょっとしっくりこないけれど、まあ言う通りにしておけば、機嫌を損ねることはないんだろう。

「分かった、分かった。
約束するから。
リビングか、自分の部屋にでもいるよ。」

牧野はきっと双子たちと一緒にいるんだろうから、その姿を見守れないというなら、邸にいる意味も半減なんだけど。
今日は俺の誕生日。
双子はそれで何か企んでいるみたいだ。
あわよくば、牧野を連れ出して、2人きりのデートにでも行きたいな・・・と思ってたんだけど。
それは双子が大人しくなる夕方からでもいいかもな?

そう思いつつ、言われた通り、リビングのソファで本や雑誌を捲ったり、コーヒーを飲んだりして過ごしていたら、昼前頃になってやっと双子が俺の元にやって来た。
小鳥の囀りの様な2人のお喋りがどーっと耳に流れ込んでくる。

「「お兄ちゃまっ!」」
「ん? どうした?」
「「ランチのご用意が出来たわ!」」
「サンルームにいらして!」
「今日のランチはピクニックなのよ!」
「ピクニック?」

2月の末に外でピクニックするのは寒すぎるから、サンルームでピクニック紛いのことをするつもりなんだろうと当たりを付けた。

「ふうん、楽しそうだな。
お兄ちゃまもピクニックに混ぜてくれるのか?」
「そうよ! お兄ちゃまとつくしお姉ちゃまと私達4人でピクニックするの!」
「ね、行きましょ!」

左右の手を双子に取られて、南のサンルームに来てみれば・・・
そこは手作り感満載の飾り付けが施された俺の誕生日パーティー会場となっていた。

「「お誕生日おめでとう、お兄ちゃま!」」
「有り難う、絵夢、芽夢。
凄いな、この飾り付け。
頑張ってくれたんだなあ。」
「つくしお姉ちゃまがいっぱい助けて下さったのよ。」
「紙でお花を作ったり、風船を膨らませたり、色々教えて下さったの!」

予想通りの答えが返って来て、俺は自然と笑みを浮かべてしまう。

「絵夢と芽夢と牧野が作ってくれたんだって思うと、とっても嬉しいよ。」

そう言って、双子の頬に一つずつキスを贈る。
もう一人の功労者は何処に?と思ってサンルームをぐるりと見渡せば、入り口のドアから食べ物をわんさかと載せたワゴンを押して入って来たのが牧野だった。
その牧野に、双子が駆け寄っていく。

「お姉ちゃま、大成功よ!」
「お兄ちゃま、とっても喜んで下さったわ!」
「良かったねえ、絵夢ちゃん、芽夢ちゃん。
いっぱいお兄ちゃまの為に作ったり飾り付けたりした甲斐があったねえ。
じゃあ、次は美味しいピクニックランチでおもてなししようか?」
「「うん!!」」

柔らかな笑顔を浮かべた牧野がその場にいるだけで、サンルームの中がさっきより温かくなったかのような気がした。
牧野に笑顔を向けて、「有り難う」と口パクで伝えると、にっこりと笑って一つ頷いてくれる。
それだけで胸が幸せな気分で満たされていった。

サンルームの真ん中にはピクニック宜しく大きなブランケットが敷かれ、そこの上にはふわふわのクッションがいくつも並んでいる。
4人でそこに座って、双子が考案したという、『お兄ちゃまのお誕生日を祝うピクニックランチ』とやらのご相伴に与った。
屋内だというのに、わざわざピクニックバスケットセットを持ち出しての食事は、飯事さながらだ。
カラフルなピックで飾り付けられたサンドイッチ、ハート型に見える様に切られたスコッチエッグ、瑞々しい野菜がたっぷり使われたサラダ、温かなスープ、様々な種類のカットフルーツ・・・
そして最後にまた牧野がワゴンに載せて運んで来たのは、俺のバースデーケーキだった。
白い生クリームで包まれたシフォンケーキに薔薇の花びらがあしらわれて、上には「おたんじょうびおめでとう おにいちゃま」と書かれている。

「あのね、ケーキはママが焼いたの!」
「クリームはお姉ちゃまが塗って、お花は絵夢と芽夢がくっつけたの!」
「ああ、とても綺麗に出来てるから、食べるのが勿体ない位だね。ありがとう。」
「でも食べたいわ!」
「きっと美味しいわ!」
「そうだね、切っちゃうの勿体ないから、その前にケーキの写真を撮ろうか?」

牧野がカメラを取り出して、ケーキの写真やら、そこに顔を寄せている双子の様子を撮ってくれた。
俺にもケーキの前でポーズをとれと言われたけど、やんわりそれを断って、いい香りの紅茶と一緒にそのバースデーケーキを食べる。

