Is it hot or cold?
クリスマスSSはバカップルの登場です♪
☆‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
「西門さーん、助けてー!」
クリスマス・イヴの夕方。
いつでも何でも自分で解決しようとするあいつが、珍しく俺に助けを求める電話を掛けて来た。
よっぽどの事があったんじゃないかと、ざわざわと胸の内が騒ぐ。
「どうした? 何があった?」
「鍵失くしちゃったー。部屋に入れないー!」
はあ、何だ、そんな事か。
もっと悪い事態を想像しただろうが。
「お前、今どこ?」
「え? あたしの部屋のドアの前だよ。」
「寒くない様にどっか店でも入ってろよ。
俺、そっち行くのに、どんなに急いでも1時間はかかるから。」
元々今夜は牧野の所に行くつもりだったが、もっと遅くなる筈だった。
突然の予定変更。
鋭意努力はするが、俺だって立場ってもんがある。
女からの電話一本で全てを擲って、一目散に駆け付ける・・・訳にはいかない。
「えー、だって、買い物してきた食材がいっぱいあって・・・
これ持ってファミレスとか行ったら、お魚やお肉が温まっちゃうもん。
ムリー。」
一昨日は冬至だった。
今は一年で一番日が短い時期な訳で。
日が暮れた今は寒さだって身体に堪える筈。
なのに自分の身体より、魚や肉の心配をしてる。
牧野らしいっちゃらしいけど。
全くバカじゃねえ、この女?
「1時間くらいどうって事ねえだろ?
気になるならファミレスで氷でも分けてもらって、それで冷やしとけよ!
お前の身体の方が、肉や魚より大事だろ?」
「あ、あたし、これぐらい平気ー。
ちゃんとコート着てるし、スヌード巻いてるし!」
この頑固なビンボー女は寒さにも強いとアピってくる。
あんな痩せっぽちの癖に、冷えない訳ないだろうが。
「兎に角、どっか入ってろよ!
絶対部屋の前で蹲ってたりするなよ!」
「んー?」
肯定なのか否定なのか、それすら怪しい返事をしてきたが、一刻も早く牧野の許へ行くべく、俺は通話を終わらせた。
さっさと辿り着かないと・・・
絶対あいつは俺の言う事なんか聞かないで、部屋のドアの前で凍えてる筈だ!
結局牧野の部屋の前に車を停めたのは、電話を切ってから1時間を少し回った頃だった。
『あいつはここにいる!』という確信を持って、アパートの外階段を駆け上がる。
ほら、こんな事になるから、ちゃんとエントランスがある、オートロックの物件に引っ越しとくべきだったんだよ!
そうしたら鍵が無くても取り敢えずエントランスホールまでは入れて、寒空の下凍えたりしなかっただろ?
もう絶対引っ越しだ。
こんな安物件からは絶対に引っ越しさせてやる!
思った通り、牧野は部屋のドアの前にいた。
俺の足音を聞いていたんだろう。
顔をこちらに向けて、能天気に笑ってる。
「あ、西門さん、ごめんねー。
急がせちゃったよね。
お仕事、大丈夫だったー?」
バーカ! ごめんね・・・じゃねえよ!
ったく、ホントお前って俺の言う事聞かねえな!
口を開けば怒鳴ってしまいそうだから、口を噤んだまま、合鍵でドアを開ける。
「あー、良かった、西門さんに鍵持っててもらって。
鍵開ける業者さんとか呼ぶとすっごい高いみたいで。
もうホントにどうしようかと思っちゃったよ。」
そんな事言ってる牧野の背中をぐいぐい押して、玄関に入れた。
ドアの横に置いてある、中身がみっちり詰まったエコバッグをぐいと持ち上げて、俺もドアの内側へ。
「あ、ありがと・・・
重いから、そこら辺置いといて・・・」
ここに来てから一言も喋らない俺から、やっと何かを感じ取ったらしい。
目が泳いでる。
慌てた様子で靴を脱いで、部屋の中へと逃げて行く。
「すぐご飯作るから、炬燵で温まって待っててー!
