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hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
https://potofu.me/hortensia

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犬も鎹・・・になるかもしれない 前編

Blog開設4周年のプチイベント開催中!
(昨日はお休みを頂いちゃいました、スミマセン。
連続更新で息切れ気味なのであります!)
第十夜は、満を持してビー玉の瞳の王子様が登場です!


___________



牧野ってば、いつも「貧乏暇無し」とか言って、講義にバイトに大忙しなのに。
更にボランティアまで始めちゃった。
引き取り手のない犬の里親探しのNPOだって。
何事にも一所懸命で、自分の事より人の事を優先させちゃうのが牧野だって、よく知ってるけど。
そのうちオーバーワークでパンクしちゃうんじゃないかって、心配だよ、俺。


最初は週に1日だけの手伝い・・・だったボランティアは、いつの間に週に2回へと増えており。
それも土日に集中してる。
平日は2人で一緒にいる。
いるにはいるけど、講義の合間とか、牧野のバイトの後とかで、ゆっくり会えたりしないのに。
土日も「類、ごめーん! 譲渡会とその準備があるんだぁ・・・」とか、「里親さん希望のご家族と面談があってね。あたしもお手伝いで同席することになっちゃって・・・」とか、上目遣いですまなさそうに言ってくるから、「そう、頑張って。」としか言えなくなる。
それでも時々「頑張り過ぎちゃうあんたが心配だよ。」って付け足してみるけど、「ダイジョーブ!あたしが雑草みたいに物凄い生命力なの、類が一番よく知ってるじゃない!」と跳ね返されるんだよね。
じっとしていられないのは牧野の性分なんだろうけど、俺はもうちょっとゆったりのんびりリラックスした牧野を見ていたい。
ほら、高等部の非常階段で2人で過ごしてたあの頃みたく。


世間はゴールデンウィーク。
土日月と3日休んで、火曜と水曜は平日。
その後日曜日迄の4連休。
間の平日2日間も本来なら大学の講義がある筈だけど、殆どのクラスが休講らしい。
学生は大喜び、教授達も束の間の休息を得て、羽を伸ばしているんだろう。
でもお蔭で、講義の無くなった牧野と過ごせるから、俺も嬉しい。
何をしようか頭を巡らせてみたけれど、牧野が買い物があるというので、それに付き合う事になった。
行った先は『ヒャッキン』だ。
牧野がこの店を愛用してるのは知ってる。
売られている商品の大部分が100円という信じられない店。
そして物凄い品揃え。
食料品から、文房具、キッチン用品、手芸用品、日用雑貨。
色んなものが詰まってる。
余りに色々あり過ぎて、俺はその中から欲しい物を見付けることすら出来ないけど・・・
牧野は店の中を、あっちこっち歩き回って、必要な物をかごに入れていた。
その中には、何に使う物か判然としない物もあって、俺は興味津々だ。

次に連れて行かれたのは牧野のお気に入りのスーパー。
そこで飲み物とサンドイッチを買って、俺達は公園のベンチでランチを摂ることになった。

「あそこのスーパーの中のパン屋さん。
この辺りで一番美味しいの!
だから類にも食べて欲しいなって。
あたしのオススメは、この卵とチキンとレタスのだよ!」
「ん、ありがと。」

一口食べてみれば、外側のパンはふわっと柔らかくしっとりしている。
そこに塩気が効いたサラダチキンと、マヨネーズで和えられた卵、シャキシャキとした歯ごたえのレタスが挟まれていて、そのサンドイッチは本当に美味しかった。
「美味しい? 美味しいでしょ? ね、ね、ね?」と聞いてくる牧野が可愛くて、思わずにっこり笑って頷いてしまう。
ランチは牧野のオススメを食べたから、食後のデザートは俺のオススメを・・・と、馴染のパティスリーへ行くことにした。
ちょっと離れた場所にあるけど、牧野が「お天気もいいし歩きたい!」って言うから、2人で手を繋いで散歩する。

