このお話は「fake」の後日譚となっております。
1話の短編としてもお楽しみ頂けますが、宜しければ「fake」読了後に再読して頂ければ嬉しいです。
<前書き追記:2017.09.25>
__________
色んな事があったけど。
本当に・・・ ここまで色んな事があったけど。
あたし達は晴れて今日から『2人暮らし』になる。
西門さんがお邸を出て生活するなんて、有り得ない!って思ってたのに、それが叶っちゃったのには驚いた。
一体どういう風の吹き回しなのか、聞いてもはぐらかして教えてくれないって事は・・・
何かあたしに言えないような事、したんじゃないかなあ?って疑ってる。
でも2人で暮らせるっていうのはすっごく嬉しい。
ただ、こうなるまでにはちょっとした波風もあったんだよね。
一緒に住む為の物件を幾つか見に行った時、どれもこれも、今迄住んできた部屋とは雲泥の差で、若干引き気味になってたあたし。
あまりにも豪華で広過ぎて、セキュリティーも凄いとこばっかり見せられたんだけど、西門さん曰く、「これぐらい最低限必要だ!」との事で。
まあ、有名人だし、マスコミにもマークされたりすることもある西門さんだから、仕方ないらしい。
色んなお部屋を見せてもらって、結局西門さんがお仕事する上で困らない為にお邸に近くて、あたしにとって有り難い、近所にスーパーがあるマンションに決めたんだ。
スーパーって言っても、これまたあたしが常日頃利用してる、庶民派な何でも安いお店と違って、どれもこれも手を出すのが躊躇われるような、ピッカピカのお野菜や、見たこともないスパイスや調味料が並んでる、高級スーパーだけどね。
住む所が決まったら、次に連れて行かれたのは家具屋さんだった。
「こんな広い家具屋さん、初めて来た・・・」って言ったら、「バーカ、ショールームって言うんだ。」と、口の悪い人に鼻で笑われた。
東京ドームが何個も入るという広さの床面積を持つ、その『ショールーム』の中を、脚を棒にしながら歩き回って、2人で住む部屋に置く家具を選んだ・・・というか、殆ど西門さんが決めちゃったんだけど。
あたしはどんな家具でも、カーテンでも、照明でも拘らないから、お任せしてた。
いや、高すぎる!って何度か言っちゃったか?
だけどソファだけはあたしの意見も取り入れてもらって決めたんだ。
だって今まで使ってたソファは小ちゃくて、2人で座るのには窮屈で。
今度は2人でのんびり座れるものにしたいと思った。
ずらーっと並んだソファ売り場で色んなソファに座ってみて、これだ!とあたしが思えたのは、西門さんが「これで良いんじゃね?」と気軽に言ってのけた革張りの何百万もするソファセットなんかじゃ無くて。
まあ、あたしの金銭感覚からするとこれも目玉が飛び出るお値段だったけれど、西門さんセレクトの物よりはぐっとリーズナブルな、コットンの帆布素材のカバーが掛かってて、季節毎に好きな色に取り換えられるソファ。
春は柔らかなオリーブグリーン。
夏は涼し気なオフホワイト。
秋は落ち着いたカーキ。
冬は温かみのあるココアブラウン・・・と、あたしの頭の中にイメージが広がる。
冬用は帆布だけじゃ無くて、コーデュロイ生地も選べるのも嬉しい!
勿論お揃いのクッションカバーもある。
カバーを取り換えつつ使うなら、末長く使えそうだし、何より同じソファなのに違うカラーに出来るのが楽しい!
それに、このソファは座面が他の物より広いところが魅力だった。
脚の長ーい西門さんでもゆったり座れるし、あたしが膝を抱えて載っかってもぜーんぜんはみ出したりしない。
座ると身体全体が包まれる感じで、思わずうっとりしてしまったのも決め手だった。
「ねえ、ねえ、これにしよ!
絶対これがいいよ!
あたし、このソファに惚れちゃったー。」
座面や肘掛けを撫でて感触を確かめつつそんな事を言ったら、何故かそこでちょっとした口喧嘩になった。
「おい、惚れるのは俺だけにしとけよ。
浮気なんて許さねえからな!」
「はぁー? 何言っちゃってんの?
これはヒトじゃないの、ソファなの!
それにあたしは誰かさんと違って、一途ですから、浮気なんてしないしっ。」
「俺だって浮気なんかしねえよ!
