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hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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春の訪れ

あたしが変わらなければいいだけなんだ・・・と、ずっと自分に言い聞かせてた。

あいつに忘れられて。
それでもあたしは忘れられなくて。
いつか、何かの拍子に記憶が戻ったら、あいつはあたしのところに帰って来てくれる筈。
だって言ってたもん。
NYには帰らないって。
家を出るって。
正気に戻ったら、絶対に有言実行しちゃうよ。
あいつはそういうヤツだもん。
だから、あたしはその時まで変わらなければいい。
いつも通りに暮らして。
自分の気持ちも、あいつがあたしに向けてくれてた真っ直ぐな思いも、諦めて捨てたりしないで、ずっとずっと抱えてたらいい。
1gも減らさなように、しっかりとしっかりと、ぎゅっと両手で抱えて。
そうやって、いつか「悪い、待たせたな。」ってバツが悪そうな顔して、あいつがあたしの前に現れるのを待ってればいい。

そう思わなきゃ、自分を奮い立たせられなかった。
そうする事で、わーわー泣き出したくなるのを堪えていられた。
張り裂けそうな心を、『信じて待つ』というまじないをかけた包帯でぐるぐる巻きにして、痛みを抑え込んで。
ただ立っている事すら苦しい時間を、1日、また1日と積み重ねた。
ふとした瞬間に、銃で撃ち抜かれたかのような鋭い痛みが身体を突き抜けてく。
そんな時は、ぎゅうっときつく目を閉じて、息を詰めて、歯を食いしばってぐっと堪えるんだ。
痛みの波の狭間でふう・・・と息を吐き出して、身体の強張りを少しだけ解くと、今度は重苦しいものが肩にずうん・・・とのしかかってきて、あたしは身動きがとれなくなる。
そんなあたしに気付いて、「牧野?」って呼び掛けてくれるのは、いつも類だった。
あたしがずっと待ってるあいつじゃなくて。
側にいてくれるのは、いつだって類だった。



春休みが終わって、また新しい年度が始まった。
大学に進んでからも、相変わらずいつもの非常階段があたしの居場所。
何故だかここは落ち着くんだ。
もっと居心地のいい場所や、座り心地のいい椅子は学内にいっぱいありそうなものなのに、暇があるとここに来てる。
昼休みにお弁当を食べようと、非常階段に来てみたら、もうそこでは類が壁を背もたれにしつつ転寝していた。
寝るなら家のベッドでゆっくり寝てたらいいのに。
わざわざ高等部の非常階段まで来て寝ているんだから、類もよっぽどここが気に入っているんだろう。

「類。」

小さな声で呼び掛けたら、眠そうながらも目を開けた。

「ん・・・、おはよ、牧野。」
「もうお昼だよ。お弁当、一緒に食べる?」

ふるふると小さく頭を振ってる。

「俺、腹減ってない。コーヒーだけちょうだい。」

あたしは類用のコーヒーを入れてきたステンレスボトルを「はい。」と手渡した。
あたしはいつもバッグの中にボトルを2本持ってる。
類用の黒いのと、自分の為のあったかいほうじ茶が入っているブルーのだ。
自分の分は、喉が渇いた時にいちいち飲み物を買うのだと節約出来ないから持ち歩いているんだけれど。
類のコーヒーは・・・、いつも側で支えてくれる事への、ちっぽけなお礼の気持ちの表れだった。
でも、豆は類が買ってくれてるから、お礼にすらなってないのかもしれない。
類の座っている所よりも日当たりのいい階段に腰を下ろして、あたしはお弁当を膝に載せた。

「いただきまーす。」

昨日の晩ご飯のおかずの余りと、朝焼いた卵焼きと、プチトマトが入っている、ごくごく庶民のお弁当。
1人でもぐもぐ食べ進めていると、類がにじり寄ってきて、お弁当箱の中から卵焼きをひょいと摘んで口に入れている。