牧野ってば、いつまで経っても慣れないんだよね。
俺達付き合ってるんだから、手位握ってもいいと思うんだけど・・・

手を繋いだ途端に牧野が慌てた様子で喋り始める。
動揺してるのを悟られまいとしてるんだろうけど、逆効果。
俺には手に取るように牧野の気持ちの変化が分かってしまう。

「あ、あのさ、ボランティアに行ってるNPOでね、すっごく可愛い白い赤ちゃんワンコがいるんだよ!
グレートピレニーズだから、毛がもっふもふで、まるでぬいぐるみみたいなの!
この間行った日に、お風呂に入れてあげたんだけど、洗ってる途中で身体をぷるぷるぷるってしちゃったから、そこら中にシャンプーの泡が飛び散って、あたしも泡だらけになっちゃたんだー。
だけど、ドライヤーしてあげたら、ホント大きな毛玉みたいにほわっほわになってね、その後こてって寝ちゃったの!
もー、可愛くて、可愛くて、いっぱい写真撮っちゃった!
類も見る?」

牧野がバッグから携帯を取り出す為に、ひと時手が離れる。
はしゃいだ様子で、携帯の画面を俺に見せてくれた。
そこには赤ちゃんというにはあきらかに大きな白い犬が写ってる。
もう、中型犬の成犬サイズ。
犬の子というより、シロクマの子みたいな太い四肢。
犬なのに、まるで笑ってるみたいに見える表情が頓狂で。
大きな口がぱかっと開いて、今にもワン!という鳴き声が聞こえてきそうだ。
牧野がその白い犬を腕に抱いて破顔してる写真もある。

この写真は俺も欲しい。
悔しいけれど、最高の笑顔の牧野だなあ。

何枚かその犬の写真が続き、最後は安心しきって寝こけている巨大なぬいぐるみみたいな犬の寝姿で終わってた。

「可愛いよねえ!
だけど、グレートピレニーズって、将来すっごく大きくなっちゃうでしょ。
そのせいか、引き取り手がなかなか見付からなくて・・・
譲渡会でも大人気なんだよ、大人にもお子さんにも。
だけど、大きくなると体重が50kgとかになっちゃうし・・・
成犬は力が強いからお散歩も大変になるでしょ?
身体が大きいコはご飯もいっぱい食べるし、飼うのに広い場所も必要だから。
その事を話すと、皆諦めちゃうんだよねえ・・・」

溜息を吐きながら携帯をバッグに戻した牧野の手をまた握る。
勿論、恋人繋ぎで。
だって俺達、恋人同士だから。
ぎこちなく重なる指の感触に胸が躍る。
そして至極簡単な解決方法を口にした。

「ウチで飼えばいいんじゃない、その犬。」
「えぇっ?」

牧野が目を真ん丸く見開いて、ついでに口もぽかんと開けつつ俺を見上げてる。
手を繋いでいることすら忘れているんだろう牧野の驚き顔に、ついくすりと笑ってしまった。

「ウチなら広い庭もあるし。
散歩するのに人手もある。
餌代だって、流石に俺よりもかからないでしょ。
それに牧野だって手伝ってくれるよね、育てるの。」
「・・・いいの?」
「いいんじゃない?」
「だって、だって、類のご両親が何て仰るか・・・
お邸の中には犬が嫌いな方だっていらっしゃるんじゃない?
犬アレルギーの人だっているかもしれない。
それなのに、いきなり犬を飼うだなんて、やっぱりダメだよ!」
「じゃ、デザート食べたらウチに来て。
一緒に聞いてみよ。」
「えーーー、ありがと、類・・・」
「あんたのありがとうは聞き飽きたって。」
「うん、それでもやっぱりありがと・・・
そうやって考えてくれるだけで嬉しい。」

そう言ってはにかむ牧野はとても可愛らしくって。
俺は繋いでいる手をきゅっと握る。

牧野の為なら、なんだってしてあげたい。
牧野の笑顔を見れるなら、それが俺の喜びになる。
本当に牧野って、俺の全てを握ってるんだ。


__________



やっぱり、総二郎、あきら・・・と書いて、類無しには終われないよね?と、頑張って書いてます!
こちらは、大変長らくお待たせしていたのですが、コメント2000件目を送って下さった方からのリクエストです。
ペットもの・・・とのご希望でしたので、ピレネー犬にしてみました。
大好きな犬種です。
ワンコは大きいコが好きです!

