何でお前はそーなんだよ?
俺はお前の事ばっか考えてるっつーのに。
お前はそうじゃないってのがマジムカつく。
俺にとって一番大事なのはお前なのに、お前が一番大事なのは仕事だろ?
あー、つまんねー。
ホント、つまんねえよ!
このところの俺達はすれ違いが多い。
1月は俺の仕事が忙しくて。
2月は牧野の仕事が忙しい時期。
碌に会えないし、会えたとしても牧野は疲れ果てていて、いつも眠そうだ。
というのも、牧野が勤めている幼稚園は毎年2月の末がお遊戯会。
この一年の集大成として、指導にも熱が入るし、準備もすごく大変らしい。
やっと休みを合わせて会えた土曜日。
今も部屋の炬燵の天板の上に頬をぺったりくっつけて、目を閉じながら喋ってる。
「それでさあ、どうしても3人分の衣装が足りなくて。
お母様方に今あるものとそっくりなのを縫ってもらわないといけなくなっちゃったんだけど、皆やりたくないじゃない?
誰が作るかで揉めちゃって・・・
そんなのぱぱっと決めちゃいたんだけど、そういう訳にもいかなくて。
結局籤引きでって事になったんだけどね。
その籤で作ることに決まっちゃった3人のお母様のうちの1人が、ほら、所謂アレよ、アレ、モンペ。」
「モンペ?」
何だ、そりゃ?
モンペってあれだろ?
昔女の人が着てたやつ。
お前に着せて、どっかの畑に立たせたら、ミョーに似合っちまいそうな作業着。
「うん、モンスターペアレントのことね。
兎に角いろんな場面で問題起こしては、園に文句ねじ込んでくる方でさー。
そんな園のブラックリスト入りしてるお母様に当たっちゃったもんだから、あたし、顔真っ青よ・・・
籤引きの後、30分もネチネチ文句言われちゃったぁ・・・」
「お前、子供の相手じゃなくて、大人の相手で疲れてんだ?」
「子供達は可愛いもん。
逆にパワーもらえるのよ、一緒にいると。
でも、お母様方は色々あるのよね・・・」
ダメだ、これ。
瞼を上げる気が全くないらしい。
折角一緒にいるっつーのに、俺の顔すら見てくれねえ。
束の間の逢瀬、俺はお前に飢えてるのに。
お前、俺の事、愚痴吐出し用のゴミ箱扱いだな・・・
疲れているなら労わってやりたい、休ませてやりたいと思う一方で、これだけでは詰まらないなという気持ちを捨て去ることも出来ない。
どうにかこちらを向かせたくて、違う話題を振ってみた。
「なあ、2月って言ったら・・・」
「あー、節分だよね、2月と言えば!」
むくっと起き上って、両目をぱっちり見開いた牧野が明るい表情を俺に向ける。
いや、2月って言ったらバレンタインだろ?
恋人達のイベント、バレンタイン!
お前が俺に改めて熱烈な愛の言葉を告げてもいい日。
手作りのチョコかなんかを、頬を染めながら俺に手渡す日だっつーの!
「子供達さあ、この間園に鬼来たのがホントに怖かったみたいで。
皆、まだ鬼の話ばっかりしてるんだよー。
思い出すだけで泣いてる子までいてさ。
ねえ、可愛いと思わないー?
鬼の中の人、いつもいっぱい遊んでくれてる及川先生なのにねえ。
必死でお豆投げ付けて撃退しようとしてるのも健気で微笑ましかったのよ。
その後のお豆の掃除は大変だったけど!!」
「ああ、そーなんだ・・・」
「西門さんは?
お邸で豆撒きした?
流石に鬼は来ないよね?」
何で茶道宗家に鬼の扮装した奴が現れる必要があるんだよ?
あり得ねえっつーの。
「節分に合わせた設えにはするけど・・・
鬼は来ないな、茶会には。」
「へえー、豆撒きとお茶なんか関係ないかと思ってたけど、ちゃんとそれに合わせた設えとか決まってるんだねー。」
「まあな・・・」
茶道がどれだけ季節感を大事にしているかを、今ここでこいつに説いたとて、「へえー、ほー、ふーん」で終わってしまうのだろう。
一体どうやってこいつを西門に馴染ませたらいいのやら・・・
頭が痛い。
「ああ、そう言えば、干菓子は豆だったぜ、節分の時は。」
「お豆、あたしも食べた!
