大学の講義終わりに牧野を捕まえた。
「もーいーくつねーるーとー クーリスーマスー♪」
自分で作ったのか、『お正月』の替え歌を歌いながら機嫌良く歩いている。
クリスマスソングなんて、この世に腐る程あるというのに、何故こんな替え歌? それも何故正月の歌を?
ったく、ホントに変な女だよな。
「クリスマスにはチキン焼きー ケーキも買ーって食べましょおー♪」
食いモンの事ばっかじゃねえか。
こいつにとってクリスマスっつーのは、美味いモンをたらふく食べれる日ってことなんだな。
色気の欠片もねえ。
「はーやくうこいこい クーリスーマスー♪」
「ふーん、つくしちゃんはそんなにクリスマスが待ち遠しいんか?」
「えー? そういう訳でも無いけど。
12月に入ると、急にクリスマス気分になるよね!
そこら中にクリスマスツリーとかイルミネーションとかあるし。
最近じゃ自分のお家をLEDで飾り付けしてたりする人もいるじゃない?」
「あー、あきらんちみたいな。」
「いや、あれはもうテーマパーク並みで、桁外れだけど。
庶民のお家でもちょびっと玄関回りとか光らせたりするのよ。
で、そう言うの見ると、なーんか幸せになるっていうか、楽しいっていうか。
ワクワクするんだよねー、この季節。」
そう言って、ホントに幸せそうに微笑んでる。
何で他人の家の飾り付けでお前が幸せになるんだ?
意味分かんねえ。
「へえ・・・ そういうモンかね。」
「そーよ!
クリスマスなんて避けて通りたいって思ってる西門さんには分かんないだろうけど!」
そう、例年クリスマスは一人で過ごすと決めている。
誰かと一緒に過ごして、勘違いされたら困る三大イベント日の一つ、クリスマス。
あとの二つは誕生日とバレンタインデーだ。
「まあ・・・な。
茶道にクリスマスは関係ねえし。」
「季節感を取り入れるって言っても、流石にキリスト教の聖なる日を、日本古来の茶道に持ち込む訳にはいかないもんねえ。」
本当のところ、西門流ではないけれど、「クリスマス茶会」なんてのをやってる所もあるし、クリスマスに関係する柄が描かれた茶道具も売られていたりする。
それにクリスマスツリーを模した茶菓子もあったりするんだ。
あれを牧野に見せてやったら、喜びそうだな・・・なんて思ったりもするけど。
いや、食わせてやったらか?
「そういうつくしちゃんはクリスマスは予定あんのか?
今年こそ2人きりで過ごすいい男は見付かったんか?」
「は? 何言ってんのよ?
あたし、別に恋人欲しいとか思ってませんし!
クリスマスは稼ぎ時で忙しいし!」
急にムキになって早足で歩き始めるから、こちらも足を速めて横に並ぶ。
チラっと横目で表情を確かめると、唇はちょっとつんと上を向いていて、目はあらぬ方に逸らされてる。
ついふっと小さな笑いが漏れた。
「ふうん、つくしちゃんはクリスマスは忙しいんだ。」
「そーよ。
22日から24日までクリスマスケーキ売るバイト入れてんの。
時給すっごくいいからさ。
そのお給料で自分の誕生日に自分でプレゼント買うんだー。
もう目星付けてるの。
可愛くて使いやすそうなバッグ!
あー、楽しみー!」
恋人の居ないクリスマスも、自分のバースデープレゼントを自分で買おうとしてるところも、傍から見れば寂しそうなお一人様だってのに。
このオンナはホントに楽しそうにしてるから、やっぱ普通じゃねえ。
思った事を顔に出したつもりはなかったのに、俺の事をキロリと上目遣いで睨んで、イチャモンを付けてくる。
「何よ、バカにしてるんでしょ、あたしの事。
西門さんだってクリスマス独りぼっちのくせに!」
「俺は仕事が忙しいんだよ、年末年始は。
これでも次期家元なんだ。
色々あるのさ。」
「負け惜しみ言っちゃって。」
「負け惜しみは誰からも誘われないつくしちゃんの方だろ?
