スレチガイ -side 総二郎-
プチイベント・『霜降月なのに熱い夜×4!!!!』、四夜目です。
今夜は管理人のお話。
-side つくし-に対する総二郎の気持ちです。
__________
俺はいつも誰かのスペアにしか成り得ないのか?とつい思ってしまう。
西門にとってはいなくなった兄貴の代わりで。
こいつの前では司の代わり。
『西門流』というものの中では、条件が揃ってる奴が『次期家元』を名乗らなきゃならない。
期待の星だった兄貴が逃げ出したから、仕方なく次男坊の俺のところにお鉢が回って来た。
俺自身が必要なんじゃない。
単なる身代わりだ。
そしてこの女、牧野つくし。
こいつにとって俺は・・・
元々は『恋人の親友』で。
司が牧野の記憶を無くしてからは、『恋人だった男の親友』になり。
そして今は・・・一体何なんだろう?
『恋人だった男の代わりの恋人役』?
俺を好きだと言うけれど。
それは司の記憶が失われたからだ。
いつか司の記憶が戻ったら、こいつはきっと俺から離れていっちまう。
司だってこいつを攫っていくに決まってる。
だってあんなに強く惹かれ合って、信じ合ってた2人だ。
それを無かった事になんか出来っこない。
そしてその恋をずっと側で見守ってたのが自分なんだから。
2人の結び付きを嫌ってほどに知ってるんだ。
牧野を抱くと、必死で俺に縋ってくる。
そして何度も何度も俺の名を呼ぶ。
司が花開かせることがなかった白くて華奢な身体。
この世で俺しか知らないこの身体を組み敷いて、思いの丈をぶつけていても、本当は俺じゃなくて、司にこうされたかったんじゃないかという考えが過ぎる。
愛し愛された司に捧げたかった純潔を、司がいなくなったから俺に与えた。
名前を呼びたい相手がいないから、代わりに俺の名を呼ぶ。
本当に口にしたいのは司の名前なんじゃないのか?
あの日、あの時まで呼んでいたように。
愛しさをこめて「道明寺!」と。
俺は怖いんだ。
牧野が本当に求めている相手の名を口にしたらどうしようかと、いつもどこかで怯えている。
もし俺に抱かれているのに、司の名を呼んだとしたら・・・
俺はその場でこいつを手にかけてしまうかも知れない。
そんな狂った思いに、俺の胸の内は支配されている。
秋も深まったある日、牧野を郊外に連れ出した。
2人で表を出歩いて注目を浴びることを嫌うこいつは、俺と会う時はいつも人目を気にせずにすむ所ばかり。
茶の稽古をつけると言えば嫌とは言わないから、それを口実に、広い庭の景色も楽しめる温泉宿に連れて来た。
極々限られた者しか利用出来ない、会員制のこの宿は、静かで、落ち着いた雰囲気が漂う。
誰にも邪魔されずに2人で過ごせる格好の場所だ。
牧野の為に俺が選んだ着物を着せて、帯を締め、最後にその髪に簪を挿す。
人前では決して晒さない項が露わになるのは、俺の前だけ。
そこには淡い色になり消え掛かった俺の口付けの痕が見える。
宿の部屋に茶室がある訳ではないから、和室で茶箱を使った点前を稽古した。
普段使わない道具や、小ぶりの茶碗や茶器にいちいち目を輝かせて見入っている牧野を見るのはこっちの気持ちを和ませる。
だけど、ここに連れてくる為の口実だった茶の稽古が終わってしまったら、一体何をしたらいいのか、何を話したらいいのか分からなくなってしまい、俺はただただ物珍しげに部屋の中を見て回っている牧野の姿を目で追いかけるばかりだった。
大きな窓の向こうには、様々な種類の草木が植えられた広い庭が拡がっている。
まだ少し紅葉には早くて、でも花の季節は過ぎていて、色味に乏しいその庭の中で、ススキの穂が陽の光に照らされて揺れているのが目を引く。
それを見詰めている牧野の背後にそっと近付いた。
外の景色よりも、こっちを見ろよ。
俺はここにいるんだ。
折れそうに細くて、後れ毛が艶かしい項に唇を押し当てると、それに驚いた牧野が「ひゃっ!」なんて間抜けな声をあげる。
振り返って抗議の言葉を投げつけてくるのは、いつものお約束ってヤツだ。
だけど面と向かって軽口を叩きあっていると、次第に胸の奥がざわざわと波立つ。
視線を絡ませると、何かが呼び覚まされる。
そう、それはいつも腹の底に沈めている筈の不安の塊。
黙って堪えておけばいいものを。
俺の口は勝手に喋り出す。
「司が帰って来るってよ。」
俺はこいつを試してるんだ。
どれだけ司に心を残しているのか推し量るために、こんな事を言ってしまう。
司の名を出して、こいつの瞳は揺れるのか?
