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花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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契約愛人 1

お友達・りく様とのコラボ企画、本日よりスタートします!


__________



ヤダっ! ホントに困る!
ここは逃げるしかないでしょ!

「牧野サン、ちょっと待ってって!」

順平君があたしに向かって手を伸ばすのを目の端っこで捉えた。
肘の辺りにその指先が掠ったら、背筋がイヤーな感じにぞわりとして。
掴まってなるものかと、身を翻して走り出す。
低めとはいえ靴はヒールだし、タイトスカートだし、思ったように早く走れないけど、必死で逃げた。
後ろからは足音と、「牧野サンってば!」という声が追い掛けてくる。
すっかり日が暮れた夜道は、何故か人っ子一人いない。

もっと人通りのあるところに行かなきゃ。
大きな道路はどっちだっけ?

頭の中はフル回転。
でも身体はバテバテ。
息も乱れて、脚も重たくなってきた。

ああ、もうダメだ、掴まっちゃう・・・

そう思いながらも動かない脚を無理矢理前に押し出しつつ何とか走っていたら、隣に車が爆音と共に滑り込んできて、あたしの真横でキキーーーっと音を立てて止まった。
メタリックシルバーの流線型の車。

あれ? これって・・・

「牧野!」

助手席のドアがすっと開き、中からはよく知っている人の声がする。

「西門さん?!」
「早く乗れ!」

その声に導かれるように、慌てて車に乗り込んだ。
バシンと音を立ててドアを閉めた途端、一気にアクセルを踏み込んだ車はまた爆音を響かせ、更にキュキュキュとタイヤを軋ませながら走り出す。
訳も分からないまま、ドアミラーを覗き込むと、道路に立ち尽している順平君が映っていた。

「はぁ・・・ はぁ・・・ はぁ・・・」

走り過ぎて息が苦しいのを、深呼吸して何とか整えようとする。

あぁ、助かった・・・
って、あたし、何でこの車に乗ってるんだっけ?

恐る恐る運転席の方に顔を向けると、西門さんのいつも通り整った綺麗な横顔。
でもこの冷たいオーラに覆われてるってことは・・・
もしかしてちょーーーっとお怒りモード?

「ね、西門さん・・・?」

どうしてあそこを走ってたの?
何であたしを助けてくれたの?

そう聞こうとした時に逆に西門さんが質問を投げてきた。

「牧野、お前、何があったんだよ?」

そう聞かれて、さっき順平君にされたことが頭の中に一気にフラッシュバックしてきた。
言葉で説明するよりも先に、恐怖と安堵のせいで涙が溢れ出す。
ぽろぽろと涙を零していたはずが、だんだんしゃくりあげる様に泣いてしまった。
そうなると涙は止まるところを知らず、後から後から湧いてくる。
まるで子供に戻ったかのように、わんわん泣いて。
でも西門さんは、それ以上は聞かずにあたしを放っておいてくれた。

いつも強がってるところばかりを見せてた西門さんの隣で、あんな風に泣いちゃうなんて。
あの時のあたしは、どうかしてたんだと思う。


-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


大学を卒業後、類と美作さんは、早速海外への武者修行に出された。
ゆくゆくは日本の本社でそれなりの役職につくであろう2人。
海外でその腕を磨いて来いという親心なんだろう。
道明寺がNYで頑張っているのも、刺激になったのかもしれない。
そうやってF2が各々の決まったレールに乗って仕事を始めた頃、あたしは必死に就職活動をしていた。
それを一番近くで見ていたのが、大学院に残った西門さんだった。
まだまだ気儘な学生生活を続けたい。
西門にどっぷり浸かるのを少しでも遅くしたいという悪足掻き。
そんな言い訳をしながらあっさりと院試をパスした西門さんは、春になっても以前と変わらずVIP専用ラウンジの主として君臨し、その友人という恩恵に与ったあたしと桜子も、そこに出入りしていた。
ゼミと、就職課通いと、手応えの薄い就職活動、そしてバイト。
それの繰り返しでへロっていたあたしが、ラウンジのソファで桜子相手に就職戦線の厳しさを滔々と語っていた時、それまで素知らぬ振りしていた西門さんがぽろっと言ったんだ。

「牧野、西門の茶道資料館で新卒募集してたぞ。
お前、食いっぱぐれないようにとか言って、図書館司書と学芸員の資格取ってたろ。
試しに応募してみたらいいんじゃねえの?」
「え? そんな募集あるの?
いっぱい応募先調べたのに、全然知らなかったよ!」
「ああ、あんまり大々的に公募してないらしいからな。
普段から付き合いのある大学にしか募集かけてないんじゃないのか?
倍率低そうだし、お前、一応茶道経験もあるんだから、ま、ひょっとするとひょっとするかもな?」

そう、あたしは時々お茶のお稽古をつけてもらってる。
次期家元である、西門さんから直々に。
お稽古代は「別にタダでいいよ。つくしちゃんから儲けようとは思ってねえ。」という西門さんに、そうはいかないから出世払いにしてくれと頼み込んで、これから払うつもりでいるんだけどね。
1対1は気詰まりだから、桜子も巻き込もうと思ったんだけど、桜子のお家は昔から懇意にしている違う流派があるんだって、あっさり断られた。
だから、お稽古はいつも西門さんと2人きりだ。
「免状を貰えるまで頑張れば、履歴書にも書ける。お得だぞ!」・・・と西門さんに唆されたこともあり、細々と続けてきた。

図書館司書と学芸員の資格と、茶道の経験。
この3つが揃ってる新卒の人なんて少ないんじゃない?
狭き門かも知れないけど、これは今迄の玉砕してきた会社よりも見込み有りかも・・・?

「西門さんっ!」
「ああ?」
「その募集の詳細、どうしたら教えてもらえるのっ?」
「茶道資料館のHPに載ってるじゃねえの?
何なら俺から話通すか?」
「ううんっ! 特別扱いされたくはないから、大丈夫っ!
でもありがとねっ!」

そんな西門さんの一言で、あたしは絶好の応募先を得た。
早速HPの募集要綱を見て、エントリーシートを送ったあたし。

今思えば・・・
あれは最初から全部仕組まれていた事なんじゃないかと思ったりもするんだけど・・・
西門さんは絶対に認めないし、誰も口を割らないから、ホントのところは分からない。
トントン拍子に話は進み、ペーパーの試験は無く、個別の面接があると連絡があって、茶道資料館に足を運んだ。
2度目の面接の時、長いテーブルの向こうの真ん中に座られていた方の台詞に度胆を抜かれることとなる。

「館長の西門祥太郎です。」

そ、そのお名前は存じ上げております。
一応、末端の末端とはいえ、門下生の端くれなんです、お家元ーーーー!

