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花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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溺れる者は藁をも掴む? 前編

ちょっと閃いたネタでバレンタインSSを書いてみました。
社会人のつくしと総二郎のお話です。


__________



お付き合いしていると思っていた男の人にあっさりフラれたのは、年の瀬も迫って来た12月の事だった。

「牧野さん、きっと俺じゃダメなんだよね。」
「え?」

いきなり切り出された言葉に目をぱちくりさせた。

「なんかこう・・・ 俺と居ても笑ってるけど、心の底からは笑えてないって気がしてさ。」
「そんなこと・・・ないです。
あたし、あんまり男の人とお付き合いした事ないから、緊張しちゃってるんだと・・・。」

そう言って、向かいに座っている人を見遣ったけれど、その人はもうあたしを見ていなかった。
困り顔で少し苦笑いしてから、自分勝手につらつらと言葉を紡ぎ始める。

「会社で同僚の子達とランチしたり、給湯室で楽し気に喋ってる時とさ、俺の前にいる時、全然顔が違うんだよ。
俺と飯食ってもそんな顔しないでしょ。
いや、飯の時だけじゃなくて、俺といる時はいつもの溌剌とした牧野さんじゃなくなってる。
時間が解決するのかなぁ・・・なんて思ってたんだけど、そうじゃないみたいだから。
残念だけど、個人的にこうやって会うのはもう止めたいんだ。
仕事していく上で気まずくなるのお互い困るから、これからも会社では普通にしてもらえるかな?
俺もそうするし。
じゃ、俺はこれで。」

その人は言いたい事を全部言い切ったらしく、テーブルの上の伝票を持って、さっさとレジに向かって歩き出した。
あたしはその背中をぽかーんと見送る。

え? 何これ?
いきなり何なの?
話があるんだって言うから、てっきりデートだと思って、こんな小洒落たカフェに来たのに。
クリスマスやあたしの誕生日や年末年始の予定を話し合ったりするのかと思ってたあたしが馬鹿みたいじゃない?
ランチや給湯室でおやつの摘み食いしてる時と、あなたの前にいる時の顔が違うって?
そりゃそうでしょ。
あたしだって、付き合ってる人には少しでもよく思われたいって思ってるもん。
多少お淑やかにしたり、顔作ったりするよ。
それが仇になったっていうのーーー?

一方的にフラれた訳だけど、悲しいとか、悔しいとか、そういった感情よりも、?マークが飛び交う頭の中。
独り残されたカフェの席で、冷め始めたティーカップを見下ろした。

うーん、それでもこれ奢ってくれたんだよねえ?
最後の置き土産ってヤツ?
まあ、紅茶には罪はないし。
取り敢えず飲んどくか・・・

温い紅茶は、あまり美味しいと思えなかったけど、残すのもお店に申し訳ないから、ぐいっと飲み切って、カップをソーサーに置いた。
かちり・・・と硬い音が耳に響く。
ついついあたしの口からはふうっと溜息が零れた。

晩ご飯、どうしよ・・・?
今夜は一緒にどこかに食べに行くものと思ってたから、何にも用意してなかったや。
でも・・・ こんな日だからこそ、家で独りで余り物で済ませたりしないで、ぱーっと美味しい物でも食べに行こう!
うん、そうだ! そうしようっと!

そう決めて、身体に力を込めて席を立とうとした時、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。

「あれ? 牧野じゃん。」

無視すれば良かったのに、ついその声がする方に顔を向けてしまう。
案の定、綺麗なお姉さんを腕にぶら下げた西門さんが立っていた。
隣のお姉さんは、べたーっとその腕に身体を寄せながら、あたしの方を胡散臭い物でも見るような目つきで睨んでくる。

「何、お前独りなの、こんな店で?」

そう、この雰囲気のいいカフェはカップル占有率が異常に高い。
いや、女性同士、男性同士のグループの人もいるにはいるんだけれど。
圧倒的に男女の組み合わせが多いのだ。
あたしのテーブルの上を一瞥した西門さんは、くくくっと笑いを漏らした。

「じゃなくて、2人だったのに独りきりにされてるってとこか。
何だよ、男にフラれたか?」
「もーーーっ! 余計なお世話だっつーの!
あたしの事はいいから、さっさと行きなさいよ!」
「何だ、図星か。」

にたあっと嫌な感じに笑った西門さんが、隣のお姉さんからするっと腕を抜いて、さらりと失礼な台詞を言い放つ。

「ミオちゃんだっけ?
ごめんねー、俺、こいつにメシ食わせなきゃいけなくなっちまったから。
今日は付き合えないわ。
また今度ね。」
「えーーー? 何言ってるの?
お茶でもどう?って誘ってきたのそっちでしょ?」
「うん、だからこれでお茶でも飲んでって。」

まるで手品のように何処かからすっとお金を取り出した西門さんは、一万円札をお姉さんの掌に滑り込ませて、パチリとウインクひとつ。
その人があっけにとられているうちに、あたしの腕を掴んで店の外へと連れ出した。

「ちょ、ちょっと! 西門さん!
放してよっ! あの人どうすんのよっ?」
「んーーーーー? お茶でも飲んで、次の男から声掛けられるの待つんじゃねえの?
俺だって、今さっきそこで知り合ったばっかだし。」
「・・・まだそんな事してるんだ。」
「カフェでお茶飲む位どうって事ねえだろ?」
「その後、そこのホテルに連れ込むくせに!」

そう、ここのすぐ傍には道明寺のウチのおっきなホテルがドーンと立っている。
多分、西門さんや美作さんの行きつけだ。

「俺は誰にも無理強いした事なんかないぜ。
双方合意の上で、そういうことしてんの。
何だよ、牧野も誘って欲しいのか?」
「そんな訳ないでしょうがっ!
フケツっ! その手であたしに触るなっ! 妊娠するっ!」

