りく様から皆様へ素敵な Valentine Present が届いております!
りく様のお部屋の「キスシリーズ」という、管理人も大好きなお話のシリーズがあるのですが。
なんと! それを総×つくVersionで書いて下さいました!
「水恋」と一味違う2人になっています。
どうぞお楽しみ下さい!
ファーストキス
"カラン"と音を立てるグラスの中の氷。
「マスター、おかわり~!」
呂律の回らない声を上げると、苦笑いのマスター。
でもそこは商売人。あたしがどんだけ酔っぱらおうとも飲ませておけばお金が取れる訳で。
結果、さっきから飲み続けているマティーニが目の前に置かれた。
反射的に手を伸ばしたのだけど・・・・あれ?グラスがない?
さっきまで空いていた隣に人の気配を感じて顔を上げて思わず息を呑んだ。
「に、西門さん!?」
「よう、つくしちゃん。久しぶりだな。」
どこぞの誰かとのデートの途中なのか帰りなのか・・・・
いつも以上におっそろしいフェロモンを放出している。
そのフェロモンダダ洩れ男が多分あたしのだろう、マティーニを一気に飲み干した。
「ちょっと何するのよ!」
「酔っ払いはこれ飲んでろ。」
手渡されたグラスには薄茶色の液体。
「何よ、これ?」
「ウーロン茶。」
「余計なことしないで!」
「さっきからずっと見てたけど、マジ飲み過ぎだろ?」
「ずっと見てたって、西門さんいつからいるのよ!」
ついさっきまでそこには誰もいなかったわよ!
「んー、お前がこの店に入って来た時からずっとかな。」
「えっ!?」
「そっ。俺の方が先に此処に居た訳。」
西門さんがくいくいって指差す方を見ると、あたし達が座っているカウンターのずっと後ろの方に一つ席が空いていて。
店員さんがそのテーブルからこっちに西門さんのであろう飲み物を移動してくるのが見えた。
「何よ、ずっと見てたなら最初から声かけなさいよ・・・」
「素面の時に声かけたら、牧野、絶対逃げるだろ?」
「・・・・・・・・・・・」
うー、なんとも言えません。
だってあたし、大学卒業後、西門さんと・・・っていうか、西門さんを含むあの人達と距離を置いているから。
最後に会ったのはいつだろう・・・?
去年の夏、無理矢理海辺の別荘に連れて行かれた時以来だから・・・半年ぶり?
「大学卒業してから随分と付き合い悪くなったよな。この2年間、お前何度俺達の誘い断った?酷くね?」
「社会人ともなると色々忙しいのよ。それに・・・・・・あたしとあんた達とは・・・住む世界が違うのよ。」
「まだそんな馬鹿なこと言ってんのか。」
「だって!!」
道明寺と別れてしまったあたしは単なるボンビーな女。
皆があれこれ世話を焼いてくれれば焼いてくれるほど一緒にいるのが辛くなった。
どうせいつか別々の道を歩むことになるんだから・・・・
そう思って、大学卒業と同時に皆から離れた。ただそれだけのこと。
「まぁ、そのことはいいわ。
せっかく逢えたんだ。今夜は俺と一緒に過ごしてみる?」
じっと見詰める瞳に吸い込まれそうになる。
酔っているからついつい頷いてしまいそうになって、大慌てで首を横に振った。
「全く西門さんって相変わらずなんだね。
そんなことばかりしていると、いつか本当に刺されるよ?」
「ま、その時はその時だろ。」
相変わらず軽いノリ。
「それよりもお前、男にでも振られたのか?」
「えっ!!?」
核心を突かれて思わず動きを止めてしまった。
「相変わらずわかりやすい反応。」
そう言ってクスクスと笑う。
「あのねぇ!確かに今夜あたしは男と別れました。だから何!?何か文句ある!?」
「つくしちゃん、何でそんなにつっかかる訳?
そんなにその男が好きだった?」
「べ、別にそういう訳じゃ!!」
そう。そんなに好きだった訳ではない。
付き合ってまだ1ヵ月だし、まだキスもしてなかったし。
でも別れた理由が釈然としない。
"僕には君を幸せに出来そうにないから別れてくれ"・・・・って、どういうこと?
別に結婚しようって話をしていた訳でもないのに、何でそんな話になるの?