途端にカッチンコッチンになったあたしに、「緊張せずとも大丈夫ですよ。」と優しく声を掛けて下さったのは、前回の面接の時にもいらした眼鏡のオジサン。
いや、この眼鏡のオジサンもきっと偉い人なんだろうけど。
西門流のTop of the topが目の前に・・・となると、多少なりともお茶を齧っている者としては普通の就職面接よりもはるかに緊張してしまった。
裏返りそうな声を必死に堪えて、受け答えしたけれど、自分が何を言ったのか記憶が定かでない・・・
ただ一番最後にお家元が「牧野さんはお茶がお好きですか?」とお尋ねになった事だけは覚えている。

あんなテンパっていた面接のどこが決め手になったのか分からないけれど。
後日、あたしは内定の連絡をもらった。
更に、人手不足なので、正式採用までアルバイトとして働きに来ないかというお話まで。
やっと就職が決まった嬉しさと、提示されたバイト代がいい時給だったこともあり、「ぜひお願いします!」とその場でお返事して、あたしは一気に色んなものから解放された。
あとは高額時給のバイトしながら、卒論を仕上げるだけ!
早速あたしは西門さんに報告の電話を掛けた。

「西門さーん! お蔭で就職決まったよー!
西門さんが教えてくれた茶道資料館のお仕事、内定もらえたの!
どうも有り難うっ!」
「へえー。よかったじゃん、つくしちゃん。
地味な仕事ばっかかもしんねえけど、子供相手の茶道体験なんかもやってるし。
そういうの、牧野向きじゃね?」
「どんなお仕事をさせてもらえるかはまだ分からないけど、正式にお勤めするまではアルバイトとして伺う事にもなったんだ。
どうぞ宜しくお願いします、次期家元!」
「ま、俺は資料館の方には顔出さねえけどな。
肩肘張らずに頑張れよ。」
「うんっ! ホントにありがとっ!」


こんなことがあって、あたしは西門流の茶道資料館に通い始めた。
司書や学芸員の資格は持っていても、実務には就いたことのないあたし。
最初は郵便物の封筒詰めやら、宛名シール貼りといった雑用や電話番から始まって。
慣れてきたら、呈茶のお客様のご案内もさせて頂くようになった。
西門さんにお茶習ってて良かったなーと、しみじみ思う日々。
3か月も通ったらすっかり資料館にも馴染めて、楽しくお仕事させてもらうようになった。
収入も安定しているという安心感があたしの気持ちを落ち着かせ、卒論もいい具合に仕上がったし。
あとは卒業式に出るだけ・・・という、心安らかな日々を送っていたある日、あたしは急に嵐に巻き込まれることになる。


__________



先日予告しました、りく様と互いの作品をリメイクし合うコラボ企画なんですけど、今夜2人同時にスタートです♪
りく様のお部屋の「契約愛人(絶賛連載中!)」を、総つくでリライトさせて頂きます。
大好きなお話なので、「いつか完結した時に、リメイクさせてねー!」とお願いしていたのですが、りく様があっさり「完結してなくても書いていいよー。」と言って下さったので、お言葉に甘えて、今回キリのいいところまで書かせて頂くことになりました。
1話目前半は、りく様の「契約愛人 1」を、きっちり踏襲させて頂いてますので、良かったら読み比べてみて下さいね。
週1ペースくらいで続きをUPしていけたらなあ・・・と思ってます。←自分に発破を掛けるために書いてみた!
また、りく様のお部屋 恋花-koibana- で始まりました、「天邪鬼」と「似た者同士」のリメイクも、どうぞお楽しみ下さいね!
あのちょっとオトナなつくしと総二郎の話を、どんな風に料理して鷹瑠璃にして頂けるのか、管理人もワクワクです♪

それにしても、齢なのかしら・・・
何だか何だか身体が思うように動かない・・・
風邪は抜けてきたのに、偏頭痛やら、胸のムカムカやら、お腹がしくしくしたり・・・
元気出ませーん!
毎日ぐってりしております。


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契約愛人 2

いつも通り茶道資料館でのバイトに精を出していたその日。
自分に与えられた事務所内のデスクで作業していたあたしの肩を、突然がしっと掴む人がいて、ビックリして「うぎゃっ!」と声を上げてしまった。
慌てて振り返ったら、そこには『資料館には顔を出さない』筈の西門さんがお着物に羽織姿で立っていた。

「よ、つくしちゃん、頑張ってる?」
「な、なによ、もー! ビックリするじゃん。
フツーに声掛けてよ。」
「なあ、ちょっとお願いあるんだけど。」
「でもあたし仕事中だから!」
「まあ、仕事の一環と言えなくもないから。
つくしちゃんは西門流の為に頑張ってんだろ?」

ん? うん。まあ、そうだよね。
西門流の事を色んな人に分かってもらうための茶道資料館よね。

こっくりとひとつ頷くと、西門さんが頭上でにたりと笑ったのが目に入った。

あれ?
なーんかイヤーな予感が・・・

「佐原さん、ちょっと牧野借ります。」
「えっ?」
「はい、分かりました。
牧野さん、今日は総二郎様のお手伝いの方をお願いします。」
「ええっ?」

西門さんの手伝いって何よ???

