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Author:hortensia
花男にはまって幾星霜…
いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。
コミックは類派!
二次は総二郎派!(笑)
総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!
まず初めに「ご案内&パスワードについて」をお読み下さい。
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指先の魔法 -side つくし-

試験期間直前の週末。
レポート採点の科目は締切が迫るし、試験勉強はしなきゃいけないしで、あたしはバイトを休んで勉学に勤しんでいる。
この土日はF3が入れ替わりで得意科目を教えてくれるというので、美作さんちのライブラリーに通わせてもらっていた。
お天気のいい日曜日。
青空の下をお散歩でもしたら気持ちいいだろうに、あたしは勉強に次ぐ勉強だ。
でも美作さんちって勉強捗るの。
ライブラリーは落ち着いた雰囲気で、双子ちゃんもここには遊びに入らないってお約束を守ってくれてるからとても静かだし。
まあ、最初は美作さんが耳当たりのいいクラシック音楽を掛けてくれてたけど、うっかり眠気を誘われちゃうので、止めてもらったんだけどね。
ライブラリーの中にはゆったり座れるソファとローテーブルも置いてあるけど、あたしが使わせてもらってるのは窓辺に置かれた大きなアンティーク調のテーブルだ。
天然木の天板は飴色で、磨き込まれていて優しい手触り。
近所の図書館のテーブルは、一応木製だけど合板で、テッカテカのニスが塗られてて、触るとなんかひやっとするんだよねぇ。
それに比べてここのテーブルは何と温かみのある事か!
ライブラリーの中はあの可愛いお母様のお好みじゃなくて、お父様の趣味で調えられているそうで、ちょっと他のお部屋とはテイストが違う。
美作家と言えば、フリフリのふわふわのプリンセスワールドだけれど、あたしはそういうのはちょっと落ち着かなくて。
ここの方がずーっと居心地が良い。
そして程良きタイミングで、美味しいお茶やお菓子が運ばれてくるのに加え、お昼や夕暮れ時になると、ランチやあまつさえディナーまで用意されてしまうのだ。
恐縮してしまうけど、美作さんは「ウチのシェフが腕の見せ所だって張り切ってるんだ。食べてやってくれよ。」とか言うし・・・。
類も西門さんも何の遠慮もなく、まるで実家に帰ってきた息子みたいにのびのび振る舞って、人んちのお食事に当然のように呼ばれてる。
あたしは一応毎日手土産持参で来てはいるけど・・・、多分その何倍も頂いちゃってるんだわ!

午前中は美作さんに英米文学史のレポートを見てもらって、それに手を入れて。
美作さんがプリントアウトしてくれた原稿の左肩をクリップで留めた時に、丁度ライブラリーのドアがコンコンコンとノックされ、双子ちゃんがぴょっこり顔を覗かせた。

「お兄ちゃま、お姉ちゃま、お昼ご飯のお時間よ!」
「今日のデザートは絵夢と芽夢の好きなカンノーロですって!」
「ああ、ありがとう。今行くよ。」

にっこり2人に笑い掛けた美作さんが、微笑みを浮かべたままあたしの方に向き直った。

「レポートも出来上がったことだし。
ランチにしよう。」
「毎日ご馳走になっちゃって申し訳ないよ・・・。」
「双子もお袋も、牧野が一緒だと喜ぶから。」
「ありがと、ホントに。」
「こちらこそ、双子とお袋の相手してもらって助かってる。
親父が留守にしてると俺への集中攻撃でちょーっと疲れるっていうか・・・。」
「みーんなお兄ちゃまが大好きだもんね。」
「家族にモテてもしょうがないだろ。」
「ふふふふふ。優しいからね、美作さんは。」

そう。
誰にだって、いつだって優しい。
さりげなくエスコートされながら案内されたダイニングルームは、外の寒さとは無縁で明るく暖かな雰囲気に満ちている。
うさぎさんのダイニングチェアに行儀よくお座りした双子ちゃんの頭を通りすがりに優しく撫でて、あたしのチェアを引いてくれた。
美作さんはいつだって頼れるお兄ちゃまで、優しい王子様だ。

今日のランチはほっぺたが落ちそうに美味しいイタリアンで、さっき絵夢ちゃんが言っていたデザートは、筒型のサクッと揚げられた生地の中にさっぱりとして甘さ控えめなクリームがたっぷりと詰まっていて、粉砂糖でお化粧された見た目も可愛いスイーツだった。

「お姉ちゃま、カンノーロ、美味しいでしょ!」
「うん、ホントに美味しいねえ。
あたし、生クリームたっぷりなお菓子はちょっと苦手なんだけど、このクリームは口当たり軽くて、いくらでも食べられそう。」
「ああ、それは生クリームじゃなくて、リコッタチーズを使ってるんだ。
シンプルなのに美味しいスイーツだよな。」

美作さんがそう教えてくれると、更に美味しくなる気がする。
食後のお茶を頂いてから、あたしと美作さんはライブラリーに戻った。
午後は類が来てフランス語をみてくれる事になっているけれど、まだ到着していない。

「俺で良かったらフランス語の勉強も手伝うけど。
類が出番を取られたって怒るかも知れないからなぁ。」

美作さんはそう言って笑ってる。

「あ、いいの、いいの。
ちょっと自分で見直しとくよ。
あたしの事は気にしないで!
自分のやりたい事しててね。」

フランス語の教科書とノートを開いて独りで勉強を始めたけれど・・・。
レースのカーテン越しの冬の陽射しは柔らかでポカポカと暖かく、お腹は美味しいもので満たされていて、どうしても眠気を誘う。
うっかり船を漕いでしまい、首がかくんと落ちる衝撃で目が覚めた。

やばい、やばい、寝ちゃった。
折角こんな恵まれた勉強環境を整えてもらってるのに!