自分の歳プラス1個食べるんだよね。
何でだろうねー? 不思議だねー。」
「・・・歳の数だけ豆食って、同じ数だけ福を身体に取り入れるって意味で歳の数。
一つ多く食べるのは来年も健康であるようにって願ってだ。」
「なるほど! 流石西門さん、何でも知ってるねー。
スゴイ、スゴイ。
来年の節分の時は子供達に教えてあげようっと!」
ああ、バレンタインの事を話して、いいムードになる予定が・・・
何で豆撒きの話になった?
「ねえ、2月って言えばさ・・・」
おおっ? やっと気付いたか、この鈍感女でも!
「2月22日ってニャンニャンニャンで猫の日なんだよ、知ってたー?」
・・・ちょっとでも期待した俺が馬鹿だった。
「・・・知らねえ。」
「ね、ね、知らなかったよね!
あたしも幼稚園に勤めるようになって知ったんだけどさ。
その日は猫に因んだ工作させてあげようと思って。
皆お遊戯会の練習、毎日頑張ってるでしょ。
本番近くて、お稽古も大変な時期だから。
ちょびっとだけ息抜きさせてあげたいんだあ。
やっぱり猫耳かな?
ね、どれがいいと思う?」
ずりずりと俺の座っている方へと移動してきて、俺の身体にぴたっとくっついた。
携帯の画面を俺に見せながら、工作の写真をスワイプさせてる。
正直どれでもいい。
子供の工作なんて、マジどうでもいい。
俺が興味あるのはお前の事ばっかりで。
2人でいられる時は、お前の事ばっか見ちまって。
今だって肘の辺りに時々ふにゃんって当たるお前の柔らかさに気もそぞろなんだ。
工作の事なんか考えられる訳ねえ!
牧野に生返事を返しながら、右腕をそろりそろりと牧野の背後に回してく。
腰を抱き寄せて、更に俺に密着させて。
今度は腕をウエストに巻き付ける。
指先でこっそり服を1枚、2枚・・・とたくし上げ・・・
この薄っぺらいキャミソールの下は牧野の柔肌!
「ちょ、ちょっと、擽ったいってば。」
俺の手を払い除けようとするけど、そんな事させるもんか。
俺の事ちっとも見てくれないお前を、俺の虜にするにはこうするしかないだろ?
牧野の手をいなしながら最後の一枚の下に手を潜り込ませる。
途端に掌に吸い付いてくるような温かくて柔らかな感覚がもたらされ、そこから俺の中に生気が流れ込んでくるような気すらする。
「こーのエロ門っ! 止めなさいってば! はーなーせー!!!」
「んーーー?」
どんどん手を奥へ奥へと進めながら首筋に唇を寄せていった。
このままここでって、ちょっと動きにくいっちゃ動きにくいけど。
偶にはベッド以外ってのも燃えるよな?
「ヤダっ! バカっ! こんな明るいとこで何すんのよっ?」
バカはお前だ!
明るい所でお前が俺の手で蕩けてくのを見るのがサイコーにオイシイんだっつーの。
いつまで経っても分かんねえ女だな。
そろそろ観念して、俺に頂かれろ。
「ん? そりゃイイ事するに決まってるじゃん。」
俺を無下にした牧野センセイに、どうするとこういう事になるか、たっぷり一晩かけて逆に教えてやるさ。
ここでは俺がお前のセンセイ、だろ?
2月14日、バレンタイン当日。
平日だからと、デートの約束さえしてくれなかった。
いや、あいつ、怒ってんだよな、この前の炬燵でのオイタの事。
好き合ってる男女が狭い空間に2人きりでいるんなら、至って自然なことだって!
