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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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遠くに聞こえる雷鳴は恋の知らせ 中編

「西麻布まで。」

運転手にそう告げて車を出させたには出させたのだが、隣の煩い女は文句タラタラ。

「ちょっと! あたし帰りたいって言ってるでしょ!
すみません、最寄りの地下鉄の駅で降ろして下さい。」
「ったく、何でだよ、つくしちゃん。
雨降ろうが車で移動すりゃ問題ねえだろ?
積もる話もある事だし、そう冷たくすんなよ。
帰るにしたって家まで送ってってやるから。
お前んち、前と同じとこか?」
「どこでもいいでしょ。西門さんに関係ない!
積もる話なんかもないから! もうほっといてよ。
あたしと西門さんは住む世界が違うんだから。
自分の身の丈にあった人とつるんでる方がいいよ、お互い。」

『住む世界が違う』という言葉に、牧野の拒絶の激しさに、司とのあの別れがそんな態度を取らせているのだと気付く。
暫し言葉を失っていると、運転手が「地下鉄の駅、この先すぐですけどどうします?」と聞いてきた。

「降りますっ!」
「送ってくから。そのまま走らせて下さい。
ほら、さっさとお前の家の場所を言え!」
「いいよ、地下鉄乗ればいいんだから。」
「いいから、早く言え。運転手さんが困るだろ?」

溜息ひとつのあとに、牧野がぼそりと今暮らしている町の名前を告げた。
それはちょっと寂れたイメージのある下町だった。

「ふうん、つくしちゃん、引っ越してたんだな。」
「家賃が安くて学校に通いやすいところって探したら自然にこうなっただけ。」
「学校?」
「公立大に受かったから。春から通ってる。」
「そうか・・・ 類とは今でも会ってるんだろ?」
「会ってるっていうか・・・
断っても断っても、花沢類が勝手に来ちゃうの。
あたしといたって花沢類の為になる事、何にもないのにね。」

類は牧野が好きなんだ。
多分、司と牧野が付き合ってた時からずっと。
好きな女に会いたいって思うのは普通の事だろ。
損得勘定で動いてる訳じゃない。
類が今までにそうして追い掛けた女は初恋の静と、この牧野だけだ。
こいつはそれに気付かないのか・・・?
それとも気付かない振りをしてるのか?

「俺と牧野は2年振りだな。」
「そう・・・だね。
あたしが転校してから会ってなかったもんね。
相変わらず美作さんとお祭りコンビしてるの?」

これ以上文句を言うのは無駄だと悟ったのか、やっと落ち着いた調子で返事を返してきた。
こっちを向いて微かに笑う。
薄暗いタクシーの車内で、その笑い顔には斑らに陰影がついて、それが妙に寂しげに見えた。

こいつはこんな表情をするやつだったっけ?

「からかう相手がいないと、俺とあきらも大人しいもんさ。
品行方正な大学生ってやつをやらせてもらってますよ。」
「どうだかねー?」

まあ、俺もあきらも、一度大学の敷地を出ればやりたい放題なんだけど。
キャンパスの中ではそれなりに真面目にやっていた。

「牧野は? 何やってんの?」
「あたしは学校とバイトの毎日だよ。
学費と生活費、全部自分で稼がなきゃだから、兎に角割のいいバイト探して駆けずり回ってる。
英徳のお坊っちゃま達とは違うの。」
「まーたそうやって線を引く。
俺達、ダチだろ?
ダチに出自や環境の違いは関係ねえだろ?」

俺の問い掛けに、サラサラの黒髪を掻き上げながらふふふと自嘲した。

「ホントにそう思う?」
「ホントにって・・・
俺達の気持ちに嘘があるってのか?」
「そうじゃない。そうじゃないよ。
皆があたしと仲良くしてくれて、それは本当に嬉しかった。
だけどあたしに皆の立場や背負ってるものの重みが分からないように、皆には何も持たない雑草の気持ちは分からない。
でもそれはしょうがないよね。
誰も悪くないんだもん。
ただあたしとあんた達は違う。それだけ。」

司との恋の障害を乗り越えられなかった事は、今も色濃く牧野に陰を落としていた。
張り巡らされた見えない壁は、こちらからのアプローチを拒絶する。
きっと度々牧野を訪ねている類にも、こんな調子なんだろうと想像した。

「俺が貧乏暇無しな庶民にならない限り、お前とはダチでいられない。
そういう事か?」
「そうは言ってない。」
「いや、言ってるも同然だろ。」
「違うもん!」

ムキになった牧野が俺を睨み付ける。

そうそう、そうこなくっちゃ。
儚く笑う牧野なんて見たくない。
お前はそうやって感情溢れさせて、生命力に満ちてる女だろ?

