ある晴れた春の日の午後。
大学のキャンパスで西門さんに捕まった。
「時間あるんだろ? 茶でも飲もうぜ。」と誘われて。
授業がなかったあたしは、てっきりカフェテリアでコーヒーの一杯でも奢ってくれるのかと思って、ひょこひょこ付いて行ったのだ。
そうしたら、辿り着いた所はキャンパスの端っこの方にあるお茶室で。
何故かそこでお茶菓子とお薄を頂いてしまった。
まあコーヒーを飲むよりも美味しかったからいいんだけど。
大学の中のお茶室なんて、あるのは知ってたけど、入った事のなかったあたしは、無礼を承知で、あちこち見たり覗いたりしていた。
その時後ろから、思いもよらない言葉が聞こえてきた。
「お前さ、そろそろ俺の事毛嫌いするの、止めねえ?」
は? 何言ってんの、この人?
だって、お茶を点ててる時以外は、チャランポランで、こーーーーんなにふしだらで、フケツな男で、いっつも人の事を鉄パン処女とか呼んでゲラゲラ笑ってるのよ。
敬遠せずにはいられないでしょうが!
くるっと振り返り、ビシーッと人差し指で鼻を指しつつ言ってやる。
「そうして欲しいなら、そっちがまず態度を改めなよ!
あたしはねえ、女の子を手玉に取ってるような、西門さんみたいな男はぜーんぜん信じらんないの!
ホントあり得ない。
何が一期一会よ。
千利休もあの世で呆れてるわ!」
「お前、知らねえの?」
「は? 何をよ?」
「俺、とっくに女遊び止めてんの。」
「うっそだあ!」
そうだよ、嘘に決まってる。
この女タラシが女の子との12股だか、13股だかを解消しただなんて。
さっきも通りすがりの女の子に愛想振り撒いてたじゃない。
「嘘じゃねえよ。
もうここんとこ、ずーっと清廉潔白な身なんだよ。
自重してんだ。」
「な、何で? 何の為に?
あ、そろそろ身綺麗にしろって、お家から言われた・・・とか?
うんうん、当たり前だよねー。
次期家元がこれじゃあ、西門流に未来はないって思っちゃうもんね、流派の皆さんも親御さんも。」
そう返してみたら、西門さんがちょっと呆れた顔して、はあーーーーーっと溜息を吐いた。
「ちげーよ。
お前に気付いて欲しいからだろうが!」
「あ、あたし?」
あたしに何を気付けって言うの?
うーん・・・
正直なところ、西門さんが女遊びを止めた事をあたしに気付いてもらいたい理由がさっぱり分からない。
だってあたし、関係ないし・・・
「そう、お前だ!
気付いてない振りをしてんのかと思ったこともあった。
知ってて見て見ぬ振りをしてんのかとも勘ぐった。
だけど、お前は単に鈍感なだけなんだよな・・・」
「鈍感って。
失礼な事言ってんじゃないわよ!」
まあ、あたしはホントに鈍感なところがあるんだけど・・・
でも西門さんの女遊びの事なんか、張り付いて見張ってる訳じゃないんだもん。
分かる訳ないでしょうが!
「だって鈍感だろうが!
俺はお前が好きなんだよ。
ずっとだぞ。
高校の時からなんだぞ。
なんで牧野なんだ?って何度も自問自答したさ。
でも好きなんだからしょうがねえ。
どんな女と遊んだって、その気持ちが消せないから、他の女と会うのは止めた。
いい加減気付いてくれ。」
きっとあたしは目をまあるく見開いてる事だろう。
ものすごーく間抜け面を披露してしまっているのだろう。
でも、あまりの事に思考が付いて行けない。
唯々、目の前の西門さんの薄ら頬っぺたが色付いた顔を見詰めるばかりだ。
目をパチパチさせて、その場に立ち尽していたら・・・
「好きだ、牧野・・・」という甘い響きと共に、ふわりと風が吹く。
柔らかな唇があたしのそれにそっと押し当てられたら、何故かあたしはつい目を閉じてしまう。
頤をそっと持ち上げている西門さんの指先がとても熱く感じられて。
その熱と、唇が重なる感覚に、あたしは攫われてしまったのだった。
__________
ご無沙汰しておりました。
hortensiaです。
生きてます(^_^;)(苦笑)
いや、もう、ホントに怒涛の日々の連続で。
仕事も忙しいし、ガクーンと凹むような壁にぶち当たったりもして。
体力も奪われ、ずーっと風邪引いてんだか、花粉症が辛いんだか分からない毎日。
気が付くと、床で気絶してたり、ソファーで朝を迎えたりしておりましたよ。
いや、実は夕方にも小一時間床の上で気絶寝をしてました。
いっぱいいっぱいの春を過ごしております。
そんな管理人ではございますが。
なかなかお話も浮かんでこなくて、「もしかして、もう書けないのかも?」「これでこのBlogもお終いなのか?」なんて思ったりもしたんですが。
やっぱり書きかけのお話たちも、続きを書いていきたいし、新しいお話にだって挑戦したい!と思い直して、久し振りにPCに向かってみました。
本日で拙宅、開設から3年を迎えることとなりました。
沢山の読み手さん、お仲間に支えられての3年でした。
皆様、本当に有り難うございます!
取り敢えず3年頑張ってみよう・・・と思って書き始めたBlog。
このひと月、サボっておりましたが、これからもボチボチ書いて行けたらと思ってますので、これからも応援の程、宜しくお願い致します!
