ものすごーく久々に、あきつくのSSを。
大学生の2人です。
__________
手が届きそうな距離だけど、つい手を伸ばすのを躊躇してしまう。
だって、もしこの手に掴めた!と思っても、するりとすり抜けてしまうのならば、その後が辛いじゃないか。
だから俺はいつも手に入らない人とばかり付き合ってきた。
もう既に他の人のものなんだから、決して俺のものにはならない。
それで良かった。
気楽で、ちょっとした背徳感がスパイスになり、程よく甘い楽しい時間。
だけどいつしかそんな時間が色褪せてきた。
頭を占めるのはただ一人の女の事ばかり。
それも親友の恋人だった女だ。
悲しい別れで無理引き裂かれた幼い恋。
きっと彼女の心を切り裂いた。
そんな彼女の心が俺のものにならないならば、こうやってそっと見守るだけがいい。
その温もりに触れないままに、笑顔が輝くのを眩しく目を細めつつ見ているだけがいい。
そう思い込もうとするのに、どうしてこんなに胸が痛むんだろう?
どうして俺の右手はこんなに疼くんだ?
牧野の心は今どこに向かっている・・・?
俺はずっとその事が気になって、仕方ないんだ・・・
類や総二郎と楽しげに話しては、時折ふわりと綻ぶ牧野の横顔を盗み見る。
思い切って想っている男がいるのか聞いてしまえば、こんな状況は決着がつくのだろうけれど。
聞きたくない答えが返って来るのが怖くて、いつも尋ねることが出来ないでいる。
もしまだ司の事が好きなら、俺の問いを聞こえない振りをしてくれないかな・・・?
返事がない事が答えだけど。
決定的な言葉を聞かないで済むなら、俺はまだ耐えられるような気がするんだ。
『道明寺があたしの事思い出してくれるって信じてる!』なんてはっきり宣言されたら、俺はどうする?
『そうだよな。司はきっとお前を迎えに来るさ。』なんて、心にもない励ましの言葉を掛けるのか?
どんな顔してその言葉を口にするんだ?
自分の中の落胆をひた隠しにしつつ、曖昧に笑って、いつも通り物分かりのいい男を演じる?
そんなの・・・ 考えただけで胸が潰れるように苦しくなる。
気付けば季節は流れていて。
キャンパス内の桜並木の紅い葉は殆ど落ちてしまった。
淡い水色の空に、その裸になった木々の枝が切り絵の様に浮かび上がっている。
初冬の柔らかな日差しの中、牧野がそのスカートの裾と黒髪を跳ねさせながらリズミカルに歩いていくから、俺はそれをゆっくり追い掛けていた。
「美作さーん、今日暖かいねっ!」
こちらに振り返りつつ、枯れ野に一輪の花が咲いたかのように鮮やかに破顔するから。
俺は胸を軋ませながらも、つい微笑み返してしまう。
「ああ、昨日は寒波襲来とかでとても冷え込んだから。
それと比べると、今日はぐっと気温も上がってるみたいだな。」
「ねえねえ、こういう日を小春日和って言うんでしょ?
お日様の光が優しくってぽかぽかして。
気持ちいー!