「違わねえ。俺を馬鹿にすんなよ。
俺はお前が貧乏だろうと、金持ちになろうと変わらねえよ。
会えばこうやって喋るし、態度だって変えるつもりない。
いつだって鉄パン処女ってからかってやるよ。
って、あれ? お前、鉄パン脱いだのか?」

下らない事を言って混ぜっ返した俺の言葉を受けて、途端に茹で蛸のように真っ赤になって怒り出した。

「もーーーっ!
何て事言うのよっ、このエロ門ーーーっ!」
「あ、その様子じゃ、まだなんだな。」
「ほっといてっ!」

ぷいと窓の方に顔を向けた牧野。
くすくす笑いを堪えながら、横目でそれを見ていたら、打って変わって沈んだ声で「あ・・・ 雨、降って来ちゃった・・・」と呟いた。
確かに窓ガラスには細かい雨粒が付き始めている。

「傘無いのか? まあ、俺も持ってねえけど。
部屋の前までクルマつけるから心配すんな。」
「・・・濡れるのが嫌なんじゃない。
あたし、雨は嫌いなの。」
「ふうん・・・」

何か嫌な思い出でもあんのか?
そう続けようとして、すんでの所でその台詞を飲み込んだ。
記憶を探ると、ひとつだけ思い当たる事があったから。

司と牧野が別れて、牧野がメイドをしていた道明寺家を出ていった夜。
あの夜が土砂降りの雨だった。
翌日、雨は上がったけれど、司も牧野も登校しなくて・・・
和也が「牧野から休学届けが出ている。」と俺達に教え、何があったのか知る為に俺達は司の元に駆け付けた。
司は酷く荒れていて、俺達の事も拒絶して、結局何も聞けなかったけれど、牧野との関係が突然終わったらしいという事は何となく分かった。
そこに司の母親の力が及んでいた事は後々分かってくるのだが、それ以来司は俺達すら寄せ付けず孤立していく。
昔のように暴力的になり、どんどん荒んだ司は常に付いて回るSP達でも抑えられなくなり、とうとう自分の身体をも酷く痛め付けてしまった。
そしてその治療に専念する・・・という名目の下、NYへと連れ去られる。
だけどあれは治療目的なんかじゃなかった。
そう、治療なんて日本でだっていくらだって出来たんだから。
日本でこれ以上問題を起こすのは困るから、自分の監視下に置こうという、司の母親の意思だったに違いない。
その時以来、俺達は司とは会っていない。
そして牧野が出した休学届けは、いつの間にか転学届けへとすり替わり、牧野も英徳から姿を消した。
類と桜子から、牧野はなんとかやっていると聞いたが、自分でも様子を見に行こうという気にはなかなかなれなかった。
俺は人と深く関わるのが面倒だと常々思って生きて来たから。
牧野が英徳から消える。それも又一期一会。
自分の目の前から去って行ったのなら、敢えて追う必要はない・・・と自分を納得させた。

でも・・・
今隣で車に揺られている牧野は、どう見ても2年前の傷が癒えているようには見えない。
傷付いた時に支える事が出来たのは、2人の恋を見守ってきた俺達だけだったのではないのか?
いや、類も桜子も、牧野の心に寄り添おうとはしたのだろうけれど。
俺に出来る事だってあったのかもしれないのに、面倒だからと知らない振りをしたんだ。

胸の中には今更ながら後悔の念が沸き起こる。
雨は嫌いだと言ったのに、窓の外ばかり見ている牧野の手が、膝の上でぎゅっと握り込まれていて、小さく震えているように見えたから・・・
俺は何のてらいも無く、その拳に手を伸ばした。


__________



トラウマを抱えたつくしと、それに気付いてつくしを思い遣る総二郎。
続きはまた明日(?)という事で。


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