気を引き締めねば!と思ったのに、いつの間にか隣に座っていた美作さんが、くすりと忍び笑いを漏らす。

「類来るまで休憩すれば?
昨日家帰ってからもあのレポート書いてたんだろ?」
「いやいやそんな、寝ていい訳ないよ。
勉強する為にお邪魔させてもらってるのに。
美味しいご飯ご馳走になって、更に昼寝だなんて!」
「まあ、いいじゃないか。
15分でも寝るとスッキリするって言うぞ。」
「えー?」
「ほら、15分だけ。
頭をリフレッシュさせる為に。」
「うーん、いいのかなぁ?」
「類が来たら起きたらいいさ。」

そんなお昼寝への誘惑の言葉に誘われて、あたしは教科書とノートを横に押しやって、美作さんに渡されたふかふかクッションと自分の腕を枕にテーブルにうつ伏せた。
すると、美作さんが双子ちゃんにするみたいに、あたしの後頭部をゆっくりゆっくり撫でている。
その手つきはとても優しい。

あー、ずうっとこうしてたい。
なんか、とっても安心出来て、眠気を誘われるよ・・・

あたしの気持ちなんかお見通しなんだろうか?
美作さんの手は繰り返しあたしの頭をゆっくり撫でては、指先でそっと髪を梳いている。
微かに擽ったくて、でも心地良くて。
日向ぼっこをする猫になったような気分。
それを楽しんでいるうちに、あたしは本当に寝入ってしまったのだった。


_________



甘やかされまくりなつくしでした。
カンノーロ、好きなんです。
映画『ゴッドファーザー』にも登場するお菓子として名高いですね。
リコッタチーズのクリームが美味しいお菓子。
どこかで見かけたらお試しください。

寒いですねぇ。
週末にはここも雪が降るかも?って予報です。
充電式の小さなカイロを買いました。
いよいよ出番かな?
インフルエンザも周りで罹っている人が増えてきた印象です。
皆様、寒さにもウイルスにも負けないように自衛していきましょうねー。


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何はなくとも

今日は牧野の誕生日。
分かっちゃいたけど、年末年始はどうにも忙しくて。
やっと牧野の部屋に辿り着いた時には日付が変わる直前。
牧野は俺が来るなんて思ってもなかったんだろう。
独りぐうすか眠ってた。
薄暗い部屋の中、微かな寝息を吐きながら、牧野がぎゅうっと抱きついているのは俺・・・じゃなくて、俺が普段使っている枕だ!
何だよ?
もーのすごく虚しい。
まるでこれじゃ俺なんかいなくても枕さえありゃいいみたいじゃね?と思ってしまう。
俺は牧野のこととなると途端に心が狭くなる。

牧野がしがみついてるその枕は、2人で買い物に行った時、俺に合わせて調整してもらったオーダーメードもので。
それを牧野の枕の隣に置くってだけで一悶着あった。
恋人の枕を自分の部屋に常備するだなんて無理!と顔を真っ赤にして拒否する牧野と。
2人で寝るときは元々ある牧野の枕を俺が使って、牧野は俺の腕枕・・・だと、牧野はぐうぐう寝ていても、俺のほうがどうにも塩梅が悪かった。
翌朝首はぐきぐきいうし、肩は凝ってるしで、それに耐えられなくなっての枕購入だったワケ。
いや、ホントはこの狭いシングルベッドだって広々したのに買い替えたいぜ?
寝るのにも、アレコレするのにも窮屈過ぎるんだ、これは。

気持ち良さげに眠ってる牧野を起こすのも忍びなく・・・、そっと指の背で頬を撫ぜてみると、猫が擦り寄るみたいに俺の手に頬を当ててくるから嬉しくなる。
こんな事であっさり気を取り直す俺も単純な男だ。
勝手知ったる牧野の部屋でシャワーを浴びて、箪笥から引っ張り出した部屋着を着て、冷蔵庫で冷やされていたミネラルウォーター片手に暫し牧野観察をする。

あーあ、誕生日、ちゃんと祝ってやりたかったな。
俺の誕生日は牧野精一杯のもてなしで祝ってくれたってのに。
『いーよ、いーよ、あたしの誕生日なんて!
忙しいんでしょ?
あたしも年末はバタバタだからさ。
年明けて、お仕事一段落したら、何か美味しい物でも食べさせてよ。
ね、そうしよ!』
なんて明るく言ってたけど。
牧野が良くても俺が良くない。
俺が誕生日の牧野と一緒にいたかったんだよ。

無理矢理ベッドの細い隙間に身体を捩じ込んで。
牧野が抱き締めてる俺の枕をそうっと引っ張った。
起こさないように慎重にやったつもりだったのに、流石に抱き付いてるものが無くなって、何か異変を感じたらしい牧野が寝ぼけ眼で俺を見ている。

「・・・西門さん?」
「起こしたな。悪い。」
「んーん、ダイショウブ。
きっとまたすぐ寝ちゃう・・・。
今日仕事納めだったから、忙しくて疲れちゃってさぁ・・・。」
「そっか。お疲れ。
・・・それと、誕生日おめでとう。」

そう耳元で呟いたら、ふっと柔らかな笑い声が漏れた。

「ありがと。
それを言いに来てくれたんだ?」

さっきまで枕に巻き付いていた牧野の腕が、今度は俺の胸の上に置かれる。

「無理しなくて良かったのに。
・・・でも嬉しい。
あたし、幸せだね。」

腕枕してやった牧野の頭がこつん・・・と俺の肩に当たる。
くっ付いている所から、牧野の温もりが伝わってきて、俺の身も心もぽかぽかにしていく。

2人でこうしていられたら、何はなくとも幸せだな。

そんなことを思いながら牧野を抱き締めて。
一年一度の牧野の誕生日は終わっていったのだった。


_________



短いけれど、つく誕SSでした!

後書き書いたのに何故か消えてた!
(いや、多分自分が保存に失敗しただけだと思うけどさ。)

今年は色々あって、お話を書くのを頑張れない年でしたー。
加齢のせいで体力も年々落ちてるしねぇ。
気付くとスマホ片手に寝落ちてるんですよ!
で、時々スマホ身体の下敷き。
iPhoneって結構丈夫だね?笑
今年もこんな更新の乏しいblogにお運び頂き有り難うございました。
来年も偶にふらっとお立ち寄り頂けたら幸いです。
一応、書きかけで止まっているお話達を、少しずつでも書き進めてやりたいと思っております。
皆様、良いお年をお迎えくださいね。

hortensia


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my happiness ~sequel of 独り占め~

このお話は「fake」の後日譚「独り占め」の更にその後…の2人です。
とっくに書き終わったお話でしたが、あのソファで2人はどんな風に過ごしてるのかな?とぼんやり考えていたのです。
お誕生日SSとしてお納め下さい。


♡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈♡


お早う。
頂きます。
ご馳走様。
行ってきます。
ただいま。
お休み。

そんな日常の挨拶にいちいち律儀に応えてくれる。

お早う。
召し上がれ。
お粗末様でした。
行ってらっしゃい。
お帰りなさい。
お休みなさい。

ただそれだけの事なのに。
言葉を交わす度に胸に温もりが広がっていく。
それは、他の誰でもない、牧野が俺に笑い掛けながら言ってくれるから。
ありふれた言葉に、こんな価値があるだなんて。
俺は牧野と暮らすようになって知ったんだ。



牧野が気に入ってるリビングのソファ。
そこに凭れながら、牧野を背中から柔く抱き締めてる。
日曜日の午後。
窓の外はそれなりに寒いのかもしれないが、室内は程よく暖められている上に、牧野からじんわりと体温が伝わってくるから、薄手のニット1枚でもちっとも寒くない。
録り貯めていた録画を観ている振りをしているけど、ホントはろくにテレビ画面なんか観ていなかった。
ちらちらと牧野を見下ろして、牧野の事ばかり考えている。
当の牧野は寛ぎながら雑誌のページを捲っている。