「ねぇ、西門さん・・・・あたしってそんなに魅力ないかな?」
「はぁ?」
「ごめん、何でもない。」
やばい・・・酔っぱらっているせいか、ついつい弱音を吐いてしまった。
西門さんに弱みなんて見せたら大変なんだから!!
でも・・・あたしって本当に魅力がないんだろうか?
大学を卒業してから約2年、付き合った男はそれなりにいる。
でも長続きしない。
長くて・・・2ヶ月?
恋愛恐怖症になっているせいか、あたしが男と女の深い関係に進めないのが原因なのかもしれない。
だけど!!
だけど、この2年間振られ続け・・・・ってちょっと自信なくす。
今夜振られた相手も、悩みに悩んで付き合うことにOKした相手で。
あたしのことを良く理解してくれていると思っていた。
なのに!!
「お前さぁ、彼氏の前でちゃんと甘えたり出来てた?」
「はぁっ!?何よそれ?」
「女はなぁ、少しくらい隙がないと可愛くないんだよ。」
・・・・そう言われてみれば、甘えたりしてなかったかも。
「例えばだ、メシ食いに行った時、おごるっつうのに頑なに割り勘にして!って言う女とか。
ちょっとヤキモチ妬かせたくて他の女と親し気に話してみせても、なーんにも言わない女とか。
急用でデートをドタキャンした時に拗ねたりもせず、静かに受け入れる女とか。」
――――全部思い当たるんですけど。
「あれ?もしかして全部ビンゴ?」
「うっさい!!」
「お前なぁ、そりゃあ振られても仕方ないぞ。
せめて可愛げなくてもベッドの中では可愛い!っつうならそのギャップに萌えたりするが・・・」
西門さんがチラリとあたしを見る。
「もしかしてつくしちゃん、まだ鉄パン履いてんの?」
「黙れ西門!!あんたには関係ないでしょ!!」
「まぁ、そうだけど・・・」
「それより西門さんこそどうしたのよ!何で今日は綺麗なお姉さんと一緒じゃないのよ?」
「ばーか!今日はバレンタインだぞ?こんな日に女と約束してみろ!自分は特別だと勘違いするだろ。」
あぁ、そうだった。この人はイベント事の時は女の人と約束しないんだった。
「西門さんもいい加減ちゃんとした恋愛したら?」
「んー、わかってはいるんだけどなぁ。今はそんな気になれないっつうか・・・・
今度こそ真摯に向き合ってみるか?と思って付き合ってみても、まるで他人事のように別の場所から見ている自分がいるような気がしてな。」
そう言うと西門さんはあたしの頭をポンポンと叩いた。
あぁ、なんでだろう。今のすっごく共感できる。
あたしも同じ気持ちを感じたことがある。
あたしと西門さんって、ある意味同類なのだろうか?
「ま、つくしちゃんもそのうち自分が熱くなれる相手が出てくるんじゃね?」
西門さんはそう言うと、急にフェロモンたっぷりの笑顔をあたしに向けた。
「牧野・・・・今夜はずっと一緒にいようぜ・・・・」
うっ!何これ!!
まるで絡め取られたかのように体が動かない。
これが西門フェロモン!!??
「え゛っ!!!!???いや、あの・・・・・・えと・・・・・」
ど、どうしよう!!って固まっていたら、くっくっくっ・・・と堪えるような笑い声。
気付けば西門さんがお腹を抱えて笑っていた。
「ば、馬鹿にしないでよ!あんたの戯言なんかに騙されないんだから!!」
「はいはい。」
そう言ってまたポンポンと軽く頭を叩かれた。
こうした仕草が女を寄せ付けるんだろうな。流石は西門総二郎。
――――でもちょっとだけ西門さんに感謝。
久しぶりに会ったのに、こうして普通に会話出来て嬉しい。
「西門さん、これあげる。」
ふと思い出し、バッグの中から可愛い小箱を取り出した。
彼氏に渡すはずだったチョコレート。
西門さんを見ると何故か微妙な顔。
「お前なぁ・・・」
「あ、ごめん。人にあげるはずだったチョコレートをあげようだなんて・・・失礼だよね。
あーぁ、あたしってこういうとこがガサツで駄目なんだよねぇ。」
あたしはそう言いながらガサガサと包みを開いた。
昨日時間をかけて綺麗に包装したことを思い出して、なんだか悲しくなってきた。
可愛らしい赤い箱の蓋を開けると、ちょっとだけ不揃いなトリュフチョコが3つ並んでいた。
「へぇ、手作りだったんだ?」
少し意外そうに言う西門さんを無視して、あたしはその一つを摘み上げると自分の口に放り込んだ。
思った以上に大きかったそれは、一口で食べるには少々大きすぎたみたい。
でももぐもぐと口を動かしてなんとか一口で食べきった。
そんなあたしを西門さんは楽しそうな顔で見ている。
相変わらず食い意地の張った女って思ってるんだろうな。
別に食べたい訳じゃなかったけど、折角時間をかけて作ったのに捨てるのもしゃくだったんだもの。
「なぁ、少しだけ味見してもいいか?」
急に西門さんがそんなことを言う。
「他の男にあげる予定だったチョコだよ?嫌でしょ?」
「まぁな。でもせっかくの牧野の手作りなんだから味見くらいさせてくんねぇ?」
「無理しなくてもいいのに。手作りったって大した手間かけてないし。
――――でも、良かったら・・・・どうぞ?」
なんだかちょっと照れくさいなぁ・・・って思いながら西門さんに小箱を差し出した。
すると西門さんはにっこり笑って・・・・・
何故かその顔がどんどん近づいてきて・・・
"ちゅぷっ"
えっ!!!!!??
