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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
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雨待ちの日々 前編

200万HIT記念イベント・第三弾は「遠くに聞こえる雷鳴は恋の知らせ」のつくしsideのお話にしました。
「雷鳴」を書いた時に、続編を・・・とのお声が多かったのと、自分でもちょっと尻切れトンボ?と思っていたので。
今回はちょっとしっとりした2人です。


__________



「雨・・・?」
「ああ、いつの間にか降り出したみたいだな。」

窓に雨粒が当たる音。
雨樋を水が流れてく音。
時々外の道を車が走り抜け、水を跳ね上げていく音。
そんな音を温かな腕の中で聴くのは、なんて心が安らぐんだろう。
顔を寄せた滑らかな胸からはとくりとくりと規則正しい鼓動が響き、それがまたあたしを安心させる。
その音はまるで時計のようで。
西門さんの鼓動は2人でいられる時間の大切さを教えてくれる。

さっき迄2人で求め合って、想いを交わし合っていたから、身体はどこか重たくて、力が入らないんだけれど。
その後にやって来るこの静かな時間があたしは大好きだ。
西門さんに身も心も満たされて、ぴったり寄り添っているこの時。
他に何も要らない・・・なんて思ってしまう。
西門さんの指があたしの髪の毛をするりするりと梳いているのがちょびっと擽ったくて、でもあたしを幸せな気持ちにしてくれる。
うふふと小さく笑ったら、西門さんが「何だよ?」って優しい声で聞いてくる。
「何でもない。」って言いながら、もっとしっかりほっぺたをその胸にくっ付けたら、両腕できゅうって抱き締めてくれた。

人肌ってこんなにあったかくて、気持ちがいいものだったんだね。
好きな人と肌を重ねたいって思うのは自然な事だったんだって、貴方とこうなってあたしにもやっと分かった。

「寒くないか?」

少し冷えてしまった肩を掌で摩ってくれてる。

「ん、寒くないよ。」って答えながらも、その優しい手の温もりが嬉しい。

「もう雨が降っても震えないんだな。」
「・・・だって、西門さんがいてくれるから。」
「そっか・・・」

おでこにそっと押し当てられる唇。
離れていってもじんわりと余韻が残る。
またとくりとくりと鳴っている西門さんの鼓動を聞きながら、目を瞑った。



あたしは雨が嫌いだった。
雨の日に、酷い嘘を吐いたから。
大好きだった相手を、物凄く傷付ける嘘を吐いたから。
自分を守るために、自分の一番大事だった人を裏切ったから。
そんな日が土砂降りの雨だった。
傘も持たずにびしょ濡れになったあの日の雨は、あたしの涙を隠してくれたけど、身も心も芯から冷たくした。
あれ以来、あたしの心は冷え切ったままで。
そして雨が降る度に、自分のしてしまったことを思い出して、胸が千切れる様な痛みに苛まれながら震えていた。
自業自得。
よく分かってる。
あたしはその罰を受けなきゃいけない。
だから、その痛みに襲われても、身体がカタカタ震えても、自分で自分をぎゅっと抱き締めて、じっとじっと耐えるだけ。
雨が降り止んで、その痛みの波と身体の震えが引いていくのを待っていた。

雨が降りそうな夜に、西門さんに拾われた。
あたしが大好きだった人。
あたしが嘘を吐いた人。
あたしが深く深く傷付けて、そのせいであたしの前から消えていった人。
その人の小さい頃からの親友である西門さん。
出来れば会いたくなかった。
西門さんを一目見るだけで、自分の犯した罪をより鮮やかに思い出してしまったから。

あたしはあなたの親友を傷付けた女なのに。
優しくしてもらう価値なんかないのに。

互いの共通項である筈のいなくなってしまった人の事は一言も口にせず。
何事もなかったかのように話をして。
昔と同じようにあたしの事をからかって笑う。
もう会いたくなかった筈なのに、久し振りに会えて嬉しい気持ちがどこかから湧いてくる自分がいて、ちょっと戸惑った。