「『若き伝統芸能の担い手』だってー。
畏まって写ってておっかしー。」

牧野が見ていたのは俺がインタビューを受けた雑誌の特集だったらしい。
献本をこの部屋に持ち帰った記憶はないから、これは牧野が買ってきた物なのだろう。

「何買ってんだよ。
欲しいなら一言俺に言やあいいのに。」
「偶々買ったら載ってたんだもーん。」

その返事に思わず声を殺して笑ってしまった。
絶対俺が載っていたから買ったに違いない。
普段この雑誌を買って来たところを見た事なんかない。

「『茶道は己の血脈』だって。
西門さん、緑の血なの? 人間じゃないじゃん。」

そう言って今度は牧野が肩を震わせている。

「あのなぁ、俺はそんな事言ってねえ。
編集者がテキトーな見出し付けたんだろ。」

確か「貴方にとって茶道とは何ですか?」というようなありきたりな質問があって、俺は「自分の一部・・・というよりは、体の中を駆け巡る血液のように必要不可欠で、常に自分の中に息づいてるもの・・・と感じています。」とか何とか答えた気がする。
大分意訳というか、端折られている。

「また随分きりっとした表情のお写真だね。」
「ニヤニヤにやけた茶道の若宗匠じゃ収まりが悪いんだろ。
真面目で一本気な男に見えるのが使われてんだよ。」
「真面目で! 一本気!」

また牧野がけたけた笑ってる。

「世間の人はこうやって騙されていくのかぁ。
情報って操作されてるってホントなんだね。」

何が情報操作だ。
俺はこんなにも真面目に仕事に取り組んで、お前といる時はお前の事ばかり考えてるってのに。

文句を言い返す代わりにふうーっと深く息を吐く。
短気は損気だ。

「あ、F4の事まで書かれてる。
んーと、『花の4人組、Flower 4としても有名な若宗匠ですが、他の方々との交流は続いてらっしゃいますか?』って、変な質問ー。
友達なんだから当たり前じゃん。
『親友といいますか、悪友といいますか・・・、子供の頃からの付き合いですから、多少会えない時間があったとしても、縁は切れたりしません。互いに何かあった時にはいつでも駆け付ける、そんな気持ちでおります。』
えー? 悪友なの?」
「音読すんなよ。」

俺の言葉を無視して牧野は続きを読み上げる。

「『各々多忙ですから4人で会える事も稀ですが、先日あきら(美作あきらさん・美作商事専務)の結婚式では久々に集合出来ました。友人の門出を揃って祝えた事は嬉しかったですね。』
うん、美作さんの結婚式、ホントに素敵だったもんねー。」

あきらは今年結婚した。
それは牧野がうっとりするようなお伽噺の中の一場面のような結婚式だった。
あきらは王子様役が案外ハマってた。
あの家で生まれ育つと自然と『王子様』になるらしい。
あの式はあきらのお袋さんの意見が多分に反映されているに違いなかったけど。

「つくしちゃんもあんな結婚式したいのか?」
「えー? いやいやいやいや、あんなのは見るだけでいいや。
あたしは・・・」
「西門さんのお嫁さんになれればどんなお式でもいいの、だろ?」
「言ってない。」
「言わなくても分かってるから。」
「勝手に分かってるつもりになってるだけでしょ!」

準備は着々と進んでいる。
牧野のあずかり知らぬところで。
あともう少し色んな事が整ったら、こんな冗談じゃなくてちゃんと言ってやれる。
西門つくしになってくれと。

なあ、牧野。
とびきり綺麗なお姫様にしてやるよ。
あきらんちとは違って純白のウェディングドレスじゃなくて正絹の白無垢だけどな。

腕の輪を狭めて、牧野をしっかりと抱き締めた。
頭の天辺にそっと唇を落とす。
それだけで幸せで胸がぐっと苦しくなる。

「ねぇ、西門さん、手首に香水つけてる?
すっごくいい匂いがする、目の前から。」

牧野の胸元でクロスしている俺の両腕。
朝、ほんの一滴付けたパルファンがまだ香っているらしい。

「手首じゃなくて、肘の内側。」
「へえ、そんな所につけるんだ?」
「手首だと、香り過ぎるから。
ちょっと隠れたところにつけるのがセオリー。」
「ふうん・・・、そういうものなの?
いい匂い。
甘い香りの中にふわんとお茶みたいな匂いがしてくる。」

そう、これは、グリーンティーベースのパルファンで。
牧野が好きそうなブレンドにしてもらっている、俺専用の香り。
俺にとっての香水というのは、かつては身嗜みだったり女を落とすための小道具の一つだったりした。
でも今ではベッドに入る前か、仕事が休みの日にひっそりとつけるだけ。
これが俺の香りなんだと牧野に知らしめる為につけている。
あわよくば、牧野にもこの香りが移ればいいのに・・・と思いながら。

「好きだろ?」
「うん、いい匂いで好き。」
「俺の事大好きだもんな、つくしちゃんは。」
「だから、この香りが好きなんだって言ってるんでしょうが。」
「照れるな、照れるな。」
「もーーーっ! いつだってあたしの事揶揄って!」

揶揄ってるんじゃねえ。
こんな遣り取りすら大切なんだよ。
他愛もない事を言い合えるのが嬉しい。
こうやって体温が伝わる距離でいられるのが、何にも代え難い幸せだから、絶対に護りたいって思うんだ。

「好きだよ、つくしちゃん。」
「はいはい。」
「愛してる。」
「っ・・・! もう、ずるい!
そう言ったらあたしが黙るって思ってるんでしょ!」
「お前、ちっとも黙ってないじゃん。」

艶やかな髪の毛に顔を埋めて、もう一度口付ける。
少しでも多く想いが伝わるように。

「なぁ、いい誕生日だな、今日。」
「何もしてないよ、まだ。ソファでダラダラしてるだけじゃない。」
「いいんだよ、折角取れた休みに、混んでるとこ出掛けたりしたくねぇし。
誰かに会ったりしても疲れるし。
のんびり過ごすのが最高の贅沢。」
「お誕生日なのに、お家ご飯で本当にいいの?
ケーキもあたしの手作りので?」
「ああ、それがいいんだって。
つくしちゃんの愛情たっぷりの手料理が。」
「はぁ・・・、またそんな事言って。」

牧野がちょっと身体の力を抜いて、俺の肩口に頭をこてんと凭せ掛けた。

「でも・・・、あたしも2人きりでお誕生日お祝い出来るのが一番の贅沢だな。」

俺達は誕生日なんて祝い合えない関係の時も、離れ離れで声すら聞く事が出来なかった時もあったから。
こうやって2人でいられる時間が途轍もなく大切に思える。
当たり前のようで当たり前じゃない。
恋人と2人で過ごすという、巷ではありふれた時間も宝物だ。

