聖なる夜の三つ巴の戦い! -中編-
鈍感に効く薬があるなら飲ませたい。
今飲んでいるマーマレード入りの紅茶にそんな効能があったらいいのに。
切実にそう思いながら横顔を見てるけど、そんな事がある筈も無く。
牧野の鈍感が改善される事はきっとこの先もないのだろう・・・と、諦めの溜息をこっそり吐き出した。
俺、類、あきらが三角形を作っていて、その中心に牧野がいる。
牧野と司が別れてから暫くは、傷心の牧野が立ち直って前を向いて歩ける迄、それぞれのやり方で見守っていたけど。
そのうち雑草牧野はあっけらかんとし始めた。
その姿は恋に破れ傷付いた女・・・というよりは、憑き物が落ちてさっぱりしたといった風情で。
まあ、空元気の部分もあったんだろうが、どんどん本来の明るさを取り戻していった。
そうしたら、俺はどうにも落ち着かなくなった。
牧野をかまいたくてかまいたくてうずうずする。
何かにつけては揶揄いたい。
キーキー騒がれても、牧野にちょっかい掛けるのをやめられない。
そして、過剰反応する牧野を見てはニヤニヤしてしまう。
それを白い目で見つつ、牧野にべったりへばりついていたのは類。
元から牧野をべたべたに甘やかしてたから、そのまんまと言えばそうなんだけど。
冷たい視線と、ぼそりと呟く厭味で俺を牽制し、牧野からの絶大なる信頼をいい事に、2人の世界を作り出そうとするから腹が立って仕方ない。
そのうち、牧野になんか興味無い筈のあきらまでじわりじわりと間合いを詰めてき始めた。
おいおい、マダムはどうした?
鉄パン穿いてる牧野なんてターゲットになり得ないだろ?
そう思ってたのに、いつの間にかそういう歳上の女達との関係を綺麗に清算して、『品行方正な御曹司』という偽の仮面を被り始めた。
単純な牧野はコロリと騙されるんだ。
「美作さんも大人になったんだねー。
うんうん、ご主人がいる女の人になんか、ちょっかい掛けちゃいけないって、やっと気付いたんだ! エライ!」
とか何とか言って、あきらを褒めてる始末。
それをいい事に、あきらは牧野の前では『優しくて、仲間思いの美作さん』『完璧な気遣いの出来るジェントルマン』を演じてる。
これは多分、あきら一流の罠なんだ。
良い人の振りをして、牧野を油断させる為の計画。
という訳で。
俺、類、あきら。
3人で牧野のハートを射止めるべく、牧野からは見えない水面下でバチバチやってるんだ。
そして鈍感牧野は何も気付かない。
俺達がただ単に仲良く戯れあってると思ってるし、3人が3人共牧野を想ってるなんて想像すらした事ない。
毎日暢気に生きている。
牧野らしいっちゃそうなんだが、いかんせん鈍感過ぎるんだ。
クリスマスだからといって、他の2人を出し抜いて牧野と2人きりでデート・・・なんて事は不可能。
そんな事したら、絶対に居場所を見付けられて踏み込まれる。
まあ、類かあきらに牧野が攫われたら、俺だって絶対邪魔してやる!って思ってるから、他の2人の気持ちも分かるし。
仕方なく例年通りあきらんちでクリパする事にした。
あきらんちってのは、牧野が他の場にいる時よりも寛いだ表情を浮かべるのが見られる反面、あのお袋さんに加え絵夢、芽夢迄牧野に纏わりつくから、それが煩わしい。
かと言って、俺んちの茶室でクリパって訳にもいかないし、類んちは牧野の事を歓迎してないみたいだ。
結局あきらんちで集まってしまう。
だけど今年はお袋さんと双子はいなかった。
ちょっとほっとするけど、ひと時考えを巡らせて、今度は逆に心配になる。
もしかしてあきらは何か良からぬ事を企んでんのか?
もしそうなら、絶対にそれは阻止してやる。
今夜「酔って眠いなら泊まってけよ!」なんてあきらが言い出しても、必ず邪魔してやる!
お目付役のいない美作邸に牧野だけ置いて帰る・・・なんて事はしてやらねえよ。
あきらは先に着いていた牧野に過剰とも言える接待をしていたらしい。
部屋の中に使用人の姿がないところを見ると、あきらが自分で紅茶を淹れて、牧野にキラースマイルと共にサーヴしたのだろう。
牧野はえらくご機嫌だ。
面白くない。
牧野は俺が隣に座ったのにろくにこちらを見もしないで紅茶に夢中。
憂さ晴らしにあきらに食前酒を頼んだが、牧野の前じゃ『優しい美作さん』になり切ってるあきらは異言を唱えない。
紅茶を飲んでる牧野の横顔をちらちらと盗み見ては、牧野に会えて嬉しくてにやけるのを堪えてた。
そして類のお出ましだ。
「お待たせ、牧野。」って。
俺とあきらも待たされてたんだって!