「お腹空いてないんじゃなかったの?」
「牧野の作る卵焼き、好きなんだもん。」

ホントに、テキトーに作ったフツーの卵焼きなのに。
まあ、類が食べるかも?と思って卵ふたつ使って焼いて、多めに入れてきたけどね。

「おにぎりは?」
「んー? 中の具、何?」
「今日は焼き鮭。」
「じゃあ、食べる。」

そうなるだろうと思っていたから、ついくすんと笑ってしまった。
類に一つおにぎりを手渡すと、神妙な顔付きで、ラップを剥がしているのが、いつ見ても似合わなくて可笑しい。
互いに黙々とおにぎりを食べ、あたしはおかずも食べ終わって、食後のあったかいほうじ茶を飲んだ。
自然とほぅっと溜息が溢れる。

「あー、いいね、この時間。
お腹もいっぱい。
お日様も当たって気持ちいい。
ほっとするー。」

類はコーヒーの入ったボトルに口を付けながら、「そう?」とでも言いたげな視線をこちらに向けていた。
ちゅぴちゅぴちゅぴと、時折鳥の鳴き声がして、長閑さに拍車を掛ける。
柔らかな春の陽射しを浴びながら、目を瞑って深呼吸した時、不意にあの鋭い痛みがあたしを貫いた。
何の前触れもなく襲ってきた痛みに、つい顔を歪めてしまったらしい。

「牧野?」

詰めていた息を吐き出して目を開けると、類があたしを気遣わしげに覗き込んでいる。

「・・・ん、何でもないよ。」

一所懸命に笑いかけようとするけれど、上手く出来なくて、ぎこちない曖昧な笑みしかあたしの中から出てこない。
何ともない振りしなきゃ・・・と思った時、類があたしの口元にすうっと手を伸ばしてきた。
親指と人差し指で摘んでいる、ビー玉みたいな飴をぎゅっとあたしの口に押し込む。

『もー、何なのよ? 餌付けしないで!』って言って、その手を拒めない。
されるがままに飴を口にして、舌の上でまあるい甘い物をころりころりと転がし、『これは何の味かなぁ?』なんて考えているうちに、不思議とあたしは胸の痛みから解放されていた。
類がそんなあたしを見て小さくくすりと笑う。

「美味しい?」
「うん・・・、なんだろ、紅茶風味かな?」
「そうだったかも。」

類はよく分かってる。
あたしが何かに囚われている時に、別のものを与えられると、意識が新しいものに移っていく単細胞人間だという事を。
だからこの人はいつもポケットに飴を隠し持つようになったんだと思う。

「ありがと。」
「ん。」

そんな優しさに胸が詰まって、目の奥がじんわりと熱くなる気配がしたから、それを誤魔化すために急いでぱちぱちと瞬きした。
泣く訳にはいかない。
これ以上、類に心配は掛けたくない。
とりあえず飴玉を片方の頬っぺたに押し込んで、思い付いた事を喋り始める。

「ねえ、類?」
「ん?」
「あったかいね、今日。すっかり春だねえ。
桜は散っちゃったけど。
植え込みの躑躅は満開でしょ。
あそこの花壇のチューリップも可愛いなぁ。
あ、チューリップって言えば・・・、ねえ、覚えてる?
類があたしにプレゼントしてくれたの。
あたし、赤いチューリップ見る度に、あの時のこと思い出すよ。
あのチューリップ、押し花にして・・・、どこにやったかなぁ?」

そこまで言った時、また類に名前を呼ばれた。

「牧野。」
「うん?」
「いいよ、無理に喋んなくて。」
「いや、別に、無理なんて・・・。」
「牧野のお喋り聞いてるの、嫌いじゃないけど。
別に黙ってたって気詰まりになったりするような間柄じゃないでしょ、俺達。」
「まあ、そうだけど・・・。」
「そんなリスの頬袋みたいに頬っぺた膨らませてないで、のんびりキャンディ食べてたらいいよ。」

そう言われると返す言葉がなかった。
無理に捻り出した話題だったし。
左のほっぺたはぽこんと飴玉が出っ張って見えている事だろう。
あたしはまたころんころんと口の中で飴を転がすしかなくなる。