「お前の誕生日も2人で過ごそうな。」
「あー、えーと、うーんと・・・
滋さんが年末年始は東京にいるから忘年会兼ねてパーティーしようって言ってたけど・・・。」
「そんなの誕生日当日じゃなくてもいいだろ!
滋に言っとけ! 28日はダメだって。」
「う、うん、言ってみる・・・。」

友達思いで、家族思いで、だけど一番に俺の事を想っていてくれる。
そんな牧野が好きだ。
こうして牧野の体温を感じていると、俺は牧野を手にするまでずっと独りで、ずっと寂しかったんだなと思い至る。
俺はきっと長い間探していたんだ。
俺の心を暖めてくれる唯一人の、牧野という存在を。

「絶対だからな。
28日は俺がお前を独占する日。」
「え? あたしが好きな事する日じゃないの?」
「さっき言ってたろ。2人きりで誕生祝い出来るのが一番の贅沢だって。だから、一日中思いっきり甘やかしてやるよ。」
「いやー、あのー、あたし、フツーでいいから。」
「そういうなよ、つくしちゃん。
楽しみにしとけ。」
「逆に怖いんですけど・・・」

今日よりも牧野を幸せにする方法を考えよう。
ありふれた、だけど俺達にとっては大切な一瞬一瞬を積み重ねて、誰よりも幸せと思える時間を牧野にあげたい。
そして牧野が幸せなら、俺はそれよりもっと幸せなんだ。


_________



fake」は、ずっと気持ちがすれ違っている2人で、最後の最後にやっと気持ちが通じ合う…という
話にしてしまったので、イチャイチャが足りなかったな~と思ってたのです。
だから、やっと2人で暮らせるようになって、あのつくしお気に入りのソファでのんびりと、肩の力を抜いて過ごしている所を覗き見…というような気分で書きました。
楽しんで頂けたら幸いです。

開店休業状態でホント申し訳ないです。
ちょーっと体調が優れませんで。
お話を書く余裕を失くしてます。
これはやっぱり加齢かね?笑
何とか少しずつでも書いていけたらなぁ…と思っていますので。
時々遊びに来てやって下さいませ。


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Best friend or sweetheart ?

牧野の部屋で何をするともなく過ごしてる夕べ。
10月も今日で終わり。
日が暮れるのは早くなり、外の空気はかなり肌寒くなったけれど、この牧野の部屋はまだ暖房器具は使わないのだそうだ。
そんなタイミングではないらしい。
郷に入っては郷に従え。
我儘は言わない事にしている。
畳の床で脚を投げ出し、ぼうっとテレビの画面を見ていたら、不意にブランケットが目の前に降ってきた。

「類、それ掛けてるとあったかいよ!
肌触りもいいの。ふわっふわ!
春のさー、冬物一掃セールで買っといたんだー。
すっごい安かったの。
めちゃくちゃお買い得。
いくらで買ったか知りたい?」

目をキラキラさせてそんな事を聞いてくる。
多分信じられないような安値で買ってきたんだろう。
ブランケットなんて、欲しかったらいつでも幾らでも買ってやれるのに。

「いくらで買ったのさ?」
「ふふふ、聞いたら驚くよ!
何とねー、3980円の品が300円だったの!
この値引き率凄くない?」
「・・・凄いね。」
「ねー、お得だったでしょー。」

牧野は鼻も高々だ。
『値引き』や『お得』というキーワードにめっぽう弱い。
安値が凄いというよりも、そこまでの値下げを待っていたり、安い店を見つけた牧野が凄いと思う。

「じゃあ類はそれで暖をとりながらテレビ観てて!
あたし、ご飯作っちゃう。」
「ん、分かった。」

テレビの画面じゃなくて、キッチンで料理している背中を見詰める。
牧野に言わせると俺と牧野は『友達』、それも『誰よりも大切な友達』って事になっている。
牧野のアパートの部屋に入り浸っているのもすんなり受け入れられてるけど、そんな事してるのは牧野の友達の中では俺1人だけ。
あきらや総二郎が来ることなんてないし。
しょっちゅう俺がいるからか、女の子の友達だってアパートには来ない。
時折一緒に遊びに行ったり、食事に行ったりしてる話は聞くけれど。
牧野の部屋で一緒に時間を過ごして、牧野の作った食事を2人で食べて、寝る為に家に帰る。
そんな事が当たり前になっている。
これって友達の範疇なんだろうか?と何度も考えたけど、牧野が「友達だ」って言い張ってるうちは友達でしかないんだろう。
だけど・・・、もうそろそろいいんじゃない?
そんなの取っ払っても。

今夜のメニューはちゃんこ鍋だった。
野菜たっぷり、そして牧野特製の鶏団子入り。
「あったかいね、美味しいね!」と言いながら食べている牧野の笑顔が見られる方が、胃袋が満たされる事よりも俺にはよっぽど嬉しい。
食べ終わって、食器をシンクに運んでいくと、牧野が「じゃじゃーん!」という変な擬音と共に冷蔵庫から何かを取り出した。

「類、Trick or treat? って言って!」
「んん?」
「ハロウィンだよ、今日は!
ねえ、言ってよ、Trick or treat? って。」
「・・・Trick or treat?」
「はい、どーぞ!」

掌に載せられたのは、濃い黄色のプリンが入った器だ。

「パンプキンプリン、昨日の夜作って冷やしといたの!
洗い物後にして食べよっ!」
「ん、ありがと。」

思いっきり目尻を下げてにっこりしている牧野と、座卓に戻ってプリンを食べる。

「このさー、生クリームをおばけちゃんの形にするのが一番難しかったの。
すぐ食べちゃうんだけどね。
ハロウィン風にしたいじゃない。
目と口はチョコレートだよ。」

力作をスプーンで掬って口に運ぶ。
滑らかなかぼちゃの舌触り。
優しい甘みが口の中に広がる。

「美味しいよ。」
「美味しいよねー、パンプキンプリン。
あたしだーい好き!
このさ、下に入れてあるカラメルと併せて食べるとまた味が変わって、それもいいのよ。」

ぱっくり口を開け、スプーンを滑り込ませてまたニコニコしてる牧野を見ていると、俺はつい笑っていたらしい。

「あー、良かった。
類も美味しそうに食べてくれて。」
「あんたの料理、いつも美味しく食べてるけど。」
「だって、何か食べながらにこにこしてる類ってレアだよ。
パンプキンプリン、そんな好きだった?」