でもこれっきり。
もう会う事は無いだろう。

そう思ったから、とびきり明るく別れを告げた筈だったのに。
それ以来、西門さんはちょくちょくあたしの前に現れるようになった。

雨が降っている夜。
あたしが胸の痛みに苛まれ、独りで震えている時に、軽ーい調子の台詞を口にしながら、部屋を訪ねて来た。
いいって言っているのに、無理矢理食事に連れ出されたりもした。
あくまでも、あたしの意思を尊重してくれる花沢類とは違って。
西門さんは強引で、自分勝手で、あたしに有無を言わさないから。
いつの間にかそのペースに巻き込まれてしまう。
気が付くと、雨の夜は、よく2人であたしの部屋にいるようになっていた。
特に何をする訳でもない。
ただ、お茶を飲んだり、他愛もない事を喋ったり。
西門さんがあたしをからかって笑ったり、憤慨したあたしが怒っていたり。
そんな何気ない時間を、この狭い部屋で過ごすだけ。
雨が降っている夜は、独りきりで震えていたのに、西門さんに会えた夜は震えなくなった。
日付が変わる前に西門さんは帰っていく。
そして独りになって、暗い部屋で雨音に耳を澄ます。
自分のしでかした罪は消えることは無い筈なのに、張り裂けそうな胸の痛みは、いつしか鈍痛に変わっていた。
まるで凍り付いていた大地が、温かな春がやって来て、少しずつ融けて芽吹きの時期を迎えるように。
あたしの心は温められて、冷たかった雨は新芽を潤す恵みになった。


雨が降っていないのに初めて2人で部屋にいた時、遠くで雷が鳴っているのが聞こえてきたのは、何かの啓示だったのたろうか。

「あ、これ、雷の音?」

と呟いたら、

「ああ、そうかも。春雷ってやつか。
この後、一雨くるのかもな。」

って西門さんが答える。
思わず、

「雨、降ったらいいのに。」

と口から本音が零れ出た。

「何でだよ。お前、雨嫌いじゃねえか。」

そう、あたしは雨が嫌いだった。
あの日からずっと。
だけど今は・・・

「だって・・・ 雨が降ったら、西門さんはもう少しここにいてくれるでしょ。」

きっと縋る様な目で、西門さんを見てしまったと思う。
帰らないで欲しいって、ここにいてって思いで、西門さんを見詰めた。
ふっと緩んだ表情は、今迄に見たことが無いほど優しくて。
それを見るだけで、胸が軋む。

「雨なんか降らなくたって、俺はここにいる。
牧野が望むだけ。」

信じられない言葉が聞こえて来て、あたしは訳が分からなくなった。
息が苦しくて、言葉は喉の奥に詰まって出てこない。
目と鼻がじんとして、胸の奥もかあっと熱くなった。
テーブルの向こう側にいた西門さんが、気付いたらあたしのすぐ隣にいて。
広い胸に引き寄せられた。
とくりとくりと鳴る心臓の音。

こうして人の鼓動を感じるなんて、どれ位振りだろう・・・
そしてこの胸の中は、なんて温かいんだろう。

かちこちに緊張していた筈の身体から、徐々に力が抜けていく。

とくり、とくり、とくり。

西門さんの身体の中から届く音は、まるで魔法のように、あたしの心を落ち着かせてくれた。
そこに降り出した雨のさーさーさーという音が重なる。

その日、あたしは初めて西門さんと夜を越えた。


__________



え? あの夜はそんな事になってたの?
ねえ、そう思っちゃうよねえf^_^;
どうしてもね、後付けで話を書くと、色々難しいんですよね。←言い訳!
もうちょっとだけ、つくしのお話は続きます!

暖かいお見舞いのお言葉、有り難うございます。
骨ねえ。ギューンと突き抜けるような痛みは無くなりつつあるんですけど、ずどーんと重たい痛みが纏わりつきます。
多分今日、もう一度レントゲン撮って、骨の具合診てもらってきます。
早く元通りに動きたーい!


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