ちょっと閃いたネタでバレンタインSSを書いてみました。
社会人のつくしと総二郎のお話です。
__________
お付き合いしていると思っていた男の人にあっさりフラれたのは、年の瀬も迫って来た12月の事だった。
「牧野さん、きっと俺じゃダメなんだよね。」
「え?」
いきなり切り出された言葉に目をぱちくりさせた。
「なんかこう・・・ 俺と居ても笑ってるけど、心の底からは笑えてないって気がしてさ。」
「そんなこと・・・ないです。
あたし、あんまり男の人とお付き合いした事ないから、緊張しちゃってるんだと・・・。」
そう言って、向かいに座っている人を見遣ったけれど、その人はもうあたしを見ていなかった。
困り顔で少し苦笑いしてから、自分勝手につらつらと言葉を紡ぎ始める。
「会社で同僚の子達とランチしたり、給湯室で楽し気に喋ってる時とさ、俺の前にいる時、全然顔が違うんだよ。
俺と飯食ってもそんな顔しないでしょ。
いや、飯の時だけじゃなくて、俺といる時はいつもの溌剌とした牧野さんじゃなくなってる。
時間が解決するのかなぁ・・・なんて思ってたんだけど、そうじゃないみたいだから。
残念だけど、個人的にこうやって会うのはもう止めたいんだ。
仕事していく上で気まずくなるのお互い困るから、これからも会社では普通にしてもらえるかな?
俺もそうするし。
じゃ、俺はこれで。」
その人は言いたい事を全部言い切ったらしく、テーブルの上の伝票を持って、さっさとレジに向かって歩き出した。
あたしはその背中をぽかーんと見送る。
え? 何これ?
いきなり何なの?
話があるんだって言うから、てっきりデートだと思って、こんな小洒落たカフェに来たのに。
クリスマスやあたしの誕生日や年末年始の予定を話し合ったりするのかと思ってたあたしが馬鹿みたいじゃない?
ランチや給湯室でおやつの摘み食いしてる時と、あなたの前にいる時の顔が違うって?
そりゃそうでしょ。
あたしだって、付き合ってる人には少しでもよく思われたいって思ってるもん。
多少お淑やかにしたり、顔作ったりするよ。
それが仇になったっていうのーーー?
一方的にフラれた訳だけど、悲しいとか、悔しいとか、そういった感情よりも、?マークが飛び交う頭の中。
独り残されたカフェの席で、冷め始めたティーカップを見下ろした。
うーん、それでもこれ奢ってくれたんだよねえ?
最後の置き土産ってヤツ?
まあ、紅茶には罪はないし。
取り敢えず飲んどくか・・・
温い紅茶は、あまり美味しいと思えなかったけど、残すのもお店に申し訳ないから、ぐいっと飲み切って、カップをソーサーに置いた。
かちり・・・と硬い音が耳に響く。
ついついあたしの口からはふうっと溜息が零れた。
晩ご飯、どうしよ・・・?
今夜は一緒にどこかに食べに行くものと思ってたから、何にも用意してなかったや。
でも・・・ こんな日だからこそ、家で独りで余り物で済ませたりしないで、ぱーっと美味しい物でも食べに行こう!
うん、そうだ! そうしようっと!
そう決めて、身体に力を込めて席を立とうとした時、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「あれ? 牧野じゃん。」
無視すれば良かったのに、ついその声がする方に顔を向けてしまう。
案の定、綺麗なお姉さんを腕にぶら下げた西門さんが立っていた。
隣のお姉さんは、べたーっとその腕に身体を寄せながら、あたしの方を胡散臭い物でも見るような目つきで睨んでくる。
「何、お前独りなの、こんな店で?」
そう、この雰囲気のいいカフェはカップル占有率が異常に高い。
いや、女性同士、男性同士のグループの人もいるにはいるんだけれど。
圧倒的に男女の組み合わせが多いのだ。
あたしのテーブルの上を一瞥した西門さんは、くくくっと笑いを漏らした。
「じゃなくて、2人だったのに独りきりにされてるってとこか。
何だよ、男にフラれたか?」
「もーーーっ! 余計なお世話だっつーの!
あたしの事はいいから、さっさと行きなさいよ!」
「何だ、図星か。」
にたあっと嫌な感じに笑った西門さんが、隣のお姉さんからするっと腕を抜いて、さらりと失礼な台詞を言い放つ。
「ミオちゃんだっけ?
ごめんねー、俺、こいつにメシ食わせなきゃいけなくなっちまったから。
今日は付き合えないわ。
また今度ね。」
「えーーー? 何言ってるの?