「よし、じゃあ行くぞ。」
「えええっ?」

デスクの脇に置いてあったあたしのバッグとコートを抱えた西門さんがスタスタと事務所を出て行くから、訳も分からないまま面接の時の『眼鏡のオジサン』こと、上司の佐原さんに「えっと・・・ じゃあ、ちょっと行ってきます。」と言い置いて、西門さんを追い掛けた。
エントランスに立っていた西門さんが、涼しい顔してあたしにコートを着せ掛けようとするから、ムカっとして奪い取って自分で羽織る。

「ねえ、急に来てなんなのよ?
お手伝いって何?」
「まあまあ。来りゃ分かるから。
今日はヨロシク。」

パチーンとウインクなんかしてくる、調子のいいオトコ。
あまりにも胡散臭い。
会館の前の道には西門さんがいつも使ってる黒塗りの車が停まってて、西門さんの姿を認めると、運転手さんがさっと後部座席のドアを開ける。

「どこ行くの?」
「んーーー? お仕事、お仕事。」
「いつも一緒のお弟子さんは?」
「足立さんか? 今日は別行動。
もう先方に向かってもらった。」
「ねえ、何か言葉が足りなくない?」
「そうか?」

ゆったりとした車のシートに優雅に身を委ね、不敵に笑っている西門さんに、段々イライラが募ってきた。
仕方なく隣に座ってみたものの、どこに連れて行かれるのか、何の仕事の手伝いなのかも話してくれない、西門さんを横目でギリリと睨みつける。

「西門さん! ちゃんと説明して!」
「まあまあ、そんな熱り立ってないで落ち着けって。
今日はこれからとあるホテルの茶室で、外国人相手に茶道のデモンストレーションだ。
色んな国の人が来るってんで、通訳が必要なんだけど。
人が足りなくてな。
それで茶道経験あって、それなりに外国語が話せるつくしちゃんにも参戦してもらうことにしたってワケ。」
「ええっ? あたし、やだよっ!
そもそも資料館の仕事とそれ、関係ないじゃん。」
「お前が一番適任なんだって。
類のお蔭で英語だけじゃなくて、フランス語とイタリア語も出来るようになったろ。
西門流の中の人間は、英語出来る奴は居ても、流石にイタリア語までカバーしてる奴は居ないんだよ。
それに茶道を知らない国の人に、茶道体験してもらうってのは、資料館の仕事と重なる部分もあるじゃねえか。」

うっ・・・
そう言われてしまうと、断りにくい。

「・・・分かったよ。
やればいいんでしょ、やれば!」
「流石牧野。そうこないとな。
ほれ、資料。
ホテルに着くまでにざっと目を通しておけ。」

そう言って手渡されたのは、英語とフランス語とイタリア語で茶道の紹介をする文章が印字された紙の束。

これを今覚えろって???

思わず隣の西門さんの方に向き直ると、

「別に暗記しろなんて言ってないだろ。
カンニングペーパー代わりに持ってろって事。
それにしたって、一度読んどいた方が楽だろ?」

はあ・・・ お優しいお心遣いに感謝いたしますわ、若宗匠様っ!

時間が勿体ないから、嫌味は口では言わずに飲み込んで、とりあえず目の前の資料に齧り付いた。
会場である大きなホテルに着いて、車を降りると、着替えが必要だ・・・とスイートルームに連れ込まれた。

「ねえ、ちょっと!
何で着替える為だけにこんな凄い部屋取ってんの?」
「だって、一部屋じゃ、お前の着替えシーンが俺に丸見えだろ。
ま、俺は牧野の裸見たってどうってことないけどな。
着物だから、どうせ帯は俺が結んでやらなきゃいけないんだし。
ここで待っててやるから。
ほら、さっさとあっちの寝室で襦袢着て、着物羽織るところまでやってこい!」

用意されていたお着物一式を持たされて、隣のベッドルームに突っ込まれた。
渋々持たされた荷を解くと、和装用の下着まできっちり揃えられていて、ちょっと目眩に襲われる。

ねえ、これ、西門さんが調えたんじゃないよね?
誰か女性の使用人の方が準備してくれたんでありますように!

肌襦袢、裾除けを着け、足袋も履く。
薄い桃色の長襦袢を、置かれていた大きな姿見の前で着た。
お茶のお稽古つけてもらっているお蔭で、これくらいは自分でもちゃんと出来る。
次にたとう紙の結びを解くと、中から現れたのは、梅の花に彩られた染めの訪問着。
こんな上等で華やかなお着物、着たことない・・・なんて、暫しうっとりする。
だけど、イヤイヤ、これはお仕事だから!と正気を取り戻して羽織ってみた。
残念なことに、立派なお着物に負けて、地味な子供顔した自分が鏡に映ってる。

あーあ、何だってこんなことになっちゃったんだろ?
あたしなんか連れてって、逆に恥かくことになったりしないのかなあ?

ここまで来て、ずーんと気が重くなったけど、逃げるわけにもいかず。
ドアを開けて西門さんを呼んだ。

「西門さん?」
「つくしちゃん、遅えよ。
襦袢くらいぱっぱと着ろ。
これからは着付けの稽古も、もっとちゃんとしないとダメじゃねえ?」

ぶつくさ言いながら、こちらにやって来た西門さんは、てきぱきとあたしに着物を着付けて、帯を結んでくれる。
胴に巻いた帯を締める時にきゅうっと引っ張って。

「苦しくないか?」
「ん、大丈夫・・・」

お茶のお稽古の前と同じやり取りなのに、ホテルのベッドルームで2人きりで言われると、何故か恥ずかしい。
最後に帯締めをして、もう一度鏡の前に立たされた。

「ん、いいんじゃね?
あとは、髪と化粧な。」

気になっていたことをズバリと言われて、顔が火照る。
でもあたしの下手なお化粧と、髪の結い方で人前なんか出ていいのかな?と思ったところで、西門さんが内線電話を掛け始めた。
お仕事行く前に、ルームサービスで腹ごしらえでもするつもりなのかな?と思いつつ、ベッドルームの大きなドレッサーの前で髪を梳き始めたら・・・
後ろから西門さんが、これまた目が飛び出る様な発言をしてきた。

「牧野、髪、そのままでいいぞ。
今からヘアメイクの人来てやってくれるから。」

はあ? あたしの為だけに、この部屋にヘアメイクの人を呼ぶ?
一体どんな無駄遣いなの?