俺は引く手数多なのを丁重にお断りした上で、敢えて一人を選んでるんだ。」
「失礼ね。
あたしだって誰からも誘われない訳じゃないもん!」
どーせ類とか、あきらんちのホームパーティーとか、滋のどんちゃん騒ぎとか、そんなもんだろ。
「はいはい、つくしちゃんも敢えての一人って事で。
分かった、分かった。」
「バイトなの!
寂しく独りぼっちなんかじゃないんだもん。
いーでしょ、関係ないでしょ西門さんに。
もー、ほっといてよぉ!」
取り敢えず、牧野のクリスマスの予定はこれで分かった。
毎日ケーキの売り子をするだけって事が。
胸のどこかでホッとして、また別のどこかで笑いたいのを堪えてる。
「それにしても何だってあたしにくっついてくるのよ?
何か用事?」
「んー? お前今日バイト無いんだろ?」
それは事前に調査済み。
牧野のバイトは火曜と木曜の家庭教師。
そして水曜日の夜のあきらんちの双子のチャイルドシッターだから。
月曜日は暇な筈なんだ。
「無いけど・・・
それがどうしたのよ?」
「美味いモン奢ってやるから、ちょっと付き合え。」
牧野を口説き落とす、最大効果がある言葉『美味いモン』。
こいつは大抵これで落ちる。
この俺の魅力に・・・じゃないところは気に入らねえが、相手はこの牧野つくしだ。
仕方ねえ。
「・・・美味いモンて何よ?」
「スイーツでもディナーでも。
牧野のお好みで。」
「えーーーーー?
何、何なの、今日は?」
そうだよな、やっぱり知らねえよな。
今日が俺の誕生日だってのは・・・
少なからずがっかりしながらも、上手く牧野を誘導して、俺の車に乗せたから。
俺はニヤニヤ顔が止まらなくなった。
__________
12月3日は総二郎のお誕生日でーす。
オメデトー! パチパチパチー!
お誕生日SS、まだちっとも気持ちが通じ合ってない2人です。
自分の誕生日につくしに罠を張る総二郎(笑)
この後どうなるのかは、後編に続く!
先週からいろいろありまして、体調が優れず・・・
なかなかお話も、コメントのお返事も書けずにおります。
気長にお待ち頂けたら幸いですm(__)m

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「もーいーくつねーるーとー クーリスーマスー♪」
自分で作ったのか、『お正月』の替え歌を歌いながら機嫌良く歩いている。
クリスマスソングなんて、この世に腐る程あるというのに、何故こんな替え歌? それも何故正月の歌を?
ったく、ホントに変な女だよな。
「クリスマスにはチキン焼きー ケーキも買ーって食べましょおー♪」
食いモンの事ばっかじゃねえか。
こいつにとってクリスマスっつーのは、美味いモンをたらふく食べれる日ってことなんだな。
色気の欠片もねえ。
「はーやくうこいこい クーリスーマスー♪」
「ふーん、つくしちゃんはそんなにクリスマスが待ち遠しいんか?」
「えー? そういう訳でも無いけど。
12月に入ると、急にクリスマス気分になるよね!
そこら中にクリスマスツリーとかイルミネーションとかあるし。
最近じゃ自分のお家をLEDで飾り付けしてたりする人もいるじゃない?」
「あー、あきらんちみたいな。」
「いや、あれはもうテーマパーク並みで、桁外れだけど。
庶民のお家でもちょびっと玄関回りとか光らせたりするのよ。
で、そう言うの見ると、なーんか幸せになるっていうか、楽しいっていうか。
ワクワクするんだよねー、この季節。」
そう言って、ホントに幸せそうに微笑んでる。
何で他人の家の飾り付けでお前が幸せになるんだ?
意味分かんねえ。
「へえ・・・ そういうモンかね。」
「そーよ!
クリスマスなんて避けて通りたいって思ってる西門さんには分かんないだろうけど!」
そう、例年クリスマスは一人で過ごすと決めている。
誰かと一緒に過ごして、勘違いされたら困る三大イベント日の一つ、クリスマス。
あとの二つは誕生日とバレンタインデーだ。
「まあ・・・な。
茶道にクリスマスは関係ねえし。」
「季節感を取り入れるって言っても、流石にキリスト教の聖なる日を、日本古来の茶道に持ち込む訳にはいかないもんねえ。」
本当のところ、西門流ではないけれど、「クリスマス茶会」なんてのをやってる所もあるし、クリスマスに関係する柄が描かれた茶道具も売られていたりする。
それにクリスマスツリーを模した茶菓子もあったりするんだ。
あれを牧野に見せてやったら、喜びそうだな・・・なんて思ったりもするけど。
いや、食わせてやったらか?