俺が好きなのはプリンじゃなくて・・・、その作り手の方なんだけど。

「ねえ、これ、他の誰かにも食べさせたの?」
「え? ううん、あたしと類の分だけ作ったよ。
だって晩ご飯一緒に食べるの、類だけだもん。」
「ふうん・・・。」
「なあに? どうかした?」

目をパチパチさせながら、俺の顔を覗き込んでくる。
パンプキンプリンを食べさせてもらったけれど、この鈍感な牧野が何だか小憎らしくて、悪戯してみたくなった。
すっと顔を近付けてほんの数秒唇を盗む。
何食わぬ顔をして元の位置に戻って牧野を見詰めると、ひと時きょとんとした後に、遅れて顔がぱあっと真っ赤に染まっていった。

「と、友達とはキスしないって!
あたし前に言ったよねっ?」
「好きならしてもいいんじゃない?」
「る、類はあたしが好きなのっ?」
「うん、好きだよ。
牧野だって俺が好きでしょ。」
「すっ、すっ、すっ、好きだけどっ!
それは友達としてだからっ!」
「じゃあさ、俺が他の人とキスしても牧野は何とも思わない?」
「・・・そ、それは、ちょっともやっとするかもしれないけど・・・。」

ちょっと? ホントにちょっとなのかな?
でももやっとはしてくれるんだ?

「俺がこうやって晩飯を食べに来なくなったらどう?」
「う・・・っ、それは結構寂しいかもしれないけど・・・。」
「俺に恋人が出来たからもう牧野とは会えないって言ったら?」
「んーーーーっ! それは物凄く寂しいけど!
類が幸せになるんならあたし我慢するもの・・・。」

何だよ、その強がり。
ホントの気持ち、認めてよ。

「ねえ、牧野。
もう答えは出てると思うんだけど。」
「どんな答えよ?」
「俺達、友達をやめたらよくない?」
「えええっ? それは・・・」

あ、それには驚いて躊躇ってくれるんだ?
じゃあ、もういいよね?

「友達じゃなくて、恋人になろうよ。
俺はあんたにしかキスしない。
あんたの作る手料理しか食べない。
あんたの事しか好きにならない。
あんただってそうでしょ?
こんなにあんたのテリトリーに踏み込むのを許してるのは俺だけなんだから。」

眉毛を八の字みたいにして、情けない顔になってる牧野。
へんてこだけど。
俺はどんな牧野も好きだよ。

「えーーーー?」
「あんたと一緒にいられる権利、俺に独占させてよ。
その代わり、俺の事独占していいよ。
ねえ牧野、Trick or treat? って言って。」
「えー、何でっ?」
「ハロウィンなんでしょ、今日は。」
「・・・Trick or treat?」

さっきとは逆になった俺達の台詞。
訳も分からずに鸚鵡返しに言ってしまう牧野が可愛くて、ついくすりと笑った。

「お菓子も悪戯もいらない。
俺が欲しいのは・・・」

もう一度唇にちゅっとキスをした。
さっきの例があるというのにこんなに無防備なのも、俺に心を許してくれてる証だと思ったら微笑ましい。

「あんただよ。」

目の前には今日一番顔を真っ赤にした牧野が現れた。
にこりと笑い掛ける。
逆に牧野は泣きそうな顔をしている。

今夜こそ牧野を掴まえよう。
だってもう、友達でいるのは嫌なんだ。


_________



ハロウィンSSでした!
ルイルイのお話をちっとも書いていなかったら、リクエストを頂いたので、無理矢理登場してもらいました。
この頃自分の中のルイルイが枯れ気味です…

まだかなり間が空いてしまいました。
スミマセン。
10月最初の更新が、10月最後の夜だよぉ。
ちょっと体調優れませんで…
思うように書けません(◞‸◟)
12月は、総誕、クリスマス、つく誕と予定がびっちりですからね。
ギアを上げていけたらいいなーと思ってますが、どうなるかしら?
応援して頂けたら有り難いです!


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粉雪舞い降りる君の肩先 18

「なあ、牧野・・・
俺、今から物凄く格好悪い事言うよ。」

間近にある牧野の濡れたように耀く瞳に、俺だけが映っている。
それはとても嬉しい事なのに、俺の中に隠されている後ろ暗い思いを何も知らないからこんなに無垢なのだと思うと、自分の中に罪悪感が芽生える。
そして胸のどこかがじくじくと疼く。

引っ越して欲しいだなんて、単なる俺の我儘でしかない。
俺の独占欲からこんな事を言い出してる。
なあ、牧野。
頼むから、司をずっと待っていたこの部屋で、俺の事を待たないで欲しいんだ。
この部屋には司との思い出があって。
ここで待っていたら、いつかは司が再び会いに来るって信じていた時があったろう。
司を想っていた時間だって、今の牧野を形造るものの一部なんだって重々分かっている。
だけど・・・、もし牧野が1人きりの時、俺の事じゃなく司の事を考えていたら・・・と想像するだけで、どうしようもなく心が乱れるんだよ。
牧野の中で大切に愛しまれ、時間の経過と共に美化されただろう思い出の中の司。
決して消し去る事の出来ない程に、深く牧野の記憶に刻まれた司。
そんな司に勝手に嫉妬している。
だから、姑息な手段かも知れないが、この思い出でいっぱいの空間から、牧野を引っ張り出したい。
今、俺を選んでくれたのなら・・・
この部屋で司を待っていた長い時間を、過去のものにしてくれ。

こんな本音を牧野に聞かせる訳にはいかなくて。
深呼吸をひとつ吐いて、俺は取ってつけたような下らない言い訳を口にする。

「ここに来る時、車を近くのコインパーキングに停めているんだけどさ。
それもちょっと不安なんだ。
出来れば露天じゃなくて建物の中で、契約している人しか出入り出来ないクローズドなパーキングに停めたいってのが本音。
だから、牧野がパーキング付きの物件に住んでいてくれたら、会いに来る俺も有り難い。」

「あ、そうだよね・・・。
美作さんのピカピカの車、ここら辺に停めてたら、悪戯されたり、車上荒らしに狙われちゃったりするかもしれないもんね。
あたし、そういう事全然気付けなくて・・・。
ごめん。」

俺が無理矢理捻り出した、どうでもいいような理由に聞き入り、真面目な表情をして謝ってくるから申し訳なくなる。

「謝らなくていいんだ。
ただ、そういう俺の方の事情もあるから。
マンションへの引っ越し、了承してくれたら助かる。」
「・・・・・・ちょっと考えさせてもらってもいい?」
「うん、ゆっくり考えて。」

右の掌で目の前にある頬をそっと包むと、俺の手よりもそこはひんやりとしていた。
触れていると、掌からじんわりと熱が伝わって、やがて互いの体温が溶け合っていく。
想いが飽和して言葉になって溢れ出た。