ずうっとこの陽射し、浴びてたい!」
牧野が幸せそうだと、こっちまで嬉しくなる。
天気がいいだけだっていうのに。
今日という何でもない日がスペシャルな日に思えてくるから不思議だ。
「このままピクニックに行くとか、言い出しそうだな、牧野は。」
「え? 言ってもいいの、そんな我儘?」
我儘だなんて。
そんな細やかな願いなら、俺にも叶えてやれる。
俺が牧野にしてやれる事なんて、いつも本当に他愛もない事ばかりだ。
常に遠慮して多くを望まない、この慎ましやかな女の子の、数少ない願いを見つけ出して、自分の手で成就させてやれるのは、俺の大いなる喜び。
今日も一つ、それを味わえるチャンスを得た。
早速心当たりがある店に電話して、テイクアウト出来るランチを2人前注文する。
午後の授業が残っているのにキャンパスを抜け出すという事も、牧野の瞳をキラキラと輝かせる一因らしい。
飛び切り楽しそうにしている牧野を助手席に乗せて、向かったのは大きな公園だった。
「え? 公園なのに入るのお金かかるの?」
一人たった200円の入園料に目を丸くして驚いてる牧野を面白おかしく思いながら、俺は券売機で2人分の入園券を買う。
「その入園料のお陰で、手入れの行き届いた、ゆったりと時間が過ごせる場所になってるんだろ。
ほら、行くぞ!」
入場ゲートを通り抜け、奥へ奥へと進んで行くと、「うわあ・・・」という牧野の感嘆が耳に届く。
平日の昼間ということもあってか、人出も然程ない園内は、錦繍の如く様々な種類の紅葉に彩られ、何とも美しい風景を織りなしていた。
「東京の、それもこんな都心で、こんな紅葉見られるんだね!」
「ここは春の桜も見事なんだぜ。
その桜の紅葉も加わってこの景色も生まれてるんだけどな。」
ここの木々は英徳のキャンパス内よりもゆっくりと紅葉しているらしい。
桜も楓も、まだ紅い葉を枝で揺らしていた。
少し歩いて、大きな欅が佇んでいるのが良く見える芝生に、ブランケットを敷いて2人並んで腰を下ろす。
牧野は柔らかく目を瞑り、陽射しや爽やかな空気を身体いっぱいに取り込むかのように深呼吸した。
「はー、気持ちいー! サイコー!」
「ふふふっ、牧野、そればっかりだな。」
「へ? そうだっけ?」
夢から醒めたかのように瞼が開き、俺を見詰めて瞬きしてる、その黒い耀きが真っ直ぐに俺の中に飛び込んでくる。
小一時間前に自分が言った台詞を忘れたらしい牧野。
今は頓狂な表情を見せている顔が幸せそうに綻ぶ、簡単な、そしてとても単純でもある魔法の言葉を呟くのが楽しくて仕方ない俺。
「腹減ったろ?
ランチにしようぜ。」
「うんっ!」
俺が運んできた紙袋の中からは、牧野の手によって次から次へと料理が飛び出してくる。
タコとパプリカのマリネ、きのこのソテーが載っているグリーンサラダ、海老とオリーブのトマトペンネ、生ハムとチーズのバゲットサンド、そして一際しっかりと包装されていたのは、熱々のモッツアレラがとろけるカルツォーネだった。
ブランケットの上には所狭しと料理が並べられ、牧野が極上の笑顔を浮かべる。
「いっただっきまーす!」と宣言して、早速カルツォーネに齧り付く牧野。
俺はランチを食べることなんてそっちのけで、牧野の幸せそうな笑顔を切り取っては胸に仕舞い、そして自分もどんどん幸せになっていった。
「美味しかったねー、どのお料理も。
特に外で温かいものが頂けるのって美味しく感じちゃう!
美作さん、今日もご馳走様でした!」
ぺこりと頭を下げた牧野に、「どういたしまして。」と笑いながら返して。
一拍置いて、そっとそっと小さく溜息を吐いた。
だって、今日の幸せな時間はもうすぐ終わりを迎えるのだろうから。
ブランケットに手を突いて、少し頼りなくなり始めた午後の日差しを堪能している牧野がぽつりぽつりと話し出した。
「ねえ、昔さ、夜の公園のブランコ、2人で乗った事あったよね。憶えてる?」
忘れる訳がない。
あれはお前への気持ちに気付いた夜の事だ。
忘れられる筈、ないだろう?