って言っても、あいつは納得しないんだろうなあ・・・
普段なら、ご機嫌取りにどこかメシの美味い店に連れて行くところだけれど。
仕事が忙しいこの時期、連日残業続きのあいつ。
外を連れ回すのも負担になるだろう・・・と、合鍵を使って無断で入った部屋に、ホテルのケータリングサービスの料理を運び込ませた。
炬燵に似合わない料理の数々がびっしりと並べられる。
幼稚園の延長保育は17時まで。
普段なら18時くらいには園を出てくる筈だけど、残業が長引いているのか19時になっても、20時になっても、あいつは帰ってこない。
何かあったんじゃないか?とヤキモキして、迎えに行こうかと思った22時。
やっと玄関からガチャガチャと鍵を回す音が聞こえて来た。
ドアを開けた途端に、そこに俺がいるのを認めて、目を丸くした。
「・・・何で?」
「お帰り、牧野。」
「た、だいま・・・ ね、どしたの?」
「別に。ただ一緒にメシ食おうと思っただけ。」
「わ、ごめん、こんな遅くなって。
お腹減ってるでしょ。すぐ作るからっ!」
慌てて靴を脱いで、キッチンに突進しそうな牧野に苦笑する。
「いや、いいよ。メシ、もうあるからさ。」
「え・・・?」
まだコートも脱いでいない牧野の背を押して、炬燵の前へと進ませた。
「何これ? 凄いんだけど・・・」
「んー? 毎日頑張ってるつくしちゃんにご褒美的な?」
「えーーー・・・ どして?」
片手で鼻と口元を押さえてる。
顔を覗き込めば、瞳を潤ませて瞬いているから、そんな牧野の蟀谷にちゅっと軽い口付けを落とした。
「俺はお前の一番の味方でいたい。
お前が忙しくって疲れてる時にメシ用意してやりたいって思ったっていいだろ?」
「もおっ! 」
ばふっと俺にしがみ付いてきた。
両手でぎゅうぎゅう俺を締め付けてる。
「大好きなんだから!」
分かってるって。
分かってる筈なのに、時々見失って、自分の想いを押し付けるようなことしちまってゴメン。
ホントはいつだって2人同じ想いでいないとな。
メシの後、牧野がキッチンでガチャガチャゴソゴソやって持って来たのは、1杯のホットチョコレートだった。
ちょっと唇を尖らせながら、
「だって、今日会えると思ってなくて、チョコレートも用意してなかったからさ・・・」
なんて言い訳してるのが、妙に可愛い。
牧野好みの甘いミルクチョコレート味。
普段こいつが食べてる板チョコで作ってくれたんだろう。
「美味いぜ、つくしちゃん。
味見するか?」
「うん、じゃあ一口貰おうかな。」
マグカップに手を伸ばしてきた牧野の後頭部をぐいっと引き寄せる。
そのまま無防備な唇を盗んだ。
普段以上に熱く甘い口付け。
一頻り堪能してから、唇を離した。
「な、美味いだろ?」
「分かんないよ・・・」
俺の胸に顔を埋めてる牧野をしっかり抱き締める。
バレンタインだろうと、普通の日だろうと。
こいつが俺の腕の中にいてくれるだけで俺は幸せだ。
どうかいつまでもこうして2人で・・・
柔らかな温もりを胸に、永遠を夢見る。
「Happy Valentine's day、牧野。」
__________
幼稚園の先生つくし。
前にどこかで書いた筈・・・と思って探したら、コレとコレでした。
今回その2人よりはバカップル設定になっております。
「俺と仕事、どっちが大事なんだよ?」という台詞を飲み込んでる総二郎。
甘い2人になれたかな?
2月14日、バレンタインデーですね!
皆様、チョコ菓子、作ってますか?
管理人は昨日具合悪くてフラフラの中、必要に迫られチョコクッキー焼きました・・・
何でこんな時にこんな事・・・とか思いつつ焼いたクッキーは果たして美味しいのか?(苦笑)
先週から胃腸風邪に捕まってまして。
これが悪いヤツでずーっと居座ってるんですよ!
なかなか去ってくれない・・・
辛い・・・
このSSも0時UP目指して書いてたんですが、気付いたら寝落ちてて朝でした。
コメ返も滞っていて申し訳ないです。
少々お時間頂ければと思いますm(__)m

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
俺はお前の事ばっか考えてるっつーのに。
お前はそうじゃないってのがマジムカつく。
俺にとって一番大事なのはお前なのに、お前が一番大事なのは仕事だろ?
