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花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
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二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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ファーストキス by りく様

りく様から皆様へ素敵な Valentine Present が届いております!
りく様のお部屋の「キスシリーズ」という、管理人も大好きなお話のシリーズがあるのですが。
なんと! それを総×つくVersionで書いて下さいました!
「水恋」と一味違う2人になっています。
どうぞお楽しみ下さい!


ファーストキス


"カラン"と音を立てるグラスの中の氷。

「マスター、おかわり~!」

呂律の回らない声を上げると、苦笑いのマスター。
でもそこは商売人。あたしがどんだけ酔っぱらおうとも飲ませておけばお金が取れる訳で。
結果、さっきから飲み続けているマティーニが目の前に置かれた。
反射的に手を伸ばしたのだけど・・・・あれ?グラスがない?

さっきまで空いていた隣に人の気配を感じて顔を上げて思わず息を呑んだ。

「に、西門さん!?」

「よう、つくしちゃん。久しぶりだな。」

どこぞの誰かとのデートの途中なのか帰りなのか・・・・
いつも以上におっそろしいフェロモンを放出している。

そのフェロモンダダ洩れ男が多分あたしのだろう、マティーニを一気に飲み干した。

「ちょっと何するのよ!」

「酔っ払いはこれ飲んでろ。」

手渡されたグラスには薄茶色の液体。

「何よ、これ?」

「ウーロン茶。」

「余計なことしないで!」

「さっきからずっと見てたけど、マジ飲み過ぎだろ?」

「ずっと見てたって、西門さんいつからいるのよ!」

ついさっきまでそこには誰もいなかったわよ!

「んー、お前がこの店に入って来た時からずっとかな。」

「えっ!?」

「そっ。俺の方が先に此処に居た訳。」

西門さんがくいくいって指差す方を見ると、あたし達が座っているカウンターのずっと後ろの方に一つ席が空いていて。
店員さんがそのテーブルからこっちに西門さんのであろう飲み物を移動してくるのが見えた。

「何よ、ずっと見てたなら最初から声かけなさいよ・・・」

「素面の時に声かけたら、牧野、絶対逃げるだろ?」

「・・・・・・・・・・・」

うー、なんとも言えません。
だってあたし、大学卒業後、西門さんと・・・っていうか、西門さんを含むあの人達と距離を置いているから。
最後に会ったのはいつだろう・・・?
去年の夏、無理矢理海辺の別荘に連れて行かれた時以来だから・・・半年ぶり?

「大学卒業してから随分と付き合い悪くなったよな。この2年間、お前何度俺達の誘い断った?酷くね?」

「社会人ともなると色々忙しいのよ。それに・・・・・・あたしとあんた達とは・・・住む世界が違うのよ。」

「まだそんな馬鹿なこと言ってんのか。」

「だって!!」

道明寺と別れてしまったあたしは単なるボンビーな女。
皆があれこれ世話を焼いてくれれば焼いてくれるほど一緒にいるのが辛くなった。
どうせいつか別々の道を歩むことになるんだから・・・・
そう思って、大学卒業と同時に皆から離れた。ただそれだけのこと。

「まぁ、そのことはいいわ。
 せっかく逢えたんだ。今夜は俺と一緒に過ごしてみる?」

じっと見詰める瞳に吸い込まれそうになる。
酔っているからついつい頷いてしまいそうになって、大慌てで首を横に振った。

「全く西門さんって相変わらずなんだね。
 そんなことばかりしていると、いつか本当に刺されるよ?」

「ま、その時はその時だろ。」

相変わらず軽いノリ。

「それよりもお前、男にでも振られたのか?」

「えっ!!?」

核心を突かれて思わず動きを止めてしまった。

「相変わらずわかりやすい反応。」

そう言ってクスクスと笑う。

「あのねぇ!確かに今夜あたしは男と別れました。だから何!?何か文句ある!?」

「つくしちゃん、何でそんなにつっかかる訳?
 そんなにその男が好きだった?」

「べ、別にそういう訳じゃ!!」

そう。そんなに好きだった訳ではない。
付き合ってまだ1ヵ月だし、まだキスもしてなかったし。
でも別れた理由が釈然としない。
"僕には君を幸せに出来そうにないから別れてくれ"・・・・って、どういうこと?
別に結婚しようって話をしていた訳でもないのに、何でそんな話になるの?

「ねぇ、西門さん・・・・あたしってそんなに魅力ないかな?」

「はぁ?」

「ごめん、何でもない。」

やばい・・・酔っぱらっているせいか、ついつい弱音を吐いてしまった。
西門さんに弱みなんて見せたら大変なんだから!!

でも・・・あたしって本当に魅力がないんだろうか?

大学を卒業してから約2年、付き合った男はそれなりにいる。
でも長続きしない。
長くて・・・2ヶ月?
恋愛恐怖症になっているせいか、あたしが男と女の深い関係に進めないのが原因なのかもしれない。
だけど!!
だけど、この2年間振られ続け・・・・ってちょっと自信なくす。

今夜振られた相手も、悩みに悩んで付き合うことにOKした相手で。
あたしのことを良く理解してくれていると思っていた。
なのに!!

「お前さぁ、彼氏の前でちゃんと甘えたり出来てた?」

「はぁっ!?何よそれ?」

「女はなぁ、少しくらい隙がないと可愛くないんだよ。」

・・・・そう言われてみれば、甘えたりしてなかったかも。

「例えばだ、メシ食いに行った時、おごるっつうのに頑なに割り勘にして!って言う女とか。
 ちょっとヤキモチ妬かせたくて他の女と親し気に話してみせても、なーんにも言わない女とか。
 急用でデートをドタキャンした時に拗ねたりもせず、静かに受け入れる女とか。」

――――全部思い当たるんですけど。

「あれ?もしかして全部ビンゴ?」

「うっさい!!」

「お前なぁ、そりゃあ振られても仕方ないぞ。
 せめて可愛げなくてもベッドの中では可愛い!っつうならそのギャップに萌えたりするが・・・」

西門さんがチラリとあたしを見る。

「もしかしてつくしちゃん、まだ鉄パン履いてんの?」

「黙れ西門!!あんたには関係ないでしょ!!」

「まぁ、そうだけど・・・」

「それより西門さんこそどうしたのよ!何で今日は綺麗なお姉さんと一緒じゃないのよ?」

「ばーか!今日はバレンタインだぞ?こんな日に女と約束してみろ!自分は特別だと勘違いするだろ。」

あぁ、そうだった。この人はイベント事の時は女の人と約束しないんだった。

「西門さんもいい加減ちゃんとした恋愛したら?」

「んー、わかってはいるんだけどなぁ。今はそんな気になれないっつうか・・・・ 
 今度こそ真摯に向き合ってみるか?と思って付き合ってみても、まるで他人事のように別の場所から見ている自分がいるような気がしてな。」

そう言うと西門さんはあたしの頭をポンポンと叩いた。
あぁ、なんでだろう。今のすっごく共感できる。
あたしも同じ気持ちを感じたことがある。
あたしと西門さんって、ある意味同類なのだろうか?