「ああ、あったな、そんな事。」
「あの時さ、あたし、F3を太陽に例えるなら、美作さんは月みたいって言ったんだよね。」
そう、俺は、いつも太陽に隠れる三日月。
あいつらみたいに明るく光り輝けない、欠けた月。
それが悔しかったり、寂しかったこともあるけれど。
俺は俺にしかなれないし、これが俺の役割なんだと今では思ってる。
「でもね、思うの。
F3にとっては美作さんは癒しの月みたいな存在だけど・・・
あたしにとっては美作さんも太陽だなって。」
違うだろう?
牧野が俺の太陽なんだ。
牧野からの光を受けた時だけ、俺は満月になれるんだから。
例え束の間であっても、俺の心が満たされるのは、牧野が俺と向き合ってくれている時だけだ。
俺がそんな事を思っているのを牧野は知らない。
「・・・俺も太陽ってどういう意味?」
「んーーー? 何か、こう、上手く言えないけど・・・
今日の陽射しみたいな?
いっつも温かくて、柔らかくって・・・
居心地のいい空気で、あたしを包んでくれちゃうでしょ。
その優しい温もりって、月じゃなくて小春日和の太陽みたいだなって。」
そう言われて、何度かその言葉を頭の中で反芻した。
やがて身体の奥からじわじわと歓びと少しの恥ずかしさが湧いてきて。
俺は言葉を失ったまま、牧野を見詰める。
牧野の頬が紅く染まり、大きな黒目が水の膜を湛えているかのように煌めいていた。
もしかして・・・
もしかしたら、今手を伸ばせば掴めるんだろうか?
指の間からすり抜けることなく、しっかりと、この手で牧野を掴まえられる?
俺は何かに取り憑かれたかのように、右手を牧野の左手に重ねる。
ぴくりと一瞬跳ねた小さな手は、逃げることなく俺の手の中に収まった。
小さいけれど温かなその手は、掴んでしまえば、元からここにあるのが当然だったかのように、しっくりと俺の掌に添うから、二度と離したくないとさえ思ってしまう。
ああ、どうか、この胸の高鳴りを牧野に聞かれていませんように。
これから紡ぐ言葉が震えませんように。
そして、この願いが聞き入れられますように。
「じゃあ、俺を牧野の唯一の太陽にして。
そして牧野も俺だけを照らす太陽になって欲しい。」
俺の一世一代の壮大な愛の告白に、恥ずかしそうに俯きつつ、こくりと頷いてくれたから。
俺達は優しい陽射しが木々の向こうに隠れてしまうまで、互いの手の温もりを感じながら、そこに座っていた。
俺はやっと掴まえたんだ。
この世でたった1人の掛け替えのない相手。
きっとずっと探してた。
そして心の底から求めてた。
そして独りで胸の内で誓う。
常に牧野にとって、優しい陽射しであらん事を。
__________
ぐはあ!
何だ、この甘いヒトは!
いや、ハロウィンで甘いルイルイを書いたんでね。
あきらのことを無視って訳にいかないかなーと思って、思い付くままに書いてみたんですけど。
久し振りのあきつくは、難しかったです!
2人のお出掛け先は新宿御苑です。
いいですよねー、新宿御苑。
のんびり出来て、色んな景色が楽しめて。
水辺もあるし、大好きな場所のひとつです。
自分で行った時の写真を探したんだけど、違うPCに入ってるみたいで見つからなかった・・・
11月に入ってから、開店休業状態でスミマセン。
もうもう、怒涛の日々で。
っていうか、今も続いてて。
仕事忙しいだけじゃなくて、病人が危うい日々が長く続いてます。
更に看病を手伝ってくれるべき相方が、病人その2に大へんしーん!
なんだよ!めちゃくちゃ辛いじゃん!
という訳で、看病の合間に無理矢理お話を書いて現実逃避してみました。
そうこうしているうちに、総二郎のお誕生日が近付いてきてます。
わー、どーしよー!
何しようー?