驚きで目を丸く見開くのか、嬉しさで頬を微かに赤らめるのか、それとも俺への気まずさで顔を歪めるのか・・・
些細な変化も見逃さないように、じっと見詰めてみたけれど。
牧野の顔に浮かんだのは、「何だってそんな事を言うのか?」という少しの抗議が混じった、怪訝な表情だった。
俺と違って腹芸なんか出来やしないこいつのそんな顔に、こちらこそキツネにつままれたような心持ちになる。
「ふうん・・・」
詰まらなさそうに呟く声。
いや、そんな筈ないだろ?
無関心であれる筈がない。
まだ陽は高いというのに、嫉妬と不安で目の前が暗くなっていく錯覚に陥った。
どうしようもなくなって、牧野に手を伸ばす。
今俺に出来る事。
俺にしか出来ない事。
司に出来なかった事。
それが牧野を抱く事だ。
俺しか知らない牧野を見て、触れて、感じて、その声で頭の中をいっぱいにする。
大いなる征服感とほんの一欠片の優越感に味付けされた快感を、身体全部で味わう。
「西門さん・・・ 西門さんっ・・・」
繰り返し名を呼ばれる度にぞくりとしたものが身体を突き抜けてく。
俺の名を呼んでいる事に安堵して。
その一方で、俺の名前以外決して呼んでくれるなと、切に願う。
俺に責め立てられ、涙を零しつつ身体を震わせてる。
なあ、その涙は何の涙だ?
司以外の男に抱かれている哀しみのせいか?
司以外の男に感じている自分を歯痒く思っているからなのか?
舌先で零れ落ちた涙を掬い取る。
塩辛い水の粒の筈なのに、それはひどく苦く感じられて。
毒を飲んだような気持ちに襲われた。
身体はどうしようもなく熱を帯びているのに、思考は冷え冷えと凍り付いていくような毒の粒。
持て余してるやるせない感情は、牧野の身体を激しく貫いて、熱と一緒に吐き出させる以外の逃がし方がないから。
今日もまた牧野の限界が来るまで抱きつぶしてしまった。
くたりとして、ものも言わなくなった牧野を腕に抱き、歯止めが利かなかった自分を後悔しても後の祭りだ。
顔を寄せた首筋は肌の甘い香りと、俺がかかせた汗の匂いがした。
そっと髪を掻き分けて、いつも口付ける項を露わにする。
最初はそっと唇で触れるだけ。
それから、紅い痕を付けるために強く吸い付くと、口の中には微かに血の味が広がった。
俺だけの牧野。
俺のものだという証。
今だけかもしれない。
こんなもの付けたって、心がここにないなら意味は無いのかもしれない。
それでも付けずにいられない。
なあ、俺達は、いつまでこうしていられるんだろう?
いつまでお前は、俺の腕の中で眠ってくれる?
終わりが来るまでどれくらいの時間が残っているんだろう?
先の見えない未来。
俺も、そして牧野も知らない、残された時間。
離したくないのに・・・
こいつがいなきゃ俺は駄目なのに・・・
互いの気持ちが重なる事はない。
身体を繋げた時だけ、ほんの一瞬交差する。
だけど掴み切れずにするりと手の内から逃げていく。
この温もりを手離すことを思ったら、胸に刃が突き立てられたかのような痛みが走るから。
それをやり過ごす為に、目をぎゅっと閉じて、奥歯を噛み締めた。
そっと身体の線を掌でなぞる。
背中に頬を寄せて、肌の感触と体温を感じていると、規則正しく胸が上下しているのが伝わってきた。
とくりとくりとくり。
眠りについた牧野の心臓は、乱れる事なく淡々と脈打ってる。
静かな宿の部屋で、俺の耳に届く音はこの優しくも哀しいカウントダウンの響きだけで。
それを聴きながらただひたすらに、この時間がゆっくりと流れていくことを願ってた。
__________
切ない想いと願いを抱えている総二郎・・・でした。
2人はどうすれば、すれ違わないで、手を取り合えるのか。
アンサー編が必要ですね、これは(^_^;)
考えてみるのでちょっとお時間下さい!
さてさて、プチイベント・『霜降月なのに熱い夜×4!!!!』と題しまして、チャット会+SS4話UPして参りましたが、お楽しみ頂けたでしょうか?