がっしり掴まれてる西門さんの手を解こうと腕を振るけど、びくともしない。

「はいはい、お前、男にフラれて、腹が減ってて気が立ってるんだろ。
美味い物食わせてやるから。
そうしたら全部解決だ。」

走ってきたタクシーにひょいと手を挙げて。
ドアが開いたら、すかさず中に押し込まれた。

「ちょーっとー!
何でそんなに自分勝手なのよ!
世界は西門さんを中心に回ってるんじゃないんだから!」
「バーカ。流石にそんな事思ってねえよ。
俺は司じゃない。」

そう言われて、つい文句を言うのを忘れてしまった。

そうだ、あいつこそ、自分がこの世界の王様だって思って生きてる奴だった。
いや、きっと今もそう思ってるんだろうけど。

「道明寺、元気?」
「まあ元気じゃねえの?
俺もあんまり会ってはいないからな。
あきらや類の方が詳しいだろ、きっと。」
「ふうん・・・」

西門さんと他の3人は、幼馴染4人組でF4なんて呼ばれているけど、立場が違う。
世界を股に掛ける道明寺財閥、総合商社・美作商事と花沢物産。
日本の伝統文化を後世に伝える為に存在している茶道西門流。
小さな頃から一緒に育った4人も、今は家業の跡取りとして、違うステージでそれぞれに頑張っている。

花沢類にも、美作さんにも暫く会えてないなぁ。
今何処にいるんだろ?

そんな事を考えていたら、いつの間にかタクシーは止まっていて、西門さんがタクシー代を払ってた。
何処かに着いたらしい。

「ほら、降りろ、牧野。」

慌てて西門さんに続いてタクシーを降りたところに建っているのは、大東京のビル群のど真ん中だというのに、そこだけ異空間のような一軒の白亜の豪邸。
まるでお城みたいな建物。
冬でもドアを開けてくれるドアマンさんが2人も立ってて、中に入ると「西門様、お待ちしておりました。」と恭しく腰を折るギャルソンさんがいる。
外見がお城みたいなら、中もお城みたいだ。
道明寺のお邸や、美作さんちのインテリアとも全然違ってるけど、これはこれでとても素敵。
真っ白な壁、落ち着いたオーク色の椅子とテーブル。
糊が効いてピンとした真っ白なテーブルクロス。
ピカピカに磨き込まれた木目の床に、天上からは煌めくシャンデリアの数々。
所々にグリーンが配置されてて、豪奢な中にも温かみや爽やかさが感じられる。
案内されたこじんまりとした個室は、ヨーロピアンテイストの可愛いお部屋で、まるで外国に来たかのように心が浮き立つ。
その空間にウットリと酔ったあたしは、さっき男の人にフラれたことなんか、スッキリサッパリ忘れていた。


__________



バレンタインSSとか言いながら、まだ12月の場面を書いてますけど(^_^;)
お話の終わりにはバレンタインデーに辿り着く予定です(苦笑)
少々お待ち下さいませ。
今日と明日のお昼には、あの方から皆様へのバレンタインプレゼントをご用意してますのでお楽しみに!

さてさて、本日がバレンタイン当日ですね。
世の中では沢山のチョコが行き交うのでしょうか?
管理人は仕事でバタバタな予定で・・・
もし時間が許すなら、何か作る・・・カモ?
皆様のバレンタインプレゼントの中身、こっそり教えて下さいな♪


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溺れる者は藁をも掴む? 中編

スモークサーモンの前菜から始まって、オマール海老、鴨肉、甘鯛、和牛のロース、口直しのシャーベットにガトーショコラ。
美味しい物のオンパレードと、西門さんが選んでくれたそれに合うワイン。
食も進むし、グラスもついつい重ねてしまった。
お腹もいっぱいになって、程よく酔っ払った頃、西門さんがあたしの事を根掘り葉掘り聞き始めた。

「それで? 何で牧野はフラれたワケ?」
「はあ? 何でそんな事聞きたいのよ?
っていうか、こっちが知りたいくらいなのに。」
「理由も言われずにフラれたのか、お前。
どんだけ女子力ねえんだよ。」
「理由? 理由は、何か言ってたな・・・
俺といても心の底から笑ってないとか。
同僚の子と一緒に何か食べてる時と、俺といる時顔が全然違うとか。
何か、そんなような事。」

西門さんがテーブルの向こう側でぶほっと吹き出す。
全く失礼な男だ。
人の別れ話を今夜のつまみにしようとしてるなんて。

「お前程面白い顔して飯食うヤツはいねえってのになあ。
それが気に入らないって?
詰まんねえ男だな、オイ。
俺はメシよりよっぽど堪能してるぜ、つくしちゃんの百面相。」

そう、美味しい物を食べる時、あたしはどうやら様々な表情を晒しているらしい。
それは西門さんだけじゃなく、花沢類にも、美作さんにも、昔々には道明寺にだって言われたことがある。
でもご飯食べてる時の自分の顔なんか鏡で見た事なんかないし。
どんな顔してるのか自分では分からない。

「逆だよ、逆。
その百面相とやらを自分の前でしないってのが気に入らなかったみたい。」
「ふーん、何でお前はそいつの前では百面相してやらなかったんだよ?」
「あたしだって女の子なの!
お付き合いしてる人には、ちょっとでも可愛いって思われたいもの。
あんた達の前にいる時のように、明け透けな態度じゃなくて、ちょっとカッコつけてたのよ。
それが嫌だったんでしょーよ!」

あー、イライラする!
折角お城みたいな素敵なお店で美味しい物でお腹を満たして、夢心地だったのに。
こんな事言わせないでよね。

「あー、そりゃ、男も詰まらなかったろうなあ。
ホントのお前を見せてもらえずに、取り繕ったつくしちゃんしか目の前にいないなら。」
「煩いなあ! だって、まだお付き合いしてそんなに時間も経ってなかったし・・・
そんな急に、被ってる猫脱げないよ!」
「猫被ってる牧野なんて、何の魅力もねえだろ。
お前はありのままでいるのが一番面白いんだから。
で、どんだけ付き合ってたんだ?
1週間か? 2週間か?」

面白い?
女の子に面白いとは何よ?
可愛いとか、魅力的とか、そういう事言われたいのよ、こんなあたしでも!
その為にちょびっと努力もしてみたのに、空振りに終わってんの!
ああ、西門さんといると、自分のダメっぷりが目の前に突き付けられるみたいで、ホント嫌!