えーっと、すぐに続きを書きたいところなのですが、GWだというのに管理人ちょーっと体調不良でして。
書き上がり次第続編をUPするつもりです。
お待たせしてしまったらごめんなさいねー。
そして、この類のお話書き終わったら、溜め込んでるコメントへのお返事をお返ししたいな!と思ってます。
少々お時間下さいませー。


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犬も鎹・・・になるかもしれない 中編

Blog開設4周年のプチイベント開催中!
(間が空きまして、スミマセン)
第十一夜は、ワンコを愛でる王子です。


___________



NPO法人から貰い受けて来たグレートピレニーズはオスだった。
とあるブリーダーから仔犬を買った飼い主が、急に海外赴任が決まってしまい、代わりの飼い手が見付からずに、牧野が手伝うNPOに預けたという経緯があった。
NPOにいる間に、随分大きくなったらしい。
花沢の家に連れて来た時には、赤ちゃんっぽさは抜けていて、物凄く元気で大きな悪戯っ子になっていた。
NPOでは仮の名前を付けてシロと呼んでいたそうだが、俺はフィルと呼ぶ事にした。
フランスでは犬の名前としてとてもポピュラーなのだが、今迄一度も犬を飼ったことが無かった俺は、心の何処かで『いつか犬を飼う事があるならフィルと名付けてみたい。』と思っていたみたいだ。
それにこの子にはぴったりな名前。
Filouの意味は悪戯っ子だから。
フィルの犬小屋は、特注で作らせた。
6畳程度のウッドデッキをぐるりと柵で囲い、その上に屋根を掛けた。
その隣に寝る為の小部屋がある。
牧野に言わせると、これは犬小屋の域を超えているとの事だけど。
将来成犬になったら、50kgを超えるかも知れないグレートピレニーズを飼うんだから、それなりの広さも必要だろう。
流石に庭で放し飼いには出来ないし。
それは、庭に放した時にあっという間にそこら中を掘り返してくれたこの悪戯っ子の興奮した泥だらけの顔を見た時に決めた事だ。
新しい名前を付けたら、混乱するかと思いきや、フィルはあっという間にそれを自分の呼び名だと認識したらしい。
俺や牧野が「フィル!」と呼ぶと、跳ねるようにこちらに駆けてくる。
まあ、牧野曰く、シロ!と呼んでも、おやつ!と声を掛けても、同じ反応だという事だけど。
俺は犬に全く詳しくなかったから、牧野の言うがままに必要なものを買い揃えた。
必要だと言いながらも、「こんなに類にお金使わせちゃうなんて・・・」と小さくなってる牧野が可笑しい。
俺が飼うって決めたんだから、俺が必要な経費を払うのは当たり前だし、それで牧野が負い目を感じる事なんかないのに。

フィルが来てから、牧野といる時間が増えた。
まあ、2人きりではなくて、常に2人と1匹だけど。
心配性の牧野は、フィルの事が気がかりなのと、俺がちゃんと世話出来ているのかが気になって、我が家に顔を出さずにいられないみたい。
夕方の散歩の時間はなるべく一緒にいたい・・・とバイトの時間を調整して、2人でフィルを散歩させている。
天気が良くても悪くても、犬には朝晩の散歩が必要で。
朝に弱い俺の代わりに、ウチの使用人の1人に散歩を任せているのがバレたら、牧野に叱られた。

