似た者同士 1
「天邪鬼」の夜に至るまでのつくしの話。
__________
あの日、この人からこの香りがしなかったら…
あたしは今日ここに居なかったかも知れない。
そう思いながら、温かな腕に頭を載せる。
そっと胸に指を滑らせると、するりとした感触。
女のあたしとは全然違う肌。
何度夜を越えても慣れない気持ちと躰。
隣の人は静かに寝息を立てている。
眠りにつけないホテルのベッドの上で、考えても仕方ないことばかり考えて、夜が明けるのを待っていた。
初めて会ったのは、会社の同僚が誘ってくれたBBQだった。
「週末、友達と河原でBBQするんだ。
車持ってる人達が道具も材料も用意してくれちゃうから、私達は当日身体一つで行くだけ!
どう? つくしちゃんも行かない?」
恥ずかしながら27になっても、週末を一緒に過ごす相手もいないあたしは、そんな同僚の誘いに乗って、とある土曜日、そのBBQに出掛けて行った。
良いお天気に恵まれたけれど風が吹いていてちょっと肌寒かったその日。
知らない人もいる中、楽しく飲んだり食べたりさせてもらっていたけれど、段々身体が冷えてくるのを感じてた。
そこに、温かなスープを作って手渡してくれたのが、その人だった。
「はい、これどうぞ。」
「あ、有り難うございます。」
何気なく渡された紙コップの中身が、ただのインスタントのスープだっていうのにとても美味しく感じられる。
そう思いつつ顔を上げると、にっこり笑った男の人が立っていた。
目尻の皺が優しげに見える。
「外で飲むと、なんてことない物でも美味しくなっちゃうでしょ。」
「ホントにそうですね。きっと部屋の中で飲むより美味しいです、これ。」
そうそうと言いながら笑ったその人の名前も知らない事に気付いた。
いや、さっき挨拶はしたんだけれども、沢山の人と挨拶を交わしているうちに、誰が誰だか分からなくなってしまったのだ。
その人がスープを配るためにこの場を離れて行った隙に、同僚にそっと聞いてみる。
「ねえねえ、愛ちゃん、あの、スープ配ってる人、何てお名前だっけ?」
「え? あ、あの人はね、大木さん。
何? つくしちゃん、ああいう年上、好みー?」
「ち、違うよ! スープ貰ったから、あとでお礼言いたいなって思って。」
「ああ、大木さんってBBQ奉行なんだよ。
さり気無く美味しいもの出してくれるの。」
「へえ…」
それとなく目でその人を追っていると、皆が好き勝手に話したり食べたりしてる中、今度は1人で炭を調節したり、網の上の物を焼いたりしている。
BBQ奉行ねえ…
そういう人、居てくれたら助かるけど。
1人で頑張っちゃって、疲れないのかな…?
「あの… 何かお手伝い、ありますか?」
忙しなく働いてるその人に声を掛けた。
トングを持ちながら、ちらっと網から顔を上げたその人は「ダイジョーブ、ダイジョーブ!」なんて言ってる。
どこかで聞いたことのあるような台詞。
「BBQ、あんまり経験ないんで、指示してもらったら何でもやりますけど。」
「えー、いいの?
じゃ、お言葉に甘えて、紅茶淹れてもらっちゃおうかな?
ってティーバッグなんだけど。」
そんな誰でもできそうな役目を仰せつかった。
網の上にかけてある薬缶にティーバッグをいくつか入れて待つだけ。
手持無沙汰で立っていたら、ひょいと手渡されたのはコンデンスミルクのチューブだった。
「紅茶、しっかりと色付いたら、それ全部入れちゃって。」
「え? これ、全部入れちゃうんですか?」
「そう、ミルクティーになるよー。
これ飲まないと、BBQ来たって感じになんないの、俺。」
BBQに温かい紅茶だって初めてだし、コンデンスミルクでつくるミルクティーだって初耳だ。
面白いことを言う人だと思った。
そして陽射しが弱まり、一層肌寒くなってきた時の温かく甘いミルクティーは皆に大好評だったのに驚いた。
二度目に会ったのは、同じメンバーで集まるという飲み会だった。
居酒屋、カラオケと流れて、たまたま近くに来た時に「先日は有り難うございました。」と挨拶したら、「紅茶の子だ。」と覚えていてくれた。
皆がカラオケを歌ってる部屋の中では声の通りも悪く、身振りも交えながら再度自己紹介をし合った。
「愛ちゃんの同僚の牧野つくしです。」
「大木 晴人です。」
でもお互いよく聞こえない。
そこで彼がポケットから携帯を取り出して指差すから、自分もバッグから携帯を探し出した。
「LINEやってる?」
「はい。」
ふるふるで友だちの欄に出てきた互いの名前を確認して登録した。
その日はそれだけの接触だったのだけど。
そこからちょくちょく連絡が来るようになった。
次に会った時は、2人でだった。
__________
珍しくオリキャラ登場中です。
っていうか、この話書くなら、絶対にオトコが1人必要になってしまう訳で。
大木さん、名前はチョーテキトーに決めました。
そして総二郎、出番無し。
もしかして当分無いかも?(笑)
あっちもこっちも書きかけなのに、新しいの始めちゃいましたー!