お前、俺の事、そんな風に思ってんの?」
信じられないとでも言いた気にあたしの事を睨み付けてくるから、こっちこそどの口がそんな事言ってんの?との思いを込めて睨み返す。
一頻りバチバチと火花を散らし合ったけど、案内してくれていたショールームのスタッフさんが困ってオロオロしてらっしゃるのに気が付いて、その場は取り敢えず言いたい事を飲み込み、一時休戦したんだけれど。
帰りの車で、西門さんが蒸し返したもんだから、車内の空気は最悪になった。
「おい、つくしちゃん。
俺がいつ浮気したってんだよ?
俺の事、信じてねえんだな、お前って。」
「今浮気してるなんて言ってないでしょ!
でも昔の悪行三昧を忘れたとは言わせないからねっ。」
「フッザケンナ!
俺はなあ、本気で好きになった女は1人しかいねえんだ!
お前こそ、初恋が類で、司がいなくなってからもずっと司に操立ててた癖に。
俺より気が多いじゃねえか!」
「そのあたしを無理矢理どうにかしちゃった西門さんがそんな事言うの?
あたしは男の人は西門さんしか知らないのに!
西門さんは一体どれだけの女の人と遊んで来たのよっ?」
「単なる暇潰しだったんだよ!
顔も名前も憶えてない女の事、カウントするな!」
「なっ・・・ 何、その屁理屈っ!?
憶えてないからって、してきた事実は消えないんだから!」
と、まあ、まるで猫の喧嘩みたいな、今考えてみればとーっても馬鹿馬鹿しい言い争いをして、互いにそっぽを向いて座る事になった後部座席。
あたしの部屋の前に車が横付けされて、運転手さんが恭しくドアを開けてくれても、西門さんには「じゃあねっ!」という捨て台詞だけで、車を降りてしまった。
結局、それから1週間冷戦を繰り広げた挙句に、渋々仲直りしたんだけど。
これによってあたしが選んだソファは曰く付きのソファになってしまったって訳。
2人暮らしすることになったお部屋に、真新しい家具や家電が次々と運び込まれてく。
西門さんの私物もお邸から移されて。
最後にあたしが今迄使ってた安物の家具や小さな冷蔵庫なんかを処分して、身の回りの物だけを運ぶ小さな引っ越しをした。
持ってきた物は少ないと思ってたのに、引っ越し当日に全部の荷解きを済ませたら、思いの外体力を使ったみたい。
草臥れちゃったあたしはリビングのソファにふう・・・と息を吐きながら腰掛けた。
ふかふかと柔らかなソファに身体を預けると、まるで吸い込まれていく感覚!
疲れがすうっとどこかに溶けて消えていくかのようで、夢見心地で目を閉じた。
あー、このソファ、やっぱり最高!
これにして良かったなあ。
決めた時、あんな喧嘩しちゃったけど・・・
それにしても、あの時、なんだってあんな言いがかりつけて来たのかなあ、西門さんは。
「ソファに惚れた」って言っただけだったのに。
あの日の口喧嘩の事を反芻しながら、その原因のソファに身を任せているうちに、あたしはついつい寝てしまった。
ふと目を覚ますと、自分の身体には肌触りのいい薄手のケットが掛けられている。
そのケットの中から手を出して、眠い目をこすろうとしたら、既の所で優しい手がそれを遮った。
「んん・・・?」
「つくしちゃん、そんな事するとアイメイク剥げちまうぜ。」
声がする方に首を回すと、ソファの背凭れに頬杖を突きながら隣りに座って、あたしの方を見てる西門さんがいた。

「西門さん・・・」
名前を呼んだら、ふわりと甘く笑ってくれたから、それだけであたしは嬉しくなる。
目尻が下がった優しい笑い顔につい見惚れた。
「そんなに座り心地良かったか、このソファ?」
「うん、もうサイコー!
あたしここに根っこが生えて立てなくなりそ。」
「大袈裟だな、お前。」
ふふっと小さく笑う西門さんにつられて、あたしもえへへと笑ってしまう。
「なあ、つくしちゃん、俺とソファ、どっちが好き?」
「・・・変な質問。
比べるものじゃないでしょ。」
「だってお前、ソファに惚れたなんて言ってたじゃん。」
「そんなの言葉の綾だよ。
まさかソファに嫉妬してる・・・なんて事ないでしょ?」
笑いながらそう言ったら、西門さんが急に真顔になった。
「俺はお前が俺以外に心惹かれてくのが嫌なんだよ。
それがヒトだろうが、モノだろうが!
お前は俺だけに夢中になってりゃいいの。」
何て無茶苦茶な主張なの!
独占欲、強過ぎない?
