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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
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粉雪舞い降りる君の肩先 13

目が覚めたら電気を点けっぱなしのまま、炬燵で眠ってしまっていたのに気が付いた。
眩しくて、脚がちょっと暑くて、喉がカラカラだ。

ああ、あたしってばまたやっちゃった・・・
ホント炬燵ってぬくぬくあったかくて抜けられないんだよねぇ。

そう思ったけれど、何だかいつもとちょっとだけ違う。
息をするとふわりと優しい香りが鼻をくすぐる。
もう一度目を瞑って、その香りを胸いっぱい吸い込んだ。

うーん、これって何だっけ?
何か美作さんの香りに似て・・・

そこまで考え、はっとして、かばりと起き上がった。
あたしを包んでいたのは美作さんの柔らかなカシミアコート。
そして、斜め右側には美作さんの優しげな微笑みがあった。

「お早う、牧野。」
「・・・オ、ハヨウ、ゴサイマス?」
「何だその喋り方。寝ぼけてるんだろ。
まだ4時だから、眠いよな。
でもちゃんと布団敷いて寝直した方がいいと思うんだ。」

朝・・・と言ってもまだ外は真っ暗な冬の午前4時のボロアパートの炬燵に、美作さんがいる。
どうしてこんな事になってるのか、段々と頭が覚醒して分かってきた。

「・・・あたしだけぐうぐう寝ちゃって、美作さんはずっと起きてたの?」
「うん、まあ、そうだな。」
「寝ちゃったあたしに自分のコート掛けてくれたから、帰れなくなっちゃったの?」
「帰れなかったんじゃなくて。
帰りたくなかったから、ここにいさせてもらったんだ。
だって好きな子が可愛い顔してすやすや寝てるところ、見放題なチャンスだったんだから。」
「ちょっと! やめてよ、そんな事するの!」

顔が一気に火照り始める。
多分本当に間抜けな寝顔をずっと観察されていたんだろう。
うっかり寝ちゃった自分が悪いとはいえ、恥ずかしくて堪らない。

「本当に可愛くて、いくら見てても見飽きないんだから仕方ないだろ。」
「もう、ホントにホントにやめて欲しい・・・
恥ずかしいんだから!」

そう言い募ったらふふふと笑ってる。
今度は真っ赤な顔してむきになってて面白いとでも思っているんだろうか。

「分かった、分かった。俺は帰るから。
牧野はちゃんと布団でゆっくり身体休めて。」
「・・・美作さんこそ早く帰ってゆっくり寝なくちゃ。今日は疲れちゃったでしょ。」
「俺は大丈夫だ。だけど・・・」

何か言い掛けながら立ち上がった美作さんは、両手であたしの手を取って立たせようとしている。

ずっと炬燵に入りっぱなしだと、またここで寝ちゃうかも・・・って心配してくれてるのかな?

美作さんの手に縋って立ち上がると、互いの距離がぐっと近づき、綺麗な顔が目の前に来てどきりとした。

「帰る前に一度ハグしていい?」
「えええっ?
いや、あの、あたし、昨日の夜お風呂屋さん行けてないし。
ちょっとそういうのはまずいんじゃないかと・・・。」
「そんなの、俺も同じだから。気にする訳ないだろ。」
「いやいや、美作さんが気にしなくても、あたしが気になる・・・」

何とかして身体を離そうと思った筈なのに、逆にふんわりと抱き寄せられていた。
あくまでも柔く腕に囲まれてるだけなのに、急に息が苦しくなる。

「牧野、もう一度寝直して。そして起きたら電話くれる?」
「う、うん。分かった。電話、するね。」
「約束な。」
「うん、約束、ね。」

ドギマギしながらそう答えたら、すっと腕が解かれてて、美作さんの身体が離れていった。
あたしが掛けてもらっていたコートを拾って、流れるような動作でそれを羽織る姿にぼーっと見惚れてしまう。
何気ない仕草迄格好良いのが美作さんだ。
玄関のたたきで靴を履いて、くるりとあたしの方に振り返った美作さんは、

「お休み、牧野。お邪魔様。」

と言ってにこりと微笑んだ。
その笑顔に胸がきゅうっとしていたら、何と返したらいいのかうまい言葉が咄嗟に出てこなくて。

「ありがと、美作さん。」

とだけ呟いた。
美作さんはうんうんと小さく頷いて、冷たい空気の向こう側で「じゃあ。」と軽く手を上げてからドアをぱたんと閉めた。
ダメ押しで、ドアの向こう側から抑え目の声で