あー、つまんねー。
ホント、つまんねえよ!
このところの俺達はすれ違いが多い。
1月は俺の仕事が忙しくて。
2月は牧野の仕事が忙しい時期。
碌に会えないし、会えたとしても牧野は疲れ果てていて、いつも眠そうだ。
というのも、牧野が勤めている幼稚園は毎年2月の末がお遊戯会。
この一年の集大成として、指導にも熱が入るし、準備もすごく大変らしい。
やっと休みを合わせて会えた土曜日。
今も部屋の炬燵の天板の上に頬をぺったりくっつけて、目を閉じながら喋ってる。
「それでさあ、どうしても3人分の衣装が足りなくて。
お母様方に今あるものとそっくりなのを縫ってもらわないといけなくなっちゃったんだけど、皆やりたくないじゃない?
誰が作るかで揉めちゃって・・・
そんなのぱぱっと決めちゃいたんだけど、そういう訳にもいかなくて。
結局籤引きでって事になったんだけどね。
その籤で作ることに決まっちゃった3人のお母様のうちの1人が、ほら、所謂アレよ、アレ、モンペ。」
「モンペ?」
何だ、そりゃ?
モンペってあれだろ?
昔女の人が着てたやつ。
お前に着せて、どっかの畑に立たせたら、ミョーに似合っちまいそうな作業着。
「うん、モンスターペアレントのことね。
兎に角いろんな場面で問題起こしては、園に文句ねじ込んでくる方でさー。
そんな園のブラックリスト入りしてるお母様に当たっちゃったもんだから、あたし、顔真っ青よ・・・
籤引きの後、30分もネチネチ文句言われちゃったぁ・・・」
「お前、子供の相手じゃなくて、大人の相手で疲れてんだ?」
「子供達は可愛いもん。
逆にパワーもらえるのよ、一緒にいると。
でも、お母様方は色々あるのよね・・・」
ダメだ、これ。
瞼を上げる気が全くないらしい。
折角一緒にいるっつーのに、俺の顔すら見てくれねえ。
束の間の逢瀬、俺はお前に飢えてるのに。
お前、俺の事、愚痴吐出し用のゴミ箱扱いだな・・・
疲れているなら労わってやりたい、休ませてやりたいと思う一方で、これだけでは詰まらないなという気持ちを捨て去ることも出来ない。
どうにかこちらを向かせたくて、違う話題を振ってみた。
「なあ、2月って言ったら・・・」
「あー、節分だよね、2月と言えば!」
むくっと起き上って、両目をぱっちり見開いた牧野が明るい表情を俺に向ける。
いや、2月って言ったらバレンタインだろ?
恋人達のイベント、バレンタイン!
お前が俺に改めて熱烈な愛の言葉を告げてもいい日。
手作りのチョコかなんかを、頬を染めながら俺に手渡す日だっつーの!
「子供達さあ、この間園に鬼来たのがホントに怖かったみたいで。
皆、まだ鬼の話ばっかりしてるんだよー。
思い出すだけで泣いてる子までいてさ。
ねえ、可愛いと思わないー?
鬼の中の人、いつもいっぱい遊んでくれてる及川先生なのにねえ。
必死でお豆投げ付けて撃退しようとしてるのも健気で微笑ましかったのよ。
その後のお豆の掃除は大変だったけど!!」
「ああ、そーなんだ・・・」
「西門さんは?
お邸で豆撒きした?
流石に鬼は来ないよね?」
何で茶道宗家に鬼の扮装した奴が現れる必要があるんだよ?
あり得ねえっつーの。
「節分に合わせた設えにはするけど・・・
鬼は来ないな、茶会には。」
「へえー、豆撒きとお茶なんか関係ないかと思ってたけど、ちゃんとそれに合わせた設えとか決まってるんだねー。」
「まあな・・・」
茶道がどれだけ季節感を大事にしているかを、今ここでこいつに説いたとて、「へえー、ほー、ふーん」で終わってしまうのだろう。
一体どうやってこいつを西門に馴染ませたらいいのやら・・・
頭が痛い。
「ああ、そう言えば、干菓子は豆だったぜ、節分の時は。」
「お豆、あたしも食べた!