俺は満ち足りた気持ちの午後を迎えていた。
ブランケットの上では牧野が双子にせがまれて絵本の読み聞かせをしていて、俺はそれをちょっと離れたカウチから見守ってる。
俺の大事な3人の女の子が皆笑顔で、柔らかな日差しの元過ごしているのを見ているのは幸せ以外の何でもない。
やがて双子は食事の後ということもあったろうが、朝からはしゃいで疲れたんだろう。
牧野の声を子守歌に、ブランケットの上で寝てしまった。
俺の方を向いて、今度は牧野が口パクで「寝ちゃった」と伝えてくる。
俺は頷いて、そっとそちらに歩いていき、2人をカウチの上に移してやると、牧野がブランケットを掛けてくれた。

ピクニックをしていたブランケットとクッションの上に戻った牧野。
俺もその近くに腰を下ろした。
牧野が小声で話し出す。

「絵夢ちゃん、芽夢ちゃん、お兄ちゃまの為にって何日も前から頑張ったんだよー。」
「牧野も頑張ってくれたんだろ、ありがとな。」
「あたしはお手伝いしただけだから。
ね、素敵なお誕生日になった?」
「ああ、最高。」
「良かった!」

今日一番の笑顔を俺に見せてくれる牧野に、心臓がどくんと音を立てた。
この手に捕まえたいけれど、捕まえられない・・・
そんな微妙な距離にいる俺達。
こうやって一つ屋根の下に暮らして。
関係は一歩も二歩も近付いた気がするけど、双子や両親の目もあるから、男と女・・・というよりも、兄と妹だったり、家族という雰囲気を漂わせてしまう。

どうしたらもっと近くに行けるかな・・・?

ブランケットの上に置かれた絵本を手に取って、ページを捲り始めた牧野と背中合わせに座ってみた。
自分の背中に牧野の小さくて華奢な背中が当たる。

「え? 何?」

首を捻って俺の方を向いている気配。

「こうやって座ったら、互いが背凭れになるから楽だろ?
カウチは双子に占領されてるし。」
「あはは、そうだねー。
ちょっと楽しいかも?」

そう言った牧野が背中でぐいっと押してきたから、俺も牧野の方に寄りかかってみる。

「重い、重いよ、美作さんっ!」
「先に牧野が俺に圧し掛かって来たんだろ?」
「あたし、こんなに重くないもんっ!」

また牧野がぐいぐい背中を俺に押し付けてくる。
他愛もない背中だけの触れ合いなんだけど、何だかとっても楽しくて。
2人で声を抑えてくすくす笑いながら凭れ合っていた。
じんわりとした温かみが伝わってくる背中。
牧野に触れてる部分がじんじんと痺れる様な、くすぐったい様な感覚だ。

「牧野?」
「んん?」
「ありがとな。」
「うん。」

背中がちょっと震えて、牧野が笑っているのが伝わってくる。

「楽しかったね、ピクニックごっこ。」
「まあ、たまにはこういうのもいいかもな。」
「暖かくなったら、またちゃんとお外でピクニックしようね。」
「そうだな。風や日差しをちゃんと感じられるようなピクニックの方が、もっと気分が良さそうだ。」
「うん。」

こてんと俺の肩に乗っかった牧野の頭の重みを感じた。

「お誕生日、おめでとう、美作さん。」
「ああ、有り難う。」

今はまだ背中と背中がくっついてる俺達だけど。
次の誕生日には向い合わせで。
俺の腕の中で牧野がその言葉を言ってくれるように。
少しずつ進んでいこう。
双子と両親が旅行でいない間は、絶好のチャンスだろ。
照れ屋の牧野をこっちのペースに巻き込むのに。

早く双子の春休みになって、皆が旅行に行ってしまうのを心待ちにしてしまう俺。

なあ、牧野。
俺の方を向いて。
俺の妹になるんじゃなくて。
俺の彼女になってくれよな。

まだ言えない言葉を胸に秘めながら、そっと目を瞑る。
背中から伝わる牧野の温もりを目一杯感じるために。

双子、当分起きなくていいからな!
牧野と2人だけの時間が、お兄ちゃまにとって一番の誕生日プレゼントなんだから!


__________



ギリギリ!
ギリギリ2月28日のお誕生日のうちにお話をUP出来ます!
あー、書けて良かった・・・
背中合わせの2人ってのを書きたかったのでした。
お待たせ、あきらっ!
こんなんじゃ温いって?
いや、まあ、段々と近付くんですよ(笑)
マダムキラーを廃業したって、いきなりぱくって訳にはいかないでしょ!
特に同じ屋根の下に暮らすようになっちゃったらね。

昨夜はあきらのお誕生日チャット会にお集まり頂きまして、有り難うございました!
素敵なお客様のお蔭で、とても楽しい時間となりました。
ちょっといつになるかは分かりませんが、またチャット会企画しますので、その時は宜しくお願いします!


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