「3か月っ! 悪い?」
「3か月? それって結構時間経ってねえ?」
「もーーー! ホント煩いよ。
同じ女の人とは3回なんて決めてる西門さんに、付き合いの期間の事なんてあれこれ言われたくないよ!」
「ふうん、じゃ、牧野はそいつと3回以上シタんだ?」
「は?」
「だーかーらー、SEX。
シタんだろ、そいつと。」
「ば、バカっ! エロ門っ!
個室だからって何言うのよ!」

お酒のせいで火照っていた頬っぺたが、一気にぼぼぼって熱くなった。
思わず目の前のお水のグラスを手にとって、がぶがぶと飲んでしまう。

「お前、まさか・・・」
「な、何よっ?」

熱い顔を膝に載せていたナプキンでバッタバッタと扇ぐ。
はー、熱い! 熱いよ!
変な事言わないで欲しい!

「まだ鉄パン穿いてんのか?」
「もーーー! ホント止めてよ、そういう事言うのっ!」

西門さんが呆れた・・・といった体で天を仰いでる。

「お前、それはフラれるだろ。
3か月付き合って、指一本触れさせないって。
普通の男なら愛想つかすぜ。」

指一本触れさせなかった訳じゃない。
手を握られたこともあったし、唇が触れ合うようなキスだってした。
ただそれ以上はあたしがビビっちゃって、なかなか先に進めなかったけど・・・

口答えできずに、唇を尖らしつつ黙ってしまった。

「お前、そいつの事、別に好きじゃなかったんだろ。」

黙ったまま西門さんを睨み返す。
含み笑いをしながらこっちを見てる、その『俺は何でも分かってるぜ』とでも言いたげな態度に感情が逆撫でされた。
だって、ホントの事だったから。

付き合ってくれと言われたから付き合った。
この齢で彼氏の1人もいないのはおかしいって周りの友達にも言われたし。
あたしだって、他の人のように、季節のイベント事を『恋人』と呼ばれる存在と過ごしてみたいっていうような欲があった。
悪い人じゃないってのは、一緒に仕事してて分かってたし。
一緒にいるうちに、恋心が芽生えてくるんだろうって、自分を誤魔化してた。
そう、あたしは自分の気持ちを誤魔化してたんだ。
お付き合いってものは、ホントに好きな人とだけするものだって分かってたのに。
後から気持ちが付いてきてくれたらいいな・・・なんて思ったのは、あくまでも希望的観測。
現実は、こうやって、気持ちが追い付かずに、壊れてしまった。

「・・・そうみたい。」

ふんと鼻を鳴らした西門さんが勝ち誇った顔するのが、妙に悔しい。
男と女の事なら何でも分かってるようなその自信に満ちた笑い顔に喰って掛かりたいけど、何も言えない。

「そのうち、お子ちゃま牧野の心にも、恋の花が咲くだろ。
それまでは、無理に男と付き合ったりしなくていいんじゃね?」
「お子ちゃまじゃない。」
「鉄パン脱いでから言えよ、そういうのは。」

あたしだって、この齢で未経験ってのは気にしてるんだから!
何度も言わないで欲しい。
えー、えー、そうでしょうよ。
山程の女の人と夜を共にしてきて、酸いも甘いも噛み分けた西門さんからしたら、あたしなんかお子ちゃまですよーだ!

「ま、アレだ。
次の男が現れるまで、俺がつくしちゃんの面倒みてやるから。」
「要らないよ、そんなの。」
「お前、今からクリスマスだぜ。
独り身でいると、寒さが身に染みるぜー。
それに月末はお前の誕生日だろ?
そして年末年始の休み。
年明けたら、バレンタインにホワイトデー。
恋人達のイベントが次々にやって来るだろ。
俺はさ、そういうイベント事はオンナと過ごさない事に決めてっから。
この冬は牧野の相手をしてやるよ。」
「だから、要らないって言ってんじゃん。
今迄通りの冬を過ごすから、心配無用よ!」

啖呵を切ったはいいけれど、一緒に過ごす人がいる・・・と思ってたところからゼロに戻るのは、いつもより寒さが身に堪えるような気がする。

「まあまあ、俺に任せとけって。」

そう言ってパチンとウインクしてくる。

あー、ヤダヤダ。
その安売りしてるウインクだって分かってるのに、キランと輝いて見えるんだから、この男は罪作りだ。
酔っ払っているせいか、頭も働かなくて。
それ以上色々言い募るのも面倒臭くなってしまって、その話はうやむやな感じで終わってしまった。


__________



うわーん、まだ12月のお話だー!
次回こそ!
次回こそバレンタインの場面を!


