believe -The answer of スレチガイ-
総二郎生誕祭 2016!開催中です(^^)
3つ目のお話は、先日のプチイベントで書いた、「スレチガイ」の切ない2人のアンサー編です。
__________
目が覚めて、隣にその温もりを感じると、まだここにいてくれた事にほっとする。
けれど、いたはずの姿が見えないと、来るべき時が来てしまったのかと、絶望の淵に立たされる。
それがただ単に先に目覚めてベッドを抜け出しているだけだったとしても、姿を目にするまで、息をする事すらままならなくなり、生きた心地がしないのだ。
今朝も2人で夜を過ごしたホテルの部屋で、気が付けば一人きりだった。
言い様のない不安に、胸が潰れそうになりながら、身体を起こしてぐるりを見渡す。
あいつの姿は見えない。
部屋の中もしんと静まり返っている。
心臓がどくりどくりと嫌な感じに鳴り出して、その名を叫び出したい衝動に襲われた時、かちゃりと音を立ててひとつのドアが開いた。
濡れ髪で、バスローブ姿の牧野が現れる。
一気に緊張が解け、どっと身体中に血が巡り出す。
牧野には気付かれないようにふう・・・と息を吐き出した。
「あ、西門さん、起こしちゃった?」
手にしたタオルで髪を拭いながら、化粧を施していないあどけない顔でふわりと笑ってみせる。
その無防備な様子をまともに見られなくてつい目を細めた。
「牧野・・・」
「もう結構いい時間だよ。
お腹減ったんじゃない?
ルームサービス、お願いしようか?」
メシなんかどうでもいい。
俺に必要なのはここにお前がいてくれるという実感だ。
ベッドの端に腰を下ろして髪を手櫛で梳いている牧野を、背中から思いきり抱き竦めた。
「なっ、何? どうしたの?」
「・・・どうもしねえ。」
派手に音を鳴らしていた心臓がいつものペースを取り戻す迄、とても身体を離せそうにない。
どこにも行くな、行かないでくれと、口に出来たらいいのに。
俺に止める権利は無いから。
こいつが独りで路頭に迷い、ぽつんと立ち竦んでいた所に、勝手に近付いただけなんだ。
だからこいつが自分の歩むべき道をまた見定めた時、その背中を見送るしか出来ない。
俺達の歩いていく道は別々の道。
今だけ交わってる交差点にいるんだろう。
離したくなくて。
抱き締めてる腕に力が篭る。
指先が、その柔らかな肌に跡を残してしまいそうに食い込んでるのに気付いたから、代わりに牧野が着ているバスローブの端を握り込んだ。
「・・・ねえ、どうしても欲しいものがあるって言ったら、ひとつだけあたしにくれる?」
唐突に話し出した牧野の言葉の意味がよく分からない。
いつも欲しいものなんて何もないって言っているこいつが、唯一欲しいと思うもの。
聞くのが怖い。
自由をくれと言わないで欲しい。
俺の元を離れて別の男の所に行く自由を。
「何だ? 何だって買ってやるよ。
服でも、靴でも、バッグでも、宝石でも。」
分かってる、こいつの欲しいものがそんなんじゃ無いこと位。
「そんなの要らないよ。
いいって言ってるのにもういっぱい貰っちゃったし。
そうじゃなくて・・・」
司を・・・
司の記憶を返してくれと言わないでくれ。
お前がどんなに司を想っていても、俺にしてやれる事は何も無いんだ。
ただ時が来たら、この腕を解放して、見送るだけ。
だけどそれは想像するだけで身を切られるような痛みが走る。
「・・・そうじゃなくて?」
また不安に押しつぶされそうになった心臓が暴れ始めた。
聞きたくない、聞きたくない!
嫌だ、嫌だ、嫌なんだ、お前の口から決定的な言葉が紡ぎ出されるのを聞かされるのは。
心臓が口から飛び出して来そうなのを、必死に押し留めようと唇をきつく結ぶ。
すると牧野が俺の腕の中で無理矢理身体を捻って、こちらに顔を向けた。
無垢な輝きを放つ黒い瞳が俺を見上げてる。
その煌めきに見入ってしまい、目が外らせなくなった。
真近で目と目を見つめ合う。
「あたしを・・・
あたしを信じて欲しい。」
その一言に、時が止まった気がした。
金縛りにあったかのように身体の動きが止まる。
「あたしは何処にも行かないよ。
西門さんがもういらないっていう時までずっと側にいる。
だから・・・
だからさ、そんな哀しそうな目、しないで?
