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花男にはまって幾星霜…
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心の器 19

あたし、最近涙もろい。
ふとした時にぽろりと涙が出る。
別にすごく悲しい事があったとか、辛い事があったとか、そういうんじゃなくて。
夜、アパートに帰って、1人で静かに部屋でぼーっとしてる時とか。
誰かと「また明日ね!」って別れた帰り道とか。
綺麗な夕焼けが目に飛び込んできた時に。
何故か泣いちゃってる事がある。

なんでかな?
あたし、ずっと泣いてなかったのにな。
喉の奥のところで、ぐっと堪えて、お腹の底の方に押し込んで。
涙が溢れないように、零れないようにって思ってきたのに。
この前、西門さんの胸を借りて泣いちゃって以来、涙腺が緩くなってる気がする。
あの時、思いっきり泣いてスッキリした自分がいた。
それが心地よかったのかもしれない。
それ迄、泣くなんて何かに負けるような気がして出来なかった。
だけど、ひとしきり泣くと、顔を上げた時には少し気持ちが軽くなっている気がする。
涙を流す度に心の重荷が一つ消えてくような感覚。
西門さんが言ってた「手に入れた荷物は全部持ってなくていい」っていうのはこの事なのかな?
あたしは今、要らない物を捨てている作業中みたいだ。

春になって、突然色々なものが目に飛び込んできた。
それまで心に響かなかった事が、急に意味を持ち始めた。
優しい風が吹いて様々な匂いを運んでくる。
お日様の暖かさにほっとして。
綺麗な色の花々に思わずにっこりして。

こんな事しばらく忘れてた。

桜子のお家の、あの桜のトンネルは夢みたいに美しかった。
桜吹雪がアプローチに降り注いで、全てが桜色に染まっていた。
いつ迄もあの下に立っていたかった。

西門さんが見せてくれた、海に落ちる無数の春雷。
空がひび割れる様に走る稲光と劈く雷鳴に心が震えた。
西門さんが雷が好きだというのが少し分かった気がした。

こうやって季節が巡っていることを改めて感じるようになった。

今日は久しぶりに何の予定もない休日。
皆が色々誘いの声を掛けてくれたけれど、1人でのんびりする時間が欲しくて、予定は入れなかった。

気ままに散歩でも行ってみよう。
新しく出来たカフェでランチしてみるのもいいかも。
それから春らしい新しい靴を買おうかな。

そう思いながらアパートを出て、川沿いの土手を散歩した。
晴れた土手には風が渡り、白詰草が可愛い絨毯のように一面に広がってた。
それを見ていて、子供の頃白詰草で花冠を作ったのを不意に思い出した。
ゆっくり歩きながら白詰草を摘んで、花冠を編んでみる。
昔取った杵柄。
手が作り方を覚えていて、スイスイと出来上がってく。

ふふふ。上手に出来ちゃった。

自分で冠る訳にもいかず、土手で遊んでいた小さな女の子にプレゼントしてみた。
突然の知らない人からの贈り物に、びっくりしながらも小さな手で受け取ってくれて、「ありがと。」って言ってくれた。
その子のお母さんからもお礼を言われて、恐縮しながらもほんわかした気持ちになる。
「有り難う」は本当に魔法の言葉だから。
こんな風にあたしを幸せにしてくれる。
しゃがみこんで白詰草にもう一度触れてみた。

大好きだったなぁ、このお花で遊ぶの。
そうだ、四つ葉のクローバーも一所懸命に探したっけ。
白詰草の生えているところを見つけたら、歩いていても、自転車に乗っていても、必ず止まって探したんだ。
本当にたまーに見つかるんだよね。

そう思ったら、つい四つ葉のクローバーを見つけたくなって、掌で葉を撫でながら、目を凝らした。
暫く探していたけれど、やっぱりそんな簡単に見つかる訳はなく。

また来ればいいよね。
四つ葉のクローバーは逃げないし。
次にここに来る楽しみが出来た。

そう思って1人で頷きながらその場を離れた。
行きたかったカフェに向かって歩いていたら、ふと気付いた。

あ、あたし、1人でちゃんと歩けてるかも。
1人の時間、持て余してないかも。

ずっと自分の中の空っぽを扱いあぐねて、どうしようって悩んでいた。
でも今日はそんなこと一度も考えないで、自分の思うままにのんびりと時間を過ごしてた。
些細なことだけど、すごく嬉しい。

あたし、ちょっとずつ前に進めてるのかなぁ。

「必要な物だけ持って、前へ進むんだよ。」

また西門さんの声がする。

うん。
必要な物を選んで。
それを持って前に進みたい。

自分の足取りがふっと軽くなるのを感じた。

シロツメクサpola


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