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溺れる者は藁をも掴む? 後編

お酒の入った席での戯言か、またあたしの事を揶揄ったんだと思ってたのに。
本当に西門さんはあたしの前にやって来た。

3連休だー!とアパートでダラダラしていたクリスマスイヴなんか、いきなり迎えに来られて。
慌てて着の身着のまま飛び出したら、オシャレなお店でのディナーになるから、少しドレスアップが必要!とクリスマスプレゼント代わりにシックなワンピースとハイヒールまで買ってもらう始末。
勿論連れて行かれたレストランは、ご飯も美味しくて、景色も抜群。
東京タワーとレインボーブリッジが両方見れちゃう。
これはたとえ恋人とじゃなくて友達と一緒でもウキウキせずにはいられない。
先日同様、たらふく食べて、ガッツリ飲んで。
いい気分でアパートの部屋に送り届けられた。

次はあたしの誕生日。
もうクリスマスに散々いろいろしてもらったから、誕生日はいいから!ってはっきり断ってあったのに。
夜遅くに電話が鳴り始める。
「ケーキ買ってきてやったから、さっさとドアを開けろ!」なんて俺様口調が聞こえてきた。
慌てて玄関ドアを開けると、片手にケーキの入ったらしい紙袋、もう片手には大きなピンクのバラの花束。
白い吐息が口から洩れてる西門さんがそこにいた。
え? 両手塞がっててどうやって電話してるの?と思ったら、心の声が漏れ出ていたらしい。
「牧野はハンズフリー機能っつーモンを知らねえのか?」とか言いながら、あたしの横をすり抜けて、勝手に乙女の部屋に上がり込んだ。

ちょ、ちょっと、あたしはもうすっかり寝る支度をしていて、パジャマ姿なのよ!
だってもうお風呂入っちゃったんだもん。
そんな女の子の部屋に遠慮せずに上がるなんて、何考えてんのよー!
でも年末の忙しい最中、態々来てくれたんだろうし、無下にできない・・・

それにこんな突撃訪問がちょっと嬉しかったりする自分もいて。
慌てて、部屋着を羽織ってから、温かいコーヒーを淹れて、深夜に一緒にケーキを食べた。

「誕生日の夜にそんな色気のないパジャマで寝てる牧野って・・・」
「何よっ? 文句あんのっ?」
「いや・・・ やっぱ、鉄パン脱ぐ日はまだまだ遠いなって思っただけだ。」

誕生日の夜だというのに、ロクでもない台詞をプレゼントしてくれるアンタって男は飛び切り失礼よっ!
手元のクッションを顔面にぶつけてやろうとしたけど、あっさりかわされて、鼻で笑われるし。
なんて男!
なんて誕生日!

笑いながらもコーヒーカップを殻にした西門さんは、「じゃ、俺帰るわ。」と言い残して立ち上がった。
玄関で靴を履きながら、

「あー、俺、暫く仕事立て込んでるから。お前の事かまってやれねえけど。
その間に変な男に引っ掛かったりすんなよ。
鉄パン、後生大事に穿いとけよ。」

なんて言うから、背中を突き飛ばして、玄関ドアをばたんと閉めてやった。
ドアの向こうから「誕生日おめでとう、牧野。」という声が聞こえて。
はっとして時計を見ると、ギリギリ12時になる前を指している。
有り難うっていう前に、足音はドアの前から遠ざかっていくから・・・
あたしは素直にお礼をいう事が出来ずに誕生日を終えてしまったのだった。

年末年始は久し振りにパパとママの所に行って、進も交えて家族団欒の時。
ママと2人でお節を作ったり、皆で炬燵で蜜柑を食べたり。
お正月には全員で初詣にも行ってきた。
物凄ーく混んでたけど、それもまた初詣に来た!って感じが高まってワクワクする。
帰り道に冷えた身体を甘酒で温めて、お家に帰ってお雑煮を食べて。
あたしは庶民のお正月を満喫してた。

お正月休みが終わり、気分もリフレッシュして仕事始めを迎えたあたしは、バリバリ働くぞ!と気合を入れていた。

同じ会社にいる元カレに『俺と別れてうちひしがれてる・・・』なんて思われたくないし。
笑う門には福来る!だもの。
明るくニコニコ仕事してたら、きっといいことだってある筈なのよ。
仕事が立て込んでるから・・・なんて言ってた西門さんは、あたしの誕生日の夜以来、あたしの前には現れない。
きっとホントに忙しいんだろう。
それにあたし、別にかまって欲しいとか思ってないし!
何の問題もない!

2月の街はバレンタイン一色。
どのお店に入っても、綺麗にラッピングされたチョコやら、手作りチョコの材料やら。
チョコに添えて送るんだろう。
男物の革小物や衣類なんかがこれでもか、これでもかー!とディスプレイされている。
贈る相手がいないあたしは、お世話になってる人への義理チョコならぬお礼チョコやら、同僚への友チョコばかりを買っていた。
そんな時、ふと西門さんの事を思う。

うーん・・・
クリスマスも誕生日も、結局美味しい食べ物やプレゼントっぽい物も貰っちゃったし。
これはお礼チョコを買っとくべきよね・・・
でもスーパーで売ってるようなチョコじゃ食べてくれないだろうし・・・
花沢類や美作さんの分も合わせて、日頃の感謝の気持ちを込めて奮発しときますか!

デパ地下のあたしも大好きなチョコレートのお店で、バレンタイン限定のガナッシュボックスを3つ。

これならひょいと摘まめるし。
見た目もとっても可愛いし。
なんてったって常温で日持ちするのが有り難い。
だって、いつ渡せるのかよく分かんないもん。

そうしてチョコを買い込んで、そっとアパートの部屋に眠らせたあたしにも、2月14日はやって来る。
社内も心なしかざわざわしてる。
義理チョコだってのに、こんなに貰えちゃったよと鼻高々の上司もいるし。
渡しても、「あ、どうも。」と素っ気ない態度で机の抽斗に突っ込むだけの同僚もいる。
女子の間ではランチタイムに即席の友チョコ交換会が繰り広げられた。
あたしみたいに買ってきたチョコを出す子もいれば、手作りが得意な子からは、チョコ入りクッキーやら、トリュフチョコを貰えたりして、男の人でなくても、バレンタインは楽しいイベントだ。
退社時間になっても、ちょっといつもと違う雰囲気が漂うオフィスを後にして、エレベーターでエントランスホールに下りた。
するとそこには、年末にあたしの事をフったあの人が、ウチの部署のアイリちゃんと談笑している姿がある。

・・・新しい彼女?
ま、あたしには関係ないわよ。
もう他人だし。
元々そんなに深いオツキアイしてなかったし。
そう、関係ない、関係ない!
でも・・・ あたしとの付き合いは社内では内緒にしようと言ってた癖に、今度の彼女とは、社内でいちゃつくんかーい!