「ま、つくしちゃんもそのうち自分が熱くなれる相手が出てくるんじゃね?」

西門さんはそう言うと、急にフェロモンたっぷりの笑顔をあたしに向けた。

「牧野・・・・今夜はずっと一緒にいようぜ・・・・」

うっ!何これ!!
まるで絡め取られたかのように体が動かない。
これが西門フェロモン!!??

「え゛っ!!!!???いや、あの・・・・・・えと・・・・・」

ど、どうしよう!!って固まっていたら、くっくっくっ・・・と堪えるような笑い声。
気付けば西門さんがお腹を抱えて笑っていた。

「ば、馬鹿にしないでよ!あんたの戯言なんかに騙されないんだから!!」

「はいはい。」

そう言ってまたポンポンと軽く頭を叩かれた。
こうした仕草が女を寄せ付けるんだろうな。流石は西門総二郎。

――――でもちょっとだけ西門さんに感謝。
久しぶりに会ったのに、こうして普通に会話出来て嬉しい。

「西門さん、これあげる。」

ふと思い出し、バッグの中から可愛い小箱を取り出した。
彼氏に渡すはずだったチョコレート。

西門さんを見ると何故か微妙な顔。

「お前なぁ・・・」

「あ、ごめん。人にあげるはずだったチョコレートをあげようだなんて・・・失礼だよね。
 あーぁ、あたしってこういうとこがガサツで駄目なんだよねぇ。」

あたしはそう言いながらガサガサと包みを開いた。
昨日時間をかけて綺麗に包装したことを思い出して、なんだか悲しくなってきた。

可愛らしい赤い箱の蓋を開けると、ちょっとだけ不揃いなトリュフチョコが3つ並んでいた。

「へぇ、手作りだったんだ?」

少し意外そうに言う西門さんを無視して、あたしはその一つを摘み上げると自分の口に放り込んだ。
思った以上に大きかったそれは、一口で食べるには少々大きすぎたみたい。
でももぐもぐと口を動かしてなんとか一口で食べきった。

そんなあたしを西門さんは楽しそうな顔で見ている。

相変わらず食い意地の張った女って思ってるんだろうな。
別に食べたい訳じゃなかったけど、折角時間をかけて作ったのに捨てるのもしゃくだったんだもの。

「なぁ、少しだけ味見してもいいか?」

急に西門さんがそんなことを言う。

「他の男にあげる予定だったチョコだよ?嫌でしょ?」

「まぁな。でもせっかくの牧野の手作りなんだから味見くらいさせてくんねぇ?」

「無理しなくてもいいのに。手作りったって大した手間かけてないし。
 ――――でも、良かったら・・・・どうぞ?」

なんだかちょっと照れくさいなぁ・・・って思いながら西門さんに小箱を差し出した。
すると西門さんはにっこり笑って・・・・・

何故かその顔がどんどん近づいてきて・・・

"ちゅぷっ"

えっ!!!!!??

「うん。美味かった。ご馳走さん。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「つくしちゃーん、どうした?」

ぎゃーーーっ!!!!!
く、く、唇を舐められたーーーっ!!!!

「なっ、なっ、なっ!!!!!」

何するのよー!エロ門ーーっ!!と言いたいのに驚きすぎて声も出ない。
そんなあたしを見て西門さんはニヤリと笑うとゆっくりと立ち上がった。

「さてと。俺はそろそろ帰るわ。つくしちゃん、飲みすぎるなよ。」

やり逃げかい!と唖然としていると、急に身を屈めてあたしの耳元で囁いた。

「チョコレートのお礼したいから・・・来月の14日にまた此処に来いよ?」

「はぁ!?お礼って・・・・チョコレートなんて食べてないじゃない!」

「普通にチョコ食うより十分美味かったぜ?じゃあ、またな牧野。
 あぁ、逃げようなんて思うなよ?お前の居場所なんて調べればすぐにわかるんだからな。
 なんなら14日会社の前まで迎えに行くか?」

「け、け、結構です!!」

本当にやりかねないよ、この男なら!

言いたいことは山ほどあるのに、西門さんはあっという間に消え去ってしまった。
何なのよーー!!
なんか突然のことに頭がいっぱいで深く考えられない・・・・

来月も此処に来いって・・・・どうしよう?

あぁもう!考えるのはやめた!!
とりあえず煩わしい事は後で考えることにして、その日はもう少しだけカクテルを堪能することにした。
帰ろうとしたら、なんと支払いは西門さんがあたしの分も済ませてくれていた。
おまけに帰りのタクシーまで手配してくれていて・・・

相変わらずだなと思いつつ、今夜はご馳走になることにした。
お礼を言うにも、今ではあたしは彼の連絡先すら知らない。

これはやっぱり来月来なきゃいけないじゃない。
せめてタクシー代だけでも返さないと・・・

なんだか西門さんに嵌められた気がしなくもなかったけど・・・
気付いたら振られたことなんてすっかり忘れ去っている自分に気が付いた。
そして来月また西門さんと逢えることを少しだけ嬉しく思っている自分にも。


タクシーの中で、ふと思い出して舐められた唇をそっと撫でた。

キスをしたのは初めてではなかったけれど・・・

あれはあたしにとって―――――多分、ファーストキスだった。


続くかも?


