プロフィール

hortensia

Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
https://potofu.me/hortensia

アクセスカウンター
近況とかつぶやいてます
カテゴリ
最新記事
ランキングボタン
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ



ご訪問有り難うございます
カウントダウンタイマー
花男Blogリンク
君を愛するために
明日咲く花
お友達Blogリンク
恋花-koibana-
沫雪の唄
ブログ村ランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR

下弦の月 中編

高熱がある西門さんにも食べれる食事を求めて、深夜の調理場に向かった。
「いつでもお声をお掛け下さい。」とは言われていたけれど、もう2時を回ってる。
内線電話を鳴らすのは気が引けた。
誰かいらっしゃるかな…と近づいていくと、灯りが漏れているのが目に入る。
小声で「あの… すみません…」と中に呼びかけると、すぐに奥から若い板前さんが顔を出した。

「あ、あの、遅くにすみません。
西門さ…、えっと…、若先生が先程目を覚まされまして。
まだ熱が高いのですが、薬を飲まれれる前に、少し何か召し上がるとの事なんですが…」
「はい、家元夫人から承っております。
粥と鍋焼きうどんをご用意していますが、どちらが宜しいでしょうか?」

今の西門さんの胃袋にどっちが受けつけやすいのか、あたしには見当もつかない。

「…あの、両方少しずつ頂いていくのでも大丈夫でしょうか?」
「はい、ではすぐにご用意してお持ちしますので、総二郎様のお部屋でお待ち下さい。」
「いえっ、あたしが持って行きます。
お仕事の邪魔して申し訳ないですから…」

そう言ったら、板前さんがふっと表情を和らげた。

「では、ご一緒にお願いします。
もう明日の仕込みを終わらせて、休むところでしたので、私へのお気遣いは無用です。
少々お待ちください。」

と告げて、調理場の中へと戻っていく。

こんな時間まで明日の仕込み?
朝も早い調理場のお仕事。
いくらなんでも遅すぎる。
ということは… 西門さんの事を家元夫人から聞いて、寝ずに何かの時の為に待っていてくれたんだ。
内弟子さんや使用人の方が、宗家の為に尽力するのは当たり前のことかもしれない。
だけど、あの板前さんは唯義務感から、調理場に残っていてくれたわけじゃないだろう。
西門さんの為に何かしたいって思ってくれたからこそ、こんな夜遅くまで待っていてくれたし、こんな下っ端の弟子であるあたしにも優しく接してくれる。
西門さんはここで愛され敬われてるんだと思うと、他人事なのに嬉しくなるあたしがいた。

このお邸にお稽古で通うようになって、少しずつお邸の中の事を知るようになった。
西門さんはここを、冷え切った家族がバラバラに暮らしつつ、自分に与えられた仕事をこなす場だと思ってるみたいだけど、それは本当の姿じゃないと思う。

西門さんさえ心を開けば、色々なものが見えてくるのに…

そんなことを考えていたら、さっきの板前さんが色々なものを載せたお盆を持って戻って来た。
一度そのお盆をカウンターに置いて、今度は大きな冷蔵庫から何かを取り出している。

「すみませんが、こちらを運んで頂いても宜しいですか?」
「はいっ!」

用意されたのは、蓋付の大きなピッチャーとグラスだった。
でも中身は水ではないような…
そのガラスのピッチャーをまじまじと見つめていたら、板前さんが説明してくれた。

「それは経口補水液です。
水1リットルに対し塩3g、砂糖40gを入れて作るのが一般的ですが、それだとあまり美味しいものではないので、砂糖の半量を蜂蜜に換え、果物の果汁を足して飲みやすい味にしてあります。
水代わりに総二郎様に飲んで頂いて下さい。」
「…有り難うございます。」

ほら、絶対に西門さんは大事にされてるよ。
西門さんの事を思って、こんなものを準備してくれる人がいるんだよ。
あたしならコンビニにスポーツドリンクを買いに行くのが関の山だ。
こんな事をしてくれるのは、心から西門さんを心配してくれて、少しでも楽になるようにって心を砕いてくれたってことだもの。

板前さんと2人、連なってお邸の長い廊下を歩く。
中庭の枯山水がよく見える大きなガラス窓が嵌められた所を歩いていたら、白洲の水紋が柔らかい月明かりで浮かび上がり、本当の水紋のように見えてはっとした。
足音を立てないようにゆっくり歩きながらも、目は中庭に奪われる。
何度も目にしていたこの枯山水。
今初めてこのお庭の本当の意味を知った気がする。
勿論あの白州が水に見立てられていることは、知識として自分の中にあっても、本当に水に見えたのは今夜が初めてだった。
自分の胸の中にも、水紋が広がっていく。

お邸の奥にある西門さんのお部屋の前に着いた。
あたしは小さくノックして、ドアを開けたけれど、西門さんからの返事はない。
きっとまた寝入ってしまったんだろうと思って、静かに部屋に入った。
テーブルの上にピッチャーとグラスを載せたお盆を置いて振り返ると、後ろにいらっしゃると思った板前さんは開いているドアの前に控えている。
慌てて足音を立てないように急ぎ足でそこまで戻って、持って来てくれた大きなお盆を受け取った。
小声でお礼を言いつつ、小さく頭を下げる。

「あ、有り難うございました。こんな遅くに…」
「いえ、総二郎様の事、宜しくお願い致します。
失礼します。」

静かに礼をして、板前さんは廊下を戻って行く。
その背中に、もう一度頭を下げた。

西門さんのベッドサイドまで戻ってみると、やっぱりまた寝てしまったようだ。
そっとタオルでおでこの汗を拭う。

お食事、冷めてしまうけど、今は寝かせてあげた方がいいよね。
早くお薬飲んだ方がいいけど…

病床にありながらも完璧に整っている寝顔を見ていると、心臓がとくんとくんと鳴り出す。

さっきのあれ、何だったんだろう…
熱のせいでおかしくなってたのかな?
誰かと間違えてた?
でも、牧野って名前呼んでたし…
そのせいでこんな事になってるんだし…
てっきりお邸中に噂が広まっていて、変な目で見られたり、冷たくあしらわれるかとびくびくしていたけれど、あの若い板前さんはそんな素振り、全然無かった。
家元夫人が何か言って下さったのかなぁ?

おでこに手を当ててみるとまだまだ熱かった。
おでこを冷やすのは気休めに過ぎないと聞くけど、ひんやりした方が気持ちいいだろうからと、絞ったタオルを載せて、そっと押さえた。
とくんとくんと鳴る胸の鼓動を落ち着かせたくて、窓辺に行って、少しだけカーテンを開けてみる。
さっきの枯山水とは違う、手入れされた木々が生い茂る冬枯れの庭が広がっている。
見上げた空には、白くて半分だけの月がふわりと浮かんでた。


__________


昨日は寝落ちしました。スミマセン。
ホント今忙しくてですねー。
ベッドに入って書こうと思っても、ついつい瞼が閉じちゃうんですよう。
今日の総二郎さん、寝顔だけの登場で。
出番少な過ぎて怒られそ!
今月の下弦の月は、本日12日でございますー。

花男新作の報にびっくりですね。
我らが総二郎に(出来ればあきらと類にも)出番ありますように!(笑)


にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!

関連記事

テーマ:二次創作:小説
ジャンル:小説・文学

Comment

非公開コメント