無視してその場を通り過ぎようとしたのに、アイリちゃんがあたしに声を掛けてきた。

「あ、牧野先輩、お疲れ様ですー。」
「お疲れ様でーす。」

軽く会釈してさっさとここを離れようと歩いているのに、アイリちゃんがあたしに駆け寄ってくる。

「牧野先輩っ! あたし、河野さんにチョコ渡して告白したんです!
そしたらOKって言ってもらえて!
すっごく嬉しくてー!
今日これから2人でどこか行こうと思うんです!
どこ行ったらいいと思います?」

あ、やっぱそうなのね。
ま、いいんじゃないですか?

「あ、良かったねー。
う・・・ん、好きな人とならどこに行っても楽しいんじゃないかな?
行先はあたしにじゃなくて彼に相談したら?」
「えー? カレだなんて!
何か恥ずかしー!」

自分で言いに来たくせに何言ってんのよ。
あー、もー、面倒臭い。
あたし、あんた達の事なんか、どーでもいいしっ!

あたしの前でわざとらしくモジモジして、心なしか頬っぺたを染めてるアイリちゃんに向かって溜息を吐きたくなって。
いやいや、大人気ないからなんとか堪えねば・・・とこっそり深呼吸した時。
背後から誰かにふわっと抱き締められて、今度は息が止まった。

「悪いな、つくし。待たせたか?」

頭の上から降って来る、甘い甘いベルベットボイス。
これは・・・ 振り返らなくなって分かる。

何やってんのよ!
ここはあたしの会社のエントランスホールだっつーの!

緩くあたしを包んでる腕をひっぺ剥がして、振り返る。
そこには小首を傾げ、眇めた目でこっちを見下ろしてる、西門さんがいた。
文句を言おうと口を開いたら、すっと伸びてきた指があたしの頭を西門さんの方に引き寄せて・・・
なんと、頭の天辺にキスを落してる!

「そんな怖い顔でこっち見るなよ。
遅れた俺が悪かったって。
でもちゃんと迎えに来たろ?」

パチンといつものウインクひとつ。
それなのに、目からキラキラとした小さな星が振り撒かれてくように見えるのは、あたしの目がおかしいに違いない。

「じゃあ、つくし、行こうか?」

いつもはつくし・・・なんて呼ばないくせに。
何のつもりか、繰り返しあたしの名を呼び捨てにしてる。
腰に手を回してエスコートしようとしてるから、そうはさせてなるものかと、早足で自動扉の外に飛び出した。
ヒールを鳴らして早足で歩いても、コンパスの違いなのか、あっという間に追いつかれる。

「オイ、お前どこ行くんだよ。車、こっち。」

くいと肘を引っ張られ、方向転換させられた視線の先には、西門さんの愛車・メタリックシルバーのジャガーが停まっていた。

「何よ? 一体何なのよ?
人の会社まで押しかけて!
人前であんなことして!
何のつもりよ?」
「ふん。お前が困ってそうだから、救いの手を差し伸べてやっただけだろ?
見たか? あの演技過剰な女はぽかんと口開けて。
後ろに突っ立ってた男は目真ん丸くして間抜け面晒してたぜ。」
「それにしたって・・・」
「ま、これで当分お前に悪い虫はつかねえだろ。
安心して仕事に励め。」
「あたしはこんな事してくれって頼んでないでしょー!」

あたしの抗議を物ともせず、どこか楽し気な微笑を浮かべてる西門さんが、あたしを助手席に抛り込んで。
自分も運転席に乗り込んできて、エンジンをかける。
やたらとうるさいエンジン音があたりに響いて、あたしは「あーあ・・・」とつい嘆きの声を上げた。

「どこ行くのよ?
あたし帰りたいんだけど。」
「どこって、バレンタインデートだろ。
今日はバレンタインデーだぜ。
牧野、知らねえの?」

知ってるわよ。知ってるに決まってるでしょ。
ムカつくから無視してやるっ!

「ほら。」

信号待ち中にあたしの前にすっと差し出された掌。

「何? この手・・・」
「チョ!コ!」
「持ってきてないけど。」

今日会うと思ってなかったもん。
持ってる訳ないでしょうが。

「ふーん、持ってきてないって事は、用意はしてあんのか。
じゃ、ひとまず行先は牧野んち。
その後メシだな。」
「勝手に決めないでよ。」
「どうせお前、バレンタインを独り部屋で寂しく過ごすんだろ?
だったら俺がバレンタインデートの相手してやるって言ってるんだよ。
有り難く思え。」

どこまで俺様なのよ。
何であたしの都合は全部無視なのよ。
って、まあ、ホントに今日は用事がないけどさっ!

あたしはムカムカしてるってのに、西門さんはくくくと笑いを漏らす。

「溺れる者は藁をも掴む。」
「は?」
「だーかーらー。
独り身に寒さが堪えるこのシーズン、つくしちゃんは俺みたいなチャランポラン男でも、ついついデートしちまうって事。」
「デートなんかした憶えない。」
「クリスマスもメシ食いに行ったし。
誕生日だって2人きりでお祝いしたろ。
そして今日。
バレンタインだってデート決定。」
「あたしはまだ『行く』って言ってない!」
「まー、この色男の俺が、『藁』に例えられるってのはちと気に食わないけど。
俺は藁よりよっぽど有益だし。
俺を掴んだら、俺に溺れちまうぜ。」

ホント、バカよね、この男は。
世の中の女の子、皆が自分を好きになるって思い込んでる。
あたしは騙されたりしないわよっ!
この不誠実の塊なんかに!