__________


ねえねえ、今迄してきたキスの記憶が掻き消えて、今回のがファーストキスになっちゃうなんてさ!
一体どんなキスしたの、総二郎ー!?
そして、りく様!
「続くかも?」じゃなくて、絶対に「続く!」でお願いします!
もうね、「キスシリーズ」でカテゴリーも作っちゃったしね。
鷹瑠璃同様28話・・・なんて高望みは言いません。
その何分の一かでもね、ウチに寄せて下さったら、管理人も読み手の皆様もとっても嬉しいなあ~!
さあ、皆様も、声を大にして!
りく様に続きをおねだりしてくださいね!
りく様のお部屋は 恋花-koibana- です。
ご感想、応援のコメントは、こちらでも、りく様のお部屋でも受け付けていますよん♪
それと、先日寄せて頂いた「水恋」へのコメントのお返事をお預かりしました。
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優しいキス -前編- by りく様

本日、3月14日はホワイトデー!
ということで、りく様から素敵なホワイトデーSSが届いております。
バレンタインの夜の「ファーストキス」 の続編です!
どうぞお楽しみ下さーい!


優しいキス -前編-


悩んだ挙句・・・・結局来てしまった。
バレンタインの日、偶然西門さんと出会ったバーに。

"チョコレートのお礼したいから・・・来月の14日にまた此処に来いよ?"

西門さんはそう言ったけど、果たして本当に来るのだろうか?
だってチョコレートのお礼って言っても、ちゃんと食べた訳じゃないし・・・
っていうか、その時のことを思い出すと今でも顔から火が出そうになる。
あれって、ある意味普通にキスされるよりも恥ずかしかったかも。

だって・・・
唇舐めるって!!!

唇の端に付いていたであろうチョコレートを舐め取ったって感じだけど・・・
今でも思い出すと背中がぞわぞわする。

わかってる。
西門さんは誰にだってああいうことを出来る人だって。
だから意識しちゃいけない!!
そう思って1ヵ月過ごして来た。

――――でもやっぱり何度も思い出してしまう。

だってあたしは・・・・・


店に足を踏み入れると、ホワイトデーのせいか凄く混んでいた。
もしかしたら座れないかも・・・
西門さんと時間まで決めていた訳じゃないし、席を取れなかったら帰るしかないか・・・と店内を見渡した。
もしかして・・・って期待していたけど、やっぱり西門さんは来ていなかった。
そして席も空いていなかった。

「お客様・・・」

店員が声をかけてくる。
いつもの若い案内係じゃなくて、ちょっと落ち着いた感じのイケメンマスターだった。

「あ、席・・・空いてませんよね?」

わかってはいたけど、一応確認。

「いえ、お待ちしておりました。お連れ様がお待ちでございます。」

「え? お連れ様って・・・・」

「こちらへどうぞ。」

わかっていますとばかりに笑顔を向けてくるマスターに促されるまま歩いて行くと、何故か裏口に。
え?って思っていたら・・・

「どうぞ素敵なホワイトデーを。」

ってドアを閉められてしまった。
え? え? どういうこと???
もしかしてこれってお前みたいな客出て行けってこと?

呆然と立ち尽くしていると、

「やっときたか。行くぞ。」

突然暗がりから声をかけられて飛び上るほど驚いた。

「に、に、西門さん!? 何処から出てきたのよ!!」

「ん? あっち。さ、行くぞ。」

西門さんが「あっち」って指差した方に歩いて行くから、訳がわからないままついて行くと広い路地に出て。
そこにどう見ても西門さんの物と思われる派手なスポーツカーが停められていた。

「乗れ。」

「―――――何で命令? それに何処に行くの?」

あたしの質問に答えてもくれずにドアを開けると、半ば無理矢理あたしを押し込んだ。

「ちょ、ちょっと!!」

「こんなとこにいつまでも車停めておけねぇだろ?」

そう言うと、西門さんは助手席のドアを無理矢理閉めて、自分は運転席に乗り込むと颯爽と走り出した。
はぁ・・・・相変わらずこの人達の我儘さにはあきれ果てる。

「つくしちゃん、来てくれて嬉しいよ。」

「あ、あたしはタクシー代を返しに来ただけだから!!」

慌ててバッグの中から封筒を取り出し西門さんの目の前に差し出す。

「お前、運転中に危ないだろ! しかもまた可愛げのないことするな。」

「だって奢ってもらった上にタクシー代まで出してなんてもらえない!」

「相変わらず律儀なやつ。言ったろ? そういう可愛げのない女はモテないって。」

「そんなことでモテたくないもん。」

何故か西門さんは爽快に笑った。
あ、なんかこんな顔久しぶりに見たかも。

「だよなー、それでこそ牧野つくしだよ。」

って、なんだか嬉しそう。良くわかんないなぁ。
取りあえず返すから!って言って、お金の入った封筒をダッシュボードの上に置いた。
西門さんはそれ以上何も言わなかった。

しばらくすると車は何やら豪勢なマンションの地下駐車場に停められた。
西門さんに促されるままエレベーターに乗って。
最上階のとある部屋に入るよう促された。

「俺の部屋。」

「え?西門さんの部屋!!??」

「お前今、嫁入り前の女が一人暮らしの男の家にあがるなんて出来ない!って思っただろ?」

うっ・・・・何も言い返せません。

「別に此処に住んでる訳じゃないんだ。此処は憩いの場所・・・みたいなもんだ。
 ホワイトデーなんて何処行っても混んでるから、偶にはこういうところでゆっくりするのもいいだろ?」

いやいや、偶には・・・って、あたしはあんたと二人きりになることすらほとんどなかったから。
―――って、ぶつぶつ考えているうちにさっさと部屋に押し込まれた。

案内されたリビングは中央にソファーが置いてあるものの、無駄な物が一切なくてガランとしていた。
ガランとした感じが寒さを感じさせなくもない。

「牧野、こっちだ。」

でもそのリビングを通過して奥の部屋に案内された。

「え? 和室?・・・・・・え? 茶室なの!!??」

そんなに広くはないけれどこじんまりとした、でも手入れの行き届いた綺麗な茶室。

「一人で茶を立てたくなる時があると此処に来るんだ。」

「・・・・ねぇ、もしかしてそれだけの為にこのマンション買ったの?」

「そうだけど?」

そして改装までしちゃった訳ね・・・・。
わかっちゃいたけど、やっぱりこの人達の金銭感覚はわからない。


その後西門さんはいつものごとく流れるような動作でお茶を点ててくれた。
その動作を見ているだけで心地良くなる。
そして頂いたお茶は・・・
やっぱり流石は次期家元様だよ。
お茶の味が全然違う!!