お茶でもどう?って誘ってきたのそっちでしょ?」
「うん、だからこれでお茶でも飲んでって。」
まるで手品のように何処かからすっとお金を取り出した西門さんは、一万円札をお姉さんの掌に滑り込ませて、パチリとウインクひとつ。
その人があっけにとられているうちに、あたしの腕を掴んで店の外へと連れ出した。
「ちょ、ちょっと! 西門さん!
放してよっ! あの人どうすんのよっ?」
「んーーーーー? お茶でも飲んで、次の男から声掛けられるの待つんじゃねえの?
俺だって、今さっきそこで知り合ったばっかだし。」
「・・・まだそんな事してるんだ。」
「カフェでお茶飲む位どうって事ねえだろ?」
「その後、そこのホテルに連れ込むくせに!」
そう、ここのすぐ傍には道明寺のウチのおっきなホテルがドーンと立っている。
多分、西門さんや美作さんの行きつけだ。
「俺は誰にも無理強いした事なんかないぜ。
双方合意の上で、そういうことしてんの。
何だよ、牧野も誘って欲しいのか?」
「そんな訳ないでしょうがっ!
フケツっ! その手であたしに触るなっ! 妊娠するっ!」
がっしり掴まれてる西門さんの手を解こうと腕を振るけど、びくともしない。
「はいはい、お前、男にフラれて、腹が減ってて気が立ってるんだろ。
美味い物食わせてやるから。
そうしたら全部解決だ。」
走ってきたタクシーにひょいと手を挙げて。
ドアが開いたら、すかさず中に押し込まれた。
「ちょーっとー!
何でそんなに自分勝手なのよ!
世界は西門さんを中心に回ってるんじゃないんだから!」
「バーカ。流石にそんな事思ってねえよ。
俺は司じゃない。」
そう言われて、つい文句を言うのを忘れてしまった。
そうだ、あいつこそ、自分がこの世界の王様だって思って生きてる奴だった。
いや、きっと今もそう思ってるんだろうけど。
「道明寺、元気?」
「まあ元気じゃねえの?
俺もあんまり会ってはいないからな。
あきらや類の方が詳しいだろ、きっと。」
「ふうん・・・」
西門さんと他の3人は、幼馴染4人組でF4なんて呼ばれているけど、立場が違う。
世界を股に掛ける道明寺財閥、総合商社・美作商事と花沢物産。
日本の伝統文化を後世に伝える為に存在している茶道西門流。
小さな頃から一緒に育った4人も、今は家業の跡取りとして、違うステージでそれぞれに頑張っている。
花沢類にも、美作さんにも暫く会えてないなぁ。
今何処にいるんだろ?
そんな事を考えていたら、いつの間にかタクシーは止まっていて、西門さんがタクシー代を払ってた。
何処かに着いたらしい。
「ほら、降りろ、牧野。」
慌てて西門さんに続いてタクシーを降りたところに建っているのは、大東京のビル群のど真ん中だというのに、そこだけ異空間のような一軒の白亜の豪邸。
まるでお城みたいな建物。
冬でもドアを開けてくれるドアマンさんが2人も立ってて、中に入ると「西門様、お待ちしておりました。」と恭しく腰を折るギャルソンさんがいる。
外見がお城みたいなら、中もお城みたいだ。
道明寺のお邸や、美作さんちのインテリアとも全然違ってるけど、これはこれでとても素敵。
真っ白な壁、落ち着いたオーク色の椅子とテーブル。
糊が効いてピンとした真っ白なテーブルクロス。
ピカピカに磨き込まれた木目の床に、天上からは煌めくシャンデリアの数々。
所々にグリーンが配置されてて、豪奢な中にも温かみや爽やかさが感じられる。
案内されたこじんまりとした個室は、ヨーロピアンテイストの可愛いお部屋で、まるで外国に来たかのように心が浮き立つ。
その空間にウットリと酔ったあたしは、さっき男の人にフラれたことなんか、スッキリサッパリ忘れていた。
__________
バレンタインSSとか言いながら、まだ12月の場面を書いてますけど(^_^;)
お話の終わりにはバレンタインデーに辿り着く予定です(苦笑)
少々お待ち下さいませ。
今日と明日のお昼には、あの方から皆様へのバレンタインプレゼントをご用意してますのでお楽しみに!
さてさて、本日がバレンタイン当日ですね。
世の中では沢山のチョコが行き交うのでしょうか?
管理人は仕事でバタバタな予定で・・・
もし時間が許すなら、何か作る・・・カモ?