「そういうつくしちゃんはクリスマスは予定あんのか?
今年こそ2人きりで過ごすいい男は見付かったんか?」
「は? 何言ってんのよ?
あたし、別に恋人欲しいとか思ってませんし!
クリスマスは稼ぎ時で忙しいし!」
急にムキになって早足で歩き始めるから、こちらも足を速めて横に並ぶ。
チラっと横目で表情を確かめると、唇はちょっとつんと上を向いていて、目はあらぬ方に逸らされてる。
ついふっと小さな笑いが漏れた。
「ふうん、つくしちゃんはクリスマスは忙しいんだ。」
「そーよ。
22日から24日までクリスマスケーキ売るバイト入れてんの。
時給すっごくいいからさ。
そのお給料で自分の誕生日に自分でプレゼント買うんだー。
もう目星付けてるの。
可愛くて使いやすそうなバッグ!
あー、楽しみー!」
恋人の居ないクリスマスも、自分のバースデープレゼントを自分で買おうとしてるところも、傍から見れば寂しそうなお一人様だってのに。
このオンナはホントに楽しそうにしてるから、やっぱ普通じゃねえ。
思った事を顔に出したつもりはなかったのに、俺の事をキロリと上目遣いで睨んで、イチャモンを付けてくる。
「何よ、バカにしてるんでしょ、あたしの事。
西門さんだってクリスマス独りぼっちのくせに!」
「俺は仕事が忙しいんだよ、年末年始は。
これでも次期家元なんだ。
色々あるのさ。」
「負け惜しみ言っちゃって。」
「負け惜しみは誰からも誘われないつくしちゃんの方だろ?
俺は引く手数多なのを丁重にお断りした上で、敢えて一人を選んでるんだ。」
「失礼ね。
あたしだって誰からも誘われない訳じゃないもん!」
どーせ類とか、あきらんちのホームパーティーとか、滋のどんちゃん騒ぎとか、そんなもんだろ。
「はいはい、つくしちゃんも敢えての一人って事で。
分かった、分かった。」
「バイトなの!
寂しく独りぼっちなんかじゃないんだもん。
いーでしょ、関係ないでしょ西門さんに。
もー、ほっといてよぉ!」
取り敢えず、牧野のクリスマスの予定はこれで分かった。
毎日ケーキの売り子をするだけって事が。
胸のどこかでホッとして、また別のどこかで笑いたいのを堪えてる。
「それにしても何だってあたしにくっついてくるのよ?
何か用事?」
「んー? お前今日バイト無いんだろ?」
それは事前に調査済み。
牧野のバイトは火曜と木曜の家庭教師。
そして水曜日の夜のあきらんちの双子のチャイルドシッターだから。
月曜日は暇な筈なんだ。
「無いけど・・・
それがどうしたのよ?」
「美味いモン奢ってやるから、ちょっと付き合え。」
牧野を口説き落とす、最大効果がある言葉『美味いモン』。
こいつは大抵これで落ちる。
この俺の魅力に・・・じゃないところは気に入らねえが、相手はこの牧野つくしだ。
仕方ねえ。
「・・・美味いモンて何よ?」
「スイーツでもディナーでも。
牧野のお好みで。」
「えーーーーー?
何、何なの、今日は?」
そうだよな、やっぱり知らねえよな。
今日が俺の誕生日だってのは・・・
少なからずがっかりしながらも、上手く牧野を誘導して、俺の車に乗せたから。
俺はニヤニヤ顔が止まらなくなった。
__________
12月3日は総二郎のお誕生日でーす。
オメデトー! パチパチパチー!
お誕生日SS、まだちっとも気持ちが通じ合ってない2人です。
自分の誕生日につくしに罠を張る総二郎(笑)
この後どうなるのかは、後編に続く!
先週からいろいろありまして、体調が優れず・・・
なかなかお話も、コメントのお返事も書けずにおります。
気長にお待ち頂けたら幸いですm(__)m



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