文句を言おうと思ったけれど、自分の手で、このお着物に見合ったヘアメイクを出来る自信もなく・・・
ついつい深い溜息が出てくる。

「つくしちゃん、そんな盛大に溜息吐くと幸せ逃げてくぜ。」
「余計なお世話です!」
「ふうん、まあ、牧野もそろそろ恋人のひとりやふたり、作ってもいいよな。
やーっと懐に余裕も出てきたみたいだし、仕事ばっかりの人生にしないで、楽しい社会人生活にしろよ?」
「言われなくたってそうしますからっ!」

ホンットに大きなお世話!
西門さんに言われなくたって、これからは社会に出て、新しい出会いもあるだろうし、仕事だって頑張って、楽しく幸せに暮らしていけるようになってみせるわよ!
雑草娘のど根性、お坊っちゃまに見せつけてやるんだから!


__________



「契約愛人」更新の月曜日♪←と自分にプレッシャーを掛ける!
本家では鷹男と瑠璃はパーティーに行くのですが、ここは総つくっぽくお茶室に連れ出してみました(笑)
そんな違いもお楽しみ頂けたら幸いです。
オリキャラ・佐原さん。
昔の上司の名前をそのまま盗用しましたΨ( ̄∀ ̄)Ψ
ご本家・りく様の「契約愛人」はコチラからお訪ねになると読みやすいですよん。

「契約愛人」の総二郎と「fake」の総二郎があまりにも違い過ぎてて、この2本立てで書くのが非常に難しいです(苦笑)
どっちかをある程度がーっと書いちゃって、飽きたらスイッチして・・・という方法がいいのかもしれないけど。
なかなか時間が取れないのが正直なところです(^_^;)


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契約愛人 3

「まあまあ。ヘアメイクの人来るまで、茶でも飲んで一息つけば?」

あたしがひとりでぷりぷり怒っていたら、お部屋のミニキッチンで、西門さんが甲斐甲斐しくお茶を淹れ始めていた。
無理矢理ここに連れてきたから、少しあたしに気を遣ってくれてるんだろうか?

「何か手伝う?」
「つくしちゃんは資料でも読みながら座って待っとけ。」
「う、うん・・・ ありがと・・・」

妙に優しい西門さんのお言葉に甘えて、応接セットのソファに浅く腰掛けながら、さっき渡された資料に再び目を落とす。
何枚か紙を捲ったところで、目の前に微かに湯気が立ち上るお湯飲みが置かれた。

「茶、ここに置いとくからな。」
「アリガトウゴザイマス・・・」

向かいのソファに優雅にお座りになった次期家元様は、流れる様な手つきでご自分のお湯飲みを口に運ばれる。

全く、こんな何気ない仕草でさえ綺麗に見せちゃうって、何なんだろ・・・
血筋? 育ち? 小さい頃からの教えの賜物?

うっかり目を奪われていたら、それに気付かれて、怪しく笑うフェロモンだだ漏れナンパ師が顔を出した。

「何だよ? 俺の顔に何か付いてるか?」
「うん、目と鼻と口が付いてる。」
「ふうん、そんなの分かり切った事だろ?
ああ、あんまりカッコイイから見惚れちゃってた?」
「別にっ。何でも持ってて憎たらしいなって思ってた!」
「まあ、仕方ねえよ。
こんな家に生まれてきたのも、こんな容姿だったのも、俺が選んだ訳じゃねえ。
俺の宿命ってヤツ?」

そう言ってこっちに流し目と含み笑いを送ってくるから、無視する為にお湯飲みを手に取った。
一口お茶を含むと、爽やかな香りが鼻に抜ける。
口の中にはすっきりさっぱりとした緑茶独特の味と少しの渋みが広がった。

「あ、おいし・・・」

思わず零れた率直な感想。
西門さんがくすりと笑って、今度は優しくって満足そうな表情を浮かべる。

「そりゃそうだ。俺が淹れてるんだから。」

どこまでも俺様。
不遜なオトコだと思うけど、本当なんだから仕方がない。
お茶を飲み終わる頃、呼ばれていたヘアメイクさんが来て、さっきのドレッサーの前に座らされた。
恐縮しつつヘアメイクしてもらいながら、心のどこかがちょっと浮き立っていくのを抑えられない自分に気付く。

あたしも女の子だもん。
綺麗にして貰うの、嬉しくないワケじゃないもん。

でもこの後、単なる通訳のお手伝いであるあたしに、こんなに念入りな支度が施されるのは何故なのか・・・と深く考えなかったことを後悔することになる。
ホテルのお庭に建てられた国の有形文化財に指定されているお茶室に連れて行かれて、まず度胆を抜かれ。
茶道体験されるのは、単なる観光で日本に来ている外国人なんかじゃなく、日本に駐在中の各国大使の奥様グループだと分かって卒倒しそうになるのは、この1時間後。
各国大使の奥様方となると、母国語の他に英語やお隣の国の言葉もお出来になるのなんか当然なんだけど。
『茶道』という異国の伝統文化の事を、母国語以外で説明されても、微妙なニュアンスは伝わり辛いものがあるらしい。
しどろもどろで、カンニングペーパーを持ってるあたしでも重宝され、あっちに呼ばれて、こっちに呼ばれて・・・
目が回る様な忙しさ。
勿論この日の主役は西門さん。
お茶室ではエロ門フェロモンは封印されてる筈なのに、あの整った顔や所作の美しさの威力は国境を越えるらしい。
西門さんの一挙手一投足に奥様方の感嘆の声が上がり。
自分でお茶を点ててみる体験の時には、茶筅を持つ奥様の手の上から、西門さんが手を添えて、耳元で茶筅の動かし方を囁いたりしちゃってるから、若いイケメン次期家元との触れ合いに、頬を染めたり、満面の笑みを浮かべちゃったりする方が続出。
あたしはちょっと呆れながらそれを横目で見ていた。
着せて貰った梅の花のお着物もとても好評で、帰り際にはあたし迄引っ張り込まれての記念撮影と相成った。
きっとカメラには、めちゃくちゃ引き攣った笑顔のあたしが収められた事だろう・・・

西門さんと一緒に奥様方のお車を全てお見送りし終わったあたしは、緊張の糸が切れて、「ふあーーーーー!」と声を漏らしながら天を仰いだ。
力が入り過ぎていた肩が少し楽になる。
あたしより一歩前にいた西門さんが苦笑しながら振り返ったから、慌てて居住まいを正した。

「つくしちゃん、お疲れ。」
「若宗匠もお疲れ様でございました。」

一礼しながらそう言ったら

「今日はもうお役御免だから、畏まってないで普段通りしろよ。」

と返された。

「そんな・・・ 木下さんも足立さんもいらっしゃるのに。」

他のお弟子さんの手前、いつも通りなんて出来ないでしょ!と目で訴えると、

「ふふふっ、つくしちゃんは馬鹿真面目だよなあ。
ま、そこが牧野のいいところでもあるんだけどな。」

笑いながら顎を小さくしゃくって、『行くぞ』の意を表してる。

はいはい、言う事聞いてりゃいいんでしょ。

諦め気分で西門さんの後ろをちょこちょこ小股で歩いて追い掛けた。
少し前を風切って歩いている西門さんは、内弟子の木下さんと足立さんに小声で何やら指示を出してる。

若造のくせに偉そうな態度!
いや、実際偉いんだけど、なーんか、なーんかムカつくのは何でなのっ!?

