それはたった一夜の出来事で。
ほんの一夜の事なのだから、すぐに忘れられると思ったんだ。
いつも通り。
他の名も無き女達と同じ様に、あっという間に過去となり、何の記憶も残さずに消えていくのだと。
そう思っていたから抱いたのに。
それは丸っきり間違っていたのだと思い知る事になった。
『司』という呪いを解くために大きな変化が必要だと言った牧野。
「そんな面倒な事に巻き込まれるのはごめんだ。
類かあきらのところに行けよ。」
と突き放した俺に
「類と友達でいられなくなる。
美作さんの妹でいられなくなる。
あたしの事、女とも思ってない西門さんが一番適任なの。」
と自分勝手な論理を振りかざして来た。
「俺にとって何の旨みもないのに、どうしてそんな事しなきゃなんねえんだよ?
どっかにいるだろ?
後腐れなくて、お前みたいな凹凸のない寸胴ボディでもいいって物好きが。
一応鉄パン処女なんだし。
和也なんか尻尾ふってくるんじゃね?
新品同士でお似合いだ。」
「だから、和也君でも駄目なんだってば!
あたしの事好きって言ってくれてる人利用するなんて出来ないよ。」
「何で俺なら利用してもいいんだよ?
お前の言い分、支離滅裂だろうが!」
「だって、西門さんは何したってあたしの事なんか好きにならないでしょ。
それに好きじゃない女の人だっていーっぱい相手にしてるじゃない。
何であたしは駄目なのよ?」
何を言っても屁理屈をこねる。
忌々しく思えて、思いっきり不機嫌そうに睨み付けてやったのに、ちっとも怯む様子もなく、鼻息荒くさせている変な女。
「ダチとは寝ない。
お前から見たら、俺は誰とでも寝てるように見えるんだろうけどな。
俺にだってルールがあるんだよ。
距離が近い相手は後々面倒なんだ。
だから手を出さない。
そのルール守ってやって来たから、この通り、誰からも恨まれたり、刺されたりする事もなくこの世の春を謳歌出来てるってワケ。
お分かりか?」
「桜子とは寝たくせに!
あたし、知ってるもん!」
「ばっ・・・!
あれはノーカンだろ?
まだダチになる前だったし。
こっちが詐欺に遭ったみたいなモンだったろうが!」
「何で優紀や桜子なら良くて、あたしは論外なのよ?
どこが違うっていうの?」
どんどん変な論理で畳み掛けられて。
俺もよく分からなくなって来た。
その他の女と牧野との違いがどこにあるのか?
そう言われてみれば境目は曖昧だ。
一夜を共にした後、桜子はその事を綺麗さっぱり忘れたかの様に振る舞っていたから、俺もそれに乗っかったし。
優紀ちゃんとは、少し擽ったい様な余韻が残っていたけど、それでも会えば友達の域を超えて来たりしないでいてくれたから、俺も自然に振る舞えた。
じゃあ牧野は?
何でこんなに俺はこいつには手を出すまいって決めてるんだっけ?
連日の猛暑で俺は少しおかしくなっていたのかも知れない。
考えるのも面倒になり、鉄パンさえ脱げればこいつの気も済んで、こんな事で纏わり付かれることも無くなるだろ?なんて思ってしまった。
他の女と遊ぶ時同様に、牧野とホテルの一室に入ってしまい、迎えた朝。
俺は死ぬ程後悔する羽目になる。
子供みたいなあどけない寝顔で、すうすうと寝息をたてている牧野。
それを愛おしいと思ってしまう自分がいて。
柔らかな頰をそっと撫でながら、小さく溜息を吐き出す。
こうなっちまうから、ダメだって思ってたんだな。
牧野に触れたら、自分が牧野に落ちてしまうって、頭の中の何処かから危険信号が出てたんだ。
今迄それに従って、ダチの範囲に留まっていられたのに!
『抱いて欲しい』なんて迫られたら、あっさりそれを越えちまったじゃねーか!
どうしてくれるんだよ?