思わず感嘆の溜息を吐いてしまった。
ホワイトデーにこんな美味しいお茶を頂けるなんて幸せ過ぎる。

「西門さんのお茶・・・久しぶりに頂いたけど・・・」

「けど、何だよ?」

「すっごく美味しい!」

心からそう言ったら、なんだか照れたように笑ってくれた。
茶室独特の少しだけ張りつめたような空気も凄くイイし、なんだかとても得した気分。

もう少し余韻に浸っていたかったんだけど、西門さんに促されて二人でリビングに移動した。
このまま帰った方がいいんだろうか?って思いながら促されるまま部屋の中央に置かれているソファーに腰を下ろした。

「お前、今も茶、習っているんだって?」

「えっ!?」

・・・・実はお茶、細々とだけど続けている。
せっかく次期家元である西門さんに教えてもらったんだからそれを無駄にしたくなくて・・・
一応西門流の教室にこっそりと通っている。
偽名使っているし、わからないと思ったんだけど・・・・?

「ま、まぁ・・・細々と。」

「ふうん。」

そう言ってニヤリと笑うその顔! 絶対に全部知ってるって顔だから!!

「あの・・・ありがとね、西門さん。
 あたしなんて何もあげてないのにこんな素敵なホワイトデーのプレゼントもらっちゃって。」

言ってからあの日のことを思い出して顔が赤くなった。

「何勘違いしてんの? これプレゼントなんかじゃねぇから。
 それにあの日は貰っただろ。つくしちゃんの唇チョコ。」

「な、な、何言ってんのよ!!!」

西門さんは面白そうにクスクスと笑って。
徐にソファーの隅から何やら品のある包みを取り出した。

「ほい。バレンタインのお返し。」

「へ?お返しって・・・さっきのお茶で十分だよー!!」

「あれはあれ。これはこれ。」

そう言って無理矢理押し付けられた包み。
あれ? なんだか凄くいい匂いがする・・・?
思わず鼻に近付けてくんくんと匂いを嗅いでみる。
和の香り。
何だろう? 柚子の香りがほんのりするけど、木のような香りもする。

「ぷっ! お前犬かよ。」

西門さんはあたしの手からそれを取り上げるとがさがさと包みを開け、中身を取り出した。

「あ、香水!?」

と言っている間に、"シュッ"って首元に一吹きされた。
とたんに爽やかかつ重厚な香りがあたしを包む。
何だろう? ほのかにヒノキの香り?

「いいだろ、これ。」

「うん、すっごく落ち着く香り。なんか和って感じだね。」

主香料の欄を見ると、ユズ、ヒノキ、ボロニア、ジャスミン・・・などが書かれている。

「因みにこっちは俺がいつもつけてるやつ。」

って、脇の方から取り出した別の香水を今度は自分の手首にシュッと一吹きするとあたしの前に差し出した。

「ほら、これもいいだろ?」

に、西門さんの手首の匂いを嗅げと!?
結構敷居高いんですけど!!

どうして良いかわからずに固まっていると、早く嗅げ!とばかりにぐいぐいと手首を押し付けてくるから・・・
若干顔を赤らめながらそっと西門さんの手首に顔を寄せた。


続く


__________


総二郎のテリトリーに連れ込まれー、何だかいい感じの2人。
結局総二郎の言うとおりにしちゃうつくしが可愛いです♪
続きはまた明日。お昼12:00UP予定です!

りく様のお部屋は 恋花-koibana- です。
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優しいキス -後編- by りく様

昨日の「優しいキス -前編-」に引き続き、後編UPです!
いい雰囲気の2人、この後どうなる?


優しいキス -後編-


ドキドキしながらそっと西門さんの手首に顔を寄せると、ふわりと和の香りが漂う。

「あっ、この香り・・・・お線香みたいな・・・」

そう。お線香の様な香りだけどそれとはちょっと違う、もっと深い香り。
茶人の西門さんに凄く合う香りだと思う。

「これ、白檀の香水なんだ。白檀の他にもレモンとかグレープフルーツとかの香りも配合されてるけどな。」

「あぁ、白檀って癒し系の香りだって言われてて、よくお香とかに使われてるよね。」

確か英語ではサンダルウッド。
材は仏像や扇子、お線香などに使われているって聞いたことがある。
知らなかった。こんな和の香りの香水があるって。

時々西門さんからふわりと漂っていた和の香りはこれだったんだ。

「で、この二つの香水を合わせると、これまたイイ感じなんだぜ。」

そう言うと徐に香水を吹きかけた右手首をあたしの首筋に擦りつけてきた。

「ちょ、ちょっと!!」

背中に何かゾクリとしたものが走り抜ける。
何、これ!!

慌てているあたしを面白そうな顔で見ている。
絶対これ、遊ばれてるよね!?
悔しいから、全然平気そうな顔をしてみせた。
そんなあたしの心内を知ってか知らずか再びあたしの顔の前に差し出される右手。

「ほら。嗅いでみろ。」

またですか?
怒るに怒れずに、そのまま再び顔を近づけた。

今度はさっきと違った優しい香りがふわりと漂う。

「あ、なんかちょっと柔らかい香りになった感じかも。」

「だろ?」

嬉しそうにそう言った西門さんが急に顔を寄せて来て!!
あたしの首筋に顔を埋めた!!!!??

「ひっ!!!!!」

首筋に西門さんの鼻が触れて・・・
我ながら情けない声が漏れる。

「んー、やっぱいいわ、この香り。」

そう言ってようやく体を離してくれたけど、あたしは硬直したまま動けない。
何してくれちゃってるのよ!! あたしは男に免疫なんてないんだから!!
と叫びたくても叫べずに呆然としていると・・・

「どうした牧野?」

ってしれっとした顔で聞いてくる。
一人で恥ずかしがっているあたしが馬鹿みたいじゃない。

そうだよね、西門さんにしたらこんなの日常茶飯事。
こうして香水を女の人に贈って、同じようなこと何度もしてるんだろうな。

「おーい、牧野ー!?大丈夫か?」

「な、何でもないわよ!」

ようやく冷静さを取り戻した。
大丈夫、大丈夫。落ち着けあたし!!

「この香り、牧野の為に選んだんだ。毎日つけろよ?」

いつの間にか綺麗に箱に戻され包装された香水を手渡された。

「うん。・・・・ありがとう。」

はぁ・・・やっぱりあたしにはこういう空気苦手だ。
西門さんとも馬鹿な話で盛り上がっている方がイイ。
なんかこういうのって変に男と女を意識してしまう。

――――でも・・・意識しているのはあたしだけなんだろうな。

そう思うと、何故か胸がズキンと痛んだ。



**********



電車で帰るから大丈夫だって言ったのに、結局西門さんは車で家まで送ってくれた。
タクシー代をくれるような人だもの、電車で帰るなんて言うあたしを放ってはおけないのだろう。

車の中にほんのりと白檀の香り。
あたしの香りも西門さんに届いているのだろうか?