どうかBirthday SSが書けるように、皆様からも念を送って下さいませ(苦笑)

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
大学生の2人です。
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手が届きそうな距離だけど、つい手を伸ばすのを躊躇してしまう。
だって、もしこの手に掴めた!と思っても、するりとすり抜けてしまうのならば、その後が辛いじゃないか。
だから俺はいつも手に入らない人とばかり付き合ってきた。
もう既に他の人のものなんだから、決して俺のものにはならない。
それで良かった。
気楽で、ちょっとした背徳感がスパイスになり、程よく甘い楽しい時間。
だけどいつしかそんな時間が色褪せてきた。
頭を占めるのはただ一人の女の事ばかり。
それも親友の恋人だった女だ。
悲しい別れで無理引き裂かれた幼い恋。
きっと彼女の心を切り裂いた。
そんな彼女の心が俺のものにならないならば、こうやってそっと見守るだけがいい。
その温もりに触れないままに、笑顔が輝くのを眩しく目を細めつつ見ているだけがいい。
そう思い込もうとするのに、どうしてこんなに胸が痛むんだろう?
どうして俺の右手はこんなに疼くんだ?
牧野の心は今どこに向かっている・・・?
俺はずっとその事が気になって、仕方ないんだ・・・
類や総二郎と楽しげに話しては、時折ふわりと綻ぶ牧野の横顔を盗み見る。
思い切って想っている男がいるのか聞いてしまえば、こんな状況は決着がつくのだろうけれど。
聞きたくない答えが返って来るのが怖くて、いつも尋ねることが出来ないでいる。
もしまだ司の事が好きなら、俺の問いを聞こえない振りをしてくれないかな・・・?
返事がない事が答えだけど。
決定的な言葉を聞かないで済むなら、俺はまだ耐えられるような気がするんだ。
『道明寺があたしの事思い出してくれるって信じてる!』なんてはっきり宣言されたら、俺はどうする?
『そうだよな。司はきっとお前を迎えに来るさ。』なんて、心にもない励ましの言葉を掛けるのか?
どんな顔してその言葉を口にするんだ?
自分の中の落胆をひた隠しにしつつ、曖昧に笑って、いつも通り物分かりのいい男を演じる?
そんなの・・・ 考えただけで胸が潰れるように苦しくなる。
気付けば季節は流れていて。
キャンパス内の桜並木の紅い葉は殆ど落ちてしまった。
淡い水色の空に、その裸になった木々の枝が切り絵の様に浮かび上がっている。
初冬の柔らかな日差しの中、牧野がそのスカートの裾と黒髪を跳ねさせながらリズミカルに歩いていくから、俺はそれをゆっくり追い掛けていた。
「美作さーん、今日暖かいねっ!」
こちらに振り返りつつ、枯れ野に一輪の花が咲いたかのように鮮やかに破顔するから。
俺は胸を軋ませながらも、つい微笑み返してしまう。
「ああ、昨日は寒波襲来とかでとても冷え込んだから。
それと比べると、今日はぐっと気温も上がってるみたいだな。」
「ねえねえ、こういう日を小春日和って言うんでしょ?
お日様の光が優しくってぽかぽかして。
気持ちいー!
