unlock my heart
眠りに落ちていく寸前の牧野がすこぶる可愛い。
これがデレるってやつなんだろうか?
今も俺の肩先にこめかみの辺りを擦り寄せてる。
ぱっちり目が覚めてる時の牧野なら絶対しないであろう、ダイレクトに甘えてくる仕草に自然と頬が緩んでしまう。
想いが溢れてしまって、そっと額にキスをすると、擽ったかったのか牧野がほんの一瞬だけ目を開けた。
「悪い、起こしたか?」
「みま・・・さか、さん・・・?」
「うん?」
「ぎゅ・・・」
そう言いながら、俺の身体に腕を回してきたから、この愛しさのかたまりをぎゅうっと抱き締め返す。
「んーーー・・・」
鼻声とも溜息ともとれる微かな声を漏らしながら、俺の腕の中に素直に収まってる牧野。
髪の毛の中に鼻を埋めると、牧野がいつも使っているシャンプーの香りと共に、懐かしいようなほっとするような優しげな甘い香りがするから、何度も深く息を吸い込んだ。
こんな落ち着く香り、俺は他に知らないんじゃないか・・・と思いながら頭の天辺にこっそりキスを落とす。
寝惚けている牧野は多分気付かないけれど。
それでも可愛すぎてキスせずにいられない。
安心しきってくったりと俺に身体を預けてくれている牧野をこうして抱き締めていると、心臓が少しだけ常より大きな音を立てているのを自覚する。
俺がこんな気持ちになるのは、牧野だけだ。
牧野つくしという女の子は、次から次へと俺の心の鍵を開けていった。
牧野と2人で時間を過ごすようになるまで、自分の心にそんな何重にもロックが掛かっていた事すら知らなかった。
だけど牧野と一緒に時を積み重ねていると、少しずつ牧野が俺の中に踏み込んで来るのが分かる。
無理矢理入ってくる訳じゃない。
牧野自身も絶対に意識して俺をオープンマインドにしてやろうだなんて思っていない。
なのに確実に牧野が俺を解錠し、ドアを幾つも幾つも開けて、どんどん奥へと進んでくる。
牧野がただ側にいてくれるだけで俺は嬉しくなる。
小ちゃな太陽のように顔を輝かせながら、俺に向かって笑い掛けてくれるだけで、胸が幸せで疼く。
そして恥ずかしそうに「好きだよ。」って呟いてくれると、愛おしさで自分の中がいっぱいになって、抱き締めずにはいられなくなる。
自分という男は、どこか人生を達観していて、物事を他の奴らより冷静に見られているつもりでいた。
F4の中で俺が一番常識のある人間で、気遣いが出来て、理性的なんだと自負していた。
そのせいで色んな事を任されたり押し付けられたりしてきたけれど、それが俺の立ち位置なんだろうと、皆は俺を頼りにしている証拠なんだと、自分を納得させてもいた。
だけど、牧野といるとそんな凝り固まった既存の自分がどこかに行ってしまう。
手が触れ合うだけで胸が騒めく。
唇を重ねたら心臓が跳ねる。
抱き締めたら背中を何かが走り抜けていく。
今迄の恋愛とは全く違う。
初めて知る感情が自分の中に生まれる一方、冷静さや理性はどこかに消えてしまった。
牧野が、その温もりで、その笑顔で、声で、仕草で、ひとつひとつ俺の心を鍵を開けている。
冷静さや理性というコーティングで固められていた俺の心が少しずつ露わになる。
こんな風に誰かに心に侵入されるのは、きっと牧野が最初で最後。
そう思う。
牧野がまた深く寝入って、俺の身体に回していた腕から力が抜けていき、滑り落ちてきた右手の掌が、俺の左胸の上に載った。
温かな、ちょっと小さな掌が当てられてるのは俺の肌なのに、その奥にある心を優しく包まれてるかのような感覚に襲われる。
そう感じるだけで胸がとくりとくりと高鳴った。
自分の一番弱くて柔い所を牧野に触れられているみたいで、心を裸にされたような気持ちになる。
それは少し心許なくて、だけど互いの間に隔てが何もないと思えるスペシャルな幸せな距離。
そう、やっぱり牧野は特別な存在なんだ。
こんな気持ちを俺に齎すのは牧野だけ。
俺の深い所に踏み込んで来るのも、俺がそれを許せるのも牧野だけ。
願わくば、俺も牧野にとってそんな存在でありますように。
そしてこれからもずっと、この幸せを感受していけますように。
もう一度しっかりと牧野を抱き締め直す。
そして牧野の甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで、自分を眠りへと誘う。
朝、目が覚めたら、カーテン越しの淡い明るさの中で、互いの近過ぎる距離に頬を染める牧野が現れるんだろう。
そして恥じらいながらも俺に囁いてくれるはずだ。
「美作さん、お誕生日おめでとう。」って。
_________
短いんですが、お誕生日SSでした。
あきらが唯一本当に心を許せる相手はつくしだけ。
つくしにはそうさせてしまう力がある。
そんなイメージで書きました。
2月28日。
あきら、お誕生日おめでとう。