寝乱れている黒髪に指を滑らせ梳いてみる。
血が通っていないが故にひやりとしていて、サラサラとした手触りを感じると、また胸がざわざわと騒いで。
たったこれだけの事に心が動かされる事に驚く自分がいた。
ああ、ダメだ、こりゃ。
ドツボにハマった気がする。
簡単には抜け出せそうにない。
そーだよ、俺はこいつにハマって、いつまでも抜け出せない類や司を見て来たのに!
何で俺まで同じ道辿ってんだよ?
もう一つ溜息を吐いて、眠りこけている牧野をしっかりと抱き寄せる。
むにゃむにゃと何事か寝言を呟いてる、呑気な女をすっぽり自分の腕の中に囲い込めば、ドクンドクンと心臓が音を立て始めた。
マジか?
息が苦しいんだけど、それもこいつの所為なのか!
ったく、どうしてくれんだよ?
厄介な事になってしまったと、思わず舌打ちしたくなる。
その一方で湧き起こる牧野への熱い想い。
身体をぴたりと寄せながら考え付いた結論は・・・
よーし。
責任取ってもらおうじゃねえか!
この西門総二郎をこんな風にしたんだから。
その責任は、この迂闊な鉄パン処女だった女に取ってもらうぞ。
その代わり・・・
俺は純情無垢な乙女をオンナにしちまった責任取ってやるよ。
覚悟しろ!
目が覚めて、紅くなったり、目を白黒させるだろう牧野を思い描いて、くすりと笑いをこぼした。
__________
すみません、更新、暫く間が空いてしまいました。
自分の体調悪化のち病人の体調悪化故に病人入院危機!という最悪パターンでした。
やっと自分も病人も落ち着いて来たところです。
PCに向かう余裕はまだ無いので、とりあえずSS1話だけでもお届けしよう!と、ストックしてあったネタに手を入れてみました。
ドツボにハマった総二郎に、くすりと笑って頂ければ幸いです。
止まっているお話たちも、少しずつ書いておりますので、気長にお待ち頂けたら・・・と思います。
暑い日が続きますから、水分、塩分、ちゃんと摂っていきましょうー!

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
ほんの一夜の事なのだから、すぐに忘れられると思ったんだ。
いつも通り。
他の名も無き女達と同じ様に、あっという間に過去となり、何の記憶も残さずに消えていくのだと。
そう思っていたから抱いたのに。
それは丸っきり間違っていたのだと思い知る事になった。
『司』という呪いを解くために大きな変化が必要だと言った牧野。
「そんな面倒な事に巻き込まれるのはごめんだ。
類かあきらのところに行けよ。」
と突き放した俺に
「類と友達でいられなくなる。
美作さんの妹でいられなくなる。
あたしの事、女とも思ってない西門さんが一番適任なの。」
と自分勝手な論理を振りかざして来た。
「俺にとって何の旨みもないのに、どうしてそんな事しなきゃなんねえんだよ?
どっかにいるだろ?
後腐れなくて、お前みたいな凹凸のない寸胴ボディでもいいって物好きが。
一応鉄パン処女なんだし。
和也なんか尻尾ふってくるんじゃね?
新品同士でお似合いだ。」
「だから、和也君でも駄目なんだってば!
あたしの事好きって言ってくれてる人利用するなんて出来ないよ。」
「何で俺なら利用してもいいんだよ?
お前の言い分、支離滅裂だろうが!」
「だって、西門さんは何したってあたしの事なんか好きにならないでしょ。
それに好きじゃない女の人だっていーっぱい相手にしてるじゃない。
何であたしは駄目なのよ?」
何を言っても屁理屈をこねる。
忌々しく思えて、思いっきり不機嫌そうに睨み付けてやったのに、ちっとも怯む様子もなく、鼻息荒くさせている変な女。
「ダチとは寝ない。
お前から見たら、俺は誰とでも寝てるように見えるんだろうけどな。
俺にだってルールがあるんだよ。
距離が近い相手は後々面倒なんだ。
だから手を出さない。
そのルール守ってやって来たから、この通り、誰からも恨まれたり、刺されたりする事もなくこの世の春を謳歌出来てるってワケ。
お分かりか?」
「桜子とは寝たくせに!
