ずっとこの時を待っていた -後編-
一部少々下品な表現があります(*/∀\*)
先にお知らせしておきます(苦笑)
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
1人トイレの中で考え込んでいたら、ドアが控えめな音でこんこんこんとノックされる。
「つくしちゃん、大丈夫か?
具合悪くなったりしてないか?」
具合は悪くないけれど、訳が分からなくなっている。
ドアを開けたらすぐそこに西門さんが立っていた。
「お前、顔色悪いぞ。」
そう言われてほっぺたを掌で包まれるけど、その温もりを感じても、今はちっともほっと出来ない。
「検査結果、どうだった?」
「・・・・・・。」
「妊娠してたのか?」
心配そうにあたしの顔を覗き込んでくるこの人には、地位も世間体もある。
まだお腹の中にいるとも感じられない程小さな命は、『西門流次期家元の隠し子』と囁かれ、後ろ指を指されてしまう存在になるんだろうか?
咄嗟に嘘を吐けなくて、こくりと頷いてしまった。
この人の為には「何ともなかった。」と言わなきゃいけなかったと気付いたのは、頷いた後だったけどもう後の祭り。
なのに、目の前にはぱあっと顔を輝かせる西門さんがいる。
「マジで? 妊娠してたのか?
やった! やべえ! すげえ嬉しい!」
途端にぎゅうぎゅう抱き締められ、余計に頭が混乱してきた。
この人にとって、庶民のあたしとの間の子供の誕生なんて喜べない筈なのに。
「えーっと、まず何からだ?
お前の両親に挨拶か?
いや、病院だよな。一番に病院行かねーと!
今日はもう夕方だから、明日か?
でも日曜日って病院やってんのか?
ちょっと調べないとな。
挨拶して、その足で区役所・・・
ん? 戸籍の取り寄せが先か?
あー、西門行くのは一番最後な。
ウチ、とびきり面倒だから。」
1人でベラベラ喋りまくってる。
あたしが思ってるのと全く違う反応をしている。
何かがおかしい。
戸惑いを押し退けて、じわじわとイヤーな感じが胸の奥から湧いてきた。
「・・・ねえ。」
「どうした? 気分悪いか?
あー、お前座ってた方がいい。
身体も冷やさない方がいいな。
ブランケット掛けてろ。
そうだ! あったかいモン飲むか?
何飲む? カフェインはダメなんだよなぁ・・・。
ホットミルクならどうだ?」
ソファに座らされ、ブランケットをぐるっと巻かれた。
目の前には妙にハイテンションな西門さんがいる。
それを無言でじとーっと睨め付けた。
「ん? つくしちゃん、顔怖いぞ。」
「・・・もしかして、あたし担がれてたの?」
「人聞き悪いな、それ。
秘密の妊活とでも言ってくれよ。」
「に、妊活??? 妊活ってどーいう事???
ずっと避妊してくれてたよね???」
「あー、それな。
ほら、いつも1回目は着けてスルだろ。
で、つくしちゃんは俺のやる事なす事全部にすっげー感じちゃって、2回戦、3回戦になると、どんどん訳分かんなくなるじゃん。
だから、その時に秘密の妊活をな。」
「はあーーー?」
我ながら素っ頓狂な声が出た。
開いた口が塞がらないとは正にこの事だろう。
信頼していた相手にずっと騙されてたんだから。
『あ』の形で口が開きっぱなしになったが、はっと気付いて更に抗議した。
「何でそんな事すんのよ!?」
「つくしちゃーん、そんな怒んなよ。
お腹の子がびっくりしちまうだろ。
怒ってると子供に届く酸素が少なくなっちまうんだから。
ほら、落ち着け。深呼吸しろ。」
何なの?
こんなの、この人の発言とは思えない。
本当に妊活中のパパさんみたいな言動の数々。
ますます疑惑が深まっていく。
「俺さ・・・、お前との子供欲しかったんだよ。
どうしてもお前と結婚して、俺とお前と、2人の間に授かる子供と人生を歩んで行きたかった。
けど、ウチって色々面倒な家だろ?
それでも、流石に子供が出来たから入籍したって事になったら、それは覆せなくなる。
だから、西門に邪魔される前に子供を授かって、婚姻届も出しちまおうと、そういう計画を立てた訳。」
「そんな無茶な・・・」
「お前に言うと、あれこれ考えちまうだろうから、秘密の妊活をしてたんだ。
俺の週末毎の頑張りが実って!