「うん。美味かった。ご馳走さん。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「つくしちゃーん、どうした?」
ぎゃーーーっ!!!!!
く、く、唇を舐められたーーーっ!!!!
「なっ、なっ、なっ!!!!!」
何するのよー!エロ門ーーっ!!と言いたいのに驚きすぎて声も出ない。
そんなあたしを見て西門さんはニヤリと笑うとゆっくりと立ち上がった。
「さてと。俺はそろそろ帰るわ。つくしちゃん、飲みすぎるなよ。」
やり逃げかい!と唖然としていると、急に身を屈めてあたしの耳元で囁いた。
「チョコレートのお礼したいから・・・来月の14日にまた此処に来いよ?」
「はぁ!?お礼って・・・・チョコレートなんて食べてないじゃない!」
「普通にチョコ食うより十分美味かったぜ?じゃあ、またな牧野。
あぁ、逃げようなんて思うなよ?お前の居場所なんて調べればすぐにわかるんだからな。
なんなら14日会社の前まで迎えに行くか?」
「け、け、結構です!!」
本当にやりかねないよ、この男なら!
言いたいことは山ほどあるのに、西門さんはあっという間に消え去ってしまった。
何なのよーー!!
なんか突然のことに頭がいっぱいで深く考えられない・・・・
来月も此処に来いって・・・・どうしよう?
あぁもう!考えるのはやめた!!
とりあえず煩わしい事は後で考えることにして、その日はもう少しだけカクテルを堪能することにした。
帰ろうとしたら、なんと支払いは西門さんがあたしの分も済ませてくれていた。
おまけに帰りのタクシーまで手配してくれていて・・・
相変わらずだなと思いつつ、今夜はご馳走になることにした。
お礼を言うにも、今ではあたしは彼の連絡先すら知らない。
これはやっぱり来月来なきゃいけないじゃない。
せめてタクシー代だけでも返さないと・・・
なんだか西門さんに嵌められた気がしなくもなかったけど・・・
気付いたら振られたことなんてすっかり忘れ去っている自分に気が付いた。
そして来月また西門さんと逢えることを少しだけ嬉しく思っている自分にも。
タクシーの中で、ふと思い出して舐められた唇をそっと撫でた。
キスをしたのは初めてではなかったけれど・・・
あれはあたしにとって―――――多分、ファーストキスだった。
続くかも?
__________
ねえねえ、今迄してきたキスの記憶が掻き消えて、今回のがファーストキスになっちゃうなんてさ!
一体どんなキスしたの、総二郎ー!?
そして、りく様!
「続くかも?」じゃなくて、絶対に「続く!」でお願いします!
もうね、「キスシリーズ」でカテゴリーも作っちゃったしね。
鷹瑠璃同様28話・・・なんて高望みは言いません。
その何分の一かでもね、ウチに寄せて下さったら、管理人も読み手の皆様もとっても嬉しいなあ~!
さあ、皆様も、声を大にして!
りく様に続きをおねだりしてくださいね!
りく様のお部屋は 恋花-koibana- です。
ご感想、応援のコメントは、こちらでも、りく様のお部屋でも受け付けていますよん♪
それと、先日寄せて頂いた「水恋」へのコメントのお返事をお預かりしました。
コメント下さった方はコチラもご覧下さいね!