チャット会にお集まり頂いた皆様、そしてお話を寄せて下さったりく様のお蔭で、管理人にとっては楽しいイベントになりました。
どうも有り難うございました!

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
今夜は管理人のお話。
-side つくし-に対する総二郎の気持ちです。
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俺はいつも誰かのスペアにしか成り得ないのか?とつい思ってしまう。
西門にとってはいなくなった兄貴の代わりで。
こいつの前では司の代わり。
『西門流』というものの中では、条件が揃ってる奴が『次期家元』を名乗らなきゃならない。
期待の星だった兄貴が逃げ出したから、仕方なく次男坊の俺のところにお鉢が回って来た。
俺自身が必要なんじゃない。
単なる身代わりだ。
そしてこの女、牧野つくし。
こいつにとって俺は・・・
元々は『恋人の親友』で。
司が牧野の記憶を無くしてからは、『恋人だった男の親友』になり。
そして今は・・・一体何なんだろう?
『恋人だった男の代わりの恋人役』?
俺を好きだと言うけれど。
それは司の記憶が失われたからだ。
いつか司の記憶が戻ったら、こいつはきっと俺から離れていっちまう。
司だってこいつを攫っていくに決まってる。
だってあんなに強く惹かれ合って、信じ合ってた2人だ。
それを無かった事になんか出来っこない。
そしてその恋をずっと側で見守ってたのが自分なんだから。
2人の結び付きを嫌ってほどに知ってるんだ。
牧野を抱くと、必死で俺に縋ってくる。
そして何度も何度も俺の名を呼ぶ。
司が花開かせることがなかった白くて華奢な身体。
この世で俺しか知らないこの身体を組み敷いて、思いの丈をぶつけていても、本当は俺じゃなくて、司にこうされたかったんじゃないかという考えが過ぎる。
愛し愛された司に捧げたかった純潔を、司がいなくなったから俺に与えた。
名前を呼びたい相手がいないから、代わりに俺の名を呼ぶ。
本当に口にしたいのは司の名前なんじゃないのか?
あの日、あの時まで呼んでいたように。
愛しさをこめて「道明寺!」と。
俺は怖いんだ。
牧野が本当に求めている相手の名を口にしたらどうしようかと、いつもどこかで怯えている。
もし俺に抱かれているのに、司の名を呼んだとしたら・・・
俺はその場でこいつを手にかけてしまうかも知れない。
そんな狂った思いに、俺の胸の内は支配されている。
秋も深まったある日、牧野を郊外に連れ出した。
2人で表を出歩いて注目を浴びることを嫌うこいつは、俺と会う時はいつも人目を気にせずにすむ所ばかり。
茶の稽古をつけると言えば嫌とは言わないから、それを口実に、広い庭の景色も楽しめる温泉宿に連れて来た。
極々限られた者しか利用出来ない、会員制のこの宿は、静かで、落ち着いた雰囲気が漂う。
誰にも邪魔されずに2人で過ごせる格好の場所だ。
牧野の為に俺が選んだ着物を着せて、帯を締め、最後にその髪に簪を挿す。
人前では決して晒さない項が露わになるのは、俺の前だけ。
そこには淡い色になり消え掛かった俺の口付けの痕が見える。
宿の部屋に茶室がある訳ではないから、和室で茶箱を使った点前を稽古した。
普段使わない道具や、小ぶりの茶碗や茶器にいちいち目を輝かせて見入っている牧野を見るのはこっちの気持ちを和ませる。
だけど、ここに連れてくる為の口実だった茶の稽古が終わってしまったら、一体何をしたらいいのか、何を話したらいいのか分からなくなってしまい、俺はただただ物珍しげに部屋の中を見て回っている牧野の姿を目で追いかけるばかりだった。
大きな窓の向こうには、様々な種類の草木が植えられた広い庭が拡がっている。
まだ少し紅葉には早くて、でも花の季節は過ぎていて、色味に乏しいその庭の中で、ススキの穂が陽の光に照らされて揺れているのが目を引く。
それを見詰めている牧野の背後にそっと近付いた。
外の景色よりも、こっちを見ろよ。
俺はここにいるんだ。
折れそうに細くて、後れ毛が艶かしい項に唇を押し当てると、それに驚いた牧野が「ひゃっ!」なんて間抜けな声をあげる。
振り返って抗議の言葉を投げつけてくるのは、いつものお約束ってヤツだ。
だけど面と向かって軽口を叩きあっていると、次第に胸の奥がざわざわと波立つ。
視線を絡ませると、何かが呼び覚まされる。
そう、それはいつも腹の底に沈めている筈の不安の塊。
黙って堪えておけばいいものを。
俺の口は勝手に喋り出す。
「司が帰って来るってよ。」
俺はこいつを試してるんだ。
どれだけ司に心を残しているのか推し量るために、こんな事を言ってしまう。
司の名を出して、こいつの瞳は揺れるのか?