こうやってお前の中に俺達の子供が来てくれたんだぜ。
いやぁ、感慨も一入だな!」
誰よりもクールでクレバーだと思ってたけど。
ホントは物凄いアホなのかしら、この人。
本気?
本気でそんな底の浅い計画を実行してたの?
『頑張り』とか言ってるけど、単に好き勝手やってただけだよね?
「そんな顔すんなよ。
お前と、俺達の子供は、俺が絶対護ってみせるから。
ややこしい家に入ってもらわないといけないけど・・・
俺と結婚してよ、つくしちゃん。」
様々な感情が入り乱れて涙が出そうだ。
目の前のこの馬鹿なオトコをポカスカ殴りたい。
ぎゅうっとぎゅうっと抱きつきたい。
両極端な思いに駆られた。
泣くのを堪えるのに必死で、言葉が口から出て来ない。
「つくし。」
あたしの名を優しい響きで呼んでいる西門さんが、きゅっと握りしめていた両手の拳を大きな掌で包んで、微笑み掛けてきた。
「泣くなよ。」
目尻に押し当てられる温かな唇が、余計に涙を誘う。
「笑ってくれよ。
俺はお前の笑い顔が一番好きなんだ。」
だからそういうこと言われるともっと泣いちゃうんだってば。
「笑って、うんって言ってくれ。
観念して俺と結婚するって。」
もう、何でこうなの?
全部自分の思い通りに事は運ぶって信じて疑わない自信ありありな態度。
俺様が過ぎると思うのよ。
騙されてたあたしの気持ちはどーなるの?
心構え無しに急に子供を授かったあたしの気持ちは!?
「つくし。」
涙目で睨み付けてるあたしに、柔らかく笑い掛けてきた。
おでこに唇をそっと寄せて、また囁く。
あたしがおでこへのキスが好きなのに気付いている、確信犯の的確な攻撃。
そこで喋られると脳味噌に直接話し掛けられてるみたいで、頭がびりびりと痺れる感覚に襲われちゃうんだ。
「何に背いたとしても、これだけはどうしても叶えたかったんだ。
俺は一生大切にするよ、お前の事、生まれてくる子供の事。
だから俺に家族を作らせてくれ。
お前とじゃなきゃ嫌なんだ。」
「・・・ん。」
ついその熱の籠った言葉に導かれ、返事をしてしまった。
安堵の溜息が聞こえてきた後、その胸にひしと抱き寄せられる。
「ああ、もうずっと・・・
ずっとこんな日が巡って来るのを夢見てた。
お前と、俺達2人の子供を、この腕に抱き締められる時を待ってたんだ・・・。」
知らなかったよ、そんな気持ち。
胸の内を明かしてくれたことなんかなかったもの。
でもこうして身体を寄せ合って、体温を伝え合って、常より早い心臓の拍動を聞いていると、全ての蟠りが融かされていくかのようで。
胸に湧き起こった色々な想いが、涙になって止めどなく溢れてく。
「・・・あたし、頑張るね。」
「俺も。俺も頑張るよ。
お前と子供と生きてく為に。」
「ん・・・。」
「あー、もう俺に欲しいものはないな。
最高に欲しかったもの二つとも、手に入れられたから。」
また安堵の溜息が聞こえてくる。
溜息がこんな大きな幸せを運んで来るなんて、あたしは今初めて知った。
この人と結婚するなんて・・・
そんな事あり得ないだろうと、何度も何度も自分の中の望みの芽を摘んできたのに。
今あたしの中に2人の赤ちゃんがいて、あなたはあたしとその子を護ると言ってくれた。
夢みたいな幸せがあたし達を包んでる。
でも本当は・・・
心のどこかでずっとこんな時が巡ってくるを待っていたのかも知れない。
あなたとの子供の母親になれる、その日を。
_________
書いといてなんですけど、この流れでのプロポーズ、サイテーじゃないですか?(爆)
つくしがプロポーズにそんな夢を抱いてるとは思えないけどさぁ。
そして総二郎が策士だって知ってるのに、張り巡らされた網にまんまと掛かっちゃう。
可哀想に(苦笑)
こんなお話でしたが、楽しんで読んで頂けたなら嬉しいです。
さてさて、でこチューおかわりしときましたが(笑)
でこチュー体験談を募集したら、人間からじゃなくて動物からされた体験談がいくつか届きました。
愛のあるでこチューは妄想の中にしかないのか?
ないのかー???

ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
先にお知らせしておきます(苦笑)
*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。
1人トイレの中で考え込んでいたら、ドアが控えめな音でこんこんこんとノックされる。
「つくしちゃん、大丈夫か?
具合悪くなったりしてないか?」
具合は悪くないけれど、訳が分からなくなっている。
ドアを開けたらすぐそこに西門さんが立っていた。
「お前、顔色悪いぞ。」
そう言われてほっぺたを掌で包まれるけど、その温もりを感じても、今はちっともほっと出来ない。
「検査結果、どうだった?」
「・・・・・・。」
「妊娠してたのか?」
心配そうにあたしの顔を覗き込んでくるこの人には、地位も世間体もある。
まだお腹の中にいるとも感じられない程小さな命は、『西門流次期家元の隠し子』と囁かれ、後ろ指を指されてしまう存在になるんだろうか?
咄嗟に嘘を吐けなくて、こくりと頷いてしまった。
この人の為には「何ともなかった。」と言わなきゃいけなかったと気付いたのは、頷いた後だったけどもう後の祭り。
なのに、目の前にはぱあっと顔を輝かせる西門さんがいる。
「マジで? 妊娠してたのか?
やった! やべえ! すげえ嬉しい!」
途端にぎゅうぎゅう抱き締められ、余計に頭が混乱してきた。
この人にとって、庶民のあたしとの間の子供の誕生なんて喜べない筈なのに。
「えーっと、まず何からだ?
お前の両親に挨拶か?
いや、病院だよな。一番に病院行かねーと!
今日はもう夕方だから、明日か?
でも日曜日って病院やってんのか?
ちょっと調べないとな。
挨拶して、その足で区役所・・・
ん? 戸籍の取り寄せが先か?
あー、西門行くのは一番最後な。
ウチ、とびきり面倒だから。」
1人でベラベラ喋りまくってる。
あたしが思ってるのと全く違う反応をしている。
何かがおかしい。
戸惑いを押し退けて、じわじわとイヤーな感じが胸の奥から湧いてきた。
「・・・ねえ。」
「どうした? 気分悪いか?
あー、お前座ってた方がいい。
身体も冷やさない方がいいな。
ブランケット掛けてろ。
そうだ! あったかいモン飲むか?
何飲む? カフェインはダメなんだよなぁ・・・。
ホットミルクならどうだ?」
ソファに座らされ、ブランケットをぐるっと巻かれた。
目の前には妙にハイテンションな西門さんがいる。
それを無言でじとーっと睨め付けた。
「ん? つくしちゃん、顔怖いぞ。」
「・・・もしかして、あたし担がれてたの?」
「人聞き悪いな、それ。
秘密の妊活とでも言ってくれよ。」
「に、妊活??? 妊活ってどーいう事???
ずっと避妊してくれてたよね???」
「あー、それな。
ほら、いつも1回目は着けてスルだろ。
で、つくしちゃんは俺のやる事なす事全部にすっげー感じちゃって、2回戦、3回戦になると、どんどん訳分かんなくなるじゃん。
だから、その時に秘密の妊活をな。」
「はあーーー?」
我ながら素っ頓狂な声が出た。
開いた口が塞がらないとは正にこの事だろう。
信頼していた相手にずっと騙されてたんだから。
『あ』の形で口が開きっぱなしになったが、はっと気付いて更に抗議した。
「何でそんな事すんのよ!?」
「つくしちゃーん、そんな怒んなよ。
お腹の子がびっくりしちまうだろ。
怒ってると子供に届く酸素が少なくなっちまうんだから。
ほら、落ち着け。深呼吸しろ。」
何なの?
こんなの、この人の発言とは思えない。
本当に妊活中のパパさんみたいな言動の数々。
ますます疑惑が深まっていく。
「俺さ・・・、お前との子供欲しかったんだよ。
どうしてもお前と結婚して、俺とお前と、2人の間に授かる子供と人生を歩んで行きたかった。
けど、ウチって色々面倒な家だろ?
それでも、流石に子供が出来たから入籍したって事になったら、それは覆せなくなる。
だから、西門に邪魔される前に子供を授かって、婚姻届も出しちまおうと、そういう計画を立てた訳。」
「そんな無茶な・・・」
「お前に言うと、あれこれ考えちまうだろうから、秘密の妊活をしてたんだ。
俺の週末毎の頑張りが実って!
こうやってお前の中に俺達の子供が来てくれたんだぜ。
いやぁ、感慨も一入だな!」
誰よりもクールでクレバーだと思ってたけど。
ホントは物凄いアホなのかしら、この人。
本気?