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
りく様のお部屋の「キスシリーズ」という、管理人も大好きなお話のシリーズがあるのですが。
なんと! それを総×つくVersionで書いて下さいました!
「水恋」と一味違う2人になっています。
どうぞお楽しみ下さい!
ファーストキス
"カラン"と音を立てるグラスの中の氷。
「マスター、おかわり~!」
呂律の回らない声を上げると、苦笑いのマスター。
でもそこは商売人。あたしがどんだけ酔っぱらおうとも飲ませておけばお金が取れる訳で。
結果、さっきから飲み続けているマティーニが目の前に置かれた。
反射的に手を伸ばしたのだけど・・・・あれ?グラスがない?
さっきまで空いていた隣に人の気配を感じて顔を上げて思わず息を呑んだ。
「に、西門さん!?」
「よう、つくしちゃん。久しぶりだな。」
どこぞの誰かとのデートの途中なのか帰りなのか・・・・
いつも以上におっそろしいフェロモンを放出している。
そのフェロモンダダ洩れ男が多分あたしのだろう、マティーニを一気に飲み干した。
「ちょっと何するのよ!」
「酔っ払いはこれ飲んでろ。」
手渡されたグラスには薄茶色の液体。
「何よ、これ?」
「ウーロン茶。」
「余計なことしないで!」
「さっきからずっと見てたけど、マジ飲み過ぎだろ?」
「ずっと見てたって、西門さんいつからいるのよ!」
ついさっきまでそこには誰もいなかったわよ!
「んー、お前がこの店に入って来た時からずっとかな。」
「えっ!?」
「そっ。俺の方が先に此処に居た訳。」
西門さんがくいくいって指差す方を見ると、あたし達が座っているカウンターのずっと後ろの方に一つ席が空いていて。
店員さんがそのテーブルからこっちに西門さんのであろう飲み物を移動してくるのが見えた。
「何よ、ずっと見てたなら最初から声かけなさいよ・・・」
「素面の時に声かけたら、牧野、絶対逃げるだろ?」
「・・・・・・・・・・・」
うー、なんとも言えません。
だってあたし、大学卒業後、西門さんと・・・っていうか、西門さんを含むあの人達と距離を置いているから。
最後に会ったのはいつだろう・・・?
去年の夏、無理矢理海辺の別荘に連れて行かれた時以来だから・・・半年ぶり?
「大学卒業してから随分と付き合い悪くなったよな。この2年間、お前何度俺達の誘い断った?酷くね?」
「社会人ともなると色々忙しいのよ。それに・・・・・・あたしとあんた達とは・・・住む世界が違うのよ。」
「まだそんな馬鹿なこと言ってんのか。」
「だって!!」
道明寺と別れてしまったあたしは単なるボンビーな女。
皆があれこれ世話を焼いてくれれば焼いてくれるほど一緒にいるのが辛くなった。
どうせいつか別々の道を歩むことになるんだから・・・・
そう思って、大学卒業と同時に皆から離れた。ただそれだけのこと。
「まぁ、そのことはいいわ。
せっかく逢えたんだ。今夜は俺と一緒に過ごしてみる?」
じっと見詰める瞳に吸い込まれそうになる。
酔っているからついつい頷いてしまいそうになって、大慌てで首を横に振った。
「全く西門さんって相変わらずなんだね。
そんなことばかりしていると、いつか本当に刺されるよ?」
「ま、その時はその時だろ。」
相変わらず軽いノリ。
「それよりもお前、男にでも振られたのか?」
「えっ!!?」
核心を突かれて思わず動きを止めてしまった。
「相変わらずわかりやすい反応。」
そう言ってクスクスと笑う。
「あのねぇ!確かに今夜あたしは男と別れました。だから何!?何か文句ある!?」
「つくしちゃん、何でそんなにつっかかる訳?
そんなにその男が好きだった?」
「べ、別にそういう訳じゃ!!」
そう。そんなに好きだった訳ではない。
付き合ってまだ1ヵ月だし、まだキスもしてなかったし。
でも別れた理由が釈然としない。
"僕には君を幸せに出来そうにないから別れてくれ"・・・・って、どういうこと?
別に結婚しようって話をしていた訳でもないのに、何でそんな話になるの?