西門さんにお稽古はつけてもらってはいても、こうして対外的な場でお仕事している場面を目の当たりにするのは初めての事で。
大学でいつものあたしの事をからかって遊んでばかりいる、不真面目でちゃらんぽらんな西門さんばっかり見て来てるから、ちょっとした違和感を感じてしまう。

でも、次期家元って・・・
えばってるだけじゃ出来ないのよね。
実力が伴ってるのは当たり前。
こうして人の上に立って、人の心を掴むカリスマ性も必要。
そう考えると、全てをさらっと熟しているように見える西門さんだけど、あたしが思ってるよりずっと努力家で、忍耐強い人なのかもしれない。

美しい背中を追い掛けながら、ちらっとそんなことを思ったりする。
ホテルのさっきのお部屋に2人で戻り、着替えを済ませてベッドルームを出てみれば、西門さんも普段通りの洋服に着替えていた。

「よし、じゃあメシ行くぞ。
牧野、何食べたい?」
「え? いいよ。あたし茶道資料館に戻るもん。
行ってきますって言って出てきたきりだし。」
「普段ならバイト終わってる時間だろ?
資料館だって閉館時間過ぎてるし、今日はもうお役御免だ。
佐原さんには了解取ってあるから心配すんな。
残業代兼特別勤務手当でメシ食わせてやるよ。」
「・・・なんでも勝手に決めちゃって。」
「んーーー? 何か言ったか?」
「別に何もっ!」

あたしって結局いつも西門さんの言いなりになっちゃうのよね。
いや、西門さんに限らず、F4全員か・・・・
道明寺なんて西門さん以上に俺様だし。
花沢類の場合は、あの微笑みで見詰められて、小首を傾げつつ「ダメ?」って言われちゃうと絶対に断れなくなるし。
美作さんは何事も無理強いしたりしないけど、うまーく外堀を埋めちゃってて、その選択肢しかなくなるように手を回しちゃうから。

斯くして西門さん馴染の料亭でとびっきり美味しいすき焼きをたらふく食べさせて頂いたあたしは、ちょびっとお酒も入っていたこともあって、上機嫌で帰宅の途に就いた。
と言っても、西門さんの車に乗せてもらっただけだけど。
この後、今日一番の風雨に曝されるとも知らずに、上質な革のシートに身を委ねて、呑気に船を漕いでいたのだ。


__________



もうひと山盛り込みたかったけど、長くなってしまったので切りました!
ご本家とはちょっと違った流れになってますが、そんなのもお楽しみ頂けたら幸いです。

ご本家・りく様の「契約愛人」はコチラからお訪ねになると読みやすくなってます。

仕事始めて2週間・・・
切羽詰まった方が案外書けたりして?なんて思ってたのは間違いでした!
慣れないし、体力も削られるし、そのせいで眠気が訪れるのも早いし!
なかなか書けないでおります。
困ったもんだー。


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契約愛人 4

ウチのアパートの辺りに着いた頃、西門さんに「牧野、起きろ!」と声を掛けられた。
慌てて飛び起きても後の祭り。
ニヤニヤ顔の西門さんに、眠りこけていた所をバッチリ見られていたらしい。
かあっと火照ったほっぺたを両手で覆ったタイミングで、車は静かに停まった。
でもいつもと違う事がある。
アパートの前には2台のパトカー。

一体何事っ?
慌ててお礼もそこそこに西門さんの車から降りて、アパートの階段を上がろうとしたら、大家さんに声を掛けられた。

「牧野さんっ!」
「あ、大家さん、これって一体・・・?」
「泥棒よ、泥棒!
ウチのアパート丸ごと全部!
留守にしていたお部屋全部泥棒に入られちゃったみたいなの!
早く確認してっ!」
「えーーーーっ?!」

慌てて玄関のドアに鍵を挿し込み、開けようと回すけど、手応えが無い。

ま、まさか・・・
あたしの部屋みたいに金目のものがない所にも泥棒が入るなんて・・・?

思い切ってドアを開け、電気を点けると・・・
部屋の中は、ぐっちゃぐちゃに荒らされ、ありとあらゆる物が床に散乱してるのが目に飛び込んできた。

「はぁ・・・」

口からため息ひとつ。
人はあまりに驚き過ぎると、言葉を失うものらしい。
どうしたらいいのか分からないまま、その惨状を見詰めていたら、不意に西門さんの声がした。

「こりゃまた派手にやられたな。」

どこか笑いを堪えたようなその声に、意識を引き戻されて振り返れば、案の定含み笑いをした西門さんが、部屋を覗き込んでいる。

「あのねぇ、友達がこんな災難に遭ってるっていうのに、笑ってるってどーいう事?
普通心配してくれるところでしょうが!」
「お前・・・ 俺達の再三に渡る忠告にも全然耳を貸さず、こんな針金一本で開きそうな鍵しか付いてない部屋に住んでたんだぜ?
今迄無事だったのが不思議な位だろ?
それに荒らされてはいるけど、つくしちゃんの部屋に泥棒が狙ってる現金や貴金属がある訳ねえし。
本人は俺といて無傷だって分かってるし。
心配するとこねえじゃねえか。」