「類が散歩に連れて行けないなら、あたしが朝も来るから!」
「実際問題無理でしょ。
大学行く前にウチに寄って、散歩させてから出掛けるなんて。
フィルは散歩好きだから、最低30分はかかるよ。
牧野は今より早起きしなくちゃいけなくなるし、そうしたらいつも忙しくしてるあんたが余計に忙しくなる。
牧野はフィルの事よりも、自分を大事にしなきゃいけないと俺は思うけど。」
「だって、だって、フィルの事で中村さんに迷惑掛けちゃうだなんて申し訳ないじゃない!
中村さんだって、ご自分のお仕事あるんだろうし、その為に早起きされたりしてるんじゃないの?」

使用人って言うのは、やってもらいたい事をして貰うために置いてるんだから。
フィルの事だって、俺が頼めば何だってやってくれる訳で。
それを牧野が気に病む必要ないんだけどな・・・

「中村さんは元々実家で犬を飼ってたことがあるんだって。
それでフィルの扱いも俺よりずっとスムーズなんだ。
犬好きみたいで、フィルもよく懐いてるし。
問題ないんじゃない?」
「それでも・・・」

もごもご言ってる牧野を黙らせるには、とっておきの方法がある。
それは俺の腕に抱き締めちゃう事。
途端に緊張して、カチコチに硬まってしまうから、お小言もストップするという寸法。
背中からやんわり抱き締めて、真っ赤に染まった熱い頬に自分の頬を寄せる。

「俺もいつでも家にいられる訳じゃない。
そんな時にフィルの世話をしてくれる人がいないとダメでしょ?
フィルだって、そんな時に突然知らない人が来るより、普段から慣れてる人の方がいい筈だよ。
その為にも、中村さんとコミュニケーション取っておくのは大事なんだ。
分かる?」
「・・・分かる・・・けど。」
「ん、じゃ、この話はこれでお終い。
散歩に行くまでの時間は、俺達がコミュニケーションしよっか?」
「え・・・?」

今度は牧野と向かい合わせになって。
にっこりと笑い掛ければ、俺の言葉の意味を理解できてない牧野が目をぱちくりさせているのが見えてくる。
言葉の意味は行動で教えてあげよう。
牧野の黒髪に手を挿し込んで、柔らかそうな唇にチュッと小さな音をさせてキスを落とす。
一度顔を離してさっきよりいっそう頬を赤らめつつ絶句してる牧野の初々しさに誘われて、また唇を重ねる。
二度目のキスは長く。三度目のキスはより深く。
唇を離して牧野の瞼が小さく震えてからゆっくりと開いて、俺と視線を合わせるのを待っていた。
まるで夢から醒めたみたいな惚けた表情を見せる牧野がとても愛しい。

「こうやってあんたの事が好きって伝えるのもコミュニケーション。
キスを交わすのだってコミュニケーション。
ねえ、俺達、気持ち通じ合ってる?」

額と額をこつりと合わせながらそう聞くと、恥ずかしそうに目を伏せて「ん・・・」と呟くから、俺の胸は幸せで満ちていく。
いつだって、俺は牧野さえいてくれたらそれでいいんだ。



2人と1匹の日々は、晴れの日も雨の日も、夏の日も冬の日も過ぎていき・・・
フィルが我が家にやって来てから1年が経った。
すっかり成長し、牧野が「あたしを背中に乗せて走れるんじゃないかなあ?」と言い出す程にがっしりしたフィルだけど、流石にそんな事はしたくないらしい。
試しに牧野がフィルの背に跨ってみたら、あっという間にお座りして、牧野の重みから逃げてしまった。

「何かに乗りたいなら、今度馬に乗りに行こう。
だから、フィルに乗るのは止めてやって。」
「べ、別に、本気で乗りたかった訳じゃないよ!
フィルが力持ちだから、ちょっと試しただけ!」
「だって、フィル嫌そうにしてる・・・」
「もうしないもん!
ごめんね、フィルっ!」