本気でそんな底の浅い計画を実行してたの?
『頑張り』とか言ってるけど、単に好き勝手やってただけだよね?
「そんな顔すんなよ。
お前と、俺達の子供は、俺が絶対護ってみせるから。
ややこしい家に入ってもらわないといけないけど・・・
俺と結婚してよ、つくしちゃん。」
様々な感情が入り乱れて涙が出そうだ。
目の前のこの馬鹿なオトコをポカスカ殴りたい。
ぎゅうっとぎゅうっと抱きつきたい。
両極端な思いに駆られた。
泣くのを堪えるのに必死で、言葉が口から出て来ない。
「つくし。」
あたしの名を優しい響きで呼んでいる西門さんが、きゅっと握りしめていた両手の拳を大きな掌で包んで、微笑み掛けてきた。
「泣くなよ。」
目尻に押し当てられる温かな唇が、余計に涙を誘う。
「笑ってくれよ。
俺はお前の笑い顔が一番好きなんだ。」
だからそういうこと言われるともっと泣いちゃうんだってば。
「笑って、うんって言ってくれ。
観念して俺と結婚するって。」
もう、何でこうなの?
全部自分の思い通りに事は運ぶって信じて疑わない自信ありありな態度。
俺様が過ぎると思うのよ。
騙されてたあたしの気持ちはどーなるの?
心構え無しに急に子供を授かったあたしの気持ちは!?
「つくし。」
涙目で睨み付けてるあたしに、柔らかく笑い掛けてきた。
おでこに唇をそっと寄せて、また囁く。
あたしがおでこへのキスが好きなのに気付いている、確信犯の的確な攻撃。
そこで喋られると脳味噌に直接話し掛けられてるみたいで、頭がびりびりと痺れる感覚に襲われちゃうんだ。
「何に背いたとしても、これだけはどうしても叶えたかったんだ。
俺は一生大切にするよ、お前の事、生まれてくる子供の事。
だから俺に家族を作らせてくれ。
お前とじゃなきゃ嫌なんだ。」
「・・・ん。」
ついその熱の籠った言葉に導かれ、返事をしてしまった。
安堵の溜息が聞こえてきた後、その胸にひしと抱き寄せられる。
「ああ、もうずっと・・・
ずっとこんな日が巡って来るのを夢見てた。
お前と、俺達2人の子供を、この腕に抱き締められる時を待ってたんだ・・・。」
知らなかったよ、そんな気持ち。
胸の内を明かしてくれたことなんかなかったもの。
でもこうして身体を寄せ合って、体温を伝え合って、常より早い心臓の拍動を聞いていると、全ての蟠りが融かされていくかのようで。
胸に湧き起こった色々な想いが、涙になって止めどなく溢れてく。
「・・・あたし、頑張るね。」
「俺も。俺も頑張るよ。
お前と子供と生きてく為に。」
「ん・・・。」
「あー、もう俺に欲しいものはないな。
最高に欲しかったもの二つとも、手に入れられたから。」
また安堵の溜息が聞こえてくる。
溜息がこんな大きな幸せを運んで来るなんて、あたしは今初めて知った。
この人と結婚するなんて・・・
そんな事あり得ないだろうと、何度も何度も自分の中の望みの芽を摘んできたのに。
今あたしの中に2人の赤ちゃんがいて、あなたはあたしとその子を護ると言ってくれた。
夢みたいな幸せがあたし達を包んでる。
でも本当は・・・
心のどこかでずっとこんな時が巡ってくるを待っていたのかも知れない。
あなたとの子供の母親になれる、その日を。
_________
書いといてなんですけど、この流れでのプロポーズ、サイテーじゃないですか?(爆)
つくしがプロポーズにそんな夢を抱いてるとは思えないけどさぁ。
そして総二郎が策士だって知ってるのに、張り巡らされた網にまんまと掛かっちゃう。
可哀想に(苦笑)
こんなお話でしたが、楽しんで読んで頂けたなら嬉しいです。
さてさて、でこチューおかわりしときましたが(笑)
でこチュー体験談を募集したら、人間からじゃなくて動物からされた体験談がいくつか届きました。
愛のあるでこチューは妄想の中にしかないのか?
ないのかー???



ぽちっと押して頂けたら嬉しいです!
- 関連記事
-
- ずっとこの時を待っていた -後編-
- ずっとこの時を待っていた -中編-
- ずっとこの時を待っていた -前編-