ホントに類は牧野以外の人間は目に入らない。
問題ありまくりな性格。
何故牧野はそんな類を嗜めたりしないんだ?
そんな事思いながら睨み付けてたら、類は牧野の飲みかけの紅茶を奪って飲んでる。
無邪気な振りして、俺への牽制だ。
牧野は俺がこんな事したって怒らないんだよって、ふふ・・・と微かに笑った声が勝ち誇ってる。
更に俺と牧野が並んで座ってたソファのセンターに無理矢理入り込もうとする類。
俺と牧野を近付けたくないという意図が丸見えだ。
どけ、どかないと小競り合いしていたら、駄々っ子を諌めるかのようにあきらが介入してくる。
どの行動も牧野への点数稼ぎに見えてしまう。
俺と類よりも落ち着きのある所を見せて。
ホストとしての気配りをして。
特に牧野は紅一点なんだから・・・とお姫様扱いして、うっとりさせる。
牧野はあきらの術中に嵌ってる。
どうしたら少々あきら優位になっている現状をこちらに引き寄せられるのかを考えながらテーブルに就いた。
少しでも近くに・・・と思って隣に座ったが、真向かいのあきらに幸せそうに笑い掛けてるのを見て、ちょっと失敗したか?と思ったり。
はあ・・・
クリスマスってのは、面倒な感情が次から次へと湧いてくる日だな、マジで。
_________
新年明けてもクリスマスSSの続きでスミマセン^^;
病人の看病のち、看病疲れで体力低下して管理人がダウン・・・という、クリスマスから年末の日々でした。
まだまだ絶賛大量の薬でドーピング中ですが、家族が初売りへと出掛けて行き、独りでゆっくり出来る時間が出来たので更新してみました。
こんな拙宅ではありますが、今年もどうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m
総二郎、類、あきら。
こういうシチュで誰が一番有利かって、やっぱり自分のテリトリーに皆を招き入れてるあきらかな?
総二郎には「短気は損気』と言ってやりたいです(苦笑)

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今飲んでいるマーマレード入りの紅茶にそんな効能があったらいいのに。
切実にそう思いながら横顔を見てるけど、そんな事がある筈も無く。
牧野の鈍感が改善される事はきっとこの先もないのだろう・・・と、諦めの溜息をこっそり吐き出した。
俺、類、あきらが三角形を作っていて、その中心に牧野がいる。
牧野と司が別れてから暫くは、傷心の牧野が立ち直って前を向いて歩ける迄、それぞれのやり方で見守っていたけど。
そのうち雑草牧野はあっけらかんとし始めた。
その姿は恋に破れ傷付いた女・・・というよりは、憑き物が落ちてさっぱりしたといった風情で。
まあ、空元気の部分もあったんだろうが、どんどん本来の明るさを取り戻していった。
そうしたら、俺はどうにも落ち着かなくなった。
牧野をかまいたくてかまいたくてうずうずする。
何かにつけては揶揄いたい。
キーキー騒がれても、牧野にちょっかい掛けるのをやめられない。
そして、過剰反応する牧野を見てはニヤニヤしてしまう。
それを白い目で見つつ、牧野にべったりへばりついていたのは類。
元から牧野をべたべたに甘やかしてたから、そのまんまと言えばそうなんだけど。
冷たい視線と、ぼそりと呟く厭味で俺を牽制し、牧野からの絶大なる信頼をいい事に、2人の世界を作り出そうとするから腹が立って仕方ない。
そのうち、牧野になんか興味無い筈のあきらまでじわりじわりと間合いを詰めてき始めた。
おいおい、マダムはどうした?
鉄パン穿いてる牧野なんてターゲットになり得ないだろ?