帰りはなんだか静かで。
ほとんど会話らしい会話もせずにアパートに到着した。

「今日は・・・・ありがとう。香水も嬉しかった。」

助手席のドアを開けようとした瞬間、その腕を押さえられた。

「西門さん?」

「牧野・・・・」

やけに顔が近くてドキドキする。
な、何・・・?

「また俺のマンションに来い。」

「へ?」

「茶、教えてやる。」

「ええぇーーっ!? い、イイよ!! 西門さんだって忙しいだろうしっ!!」

茶道は凄く楽しいけど、次期家元様に直々に教え貰うなんて勿体なすぎる。

「あ、稽古料の心配はしなくてイイぞ?」

「タダで教えて貰うなんてもっと無理っ!!」

タダって言葉を出したら頷くと思ったら大間違いなんだから!!
でも西門さんの言葉は違った。

「誰がタダで教えるっつった?」

「え?違うの?」

「たまにあの部屋来て掃除して欲しんだ。ハウスクリーニングに頼むのも面倒くせぇし。
 弟子にやらせてもいいんだけどあの場所は家のやつらは出入りさせたくねぇんだ。」

自分で掃除するって選択肢はない訳ね。
ま、ある訳ないか。

「あと・・・・たまに俺の茶を飲んで欲しいんだ。」

「え!?」

な、なんか今凄いことを言われたと思ってしまうのはあたしだけ?

「西門流とかそういうの抜きにして、自然体で茶を点てたいんだ。
 で、それを誰かに味わってもらいたいんだ。――――駄目か?」

次期家元として頑張っている西門さん。
毎日気が抜けなくて大変なんだろう。
時にはそんなもの全部とっぱらって純粋にお茶を点てたい・・・ってことだよね?

「あたし、本当に飲むだけしか出来ないよ?」

茶道のなんたるか・・・なんて深いところまでわからないもの。

「それがいいんだ。そうして欲しいんだ。」

もしかしたら西門さんも・・・寂しいのだろうか?
ガランとした西門さんのマンションを思い出して、なんとなくそう思った。

「――――わかった。そんな頻繁には行けないと思うけど・・・・」

「サンキュ・・・」

小さく呟いた西門さんの顔が照れているように見えたのは気のせいだろうか?

「じゃあ連絡先交換しようぜ。ちょっと携帯貸せ。」

「あ、うん。」

携帯を西門さんに渡すと器用にあたしと西門さんの携帯を操作して。
あっという間に互いの連絡先を登録してくれた。

「総二郎で登録してあるから間違えるなよ。」

「何で西門じゃないのよ!」

「んー・・・なんとなく。」

なんとなくって!!
誰にも見られないように注意しなきゃじゃない!!

「牧野・・・・」

ふいに呼ばれて西門さんの方を見たら・・・・

――――えっ!?

唇が重なった。

ふんわりと抹茶の香り。
そっとあたしの顎を押さえる西門さんの右手からは微かな白檀の香り。

その香り達に包まれて・・・あたしはそっと目を閉じた。



―――――その後どうやって部屋まで戻って来たのか記憶が定かではない。
多分、西門さんが部屋の前まで送ってくれたんだと思う。

気付いたら部屋の真ん中で唇に手を当てて座り込んでいた。

西門さんにとってキスなんて挨拶代わりかもしれないけど、あたしはそうじゃない。
それは西門さんもわかっていることだよね?

ならどうしてあんなことを?

そしてあたしはあの時どうして目を閉じたのだろうか。
まるでもっと先を期待するかのように。


あの人に抱き締められた腕からほんのりと白檀の香りがして・・・何故か涙が溢れた。



続くかも?


__________


あー、つくしちゃん泣いちゃったー。
何で涙が出て来たのかしら?
どんな思いが胸に湧いてきたのかしら?
そして総二郎の本心は?
これは続きが待たれます!
だーかーらー、「続くかも?」じゃないですよ、りく様!
こんな終わり方、許されるワケないんだからっ!

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長いキス -前編- by りく様

Blog開設2周年、プチイベント開催中です♪
お祝いに・・・とお友達のりく様から「キスシリーズ」の続編をプレゼントして頂いちゃいました!
あの涙ぽろりしていたつくしと本心を見せないミステリアスな総二郎の続きのお話!
どうぞお楽しみ下さい!


長いキス -前編-


西門総二郎。
根っからの遊び人のあの男に、最近のあたしは翻弄されている。
西門さんの道楽(?)の為のお部屋のお掃除をする代わりに、お茶の御稽古をつけてもらっている。
まぁ、教えてもらっているっていっても、あれからまだ1ヵ月ちょっとしか経っていないし、2回だけなんだけど。
流れるような西門さんの手の動きを見ているだけで勉強になるし、そのお茶を飲ませて貰えるなんてお茶を習っている身としてはこの上ない幸せだ。

だけど・・・・
あの日・・・・ホワイトデーの日に車の中でされたことを思い出して、どうしても意識してしまう。
意識し過ぎだってことはわかっている。
西門さんにしたらキスなんて挨拶みたいなもんで、あの日のことだって覚えてもいないんじゃないかって思う。
でも・・・・あたしはそうじゃないから・・・・・
そんな簡単には割り切れない。

それなら行かなきゃいいのに・・・・・・・

そんな意識しまくりのあたしとは裏腹に、いつも通りの西門さんにも少し腹が立つ。
まぁ、いいんだけどね。
西門さんのお部屋のお掃除をして、その後御稽古をしてもらって、家まで送ってもらう。
それだけのこと。
あの日のことは単なる西門さんの気まぐれ。なんとかそう自分に言い聞かせていた。


「・・・きのさん、牧野さん?」

「あっ、は、はいっ!?」

「もう・・・僕の話全然聞いてなかったでしょう?」

「あぁ・・・・うん、ごめん。えっと・・・なんだっけ?」

目の前にはにこにこ顔のイケメン後輩、一つ年下の三上拓海君。
イケメンとはいっても、母性本能を擽るベビーフェイス。かなりモテるらしい。
そんな三上君が最近良く話しかけてくる。

「この後どこかで飲み直しませんか?」

今日は会社の飲み会。
あまり気乗りしなかったんだけど、いつの間にか参加者欄に〇をつけられていた。
犯人は目の前の三上君じゃないかって思ってるんだけど・・・・

「お気遣いありがとう。あたしは帰るから皆で二次会行っておいでよ。」

そう言うと、盛大な溜息を吐かれた。

「もしかして牧野さんってかなりの鈍感?」

「はぁ?」

「一応誘ってるつもりなんだけどなぁ。飲みに誘っても全然のってくれないから無理矢理今日の飲み会に参加してもらったのに。」

・・・・やっぱり三上君の仕業か。
誘ってるって・・・・・嘘でしょ?