皆様のバレンタインプレゼントの中身、こっそり教えて下さいな♪

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
社会人のつくしと総二郎のお話です。
__________
お付き合いしていると思っていた男の人にあっさりフラれたのは、年の瀬も迫って来た12月の事だった。
「牧野さん、きっと俺じゃダメなんだよね。」
「え?」
いきなり切り出された言葉に目をぱちくりさせた。
「なんかこう・・・ 俺と居ても笑ってるけど、心の底からは笑えてないって気がしてさ。」
「そんなこと・・・ないです。
あたし、あんまり男の人とお付き合いした事ないから、緊張しちゃってるんだと・・・。」
そう言って、向かいに座っている人を見遣ったけれど、その人はもうあたしを見ていなかった。
困り顔で少し苦笑いしてから、自分勝手につらつらと言葉を紡ぎ始める。
「会社で同僚の子達とランチしたり、給湯室で楽し気に喋ってる時とさ、俺の前にいる時、全然顔が違うんだよ。
俺と飯食ってもそんな顔しないでしょ。
いや、飯の時だけじゃなくて、俺といる時はいつもの溌剌とした牧野さんじゃなくなってる。
時間が解決するのかなぁ・・・なんて思ってたんだけど、そうじゃないみたいだから。
残念だけど、個人的にこうやって会うのはもう止めたいんだ。
仕事していく上で気まずくなるのお互い困るから、これからも会社では普通にしてもらえるかな?
俺もそうするし。
じゃ、俺はこれで。」
その人は言いたい事を全部言い切ったらしく、テーブルの上の伝票を持って、さっさとレジに向かって歩き出した。
あたしはその背中をぽかーんと見送る。
え? 何これ?
いきなり何なの?
話があるんだって言うから、てっきりデートだと思って、こんな小洒落たカフェに来たのに。
クリスマスやあたしの誕生日や年末年始の予定を話し合ったりするのかと思ってたあたしが馬鹿みたいじゃない?
ランチや給湯室でおやつの摘み食いしてる時と、あなたの前にいる時の顔が違うって?
そりゃそうでしょ。
あたしだって、付き合ってる人には少しでもよく思われたいって思ってるもん。
多少お淑やかにしたり、顔作ったりするよ。
それが仇になったっていうのーーー?
一方的にフラれた訳だけど、悲しいとか、悔しいとか、そういった感情よりも、?マークが飛び交う頭の中。
独り残されたカフェの席で、冷め始めたティーカップを見下ろした。
うーん、それでもこれ奢ってくれたんだよねえ?
最後の置き土産ってヤツ?
まあ、紅茶には罪はないし。
取り敢えず飲んどくか・・・
温い紅茶は、あまり美味しいと思えなかったけど、残すのもお店に申し訳ないから、ぐいっと飲み切って、カップをソーサーに置いた。
かちり・・・と硬い音が耳に響く。
ついついあたしの口からはふうっと溜息が零れた。
晩ご飯、どうしよ・・・?
今夜は一緒にどこかに食べに行くものと思ってたから、何にも用意してなかったや。
でも・・・ こんな日だからこそ、家で独りで余り物で済ませたりしないで、ぱーっと美味しい物でも食べに行こう!
うん、そうだ! そうしようっと!
そう決めて、身体に力を込めて席を立とうとした時、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「あれ? 牧野じゃん。」
無視すれば良かったのに、ついその声がする方に顔を向けてしまう。
案の定、綺麗なお姉さんを腕にぶら下げた西門さんが立っていた。
隣のお姉さんは、べたーっとその腕に身体を寄せながら、あたしの方を胡散臭い物でも見るような目つきで睨んでくる。
「何、お前独りなの、こんな店で?」
そう、この雰囲気のいいカフェはカップル占有率が異常に高い。
いや、女性同士、男性同士のグループの人もいるにはいるんだけれど。
圧倒的に男女の組み合わせが多いのだ。
あたしのテーブルの上を一瞥した西門さんは、くくくっと笑いを漏らした。
「じゃなくて、2人だったのに独りきりにされてるってとこか。
何だよ、男にフラれたか?」
「もーーーっ! 余計なお世話だっつーの!
あたしの事はいいから、さっさと行きなさいよ!」
「何だ、図星か。」
にたあっと嫌な感じに笑った西門さんが、隣のお姉さんからするっと腕を抜いて、さらりと失礼な台詞を言い放つ。
「ミオちゃんだっけ?
ごめんねー、俺、こいつにメシ食わせなきゃいけなくなっちまったから。
今日は付き合えないわ。
また今度ね。」
「えーーー? 何言ってるの?