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今も俺の肩先にこめかみの辺りを擦り寄せてる。
ぱっちり目が覚めてる時の牧野なら絶対しないであろう、ダイレクトに甘えてくる仕草に自然と頬が緩んでしまう。
想いが溢れてしまって、そっと額にキスをすると、擽ったかったのか牧野がほんの一瞬だけ目を開けた。
「悪い、起こしたか?」
「みま・・・さか、さん・・・?」
「うん?」
「ぎゅ・・・」
そう言いながら、俺の身体に腕を回してきたから、この愛しさのかたまりをぎゅうっと抱き締め返す。
「んーーー・・・」
鼻声とも溜息ともとれる微かな声を漏らしながら、俺の腕の中に素直に収まってる牧野。
髪の毛の中に鼻を埋めると、牧野がいつも使っているシャンプーの香りと共に、懐かしいようなほっとするような優しげな甘い香りがするから、何度も深く息を吸い込んだ。
こんな落ち着く香り、俺は他に知らないんじゃないか・・・と思いながら頭の天辺にこっそりキスを落とす。
寝惚けている牧野は多分気付かないけれど。
それでも可愛すぎてキスせずにいられない。
安心しきってくったりと俺に身体を預けてくれている牧野をこうして抱き締めていると、心臓が少しだけ常より大きな音を立てているのを自覚する。
俺がこんな気持ちになるのは、牧野だけだ。
牧野つくしという女の子は、次から次へと俺の心の鍵を開けていった。
牧野と2人で時間を過ごすようになるまで、自分の心にそんな何重にもロックが掛かっていた事すら知らなかった。
だけど牧野と一緒に時を積み重ねていると、少しずつ牧野が俺の中に踏み込んで来るのが分かる。
無理矢理入ってくる訳じゃない。
牧野自身も絶対に意識して俺をオープンマインドにしてやろうだなんて思っていない。
なのに確実に牧野が俺を解錠し、ドアを幾つも幾つも開けて、どんどん奥へと進んでくる。
牧野がただ側にいてくれるだけで俺は嬉しくなる。
小ちゃな太陽のように顔を輝かせながら、俺に向かって笑い掛けてくれるだけで、胸が幸せで疼く。
そして恥ずかしそうに「好きだよ。」って呟いてくれると、愛おしさで自分の中がいっぱいになって、抱き締めずにはいられなくなる。
自分という男は、どこか人生を達観していて、物事を他の奴らより冷静に見られているつもりでいた。
F4の中で俺が一番常識のある人間で、気遣いが出来て、理性的なんだと自負していた。
そのせいで色んな事を任されたり押し付けられたりしてきたけれど、それが俺の立ち位置なんだろうと、皆は俺を頼りにしている証拠なんだと、自分を納得させてもいた。
だけど、牧野といるとそんな凝り固まった既存の自分がどこかに行ってしまう。
手が触れ合うだけで胸が騒めく。
唇を重ねたら心臓が跳ねる。
抱き締めたら背中を何かが走り抜けていく。
今迄の恋愛とは全く違う。
初めて知る感情が自分の中に生まれる一方、冷静さや理性はどこかに消えてしまった。
牧野が、その温もりで、その笑顔で、声で、仕草で、ひとつひとつ俺の心を鍵を開けている。
冷静さや理性というコーティングで固められていた俺の心が少しずつ露わになる。
こんな風に誰かに心に侵入されるのは、きっと牧野が最初で最後。
そう思う。
牧野がまた深く寝入って、俺の身体に回していた腕から力が抜けていき、滑り落ちてきた右手の掌が、俺の左胸の上に載った。
温かな、ちょっと小さな掌が当てられてるのは俺の肌なのに、その奥にある心を優しく包まれてるかのような感覚に襲われる。
そう感じるだけで胸がとくりとくりと高鳴った。
自分の一番弱くて柔い所を牧野に触れられているみたいで、心を裸にされたような気持ちになる。
それは少し心許なくて、だけど互いの間に隔てが何もないと思えるスペシャルな幸せな距離。
そう、やっぱり牧野は特別な存在なんだ。
こんな気持ちを俺に齎すのは牧野だけ。
俺の深い所に踏み込んで来るのも、俺がそれを許せるのも牧野だけ。
願わくば、俺も牧野にとってそんな存在でありますように。
そしてこれからもずっと、この幸せを感受していけますように。
もう一度しっかりと牧野を抱き締め直す。
そして牧野の甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで、自分を眠りへと誘う。
朝、目が覚めたら、カーテン越しの淡い明るさの中で、互いの近過ぎる距離に頬を染める牧野が現れるんだろう。
そして恥じらいながらも俺に囁いてくれるはずだ。
「美作さん、お誕生日おめでとう。」って。
_________
短いんですが、お誕生日SSでした。
あきらが唯一本当に心を許せる相手はつくしだけ。
つくしにはそうさせてしまう力がある。
そんなイメージで書きました。
2月28日。
あきら、お誕生日おめでとう。



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