ごめんね、ホントは西門さんが来るまでに作っておくつもりだったんだけどさ・・・」
俺はここまで車で来たんだから。
別に寒くねえんだよ。
お前だよ、お前!
炬燵で温まるべきなのは!
コートを脱いで、着替えもせずにお気に入りのエプロンを付けてキッチンに立とうとしている牧野を背後から掴まえた。
案の定、顔を寄せた髪の毛だけでなく、ボディもひんやりとした空気に覆われてるみたいだし、俺の手に重ねて来た指先は氷のようだ。
思わず口から溜息が零れた。
「あ、のさ・・・
怒って・・・るの・・・?」
怒ってるっていうより、すっかり暗くなった時間にアパートのドアの前に女一人で立ってるとか。
寒いのにやせ我慢して身体冷やすとか・・・
俺はお前が心配なんだよ!
「冷え切ってるのはお前だろ?
メシの支度はいいから、お前がまず温まれよ。」
「あ、あたしは全然ダイジョーブ。」
出たよ、こいつの大丈夫じゃない「ダイジョーブ!」が。
どうしたらもうちょっと素直になるんだ?
俺の唇の傍にある左耳。
ぱくっと唇で食んでみれば、牧野が「うひゃっ!」とか変な声を上げる。
舌先で舐れば、まるでアイスクリームを食べてるみたいな冷たさだ。
「やっ、ちょっ・・・!」
俺の腕の中で無理くり身体を捩じって、暴れて、逃げ出した。
3歩先で真っ赤な顔して、耳を手でカバーしながら俺を睨み付けてる。
駄目だって、そんな顔したって。
そんなの、俺を余計に沸き立たせるだけなんだぜ。
「何すんのよっ?」
「つくしちゃんを温めてやっただけだって。」
紅く染まった頬は、絶対に寒いからじゃない。
急に火が点いたかのようにかーっと熱くなってる事だろう。
「そ、そーいうの要らないからっ!
西門さんは炬燵でテレビ!
あたしはキッチンで料理!
分かった?」
「はいはい。」
「はいは1回!」
「あんまり口煩いと、男から嫌われるぜ、つ・く・し・ちゃん!」
「望む所よ!」
きっと俺を睨み付けてから、シンクに向き直って蛇口を捻り、ジャージャー水を出してる。
それを見てたら笑いが込み上げて来たけど。
声を出して笑うとまたきっと煩いから、にんまりするだけに止めておいた。
まあきっと、今ので急に身体はぽっぽと温まってきたろうから、ほっとくとするか。
続きはメシの後にしといてやるよ。
きっと聖なる夜・・・というよりも、熱ーい熱い夜になっちまうけどな。
<オマケ>
つくしの鍵は翌日無事にスーパーのサービスカウンターに預けられているのを引き取れましたが・・・
年末年始の休みの間に、総二郎が手配しちゃた新しいお部屋に無理矢理引っ越しさせられる破目になったとさ。
__________
( ,,`・ω・´)ンンン?
書いてみたら、ちっともクリスマスっぽくないSSになってました。
スミマセン(;^ω^)
総二郎に耳パクってされて真っ赤になるつくしを書きたくて。
こんなお話にしてみました!
そしてひとつお知らせです。
拙宅にもお話を寄せて下さっている、お友達のりく様のブログ 恋花ーkoibanaー が開設7周年を迎えられましたー!
わー、パチパチパチパチ!
それで今年も拙い鷹瑠璃のお話を贈らせて頂きました。
今一話UPして頂いてます。
UP&DOWN 前編 です。
良かったらお訪ね下さいませ。
はー、クリスマス・・・
例年、ホント準備が大変でねー。
方々に送らねばならないカードとプレゼントの準備でてんてこ舞いでした。
そしてまた病人ダウンで、看病に疲れております・・・
ゆっくり寝たいよう・・・
皆様は楽しいクリスマスをお過ごしくださいね!