お茶でもどう?って誘ってきたのそっちでしょ?」
「うん、だからこれでお茶でも飲んでって。」
まるで手品のように何処かからすっとお金を取り出した西門さんは、一万円札をお姉さんの掌に滑り込ませて、パチリとウインクひとつ。
その人があっけにとられているうちに、あたしの腕を掴んで店の外へと連れ出した。
「ちょ、ちょっと! 西門さん!
放してよっ! あの人どうすんのよっ?」
「んーーーーー? お茶でも飲んで、次の男から声掛けられるの待つんじゃねえの?
俺だって、今さっきそこで知り合ったばっかだし。」
「・・・まだそんな事してるんだ。」
「カフェでお茶飲む位どうって事ねえだろ?」
「その後、そこのホテルに連れ込むくせに!」
そう、ここのすぐ傍には道明寺のウチのおっきなホテルがドーンと立っている。
多分、西門さんや美作さんの行きつけだ。
「俺は誰にも無理強いした事なんかないぜ。
双方合意の上で、そういうことしてんの。
何だよ、牧野も誘って欲しいのか?」
「そんな訳ないでしょうがっ!
フケツっ! その手であたしに触るなっ! 妊娠するっ!」
がっしり掴まれてる西門さんの手を解こうと腕を振るけど、びくともしない。
「はいはい、お前、男にフラれて、腹が減ってて気が立ってるんだろ。
美味い物食わせてやるから。
そうしたら全部解決だ。」
走ってきたタクシーにひょいと手を挙げて。
ドアが開いたら、すかさず中に押し込まれた。
「ちょーっとー!
何でそんなに自分勝手なのよ!
世界は西門さんを中心に回ってるんじゃないんだから!」
「バーカ。流石にそんな事思ってねえよ。
俺は司じゃない。」
そう言われて、つい文句を言うのを忘れてしまった。
そうだ、あいつこそ、自分がこの世界の王様だって思って生きてる奴だった。
いや、きっと今もそう思ってるんだろうけど。
「道明寺、元気?」
「まあ元気じゃねえの?
俺もあんまり会ってはいないからな。
あきらや類の方が詳しいだろ、きっと。」
「ふうん・・・」
西門さんと他の3人は、幼馴染4人組でF4なんて呼ばれているけど、立場が違う。
世界を股に掛ける道明寺財閥、総合商社・美作商事と花沢物産。
日本の伝統文化を後世に伝える為に存在している茶道西門流。
小さな頃から一緒に育った4人も、今は家業の跡取りとして、違うステージでそれぞれに頑張っている。
花沢類にも、美作さんにも暫く会えてないなぁ。
今何処にいるんだろ?
そんな事を考えていたら、いつの間にかタクシーは止まっていて、西門さんがタクシー代を払ってた。
何処かに着いたらしい。
「ほら、降りろ、牧野。」
慌てて西門さんに続いてタクシーを降りたところに建っているのは、大東京のビル群のど真ん中だというのに、そこだけ異空間のような一軒の白亜の豪邸。
まるでお城みたいな建物。
冬でもドアを開けてくれるドアマンさんが2人も立ってて、中に入ると「西門様、お待ちしておりました。」と恭しく腰を折るギャルソンさんがいる。
外見がお城みたいなら、中もお城みたいだ。
道明寺のお邸や、美作さんちのインテリアとも全然違ってるけど、これはこれでとても素敵。
真っ白な壁、落ち着いたオーク色の椅子とテーブル。
糊が効いてピンとした真っ白なテーブルクロス。
ピカピカに磨き込まれた木目の床に、天上からは煌めくシャンデリアの数々。
所々にグリーンが配置されてて、豪奢な中にも温かみや爽やかさが感じられる。
案内されたこじんまりとした個室は、ヨーロピアンテイストの可愛いお部屋で、まるで外国に来たかのように心が浮き立つ。
その空間にウットリと酔ったあたしは、さっき男の人にフラれたことなんか、スッキリサッパリ忘れていた。
__________
バレンタインSSとか言いながら、まだ12月の場面を書いてますけど(^_^;)
お話の終わりにはバレンタインデーに辿り着く予定です(苦笑)
少々お待ち下さいませ。
今日と明日のお昼には、あの方から皆様へのバレンタインプレゼントをご用意してますのでお楽しみに!
さてさて、本日がバレンタイン当日ですね。
世の中では沢山のチョコが行き交うのでしょうか?
管理人は仕事でバタバタな予定で・・・
もし時間が許すなら、何か作る・・・カモ?
皆様のバレンタインプレゼントの中身、こっそり教えて下さいな♪



ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