牧野が謝りながら、フィルの耳の後ろを撫でてやると、あっという間に気持ちよさそうにし始めた。
牧野が牧野なら、フィルもフィルだ。
牧野との日課の夕方の散歩も続いてる。
でももうリードを持つのは必ず俺。
力が格段に強くなったフィルが不意に動いてしまったら、牧野にはそれを止められる力がないから。
牧野は、フィルの為の水筒と水飲み皿とゴミ袋を入れたトートバッグを持つ役。
フィルは散歩が大好きで、毎日俺と牧野の間を、ご機嫌で尻尾をふりふり歩いている。
人懐っこい性格で、公園で出会った子供達に撫でられたりしても、嫌がらずにじっとしていられる。
牧野は「大きい犬だけど、怖くないよ、優しい子だよ!」なんて言って、子供達を呼び寄せてる節があるくらいだ。
今日もいつもの散歩コースを歩いて、最後に近所の公園までやって来た。
広い芝生の上を、道路を歩く時よりも早足で、興奮気味に走ってるフィルと、それを追い掛ける俺。
牧野はケラケラ笑いながら、それを見てる。

「フィールー! ゆっくり歩かないと、類が疲れちゃうよー!」

そんな声がフィルの耳に届く訳ない。
そもそも牧野の言葉も意味が通じてるとも思えないし。
緑の少し伸び始めた芝生をわさわさと踏みしめて、フィルは何かを探すかのように、あっちこっちへと移動している。
毎日の事だから、もう慣れたとはいえ、大型犬の散歩は重労働だ。
自分がこんなに牧野以外の事に注力出来るというのも初めて知ったし・・・
生き物の持つパワーって凄いんだなと思い知らされた。
それでも一日の大半を人間の勝手な都合のせいで犬小屋で過ごしているフィルを、散歩の間だけでも自由に歩かせてやりたいと思うんだ。


__________



諸般の事情により、ちょっと間が空きました。
更にお話の切れ目も悪くてスミマセン(^_^;)
もうすぐこのプチイベントも終わります!

GW終わりましたねえ。
皆様、どこかにお出掛けされたり、リラックスされたりしたのでしょうか?
逆にサービス業はかき入れ時だったりするから、お忙しかった方もいらっしゃるでしょうね。
こちらは殆どいいお天気の日々でしたが、肉食いの友人たちとBBQした日が、物凄く風が強い日で。
焼いている肉が網から飛ばされていくので、泣く泣く諦め、残りは友人宅のフライパンで焼きました。
そして後半は相方が体調崩してダウン・・・
管理人も、少々低空飛行気味・・・と思ったところでの看病となったので、後半は全くゴールデンではなく、どんよりウィークでありました。
毎年結局どんよりウィークなんだよなあ。


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犬も鎹・・・になるかもしれない 後編

Blog開設4周年のプチイベントもこれでお終い!
第十二夜は、王子の決意表明です!