Je vous souhaite un joyeux Noël!!

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
☆‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆
「西門さーん、助けてー!」
クリスマス・イヴの夕方。
いつでも何でも自分で解決しようとするあいつが、珍しく俺に助けを求める電話を掛けて来た。
よっぽどの事があったんじゃないかと、ざわざわと胸の内が騒ぐ。
「どうした? 何があった?」
「鍵失くしちゃったー。部屋に入れないー!」
はあ、何だ、そんな事か。
もっと悪い事態を想像しただろうが。
「お前、今どこ?」
「え? あたしの部屋のドアの前だよ。」
「寒くない様にどっか店でも入ってろよ。
俺、そっち行くのに、どんなに急いでも1時間はかかるから。」
元々今夜は牧野の所に行くつもりだったが、もっと遅くなる筈だった。
突然の予定変更。
鋭意努力はするが、俺だって立場ってもんがある。
女からの電話一本で全てを擲って、一目散に駆け付ける・・・訳にはいかない。
「えー、だって、買い物してきた食材がいっぱいあって・・・
これ持ってファミレスとか行ったら、お魚やお肉が温まっちゃうもん。
ムリー。」
一昨日は冬至だった。
今は一年で一番日が短い時期な訳で。
日が暮れた今は寒さだって身体に堪える筈。
なのに自分の身体より、魚や肉の心配をしてる。
牧野らしいっちゃらしいけど。
全くバカじゃねえ、この女?
「1時間くらいどうって事ねえだろ?
気になるならファミレスで氷でも分けてもらって、それで冷やしとけよ!
お前の身体の方が、肉や魚より大事だろ?」
「あ、あたし、これぐらい平気ー。
ちゃんとコート着てるし、スヌード巻いてるし!」
この頑固なビンボー女は寒さにも強いとアピってくる。
あんな痩せっぽちの癖に、冷えない訳ないだろうが。
「兎に角、どっか入ってろよ!
絶対部屋の前で蹲ってたりするなよ!」
「んー?」
肯定なのか否定なのか、それすら怪しい返事をしてきたが、一刻も早く牧野の許へ行くべく、俺は通話を終わらせた。
さっさと辿り着かないと・・・
絶対あいつは俺の言う事なんか聞かないで、部屋のドアの前で凍えてる筈だ!
結局牧野の部屋の前に車を停めたのは、電話を切ってから1時間を少し回った頃だった。
『あいつはここにいる!』という確信を持って、アパートの外階段を駆け上がる。
ほら、こんな事になるから、ちゃんとエントランスがある、オートロックの物件に引っ越しとくべきだったんだよ!
そうしたら鍵が無くても取り敢えずエントランスホールまでは入れて、寒空の下凍えたりしなかっただろ?
もう絶対引っ越しだ。
こんな安物件からは絶対に引っ越しさせてやる!
思った通り、牧野は部屋のドアの前にいた。
俺の足音を聞いていたんだろう。
顔をこちらに向けて、能天気に笑ってる。
「あ、西門さん、ごめんねー。
急がせちゃったよね。
お仕事、大丈夫だったー?」
バーカ! ごめんね・・・じゃねえよ!
ったく、ホントお前って俺の言う事聞かねえな!
口を開けば怒鳴ってしまいそうだから、口を噤んだまま、合鍵でドアを開ける。
「あー、良かった、西門さんに鍵持っててもらって。
鍵開ける業者さんとか呼ぶとすっごい高いみたいで。
もうホントにどうしようかと思っちゃったよ。」
そんな事言ってる牧野の背中をぐいぐい押して、玄関に入れた。
ドアの横に置いてある、中身がみっちり詰まったエコバッグをぐいと持ち上げて、俺もドアの内側へ。
「あ、ありがと・・・
重いから、そこら辺置いといて・・・」
ここに来てから一言も喋らない俺から、やっと何かを感じ取ったらしい。
目が泳いでる。
慌てた様子で靴を脱いで、部屋の中へと逃げて行く。
「すぐご飯作るから、炬燵で温まって待っててー!