自分の歳プラス1個食べるんだよね。
何でだろうねー? 不思議だねー。」
「・・・歳の数だけ豆食って、同じ数だけ福を身体に取り入れるって意味で歳の数。
一つ多く食べるのは来年も健康であるようにって願ってだ。」
「なるほど! 流石西門さん、何でも知ってるねー。
スゴイ、スゴイ。
来年の節分の時は子供達に教えてあげようっと!」
ああ、バレンタインの事を話して、いいムードになる予定が・・・
何で豆撒きの話になった?
「ねえ、2月って言えばさ・・・」
おおっ? やっと気付いたか、この鈍感女でも!
「2月22日ってニャンニャンニャンで猫の日なんだよ、知ってたー?」
・・・ちょっとでも期待した俺が馬鹿だった。
「・・・知らねえ。」
「ね、ね、知らなかったよね!
あたしも幼稚園に勤めるようになって知ったんだけどさ。
その日は猫に因んだ工作させてあげようと思って。
皆お遊戯会の練習、毎日頑張ってるでしょ。
本番近くて、お稽古も大変な時期だから。
ちょびっとだけ息抜きさせてあげたいんだあ。
やっぱり猫耳かな?
ね、どれがいいと思う?」
ずりずりと俺の座っている方へと移動してきて、俺の身体にぴたっとくっついた。
携帯の画面を俺に見せながら、工作の写真をスワイプさせてる。
正直どれでもいい。
子供の工作なんて、マジどうでもいい。
俺が興味あるのはお前の事ばっかりで。
2人でいられる時は、お前の事ばっか見ちまって。
今だって肘の辺りに時々ふにゃんって当たるお前の柔らかさに気もそぞろなんだ。
工作の事なんか考えられる訳ねえ!
牧野に生返事を返しながら、右腕をそろりそろりと牧野の背後に回してく。
腰を抱き寄せて、更に俺に密着させて。
今度は腕をウエストに巻き付ける。
指先でこっそり服を1枚、2枚・・・とたくし上げ・・・
この薄っぺらいキャミソールの下は牧野の柔肌!
「ちょ、ちょっと、擽ったいってば。」
俺の手を払い除けようとするけど、そんな事させるもんか。
俺の事ちっとも見てくれないお前を、俺の虜にするにはこうするしかないだろ?
牧野の手をいなしながら最後の一枚の下に手を潜り込ませる。
途端に掌に吸い付いてくるような温かくて柔らかな感覚がもたらされ、そこから俺の中に生気が流れ込んでくるような気すらする。
「こーのエロ門っ! 止めなさいってば! はーなーせー!!!」
「んーーー?」
どんどん手を奥へ奥へと進めながら首筋に唇を寄せていった。
このままここでって、ちょっと動きにくいっちゃ動きにくいけど。
偶にはベッド以外ってのも燃えるよな?
「ヤダっ! バカっ! こんな明るいとこで何すんのよっ?」
バカはお前だ!
明るい所でお前が俺の手で蕩けてくのを見るのがサイコーにオイシイんだっつーの。
いつまで経っても分かんねえ女だな。
そろそろ観念して、俺に頂かれろ。
「ん? そりゃイイ事するに決まってるじゃん。」
俺を無下にした牧野センセイに、どうするとこういう事になるか、たっぷり一晩かけて逆に教えてやるさ。
ここでは俺がお前のセンセイ、だろ?
2月14日、バレンタイン当日。
平日だからと、デートの約束さえしてくれなかった。
いや、あいつ、怒ってんだよな、この前の炬燵でのオイタの事。
好き合ってる男女が狭い空間に2人きりでいるんなら、至って自然なことだって!