「ねぇ、西門さん・・・・あたしってそんなに魅力ないかな?」
「はぁ?」
「ごめん、何でもない。」
やばい・・・酔っぱらっているせいか、ついつい弱音を吐いてしまった。
西門さんに弱みなんて見せたら大変なんだから!!
でも・・・あたしって本当に魅力がないんだろうか?
大学を卒業してから約2年、付き合った男はそれなりにいる。
でも長続きしない。
長くて・・・2ヶ月?
恋愛恐怖症になっているせいか、あたしが男と女の深い関係に進めないのが原因なのかもしれない。
だけど!!
だけど、この2年間振られ続け・・・・ってちょっと自信なくす。
今夜振られた相手も、悩みに悩んで付き合うことにOKした相手で。
あたしのことを良く理解してくれていると思っていた。
なのに!!
「お前さぁ、彼氏の前でちゃんと甘えたり出来てた?」
「はぁっ!?何よそれ?」
「女はなぁ、少しくらい隙がないと可愛くないんだよ。」
・・・・そう言われてみれば、甘えたりしてなかったかも。
「例えばだ、メシ食いに行った時、おごるっつうのに頑なに割り勘にして!って言う女とか。
ちょっとヤキモチ妬かせたくて他の女と親し気に話してみせても、なーんにも言わない女とか。
急用でデートをドタキャンした時に拗ねたりもせず、静かに受け入れる女とか。」
――――全部思い当たるんですけど。
「あれ?もしかして全部ビンゴ?」
「うっさい!!」
「お前なぁ、そりゃあ振られても仕方ないぞ。
せめて可愛げなくてもベッドの中では可愛い!っつうならそのギャップに萌えたりするが・・・」
西門さんがチラリとあたしを見る。
「もしかしてつくしちゃん、まだ鉄パン履いてんの?」
「黙れ西門!!あんたには関係ないでしょ!!」
「まぁ、そうだけど・・・」
「それより西門さんこそどうしたのよ!何で今日は綺麗なお姉さんと一緒じゃないのよ?」
「ばーか!今日はバレンタインだぞ?こんな日に女と約束してみろ!自分は特別だと勘違いするだろ。」
あぁ、そうだった。この人はイベント事の時は女の人と約束しないんだった。
「西門さんもいい加減ちゃんとした恋愛したら?」
「んー、わかってはいるんだけどなぁ。今はそんな気になれないっつうか・・・・
今度こそ真摯に向き合ってみるか?と思って付き合ってみても、まるで他人事のように別の場所から見ている自分がいるような気がしてな。」
そう言うと西門さんはあたしの頭をポンポンと叩いた。
あぁ、なんでだろう。今のすっごく共感できる。
あたしも同じ気持ちを感じたことがある。
あたしと西門さんって、ある意味同類なのだろうか?
「ま、つくしちゃんもそのうち自分が熱くなれる相手が出てくるんじゃね?」
西門さんはそう言うと、急にフェロモンたっぷりの笑顔をあたしに向けた。
「牧野・・・・今夜はずっと一緒にいようぜ・・・・」
うっ!何これ!!
まるで絡め取られたかのように体が動かない。
これが西門フェロモン!!??
「え゛っ!!!!???いや、あの・・・・・・えと・・・・・」
ど、どうしよう!!って固まっていたら、くっくっくっ・・・と堪えるような笑い声。
気付けば西門さんがお腹を抱えて笑っていた。
「ば、馬鹿にしないでよ!あんたの戯言なんかに騙されないんだから!!」
「はいはい。」
そう言ってまたポンポンと軽く頭を叩かれた。
こうした仕草が女を寄せ付けるんだろうな。流石は西門総二郎。
――――でもちょっとだけ西門さんに感謝。
久しぶりに会ったのに、こうして普通に会話出来て嬉しい。
「西門さん、これあげる。」
ふと思い出し、バッグの中から可愛い小箱を取り出した。
彼氏に渡すはずだったチョコレート。
西門さんを見ると何故か微妙な顔。
「お前なぁ・・・」
「あ、ごめん。人にあげるはずだったチョコレートをあげようだなんて・・・失礼だよね。
あーぁ、あたしってこういうとこがガサツで駄目なんだよねぇ。」
あたしはそう言いながらガサガサと包みを開いた。
昨日時間をかけて綺麗に包装したことを思い出して、なんだか悲しくなってきた。
可愛らしい赤い箱の蓋を開けると、ちょっとだけ不揃いなトリュフチョコが3つ並んでいた。
「へぇ、手作りだったんだ?」
少し意外そうに言う西門さんを無視して、あたしはその一つを摘み上げると自分の口に放り込んだ。
思った以上に大きかったそれは、一口で食べるには少々大きすぎたみたい。
でももぐもぐと口を動かしてなんとか一口で食べきった。
そんなあたしを西門さんは楽しそうな顔で見ている。
相変わらず食い意地の張った女って思ってるんだろうな。
別に食べたい訳じゃなかったけど、折角時間をかけて作ったのに捨てるのもしゃくだったんだもの。
「なぁ、少しだけ味見してもいいか?」
急に西門さんがそんなことを言う。
「他の男にあげる予定だったチョコだよ?嫌でしょ?」
「まぁな。でもせっかくの牧野の手作りなんだから味見くらいさせてくんねぇ?」
「無理しなくてもいいのに。手作りったって大した手間かけてないし。
――――でも、良かったら・・・・どうぞ?」
なんだかちょっと照れくさいなぁ・・・って思いながら西門さんに小箱を差し出した。
すると西門さんはにっこり笑って・・・・・
何故かその顔がどんどん近づいてきて・・・
"ちゅぷっ"
えっ!!!!!??