涼しい顔してさらりとひどい事を言うから、睨み付けて文句を言ってやった。

「あたしにとってはこんなボロアパートでも自分の城で!
ここにある物があたしの全財産なの!
ショックに決まってるでしょー!」
「ま、それだけ、元気があって大声出せりゃ大丈夫だな。
ほら、警察の人来てるぞ。」

西門さんがひょいと身体を横にずらすと、その後ろからお巡りさんが2人現れた。

「あー、此方もやっぱりやられちゃってました?」
「・・・そうみたいです。」
「何が盗まれてしまったか、確認して頂きたいのですが、その前にお名前と生年月日、このお部屋の住人の方だという事が証明出来るもののご提示をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「はい・・・」

玄関先での簡単な事情聴取の後、物が引きずり出されて散らばっている部屋の中に、恐る恐る足を踏み入れた。
現金は全然置いて無かったし、銀行のカードと通帳も持って歩いてた。
部屋に置いてあった換金出来そうな物と言ったら、F4や桜子、滋さんから折々に貰ったプレゼントだけだけど、それらは盗まれてはいないみたい。
つまり、泥棒は引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、何も盗らずに次の部屋に移動したらしかった。
その旨を告げると、お巡りさん達は、何か盗られている事に気付いたらご連絡を・・・と言い置いて、さっさと違う部屋に行ってしまった。

え? 泥棒に入られた時の捜査ってこんなもの?
指紋取ったり、足跡探したり、写真で記録したりも無し?

あまりの呆気なさにぽかーんとしてしまう。
これを片付けて、今夜もここで1人で寝る事を思うと、うんざりするやら、気持ちが悪いやら。

どうしよう・・・
優紀のお家にでも泊めてもらおうか?
それとも桜子の所?

そう考えていたら、ガチャっと音がして、突然玄関のドアが開いた。
思わず「ぎゃー!」と声を上げて身体を強張らせたら、玄関に顔を出したのは西門さん。
そう言えばいつの間にかいなくなってたから、すっかりその存在を忘れてた。

「もー、驚かせないでよー!」
「別にそんなつもりねえよ。
お前の部屋、インターホンすら付いてねえんだから、声掛けるのにはドア開けるしかねえだろ?」
「ノックよ! ノックするの!」
「まあ、何でもいいから、取り敢えず身の回りの物纏めろ。
こんな所で寝る訳に行かねえだろ。
下で待ってるからさっさとしろよ!」

やっぱりそうよね。
今夜、ここで寝るのはあたしだって不安だ。
西門さんちの車で優紀んちか桜子んちに送ってもらおう・・・

そう決めて、2、3日分の着替えをバッグに詰めて、部屋を出た。
ドアの鍵も一応掛けてみるけど、泥棒に簡単に開けられちゃった今となっては意味があるのか無いのか分からない。
西門さんちの車は、さっき降りた時と同じ所に停まっていた。
車のサイドには運転手さんが立って待っていて下さるから、慌てて駆け寄る。
開けて貰ったドアから再び車に乗り込んで、西門さんに優紀か桜子の所にお世話になるつもり・・・と言おうとしたら、その前に

「芝浦に行って。」

と西門さんが運転手さんに指示を出して、車はするりと夜の道に滑り出した。

「あ、あのさ、西門さん。
あたし、今夜は優紀の所か桜子の所にお世話になろうかと思ってるんだけど・・・
何処行くの、この車?」
「こんな時間に酔っ払いに押し掛けられて、泊めてくれって言われて気分のいい奴っていないぜ。」
「うっ・・・」

そ、それはそうかも知れないけど、優紀も桜子も事情を話せば分かってくれると思うし・・・
っていうか、お酒なんかとっくに抜けちゃったわよ、この泥棒騒ぎで!

「でも何処かに泊めて貰わないと・・・」
「もう用意したから。」
「は?」
「だから、牧野が泊まれる所、もう用意したから心配いらねえ。」
「そ、そんな・・・
西門さんにそんな迷惑掛けらんないよ。」
「乗り掛かった船だ。
つくしちゃんの面倒位俺がみてやるよ。
雇い主でもあるしなー。」

別に、西門さんに雇われてる訳じゃないんだけど。
あたしが就職するのは茶道資料館だし!

多分顔が効くホテルにでも部屋を取ってくれたって事だろうと思って、この場は引き下がる事にした。
ホテル代は後から返せばいい。

「じゃあ、今夜だけお世話になります。」
「んー。」

そのうち車はどこかの地下駐車場に入った。

ホテルって普通、車寄せに停めるよね?
あれれれれ?

そんな事を考えていたら、車は停車していて、西門さんはさっさと降りてしまった。
続いて降りると、西門さんが

「明日、8時に来て。」

と運転手さんに言い置いてスタスタと歩き出してる。
訳も分からず、運転手さんに頭だけ下げて、小走りで後を追う。

「西門さんっ? ここ、どこ?」
「俺のマンション。」
「俺のマンション?」

つい鸚鵡返しに聞き返してしまった。

あんなに立派なお邸に住んでて、何でマンションなんか持ってんの?

「隠れ家っつーの?
あの家、息苦しいから。
時々リラックスする為に使ってんの。」

そう言ってカードキーをエントランス横の機械に翳してドアを開けた。
そしてエレベーターに乗るのにもまたカードキー。
ぐんぐん上の階へと運ばれて、エレベーターのドアが開いた先は、お洒落なライトに照らされて、ふかふかなカーペットが敷き詰められた廊下で。
キョロキョロしながら付いて行くと、とある部屋のドアを開けて、西門さんがあたしを振り返った。

「ここ。俺の部屋。」

西門さんのプライベートマンション。
そこに2人きり?
相手はあの西門さんだよ?
入ってもいい・・・のかな?

「あ、あのさ、あたし・・・」
「つべこべ言ってないでさっさと入れ!」

西門さんが及び腰のあたしをぐいっと引っ張って、ドアの内側に引き摺り込んだ。
後ろで重たそうなドアが閉まって。

「早く靴脱いで上がれ!」

え? 何かまずくない?
いや、でも、常日頃から「色気ねえ」とか「鉄パン処女」とか言われてて、あたしなんかに興味無いって分かってるもん。
西門さんが相手にするのは、セクシーで綺麗なお姉さんタイプよね。
あたしみたいな凹凸少な目な地味な女は守備範囲外。

そう自分に言い聞かせながらも、どこか緊張してしまう。
背中を押されて、着いた先はリビングルーム。
西門さんみたいな大男だって余裕で寝れちゃう程の大きなソファがドーンとあって。
そこに突き飛ばされる形になった。
バホッとそこに突っ込んでしまい、何とか体勢を整えようと身を起こすと、目の前には片方の口角だけを上げて怪しく笑っている西門さんが立っている。

えっ!?
嘘だよね!?
西門さんがあたしに何かするなんて事、ありえないよね!?