__________



今日もまた2人と1匹で夕方の散歩に来た。
新緑眩しいこの季節、日も長くなったし、気温も温かいし、風を感じながら歩くのは心地いい。
川沿いの遊歩道は、同じように犬の散歩をしている人がちらほら。
フィルのように大きな犬はそうそういないけど。
身体は大きいけれど、気持ちはまだまだ子供なフィルは、小さなトイプードルやチワワさえ友達だと思っていて、ワッフワッフ言いながら近寄ろうとするから、慌ててリードを引いて諌めなきゃならないのがちょっと難点。
遊歩道沿いの公園では、子供達が野球やサッカーをしている姿や、遊具のある場所では滑り台やブランコの辺りから元気な声が聞こえてくる。
子供に撫でられるのが好きなフィルは、そっちに行きたそうな素振りを見せるけど、じーっと目を見つめて、「フィル、こっちだよ。」と言うと、大人しく俺の横を歩き出した。
フィルを自由に歩かせるのは、なるべく人が少ない芝生でと俺は決めている。
こんなに大きな身体の犬だから、ちゃんと躾けているとは言っても、小さな子供や女の人にとっては怖い存在にもなりうるだろうから。
公園の一番奥、遊具も無くただ芝生が広がっているスペースで、いつも通り少しリードを長めに持って、自由に歩かせてやる。
鼻先を芝生に突っ込み、フンフンハアハアと荒い吐息を吐きながら、今日も楽しそうに探検していたフィルが不意にその動きを止めた・・・と思ったら、いきなり物凄い力でリードを引っ張った。
慌ててその力に対抗すべくリードを持つ手に力を込めたが、時既に遅し。
手にしっかり巻き付けていた筈のリードはしゅるりと解け、フィルは一匹でどこかへ向かって急に走り出した。
緑の芝生の上を、白くて大きなフィルが毛を靡かせて走っていく。
その先には牧野がいる。
フィルの突然の行動に呆気に取られて見惚れているだけの牧野。

このままの勢いでフィルが牧野にぶつかったら大変な事になる!

「牧野、避けて!」と口にしようと思った瞬間、フィルが大きくジャンプした。
牧野が危ない!と思ったが、何もすることが出来ない。
俺の視界はゆっくりとしたコマ送りになっていた。
フィルがその大きな身体を牧野へと寄せていく。
牧野は驚いた顔で立ち尽くしている。

フィルが人を、それも牧野を襲うなんて、ありえない・・・

そんな考えが頭を過る。
必死に牧野の方へと足を運んでいる筈なのに、一向に距離は縮まらない。

ああ、だめだ、もう間に合わない・・・

そう思った時、フィルが牧野の背後から飛んで来たサッカーボールに体当たりした。
そして、どんっと地面に着地し、何食わぬ顔で牧野の横に立っている。
気付けば時間は普段と同じ流れに戻っていた。
何が起こったのか分からない牧野は、キョトンとして「どしたの、フィル?」なんて犬に聞いてる。
俺はいつの間にか息をするのを忘れていたらしい。
胸が苦しくなっていたから、酸素を取り込もうと大きく息をした。
さーっと血の気が引いていたのが、今度は逆に猛スピードで身体中を駆け巡り、心臓がばくばくと鳴っている。

「すいませーん!」

フィルが弾き飛ばしたサッカーボールを使っていたんだろう男の子がぺこぺこと頭を下げながら、こちらにボールを拾いに来るのが見えた。

牧野に何も無くて良かった・・・

大きく息を吐きながら空を仰いだ。
フィルのリードを持った牧野が、俺のところまでのんびり歩いてくる。

「ねえ、類、どうしたの?
フィルはいきなりこっちに駆けてくるし。
類は何だか慌ててるみたいだし。
ふふふ、そんな類、珍しいね。」

全く・・・
何で牧野はこんなに暢気なんだろ?

「今、あんたにサッカーボールがぶつかりそうになって。
それに気付いたフィルが、そのボールに体当たりして、あんたを護ったんだよ。」
「えええ? だからびょーん!ってジャンプしてたの?
急に飛んで来たから、何事かと思ったよ。
フィル、すごーい!ありがとねー!
サッカー選手になるー?」

牧野の足元で普段と何も変わらず尻尾を振り回しながらお座りしてるフィル。
案外、ボール遊びがしたかっただけかもしれないけど・・・
牧野を護ってくれたことには変わりない。
牧野がわしゃわしゃとフィルの顔を両手でもみくちゃにしてる。
そうやって触られるのも嫌じゃないらしいフィルは、今度はゴロンと横になって、「お腹も撫でて!」のポーズをとった。