あたしは、あたしの全部で西門さんの事想ってるよ。
あたしの気持ち、信じて。」
何か言おうとしても、口から溢れてくるのは短い呼気ばかりで、声にならない。
そのまま牧野を見つめ続けていたら・・・
ゆっくり瞼が閉じられて、こちらに顔が近付いてきて。
俺の唇にそっとそっと柔らかな牧野の唇が押し当てられた。
胸がキュッと絞られたような感覚が舞い降りて、その後切ない痛みが身体の隅々まで広がっていく。
この感覚は一体何なんだ・・・
言葉に出来ないから、もう一度牧野を自分の胸に抱き締め直した。
俺は牧野の言葉を信じていなかった。
俺が好きだと言ってくれても、信じ切れなかった。
心の何処かで司を想っているのだろうと。
いつか司の元に戻ってしまうのだろうとずっと怯えていた。
いつも、いつでも、怖かった。
でも・・・
「・・・信じてもいいのか?」
やっと紡ぎ出した声は、少し震えていたかもしれない。
「信じてよ・・・
信じて欲しい。
あたしはずっと、そう願ってたんだよ。」
牧野を閉じ込めている俺の腕に、そっと温かな掌が添えられた。
確かな体温を伝えてくるその手の感触に、頑なだった俺の心が解されていく。
「じゃあ、俺がお前を信じたら、お前も俺にひとつだけくれるか?」
そう。俺の願いもひとつだけ。
ずっと、ずっと、そのひとつだけを求めてた。
「あたしが西門さんにあげられるものなんかあるの?」
「ああ・・・
俺に『牧野つくし』をくれ。」
そう言ったらくすりと笑い声が聞こえてきた。
いつものこいつなら、こんな事言ったらジタバタしそうなものなのに。
何で笑うんだよ?
「そんなの。
もうとっくにあたしは西門さんのものだよ。
知らないの?」
俺の腕の中にいてくれても、身体を重ねていても、その心は掴めないと思い込んでいたんだ。
くすくす笑い続けてる牧野の項に口付けたら、吃驚したのか、ぴくりと肩が跳ねて、笑い声が止まった。
「このカラダも俺のもの?」
「バカッ! エロ門っ!」
「心も全部俺のもの?」
「・・・そーだよ!
あたしの中には西門さんしかいないんだもん。
言っとくけどね、あたしは惚れたら一途なの!
13股の西門さんとは違うんだから!」
まだ夢見心地で、頭がぼうっとして。
俄かには信じられない気分だけど。
今初めて、本当に牧野を何の蟠りもなく抱き締められている気がする。
「俺も惚れたら一途なオトコだぜ。
一生掛けて見せつけてやるよ。」
一気にベッドの上に押し倒して。
目をパチクリさせている牧野を見下ろす。
そう、お前が信じてくれって言うなら。
俺はお前を信じるよ。
だからお前も・・・
そんな願いを込めて、長い長いキスを落とした。
__________
総二郎をHAPPYに!を合言葉に書かせて頂きました!

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目が覚めて、隣にその温もりを感じると、まだここにいてくれた事にほっとする。
けれど、いたはずの姿が見えないと、来るべき時が来てしまったのかと、絶望の淵に立たされる。
それがただ単に先に目覚めてベッドを抜け出しているだけだったとしても、姿を目にするまで、息をする事すらままならなくなり、生きた心地がしないのだ。
今朝も2人で夜を過ごしたホテルの部屋で、気が付けば一人きりだった。
言い様のない不安に、胸が潰れそうになりながら、身体を起こしてぐるりを見渡す。
あいつの姿は見えない。
部屋の中もしんと静まり返っている。
心臓がどくりどくりと嫌な感じに鳴り出して、その名を叫び出したい衝動に襲われた時、かちゃりと音を立ててひとつのドアが開いた。
濡れ髪で、バスローブ姿の牧野が現れる。
一気に緊張が解け、どっと身体中に血が巡り出す。
牧野には気付かれないようにふう・・・と息を吐き出した。
「あ、西門さん、起こしちゃった?」
手にしたタオルで髪を拭いながら、化粧を施していないあどけない顔でふわりと笑ってみせる。
その無防備な様子をまともに見られなくてつい目を細めた。
「牧野・・・」
「もう結構いい時間だよ。
お腹減ったんじゃない?