「好きだ・・・」

そう告げるだけで心臓に鋭い痛みが走る。
牧野も俺と同じようにどこかが痛むのだろうか。
泣きそうに顔を歪めた。

「美作さん・・・」
「うん?」
「好き。」

たった一言の言葉に、雷に打たれたかのような衝撃が走る。

心から想っている相手に「好き」と言われる事の喜びは、こんなにも激しく、強く、俺を揺さぶるものなのか。

思わず目を瞑り、愛しい人をぎゅっと抱き締め直した。
自分の心臓がばくばくと派手に拍動しているのが聞こえてくる。
口からは熱い溜息が溢れた。

「初めてだ・・・」
「な、何が?」
「初めて牧野が俺の事好きって言ってくれた。」
「・・・そうだっけ?」
「そうだよ。今が初めてだ。」
「そっか・・・。
自分の中では、もうずっと想ってたから。」
「ずっとっていつから?」
「え・・・? いつだろ?
気付いたらもう・・・美作さんに惹かれてたよ。」
「じゃあ、いつ気付いてくれたんだ?」
「そんなの・・・、内緒!」
「ふうん。」
「美作さんこそいつからあたしのこと想っててくれたの?」
「牧野が内緒なら、俺も内緒だ。」
「えー?」

もうずっとずっと前だよ。
司がまだ牧野の隣にいる時からだ・・・なんて知ったら、どんな気持ちがする?
驚かれた上に引かれそうだな。
その気持ちをなかった事にしようと、心の底に封印していた時もあった。
司が牧野を忘れても、牧野が司を想い続けているうちは、この気持ちを伝えよう・・・なんて思わなかった。
だけど牧野があのイチョウ並木が見える芝生の上で「待ってなんかいないよ。」って言ったから。
きっとあの日から、俺は自分の想いが膨らんでいくのを止めようとしなくなったんだ。

身体の奥に熱が溜まり始める予兆を自覚して、牧野を抱き締めている腕をそうっと解いた。
俺の熱情を牧野に知ってもらうのは今じゃない。
いつか牧野が本当に俺に心を許してくれる時が来たら・・・だ。

「なあ、牧野、外寒いかもだけど、ちょっと散歩しないか?」
「散歩?」
「そう。折角だから貰ったマフラー巻いて歩きたいんだ。」
「ん・・・、ありがと。
じゃあちょっと待ってて。
マグカップだけ片付けちゃうね。」

手早く片付けて、出掛ける支度をした牧野と外に出た。
3月に入ったとはいえ、どんよりと曇っている今日はまだマフラーが役に立つ。
俺は牧野が編んでくれたマフラーを、牧野は俺がプレゼントしたマフラーを各々巻いて、いつものように手を繋いで歩き出した。

「どこに行く?」
「あ、あのね、あたし、バースデーケーキは作れなかったから、ケーキ買いに行きたいな。
美味しいお店あるの。」
「うん、じゃあそこに行こう。」

牧野はキャンパス内じゃなくても、こうして2人で手を繋いで歩くのには照れが残っているようで、矢継ぎ早にあれこれ話している。
パティスリーのショーケース内のケーキに目移りしていた牧野は結局、「『季節限定』って書いてあると食べたくなっちゃうよね!」と言って、甘夏が載ったレアチーズケーキを、俺はオペラを選んだ。
帰り道、片手にはケーキの入った紙の箱を、反対では牧野の手を握って歩く。

「ケーキ作れなくてごめんね。」
「先週目一杯食べたろ?」
「あれは美作さんがあたしにご馳走してくれたんじゃない。
あたしはホントは自分で何か作りたかったの。
でもそこまで手が回らなくて。」
「今日の食事、どれもこれも美味しかった。
あんなに色々作るの大変だったろ?
それだけでもう十分嬉しいから。」

功労者の手を口元に引き寄せ、指先に軽くキスを落とすと、途端に真っ赤な林檎のような頬になった。
そして小声で俺を嗜めている。

「ちょっと! こんな事しちゃダメ! 今は外だよ!」
「誰かに見られたらとしても、あー、バカップルがいるなぁって思われるくらいだろ。」
「あたしが普段ここら辺を歩きにくくなっちゃうでしょ!」
「そうそう同じ人に同じ道で会ったりしないと思うけど?」
「それでも!ダメなの!」

そう言って手を引き抜こうとするから、そうはさせまいとしっかりと握り直して、コートのポケットにしまった。

牧野・・・
きっともう、離してあげられないよ。
この手を掴んで何処にも行かせたくない。
ずっと俺の側にいて欲しい。

自分の中に次々と生まれる激しい感情の全てを、とても牧野には明かせないから。
ただただ小さな掌を握って歩きながら、牧野があれこれ話すのを聞いている振りをしていた。


_________



残暑厳しいですねー。
それなのに場面は3月!
イメージわかないよ!
いや、自分ならその頃花粉でグズグズで、一歩もお外出たくない…ってなってますな。

このあきらきゅんは、単なる心配症の恋人…じゃないんですよね。
また誰かから「ハゲるよ!」って言われちゃいそう笑

9月ももう半ばですか。
クリスマスケーキの予約とか、お節の予約…なんていうのを目にして、気が遠くなってます。


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粉雪舞い降りる君の肩先 17

美作さんの腕の中はドキドキする。
ただドキドキするだけじゃなくて、優しく護られている安心感もある。
なのに同時に、足元を何かに掬われそうな心許ない気持ちも湧いてきて、広く温かな胸に触れてしまった緊張で身体をカチコチにさせながら、自分の中の様々な感情の波に揺られて混乱していた。
頭の上から「はぁ・・・」という溜息が小さく聞こえてくる。
その意味に思いを巡らす前に、美作さんが「ヤバい。」と呟いた。

え?
何がヤバいんだろ?
あたし、何かおかしいのかな?
それともあたしから変な匂いがするとか?
お風呂屋さんは昨日の夜行ったんだけど・・・
こんなくっ付いてないで離れた方がいいのかな?