突貫工事で書いた、ちょいと短めな開設3周年記念SS。
2人の恋の始まりを書いてみました。
春の暖かな空気に包まれた2人を妄想したらにやけました。
いいですよね、春。
花粉さえなければね・・・

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大学のキャンパスで西門さんに捕まった。
「時間あるんだろ? 茶でも飲もうぜ。」と誘われて。
授業がなかったあたしは、てっきりカフェテリアでコーヒーの一杯でも奢ってくれるのかと思って、ひょこひょこ付いて行ったのだ。
そうしたら、辿り着いた所はキャンパスの端っこの方にあるお茶室で。
何故かそこでお茶菓子とお薄を頂いてしまった。
まあコーヒーを飲むよりも美味しかったからいいんだけど。
大学の中のお茶室なんて、あるのは知ってたけど、入った事のなかったあたしは、無礼を承知で、あちこち見たり覗いたりしていた。
その時後ろから、思いもよらない言葉が聞こえてきた。
「お前さ、そろそろ俺の事毛嫌いするの、止めねえ?」
は? 何言ってんの、この人?
だって、お茶を点ててる時以外は、チャランポランで、こーーーーんなにふしだらで、フケツな男で、いっつも人の事を鉄パン処女とか呼んでゲラゲラ笑ってるのよ。
敬遠せずにはいられないでしょうが!
くるっと振り返り、ビシーッと人差し指で鼻を指しつつ言ってやる。
「そうして欲しいなら、そっちがまず態度を改めなよ!
あたしはねえ、女の子を手玉に取ってるような、西門さんみたいな男はぜーんぜん信じらんないの!
ホントあり得ない。
何が一期一会よ。
千利休もあの世で呆れてるわ!」
「お前、知らねえの?」
「は? 何をよ?」
「俺、とっくに女遊び止めてんの。」
「うっそだあ!」
そうだよ、嘘に決まってる。
この女タラシが女の子との12股だか、13股だかを解消しただなんて。
さっきも通りすがりの女の子に愛想振り撒いてたじゃない。
「嘘じゃねえよ。
もうここんとこ、ずーっと清廉潔白な身なんだよ。
自重してんだ。」
「な、何で? 何の為に?
あ、そろそろ身綺麗にしろって、お家から言われた・・・とか?
うんうん、当たり前だよねー。
次期家元がこれじゃあ、西門流に未来はないって思っちゃうもんね、流派の皆さんも親御さんも。」
そう返してみたら、西門さんがちょっと呆れた顔して、はあーーーーーっと溜息を吐いた。
「ちげーよ。
お前に気付いて欲しいからだろうが!」
「あ、あたし?」
あたしに何を気付けって言うの?
うーん・・・
正直なところ、西門さんが女遊びを止めた事をあたしに気付いてもらいたい理由がさっぱり分からない。
だってあたし、関係ないし・・・
「そう、お前だ!
気付いてない振りをしてんのかと思ったこともあった。
知ってて見て見ぬ振りをしてんのかとも勘ぐった。
だけど、お前は単に鈍感なだけなんだよな・・・」
「鈍感って。
失礼な事言ってんじゃないわよ!」
まあ、あたしはホントに鈍感なところがあるんだけど・・・
でも西門さんの女遊びの事なんか、張り付いて見張ってる訳じゃないんだもん。
分かる訳ないでしょうが!
「だって鈍感だろうが!
俺はお前が好きなんだよ。
ずっとだぞ。
高校の時からなんだぞ。
なんで牧野なんだ?って何度も自問自答したさ。
でも好きなんだからしょうがねえ。
どんな女と遊んだって、その気持ちが消せないから、他の女と会うのは止めた。
いい加減気付いてくれ。」
きっとあたしは目をまあるく見開いてる事だろう。
ものすごーく間抜け面を披露してしまっているのだろう。
でも、あまりの事に思考が付いて行けない。
唯々、目の前の西門さんの薄ら頬っぺたが色付いた顔を見詰めるばかりだ。
目をパチパチさせて、その場に立ち尽していたら・・・
「好きだ、牧野・・・」という甘い響きと共に、ふわりと風が吹く。
柔らかな唇があたしのそれにそっと押し当てられたら、何故かあたしはつい目を閉じてしまう。
頤をそっと持ち上げている西門さんの指先がとても熱く感じられて。
その熱と、唇が重なる感覚に、あたしは攫われてしまったのだった。
__________
ご無沙汰しておりました。
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生きてます(^_^;)(苦笑)
いや、もう、ホントに怒涛の日々の連続で。
仕事も忙しいし、ガクーンと凹むような壁にぶち当たったりもして。
体力も奪われ、ずーっと風邪引いてんだか、花粉症が辛いんだか分からない毎日。
気が付くと、床で気絶してたり、ソファーで朝を迎えたりしておりましたよ。
いや、実は夕方にも小一時間床の上で気絶寝をしてました。
いっぱいいっぱいの春を過ごしております。
そんな管理人ではございますが。
なかなかお話も浮かんでこなくて、「もしかして、もう書けないのかも?」「これでこのBlogもお終いなのか?」なんて思ったりもしたんですが。
やっぱり書きかけのお話たちも、続きを書いていきたいし、新しいお話にだって挑戦したい!と思い直して、久し振りにPCに向かってみました。
本日で拙宅、開設から3年を迎えることとなりました。
沢山の読み手さん、お仲間に支えられての3年でした。
皆様、本当に有り難うございます!
取り敢えず3年頑張ってみよう・・・と思って書き始めたBlog。
このひと月、サボっておりましたが、これからもボチボチ書いて行けたらと思ってますので、これからも応援の程、宜しくお願い致します!
突貫工事で書いた、ちょいと短めな開設3周年記念SS。
2人の恋の始まりを書いてみました。
春の暖かな空気に包まれた2人を妄想したらにやけました。
いいですよね、春。
花粉さえなければね・・・



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