「ははは。お姉さんをからかってはいけません。」

「お姉さんって、歳一つしか違わないでしょ?」

にこにこ笑ってるこの顔で相当の女を泣かせてるって噂。
そんな三上君がなんであたし?

「牧野さんってさ、僕に全然興味ないでしょ?」

「そんなことないよ?」

一応社交辞令を言ってみた。
本当は全く興味ない。

「だから興味が湧いた。」

はぁ・・・・自分に落とせない女はいない・・・ってタイプか。厄介だな。
っていうか、面倒。
なんだかガンガンと攻めてくる三上君。
のらりくらりとかわしながら、勧められるがままにお酒を飲んでいるうちに・・・・酔っぱらった。

気付いたら頭がぼーっとして、焦点が定まらない。
三上君はニヤニヤしている。
これって嵌められた?
でも大丈夫。まだ意識ははっきりしてる。
そろそろお開きみたいだからタクシー呼んでアパートまで帰るだけ。
それくらいならなんとか大丈夫!

「牧野さん大丈夫? 家まで送って行くよ。」

三上君がそう言って、あたしのバッグに手を伸ばすから大慌てでそれを抱え込んだ。

「だ、大丈夫だってば! タクシーで帰るから。」

「でも相当酔ってるし危ないから。大丈夫、襲ったりしないから安心して。」

って、送ってくれる気満々らしい。
あぁー、どうしよう。
断りたいけど、酔いのせいで考えが纏まらない。

――――と、その時携帯の着信音。
画面には"総二郎"と表示されていた。

西門さん!?

「ちょっと電話だからごめん。」

三上君にそう断って、少しフラフラしながら店の外に出た。

『もしもし・・・・』

『あ、俺。牧野今何してる?』

あ、俺で通じると思ってるのかこの男は。

『会社の飲み会・・・・』

『ふーん・・・・まだ終わんねぇの?』

『そろそろ終わると思うけど・・・・・どうかした?』

『ん、明日暇だったら稽古来るか?』

『うん・・・・大丈夫だと・・・・・思う・・・ん?あれ?大丈夫だったかな?』

なんだか明日の予定さえ思い出せないあたし。やばいよ、結構酔ってるよ。

『なんか微妙に呂律回ってないぞ? 酔ってんのか?』

『大丈夫だよー。』

『・・・・・大丈夫じゃねぇだろ。――――今から迎えに行く。店、何処?』

『はっ!? 迎えなんていいよ!』

『いいから店の名前言え。』

『タクシー呼んで帰るからいいって。』

その時、肩をポンって叩かれた。

「牧野さん、もうお開きだって。ほら、上着持ってきたよ。
 皆二次会行くみたいだけど帰るっていうからタクシー呼んだから。」

「み、三上君!? あ、あぁ・・・・ありがとう・・・」

慌てて携帯を後ろに隠したのだけど・・・・絶対西門さんに聞こえちゃったよね。
っていうか、三上君も酷くない?
電話してるってわかってて話しかけてくるなんて!

「ちょ、ちょっと待ってて!!」

三上君から少し離れて、慌てて携帯を耳にあてた。

『に、西門さんごめんね! なんか今お開きになったみたいで・・・・
 えっと、タクシー呼んでもらったみたいだからそれで帰るから。』

『三上君・・・・』

『へっ!?』

『そいつに送ってもらうのか?』

『ち、違うよ!一人で帰るから!!』

『ふーん・・・・』

『と、取りあえず帰ったら電話するね。予定も確認しておくからっ!!
 ごめん、そろそろタクシーくるから切るね!!』

一方的にそう言って電話を切った。
――――なんかすっごく脱力。
ちょっと酔いもさめたみたい。
・・・・なんで西門さん相手にこんな言い訳みたいなこと言ってるんだろ。

「牧野さん、電話の相手、彼氏?」

三上君がにこにこ顔で寄って来た。

「ち、違うから!」

「そっか。じゃあ問題ないね。一緒に帰ろ。」

って、腕を引かれて。

「タクシー来たみたいだから。」

そう言って、無理矢理タクシーに押し込まれた。
当然のように一緒に乗って来る三上君。

「ね、あたし一人で帰れるから!」

「あ、運転手さん出して下さい。」

あたしの言葉なんて無視して運転手さんにそう伝えると、タクシーは走り出してしまった。

「牧野さん、そんな警戒しなくても大丈夫だよ。
 方向が一緒だから便乗してるだけだから。牧野さんちの方が近いからそっち先でイイ?」

――――そう聞かれたら・・・なんかいつまでも騒いでいたら意識してるみたいで恥ずかしいじゃない?
再び酔いが回ってきたのもあって、なんだかどうでもよくなってきて・・・・

「わかった。じゃあうちを先にお願いします。」

そう言って、運転手さんに行先を告げた。
目を瞑るとぐるぐると世界が回るから、薄目を開けてまっすぐ前を見ていた。
三上君が色々話しかけてきたけど、ほとんど頭に入ってこなかった。

ほどなくしてあたしのアパート前に到着。
お金を出そうとしたら、立て替えておいてくれるって言うからお礼を言ってタクシーから降りた。
三上君にありがとう・・・って挨拶しようと思ったら・・・ え!?なんで三上君も降りてるの!?
タクシーもう走り去っちゃったし!!