そう思ってる一方で、今日も西門さんとこのまま出掛けてしまう事に薄々気付いてる自分もいる。

ま、いいか。
チョコ、折角買ったんだし。
渡して、ひとつ口に入れて。
『まあまあだな。』とでも呟くところを見るとしよう。
今年のバレンタインは、それで手を打とうっと。

心のどこかが少し浮き立つ。
それを感じて、西門さんから見えない様に、窓から外を見てる振りをしてちょっと笑った。


__________



『藁=総二郎』というのをふと思いついたので、こんなゴージャスな藁はないな(苦笑)とか思いつつ書いてみました。
バレンタインSSでございましたー。
最後の1話、更新が遅くなりましたので、お詫びを兼ねまして、少々長めとなっております。
ご笑納くださいませ♪


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瓢箪から駒が出る? 前編

3月14日、ホワイトデーでございます。
バレンタインSS「溺れる者は藁をも掴む?」の総二郎sideからお話は始まります!


__________



「総二郎、一体何してんの?
牧野に変な虫が付いてるんだけど。」

深夜に着信した類からの国際電話。

「おい、類、今何時だと思ってんだよ?」
「んー? そっちは4時でしょ。
こっちが20時なんだから。」
「分かってんなら電話してくんなよ、こんな時間に。」
「こんな時間じゃないと確実に繋がらないんじゃないの?
仕事も無くて、女との逢瀬も一段落してるこの時間じゃないとさ。」
「・・・自分の部屋のベッドで寝てたっつーの!」

ふう・・・と溜息が出る。
昔と違ってそう毎晩毎晩女と遊んでられるか!
俺だって仕事があるんだよ!

「俺もあきらも日本にいられないんだから。
総二郎がちゃんと牧野を護らないでどうするんだよ!
全く、あんな下らない男につけ込まれちゃって・・・」
「お前、もしかしてまだ牧野にSP付けてんのか?
過保護すぎねえ?
あいつももう25だぜ?」

類って奴は、牧野の事となると常軌を逸している。
一般人の、日常生活を送るのに何の危険もないであろう牧野に、本人には無断でSP貼り付かせてるなんて。

「牧野みたいに人を疑う事を知らない、根っからのお人好しにはこれぐらいしとかないとダメでしょ。
実際、変な虫付いてる訳だし・・・」

電話口で、ネチネチと言い募ってる類に少々呆れながらも、この通話を早く終わらせるために、話を進めた。

「要するに牧野に付いた虫を退治すりゃいいんだろ?」
「そ。相手は牧野の会社の男だから。
その後牧野が働き辛くならないようにしてやって。」
「へいへい。仰せの通りに。
それで? 相手の情報は?」
「朝までに手元に届くようにしておくから。
さっさと対処してよ。
じゃ、頼んだから。」

お前、それが人にモノを頼む態度かよ?と言おうとしたところで通話はブチっと打ち切られた。
酷い。酷すぎる。
マイペースにも程がある。
これで仕事になるときっちり成果を上げてるってんだから、類って奴は何処まで行っても不思議な男だ。
また勝手に溜息が漏れる。

はあ、眠い・・・
朝の4時だぜ?
牧野の事は置いといて、もう一眠り・・・

朝食の膳の隣に朝刊と一緒に置かれていた一通の封筒。
開けてみれば、牧野に付いている虫とやらの報告書が入ってる。
花沢のSPも大変だ・・・と少し気の毒に思えてきた。

牧野がその男とお友達以上の付き合いを始めたのは2か月前。
お友達以上・・・といっても、手を繋がれて顔を赤らめたりする程度のものらしい。
外泊はした事無し。
家に男を上げた事も無し。
至って健全なお付き合い・・・というか、俺からすると寧ろ異常とも思えるスローペース。
まあ、牧野って奴は、思い切りが良くて、どんな逆境にも飛び込んでいく女だが、恋愛だけには飛び切り奥手だから。
それを知らずして男は牧野に惚れてしまったのかもしれない。
俺が出て行って、どーんと一発ぶちかましてやってもいいんだけど。
それだと、牧野の怒りを買うだろうし、その後そいつとギクシャクして会社での居心地が悪くなるやもしれない。
少し裏工作してみるか・・・

電話1本で仕事を請け負う便利な男がいる。
俺は勝手に「忍者」と呼んでるけど。
まあ、VIP相手にこじんまりとした興信所を極秘裏にやってるみたいな奴だ。
面倒な事や、ちょっと探偵紛いの事をしてもらいたい時に重宝してる。
そいつに女を1人牧野の会社に潜り込ませてもらう事にした。
所謂「別れさせ屋」的な仕事の依頼。
牧野の相手が、これにコロっといっちまうなら、所詮それは大したことのない男だという証明になるし。
これに全く靡かないなら、俺も次の手を考えないといけないという指針になるだろう。

派遣会社のスタッフとして牧野の会社に入り込んだ「くノ一」はいい仕事をしたらしい。
たった1ヶ月の間に、色目を使って、牧野の相手を自分に振り向かせた。
本当の恋愛関係になってはいけないから、色んな事を仄めかしただけなんだろうけど、男はコロっと落ちたらしい。
別れ話をしに行く前日には、待ち合わせの時間と場所までこちらに連絡が入った。
いよいよ俺の出番だ。

捨て猫の如くフラれた牧野を保護して、餌与えて、ちょっと甘やかしてやったらいいんだろ?