「ちゃんと鍵掛けてな。」

と言い置いて、外階段をカンカンカンと音をさせながら降りて行く。
あたしはその足音が聞こえなくなるまで、そこに立っていた。
美作さんの思い遣りいっぱいの言葉や行動がじんわりとした幸せや安心感をくれるのに、独り部屋に残された事がとても寂しくて、どんなに美作さんが『大丈夫』って言ってくれても不安が其処彼処に纏わり付いてるように思われて、心の中は色んな感情がぐるぐると渦を巻いてるような状態だ。
はぁ・・・と深く息を吐き出した。

「うん、寝ちゃおう。
とりあえず寝ちゃおう、こんな時は。」

押し入れから引っ張り出した布団はひんやりしていたけれど、目を閉じて美作さんを想うと、身体の中にぽっと小さな火が灯るような気持ちになる。
昨日美作さんがここまで迎えに来てくれてから、さっき帰ってしまう迄にあった事をあれこれ思い起こしているうちに、いつの間にか寝てしまった。
次に目が覚めた時、部屋は薄っぺらいカーテンを通してお日様が昇り切っているのが分かる程明るくなっていて、あたしは随分と寝坊した事を自覚する。
目覚まし時計を見たらもう10時過ぎだった。

朝ご飯・・・っていうかブランチ食べたらお風呂屋さん行きたいなぁ。
美作さん、起きたら電話してって言ってたけれど・・・
4時まで起きてて、それから帰って寝たなら5時でしょ?
12時位までは寝てるかな?
お風呂屋さんから帰ってきたら電話しよう。

寒いけど意を決して布団から這い出て、洗顔、歯磨き、着替え、洗濯、ご飯作り・・・と、やらなきゃいけない事を順繰りにやっていく。
簡単なブランチを食べ終わる頃に洗濯機がピーっと鳴って止まったので、洗濯物をベランダに干して、台所を片付けた後、あたしは近くのお風呂屋さんへ行く事にした。
もうお昼前でお日様の陽射しもあるのに、外は結構冷えている。
昨日雪が降ったくらいだもんな・・・と思いながら歩いた。
中途半端な時間だからか、皆お昼ご飯を食べる頃だからなのか、お風呂屋さんはお客さんが疎らだ。
大きな湯船を独り占めして、のんびりお湯に浸かり、ふわぁ・・・と大きな溜息を吐く。
寒さで強張っていた身体から無駄な力が抜けていくみたいだ。

うーん、やっぱりお風呂って最高のリラックスだよね。

身体はリラックスしても、あたしを取り巻く漠然とした不安は、温かなお湯に溶けて消えていく事はなく、ずっと其処彼処に漂っている。
どうしたものかと考えているうちに上せそうになって、慌てて湯船から出た。


アパートの部屋に戻ってから、美作さんに電話を掛けた。

まだ寝てるかな? もう起きてるかな?

そわそわしながらコールしたのに、あっという間に美作さんの声が聞こえて来た。

「もしもし、牧野?」
「あ、うん。美作さん起きてた?」
「ああ、とっくに。
双子にドアを何度もノックされて起こされたよ。
『お兄ちゃま、お寝坊しないでー!』って。」
「そっかー。起こされちゃったのね。
寝不足でしょ、それなら。」
「んー、大丈夫だ。今夜早寝すればいいさ。
牧野は? 今起きたのか?」
「あ、ちょっと前に起きてたんだけど・・・
美作さんまだ寝てるかもって思ったから、直ぐに電話しなかったの。ごめんなさい。」

そう言ったら、電話の向こうからくすりと抑えた笑い声が聞こえる。

「そうなんじゃないかって思ってた。」
「・・・どうせ簡単に見透かされちゃう単純な行動パターンですよ。」
「違うよ。
俺が牧野の事しっかり見詰めてる証拠だから。」

何だかさらりと凄いこと言われた気がする。
思わず次に続く言葉をこくりと飲み込んでしまった。
ほんの数秒沈黙が流れる。

「なあ、牧野、今から会える?」
「・・・・・・うん。」
「良かった。じゃあ迎えに行くから。
出掛ける支度して待っててくれるか?」
「・・・ん、分かった。」

美作さんが仄かに笑ったのが耳に届く吐息の響きで分かる。
目の前にいるかのように、その笑顔が浮かんできた。

「じゃ、又後で。」
「うん。後でね。」

心臓がとくんとくんと駆け足のリズムで鳴っていた。


_________



次の更新は総二郎にしようと思ってたんですけど。
書き終わらなかったので、続いて「粉雪」になっちゃいました。
このあきらはどうやってつくしとの距離を詰めて来るのかなー?
どこまでもふんわり優しくなのか、一気にぐいっと引き寄せるのか。
考えちゃいますね。

バタバタしてるうちに1月も終わりですって。
時の流れが速すぎるー!


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