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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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君の願い、俺の願い

梅雨はどこに行ったのか?と思う程に蒸し暑い東京の7月が始まった。
そこかしこで鮮やかに咲いていた紫陽花は色が淡くなり、それと反比例して街路樹の葉の緑とその下に落ちる影は濃くなった。
それらも本格的な夏の始まりを告げているようだ。
それでも陽が傾くと空気は急に涼しくなる。
今夜はいつものメンバーで食事する事になっている。
店を予約したのは俺で、邸から店に行く途中に牧野のバイト先があるから、ピックアップするのも俺。
まあ、どれもこれも大した手間じゃない。
約束の時間の少し前に牧野のバイト先である学習塾の前に車を停めた。
そのうち出てくるだろうと思いつつ、どうしても出入り口の辺りに目がいってしまう。
観音開きのドアの横には、テカテカした素材で出来た作り物の笹の木が立てられていて、その枝に括り付けられた沢山の短冊が風に揺られていた。

ああ、そうか、今夜は七夕か。

短冊がひらひらと風に靡いているのを見るともなしに見ていたら、牧野がドアを押し開いて出て来た。
昼休みに大学で会った時は「暑い、暑い!」とTシャツ姿で汗を拭っていたけれど、バイト上がりの今は薄手のカーディガンを羽織っている。
すぐ目の前だというのに、小走りで歩道を横切ってこちらに近付き、勢いよく車のドアを開けた。

「わー、美作さん、待たせちゃった?
お迎えありがとねー。助かるー。」
「いや、ついさっき来たところだ。
それに通り道だから。」
「ありがと、ありがと。
でも車で来たらお酒飲めないでしょ。」
「んー、飲まなくてもいいし。
飲んだら置いて帰ればいいし。
どうにでもなるよ。」
「そうなの?」
「そうだよ。」

そう言ったら牧野はくすりと笑った。
路肩に停めていた車を流れに戻し、夕暮れ時の街を走り始める。
少し雲が出ているから、斑らに色付く空が建物の間から見え隠れし、牧野はそれを目で追っているみたいだった。

「塾の前にいっぱい短冊ぶら下がってたな。」
「あー、あれね。
皆、合格祈願っていうの?
⚪︎⚪︎高校に合格しますように!とか書くんだと思ったら、お金持ちになりたいとか、SNSでバズりたいとか、かっこいい彼氏ができますように!なんて書いちゃって。
中学生なんてまだまだ子供だよねー。」
「じゃあ牧野先生は? 何て書いたんだ?」

「あたしは書かないよー。
皆が書くの見てただけ。」
「一緒に願い事、認めたら良かったのに。」
「いーの、いーの、あたしは。
バイトとは言え一応監督する方だし。
それにほら、あたしの願い事は叶いっこないからさ。
そんなの書くの、なんか癪じゃない?」

ハンドルを握る合間にちらりと横顔を盗み見る。
牧野は笑ってる。
笑っているけど・・・、それは俺が見たい笑顔じゃない。
そんな自嘲するみたいな作り笑い。

ああ、今もなのか。
牧野は司の記憶は二度と戻らないと思いつつ、その一方では戻って欲しいと願ってる。

上手いフォローの言葉を紡ぎ出せなくて、暫く車の中は沈黙が続いてしまった。

「牧野、何か美味しいもの食べたいって言ってたろ。
どこにしようか考えたんだけど、今夜はイタリアンにしたよ。
石窯焼きのピザと、ドルチェのティラミスが美味いって評判の店。」
「いいねー!
それ聞くだけでもうお腹鳴りそう。」
「俺はあの店ではラム肉のグリルをいつも頼んじゃうんだけど。」
「何それ・・・、それも美味しそうなんだけど。
羊って普段は食べないから興味あるー!」
「ちょっとスパイシーで焼き目が香ばしくて・・・、きっと気に入るよ。」
「美作さんが選ぶお店だもん。
間違いないに決まってる!」
「そうかな?」
「そうだよ。」

さっきとは逆になった台詞が可笑しかったらしく、牧野はうふふっと小さく笑い声を上げる。
結局、俺は牧野を喜ばせる為に食べ物の話をするしかないのだ。
他に話題はないのか?と頭の中を探っても、あとの無難なネタは絵夢と芽夢のことくらいで・・・。
自分の抽斗の少なさを恨みたくなった。

「ねぇ、あっちの空の色、綺麗。
夕焼けってついつい見ちゃうよねえ。
これなら今日は天の川見れるかなぁ?」
「東京だと裸眼では難しいかもな。
夏の大三角くらいは晴れてたら見えるだろ。」
「そっか。
織姫様はかささぎが作ってくれた橋を渡って彦星様に会いに行く事になってるけど。
流れ星にでも乗ってぴゅーん!と行けたらいいのにね。
1年に1度しか会えないなら、もう夜が来たらすぐにでも会いに行きたいじゃない?」
「・・・そうだな。」

牧野はフロントガラスから遠くの空を見上げている。

1年に1度どころか、何年も会えない、相手は自分を忘れてる。
そんな男を想い続けている牧野は、七夕の夕方にこんな事を思うのか。
牧野の牽牛はかささぎの橋を渡らない。
渡らないどころか、牧野が渡って自分の方へやって来る事すら許さない。

そう思ったらまた俺はかける言葉を失くした。
何を言っても牧野の慰めにすらならないから。

牧野の心は、あの時司が持っていってしまったのかな。
記憶を失くしても、牧野の事は手放してくれないんだな。

「あたしの願い事は叶いっこないからさ。」

そう呟いて強がって笑う牧野の横顔が目に焼き付いてる。
じゃあ今夜は俺が代わりに願うよ。
牧野の元に司が戻ってきますようにと。
だけど、どうしてかな?
何だかすごく胸が苦しいんだ。


_________



七夕SSは何だかちょっと切なめなあきらがやって来ました。
偶にはこんなでもいいか?

本日23時から七夕チャット会開催です。
いつもの場所です。
良かったらお気軽にお越しください。


チャット会は終了しました。
ご参加くださった方々、ありがとうございました。


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