そう思ってたのに、いつの間にかそういう歳上の女達との関係を綺麗に清算して、『品行方正な御曹司』という偽の仮面を被り始めた。
単純な牧野はコロリと騙されるんだ。
「美作さんも大人になったんだねー。
うんうん、ご主人がいる女の人になんか、ちょっかい掛けちゃいけないって、やっと気付いたんだ! エライ!」
とか何とか言って、あきらを褒めてる始末。
それをいい事に、あきらは牧野の前では『優しくて、仲間思いの美作さん』『完璧な気遣いの出来るジェントルマン』を演じてる。
これは多分、あきら一流の罠なんだ。
良い人の振りをして、牧野を油断させる為の計画。
という訳で。
俺、類、あきら。
3人で牧野のハートを射止めるべく、牧野からは見えない水面下でバチバチやってるんだ。
そして鈍感牧野は何も気付かない。
俺達がただ単に仲良く戯れあってると思ってるし、3人が3人共牧野を想ってるなんて想像すらした事ない。
毎日暢気に生きている。
牧野らしいっちゃそうなんだが、いかんせん鈍感過ぎるんだ。
クリスマスだからといって、他の2人を出し抜いて牧野と2人きりでデート・・・なんて事は不可能。
そんな事したら、絶対に居場所を見付けられて踏み込まれる。
まあ、類かあきらに牧野が攫われたら、俺だって絶対邪魔してやる!って思ってるから、他の2人の気持ちも分かるし。
仕方なく例年通りあきらんちでクリパする事にした。
あきらんちってのは、牧野が他の場にいる時よりも寛いだ表情を浮かべるのが見られる反面、あのお袋さんに加え絵夢、芽夢迄牧野に纏わりつくから、それが煩わしい。
かと言って、俺んちの茶室でクリパって訳にもいかないし、類んちは牧野の事を歓迎してないみたいだ。
結局あきらんちで集まってしまう。
だけど今年はお袋さんと双子はいなかった。
ちょっとほっとするけど、ひと時考えを巡らせて、今度は逆に心配になる。
もしかしてあきらは何か良からぬ事を企んでんのか?
もしそうなら、絶対にそれは阻止してやる。
今夜「酔って眠いなら泊まってけよ!」なんてあきらが言い出しても、必ず邪魔してやる!
お目付役のいない美作邸に牧野だけ置いて帰る・・・なんて事はしてやらねえよ。
あきらは先に着いていた牧野に過剰とも言える接待をしていたらしい。
部屋の中に使用人の姿がないところを見ると、あきらが自分で紅茶を淹れて、牧野にキラースマイルと共にサーヴしたのだろう。
牧野はえらくご機嫌だ。
面白くない。
牧野は俺が隣に座ったのにろくにこちらを見もしないで紅茶に夢中。
憂さ晴らしにあきらに食前酒を頼んだが、牧野の前じゃ『優しい美作さん』になり切ってるあきらは異言を唱えない。
紅茶を飲んでる牧野の横顔をちらちらと盗み見ては、牧野に会えて嬉しくてにやけるのを堪えてた。
そして類のお出ましだ。
「お待たせ、牧野。」って。
俺とあきらも待たされてたんだって!
ホントに類は牧野以外の人間は目に入らない。
問題ありまくりな性格。
何故牧野はそんな類を嗜めたりしないんだ?
そんな事思いながら睨み付けてたら、類は牧野の飲みかけの紅茶を奪って飲んでる。
無邪気な振りして、俺への牽制だ。
牧野は俺がこんな事したって怒らないんだよって、ふふ・・・と微かに笑った声が勝ち誇ってる。
更に俺と牧野が並んで座ってたソファのセンターに無理矢理入り込もうとする類。
俺と牧野を近付けたくないという意図が丸見えだ。
どけ、どかないと小競り合いしていたら、駄々っ子を諌めるかのようにあきらが介入してくる。
どの行動も牧野への点数稼ぎに見えてしまう。
俺と類よりも落ち着きのある所を見せて。
ホストとしての気配りをして。
特に牧野は紅一点なんだから・・・とお姫様扱いして、うっとりさせる。
牧野はあきらの術中に嵌ってる。
どうしたら少々あきら優位になっている現状をこちらに引き寄せられるのかを考えながらテーブルに就いた。
少しでも近くに・・・と思って隣に座ったが、真向かいのあきらに幸せそうに笑い掛けてるのを見て、ちょっと失敗したか?と思ったり。
はあ・・・
クリスマスってのは、面倒な感情が次から次へと湧いてくる日だな、マジで。
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病人の看病のち、看病疲れで体力低下して管理人がダウン・・・という、クリスマスから年末の日々でした。
まだまだ絶賛大量の薬でドーピング中ですが、家族が初売りへと出掛けて行き、独りでゆっくり出来る時間が出来たので更新してみました。
こんな拙宅ではありますが、今年もどうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m
総二郎、類、あきら。
こういうシチュで誰が一番有利かって、やっぱり自分のテリトリーに皆を招き入れてるあきらかな?
総二郎には「短気は損気』と言ってやりたいです(苦笑)



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