そんな事を思って、つい聞いてしまった。

「な、何が?」

「幸せ過ぎてヤバい。
離したくなくなる。」

そう言われて、急に鼻の奥につーんと痛みが走った。
あたしだって美作さんとこうしていられるようになって幸せなのに、どうしても幸せな気分だけに浸れない。
どこか不安で、怖くて、切なくて、胸苦しい。
言葉に詰まってしまって、美作さんの肩口を睨みながら目を瞬いた。
うっかりすると目から何かが出てきそうだったから。
なのに美作さんはそんなあたしに追い打ちをかける。
耳に吐息が吹きかけられぞくりとした直後、そっと甘く囁く声が忍び込んで来た。

「好きだよ、牧野。」

今度こそ本当に目の奥がじん・・・と熱くなり、胸がキュンと締め付けられる。

あたしも何か気持ちを伝える言葉を言わなくちゃ・・・

そう思っているうちに、あたしと美作さんの身体の間には少し隙間が出来て、スローモーションのように美作さんの顔があたしの方へと近付いてくるのが見えた。
あたしはとびきり鈍感な筈なのに、今は次に何が起こるか自然と分かる。

あ、キスされる・・・

気付けば互いの唇が淡く重なっていた。
ほんの少し離れて、また直ぐに優しく啄まれて。
合間に溢れる自分の吐息が熱いのか、それともそれは美作さんの熱なのか分からない。
触れ合っている唇はじんじんとして、頭の中もびりびりと痺れていて、心臓はばくんばくんと大きな音を立てている。
それでも止めたいとは思わなかった。
寧ろこの時をずっと待っていたような気すらする。
いつしかこつり・・・とあたしのおでこに美作さんのそれが当たって、キスは止んだ。

「ごめん。」

何を謝られているのか分からないから、つい聞き返す。

「・・・何?」

「いや、さっきハグする時は先にしてもいいかって尋ねたのに、キスする前には聞かなかったから。
でも聞くタイミングがなかったんだよ。
気が付いたらキスしてた。」

「・・・事前に聞くものなの?」

「どうだろう? 牧野を驚かせない為には聞いた方が良かったのかと思って。」

「謝らないでよ。だってあたし・・・」

「嫌じゃなかった?」

「・・・なかった。」

「それなら良かった。」

今度はおでこに唇が押し当てられた。
普段おでこを意識する事なんてないのに、今は神経がそこに集中してしまったかのように敏感になっている。

あー、あたし、もう、心臓保たないかも・・・

そんな風に胸の中で呟いた時、唇は離れていき、ホッとしたのも束の間、また温かな胸に抱き寄せられた。

「なぁ、牧野。」

「ん・・・?」

「誕生日の祝いに託けて、ひとつ頼み事してもいいか?」

そう言われて、さっきまでとは違う感じに心臓がぐっと苦しくなった。
何故ならたった一つしかその『頼み事』を思い付けなかったから。
お付き合いして、ハグをして、キスをして・・・
その先へと進むのは、恋人同士ならば自然なことなんだと思う。
けれどあたしの心はまだその準備が出来ていないみたいで、とても狼狽えてしまった。

ど、どうしよ・・・
どうしたらいいんだろ・・・
何て言ったらいいの?

「・・・あ、あの、どんなこと?」

おずおずとそう聞いたあたしへの美作さんの答えは、予想したものとは全く違っていた。

「牧野、ここから引っ越ししないか?」

「え・・・?」

「この部屋、女の子の一人暮らしをするには向いていないってずっと思ってたんだ。
でも『友達』が口出しするのは違うかと思って、黙ってた。
今は牧野は俺の大事な女の子になってくれたろ?
恋人って立場なら、言ってもいいかと思って。
ここはセキュリティもしっかりしていないし。
バスも無いから牧野だって不便だろう?
とにかく心配なんだよ、俺は。」

的外れな想像をして思い悩んでしまったのからは解放されたけれど、思ってもいなかった事を言われて、あたしはちょっとぽかんとしていた。

「・・・引っ越し?」

「そう。引っ越して欲しい。」

『いつかはお風呂付きの物件に住みたいな。』
あたしだって今迄そう考えなかった訳じゃない。
でも引っ越しをするとしたら、就職して、勤務地が決まった時なんだろうと思っていた。

「あ、のさ、何でここに住んでるかって言うと、お家賃が安いからなの。
セキュリティが心配って美作さん言うけど、庶民の住む所はこんなものだよ。
あたしは大丈夫。」

「大丈夫じゃないよ、牧野。
泥棒に入られた事だってあったろ?」

「あー、うん、でも、何も無かったし。
そもそも盗られるような物ないよ、この部屋。」

「そういう問題じゃない。
冬の寒い夜でも歩いて銭湯に行ってるんだろう?
湯冷めするし、夜道を1人で歩くのだって危険だ。」

「それも大丈夫だよ。
ちゃんとコート着てマフラー巻いて帰ってくるし。
何も怖い目に遭ったことないもん。」

また頭の上から「はぁ・・・」と溜息が降って来た。
だけどそれはさっきのとはニュアンスがちょっと違いそうだ。

「それなら俺は毎日車で牧野が銭湯に行くのを送り迎えするし、しっかりドアに鍵を掛けるのを確認しないと帰らない。」

何て過保護な・・・と思うけれど、どうやら美作さんは本気らしい。

「そんなの困るよ。」

「じゃあ、俺を安心させると思って、安全な所へ引っ越ししてくれ。」

「いや、あのね、引っ越しって、敷金、礼金、前家賃、不動産屋さんへの手数料ってまとまったお金が必要になるし。
荷物を運ぶのだってお金掛かるのよ。
だから、なるべく回数少ないに越した事ないの。
就職する時に引っ越しするつもりでいるから・・・」

「牧野、就職ってあと2年も先だよ。」

「うん、そうだけど・・・」

「あと2年も俺を心配させたままでいるつもりか?」

「いや、あの、ホントにあたし・・・」

「頼むよ、牧野。
金の事なら心配いらない。
荷物はうちの車で運べばいいし、俺名義のマンションの空き部屋に住んでくれるなら、敷金も礼金も手数料も掛からない。」

俺名義のマンション!
さらっと凄いことを言ってくれちゃう。
それにしたって、そんなのあたしだけ得をしてしまって、美作さんには一利もない。

ちゃんと断ろうと決意して、美作さんから身体を離そうと胸をそっと押したのに、美作さんはそれを許してくれなかった。
至近距離で見詰め合う形になる。

「美作さん・・・、あたし、迷惑掛けるばっかりの存在にはなりたくないの。」

「迷惑だなんて思ってない。
俺が頼んでるんだ。
これは俺の我儘だよ。」

「んー・・・、あのね、あたしはここで大丈夫。」

美作さんはちょっと目を細めて、苦い物を食べてしまったような表情を浮かべた。


_________



下書きを保存し損ねて、1話分丸々喪失…
ヒジョーにショックでした。
100%書き直しでお送りしております、粉雪17話です。
書き直したら、流れは変わらない筈なのに、当初書いたのより長くなってました。
なーぜー?
あと、何か書き忘れてる事もありそう。

さてさて、初チューの場面でしたね。
多分あきらとしては、もっと素敵なシチュでしようと思ってた筈。
なのに気持ちが溢れたら、ボロアパートでもキスしちゃう…と。
管理人の妄想極まれり。
って言うか、初チュー迄何話さ?
この分で行くと、いつ終わるの?
心配になりますね。