わーーーー!

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あの日、この人からこの香りがしなかったら…
あたしは今日ここに居なかったかも知れない。
そう思いながら、温かな腕に頭を載せる。
そっと胸に指を滑らせると、するりとした感触。
女のあたしとは全然違う肌。
何度夜を越えても慣れない気持ちと躰。
隣の人は静かに寝息を立てている。
眠りにつけないホテルのベッドの上で、考えても仕方ないことばかり考えて、夜が明けるのを待っていた。
初めて会ったのは、会社の同僚が誘ってくれたBBQだった。
「週末、友達と河原でBBQするんだ。
車持ってる人達が道具も材料も用意してくれちゃうから、私達は当日身体一つで行くだけ!
どう? つくしちゃんも行かない?」
恥ずかしながら27になっても、週末を一緒に過ごす相手もいないあたしは、そんな同僚の誘いに乗って、とある土曜日、そのBBQに出掛けて行った。
良いお天気に恵まれたけれど風が吹いていてちょっと肌寒かったその日。
知らない人もいる中、楽しく飲んだり食べたりさせてもらっていたけれど、段々身体が冷えてくるのを感じてた。
そこに、温かなスープを作って手渡してくれたのが、その人だった。
「はい、これどうぞ。」
「あ、有り難うございます。」
何気なく渡された紙コップの中身が、ただのインスタントのスープだっていうのにとても美味しく感じられる。
そう思いつつ顔を上げると、にっこり笑った男の人が立っていた。
目尻の皺が優しげに見える。
「外で飲むと、なんてことない物でも美味しくなっちゃうでしょ。」
「ホントにそうですね。きっと部屋の中で飲むより美味しいです、これ。」
そうそうと言いながら笑ったその人の名前も知らない事に気付いた。
いや、さっき挨拶はしたんだけれども、沢山の人と挨拶を交わしているうちに、誰が誰だか分からなくなってしまったのだ。
その人がスープを配るためにこの場を離れて行った隙に、同僚にそっと聞いてみる。
「ねえねえ、愛ちゃん、あの、スープ配ってる人、何てお名前だっけ?」
「え? あ、あの人はね、大木さん。
何? つくしちゃん、ああいう年上、好みー?」
「ち、違うよ! スープ貰ったから、あとでお礼言いたいなって思って。」
「ああ、大木さんってBBQ奉行なんだよ。
さり気無く美味しいもの出してくれるの。」
「へえ…」
それとなく目でその人を追っていると、皆が好き勝手に話したり食べたりしてる中、今度は1人で炭を調節したり、網の上の物を焼いたりしている。
BBQ奉行ねえ…
そういう人、居てくれたら助かるけど。
1人で頑張っちゃって、疲れないのかな…?
「あの… 何かお手伝い、ありますか?」
忙しなく働いてるその人に声を掛けた。
トングを持ちながら、ちらっと網から顔を上げたその人は「ダイジョーブ、ダイジョーブ!」なんて言ってる。
どこかで聞いたことのあるような台詞。
「BBQ、あんまり経験ないんで、指示してもらったら何でもやりますけど。」
「えー、いいの?
じゃ、お言葉に甘えて、紅茶淹れてもらっちゃおうかな?
ってティーバッグなんだけど。」
そんな誰でもできそうな役目を仰せつかった。
網の上にかけてある薬缶にティーバッグをいくつか入れて待つだけ。
手持無沙汰で立っていたら、ひょいと手渡されたのはコンデンスミルクのチューブだった。
「紅茶、しっかりと色付いたら、それ全部入れちゃって。」
「え? これ、全部入れちゃうんですか?」
「そう、ミルクティーになるよー。
これ飲まないと、BBQ来たって感じになんないの、俺。」
BBQに温かい紅茶だって初めてだし、コンデンスミルクでつくるミルクティーだって初耳だ。
面白いことを言う人だと思った。
そして陽射しが弱まり、一層肌寒くなってきた時の温かく甘いミルクティーは皆に大好評だったのに驚いた。
二度目に会ったのは、同じメンバーで集まるという飲み会だった。
居酒屋、カラオケと流れて、たまたま近くに来た時に「先日は有り難うございました。」と挨拶したら、「紅茶の子だ。」と覚えていてくれた。
皆がカラオケを歌ってる部屋の中では声の通りも悪く、身振りも交えながら再度自己紹介をし合った。
「愛ちゃんの同僚の牧野つくしです。」
「大木 晴人です。」
でもお互いよく聞こえない。
そこで彼がポケットから携帯を取り出して指差すから、自分もバッグから携帯を探し出した。
「LINEやってる?」
「はい。」
ふるふるで友だちの欄に出てきた互いの名前を確認して登録した。
その日はそれだけの接触だったのだけど。
そこからちょくちょく連絡が来るようになった。
次に会った時は、2人でだった。
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珍しくオリキャラ登場中です。
っていうか、この話書くなら、絶対にオトコが1人必要になってしまう訳で。
大木さん、名前はチョーテキトーに決めました。
そして総二郎、出番無し。
もしかして当分無いかも?(笑)
あっちもこっちも書きかけなのに、新しいの始めちゃいましたー!
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