逃げ場がないあたしは、思わず着替えが詰まっているバッグを胸にギューっと抱き締めた。


__________



うー、何とか書けましたー。
月曜日は「契約愛人」更新日!
総二郎のテリトリーに連れ込まれる無防備なつくし!( 艸`*)
後半部分は本家・りく様の「契約愛人 3」を踏襲させて頂いてます。

そして昨日、アクセス数200万HIT達成と相成りました。
更新疎らなのにも関わらず、お運び下さる皆様のお陰と感謝しています。
本当に有り難うございます!
近日中に何らかのお礼企画をしたいと思っています・・・が・・・
実はツイッターにも書いたんですけど・・・
また骨折しちゃいまして。
それももう、ホントに自分のうっかりミスからなんですけど・・・
痛くてやってらんねー!!!って感じです。
安静を言い渡されたので、行き始めた仕事も1週間休む事に。
何やってんでしょうね・・・
自分に「馬鹿、馬鹿、馬鹿ーーー!」と言ってやりたい気分です。
仕事休むからお話書けたらいいんですけど、痛みに負けて書けなかったらゴメンナサイ!
兎に角早く骨くっ付いてー!


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契約愛人 5

ソファの上でバッグを抱えながら、ちょっと斜めの体勢で背凭れに埋もれてるあたしの方に、西門さんがゆっくり歩いてくる。
いかにも笑いが堪え切れないと言った体のニタついた顔をしてこっちにやって来るのを、何も言えずにじっと見上げるだけのあたし。
まるで蛇に睨まれた蛙状態!
とうとうあたしの真ん前まで来た!と思った時、するりと綺麗な指先がこっちに伸びて来て・・・
顎をくいっと上向きにさせられた。
そこに西門さんの整った顔がぐんぐん近付いてきたもんだから、「・・・ひえっ!」と、思わず怯えた声が飛び出す。

「ふふふっ、つくしちゃん、なーんか期待しちゃってんの?」

あたしを間近から覗き込みながら、怪しく笑うから、こくりと息を飲んだ。

き、期待?
期待なんかしてないっつーの!
こっちは怯えてんのよ!

と思ったけど、声にはならない。
更に顔が近付けられて、もしかしてキスされるっ?と身体をもっと固くして、目もギューっと瞑ったら、一拍おいて耳元で、くっくっく・・・という笑い声が聞こえてきた。

「牧野の間抜け面、チョー可笑しい!」

その声にはっとして目を開けた。
そのままどさっと隣に腰掛けた西門さんは、ひとりで身体を揺すりながらくつくつと笑い続けてる。

「まあ、つくしちゃんがどうしてもって言うんなら、キスくらいはしてやってもいいけど。
でも鉄パン処女の鉄パン脱がすのは、ちょーっと荷が重いから、他当たってくれ。
類かあきらなら優しく脱がしてくれんじゃねえの、お前の鉄パン。」
「ふ、ふ、ふ、ふざけないでよーーーーー! このエロ門ーーーーー!」

慌ててソファから飛び出して、西門さんと距離を取る。

こんなふざけた男の隣、座ってたまるか!
あたしの大事な操はねっ、この先出逢う、運命の人の為に守ってんのよ!
そりゃ、この齢になってまだ体験してないって、ちょっと遅いかもしれないけど・・・
だからといって、早くオトナになりたいとか焦って無いもん!
何より、類や美作さんみたいな大事な友達とどーにかなる・・・とかあり得ないから!

「くくくっ。なーにビビってんだよ。
取って食ったりしねえよ。俺、グルメなんだから。」

えー、えー、そうでしょうとも。
よく存じておりますよ!
西門さんが召し上がるのは、スタイル抜群、色っぽくて綺麗な女の人だって!
そういう人と何人も並行してオツキアイしてるって。
そして面倒なことになる前にポイっとしてんのよね!
ちょっとは女の人とのいざこざで痛い目見ればいいのよ!
そうしたら少し自重するだろうしっ!

「そう睨んでくるなよ。
ああ、一頻り笑ったらちょっと喉乾いたな。
牧野、何か飲むかー?」

そう言って立ち上がった西門さんは、アイランドキッチンの向こう側にある、大きな冷蔵庫を開けている。

「俺はビール飲むけど、お前は?」
「あたし、いい・・・」

お酒なんか飲む気分じゃないよ!
もう今日は色んなことがあって、草臥れちゃったし・・・

「ふーん・・・」

ぷしゅっとビールの缶を開ける音がして。
次にグラスにとっとっとっと・・・と注ぐ音がする。

ああ、お坊ちゃまは缶ビールに直に口をつけて飲んだりしないのね・・・なんてぼんやり思っていたら、グラスのビールを飲みつつ、西門さんがキッチンで何やらやり始めた。
薬缶を火にかけて、お急須に冷蔵庫から取り出したお茶の葉を入れて・・・

あれ? お茶淹れてるの?

ちょっと警戒を解いて、キッチンカウンターを挟んで西門さんと向かい合わせになるところまで行ってみた。
薬缶のお湯が沸騰したところで、お急須の蓋がないバージョンみたいな、不思議な器にお湯を注いでる。

「それ、なあに?
今、西門さんがお湯入れたやつ。」
「これは湯冷ましっつーの。
沸かした湯を適温まで冷ます時に使うんだ。
つくしちゃんはそんな事も知らねえのか。
今度は煎茶の淹れ方も教えてやるよ。
西門に就職するんだし、覚えといて損はないからな。」

綺麗な手つきで、湯冷ましからお急須にお湯を移し入れて。
西門さんはまたビールを飲み始めた。

まあ、これは家で飲むお茶だし、お作法関係ないけど、なーんかね・・・

ちょっとモヤっとした気分でその様子を見遣っても、ご本人は何処吹く風。
ご機嫌に手酌でビールをお代わりしてる。
2分くらい経った頃だろうか?
西門さんがお湯飲みにお茶を注いで、「ほら。」と茶托に置かれたお湯飲みを出してくれた。

「え? あたしの為に淹れてくれたの?」
「だって俺はビール飲んでるから要らねえもん。
それ飲んだら寝るぞ!
何か今日は疲れたなー。
一日が長かったよ。」

それはあたしの台詞だっつーの!
バイトに行った筈が西門さんに連れ回されて。
その上に泥棒騒ぎ。
その後ここに連れて来られた。
予定してなかった事ばかりの一日だったんだから!