ルームサービス、お願いしようか?」
メシなんかどうでもいい。
俺に必要なのはここにお前がいてくれるという実感だ。
ベッドの端に腰を下ろして髪を手櫛で梳いている牧野を、背中から思いきり抱き竦めた。
「なっ、何? どうしたの?」
「・・・どうもしねえ。」
派手に音を鳴らしていた心臓がいつものペースを取り戻す迄、とても身体を離せそうにない。
どこにも行くな、行かないでくれと、口に出来たらいいのに。
俺に止める権利は無いから。
こいつが独りで路頭に迷い、ぽつんと立ち竦んでいた所に、勝手に近付いただけなんだ。
だからこいつが自分の歩むべき道をまた見定めた時、その背中を見送るしか出来ない。
俺達の歩いていく道は別々の道。
今だけ交わってる交差点にいるんだろう。
離したくなくて。
抱き締めてる腕に力が篭る。
指先が、その柔らかな肌に跡を残してしまいそうに食い込んでるのに気付いたから、代わりに牧野が着ているバスローブの端を握り込んだ。
「・・・ねえ、どうしても欲しいものがあるって言ったら、ひとつだけあたしにくれる?」
唐突に話し出した牧野の言葉の意味がよく分からない。
いつも欲しいものなんて何もないって言っているこいつが、唯一欲しいと思うもの。
聞くのが怖い。
自由をくれと言わないで欲しい。
俺の元を離れて別の男の所に行く自由を。
「何だ? 何だって買ってやるよ。
服でも、靴でも、バッグでも、宝石でも。」
分かってる、こいつの欲しいものがそんなんじゃ無いこと位。
「そんなの要らないよ。
いいって言ってるのにもういっぱい貰っちゃったし。
そうじゃなくて・・・」
司を・・・
司の記憶を返してくれと言わないでくれ。
お前がどんなに司を想っていても、俺にしてやれる事は何も無いんだ。
ただ時が来たら、この腕を解放して、見送るだけ。
だけどそれは想像するだけで身を切られるような痛みが走る。
「・・・そうじゃなくて?」
また不安に押しつぶされそうになった心臓が暴れ始めた。
聞きたくない、聞きたくない!
嫌だ、嫌だ、嫌なんだ、お前の口から決定的な言葉が紡ぎ出されるのを聞かされるのは。
心臓が口から飛び出して来そうなのを、必死に押し留めようと唇をきつく結ぶ。
すると牧野が俺の腕の中で無理矢理身体を捻って、こちらに顔を向けた。
無垢な輝きを放つ黒い瞳が俺を見上げてる。
その煌めきに見入ってしまい、目が外らせなくなった。
真近で目と目を見つめ合う。
「あたしを・・・
あたしを信じて欲しい。」
その一言に、時が止まった気がした。
金縛りにあったかのように身体の動きが止まる。
「あたしは何処にも行かないよ。
西門さんがもういらないっていう時までずっと側にいる。
だから・・・
だからさ、そんな哀しそうな目、しないで?
あたしは、あたしの全部で西門さんの事想ってるよ。
あたしの気持ち、信じて。」
何か言おうとしても、口から溢れてくるのは短い呼気ばかりで、声にならない。
そのまま牧野を見つめ続けていたら・・・
ゆっくり瞼が閉じられて、こちらに顔が近付いてきて。
俺の唇にそっとそっと柔らかな牧野の唇が押し当てられた。
胸がキュッと絞られたような感覚が舞い降りて、その後切ない痛みが身体の隅々まで広がっていく。
この感覚は一体何なんだ・・・
言葉に出来ないから、もう一度牧野を自分の胸に抱き締め直した。
俺は牧野の言葉を信じていなかった。
俺が好きだと言ってくれても、信じ切れなかった。
心の何処かで司を想っているのだろうと。
いつか司の元に戻ってしまうのだろうとずっと怯えていた。
いつも、いつでも、怖かった。
でも・・・
「・・・信じてもいいのか?」
やっと紡ぎ出した声は、少し震えていたかもしれない。
「信じてよ・・・
信じて欲しい。
あたしはずっと、そう願ってたんだよ。」
牧野を閉じ込めている俺の腕に、そっと温かな掌が添えられた。
確かな体温を伝えてくるその手の感触に、頑なだった俺の心が解されていく。
「じゃあ、俺がお前を信じたら、お前も俺にひとつだけくれるか?」
そう。俺の願いもひとつだけ。
ずっと、ずっと、そのひとつだけを求めてた。
「あたしが西門さんにあげられるものなんかあるの?」
「ああ・・・
俺に『牧野つくし』をくれ。」
そう言ったらくすりと笑い声が聞こえてきた。
いつものこいつなら、こんな事言ったらジタバタしそうなものなのに。
何で笑うんだよ?
「そんなの。
もうとっくにあたしは西門さんのものだよ。
知らないの?」
俺の腕の中にいてくれても、身体を重ねていても、その心は掴めないと思い込んでいたんだ。
くすくす笑い続けてる牧野の項に口付けたら、吃驚したのか、ぴくりと肩が跳ねて、笑い声が止まった。
「このカラダも俺のもの?」
「バカッ! エロ門っ!」
「心も全部俺のもの?」
「・・・そーだよ!
あたしの中には西門さんしかいないんだもん。
言っとくけどね、あたしは惚れたら一途なの!
13股の西門さんとは違うんだから!」
まだ夢見心地で、頭がぼうっとして。
俄かには信じられない気分だけど。
今初めて、本当に牧野を何の蟠りもなく抱き締められている気がする。
「俺も惚れたら一途なオトコだぜ。
一生掛けて見せつけてやるよ。」
一気にベッドの上に押し倒して。
目をパチクリさせている牧野を見下ろす。
そう、お前が信じてくれって言うなら。
俺はお前を信じるよ。
だからお前も・・・
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