「うん。美味かった。ご馳走さん。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「つくしちゃーん、どうした?」
ぎゃーーーっ!!!!!
く、く、唇を舐められたーーーっ!!!!
「なっ、なっ、なっ!!!!!」
何するのよー!エロ門ーーっ!!と言いたいのに驚きすぎて声も出ない。
そんなあたしを見て西門さんはニヤリと笑うとゆっくりと立ち上がった。
「さてと。俺はそろそろ帰るわ。つくしちゃん、飲みすぎるなよ。」
やり逃げかい!と唖然としていると、急に身を屈めてあたしの耳元で囁いた。
「チョコレートのお礼したいから・・・来月の14日にまた此処に来いよ?」
「はぁ!?お礼って・・・・チョコレートなんて食べてないじゃない!」
「普通にチョコ食うより十分美味かったぜ?じゃあ、またな牧野。
あぁ、逃げようなんて思うなよ?お前の居場所なんて調べればすぐにわかるんだからな。
なんなら14日会社の前まで迎えに行くか?」
「け、け、結構です!!」
本当にやりかねないよ、この男なら!
言いたいことは山ほどあるのに、西門さんはあっという間に消え去ってしまった。
何なのよーー!!
なんか突然のことに頭がいっぱいで深く考えられない・・・・
来月も此処に来いって・・・・どうしよう?
あぁもう!考えるのはやめた!!
とりあえず煩わしい事は後で考えることにして、その日はもう少しだけカクテルを堪能することにした。
帰ろうとしたら、なんと支払いは西門さんがあたしの分も済ませてくれていた。
おまけに帰りのタクシーまで手配してくれていて・・・
相変わらずだなと思いつつ、今夜はご馳走になることにした。
お礼を言うにも、今ではあたしは彼の連絡先すら知らない。
これはやっぱり来月来なきゃいけないじゃない。
せめてタクシー代だけでも返さないと・・・
なんだか西門さんに嵌められた気がしなくもなかったけど・・・
気付いたら振られたことなんてすっかり忘れ去っている自分に気が付いた。
そして来月また西門さんと逢えることを少しだけ嬉しく思っている自分にも。
タクシーの中で、ふと思い出して舐められた唇をそっと撫でた。
キスをしたのは初めてではなかったけれど・・・
あれはあたしにとって―――――多分、ファーストキスだった。
続くかも?
__________
ねえねえ、今迄してきたキスの記憶が掻き消えて、今回のがファーストキスになっちゃうなんてさ!
一体どんなキスしたの、総二郎ー!?
そして、りく様!
「続くかも?」じゃなくて、絶対に「続く!」でお願いします!
もうね、「キスシリーズ」でカテゴリーも作っちゃったしね。
鷹瑠璃同様28話・・・なんて高望みは言いません。
その何分の一かでもね、ウチに寄せて下さったら、管理人も読み手の皆様もとっても嬉しいなあ~!
さあ、皆様も、声を大にして!
りく様に続きをおねだりしてくださいね!
りく様のお部屋は 恋花-koibana- です。
ご感想、応援のコメントは、こちらでも、りく様のお部屋でも受け付けていますよん♪
それと、先日寄せて頂いた「水恋」へのコメントのお返事をお預かりしました。
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