でも、胸の内では嬉しさが広がってく。
「・・・あたしには西門さんだけだよ。」
さっき西門さんが握ってくれた手を、今度はあたしがきゅっと握り返す。
あたしの想いを指先からも伝えるために。
「分かってるでしょ、そんなの。
でも・・・ 焼き餅焼かれてちょっと嬉しいかも。」
「お前こそ、俺の過去に嫉妬してたじゃねえか。」
「だあって、あんなこと言うんだもん。」
「これからは嫉妬させるようなことは絶対にしない。
だから俺をお前の最初で最後の男にしろよ。」
ちょっと切なげな眼差しであたしにそんな事言うこの人が、何だか可愛い駄々っ子に見える。
全くこんな時でも俺様発言なんだから・・・
「いいよ。そうしてあげる。」
あたしの言葉に、ほっとしたのか、ふっと表情を緩ませた。
いつもポーカーフェイスで、強気で、何事も達観しちゃってるようなこの人の、あたしだけに垣間見せる感情の揺らぎ。
それを見つける度にあたしは嬉しくなる。
でも本当はあたしの方が欲深いんだよ。
あたしだけが知ってる西門さん。
ずっとずっと独占しちゃうんだから。
「だーい好きっ!」
笑顔で告げて、大きな背中に手を回して、愛しい人を捕まえた。
もう、二度と放してあげないんだから。
貴方はずーっとあたしのもの。
だから・・・ 覚悟してよね!
__________
ONCE UPON A TIME の K+M様の素敵イラスト「甘々 総ちゃん」をお借りしてのイラスト付SSイベント。
ラストの4話目はこんなお話となりました。
K+M様のお蔭で妄想が膨らみました。
この度は、いや、この度も!本当に有り難うございました!
このお話の総二郎だけ、服を着てるイメージですね(笑)
うん、あくまでも裸総二郎祭りじゃなくて、甘い微笑みの総二郎祭りなんでね(爆)
さてさて、本日1月31日はNYの野獣のお誕生日でございます。
おめでとうございまーす(笑)
毎度スルーですけどねっ。
スマホアプリではちゃっかり踊らされておりますよ・・・
<追記>
諸般の事情により、更新日を変更してあります。
このお話は、当初は2016年1月31日に、K+M様のイラストをお借りしたSS4つのうちの一つとしてUPしたものでした。
他の3つは
・りく様の「水曜日の恋人・番外編 満たされる時 -side 総二郎- & -side つくし-」
・「ある朝の風景」
となっております。

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
1話の短編としてもお楽しみ頂けますが、宜しければ「fake」読了後に再読して頂ければ嬉しいです。
<前書き追記:2017.09.25>
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色んな事があったけど。
本当に・・・ ここまで色んな事があったけど。
あたし達は晴れて今日から『2人暮らし』になる。
西門さんがお邸を出て生活するなんて、有り得ない!って思ってたのに、それが叶っちゃったのには驚いた。
一体どういう風の吹き回しなのか、聞いてもはぐらかして教えてくれないって事は・・・
何かあたしに言えないような事、したんじゃないかなあ?って疑ってる。
でも2人で暮らせるっていうのはすっごく嬉しい。
ただ、こうなるまでにはちょっとした波風もあったんだよね。
一緒に住む為の物件を幾つか見に行った時、どれもこれも、今迄住んできた部屋とは雲泥の差で、若干引き気味になってたあたし。
あまりにも豪華で広過ぎて、セキュリティーも凄いとこばっかり見せられたんだけど、西門さん曰く、「これぐらい最低限必要だ!」との事で。
まあ、有名人だし、マスコミにもマークされたりすることもある西門さんだから、仕方ないらしい。
色んなお部屋を見せてもらって、結局西門さんがお仕事する上で困らない為にお邸に近くて、あたしにとって有り難い、近所にスーパーがあるマンションに決めたんだ。
スーパーって言っても、これまたあたしが常日頃利用してる、庶民派な何でも安いお店と違って、どれもこれも手を出すのが躊躇われるような、ピッカピカのお野菜や、見たこともないスパイスや調味料が並んでる、高級スーパーだけどね。
住む所が決まったら、次に連れて行かれたのは家具屋さんだった。
「こんな広い家具屋さん、初めて来た・・・」って言ったら、「バーカ、ショールームって言うんだ。」と、口の悪い人に鼻で笑われた。
東京ドームが何個も入るという広さの床面積を持つ、その『ショールーム』の中を、脚を棒にしながら歩き回って、2人で住む部屋に置く家具を選んだ・・・というか、殆ど西門さんが決めちゃったんだけど。
あたしはどんな家具でも、カーテンでも、照明でも拘らないから、お任せしてた。
いや、高すぎる!って何度か言っちゃったか?