何とか仕事の算段をつけて、牧野と男が会っているというカフェに行った。
いつ店に入ったらいいか、外から様子を窺っていると、この俺の魅力と美貌が災いして、女から声を掛けられてしまった。

「お兄さん、独りなんですかぁ?
あたしも友達にすっぽかされちゃって独りでぇ。」
「あ、そうなんだ。こんな可愛い子との約束すっぽかすなんて、罪なヤツもいるんだな。
じゃあ、良かったら、お茶でもどう?」
「わあ! 嬉しいっ!」
「君、名前は?」
「ミオです。」
「へえ、名前も可愛いんだねー。」

滑らかに口は軽薄な言葉を紡ぐ。
これは生まれ持った性みたいなものかもしれない。
取り敢えず、この女と2ショットの振りをして、牧野とその相手が座ってる席の近くまで行ってみることにした。
が・・・
タイミング良くか悪くか、店に入った途端、牧野の相手は俺とは入れ違いに店を出て行ってしまった。
どうやら別れ話は終わったらしい。
牧野の方をこっそり見遣ると、涙を零しているってこともないし、怒ってる訳でも無い。
唯々、目をぱちくりさせ、怪訝な表情を浮かべている。

晴天の霹靂ってヤツか?
フラれるとは思いもよらなかったらしいな、アイツ。

くすりと笑いが込み上げる。
いつの間にやら、隣の女は俺の腕に自分の腕を巻き付けており、ちょっと図々しいんじゃねえ?と思いつつ、その子と2人、店員に案内されながら店の中に進んで行った。
目の前に置かれたティーカップの中身を一息であおった牧野は席を立とうとしていて、俺は丁度そこに通りがかったかのように話し掛けた。

「あれ? 牧野じゃん。」

牧野がぱっとこちらを向いた。
俺と、隣の女とを交互に見てる。
どうせまた女連れか・・・位に思ってるんだろう。

「何、お前独りなの、こんな店で?」

知ってるよ、お前の男がさっき店を出て行ったのは。

牧野の空になったティーカップと、男の飲みかけのコーヒーカップがテーブルの上にはある。

「じゃなくて、2人だったのに独りきりにされてるってとこか。
何だよ、男にフラれたか?」
「もーーーっ! 余計なお世話だっつーの!
あたしの事はいいから、さっさと行きなさいよ!」
「何だ、図星か。」

あの男はキッチリ牧野をフってくれたらしい。
これでもう目的は8割達成したも同然だ。
そして隣の女は用済み。
纏わりついていた腕をさり気無く外した。

「ミオちゃんだっけ?
ごめんねー、俺、こいつにメシ食わせなきゃいけなくなっちまったから。
今日は付き合えないわ。
また今度ね。」
「えーーー? 何言ってるの?
お茶でもどう?って誘ってきたのそっちでしょ?」

そう、お茶でもどう?とは言ったけど、2人で飲もうとは言ってない。
どうぞ1人でゆっくり飲んで行ってくれ。

「うん、だからこれでお茶でも飲んでって。」

胸ポケットのマネークリップで束ねた札の中から1枚を引き抜き、ミオちゃんとやらの掌に笑顔と共に押し込んだ。
煩くされる前にさっさとこの場を立ち去るのが得策。
片手には牧野のバッグとコートを。
もう片方の手には、牧野の腕を取り、店の外へと歩き出した。
日が暮れた後の外は北風吹きすさぶ12月。
取り敢えず走ってきたタクシーに手を挙げて、牧野を中に押し込める。

「六本木ヒルズの方行って下さい。」

飛びっきり美味いメシ、食わしてやるよ。
お前好みの、ヨーロッパの城みたいなインテリアのレストランで。
あっという間に機嫌直す事請け合いだ。


__________



ちょっと更新が滞っておりました。
もう多忙で、多忙で、目が回りそう・・・
そんな中やっとお話をUPすることが出来ました♪
「溺れる者は藁をも掴む?」のネタバレ的要素を散りばめていこうかと思ってます。

さてさて。忙しかったのは本当なのですが、更新ストップの一因はですね・・・
誠に僭越ながら末席に名を連ねさせて頂いている「鷹男同盟」<なんて素敵にジャパネスク(鷹男×瑠璃メイン)Blog>のリニューアルオープンのお祝いにお贈りするSSを書いておりました!
実は昨日から1話公開して頂いております♪
鷹男同盟」の「一般公開作品目次」内にあります「新作作品」の「キッカケは勘違い!」<前編>がそのお話になります。(和名の『紫陽花』名義で投稿しております!)
後編がUPされたら、またお知らせしますねー。
「鷹男同盟」は会員制で、会員限定のお話が沢山あるのですが、今回リニューアル記念!ということで、一般の方にも読んで頂ける新作もUPされています。
いつもお世話になってるりく様のお話もありますよ!
是非是非ご訪問くださいね(^-^)


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瓢箪から駒が出る? 中編

タクシーの中でスマホを弄って一仕事。
メートル<レストラン支配人>宛にダイレクトに届く、VIP専用のメールアドレスに連絡を入れれば、間髪入れずに返事が届く。
そうやって牧野好みのレストランの個室を確保した。
車から降ろしてみれば、目を丸く見開き、口は半開きにして建物を見つめている牧野が現れたもんだから、ふふふ・・・と笑いが込み上げてくる。

予想通りの間抜け顔。
そうそう、それが見たかったんだよ。

店の中に入っても、キョロキョロとあちらこちらを見遣り、案内してくれるギャルソンの慇懃なもてなしに身を縮こませていたが、個室に通されると段々と表情が解れてきて、目がキラキラと光り出した。
どうやらこの店の内装が甚く気にいったらしい。

こいつ、絶対に今日男にフラれた事忘れてんだろ。

メチャクチャ美味そうに、出て来た料理を口に運んでる牧野。
いつも通り、百面相を披露しながら食事してるから、それを肴にワイングラスを傾ける。
腹が膨れて、幸せそうな様子でウットリと目を瞑っている牧野から話を引き出そうと質問をぶつけた。

「それで? 何で牧野はフラれたワケ?」
「はあ? 何でそんな事聞きたいのよ?
っていうか、こっちが知りたいくらいなのに。」

途端に眉間に皺を寄せ、不機嫌さを顔に出す。
単純なヤツ。

「理由も言われずにフラれたのか、お前。
どんだけ女子力ねえんだよ。」
「理由? 理由は、何か言ってたな・・・
俺といても心の底から笑ってないとか。
同僚の子と一緒に何か食べてる時と、俺といる時顔が全然違うとか。
何か、そんなような事。」