驚きで目を丸く見開くのか、嬉しさで頬を微かに赤らめるのか、それとも俺への気まずさで顔を歪めるのか・・・
些細な変化も見逃さないように、じっと見詰めてみたけれど。
牧野の顔に浮かんだのは、「何だってそんな事を言うのか?」という少しの抗議が混じった、怪訝な表情だった。
俺と違って腹芸なんか出来やしないこいつのそんな顔に、こちらこそキツネにつままれたような心持ちになる。
「ふうん・・・」
詰まらなさそうに呟く声。
いや、そんな筈ないだろ?
無関心であれる筈がない。
まだ陽は高いというのに、嫉妬と不安で目の前が暗くなっていく錯覚に陥った。
どうしようもなくなって、牧野に手を伸ばす。
今俺に出来る事。
俺にしか出来ない事。
司に出来なかった事。
それが牧野を抱く事だ。
俺しか知らない牧野を見て、触れて、感じて、その声で頭の中をいっぱいにする。
大いなる征服感とほんの一欠片の優越感に味付けされた快感を、身体全部で味わう。
「西門さん・・・ 西門さんっ・・・」
繰り返し名を呼ばれる度にぞくりとしたものが身体を突き抜けてく。
俺の名を呼んでいる事に安堵して。
その一方で、俺の名前以外決して呼んでくれるなと、切に願う。
俺に責め立てられ、涙を零しつつ身体を震わせてる。
なあ、その涙は何の涙だ?
司以外の男に抱かれている哀しみのせいか?
司以外の男に感じている自分を歯痒く思っているからなのか?
舌先で零れ落ちた涙を掬い取る。
塩辛い水の粒の筈なのに、それはひどく苦く感じられて。
毒を飲んだような気持ちに襲われた。
身体はどうしようもなく熱を帯びているのに、思考は冷え冷えと凍り付いていくような毒の粒。
持て余してるやるせない感情は、牧野の身体を激しく貫いて、熱と一緒に吐き出させる以外の逃がし方がないから。
今日もまた牧野の限界が来るまで抱きつぶしてしまった。
くたりとして、ものも言わなくなった牧野を腕に抱き、歯止めが利かなかった自分を後悔しても後の祭りだ。
顔を寄せた首筋は肌の甘い香りと、俺がかかせた汗の匂いがした。
そっと髪を掻き分けて、いつも口付ける項を露わにする。
最初はそっと唇で触れるだけ。
それから、紅い痕を付けるために強く吸い付くと、口の中には微かに血の味が広がった。
俺だけの牧野。
俺のものだという証。
今だけかもしれない。
こんなもの付けたって、心がここにないなら意味は無いのかもしれない。
それでも付けずにいられない。
なあ、俺達は、いつまでこうしていられるんだろう?
いつまでお前は、俺の腕の中で眠ってくれる?
終わりが来るまでどれくらいの時間が残っているんだろう?
先の見えない未来。
俺も、そして牧野も知らない、残された時間。
離したくないのに・・・
こいつがいなきゃ俺は駄目なのに・・・
互いの気持ちが重なる事はない。
身体を繋げた時だけ、ほんの一瞬交差する。
だけど掴み切れずにするりと手の内から逃げていく。
この温もりを手離すことを思ったら、胸に刃が突き立てられたかのような痛みが走るから。
それをやり過ごす為に、目をぎゅっと閉じて、奥歯を噛み締めた。
そっと身体の線を掌でなぞる。
背中に頬を寄せて、肌の感触と体温を感じていると、規則正しく胸が上下しているのが伝わってきた。
とくりとくりとくり。
眠りについた牧野の心臓は、乱れる事なく淡々と脈打ってる。
静かな宿の部屋で、俺の耳に届く音はこの優しくも哀しいカウントダウンの響きだけで。
それを聴きながらただひたすらに、この時間がゆっくりと流れていくことを願ってた。
__________
切ない想いと願いを抱えている総二郎・・・でした。
2人はどうすれば、すれ違わないで、手を取り合えるのか。
アンサー編が必要ですね、これは(^_^;)
考えてみるのでちょっとお時間下さい!
さてさて、プチイベント・『霜降月なのに熱い夜×4!!!!』と題しまして、チャット会+SS4話UPして参りましたが、お楽しみ頂けたでしょうか?
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