ずうっとこの陽射し、浴びてたい!」
牧野が幸せそうだと、こっちまで嬉しくなる。
天気がいいだけだっていうのに。
今日という何でもない日がスペシャルな日に思えてくるから不思議だ。
「このままピクニックに行くとか、言い出しそうだな、牧野は。」
「え? 言ってもいいの、そんな我儘?」
我儘だなんて。
そんな細やかな願いなら、俺にも叶えてやれる。
俺が牧野にしてやれる事なんて、いつも本当に他愛もない事ばかりだ。
常に遠慮して多くを望まない、この慎ましやかな女の子の、数少ない願いを見つけ出して、自分の手で成就させてやれるのは、俺の大いなる喜び。
今日も一つ、それを味わえるチャンスを得た。
早速心当たりがある店に電話して、テイクアウト出来るランチを2人前注文する。
午後の授業が残っているのにキャンパスを抜け出すという事も、牧野の瞳をキラキラと輝かせる一因らしい。
飛び切り楽しそうにしている牧野を助手席に乗せて、向かったのは大きな公園だった。
「え? 公園なのに入るのお金かかるの?」
一人たった200円の入園料に目を丸くして驚いてる牧野を面白おかしく思いながら、俺は券売機で2人分の入園券を買う。
「その入園料のお陰で、手入れの行き届いた、ゆったりと時間が過ごせる場所になってるんだろ。
ほら、行くぞ!」
入場ゲートを通り抜け、奥へ奥へと進んで行くと、「うわあ・・・」という牧野の感嘆が耳に届く。
平日の昼間ということもあってか、人出も然程ない園内は、錦繍の如く様々な種類の紅葉に彩られ、何とも美しい風景を織りなしていた。
「東京の、それもこんな都心で、こんな紅葉見られるんだね!」
「ここは春の桜も見事なんだぜ。
その桜の紅葉も加わってこの景色も生まれてるんだけどな。」
ここの木々は英徳のキャンパス内よりもゆっくりと紅葉しているらしい。
桜も楓も、まだ紅い葉を枝で揺らしていた。
少し歩いて、大きな欅が佇んでいるのが良く見える芝生に、ブランケットを敷いて2人並んで腰を下ろす。
牧野は柔らかく目を瞑り、陽射しや爽やかな空気を身体いっぱいに取り込むかのように深呼吸した。
「はー、気持ちいー! サイコー!」
「ふふふっ、牧野、そればっかりだな。」
「へ? そうだっけ?」
夢から醒めたかのように瞼が開き、俺を見詰めて瞬きしてる、その黒い耀きが真っ直ぐに俺の中に飛び込んでくる。
小一時間前に自分が言った台詞を忘れたらしい牧野。
今は頓狂な表情を見せている顔が幸せそうに綻ぶ、簡単な、そしてとても単純でもある魔法の言葉を呟くのが楽しくて仕方ない俺。
「腹減ったろ?
ランチにしようぜ。」
「うんっ!」
俺が運んできた紙袋の中からは、牧野の手によって次から次へと料理が飛び出してくる。
タコとパプリカのマリネ、きのこのソテーが載っているグリーンサラダ、海老とオリーブのトマトペンネ、生ハムとチーズのバゲットサンド、そして一際しっかりと包装されていたのは、熱々のモッツアレラがとろけるカルツォーネだった。
ブランケットの上には所狭しと料理が並べられ、牧野が極上の笑顔を浮かべる。
「いっただっきまーす!」と宣言して、早速カルツォーネに齧り付く牧野。
俺はランチを食べることなんてそっちのけで、牧野の幸せそうな笑顔を切り取っては胸に仕舞い、そして自分もどんどん幸せになっていった。
「美味しかったねー、どのお料理も。
特に外で温かいものが頂けるのって美味しく感じちゃう!
美作さん、今日もご馳走様でした!」
ぺこりと頭を下げた牧野に、「どういたしまして。」と笑いながら返して。
一拍置いて、そっとそっと小さく溜息を吐いた。
だって、今日の幸せな時間はもうすぐ終わりを迎えるのだろうから。
ブランケットに手を突いて、少し頼りなくなり始めた午後の日差しを堪能している牧野がぽつりぽつりと話し出した。
「ねえ、昔さ、夜の公園のブランコ、2人で乗った事あったよね。憶えてる?」
忘れる訳がない。
あれはお前への気持ちに気付いた夜の事だ。
忘れられる筈、ないだろう?