俺と牧野に甘やかされて育ってるから、色々要求が多いんだよな・・・

そんな大きな甘えっこの望むがままに、牧野はフィルを優しく撫でている。

「んー? 気持ちいいのー?
あたしもね、フィルのお腹撫でるの、だーい好き!
ここの毛、柔らかくって、触り心地いいんだもん!
ずーっと撫でてられるー。」

きっとフィルの小屋に帰ったら、いつも通り丁寧に身体中にブラシを掛けて、今日付いたゴミを落とし、ふわふわな毛並にしてやるんだろう。
フィルにとっては牧野が世話好きなママで、俺が散歩係のパパ・・・位の存在なのかも知れない。
そして、そんな牧野のピンチに気付き、助けてくれたフィルに、俺は少なからず嬉しくなっていた。
ちゃんと牧野の事を護るべき人だって分かってるんだって知れたから。

それって、フィルにとって、牧野は家族ってことじゃない?
牧野と、俺と、大きな悪戯っ子との3人家族。
いつかそこにはもっと家族が増えるかもしれない。
俺と牧野の子だったり、フィルとお嫁さんの子犬だったり・・・

庭の芝生の上で寛ぐフィルともう一頭の白い犬。
子犬とじゃれあう子供の姿。
それを見守る牧野と俺。
そんな画がふいに頭の中に浮かんで来た。

俺、そんなに賑やかなの、好きじゃなかった筈なのに。

自分の中に湧いてきたイメージに、つい、くつくつと笑いが零れる。

「どしたの、類?
楽しそうじゃない?」
「うん、まあね。」
「えー? なあに?
あたしにも教えて!」
「ま、それは追々・・・ね。」
「えー? 何ー?
気になるー!!!」

いつの間にか、牧野とフィルのせいで、俺は大家族が欲しくなってたみたいだ。
うん、きっといつの日か、そんな家族を持とう。
まだちょっと時間はかかるけど。
それまでは、仲良く、こじんまりと2人と1匹の家族でいこう。

右手でフィルのリードを。
左手には牧野の手を握る。
そして家に戻る道を歩き始めた。

「牧野。」
「ん?」
「俺、今、結構幸せかも。」
「えーーー? 結構ーーー?
あたしなんてね、すっごくすっごく幸せなんだから!
類がいて、フィルがいて。
他になーんにもいらないもん!」

夕陽に照らされる牧野の笑顔が俺をも笑顔にする。

「あ、やっぱり、俺もすごく幸せ。」

そんな事を口にして、顔を見合わせて、2人で笑い合う。
俺達は傍から見たらとんでもないバカップルなんだろう。
フィルは「何話してるの?」とでも言いたげにこちらをチラチラ見ながら、とことこと歩いてる。

こうやって一緒にいるだけでいい。
それは俺も同じ気持ち。
また明日も、明後日も、その先も・・・
ずっと一緒に歩いて行こう。
そしていつか、2人と1匹じゃなくて・・・
3人と3匹だったり、4人と4匹だったり・・・
そんな日を迎えよう。

牧野の手を力を込めてきゅっと握ると、牧野も握り返してくれた。
大きな夢を胸に秘め、俺は牧野とフィルと歩いてく。


__________



こちらはコメント2000件目を送って下さった方からのリクエストで、『保健所に連れていかれそうになってた子犬を類とつくしちゃんが助けて2人で育てる。そして子犬はびっくりするほど大きくなって、類がいない時につくしちゃんを守るとか・・・(犬種はグレート・ピレニーズとか)』というお題を頂きました。
ちょっとアレンジさせて頂いて、こんな感じになりましたが、如何でしたでしょうか?
リク主様に気に入って頂けていればいいのですが・・・
親戚の家でグレートピレニーズを飼っているので、その子と触れ合いを思い出しながら書きました!
最後の類のSS、息切れしてしまい、続けてUP出来ませんでしたが、これにてブログ開設4周年のプチイベント終了です♪
りく様、花梨様からのプレゼント+SS3種、チャット会・・・と盛り沢山の内容でお送りしました。
大変でしたが、楽しかったです。
連日お運び頂き、有り難うございました!


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