「忘れた事ないよ。」
「え?」
「あのチューリップを渡した時の事。
居ても立っても居られなくなって、NYまで行った時の気持ち。
司をぶん殴った右手の痛み。
今でもはっきり覚えてる。」
「・・・そっか。」

あたしも覚えてる。
NYで全てを失くして途方に暮れていた時、類があたしを見付けてくれた時の安堵。
チューリップをくれた時のとびきり優しい笑顔と、自分が溢した涙。
あいつを置いて2人で歩いた空港の騒めき。
今も、あの時もだ。
あたしの隣にいてくれるのは、いつだって類だ。

「牧野。」
「うん?」
「帰っておいでよ。」
「え? 帰るって、どこに?」
「うーん・・・、こっち側?」

類の言っている事が理解出来なくて、あたしは目を瞬きながら考えた。
こっち側とは何処のことだろう?

「あんたはさ、もうずっと時間が止まってる世界に独り留まってるでしょ。
だから帰っておいでよ、ちゃんと時間が流れてる世界へ。」

言い当てられて、はっとした。
あたしは、変わらないように、変わらないように、そう自分を雁字搦めにして生きてきた。
言葉にしたことはなくても、いつも隣にいてくれた類には見抜かれていたらしい。

「牧野は頑張ったよ。
毎日毎日頑張ってた。
俺は知ってる。」

そういう事、言わないで欲しい。
泣きそうになるから。
つい類から顔を背けた。

「でも俺は牧野に、ちゃんと『今』を生きて欲しいんだ。
過去の中だけで生きてる牧野じゃなくて、『今』を楽しんで、幸せで、笑ってる牧野がいい。」

心をシャットアウトして『変わらない』でいるのは、決して楽しくはなかった。
寧ろ辛くて苦しかった。
あたしを忘れた人を思い続ける事は、ちっともあたしを幸せな気持ちにはしなかった。
だけど、過去の記憶に拘る事しか、あたしには出来なかった。
普段通り振る舞っているつもりでも、心の底からは笑えていなかった。
そんなあたしの事を類はずっと見守ってくれていたのだ。

「牧野?」
「・・・うん。」

涙声なのはもう隠し切れない。

「ゆっくりでいいよ。
牧野のペースでいいから。
帰っておいで、『今』に。」

目の前には優しく微笑んでる類がいる。

「ごめん・・・。」
「謝ることないでしょ。」
「・・・ありがと、類。」
「ふふふっ、そう言うと思ってた。」

瞼を閉じると、頬っぺたを涙がつつつ・・・と伝って落ちていくのが感じられる。

そうだよね。
大切なのは変わらない事じゃなく。
あたしが幸せって思って生きていける事。
あたしも本当は分かってた。
分かってたけど、知らないふりをしてたんだ。

手でゴシゴシ顔を拭って、酷い顔だろうけど類に向かって笑ってみせた。
さっきより、自分を包んでいる春の空気が暖かく感じる。
きっと明日はもっといい顔で笑える。
そう思えた。


_________



ルイルイのお誕生日SSを書き上げられなくて…
心残りだったので、何か類のお話を…と思って書きました。
まだ恋未満の2人ですけども。
管理人の中の類さんのスタンスというのは、こういう感じなんですよね。
常に側にいる、見守ってる。
NYに迎えに行く~チューリップを渡す…辺りの流れは、もうここで一気に奪うしかないでしょ!と思ったものでした笑

長い間更新せずにスミマセンでした。
2月に病人が体調悪くして、自宅で看病後に入院して、帰宅して。
その後疲れからか、自分が体調崩してました。
何かまだ本調子じゃないんですけど。
頑張って生きていこうと思います、はい。
4月ですね、春ですね。
新しいことにチャレンジされてる方もいらっしゃるでしょうね。
管理人はやっと念願のマティスを観てきましたよ。

これがあきらとつくしが心を通わせるシーンの現場(再現だけど)なんですよぉ。
いつかまた現地に行きたいな。


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