「ああ、あったな、そんな事。」
「あの時さ、あたし、F3を太陽に例えるなら、美作さんは月みたいって言ったんだよね。」
そう、俺は、いつも太陽に隠れる三日月。
あいつらみたいに明るく光り輝けない、欠けた月。
それが悔しかったり、寂しかったこともあるけれど。
俺は俺にしかなれないし、これが俺の役割なんだと今では思ってる。
「でもね、思うの。
F3にとっては美作さんは癒しの月みたいな存在だけど・・・
あたしにとっては美作さんも太陽だなって。」
違うだろう?
牧野が俺の太陽なんだ。
牧野からの光を受けた時だけ、俺は満月になれるんだから。
例え束の間であっても、俺の心が満たされるのは、牧野が俺と向き合ってくれている時だけだ。
俺がそんな事を思っているのを牧野は知らない。
「・・・俺も太陽ってどういう意味?」
「んーーー? 何か、こう、上手く言えないけど・・・
今日の陽射しみたいな?
いっつも温かくて、柔らかくって・・・
居心地のいい空気で、あたしを包んでくれちゃうでしょ。
その優しい温もりって、月じゃなくて小春日和の太陽みたいだなって。」
そう言われて、何度かその言葉を頭の中で反芻した。
やがて身体の奥からじわじわと歓びと少しの恥ずかしさが湧いてきて。
俺は言葉を失ったまま、牧野を見詰める。
牧野の頬が紅く染まり、大きな黒目が水の膜を湛えているかのように煌めいていた。
もしかして・・・
もしかしたら、今手を伸ばせば掴めるんだろうか?
指の間からすり抜けることなく、しっかりと、この手で牧野を掴まえられる?
俺は何かに取り憑かれたかのように、右手を牧野の左手に重ねる。
ぴくりと一瞬跳ねた小さな手は、逃げることなく俺の手の中に収まった。
小さいけれど温かなその手は、掴んでしまえば、元からここにあるのが当然だったかのように、しっくりと俺の掌に添うから、二度と離したくないとさえ思ってしまう。
ああ、どうか、この胸の高鳴りを牧野に聞かれていませんように。
これから紡ぐ言葉が震えませんように。
そして、この願いが聞き入れられますように。
「じゃあ、俺を牧野の唯一の太陽にして。
そして牧野も俺だけを照らす太陽になって欲しい。」
俺の一世一代の壮大な愛の告白に、恥ずかしそうに俯きつつ、こくりと頷いてくれたから。
俺達は優しい陽射しが木々の向こうに隠れてしまうまで、互いの手の温もりを感じながら、そこに座っていた。
俺はやっと掴まえたんだ。
この世でたった1人の掛け替えのない相手。
きっとずっと探してた。
そして心の底から求めてた。
そして独りで胸の内で誓う。
常に牧野にとって、優しい陽射しであらん事を。
__________
ぐはあ!
何だ、この甘いヒトは!
いや、ハロウィンで甘いルイルイを書いたんでね。
あきらのことを無視って訳にいかないかなーと思って、思い付くままに書いてみたんですけど。
久し振りのあきつくは、難しかったです!
2人のお出掛け先は新宿御苑です。
いいですよねー、新宿御苑。
のんびり出来て、色んな景色が楽しめて。
水辺もあるし、大好きな場所のひとつです。
自分で行った時の写真を探したんだけど、違うPCに入ってるみたいで見つからなかった・・・
11月に入ってから、開店休業状態でスミマセン。
もうもう、怒涛の日々で。
っていうか、今も続いてて。
仕事忙しいだけじゃなくて、病人が危うい日々が長く続いてます。
更に看病を手伝ってくれるべき相方が、病人その2に大へんしーん!
なんだよ!めちゃくちゃ辛いじゃん!
という訳で、看病の合間に無理矢理お話を書いて現実逃避してみました。
そうこうしているうちに、総二郎のお誕生日が近付いてきてます。
わー、どーしよー!
何しようー?
どうかBirthday SSが書けるように、皆様からも念を送って下さいませ(苦笑)



ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