だけどソファだけはあたしの意見も取り入れてもらって決めたんだ。
だって今まで使ってたソファは小ちゃくて、2人で座るのには窮屈で。
今度は2人でのんびり座れるものにしたいと思った。
ずらーっと並んだソファ売り場で色んなソファに座ってみて、これだ!とあたしが思えたのは、西門さんが「これで良いんじゃね?」と気軽に言ってのけた革張りの何百万もするソファセットなんかじゃ無くて。
まあ、あたしの金銭感覚からするとこれも目玉が飛び出るお値段だったけれど、西門さんセレクトの物よりはぐっとリーズナブルな、コットンの帆布素材のカバーが掛かってて、季節毎に好きな色に取り換えられるソファ。
春は柔らかなオリーブグリーン。
夏は涼し気なオフホワイト。
秋は落ち着いたカーキ。
冬は温かみのあるココアブラウン・・・と、あたしの頭の中にイメージが広がる。
冬用は帆布だけじゃ無くて、コーデュロイ生地も選べるのも嬉しい!
勿論お揃いのクッションカバーもある。
カバーを取り換えつつ使うなら、末長く使えそうだし、何より同じソファなのに違うカラーに出来るのが楽しい!
それに、このソファは座面が他の物より広いところが魅力だった。
脚の長ーい西門さんでもゆったり座れるし、あたしが膝を抱えて載っかってもぜーんぜんはみ出したりしない。
座ると身体全体が包まれる感じで、思わずうっとりしてしまったのも決め手だった。
「ねえ、ねえ、これにしよ!
絶対これがいいよ!
あたし、このソファに惚れちゃったー。」
座面や肘掛けを撫でて感触を確かめつつそんな事を言ったら、何故かそこでちょっとした口喧嘩になった。
「おい、惚れるのは俺だけにしとけよ。
浮気なんて許さねえからな!」
「はぁー? 何言っちゃってんの?
これはヒトじゃないの、ソファなの!
それにあたしは誰かさんと違って、一途ですから、浮気なんてしないしっ。」
「俺だって浮気なんかしねえよ!
お前、俺の事、そんな風に思ってんの?」
信じられないとでも言いた気にあたしの事を睨み付けてくるから、こっちこそどの口がそんな事言ってんの?との思いを込めて睨み返す。
一頻りバチバチと火花を散らし合ったけど、案内してくれていたショールームのスタッフさんが困ってオロオロしてらっしゃるのに気が付いて、その場は取り敢えず言いたい事を飲み込み、一時休戦したんだけれど。
帰りの車で、西門さんが蒸し返したもんだから、車内の空気は最悪になった。
「おい、つくしちゃん。
俺がいつ浮気したってんだよ?
俺の事、信じてねえんだな、お前って。」
「今浮気してるなんて言ってないでしょ!
でも昔の悪行三昧を忘れたとは言わせないからねっ。」
「フッザケンナ!
俺はなあ、本気で好きになった女は1人しかいねえんだ!
お前こそ、初恋が類で、司がいなくなってからもずっと司に操立ててた癖に。
俺より気が多いじゃねえか!」
「そのあたしを無理矢理どうにかしちゃった西門さんがそんな事言うの?
あたしは男の人は西門さんしか知らないのに!
西門さんは一体どれだけの女の人と遊んで来たのよっ?」
「単なる暇潰しだったんだよ!
顔も名前も憶えてない女の事、カウントするな!」
「なっ・・・ 何、その屁理屈っ!?
憶えてないからって、してきた事実は消えないんだから!」
と、まあ、まるで猫の喧嘩みたいな、今考えてみればとーっても馬鹿馬鹿しい言い争いをして、互いにそっぽを向いて座る事になった後部座席。
あたしの部屋の前に車が横付けされて、運転手さんが恭しくドアを開けてくれても、西門さんには「じゃあねっ!」という捨て台詞だけで、車を降りてしまった。
結局、それから1週間冷戦を繰り広げた挙句に、渋々仲直りしたんだけど。
これによってあたしが選んだソファは曰く付きのソファになってしまったって訳。
2人暮らしすることになったお部屋に、真新しい家具や家電が次々と運び込まれてく。
西門さんの私物もお邸から移されて。
最後にあたしが今迄使ってた安物の家具や小さな冷蔵庫なんかを処分して、身の回りの物だけを運ぶ小さな引っ越しをした。
持ってきた物は少ないと思ってたのに、引っ越し当日に全部の荷解きを済ませたら、思いの外体力を使ったみたい。
草臥れちゃったあたしはリビングのソファにふう・・・と息を吐きながら腰掛けた。
ふかふかと柔らかなソファに身体を預けると、まるで吸い込まれていく感覚!