ごめんね、ホントは西門さんが来るまでに作っておくつもりだったんだけどさ・・・」
俺はここまで車で来たんだから。
別に寒くねえんだよ。
お前だよ、お前!
炬燵で温まるべきなのは!
コートを脱いで、着替えもせずにお気に入りのエプロンを付けてキッチンに立とうとしている牧野を背後から掴まえた。
案の定、顔を寄せた髪の毛だけでなく、ボディもひんやりとした空気に覆われてるみたいだし、俺の手に重ねて来た指先は氷のようだ。
思わず口から溜息が零れた。
「あ、のさ・・・
怒って・・・るの・・・?」
怒ってるっていうより、すっかり暗くなった時間にアパートのドアの前に女一人で立ってるとか。
寒いのにやせ我慢して身体冷やすとか・・・
俺はお前が心配なんだよ!
「冷え切ってるのはお前だろ?
メシの支度はいいから、お前がまず温まれよ。」
「あ、あたしは全然ダイジョーブ。」
出たよ、こいつの大丈夫じゃない「ダイジョーブ!」が。
どうしたらもうちょっと素直になるんだ?
俺の唇の傍にある左耳。
ぱくっと唇で食んでみれば、牧野が「うひゃっ!」とか変な声を上げる。
舌先で舐れば、まるでアイスクリームを食べてるみたいな冷たさだ。
「やっ、ちょっ・・・!」
俺の腕の中で無理くり身体を捩じって、暴れて、逃げ出した。
3歩先で真っ赤な顔して、耳を手でカバーしながら俺を睨み付けてる。
駄目だって、そんな顔したって。
そんなの、俺を余計に沸き立たせるだけなんだぜ。
「何すんのよっ?」
「つくしちゃんを温めてやっただけだって。」
紅く染まった頬は、絶対に寒いからじゃない。
急に火が点いたかのようにかーっと熱くなってる事だろう。
「そ、そーいうの要らないからっ!
西門さんは炬燵でテレビ!
あたしはキッチンで料理!
分かった?」
「はいはい。」
「はいは1回!」
「あんまり口煩いと、男から嫌われるぜ、つ・く・し・ちゃん!」
「望む所よ!」
きっと俺を睨み付けてから、シンクに向き直って蛇口を捻り、ジャージャー水を出してる。
それを見てたら笑いが込み上げて来たけど。
声を出して笑うとまたきっと煩いから、にんまりするだけに止めておいた。
まあきっと、今ので急に身体はぽっぽと温まってきたろうから、ほっとくとするか。
続きはメシの後にしといてやるよ。
きっと聖なる夜・・・というよりも、熱ーい熱い夜になっちまうけどな。
<オマケ>
つくしの鍵は翌日無事にスーパーのサービスカウンターに預けられているのを引き取れましたが・・・
年末年始の休みの間に、総二郎が手配しちゃた新しいお部屋に無理矢理引っ越しさせられる破目になったとさ。
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( ,,`・ω・´)ンンン?
書いてみたら、ちっともクリスマスっぽくないSSになってました。
スミマセン(;^ω^)
総二郎に耳パクってされて真っ赤になるつくしを書きたくて。
こんなお話にしてみました!
そしてひとつお知らせです。
拙宅にもお話を寄せて下さっている、お友達のりく様のブログ 恋花ーkoibanaー が開設7周年を迎えられましたー!
わー、パチパチパチパチ!
それで今年も拙い鷹瑠璃のお話を贈らせて頂きました。
今一話UPして頂いてます。
UP&DOWN 前編 です。
良かったらお訪ね下さいませ。
はー、クリスマス・・・
例年、ホント準備が大変でねー。
方々に送らねばならないカードとプレゼントの準備でてんてこ舞いでした。
そしてまた病人ダウンで、看病に疲れております・・・
ゆっくり寝たいよう・・・
皆様は楽しいクリスマスをお過ごしくださいね!
Je vous souhaite un joyeux Noël!!



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