そう聞いてつい笑いを堪え切れずに吹き出した。

「お前程面白い顔して飯食うヤツはいねえってのになあ。
それが気に入らないって?
詰まんねえ男だな、オイ。
俺はメシよりよっぽど堪能してるぜ、つくしちゃんの百面相。」
「逆だよ、逆。
その百面相とやらを自分の前でしないってのが気に入らなかったみたい。」
「ふーん、何でお前はそいつの前では百面相してやらなかったんだよ?」
「あたしだって女の子なの!
お付き合いしてる人には、ちょっとでも可愛いって思われたいもの。
あんた達の前にいる時のように、明け透けな態度じゃなくて、ちょっとカッコつけてたのよ。
それが嫌だったんでしょーよ!」

バカだな、お前。
取り繕った顔しか見せない女なんて堅苦しいばっかりで何の旨みもねえ。
仮面をへばりつけてるようで詰まらねえよ。
まあ、本来の牧野を引き出せなかった男の力量にも問題アリなんだろうけどな。

「あー、そりゃ、男も詰まらなかったろうなあ。
ホントのお前を見せてもらえずに、取り繕ったつくしちゃんしか目の前にいないなら。」
「煩いなあ! だって、まだお付き合いしてそんなに時間も経ってなかったし・・・
そんな急に、被ってる猫脱げないよ!」
「猫被ってる牧野なんて、何の魅力もねえだろ。
お前はありのままでいるのが一番面白いんだから。
で、どんだけ付き合ってたんだ?
1週間か? 2週間か?」

ホントは知ってるけど敢えて聞いてやる。
3か月。
3か月付き合って、お手手を繋ぐだけの間柄。
それはほぼほぼ『単なるオトモダチ』って言うんだぜ。

ぶっすりとむくれた牧野が、吐き捨てるように言い放つ。

「3か月っ! 悪い?」
「3か月? それって結構時間経ってねえ?」
「もーーー! ホント煩いよ。
同じ女の人とは3回なんて決めてる西門さんに、付き合いの期間の事なんてあれこれ言われたくないよ!」

ほうほう、そういう事言うワケ?
こっちだって俺の女との付き合い方、牧野にとやかく言われたくねえんだけど。
ちょっとお返しにからかってやるか。

「ふうん、じゃ、牧野はそいつと3回以上シタんだ?」
「は?」
「だーかーらー、SEX。
シタんだろ、そいつと。」

勿論してない。
絶対にしてない。
花沢の報告書なんか見なくたって、こいつを見てりゃ分かる。
この女からは蛹が蝶になった気配がみじんも感じられない。

「ば、バカっ! エロ門っ!
個室だからって何言うのよ!」

ほーら、な。
この過剰反応。
この頬の赤らめ方。
お前の事は手に取るように分かるぜ。
何年の付き合いになると思ってんだよ?

「お前、まさか・・・」
「な、何よっ?」
「まだ鉄パン穿いてんのか?」
「もーーー! ホント止めてよ、そういう事言うのっ!」

分かってはいても、変な虫に食われていないという事実は、何故か俺の胸をほっとさせる。

「お前、それはフラれるだろ。
3か月付き合って、指一本触れさせないって。
普通の男なら愛想つかすぜ。」

黙り込んだ牧野にダメ押しを。

「お前、そいつの事、別に好きじゃなかったんだろ。」
「・・・そうみたい。」

暫しの沈黙の後、ポツリとそう呟く牧野は、さっきまでの勢いは何処へやら。
妙に小さく見える。

少し虐めすぎたか?
そうだ、今夜は甘えさせてやるんだった。
ちょっとフォロー入れとくか。

「そのうち、お子ちゃま牧野の心にも、恋の花が咲くだろ。
それまでは、無理に男と付き合ったりしなくていいんじゃね?」
「お子ちゃまじゃない。」
「鉄パン脱いでから言えよ、そういうのは。」

また唇を尖らせてだんまりだ。
この件で大して傷付いていないにしても、牧野なりに凹んでいるのだろう。

「ま、アレだ。
次の男が現れるまで、俺がつくしちゃんの面倒みてやるから。」
「要らないよ、そんなの。」
「お前、今からクリスマスだぜ。
独り身でいると、寒さが身に染みるぜー。
それに月末はお前の誕生日だろ?
そして年末年始の休み。
年明けたら、バレンタインにホワイトデー。
恋人達のイベントが次々にやって来るだろ。
俺はさ、そういうイベント事はオンナと過ごさない事に決めてっから。
この冬は牧野の相手をしてやるよ。」
「だから、要らないって言ってんじゃん。
今迄通りの冬を過ごすから、心配無用よ!」
「まあまあ、俺に任せとけって。」

そうだな。
俺も暫く面倒臭い女遊びから離れて、牧野と過ごすのも悪くないかも。
この百面相見てるだけで面白いし。
男女の駆け引きすることも、計算することもなく、気儘に言い合える楽な間柄。
そんな相手って、俺にとっちゃ牧野だけだもんな。

そう思い付いて、またふふふと笑いが込み上げる。
そんな俺を訝しそうな目で見てるから、もっと可笑しくなってきて。
これから何をしてやろうか?と舌なめずりする俺がいた。


__________



はー、大変長らくお待たせいたしましたが。
やっと「瓢箪から駒が出る?」の続きを書きました。
「溺れる者は藁をも掴む? 中編」の総二郎sideでしたね。
はてさて、ここからどうやって纏めていったらいいのか・・・
なんかちょっと難しいんですけどー(苦笑)
自業自得ですね。ガンバリマス・・・

久々のお話更新&Blog3周年にお祝いや応援のメッセージ、有り難うございました!
また書いて行かねば!と思う原動力になります!
改めてコメントにはお返事させて頂きますが、取り敢えず感謝の気持ちをお伝えしたくて。
本当に嬉しかったです(*^。^*)


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