って言っても、あいつは納得しないんだろうなあ・・・
普段なら、ご機嫌取りにどこかメシの美味い店に連れて行くところだけれど。
仕事が忙しいこの時期、連日残業続きのあいつ。
外を連れ回すのも負担になるだろう・・・と、合鍵を使って無断で入った部屋に、ホテルのケータリングサービスの料理を運び込ませた。
炬燵に似合わない料理の数々がびっしりと並べられる。
幼稚園の延長保育は17時まで。
普段なら18時くらいには園を出てくる筈だけど、残業が長引いているのか19時になっても、20時になっても、あいつは帰ってこない。
何かあったんじゃないか?とヤキモキして、迎えに行こうかと思った22時。
やっと玄関からガチャガチャと鍵を回す音が聞こえて来た。
ドアを開けた途端に、そこに俺がいるのを認めて、目を丸くした。
「・・・何で?」
「お帰り、牧野。」
「た、だいま・・・ ね、どしたの?」
「別に。ただ一緒にメシ食おうと思っただけ。」
「わ、ごめん、こんな遅くなって。
お腹減ってるでしょ。すぐ作るからっ!」
慌てて靴を脱いで、キッチンに突進しそうな牧野に苦笑する。
「いや、いいよ。メシ、もうあるからさ。」
「え・・・?」
まだコートも脱いでいない牧野の背を押して、炬燵の前へと進ませた。
「何これ? 凄いんだけど・・・」
「んー? 毎日頑張ってるつくしちゃんにご褒美的な?」
「えーーー・・・ どして?」
片手で鼻と口元を押さえてる。
顔を覗き込めば、瞳を潤ませて瞬いているから、そんな牧野の蟀谷にちゅっと軽い口付けを落とした。
「俺はお前の一番の味方でいたい。
お前が忙しくって疲れてる時にメシ用意してやりたいって思ったっていいだろ?」
「もおっ! 」
ばふっと俺にしがみ付いてきた。
両手でぎゅうぎゅう俺を締め付けてる。
「大好きなんだから!」
分かってるって。
分かってる筈なのに、時々見失って、自分の想いを押し付けるようなことしちまってゴメン。
ホントはいつだって2人同じ想いでいないとな。
メシの後、牧野がキッチンでガチャガチャゴソゴソやって持って来たのは、1杯のホットチョコレートだった。
ちょっと唇を尖らせながら、
「だって、今日会えると思ってなくて、チョコレートも用意してなかったからさ・・・」
なんて言い訳してるのが、妙に可愛い。
牧野好みの甘いミルクチョコレート味。
普段こいつが食べてる板チョコで作ってくれたんだろう。
「美味いぜ、つくしちゃん。
味見するか?」
「うん、じゃあ一口貰おうかな。」
マグカップに手を伸ばしてきた牧野の後頭部をぐいっと引き寄せる。
そのまま無防備な唇を盗んだ。
普段以上に熱く甘い口付け。
一頻り堪能してから、唇を離した。
「な、美味いだろ?」
「分かんないよ・・・」
俺の胸に顔を埋めてる牧野をしっかり抱き締める。
バレンタインだろうと、普通の日だろうと。
こいつが俺の腕の中にいてくれるだけで俺は幸せだ。
どうかいつまでもこうして2人で・・・
柔らかな温もりを胸に、永遠を夢見る。
「Happy Valentine's day、牧野。」
__________
幼稚園の先生つくし。
前にどこかで書いた筈・・・と思って探したら、コレとコレでした。
今回その2人よりはバカップル設定になっております。
「俺と仕事、どっちが大事なんだよ?」という台詞を飲み込んでる総二郎。
甘い2人になれたかな?
2月14日、バレンタインデーですね!
皆様、チョコ菓子、作ってますか?
管理人は昨日具合悪くてフラフラの中、必要に迫られチョコクッキー焼きました・・・
何でこんな時にこんな事・・・とか思いつつ焼いたクッキーは果たして美味しいのか?(苦笑)
先週から胃腸風邪に捕まってまして。
これが悪いヤツでずーっと居座ってるんですよ!
なかなか去ってくれない・・・
辛い・・・
このSSも0時UP目指して書いてたんですが、気付いたら寝落ちてて朝でした。
コメ返も滞っていて申し訳ないです。
少々お時間頂ければと思いますm(__)m



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