疲れがすうっとどこかに溶けて消えていくかのようで、夢見心地で目を閉じた。
あー、このソファ、やっぱり最高!
これにして良かったなあ。
決めた時、あんな喧嘩しちゃったけど・・・
それにしても、あの時、なんだってあんな言いがかりつけて来たのかなあ、西門さんは。
「ソファに惚れた」って言っただけだったのに。
あの日の口喧嘩の事を反芻しながら、その原因のソファに身を任せているうちに、あたしはついつい寝てしまった。
ふと目を覚ますと、自分の身体には肌触りのいい薄手のケットが掛けられている。
そのケットの中から手を出して、眠い目をこすろうとしたら、既の所で優しい手がそれを遮った。
「んん・・・?」
「つくしちゃん、そんな事するとアイメイク剥げちまうぜ。」
声がする方に首を回すと、ソファの背凭れに頬杖を突きながら隣りに座って、あたしの方を見てる西門さんがいた。

「西門さん・・・」
名前を呼んだら、ふわりと甘く笑ってくれたから、それだけであたしは嬉しくなる。
目尻が下がった優しい笑い顔につい見惚れた。
「そんなに座り心地良かったか、このソファ?」
「うん、もうサイコー!
あたしここに根っこが生えて立てなくなりそ。」
「大袈裟だな、お前。」
ふふっと小さく笑う西門さんにつられて、あたしもえへへと笑ってしまう。
「なあ、つくしちゃん、俺とソファ、どっちが好き?」
「・・・変な質問。
比べるものじゃないでしょ。」
「だってお前、ソファに惚れたなんて言ってたじゃん。」
「そんなの言葉の綾だよ。
まさかソファに嫉妬してる・・・なんて事ないでしょ?」
笑いながらそう言ったら、西門さんが急に真顔になった。
「俺はお前が俺以外に心惹かれてくのが嫌なんだよ。
それがヒトだろうが、モノだろうが!
お前は俺だけに夢中になってりゃいいの。」
何て無茶苦茶な主張なの!
独占欲、強過ぎない?
でも、胸の内では嬉しさが広がってく。
「・・・あたしには西門さんだけだよ。」
さっき西門さんが握ってくれた手を、今度はあたしがきゅっと握り返す。
あたしの想いを指先からも伝えるために。
「分かってるでしょ、そんなの。
でも・・・ 焼き餅焼かれてちょっと嬉しいかも。」
「お前こそ、俺の過去に嫉妬してたじゃねえか。」
「だあって、あんなこと言うんだもん。」
「これからは嫉妬させるようなことは絶対にしない。
だから俺をお前の最初で最後の男にしろよ。」
ちょっと切なげな眼差しであたしにそんな事言うこの人が、何だか可愛い駄々っ子に見える。
全くこんな時でも俺様発言なんだから・・・
「いいよ。そうしてあげる。」
あたしの言葉に、ほっとしたのか、ふっと表情を緩ませた。
いつもポーカーフェイスで、強気で、何事も達観しちゃってるようなこの人の、あたしだけに垣間見せる感情の揺らぎ。
それを見つける度にあたしは嬉しくなる。
でも本当はあたしの方が欲深いんだよ。
あたしだけが知ってる西門さん。
ずっとずっと独占しちゃうんだから。
「だーい好きっ!」
笑顔で告げて、大きな背中に手を回して、愛しい人を捕まえた。
もう、二度と放してあげないんだから。
貴方はずーっとあたしのもの。
だから・・・ 覚悟してよね!
__________
ONCE UPON A TIME の K+M様の素敵イラスト「甘々 総ちゃん」をお借りしてのイラスト付SSイベント。
ラストの4話目はこんなお話となりました。
K+M様のお蔭で妄想が膨らみました。
この度は、いや、この度も!本当に有り難うございました!
このお話の総二郎だけ、服を着てるイメージですね(笑)
うん、あくまでも裸総二郎祭りじゃなくて、甘い微笑みの総二郎祭りなんでね(爆)
さてさて、本日1月31日はNYの野獣のお誕生日でございます。
おめでとうございまーす(笑)
毎度スルーですけどねっ。
スマホアプリではちゃっかり踊らされておりますよ・・・
<追記>
諸般の事情により、更新日を変更してあります。
このお話は、当初は2016年1月31日に、K+M様のイラストをお借りしたSS4つのうちの一つとしてUPしたものでした。
他の3つは
・りく様の「水曜日の恋人・番外編 満たされる時 -side 総二郎- & -side つくし-」
・「ある朝の風景」
となっております。



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