あたし、知ってるもん!」
「ばっ・・・!
あれはノーカンだろ?
まだダチになる前だったし。
こっちが詐欺に遭ったみたいなモンだったろうが!」
「何で優紀や桜子なら良くて、あたしは論外なのよ?
どこが違うっていうの?」
どんどん変な論理で畳み掛けられて。
俺もよく分からなくなって来た。
その他の女と牧野との違いがどこにあるのか?
そう言われてみれば境目は曖昧だ。
一夜を共にした後、桜子はその事を綺麗さっぱり忘れたかの様に振る舞っていたから、俺もそれに乗っかったし。
優紀ちゃんとは、少し擽ったい様な余韻が残っていたけど、それでも会えば友達の域を超えて来たりしないでいてくれたから、俺も自然に振る舞えた。
じゃあ牧野は?
何でこんなに俺はこいつには手を出すまいって決めてるんだっけ?
連日の猛暑で俺は少しおかしくなっていたのかも知れない。
考えるのも面倒になり、鉄パンさえ脱げればこいつの気も済んで、こんな事で纏わり付かれることも無くなるだろ?なんて思ってしまった。
他の女と遊ぶ時同様に、牧野とホテルの一室に入ってしまい、迎えた朝。
俺は死ぬ程後悔する羽目になる。
子供みたいなあどけない寝顔で、すうすうと寝息をたてている牧野。
それを愛おしいと思ってしまう自分がいて。
柔らかな頰をそっと撫でながら、小さく溜息を吐き出す。
こうなっちまうから、ダメだって思ってたんだな。
牧野に触れたら、自分が牧野に落ちてしまうって、頭の中の何処かから危険信号が出てたんだ。
今迄それに従って、ダチの範囲に留まっていられたのに!
『抱いて欲しい』なんて迫られたら、あっさりそれを越えちまったじゃねーか!
どうしてくれるんだよ?
寝乱れている黒髪に指を滑らせ梳いてみる。
血が通っていないが故にひやりとしていて、サラサラとした手触りを感じると、また胸がざわざわと騒いで。
たったこれだけの事に心が動かされる事に驚く自分がいた。
ああ、ダメだ、こりゃ。
ドツボにハマった気がする。
簡単には抜け出せそうにない。
そーだよ、俺はこいつにハマって、いつまでも抜け出せない類や司を見て来たのに!
何で俺まで同じ道辿ってんだよ?
もう一つ溜息を吐いて、眠りこけている牧野をしっかりと抱き寄せる。
むにゃむにゃと何事か寝言を呟いてる、呑気な女をすっぽり自分の腕の中に囲い込めば、ドクンドクンと心臓が音を立て始めた。
マジか?
息が苦しいんだけど、それもこいつの所為なのか!
ったく、どうしてくれんだよ?
厄介な事になってしまったと、思わず舌打ちしたくなる。
その一方で湧き起こる牧野への熱い想い。
身体をぴたりと寄せながら考え付いた結論は・・・
よーし。
責任取ってもらおうじゃねえか!
この西門総二郎をこんな風にしたんだから。
その責任は、この迂闊な鉄パン処女だった女に取ってもらうぞ。
その代わり・・・
俺は純情無垢な乙女をオンナにしちまった責任取ってやるよ。
覚悟しろ!
目が覚めて、紅くなったり、目を白黒させるだろう牧野を思い描いて、くすりと笑いをこぼした。
__________
すみません、更新、暫く間が空いてしまいました。
自分の体調悪化のち病人の体調悪化故に病人入院危機!という最悪パターンでした。
やっと自分も病人も落ち着いて来たところです。
PCに向かう余裕はまだ無いので、とりあえずSS1話だけでもお届けしよう!と、ストックしてあったネタに手を入れてみました。
ドツボにハマった総二郎に、くすりと笑って頂ければ幸いです。
止まっているお話たちも、少しずつ書いておりますので、気長にお待ち頂けたら・・・と思います。
暑い日が続きますから、水分、塩分、ちゃんと摂っていきましょうー!



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