「牧野さん心配だから、やっぱり部屋まで送って行くよ。
 階段踏み外したりしたら大変でしょ?」

「ちょ、ホントに大丈夫だって! タクシー帰しちゃってどうするのよ?」

「泊めてもらおうかなぁ~?」

「え゛!!!!???」

「嘘、嘘!大丈夫だよ、部屋まで送り届けたら通りに出てまたタクシー拾うから。」

――――それならタクシー待っててもらったら良かったんじゃない?
そう思うのだけど、なんだかもう疲れて・・・・・
とにかく早く部屋に戻って横になりたかった。

「ほら、歩ける?」

体を支えられて、階段を登ろうとしたら・・・・・
あれ!? な、何!!??
体がふわっと浮いた気がして、気付いたら誰かに強く抱き止められていた。
唖然とした顔であたしを見ている三上君。
ってことは、この人は・・・・・?

微かな白檀の薫り。

恐る恐る顔を上げると・・・・・やっぱり・・・・・

「西門・・・・・さん・・・・」

なんだか顔を引き攣らせた西門さんがあたしの腰に手を回して支えてくれていた。

「遅かったな、つくしちゃん。」

そう言ってにっこりと笑うその顔、上辺だけで笑ってないから!
――――なんだか相当怒ってる!?

「あの・・・・・」

「あぁ、同僚の三上君・・・だっけ? こいつのこと送ってくれてありがとう。
 後は大丈夫だからご心配なく。」

ものっすごい不機嫌オーラ。
言葉は丁寧だけど、脅しているようにしか聞こえないのはあたしの気のせい?

「・・・・・・わかりました。じゃあ、牧野さん、僕はここで。」

「あ、うん、ごめんね、三上君。送ってくれて・・・・ありがとう。」

「いえ・・・じゃあ牧野さん、例の約束忘れないでね。」

へ?例の約束って何!?
不穏な言葉を残して去っていく三上君の後ろ姿を見送りながら・・・・また頭がぐらぐらしてきて・・・
なんか立ってられない!って思ったら、西門さんの強い手ががっしりとあたしを支えてくれた。

そのまま支えられてアパートの2階へ。
部屋の前に着くと・・・・

「部屋の鍵、出せ。」

西門さんに言われるがまま、アパートの鍵を手渡した。



続く


__________



迂闊な鈍感ちゃんで酔っぱらいときたら、これはもう鴨葱状態か?(苦笑)
お怒りモードの総二郎にどんな風に料理されちゃうのか?
ドッキドキの続きは明日・24日のお昼12:00UP予定です!

りく様のお部屋は 恋花-koibana- です。
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長いキス -後編- by りく様

昨日の「長いキス -前編-」に引き続き、後編もりく様より届いております!
酔ってぽやんとしているつくしと、お怒りモードの総二郎。
続きをどうぞ!


長いキス -後編-


「あの・・・・・・西門・・・・さん?」

「何だ?」

「えっと・・・・・・・・・・」

せっかく来てくれたのに、もう帰っても大丈夫だよ・・・って言ったら悪いかな?
酔った頭でそんなことを考えていると・・・・
いつの間にか勝手にキッチンでごそごそし始めて。
しばらくすると、あたしの前に湯呑が置かれた。

「濃いめにしといた。飲め。」

あ・・・・緑茶?
湯呑からは湯気が出ていて、美味しそうなお茶の香り。
うちの安いお茶なのに、西門さんが淹れてくれると高級に感じちゃうんだから不思議だよね。

「はぁ・・・・おいしい。」

まだぐらぐらする頭を懸命に持ち上げて、西門さんの方を見ると、ギロリと睨まれた。

「お前、俺が来なかったらどうなってたと思う?」

「へ? どうって・・・・うーん、酔ったままベッドにダイブで明日の朝酷い顔になってたかな?」

「そうじゃねぇだろ!」

って怒られた。
大きな声を出すと、頭にキーンってくるんだけど!!

「俺が来なかったら今頃あの男にヤラレテたぞ。」

「まさか!」

「―――――お前アホか? 酔った女を部屋まで送る男に下心がない訳ねぇだろ!
 しかもあの男はお前に気があるみたいだし。」

「そ、そんなことないよ!!」

「それとも俺がこうして来たのは迷惑だった? あの男と二人きりになりたかったのか?」

「そんな訳ないじゃない!
 ―――――だって・・・・・一人で帰るって言ったのに、無理矢理ついてきちゃったんだもん。」

「隙があり過ぎなんだよ! だから迎えに行くっつっただろ?」

「・・・・・・・・・・・」

なんでそんなこと言うのよ。
だってあたしと西門さんってそんな仲じゃないじゃない?
ついこの間再会して、時々お茶の御稽古してもらってるだけじゃない?
なのに、どうしてそんなこと・・・・・

あぁ、ダメだ。
俯いていると益々頭がぐらぐらしてくる。
ホッとしたせいか、急に力が抜けたみたいで・・・・・

体が大きくグラリと揺れて、あっ、倒れる?って思ったら。

「馬鹿牧野! 飲みすぎなんだよ。」

西門さんが倒れそうなあたしを抱き止めてくれていた。
そのままぎゅって抱き締められる。
あぁ・・・・西門さんの香り・・・・

「あんま心配させんな。」

何でそんなこと・・・・言うの?
急に心臓がバクバクしてくる。

「俺達は皆、お前が心配なんだよ。危なっかしくて見てらんねぇ。」

オレタチ・・・・・
そっか。もしかしたら西門さんは皆の代表としてあたしの面倒を見てくれているんだ?

いつからか少しずつ距離を置き始めたあたしに、皆、そんなにしつこいことを言ってこなくなったのはわかっていた。
でも見守ってくれているのもわかっていた。
今、あたしのお茶の御稽古をしてくれているっていう間柄の西門さんが一番あたしに近い。
だから皆の代表としてあたしの面倒を見てくれているの?

―――――相変わらず皆優しすぎだよ。

西門さんも・・・・・・優しすぎ。

「おい、気分悪いのか?」

黙って抱き締められたままでいるあたしを心配して、西門さんが体を離してあたしの顔を下から覗きこんでくる。

「うん・・・・・ちょっと・・・・気分悪いかも。」

そう言って目を瞑った。
目を開いていたら、あたしの気持ちが全部漏れてしまいそうな気がして。

「吐きそうか?」

心配そうな声。
その声に何故かホッとしてしまうあたし。
きっと酔っぱらって心が弱ってるからだ。

「取りあえず布団に横になれ。お前が寝たら俺も帰るから。
 鍵は悪いが持っていくぞ。どうせ明日休みだろ? また昼に来るからそれまで寝てろ。」

明日・・・・また来てくれるの?