残暑厳しいですねー。
エアコン24時間稼働をやめられません!
早く気軽に散歩とか出来るようになったらいいなぁ。
皆様も体調にお気をつけてお過ごし下さいね。


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粉雪舞い降りる君の肩先 16

牧野と手を携えて歩いていくと決めた。
そしてそれを牧野も受け入れてくれた。
だけど、その次に何をしていいか見えなかった。
牧野がずっと抱えてきた痛みや、俺と一緒にいる事で新たに抱えてしまった不安を和らげる為に、どうするべきなのか?
そして、牧野との距離感も分からない。
ずっと手を繋いできた。
時々ハグもした。
だけど、それ以上の事をするのはどうしても躊躇われた。
牧野はそんな事を求めてないんじゃないかと思ったから。
でも俺は・・・
本当は軽くハグするんじゃなくて、思い切りぎゅっと抱き締めたかった。
額に、瞼に、鼻先に、頬に、それから唇にキスをしたかった。
耳元で何度も「牧野・・・」と名前を呼んで。
そして「好きだ。」と牧野の心の奥に届くまで伝えたかった。

こんな事、真剣に悩んだ経験がない。
誰かと束の間の恋愛ゲームをする時には、俺の中には攻略チャートがあって、状況に応じて適切な選択肢を見極めれば、すいすいと道が開けていった。
俺のゲームはいつも途中までは調子がいい。
まあ、エンディングは大体3つだ。
いつの間にかフェードアウトか、お互い納得した上でのあっさりとしたお別れか、予期しなかった修羅場か。
ハッピーエンドを迎える事はないゲーム。
そもそも俺自身がそんなエンディングを望んだ事もなかったんだろう。

だけど今は違う。
この想いはゲームじゃない。
牧野との関係に攻略チャートはどこにも存在しない。
そしてまだ見ぬハッピーエンドへの道程は、きっと平坦じゃない。
不安なのは牧野だけじゃなくて俺もなんだ。
全く知らない道を手探りしながら切り拓いていくのだから。



食事の皿が全て下げられて、牧野はコーヒーを淹れてくれた。
自分のコーヒーにはたっぷりのミルクを入れている。

「あ、また牛乳入れてるって思ってるんでしょ。
子供っぽくてもあたし、この方が好きなんだもん。」
「俺まだ何も言ってないぞ。」
「言ってなくても目線がそう言ってそう。」
「違うよ。俺はさ、またあのカフェに一緒に行きたいなって思ってた。
そうしたらまた牧野はあの店のカフェオレを『美味しい』って言って飲むんだろうなって思いながら見てたんだよ。」
「・・・そっか。
そうだね。
あのカフェ、居心地良くて、カフェオレもチーズケーキも美味しくて・・・。
あたしもまた美作さんと一緒に行きたいな。」

そう言って優しげに眦を下げた牧野と見つめ合う。
少し細められた黒目がちな瞳に視線が釘付けになり、今すぐに牧野をかき抱いてしまいたい衝動に駆られて、それを堪えるのに必死だった。

「・・・今度行こうな。」
「うん。」

小さく頷いて、はにかみ笑いを浮かべる牧野は、暖かく柔らかな空気を纏っているかのように思える。
こんな些細なことでも、2人で叶える未来の約束を交わせるのが心底嬉しかった。
その一方で牧野に触れたくて、身体がじんじんと痺れているような感覚に苛まれて。
普段通りを装いつつも、俺はかなり混乱していた。
牧野はそんな俺には気付かない。

「あ、あのさ・・・
1週間遅れになっちゃったんだけど・・・
これ、お誕生日プレゼントなの。」

炬燵の陰から牧野が引っ張り出した包みを、おずおずとこちらに差し出してくれる。

「嬉しいな。
ありがとう、牧野。
開けてもいいか?」

「う、うん。どうぞ・・・」

牧野がリボンを掛けてくれたのだろう包みを開けると、中には暖かそうなマフラーが入っていた。

「・・・マフラーなんてさ、美作さん、いくらでも持ってるだろうし、もうすぐ春になっちゃうし、それに手作りなんて困るかも・・・とも思ったんだけど、あたしに出来ること、このくらいで。
でも毛糸はね、質が良いものを選んだつもりなんだよ。」

柔らかくて、俺好みの落ち着いたブラウンの手編みのマフラー。
アラン柄の織りが編み込まれ、その手間が偲ばれた。

「凄い。手編みなんだ?」
「ん・・・」
「大変だったろう?」
「んーん、そんなことないの。
楽しく編んだよ。」
「俺が牧野にマフラーをプレゼントしたから、それのお返しにって考えてくれたんだろ。
すごく嬉しい。
色も俺の服に合うように選んでくれて。
手間もそうなんだけど、牧野が俺を思って作ってくれた、その気持ちが何より嬉しい。
ありがとう。」

目を見詰めて気持ちを真っ直ぐに届けたいのに、牧野は炬燵の上のテーブルクロスを引っ張ったりして顔を上げてくれない。

「こ、こんなのね、美作さんの持ち物に混ぜてもらうの申し訳ないんだけど・・・、時々使ってもらえたら・・・って。」
「大事にするよ。
このマフラーも、牧野の事も。」
「え・・・?」

やっと顔を上げた牧野と再び視線がぶつかる。
無垢な煌めきが俺の心臓を射抜いていく。
もう駄目だった。
とても堪え切れなかった。
こんないじらしい、愛おしい存在が目の前にいるのだから。

「なあ牧野、ハグさせて。」
「えええっ?」
「感謝の意を込めてハグしたい。ダメか?」
「だ、だめじゃないけど・・・」
「けど?」
「あの、あの、あの、なんて言うか・・・
恥ずかしいし、ドキドキしちゃうし、どうしていいか分かんないし・・・」

そう言って戸惑っているのまで可愛いなんて、牧野にはちっとも分からないだろう。
隣に膝を進め、緊張でかちこちになっている牧野をそっと引き寄せた。
身体を強張らせたまま、こてん・・・と俺の胸へと倒れ込んできた牧野を抱き締める。
途端に今までに感じた事のない多幸感に包まれて、思わずはぁ・・・と溜息が漏れた。

「ヤバい。」
「な、何が?」
「幸せ過ぎてヤバい。
離したくなくなる。」

首の後ろに差し込んだ掌が温かな素肌に触れている。
背中に回した腕や、合わせている胸からは服越しに体温がじんわりと伝わってくる。
頬が触れている耳は少し冷たくて、そのひんやりとした感覚が背筋にびりびりとしたものを齎した。
そんな耳元に触れんばかりに唇を寄せる。

「好きだよ、牧野。」

素直な想いが口から溢れ出た。


_________



まだまだ暑い最中に粉雪更新中笑。
季節外れ、ホントーにスミマセン。
管理人もホントは夏の話を書きたいよー。

お盆も今日でお仕舞い。
なんだかちょっとしんみりしちゃいますね。
皆様、台風は大丈夫でしたか?
TVで水害の様子を観て、胸を痛めるばかりです。


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