そう思ったけど、あたしの為だけにお茶を淹れてもらった手前、食ってかかれなくて。
その場にあったスツールに腰掛けて、お湯飲みを手に持った。
「頂きます・・・」と、一応呟いてみる。
ふんわりいい香り。
口をつけたら、もっと爽やかな香りが漂って、甘味が広がった。
何だかホッとするお味だ。

「はあ・・・ 美味しいー。
ホテルで淹れてくれたお茶も美味しかったけど、このお茶の方が優しい味がするね。
飲むとホッとして、疲れが溶けてく感じ。」
「そうだろ?
まあ、美味いのは当たり前だけどな。
俺が選んだ極上の茶しか、この部屋には置いてない。
日本茶って言っても、色んな種類があって、その茶に合った淹れ方がある。
お前も疲れてるだろうと思って、数ある中からその茶を選んでやったの。
それに、この俺が淹れてるんだから、美味いんだよ。
なんてったって次期家元様なんだからな。」

ちょっと鼻高々・・・といった風情でツンと斜め上を向いて、またビールをぐびりと飲んでる。
俺様なのはいつもの事だけど・・・
ちょびっと優しさが滲み出してて、どこか擽ったい気持ちになった。

「飲み終わったか?」
「え、あ、うん。ご馳走様でした。」
「じゃあ、牧野が泊まる部屋はこっちだから。」

スタスタ歩いていく西門さんを追い掛けると、廊下に面した一つのドアを開けて、電気を点けている。

「今夜はここ使って。
あの奥のドアの向こうがバスルーム。」
「うわっ、メチャ広・・・」

独りで過ごすにはあまりに広すぎるゲストルーム。
身の置き所が無い広さだわ。
あたしは、何でも手が届く、6畳一間くらいが落ち着くのよ!

「お前、ホント貧乏性な。
俺の使ってるマスターベッドルームはここの倍はあるぜ。」
「へえ・・・ 凄いね。」
「覗きに来る?
ああ、それとも広い部屋で独りじゃ寂しいっつーなら、今夜は添い寝してやろうか?」
「ば、バッカじゃないの?! 普段一人暮らししてるんだから、寂しいとか思う訳ないじゃん!
あたしをからかって遊ぶの、いい加減止めて!
自分のベッドに連れ込むのは、遊び相手の女の人だけにしなよっ。」

慌てて変な申し出を拒絶したら、また馬鹿にしたように西門さんが鼻で笑ってる。

「お前ねー、自分のテリトリーに遊び相手の女なんか入れる訳ないだろ。
ああいうのはさ、外で会って、さっくり別れるのがルールなの。
この俺の隠れ家に入った女って、牧野、お前が初めてだぜ。」
「え・・・?」

んーーー? それってどういう意味?
つまり、あたしは、西門さんにとって『女』じゃないってことかしら?
男友達と同じレベル?
まあ、そうじゃないかと思ってたけど。

目をぱちくりさせて、西門さんを見上げると、急にふんわりとした優しい笑い顔に変わった。
あまり見ない自然な微笑みに、ちょっとびっくりして、一瞬眼を奪われた。

「じゃ、お休み。
明日8時に車来るから、起きるのは7時な。
お前、明日も茶道資料館でバイトだろ?」
「う、うん、そう。」
「今日は色々お疲れさん。
さっさと寝て、明日に備えろ。」

大きな掌で、頭をぽんぽんとされて、じんわりと不思議な気持ちが湧いてきて。
「ありがと。お休みなさい、西門さん。」と言って、ぺこりと頭を下げて、ドアを閉めた。

ホテルのお部屋の如く、アメニティの充実したバスルームでシャワーを浴びて、持って来たパジャマに着替えた。
ベッドに乗ってみると、適度な硬さのスプリングが効いたマットレスに、サラサラした手触りの極上のシーツが掛かってて、これまたホテルみたい。
ふわっふわの羽根布団とシーツの間に身体を滑り込ませると、急に自分の身体がずーんと重たくなった気がした。

ああ、あたし、やっぱり今日は疲れてるんだ。
ホントに色々あったもん・・・
だけど、アパート、どうしよう・・・
片付けたとしても、あそこに住み続けるの、ちょっと怖いかも。
でも引っ越しするほど、余裕がある訳じゃないし・・・
もう、回らない頭で考えてもダメな気がする!
明日、朝起きて、シャッキリしたらまた考えよう!
お日様が上ったら、気分もぱあっと明るくなる筈!

目を瞑ると、頭の中を今日の色んな出来事が走馬灯の様にぐるぐる回ってる。
その中で、西門さんが最後に見せてくれた優しい笑い顔と、頭を撫でてくれた手の感触が思い出された。

何だかんだ言っても、優しい所あるんだよね、西門さんは。
こうやって泊めてくれたし、美味しいお茶も淹れてくれたし。
俺様で、あたしをからかって遊ぶのはちょっと面倒臭いけど・・・

この部屋に連れて来られた時はあんなにビクビクして警戒してたのに、いつの間にかリラックスしてしまったあたしは、あっという間に眠りの世界に吸い込まれていったのだった。


__________



月曜日は「契約愛人」更新日!という事で。
骨は折れていますが、頑張っております、管理人。
ご本家・りく様の「契約愛人 4」と読み比べて下さいね。
上手い事総つく風味になってるかなー?

まだ痛みが続いてるので、なかなか更新が出来ないかもしれませんが・・・
鋭意努力します!
次はイベント企画・第三弾をUPしたいなーっと。
もう少々お待ち下さいませ!


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