「明日はビシビシしごいてやるからな。覚悟しとけ。」

あぁ、そっか。明日御稽古してくれるって言ってたよね。

「ほら、ベッドに行くぞ。それともお姫様だっこ、して欲しいのか?」

「なっ、だ、大丈夫だよ!」

もう!すぐにそういうこと言うんだから!!ってブツブツ言いながら立ち上がった。
でも流石は酔っ払い。
急に立ち上がったからかな? 足元がフラフラして・・・・・・
あれ~?って思ったら、崩れ落ちそうな体を再び西門さんに抱き止められていた。

「ご、ごめん・・・・・」

慌てて離れようとしたのだけど・・・・あれ? なんだか益々強く抱き締められてる?
そして首筋に西門さんの吐息。
な、なんで首筋に顔埋めてるの!!??

―――――でもなんだか・・・・心地良い・・・・・かも・・・・・

体の力をふっ・・・と抜いたら・・・

「ちゃんと香水つけてくれてるんだな。」

耳元でぼそっと囁かれた。
途端に体中がぱーっと赤くなるのがわかった。

西門さんにいつもつけてろよ!って言われたけど、なんだか恥ずかしくて・・・・
あの後西門さんと逢った二日間とも香水をつけられなかった。
その度に、ちゃんとつけろ!女の嗜みだ!とか言われて怒られたのだけど・・・
今日は飲み会だし・・・って思って、初めて香水をつけてみた。
会社の同僚に、「あれ? 香水つけてるんだ? 良い香りだね?」なんて言われて嬉しかったっけ。

「西門さんが五月蠅いから・・・・」

首筋に顔を埋められたまま、ふっ・・・て西門さんが笑うのがわかった。
ダイレクトに振動が伝わってきて、ドキドキする。

「毎日つけてろよ。約束な?」

そう言って、ようやく首筋から顔を離してくれたと思ったら、今度はじっと見詰められて。
その漆黒の瞳に吸い込まれそう・・・・って呆けていると、西門さんの顔がどんどん近づいてきて。

「―――――!!!!」

――――唇がそっと重なった。
どうしてまたキスするの?
そう思ったけど。
何しろ酔っぱらっているし、西門さんの体温が心地良くて。
ついつい目を閉じて、西門さんの背中にそっと手を回していた。

すぐに離れて行くと思った唇は思いのほか長い間そこに留まっていた。
ようやく離れていったと思ったら、それは一瞬で。
すぐにまた唇を重ねられた。

何度も何度も触れては離れて、離れては触れてくる唇。
やがてそれは甘い痺れを伴って、長くあたしの唇に重なり続けた。

息が苦しくて西門さんにしがみ付いてわずかに唇を開くと、またその唇は離れて行く。
そしてすぐにまた重なる唇。

決して深くはないのだけど、長い長いキス。

一体いつまで続くのだろうと思ったその時、ようやく西門さんの顔が離れて行って・・・・
そのまま強く抱き締められた。

バクバク言ってる心臓の音が絶対に聞こえてる!!って思ったら、急に体がふわりと浮いて。

「えっ!?」

西門さんに抱き上げられていた。
所謂お姫様だっこ。

そのままベッドまで運ばれて、丁寧にお布団に寝かされた。

「酔っ払いは早く寝ろ。」

そう言って、西門さんはベッドの横に腰を下ろしてしまった。
本当にあたしが寝るまで居てくれる気なのだろうか?
こんな時、何て言えば良いのかわからない。

「寝れないなら、添い寝してやろうか?つくしちゃん。」

「け、結構です!!」

あんなことした後に、こんな冗談をさらっと言えちゃうなんて・・・・
やっぱりこの人にとってキスなんてなんともない行為なんだなって思い知らされる。
―――なんでだろう? 胸がツキリと痛む。

これ以上面と向かっていたら、なんだか自分がおかしくなりそうな気がして。
ぎゅっと目を瞑った。
少しずつ気持ちを落ち着けて、吐息を穏やかに、穏やかに・・・・と自分に言い聞かせる。
やがて、すうすうと、寝息のような吐息になる。
寝たふりしているの・・・・ばれてるかな?
そう思いながらも、すうすうと眠り続けるあたし。

やがて、隣で西門さんが立ち上がる気配がして。
小さな声が聞こえた。

「明日、また来るからゆっくり休めよ、牧野。」

勿論それに応えることなんて出来なくて。
そのまま寝たふりを続けるあたし。

やがて、玄関がバタンと音を立てて、西門さんが出て行ったことを知らせてくれた。

起きてお風呂に入ろうかと思ったのだけど、結局そのまま目を閉じた。
西門さんの好意を無にしたくなかったから。

――――ううん、違う。

この唇に感じた熱を、今はまだ忘れたくなかったから。

今夜だけ甘い夢を見てもバチは当たらないだろう。
だってあたしは・・・・・・

「西門さんの馬鹿。」

そう呟いた言葉が、やけに女の声に聞こえた。



続くかも?(笑)



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



<後書き>

hortensia様、ブログ開設2周年おめでとうございます!!
初めて訪問させて頂いた時は、狂喜乱舞したのを覚えています。
だって、お話の書き方がとっても素敵で私の好みドンピシャだったから!!
それ以来ずーっと大ファンで、まさかその時はこうしてお話を出来るような仲になるとは思ってもいませんでした。
hortensia様と出会っていなかったら、こうして総つくを書くことなんて絶対なかったと思います。
時々こうして書かせて頂くことがとっても楽しみだったりしますww
この作品が果たしてお祝いになるかどうか微妙なのですが、お祝いとして贈らせて頂きます。
これからも素敵なお話を提供し続けて下さいね!!
そして例の企画、楽しみにしていますよー(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

りく


__________



りく様、素敵なプレゼント、有り難うございました!
いやあ、なんてチューするのよ、総二郎。
それ、酔っ払いじゃなくたってぽーっとしますわよ!
っていうか、2周年まで頑張った管理人にそのキスをくれえ!!!(爆)
そしてまた「続くかも?(笑)」なんだもん。
もう長期連載にして頂こうと思ってますからー!
つくしの気持ちはどんどん傾いて・・・
でも総二郎の本音は見えてこなくて・・・
この2人の続き、ホント気になります!

りく様のお部屋は 恋花-koibana- です。
ご感想、応援のコメントは、こちらに送って頂くのでも、りく様のお部屋に直接送って頂くのでもOKです♪
皆様の熱ーい続編希望のお声、りく様に届けましょう!
勿論管理人も猛プッシュします(笑)


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